【解決手段】 環状のコア31に1次コイル用線材11Aと2次コイル用線材11Bを巻回し、2つのコイル用線材11A、Bの間に、信号成分を通過させるネットワーク用LANに搭載されるトランス装置であって、1次コイル用線材11Aを1層絶縁用線材により、2次コイル用線材11Bを3層絶縁用線材により、各々形成し、これら2つの線材11A、Bを互いに撚り合わせた撚り線(11)として、コア31に巻回してなる。
環状のコアに1次コイル用線材と2次コイル用線材が巻回され、前記1次コイル用線材と前記2次コイル用線材の間に、信号成分を通過させるネットワーク用LANに搭載されるトランス装置において、
前記1次コイル用線材を1層絶縁用線材により、前記2次コイル用線材を3層絶縁用線材により、各々形成し、これら2つの絶縁用線材を互いに撚り合わせた撚り線として形成してなる、ことを特徴とするトランス装置。
前記1層絶縁用線材と前記3層絶縁用線材との撚り線の撚りピッチが3mm以上、かつ10mm以下とされていることを特徴とする請求項1または2記載のトランス装置。
前記撚り線を構成する前記1層絶縁用線材および前記3層絶縁用線材の導電線の線径が0.2mm以上、かつ0.45mm以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載のトランス装置。
前記撚り線を構成する前記1次コイル用線材と前記2次コイル用線材の各導電線間に介在する前記1層絶縁用線材の被膜部材と前記3層絶縁用線材の被膜部材の合計厚みが0.1155mm以上、かつ0.1430mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のトランス装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク用LAN等に用いられるトランス装置に関し、詳しくは、1次コイル用線材および2次コイル用線材を、トロイダルコア等の環形状のコアに巻回してなるトランス装置に関するものである。
【0002】
近年、ネットワーク用LAN等に用いられるトランス装置の小型化が強く要求されており、微小なコアに、1次コイル用線材および2次コイル用線材を巻回したものが知られている。
このような技術のうちの1つとして、トロイダルコア等の円環状のコアに、1次コイル用線材および2次コイル用線材を巻回する際に、1次用コイル211Aおよび2次用コイル211Bを隣接させてなるバイファイラコイル211(
図15を参照)により巻回することによって漏れ磁束の低減を図る技術が知られている(下記特許文献1)。
【0003】
この特許文献1によれば、バイファイラ巻のコイル用線材として3層絶縁コイルを用いたものが開示されている。
このような3層絶縁コイルは耐電圧が高く、線材として用いた場合には、1次コイル用線材と2次コイル用線材の間に別途の絶縁テープ等を介在させなくとも、1次コイル用線材と2次コイル用線材を密接させてコアに巻回することも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1によれば、複数本のコイル用線材をバイファイラ巻きにより、同時にコアに巻回していく際に、コイル用線材間でどうしても保持力に差が出てしまい、コイル用線材同士を巻線状態とすることが困難となり、特性が劣化する虞があった。
さらに、線材として3層絶縁線を用いた場合には、耐電圧を高くすることができるという利点は有するものの、その一方で、コストが高くなり過ぎ、利用者にとってコスト面で許容できる範囲を超えてしまうという問題も生じうる。
このようなコイルを選択するときには、必ずしも特性的に最上のものが求められるものでもなく、その用途や目的に応じた特性を満たし、かつコスト的にも、用途や目的に応じた所定の範囲に収まるようなバランスのとれた構成とする必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、2本のコイル用線材を効率良く、同様の巻線状態とすることが可能であり、種々の特性やコストが所定の範囲に収まるような構成とされたトランス装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るトランス装置は、以下の特徴を備えている。
【0007】
すなわち、本発明に係るトランス装置は、
環状のコアに1次コイル用線材と2次コイル用線材が巻回され、前記1次コイル用線材と前記2次コイル用線材の間に、信号成分を通過させるネットワーク用LANに搭載されるトランス装置において、
前記1次コイル用線材を1層絶縁用線材により、前記2次コイル用線材を3層絶縁用線
材により、各々形成し、これら2つの絶縁用線材を互いに撚り合わせた撚り線として形成してなる、ことを特徴とするものである。
この場合において、前記環状のコアがトロイダルコアとされていることが好ましい。
【0008】
前記1層絶縁用線材と前記3層絶縁用線材との撚り線の撚りピッチが3mm以上、かつ10mm以下とされていることが好ましい。
さらに、前記撚り線を構成する前記1層絶縁用線材および前記3層絶縁用線材の導電線の線径が0.2mm以上、かつ0.45mm以下とされていることが好ましい。
また、前記撚り線を構成する前記1次コイル用線材と前記2次コイル用線材の各導電線間に介在する前記1層絶縁用線材の被膜部材と前記3層絶縁用線材の被膜部材の合計厚みが0.1155mm以上、かつ0.1430mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトランス装置によれば、前記1次コイルと前記2次コイルは各々、1層絶縁用線材と3層絶縁用線材とをスパイラル状に撚り合わせた撚り線として形成されており、2本のコイル用線材を撚り合わせた状態で巻回することが可能であるから、コイル用線材の各々において、複数本のコイル用線材を同様の巻線状態とすることが可能である。また、バイファイラ巻きによりコイルを巻回する場合に比べて線材同士をより密着した状態とすることができ、高周波帯域でインピーダンスを安定した値とすることができる。また、コイル用線材のコア巻回時における作業性も向上する。
【0010】
本発明のコイル装置においては、1次コイルと2次コイルのいずれか一方を1層絶縁用線材、他方を3層絶縁用線材としているので、1次コイルと2次コイルを撚り合わせた際に、ある程度の耐電圧を確保して特性を維持することができるとともに、製造コストの大幅な上昇を抑制することができる。
【0011】
なお、コアを用いない空芯コイルとして、1次コイル用線材と2次コイル用線材をツイスト状に撚りあわせたものを使用し、変換効率の向上および装置の小型化を図るようにした技術が知られている(特開平4−328812号)が、この技術はコアを用いていない点において、本願発明とは技術思想の方向性が全く異なっている。また、コアを有しないために、磁束の漏れを防ぐことができず、インダクタンスが小さくなることも避けられないため、これらの点でも本発明とは技術の方向性が異なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るトランス装置の主要部を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す実施形態における巻回前のコイルの形態を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るトランス装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すトランス装置のピンとコイル用線材の接続関係を示す装置裏面側から見たときの概念図である。
【
図5】2種類のコイル用線材とコアとの巻回関係を示す概念図である。
【
図6】本実施形態について、コイル撚りピッチを変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性の変化を示すグラフである。
【
図7】本実施形態について、コイル撚りピッチを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)の変化を示すグラフである。
【
図8】本実施形態について、コイル撚りピッチを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)の変化を示すグラフである。
【
図9】本実施形態について、コイル径を変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性の変化を示すグラフである。
【
図10】本実施形態について、コイル径を変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)の変化を示すグラフである。
【
図11】本実施形態について、コイル径を変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)の変化を示すグラフである。
【
図12】本実施形態について、コイル被膜厚を変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性の変化を示すグラフである。
【
図13】本実施形態について、コイル被膜厚を変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)の変化を示すグラフである。
【
図14】本実施形態について、コイル被膜厚を変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)の変化を示すグラフである。
【
図15】従来技術における、巻回前のコイルの形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るトランス装置の実施形態について、上記図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るトランス装置の構成を示す概略図であり、
図2は、この
図1に係るツイストコイル11を、コア31に巻回前の状態で示すものである。
このツイストコイル11は、
図2に示すように、銅材等による導電線に1層の絶縁被覆をした1層絶縁線(例えば、ポリウレタンエナメル線(UEW等)、通常絶縁線とも称する)11Aと、銅材等による導電線に3層の絶縁被覆をした3層絶縁線(TEX、TIW等)11Bを、スパイラル状に互いに撚り合せたツイスト線からなる。
【0015】
このように、各絶縁線11A、11Bをスパイラル状に撚り合わせるように構成することにより、このツイストコイル11をコア31に巻回した際に、各絶縁線11A、11Bを磁束と均一に交差させることが可能である。また、2本の絶縁線11A、11Bを、より密着した状態で、コア31に対して略同様の巻回状態とすることができ、漏洩磁束を低減することができるとともに高周波数帯域でのインピーダンスを安定した値とすることができる。
このツイストコイル11は、これら2種の絶縁線を互いに撚り合わせたツイスト線の状態で、環状のコア31に、大略均等のピッチで巻回されている。
【0016】
環状のコア31としては、一般にトロイダルコアと称されるもの(環状の断面が円形のみならず、楕円形状、樽形状、矩形状等を含む)を用いることが好ましいが、必ずしも、トロイダルコアに限定されるものではない。例えば、1対のU型コアや1対のE型コアを互いに突き合わせて閉磁路を形成したものであってもよい。また、円環状に限定されるものではなく、多角形環状とすることもできる。
コアの主な材料は、フェライト、パーマロイ、ケイ素鋼板等であるが、それ以外の磁性材料を使用することもでき、ダストコアを使用することもできる。
【0017】
図3は、本実施形態に係るトランス装置の全体構成を示す斜視図である。
すなわち、前述したように2種の絶縁線を互いに撚り合わせたツイストコイル11をトロイダルコア(環形状の断面は略矩形とされている)31の周方向に略同様のピッチで巻回して形成されたトランス本体1と、このトランス本体1を収容するボビン41と、このボビン41から図面下方に延び、ツイストコイル11の所定の絶縁線11A、11Bの端部が電気的に接続される6本の端子ピン51(1)〜51(6)を備えている。
【0018】
ボビン41は、前壁部42、後壁部43の間に形成された左右段部(奥側(図面右側)の段部は前壁部42により隠されている)44、前後壁部42、43および左右段部44により四方を囲まれた凹部46、この凹部46の底部から図面下方に向かって突出する1対の基板突き当て部45A、Bを備えている。
【0019】
また、ボビン41の図面左側の段部44の下面から図面下方に延びる、互いに並列して設けられた1次側端子ピン51(1)〜51(3)、およびボビン41の図面右側段部(図示されていない)44の下面から図面下方に延びる、互いに並列して設けられた2次側端子ピン51(4)〜51(6)を備えている。
【0020】
トランス本体1は、中心軸が前後壁部42、43方向に延びるように配された状態で、その一部が、上記凹部46に嵌るようにして収納される。また、巻回されたツイストコイル11のうち、1次側コイルである1層絶縁線(UEW等)11Aの端部は端子ピン51(1)〜(3)に電気的に接続され、一方、2次側コイルである3層絶縁線(TEX、TIW等)11Bは端子ピン51(4)〜(6)に電気的に接続される。
【0021】
また、1対の基板突き当て部45A、Bは、底面が平面状とされた、前後方向に長い柱状の部材であって、互いに略同一形状とされている。このトランス装置が図示されない基板に取り付けられる際には、トランス装置を所定位置において、基板に向けて相対的に近接させる操作がなされるが、その操作の際には、まず端子ピン51(1)〜(6)が、基板(図示せず)のスルーホールに通され、次に、基板突き当て部45A、Bの底面が基板の表面に突き当てられる。これにより、トランス装置の相対移動は停止する。すなわち、この基板突き当て部45A、Bによって、ボビン41の底面と基板表面との距離が規制され、端子ピン51(1)〜(6)が、その根元部分から所定長さに亘って基板表面の上方に露出することになる。
すなわち、端子ピンの根元部分に、1次側コイルおよび2次側コイルを接続する間隔を確保することができる。
【0022】
図4は、
図3に示すトランス装置の裏面側から端子ピン51(1)〜(6)を見た場合の、各端子ピン51(1)〜(6)の配置と、これらの端子ピン51(1)〜(6)に対するコイルの接続状態を示すものである。また、
図5は、コア31Aに巻回された1次側コイルである1層絶縁線(UEW)11A1、11A2および2次側コイルである3層絶縁線(TEX)11B1、11B2の巻線状態を示すものである。
【0023】
なお、コア31Aに巻回されるツイストコイル11は、
図5に示すように、図面上で、
コア31Aの左側に巻回される第1のツイストコイル111Aと、図面上で、コア31Aの右側に巻回される第2のツイストコイル111Bとに分割されており、これら両者が、1次側コイルにおいては端子ピン51(1)で電気的に結合され、2次側コイルにおいては端子ピン51(4)で電気的に結合されるようになっている。
【0024】
1次側コイルである1層絶縁線(UEW)11Aの端部は端子ピン51(1)〜(3)に電気的に接続され、一方、2次側コイルである3層絶縁線(TEX)11Bの端部は端子ピン51(4)〜(6)に電気的に接続されるようになっている。
【0025】
すなわち、
図5に示すように(
図4を参照)、端子ピン51(2)(STARTを意味するSの符号が付されている)から延び、コア31Aに巻回開始された1次側コイルである1層絶縁線(UEW)11A1(第1のツイストコイル111A)は、図面上で、コア31Aの右側に巻回された後、端子ピン51(1)に接続される。一方、1層絶縁線(UEW)11A2(第2のツイストコイル111B)は、図面上で、端子ピン51(1)に接続され、コア31Aの左側に巻回された後、端子ピン51(3)(FINISHを意味するFの符号が付されている)に接続される。
【0026】
一方、端子ピン51(6)(STARTを意味するSの符号が付されている)から延び、コア31Aに巻回開始された2次側コイルである3層絶縁線(TEX)11B1(第1のツイストコイル111A)は、図面上で、コア31Aの左側に巻回された後、端子ピン
51(4)に接続される。一方、3層絶縁線(TEX)11B2(第2のツイストコイル111B)は、図面上で、端子ピン51(4)に接続され、コア31Aの右側に巻回された後、端子ピン51(5)(FINISHを意味するFの符号が付されている)に接続される。
【0027】
ところで、ツイストコイル11の撚りピッチPをどの程度とするかは、実際にツイストコイルとして形状が保てるのか、および巻線作業を効率良くできるのかが、問題となる。
ツイストコイル11の撚りピッチPを3mm未満とすると、撚り線が直線形状を維持する
ことが難しくなり、コア31に巻線を良好に行うことが困難である。一方、ツイストコイル11の撚りピッチPが10mmを超えると、ツイストコイル11の巻線時に撚りのたるみやほどけを抑制することが難しくなり、巻線作業の効率が大幅に低下する。
したがって、このような観点から、ツイストコイル11の撚りピッチPは、
3mm≦ P ≦10mm
の範囲に設定することが、ツイストコイル11を本来の形状でコア31に効率良く巻回する上で好ましい。
より好ましくは、
4mm≦ P ≦9mm
であり、これにより上記作用効果をより確実なものとすることができる。
もっとも、ツイストコイル11の撚りピッチPを3mm以上、10mm以下の範囲とした場合
において、特性的な面でも良好な状態を維持できるものでなければ使用することは難しい。そこで、ツイストコイル11の撚りピッチPを3mm以上、10mm以下の範囲で、特性的な
面(通過損失(挿入損失)の周波数特性、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)および反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間))で良好な値が得られるか否かについて検証した。
【0028】
図6は、本実施形態について、コイル撚りピッチPを変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性を示す各グラフを表したものである。
図6に示すグラフを得る際の評価対象であるツイストコイル11は、撚りピッチPを3mmから10mmまで1mmきざみで変化させたものであり、
図6〜8の各グラフはそれら各ピッチのものについて、各々特性の変化を示すものである。なお、このときのツイストコイル11の1次側コイルは1層絶縁線(2UEW:0.0155mm厚)11Aであり、ツイストコイル11の2次側コイルは3層絶縁線(TEX−E:0.1mm厚)11Bである。コイル径Dは0.23mmである(
図7、8に示すグラフにおいて同じ)。
図6に示すように、通過損失(挿入損失)の周波数特性は、撚りピッチPが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくともPが3mmから10mmの領域で許容範囲内とされてい
ることが検証された。
【0029】
図7は、本実施形態について、コイル撚りピッチPを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)を示す各グラフを表したものである。
図7に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)は撚りピッチPが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも3mmから10mmの領域で許容範囲内で
あることが検証された。
【0030】
図8は、本実施形態について、コイル撚りピッチPを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間)を示す各グラフを表したものである。
図8に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)は撚りピッチPが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも3mmから10mmの領域で許容範囲内で
あることが検証された。
【0031】
次に、ツイストコイル11の各絶縁線11A、Bの導電線のコイル径Dについて、通常使用される0.20mm以上、0.45mm以下の範囲とした場合において、特性的な面(通過損失(挿入損失)の周波数特性、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)および反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間))で良好な値が得られるか否かについて検証した。
なお、本願明細書において、コイル径と指称するときは、絶縁被膜を除いた導電線の断面直径を表わすものである。
【0032】
図9は、本実施形態について、コイル径Dを変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性を示す各グラフを表したものである。
図9に示すグラフを得る際の評価対象であるツイストコイル11は、コイル径Dを0.2mmから0.45mmまで逐次変化させたものであり、
図9〜11の各グラフはそれら各径のもの
について、各々特性の変化を示すものである。
なお、このときのツイストコイル11の1次側コイルは1層絶縁線(2UEW:0.0155mm厚)、2次側コイルは3層絶縁線(TEX−E:0.1000mm厚)であり、ツイストコイル11の撚りピッチPは5mmである(
図10、11に示すグラフにおいて同じ)。
【0033】
図9に示すように、通過損失(挿入損失)の周波数特性は、コイル径Dが大きくなるにしたがって良好となるが、少なくともDが0.2mm〜0.45mmの領域で許容範囲内であること
が検証された。
【0034】
図10は、本実施形態についてコイル径Dを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)を示す各グラフを表したものである。
図10に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)は、コイル径Dが大きくなるにしたがって良好となるが、少なくとも0.2mm〜0.45mmの領域で許容範囲
内であることが検証された。
【0035】
図11は、本実施形態について、コイル径Dを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間)を示す各グラフを表したものである。
図11に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)は、コイル径Dが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも0.2mm〜0.45mmの領域で許容範囲
内であることが検証された。
【0036】
次に、ツイストコイル11の被膜厚(金属導電線の周りを被覆する絶縁材料の厚み)Tについて、1次側コイルについては通常使用される1UEW(0.0230mm厚)および2UEW(0.0155mm厚)のいずれかを選択し、2次側コイルについては通常使用されるTEX−E(0.1000mm厚)およびTIW−2(0.1200mm厚)のいずれかを選択し、選択された各々の絶縁線11A、11Bの被膜厚を組み合わせて合計の被膜厚Tを設定した。これにより、被膜厚Tは、TEX−E(0.1000mm厚)と1UEW(0.0230mm厚)を組み合わせたものが0.1230mm厚となり、TEX−E(0.1000mm厚)と2UEW(0.0155mm厚)を組み合わせたものが0.1155mm厚となり、TIW−2(0.1200mm厚)と1UEW(0.0230mm厚)を組み合わせたものが0.1430mm厚となり、TIW−2(0.1200mm厚)と2UEW(0.0155mm厚)を組み合わせたものが0.1355mm厚となる。
すなわち、これら被膜厚Tの厚みを変えた4本のツイストコイル11を被測定物として、各々測定することによって、被膜厚Tを0.1155mm以上、0.1430mm以下の範囲とした場合において、特性的な面(通過損失(挿入損失)の周波数特性、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)および反射損失(リターンロス)の
周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間))で良好な値が得られるか否かについて
検証した。
【0037】
図12は、本実施形態について、コイル被膜厚Tを変化させた場合における、通過損失(挿入損失)の周波数特性を示す各グラフを表したものである。
図12に示すグラフを得る際の評価対象であるツイストコイル11は、コイル被膜厚Tを0.1155mmから0.1430mmまでの4段階で変化させたものであり、
図12のグラフはそれら各厚みのものについて、各々特性の変化を示すものである。
なお、このときのツイストコイル11の撚りピッチPは5mmであり、コイル径Dは0.20mmである(
図13、14に示すグラフにおいて同じ)。
【0038】
図12に示すように、通過損失(挿入損失)の周波数特性は、コイル被膜厚Tが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも0.1155mmから0.1430mmの領域で許容範囲内とされていることが検証された。
【0039】
図13は、本実施形態についてコイル被膜厚Tを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側:端子ピン51(2)-51(3)間)を示す各グラフを表したものである。
図13に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(1次側)は、コイル被膜厚Tが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも0.1155mm〜0.1430mm の範囲
で許容範囲内とされていることが検証された。
【0040】
図14は、本実施形態について、コイル被膜厚Tを変化させた場合における、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側:端子ピン51(5)-51(6)間)を示す各グラフを表したものである。
図14に示すように、反射損失(リターンロス)の周波数特性(2次側)は、コイル被膜厚Tが小さくなるにしたがって良好となるが、少なくとも0.1155mm〜0.1430mm の領域
で許容範囲内であることが検証された。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態の態様のものに限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0042】
例えば、上述したツイストコイル11に対して、コイル撚りピッチP、コイル径Dおよびコイル被膜厚Tの何れもが、上記実施形態で検証された設定値とすることが好ましいが、これらの要素のうちの1つまたは2つが検証された範囲から外れていても、ある程度良好な特性とすることが可能である。
【0043】
また、コア、コイルの導電線、ボビンおよび絶縁被膜の構成材料としては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の材料を用いることができる。