(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-170474(P2018-170474A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】樹脂層付き脆性材料基板の分断方法並びに分断装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20181005BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20181005BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20181005BHJP
B23K 26/0622 20140101ALI20181005BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20181005BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20181005BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B28D5/00 Z
B28D5/00 A
H01L21/78 V
B23K26/364
B23K26/0622
B23K26/064 A
B23K26/53
C03B33/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-68794(P2017-68794)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】林 弘義
【テーマコード(参考)】
3C069
4E168
4G015
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA02
3C069AA03
3C069BA00
3C069BA08
3C069BB01
3C069BB04
3C069CA05
3C069CA06
3C069CA11
3C069EA02
3C069EA05
4E168AD02
4E168AD18
4E168AE01
4E168CB03
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
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4E168EA05
4E168EA11
4E168EA23
4E168HA01
4E168HA09
4E168JA14
4E168JA17
4E168JA28
4E168KA08
4G015FA06
4G015FB01
4G015FC02
5F063BA07
5F063CB07
5F063CB26
5F063CB28
5F063CC23
5F063DD32
5F063DD79
5F063DD81
(57)【要約】
【課題】樹脂層付き脆性材料基板を簡単な工程できれいに分断することのできる分断方法並びに分断装置を提供する。
【解決手段】パルスレーザビームのバーストを含むレーザビームL1を、収差を生じさせる収差生成レンズ4cを透過させて収差レーザビームL2に生成し、当該収差レーザビームL2の最集束部を樹脂層付き脆性材料基板Wの母体となる脆性材料基板W1の表面から分断予定ラインに沿ってスキャンして、脆性材料基板W1に強度が低下した改質層Kを形成すると同時に樹脂層W2に分断溝Vを形成し、次いで改質層Kに沿ってブレイク手段を介して樹脂層付き脆性材料基板Wを分断予定ラインに沿って分断する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板の片側の一面に樹脂層を積層させた樹脂層付き脆性材料基板の分断方法であって、
パルスレーザビームのバーストを含むレーザビームを、収差を生じさせる収差生成レンズを透過させて収差レーザビームに生成し、
前記収差レーザビームの最集束部を前記樹脂層付き脆性材料基板の母体となる脆性材料基板の表面から分断予定ラインに沿ってスキャンして、前記脆性材料基板に強度が低下した改質層を形成すると同時に前記樹脂層に分断溝を形成し、
次いで、前記改質層に沿ってブレイク手段を介して前記樹脂層付き脆性材料基板を前記分断予定ラインに沿って分断することを特徴とする樹脂層付き脆性材料基板の分断方法。
【請求項2】
前記収差レーザビームの光源が波長0.7〜2.5μmの近赤外レーザであり、かつ、パルス幅が100ピコ秒以下のレーザビームのバーストを用いる請求項1に記載の樹脂層付き脆性材料基板の分断方法。
【請求項3】
前記ブレイク手段が分断用レーザビームを含む光学系で形成され、前記改質層を形成した分断予定ラインに沿って前記分断用レーザビームを照射することにより熱で前記脆性材料基板を分断するようにした請求項1または2に記載の樹脂層付き脆性材料基板の分断方法。
【請求項4】
前記分断用レーザビームが、CO2レーザビームである請求項1〜3の何れかに記載の樹脂層付き脆性材料基板の分断方法。
【請求項5】
前記ブレイク手段がブレイクバーを含むメカニカル系で形成され、前記改質層を形成した分断予定ラインに沿って前記ブレイクバーを押し付けることにより前記脆性材料基板を撓ませて前記分断予定ラインに沿って分断するようにした請求項1〜3の何れかに記載の樹脂層付き脆性材料基板の分断方法。
【請求項6】
脆性材料基板の片側の一面に樹脂層を積層させた樹脂層付き脆性材料基板の分断装置であって、
前記樹脂層付き脆性材料基板を載置するテーブルと、
光源から出射されたパルスレーザビームのバーストを含んだレーザビームを、収差を生じさせる収差生成レンズを介して収差レーザビームに生成する収差レーザビーム発光部材と、
前記収差レーザビーム発光部材を前記樹脂層付き脆性材料基板の分断予定ラインに沿って相対的に移動させて母体となる脆性材料基板に強度が低下した改質層を加工すると同時に樹脂層に分断溝を加工する移動機構と、
前記改質層に沿って前記樹脂層付き脆性材料基板を分断するブレイク手段とからなる樹脂層付き脆性材料基板の分断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板の一面に樹脂層を積層した樹脂層付き脆性材料基板の分断方法並びに分断装置に関する。特に本発明は、半導体基板のように、ガラス等の脆性材料基板の一面に、回路パターンの保護等を目的としてアクリルやエポキシ等の薄い合成樹脂層を積層した樹脂層付き脆性材料基板の分断方法並びに分断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に上記のような樹脂層付き脆性材料基板を分断する場合、
図8(a)に示すように、カッターホイール15(スクライビングホイールともいう)等により、樹脂層付き脆性材料基板Wの母体となる脆性材料基板W1の表面をスクライブすることによって切溝状のスクライブラインSを形成し、このスクライブラインSが形成された面とは反対側の樹脂層W2の面から、
図8(b)に示すように、ブレイクバー14を押し付けることにより樹脂層付き脆性材料基板Wを撓ませてスクライブラインSに沿って分断する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2の
図10参照)。
【0003】
上記したスクライブラインの加工では、カッターホイール等による機械的な手法に代えて、レーザビームを脆性材料基板の表面に照射して熱により分断予定ラインに沿ってクラックを生じさせたり、改質層を形成したりすることによりスクライブラインを形成する方法も一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−000533号公報
【特許文献2】特開2015−039872号公報
【特許文献3】特開2012−066479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した方法によって樹脂層付き脆性材料基板を分断しようとする場合には、母体となる脆性材料基板と樹脂層との物理的特性が異なることに起因して、樹脂層の一部が完全には分断されずつながったまま残ったり、あるいは分断されたとしても引きちぎり痕、不規則に割れるソゲ、チッピングなどが生じたりしてきれいに分断されないといった問題が生じる。
【0006】
また、樹脂層を確実に切り離すため、分断工程に先立って樹脂層の表面にもカッターホイールやレーザビームで分断予定ラインに沿ったスクライブラインを形成する方法も知られている(例えば特許文献3参照)。しかしこの方法では、樹脂層付き脆性材料基板の何れか一方の面にスクライブラインを加工した後、基板を反転させて反対側の面にスクライブラインを加工する必要があり、作業工程が増えて手間がかかると共に、基板を反転させるための機構等が必要となって装置が複雑になり、コストが高くなるといった問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決し、簡単な工程で精度よくきれいに分断することのできる樹脂層付き脆性材料基板の分断方法並びに分断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の分断方法は、脆性材料基板の片側の一面に樹脂層を積層させた樹脂層付き脆性材料基板の分断方法であって、パルスレーザビームのバーストを含むレーザビームを、収差を生じさせる収差生成レンズを透過させて収差レーザビームに生成し、前記収差レーザビームの最集束部を前記樹脂層付き脆性材料基板の母体となる脆性材料基板の表面から分断予定ラインに沿ってスキャンして、前記脆性材料基板に強度が低下した改質層を形成すると同時に前記樹脂層に分断溝を形成し、次いで、前記改質層に沿ってブレイク手段を介して前記樹脂層付き脆性材料基板を前記分断予定ラインに沿って分断するようにしている。
本発明の分断方法において、前記収差レーザビームの最も集束する最集束部を前記脆性材料基板の厚みの中間位置に合わせてスキャンすることが好ましい。
ここで、収差レーザビームの最集束部は、収差レーザビームの照射方向に沿って、ビームプロファイル(強度分布)を測定したときに、ビームプロファイルのピークパワーが最も高くなる位置(収差レーザビームの照射方向に沿った位置)を意味する。
【0009】
前記脆性材料基板の改質層を分断するブレイク手段として、波長10.6μmのCO
2レーザビームや、波長1.064μmのNd;YAGレーザビーム等の赤外線領域の波長(通常、波長0.7μm以上)を有するレーザビーム(具体的には波長0.7μm〜20μmのレーザビーム)を照射して熱により分断する光学的手段や、ブレイクバーを基板上面から押し付けて基板を撓ませることにより分断する機械的手段を用いることができる。
【0010】
また、別の観点からなされた本発明の分断装置は、脆性材料基板の片側の一面に樹脂層を積層させた樹脂層付き脆性材料基板の分断装置であって、前記樹脂層付き脆性材料基板を載置するテーブルと、光源から出射されたパルスレーザビームのバーストを含んだレーザビームを、収差を生じさせる収差生成レンズを介して収差レーザビームに生成する収差レーザビーム発光部材と、前記収差レーザビーム発光部材を前記樹脂層付き脆性材料基板の分断予定ラインに沿って相対的に移動させて母体となる脆性材料基板に強度が低下した改質層を形成すると同時に樹脂層に分断溝を形成する移動機構と、前記改質層に沿って前記樹脂層付き脆性材料基板を分断するブレイク手段とからなる構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のごとく構成されているので、収差レーザビームのスキャンにより、母体となるガラス基板等の脆性材料基板に強度が低下した改質層を加工することができると同時に、樹脂層に分断溝を分断予定ラインに沿って形成することができる。したがって、次のブレイク工程で、樹脂層付き脆性材料基板に外力を加えて改質層に沿って脆性材料基板を分断したときに、樹脂層が予め分断溝の部分で切り離されているか、あるいはその厚みの大部分が除去されているので、樹脂層での引きちぎり痕やソゲ、チッピング等が生じることなくきれいな端面で確実に分断することができる。また、収差レーザビームによって脆性材料基板に改質層を加工すると同時に樹脂層に分断溝が形成されるので、従来のように基板を反転させて樹脂層にスクライブラインを加工するといった煩雑な工程を省略でき、加工時間の短縮やコストの低減化を図ることができる。
【0012】
本発明において、前記収差生成レンズは平凸レンズで形成するのがよい。この場合、レーザビームを平凸レンズの平面側から入射させることにより、凸面側から収差レーザビームを出射させることができる。この場合、平凸レンズの平面側に回折光学素子(DOE)を配置することによって、平凸レンズの凸面側から出射するレーザビームの焦点数を多くすることができ、また、集光径を小さくすることができる。
さらに、本発明において、前記収差レーザビームの光源が波長0.7〜2.5μm(例えば、Nd:YAGレーザの基本波)の近赤外レーザであり、かつ、パルス幅が100ピコ秒以下のレーザビームのバーストを用いるようにするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明における収差レーザビーム発光部材の光学系を示すブロック図。
【
図3】収差レーザビームの集束状態を示す拡大説明図。
【
図4】パルスレーザビームのバーストのプロファイルを示す概念図。
【
図5】本発明における分断加工工程の第一段階を示す説明図。
【
図6】本発明における分断加工工程の第二段階を示す説明図。
【
図7】本発明におけるブレイク手段の他の一例を示す説明図。
【
図8】従来の樹脂層付き脆性材料基板の分断方法の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の詳細を図に示した実施例に基づき説明する。
図1は本発明に係るスクライブ装置(分断装置)Aを示す図である。
スクライブ装置Aには、左右の支柱1、1にX方向に沿ったガイド2を備えた水平なビーム(横梁)3が設けられている。このビーム3のガイド2には、収差レーザビーム発光部材4を備えたスクライブヘッド5と、分断用レーザビーム発光部材6を備えたスクライブヘッド7とがモータM1によりX方向に移動できるように取り付けられている。加工対象基板Wを載置して吸着保持するテーブル8は、縦軸を支点とする回動機構9を介して台盤10上に保持されており、台盤10は、モータM2によって駆動するスクリューネジ11によってY方向(
図1における前後方向)に移動できるように形成されている。なお、本実施例では、収差レーザビーム発光部材4と分断用レーザビーム発光部材6とは個別のスクライブヘッド5、7に振り分けて取り付けられているが、共通のスクライブヘッドに取り付けるようにしてもよい。
【0015】
スクライブヘッド5に取り付けられた収差レーザビーム発光部材4は、
図2に示すように、パルス幅(パルス持続時間)が100ピコ秒以下、好ましくは50ピコ秒以下(通常は1ピコ秒以上)、ここでは10ピコ秒のパルスレーザビームを出射する光源4aと、この光源4aから発振されたパルスレーザビームを分割されたバースト列の集合として出射させる光変調器4bと、この光変調器4bから出射されたレーザビームL1に収差を生じさせる収差生成レンズ4cとを備える。
なお、光源4aには波長0.7〜2.5μmの近赤外レーザを使用することができ、本実施例では波長1.064μmの近赤外線レーザを用いた。
また、パルスレーザビームのバースト列を出射させる光変調器4bについては、例えば特表2012−515450号公報に開示されており、ここでは公知の光変調器を利用してパルスレーザビームのバースト列を出射するものとし、詳細については説明を省略する。
【0016】
光変調器4bから出射されたレーザビームL1に収差を生じさせるために用いる収差生成レンズ4cは、特に限定されるものではないが、ここでは焦点を光軸方向に分散させ、通過したレーザビームL1を軸方向にぼやけた焦点を結ぶように集束させて収差を生じさせる平凸レンズを利用している。この平凸レンズを通過したレーザビームL1は、焦点が分散した収差レーザビームL2となる。レーザビームL1を平凸レンズの平面側から入射させることによって、凸面側から収差レーザビームL2を出射させることができる。
【0017】
パルスレーザビームのバースト列から生成された収差レーザビームL2は、
図3(a)に示すように、収差生成レンズ4cで集束させることによりレーザエネルギーを各焦点部fで蓄積させた狭くて長い高エネルギー分布領域(レーザフィラメント)Fを形成することができる。この高エネルギー分布領域Fを模式的に拡大した図を
図3(b)に示す。このような高エネルギー分布領域Fの形成によって、加工対象基板、例えばソーダガラス基板の表面に照射したときに、ソーダガラス基板の被照射面から内部深くまで強度が低下した改質層K(
図5参照)を加工することができる。
【0018】
もう一方のスクライブヘッド7に取り付けられた分断用レーザビーム発光部材6から出射される分断用レーザビームL3(
図6参照)は、上記収差レーザビームL2により強度が低下した改質層Kを完全分断可能なレーザビームが用いられる。本実施例では、この分断用レーザビームL3として波長10.6μmのCO
2レーザビームを使用した。なお、CO
2レーザビームに代えて、波長1.064μmのNd;YAGレーザビーム等の波長0.7〜20μmのレーザビームを用いることもできる。
【0019】
次に、上記のスクライブ装置Aを用いた本発明に係る樹脂層付き脆性材料基板Wの分断方法について、以下に説明する。本実施例では、母体となる脆性材料基板W1が厚み1mmのソーダガラスで形成され、その一面に厚み10〜50μmのアクリル樹脂層W2を積層させた樹脂層付き脆性材料基板Wを加工対象基板とした。
【0020】
まず、
図5(a)に示すように、テーブル8上に樹脂層付き脆性材料基板Wを載置し、収差レーザビーム発光部材4から出射される収差レーザビームL2を基板Wに向かって照射しながら、スクライブヘッド5とガイド2による移動機構により基板Wの分断予定ラインに沿って移動させる。このとき、収差レーザビームL2の集束部における高エネルギー分布領域Fが脆性材料基板W1の厚みの中間から樹脂層W2に及ぶようにする。これにより、
図5(b)に示すように、脆性材料基板W1の被照射面から下面まで、強度が弱くなった改質層Kを加工することができると同時に、肉厚の薄い樹脂層W2の高エネルギー分布領域Fがアブレーション等により除去されて分断溝Vが形成される。この分断溝Vの部分で樹脂層W2が完全に切り離されるか、あるいは、厚みの大部分が除去される。
なお、基板Wを受けるテーブル8には、収差レーザビームL2を照射したときに、基板Wを透過したレーザビームを下方に逃がすことができるように空間8aを設けておくのが好ましい。
【0021】
ここで、バーストを含む収差レーザビームL2(パルスレーザビームのバースト列)の好ましい実施条件の一例を下記に示す。
レーザ出力 : 10.6W
繰り返し周波数 : 32.5kHz
パルス幅 : 10ピコ秒
パルス間隔(レーザパルスの基板上での照射スポットの照射間隔): 4μm
バースト : 2パルス
パルスエネルギー : 163μJ/1バースト
走査速度 : 130mm/s
なお、加工深さや加工状態は、上記したレーザ出力、繰り返し周波数、パルス幅、バースト数やパルス間隔、収差等の調整により容易にコントロールすることができる。
【0022】
図4はパルスレーザビームのバースト列を示す模式図である。1つ1つのパルスレーザビームが分割された2つの微細パルスPが形成され、これが繰り返し周波数ごとに間欠的に照射される。
【0023】
上記のように、収差レーザビームL2のスキャンによって、基板Wの脆性材料基板W1に改質層Kを加工すると同時に樹脂層W2に分断溝Vを加工した後、
図6に示すように、改質層Kを加工した分断予定ラインに向かって分断用レーザビーム発光部材6からCO
2レーザビームL3を照射しながら、スクライブヘッド7並びにガイド2を含む移動機構により分断予定ラインに沿って移動させる。このときのCO
2レーザビームL3のレーザ照射条件は、加工対象となる樹脂層付き脆性材料基板Wの素材や厚みによって異なるが、本実施例では出力を22W、走査速度を20mm/s、繰り返し周波数を10kHzとした。
【0024】
このようにして、改質層Kを加工した分断予定ラインに沿ってCO
2レーザビームL3を照射しながら移動させることにより、レーザビームの熱によって脆性材料基板W1の強度が弱くなった改質層Kが完全分断される。また、これに先立って収差レーザビームL2の照射によって樹脂層W2が分断溝Vで切り離されているか、あるいはその厚みの大部分が除去されているので、CO
2レーザビームL3で外力を加えることにより、樹脂層付き脆性材料基板Wに引きちぎり痕やソゲ、チッピング等が生じることなく、分断予定ラインに沿ってきれいな端面で確実に分断することができる。
【0025】
上記実施例では、収差レーザビームL2によって脆性材料基板W1に改質層Kを加工した後に、樹脂層付き脆性材料基板Wを改質層Kから分断するブレイク手段として分断用レーザビームL3を用いたが、これに代えて、ブレイクバーを用いて機械的に外力を加えて分断するようにしてもよい。
図7はブレイクバーを用いたブレイク手段を示すものであって、
図7(a)に示すように、ステージ12上にゴム等からなる弾性シート13を敷設し、この弾性シート13上に改質層Kが加工された樹脂層付き脆性材料基板Wを、樹脂層W2側が上になるようにして載置する。そして
図7(b)に示すように、上方からブレイクバー14を改質層Kに向かって押し付けることにより、脆性材料基板W1を撓ませて改質層Kから基板Wを分断することができる。
【0026】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態のみに特定されるものでない。例えば、上記実施例では、ブレイク手段として光学系を用いたときに、収差レーザビームL2の照射によって全ての分断予定ラインに改質層Kを形成した後、分断用レーザビームL3を改質層Kに沿って照射して分断するようにしたが、収差レーザビームL2の照射に追随して分断用レーザビームL3を照射するようにしてもよい。その他本発明では、本発明の目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正および変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ガラス基板等の脆性材料基板の一面に樹脂層を積層した樹脂層付き脆性材料基板を分断するときに利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
A スクライブ装置(分断装置)
F 高エネルギー分布領域
K 改質層
L1 レーザビーム
L2 収差レーザビーム
L3 分断用レーザビーム(CO
2レーザビーム)
V 分断溝
W 樹脂層付き脆性材料基板
W1 脆性材料基板
W2 樹脂層
2 ガイド
4 収差レーザビーム発光部材
4a 光源
4b 光変調器
4c 収差生成レンズ
5 スクライブヘッド
6 分断用レーザビーム発光部材
7 スクライブヘッド
8 テーブル
14 ブレイクバー