【解決手段】核酸分離装置は、処理チューブに注入された試料及び試薬を撹拌し溶解処理する撹拌機構と、溶解処理後の核酸を含む試料液から核酸をコレクションチューブに分離回収するために該試料液を注入したフィルタカートリッジに加圧気体を供給する加圧気体供給機構と、処理チューブ及びフィルタカートリッジに試料、試薬又は溶解処理後の試料液を注入する分注機構と、加圧気体供給機構及び分注機構を移動させる移動機構と、試料の入ったサンプル容器のサンプルIDを読み取るサンプルID読取部と、コレクションチューブのコレクションチューブIDを読み取るコレクションID読取部と、サンプルIDと、対応するコレクションチューブIDと、を関連付けるID管理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施の形態1に係る核酸分離装置の天板を透視した場合の平面構成を示す透視概略平面図である。
【
図1B】
図1Aの核酸分離装置の正面パネルを透視した場合の構成を示す透視概略正面図である。
【
図2】実施の形態1に係る核酸分離装置の構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図1の核酸分離装置の分注チップ/試薬セット部の全体構成を示す平面図である。
【
図3B】
図1の核酸分離装置の分注チップ/試薬セット部の試薬容器用トレイ内の構成について説明する平面図である。
【
図4A】
図1の核酸分離装置のサンプルセット部の構成を示す平面図である。
【
図4B】
図4Aのサンプルセット部に配置するサンプル容器の例を示す図である。
【
図5】各サンプル容器の側面のバーコードとサンプルラックの各位置を示すバーコードとを示すサンプルラックの側面図である。
【
図6A】
図4Aのサンプルセット部に一つのサンプルラックを収納する際にサンプルIDを読み取る様子を示す平面図である。
【
図6C】サンプル容器の側面のバーコードをコードリーダで読み取る様子を示す概略図である。
【
図7A】
図1の核酸分離装置の加温/撹拌部の構成を示す平面図である。
【
図7C】
図7Aの加温/撹拌部に配置する処理チューブの構造を示す斜視図である。
【
図8】加温/撹拌部において処理チューブを撹拌する様子を示す平面図である。
【
図9】処理チューブを加温する加温/撹拌部の正面図である。
【
図10A】
図1の核酸分離装置の核酸抽出部の構成を示す平面図である。
【
図10C】
図10Aの核酸抽出部に配置するフィルタカートリッジの構成を示す概略斜視図である。
【
図10D】
図10Aの核酸抽出部に配置するコレクションチューブの構成を示す概略斜視図である。
【
図11A】
図10Aの核酸抽出部における、コレクションチューブのコレクションチューブIDを読み取るためのID読取専用レーンを示す平面図である。
【
図11B】
図11AのID読取専用レーンのコードリーダの設置箇所を示す正面図である。
【
図11C】
図11AのID読取専用レーンに設置されたコレクションチューブラックの底面図である。
【
図11D】コレクションチューブの2次元コードをコードリーダで読み取る様子を示す概略図である。
【
図12A】ID読取専用レーンを設けずにコレクションチューブIDを読み取る変形例を示す平面図である。
【
図13A】核酸抽出部において、核酸を分離するためにフィルタカートリッジを核酸回収用のコレクションチューブの上に移動させる様子を示す平面図である。
【
図14A】
図1の核酸分離装置の分注加圧ユニットの構成を示す概略斜視図である。
【
図15】(a)は、分注加圧ユニットの平面図であり、(b)は、分注加圧ユニットの側面図であり、(c)は、分注加圧ユニットの正面図である。
【
図16】(a)は、分注加圧ユニットにおける液体供給ノズルを示す平面図であり、(b)は、分注加圧ユニットの側面図であり、(c)は、分注加圧ユニットの正面図であり、(d)は、液体供給ノズルに接続されたチューブポンプ及び試薬ボトルを示す概略図である。
【
図17】(a)は、分注加圧ユニットにおける加圧ヘッドを示す平面図であり、(b)は、分注加圧ユニットの側面図であり、(c)は、分注加圧ユニットの正面図であり、(d)は、加圧ヘッドに接続された配管を示す概略図である。
【
図18】実施の形態1に係る核酸分離方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図19】サンプル容器の側面のバーコードをコードリーダで読み取る様子を示す概略図である。
【
図20】コレクションチューブの2次元コードをコードリーダで読み取る様子を示す概略図である。
【
図21】(a)は、
図18の試薬添加工程S03の試薬吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、試薬の処理チューブへの分注を示す概略斜視図である。
【
図22】(a)は、
図18の血液添加工程S04の血液吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、血液の処理チューブへの分注を示す概略斜視図である。
【
図23】(a)は、
図18の試薬添加工程S05の試薬吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、試薬の処理チューブへの分注を示す概略斜視図である。
【
図24】
図18の撹拌工程S06において処理チューブを撹拌する様子を示す概略斜視図である。
【
図25】
図18の加温工程S07において処理チューブを加温する様子を示す概略斜視図である。
【
図26】(a)は、
図18の試薬添加工程S08の試薬吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、試薬の処理チューブへの分注を示す概略斜視図である。
【
図27】
図18の撹拌工程S09において処理チューブを撹拌する様子を示す概略斜視図である。
【
図28】(a)は、
図18の移液工程S10の処理チューブからの吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、フィルタカートリッジへの分注を示す概略斜視図である。
【
図29】
図18の加圧工程S11において、フィルタカートリッジ内を加圧する様子を示す概略斜視図である。
【
図30】
図18の試薬添加工程S12において、フィルタカートリッジ内に洗浄試薬を分注する様子を示す概略斜視図である。
【
図31】
図18の加圧工程S13において、フィルタカートリッジ内を加圧する様子を示す概略斜視図である。
【
図32】
図18の試薬添加工程S14において、フィルタカートリッジ内に洗浄試薬を分注する様子を示す概略斜視図である。
【
図33】
図18の加圧工程S15において、フィルタカートリッジ内を加圧する様子を示す概略斜視図である。
【
図34】
図18の試薬添加工程S16において、フィルタカートリッジ内に洗浄試薬を分注する様子を示す概略斜視図である。
【
図35】
図18の加圧工程S17において、フィルタカートリッジ内を加圧する様子を示す概略斜視図である。
【
図36】(a)は、
図18の試薬添加工程S18の試薬(回収液)吸引を示す概略斜視図であり、(b)は、試薬(回収液)のフィルタカートリッジへの分注を示す概略斜視図である。
【
図37】
図18の加圧工程S19において、フィルタカートリッジ内を加圧する様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様に係る核酸分離装置は、処理チューブに注入された試料及び試薬を撹拌し溶解処理する撹拌機構と、
前記溶解処理後の核酸を含む試料液から核酸をコレクションチューブに分離回収するために該試料液を注入したフィルタカートリッジに加圧気体を供給する加圧気体供給機構と、
前記処理チューブ及び前記フィルタカートリッジに前記試料、試薬又は溶解処理後の試料液を注入する分注機構と、
前記加圧気体供給機構及び前記分注機構を移動させる移動機構と、
前記試料の入ったサンプル容器のサンプルIDを読み取るサンプルID読取部と、
前記コレクションチューブのコレクションチューブIDを読み取るコレクションチューブID読取部と、
前記サンプルIDと、対応する前記コレクションチューブIDと、を関連付けるID管理部と、
を備える。
【0013】
第2の態様に係る核酸分離装置は、上記第1の態様において、複数の前記サンプル容器を一列に格納可能なサンプルラックをさらに備え、
前記サンプルラックは前記サンプル容器を格納する箇所ごとに格納位置を示したサンプル位置IDが設けられており、
前記サンプルID読取部は、前記サンプルラックのセット方向に対して交差する方向から前記サンプルID及び前記サンプル位置IDを読み取り、
前記ID管理部は、前記サンプルIDと、対応する前記サンプル位置IDと、を関連付けてもよい。
【0014】
第3の態様に係る核酸分離装置は、上記第1または第2の態様において、複数の前記コレクションチューブを一列に格納可能なコレクションチューブラックをさらに備え、
前記コレクションチューブラックは前記コレクションチューブを格納する箇所ごとに格納位置を示したコレクションチューブ位置IDが設けられており、
前記コレクションチューブID読取部は、前記コレクションチューブラックのセット方向に対して交差する方向から前記コレクションチューブID及び前記コレクションチューブ位置IDを読み取り、
前記ID管理部は、前記コレクションチューブIDと、対応する前記コレクションチューブ位置IDと、を関連付けてもよい。
【0015】
以下、実施の形態に係る核酸分離装置について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態1に係る核酸分離装置10の天板を透視した場合の平面構成を示す透視概略平面図である。
図1Bは、
図1Aの核酸分離装置10の正面パネルを透視した場合の構成を示す透視概略正面図である。
図2は、実施の形態1に係る核酸分離装置10の構成を示すブロック図である。
この核酸分離装置10は、分注チップ/試薬セット部11と、サンプルセット部12と、加温/撹拌部13と、核酸抽出部14と、分注加圧ユニット15と、制御部16と、ID管理部17と、を備えている。ID管理部17には、サンプルID読取部18と、コレクションチューブID読取部19と、を有する。サンプルID読取部18によって、サンプル容器42のサンプルIDを読み取る。コレクションチューブID読取部19によって、コレクションチューブのコレクションチューブIDを読み取る。ID管理部17によって、サンプルIDと、対応する前記コレクションチューブIDと、を関連付けて管理する。
【0017】
この核酸分離装置10によれば、ID管理部17によってサンプル容器42のサンプルIDと、対応するコレクションチューブ66のコレクションチューブIDと、を関連付けて管理することができる。これによって、サンプル容器42と対応するコレクションチューブ66との取り違えを抑制できる。
【0018】
また、この核酸分離装置10は、
図1A、
図1B及び
図2に示すように、処理チューブに試料をサンプル容器42から注入し、そこに各種試薬を注入した後、処理チューブ53を撹拌し溶解処理する撹拌機構51と、溶解処理後の核酸を含む試料液から核酸をコレクションチューブ66に分離回収するために該試料液を注入したフィルタカートリッジ63に加圧気体を供給する加圧気体供給機構23と、処理チューブ53及びフィルタカートリッジ63に試料液及び試薬を注入する分注機構21、22と、加圧気体供給機構23及び分注機構21、22を移動させる移動機構24と、を備える。この分注機構は、分注チップ32を着脱可能であって、分注チップ32を介して液体を吸引及び吐出可能な吸引及び吐出機構22と、ノズルから液体を吐出する液体供給機構21と、を備える。
【0019】
なお、
図1A及び
図1Bの配置は例示であって、各部材の配置はこれらに限定されない。分注加圧ユニット15によって移動可能な範囲であれば、分注チップ/試薬セット部11と、サンプルセット部12と、加温/撹拌部13と、核酸抽出部14と、は任意の箇所に配置してもよい。
【0020】
この核酸分離装置10では、分注チップ32を介して試料液及び試薬を注入する分注機構21、22と、加圧気体を供給する加圧気体供給機構23と、を備える。これによって、分注及び加圧等の複数の工程を自動化でき、核酸抽出工程だけでなく、従来手作業で行われていた前処理工程も自動化できる。
【0021】
以下に、この核酸分離装置10の各構成部材について説明する。
【0022】
<分注チップ/試薬セット部>
図3Aは、
図1の核酸分離装置10の分注チップ/試薬セット部11の全体構成を示す平面図である。
図3Bは、
図1の核酸分離装置10の分注チップ/試薬セット部11の試薬容器用トレイ35内の構成について説明する平面図である。
【0023】
分注チップ32a、32b、32c、32dは、それぞれ分注チップラック31a、31b、31cに格納されている。なお、分注チップ32a、32b、32c、32dは、それぞれ異なる容量であってもよい。例えば、分注チップ32a、32cは、1.2ml、分注チップ32b、32dは、10mlとしてもよい。また、不要となった分注チップを分注加圧ユニット15から取り外す箇所として、分注チップイジェクト部33を設けている。取り外された分注チップ32は、分注チップ廃棄ボックス34に廃棄される。分注チップ廃棄ボックス34は、例えば装置の下部に設けてもよい。
【0024】
試薬容器36a、36b、36c、36d、36eと、試薬の廃棄用のウェストコンテナ37は、試薬容器用トレイ35の上に設けられている。試薬としては、例えば、前処理工程で用いる前処理酵素、溶解液及びエタノール、核酸抽出工程で用いる洗浄液及び回収液がある。例えば、試薬容器36aに前処理酵素を入れ、試薬容器36bに溶解液を入れ、試薬容器36cにエタノールを入れ、試薬容器36dに回収液を入れてもよい。なお、いずれの試薬容器にどの試薬を入れるかは利便性を考慮して適宜設定すればよい。また、洗浄液は、多量に使用するため、後述する
図16に示すように別途装置の下部に試薬ボトル36fを設けてもよい。
【0025】
<サンプルセット部>
図4Aは、
図1の核酸分離装置10のサンプルセット部12の構成を示す平面図である。
図4Bは、
図4Aのサンプルセット部12に配置するサンプル容器42a、42bの例を示す図である。サンプル容器42は、例えば採血管であり、核酸を抽出する試料が入っている。サンプル容器42は、サンプルラック41a、41b、41cに格納されている。
図4Aに示すように、サンプルラック41a、41b、41cに複数のサンプル容器42が列状に保持されている。ここでは各サンプルラックにそれぞれ8個のサンプル容器42が保持されている。
図4Aの例では全体で24個のサンプル容器42を格納できる。
【0026】
なお、サンプルラック41a、41b、41cのセット方向44の後端には、サンプルラック41a、41b、41cのサンプルラック有無検知センサ43a、43b、43cがそれぞれ設けられている。サンプルラック有無検知センサ43a、43b、43cによって、サンプルラック41a、41b、41cがそれぞれセットされたか否かを検出する。また、各サンプルラック41a、41b、41cは、対応するレーンごとに後端部に互いに係合する形状を設けておいてもよい。これによって、各サンプルラック41a、41b、41cは、対応しないレーンでは後端で係合しないため、誤ったレーンに挿入するミスを抑制できる。
また、サンプル容器42は、
図4Bに示すように、様々な形状のサンプル容器42a、42bを用いることができる。
【0027】
<試料>
なお、試料は、例えば、診断分野においては、検体として採取された全血、血漿、血清、尿、便、精液、唾液等の体液、あるいは植物(またはその一部)、動物(またはその一部)など、あるいはそれらの溶解物およびホモジネートなどの生物材料から調製された溶液が対象となる。
【0028】
<サンプルID読取部>
図5は、各サンプル容器42の側面のバーコード45aとサンプルラック41aの各位置を示すバーコード45bとを示すサンプルラック41aの側面図である。
図6Aは、
図4Aのサンプルセット部12に一つのサンプルラック41cを収納する際にサンプルIDを読み取る様子を示す平面図である。
図6Bは、
図6Aの正面図である。
図6Cは、サンプル容器42の側面のバーコード45aをコードリーダ46で読み取る様子を示す概略図である。
図5に示すように、サンプル容器42ごとにサンプルIDを示すバーコード45aが設けられている。また、サンプルラック41aのサンプル容器42を格納する箇所ごとにその位置を示すサンプル位置IDとしてバーコード45bが設けられている。
図5の例では、奥側から順にNo.1、No.2、No.3、No.4、No.5、No.6、No.7、No.8となる。これは、サンプルラック41aをセット方向44に沿ってレーンに収納する際に、サンプルラック41aの先端、つまり、奥側のサンプル容器42のバーコード45aから読み取るためである。なお、位置を示すバーコード45bには、手前側にサンプル格納位置の終了を示す「END」を示すバーコードが設けられている。
【0029】
図6Aに示すように、サンプルセット部12において、サンプルラック41a、41b、41cのセット方向44と交差する方向からサンプル容器42のサンプルIDを示すバーコードを読み取るためのコードリーダ46が設けられている。
図6A及び
図6Bに示すように、コードリーダ46は、サンプルセット部12の側方手前側に設けられている。このコードリーダ46は、サンプルID読取部18に対応する。なお、コードリーダ46によって、サンプルラック41cだけでなく、サンプルラック41a、41bのバーコードもそれぞれ読み取ることができる。サンプルラック41a、41b、41cをサンプルセット部12にセットする際にサンプルID及びサンプル位置IDを読み取ることができる。
図6Cに示すように、サンプルIDは、例えばバーコードのような1次元コードで表示されていてもよいし、QRコード(登録商標)のような2次元コードであってもよい。コードリーダ46は、例えば、赤色LED光47等を照射し、画像センサ等でバーコード45a、45bを読み取ることができる。
【0030】
読み取ったサンプルID及びサンプル位置IDは、ID管理部17において、対応するコレクションチューブIDと関連付けられる。この関連付けに基づいて、サンプル容器42に収容された試料が溶解処理され、処理後の核酸を含む回収液が対応するコレクションチューブ66に収容される。
【0031】
<加温/撹拌部>
図7Aは、
図1の核酸分離装置10の加温/撹拌部13の構成を示す平面図である。
図7Bは、
図7Aの正面図である。
図7Cは、
図7Aの加温/撹拌部13に配置する処理チューブ53の構造を示す斜視図である。
図8は、加温/撹拌部13において処理チューブ53を撹拌する様子を示す平面図である。
図9は、処理チューブを加温する加温/撹拌部13の正面図である。
【0032】
加温/撹拌部13では、処理チューブ53の中の液体を撹拌し、加温することができる。加温/撹拌部13は、撹拌ユニット51に処理チューブ53を格納する処理チューブラック52を設けている。
図7Aの例では、1列に8個の処理チューブ53が並べられ、3列配置されており、全体として24個の処理チューブ53を有する。各処理チューブ53は、それぞれ一つのサンプル容器42の試料に対応する。つまり、各処理チューブ53において、対応するサンプル容器42の試料を溶解処理する。
【0033】
また、処理チューブ53は、
図7Cに示すように、細い首部54と、太い胴部と、円錐状の底部55と、を有することを特徴とする。細い首部54と太い胴部との間に「返し」を形成することによって、上面を開口したままでの撹拌時にも液体の上昇による飛び散りを抑制できる。また、底部を円錐状とすることで、分注チップ32による吸引時の液残りを減らすことができる。
【0034】
図8に示すように、撹拌時には、撹拌ユニット51によって処理チューブラック52全体を偏芯回転させることによって各処理チューブ53内の試料液を撹拌する。この撹拌ユニット51は、撹拌機構に対応する。撹拌は、例えば、回転数で1500rpm以下であって、振幅は、例えば1mm以上10mm以下である。また、撹拌時間は、例えば240秒以下である。
【0035】
図9に示すように、加温時には、処理チューブラック52の下部のヒータ58によって各処理チューブ53を加温できる。加温は、例えば、前処理酵素及び溶解液が良好に働く20℃以上60℃以下の温度である。
【0036】
<核酸抽出部>
図10Aは、
図1の核酸分離装置10の核酸抽出部14の構成を示す平面図である。
図10Bは、
図10Aの正面図である。
図10Cは、
図10Aの核酸抽出部14に配置するフィルタカートリッジ63の構成を示す概略斜視図である。
図10Dは、
図10Aの核酸抽出部14に配置するコレクションチューブ66の構成を示す概略斜視図である。
【0037】
核酸抽出部14は、フィルタカートリッジ63を格納するフィルタカートリッジラック61a、61b、61cと、コレクションチューブ66を格納するコレクションチューブラック62a、62b、62cと、を有する。フィルタカートリッジラック61a、61b、61cには、それぞれ8個のフィルタカートリッジ63が格納されている。コレクションチューブラック62a、62b、62cには、それぞれ8個のコレクションチューブ66が格納されている。
図10Aの例では、24個のフィルタカートリッジ63と、コレクションチューブ66とが格納されている。さらに、一対のフィルタカートリッジ63とコレクションチューブ66は、一つのサンプル容器42、一つの処理チューブ53と対応する。つまり、コレクションチューブ66には、対応する処理チューブ53で溶解処理された核酸を含む試料液が分注される。最終的には、各コレクションチューブ66について、対応する一つのサンプル容器42内の試料に含まれている核酸が回収される。
【0038】
図10Aに示すように、フィルタカートリッジラック61a、61b、61cと、コレクションチューブラック62a、62b、62cと、が交互に配置されている。フィルタカートリッジラック61aとコレクションチューブラック62aとは互いに対応する。同様に、フィルタカートリッジラック61bとコレクションチューブラック62bは互いに対応し、フィルタカートリッジラック61cとコレクションチューブラック62cは互いに対応する。
【0039】
フィルタカートリッジラック61a、61b、61cは、対応するレーンごとに後端部に互いに係合する形状を設けておいてもよい。これによって、各フィルタカートリッジラック61a、61b、61cは、対応しないレーンでは後端で係合しないため、誤ったレーンに挿入するミスを抑制できる。また、同様に、コレクションチューブラック62a、62b、62cは、対応するレーンごとに後端部に互いに係合する形状を設けておいてもよい。これによって、各コレクションチューブラック62a、62b、62cは、対応しないレーンでは後端で係合しないため、誤ったレーンに挿入するミスを抑制できる。
【0040】
また、
図10Bに示すように、フィルタカートリッジラック61a、61b、61cでは、フィルタカートリッジ63の下方にウェストチューブ65が配置されている。一方、コレクションチューブラック62a、62b、62cでは、核酸抽出工程が行われるまではコレクションチューブ66のみがセットされている。
【0041】
<フィルタ>
図10Cに示すように、フィルタカートリッジ63は、フィルタ64を有している。フィルタ64(核酸吸着性多孔性膜)は、イオン結合が関与しない相互作用で核酸が吸着する多孔性膜である。このフィルタ64は、洗浄液による洗浄時には核酸との吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。さらに好ましくは、フィルタ64は、親水基として水酸基を有する多孔性膜であり、多孔性膜を形成する材料自体が、水酸基を有する多孔性膜、または多孔性膜を形成する材料を処理またはコーティングすることによって水酸基を導入した多孔性膜を意味する。多孔性膜を形成する材料は、有機物、無機物のいずれでもよいが、加工の容易性から、有機高分子などの有機材料を用いることが好ましい。フィルタ64は、例えば、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、アクリレート共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリエチレンテトラフルオロエチレン共重合体塩、ポリベンズイミダゾール、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体塩、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、セルロース、セルロース混合エステル、ニトロセルロース、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル共重合体、ニトロセルロース、ポリプロピレンおよび/またはポリエステルを含む多孔性膜からなる。
【0042】
水酸基を有する有機材料の多孔性膜としては、特開2003−128691号公報に記載の、アセチルセルロースの表面鹸化物が挙げられる。アセチルセルロースとしては、モノアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースの何れでもよいが、特にはトリアセチルセルロースが好ましい。この場合、鹸化処理の程度(鹸化度)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。核酸の分離効率を挙げるためには、水酸基の量(密度)が多い方が好ましい。例えば、トリアセチルセルロースなどのアセチルセルロースの場合には、鹸化率が約5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、表面積を大きくするために、アセチルセルロースの多孔性膜を鹸化処理する。この鹸化処理の程度(鹸化度)と多孔性膜の孔径との組合せにより空間的な水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。この場合、多孔性膜は、表裏対称性の多孔膜であってもよいが、表裏非対称性の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0043】
水酸基を有する有機材料の多孔性膜としては、他に、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物などで形成された多孔性膜を挙げることができるが、多糖構造を有する有機材料の多孔性膜を好ましく使用することができる。特に、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物から成る有機高分子の多孔性膜を好ましく使用することができ、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物を好ましく使用することができる。
【0044】
また、フィルタ64としては、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理した有機材料からなる多孔性膜を挙げることができ、例えば、前述の各アセチルセルロースの混合物の鹸化物を好ましく使用することができる。鹸化処理は、アセチルセルロースを鹸化処理液(例えば水酸化ナトリウム)に接触させるもので、鹸化処理液に接触したアセチルセルロースの部分に、再生セルロースとなり水酸基が導入される。核酸の分離効率を上げるためには、導入される水酸基の数が多い方が好ましい。例えば、鹸化率が約5%以上、さらには約10%以上であることが好ましい。
【0045】
また、フィルタ64としては、再生セルロースの多孔性膜を好ましく使用することができる。再生セルロースとは、アセチルセルロースの固体の表面または全体を、鹸化処理によりセルロース化したもので、本来のセルロースとは、結晶状態等の点で異なっている。
【0046】
さらに他のフィルタ64としては、親水基を有する無機材料である多孔性膜としてシリカ化合物を含有する多孔性膜、例えばガラスフィルターを挙げることができる。また、特許公報第3058342号に記載されているような、多孔質のシリカ薄膜を挙げることができる。この多孔質のシリカ薄膜とは、二分子膜形成能を有するカチオン型の両親媒性物質の展開液を基板上に展開した後、基板上の液膜から溶媒を除去することによって両親媒性物質の多層二分子膜薄膜を調整し、シリカ化合物を含有する溶液に接触させ、次いで前記多層二分子膜薄膜を抽出除去することで作製することができる。
【0047】
フィルタ64としては、厚さが10μm以上500μm以下、好ましくは、50μm以上250μm以下である多孔性膜を用いることができる。また、最小孔径が0.22μm以上、さらに好ましくは、0.5μm以上である多孔性膜を用いることができる。また、最大孔径と最小孔径の比が2以上、さらに好ましくは、5以上である多孔性膜を用いることができる。また、空隙率が50%以上95%以下、さらに好ましくは、65%以上80%以下である多孔性膜を用いることができる。
【0048】
また、使用するフィルタ64は、1枚であってもよいが、複数枚を使用することもできる。複数枚のフィルタ64は、同一のものであっても、異なるものであってよい。フィルタ64は、無機材料のフィルタと有機材料のフィルタとの組合せであってもよい。例えば、ガラスフイルタと再生セルロースの多孔性膜との組合せを挙げることができる。また、複数枚のフィルタは、無機材料のフィルタと有機材料の核酸非吸着性多孔性膜との組合せであってもよい、例えば、ガラスフイルタと、ナイロンまたはポリスルホンの多孔性膜との組合せを挙げることができる。
【0049】
<コレクションチューブ>
図10Dに示すように、コレクションチューブ66は、上面を閉止できる蓋を備えていてもよい。このコレクションチューブ66に回収液と共に核酸を回収する。
【0050】
<コレクションチューブID読取部>
図11Aは、
図10Aの核酸抽出部14における、コレクションチューブ66のコレクションチューブIDを読み取るためのID読取専用レーン74を示す平面図である。
図11Bは、
図11AのID読取専用レーン74のコードリーダ76の設置箇所を示す正面図である。
図11Cは、
図11AのID読取専用レーン74に設置されたコレクションチューブラック62aの底面図である。
図11Dは、コレクションチューブ66の2次元コード75aをコードリーダ76で読み取る様子を示す概略図である。
図11Aに示すように、核酸抽出部14において、コレクションチューブ66のコレクションチューブIDを読み取るためのID読取専用レーン74を設けている。つまり、本来、セットする箇所にセットする前にコレクションチューブラック62a、62b、62cをID読取専用レーン74に順次セットして、コレクションチューブIDを読み取る。
図11A及び
図11Bに示すように、コードリーダ76は、ID読取専用レーン74の手前側の下部に設けられている。このコードリーダ76は、コレクションチューブID読取部19に対応する。コレクションチューブラック62a、62b、62cをID読取専用レーン74にセットする際に各コレクションチューブ66の底部のコレクションチューブIDを読み取る。
図11Cのコレクションチューブラック62aの底面図に示すように、コレクションチューブ66の底面にはコレクションチューブIDに対応する2次元コード75aが設けられている。また、コレクションチューブラック62aの底面自体にも各コレクションチューブ66の格納位置を示すコレクションチューブ位置IDに対応する2次元コード75bが設けられていてもよい。この場合、コードリーダ76によって、2次元コード75a及び2次元コード75bを読むことで、コレクションチューブID及びコレクションチューブ位置IDをそれぞれ読み取ることができる。
図11Dに示すように、コレクションチューブIDは、例えば2次元コード75aで表示されていてもよい。2次元コードは狭い面積にも設けることが可能であり、小さなコレクションチューブ66の底面に設けることができる。コードリーダ76は、例えば、エリアカメラ等で2次元コード75を読み取ることができる。
【0051】
(変形例)
図12Aは、ID読取専用レーンを設けずにコレクションチューブIDを読み取る変形例を示す平面図である。
図12Bは、
図12Aの変形例のコードリーダ76の設置箇所を示す正面図である。
この変形例では、
図11Aの場合と異なり、
図12A及び
図12Bに示すように、ID読取専用レーンを設けずに、核酸抽出部14の手前側の下部にセット方向と交差するようにコードリーダ移動レーン77を設けている。これによって、一つのコードリーダ76をコードリーダ移動レーン77に沿って移動させて、各コレクションチューブラック62a、62b、62cについて、それぞれのコレクションチューブ66からコレクションチューブIDを読み取ることができる。また、上記と同様に、コレクションチューブラック62a、62b、62cの底面自体にも各コレクションチューブ66の位置を示すコレクションチューブ位置IDに対応する2次元コード75bが設けられていてもよい。これによって、さらにコレクションチューブ位置IDを読み取ることができる。
【0052】
読み取ったコレクションチューブIDは、ID管理部17において、対応するサンプルIDと関連付けられる。この関連付けに基づいて、対応するサンプルIDのサンプル容器42に収納された試料に由来する核酸を含む回収液は、対応するコレクションチューブ66に収容される。
さらに、各コレクションチューブ66の位置を示すコレクションチューブ位置IDを読み取っている場合には、ID管理部17によって、コレクションチューブIDと、対応するコレクションチューブ位置IDと、を関連付けることができる。これによって、各コレクションチューブラック62a、62b、62cにおいて、各コレクションチューブ66の位置を特定できる。
【0053】
<フィルタカートリッジの移動について>
図13Aは、核酸抽出部14において、核酸を分離するためにフィルタカートリッジ63を核酸回収用のコレクションチューブ66の上に移動させる様子を示す平面図である。
図13Bは、
図13Aの正面図である。
図13A及び
図13Bに示すように、核酸の回収前に各フィルタカートリッジ63を、各コレクションチューブ66の上方に移動させる必要がある。
例えば、次の3段階でフィルタカートリッジ63を移動させる。
1)まず、フィルタカートリッジラック61a、61b、61cでフィルタカートリッジ63を上昇移動させる。
2)次に、フィルタカートリッジラック61a、61b、61c上からコレクションチューブラック62a、62b、62c上にフィルタカートリッジ63を横移動させる。
3)次いで、コレクションチューブラック62a、62b、62c上からフィルタカートリッジ63を下降移動させる。
以上によって、フィルタカートリッジ63を、フィルタカートリッジラック61a、61b、61cからコレクションチューブラック62a、62b、62cに移動させることができる。なお、フィルタカートリッジ63側は固定とし、コレクションチューブ66及びウェストチューブ65側を移動させてもよい。
【0054】
<分注加圧ユニット>
図14Aは、
図1の核酸分離装置10の分注加圧ユニット15の構成を示す概略斜視図である。
図14Bは、
図14Aの分注加圧ユニット15の液体供給ノズル21a、21bを示す部分図である。
図14Cは、
図14Aの分注加圧ユニット15の加圧ヘッド23a、23bを示す部分図である。
図14Dは、
図14Aの分注加圧ユニット15の吸引/吐出ノズル22a、22bを示す部分図である。
図15の(a)は、分注加圧ユニット15の平面図であり、
図15の(b)は、分注加圧ユニット15の側面図であり、
図15の(c)は、分注加圧ユニット15の正面図である。
【0055】
分注加圧ユニット15は、鉛直上面が開放された容器(処理チューブ53、フィルタカートリッジ63)について、液体を供給する分注機構21a、21b、22a、22bと、容器63内に加圧気体を供給する加圧気体供給機構23a、23bと、容器53、63の鉛直上方に全体を移動させる移動機構24と、を備える。また、分注機構は、吸引及び吐出機構22a、22bと、ノズルから直接液体を吐出する液体供給機構21a、21bと、を備える。吸引及び吐出機構22a、22bは、分注チップ32a、32bを着脱可能である。吸引及び吐出機構22a、22bによって、容器53、63に分注チップ32a、32bを介して試料液、試薬等の液体を吐出すると共に、容器53から液体を分注チップ32a、32bに吸引する。また、液体供給機構21a、21bによって、容器53、63に液体を供給できる。
【0056】
なお、この分注加圧ユニット15では、2組の分注機構21a、21b、22a、22b、加圧気体供給機構23a、23bを含むが、2組に限られず、1組であってもよい。あるいは、3組以上含んでもよい。また、分注機構21a、22a及び加圧気体供給機構23aと、分注機構21b、22b及び加圧気体供給機構23bとは、それぞれ別々にz軸方向に移動可能となっていてもよい。このように各分注機構等が独立してz軸方向に移動可能なことによって、個別の分注動作が可能となる。例えば、分注機構が2組であって、処理するサンプル容器42が奇数であった場合、まずは2組ずつ分注を行って、最後に残った1つのサンプル容器からの分注は、1つの分注機構のみを動作させて行うことが可能である。分注機構が独立していない場合、全ての分注機構が同様に移動するため、分注チップの装着等で煩雑な処理が必要となる。
【0057】
また、分注加圧ユニット15には、ワーク検知センサ28を設けてもよい。ワーク検知センサ28は、サンプル容器42、分注チップ32、試薬容器36、処理チューブ53、フィルタカートリッジ63、コレクションチューブ66等が、所定の箇所に所定の数だけセットされているかどうかを検知する。ワーク検知センサ28にはCMOSセンサとレーザ光源を組み合わせた光電センサ等を用いることができる。ワーク検知センサ28は、移動機構24によって、検知したい各ワークの上方近傍に移動し、各ワークの有無を検知することができる。ワーク検知センサによって、前処理工程の開始前に各ワークのチェックをすることが好ましい。
【0058】
また、
図14Aに示すように、分注加圧ユニットに受け皿25を設けてもよい。受け皿25は、分注加圧ユニット15の移動時に分注チップ32の先端から落下した試料や試薬等の液体を受け止める。受け皿25はx軸方向に移動可能であって、分注機構22による分注動作時は、分注動作に干渉しない位置に収納される(
図15(c)参照)。
なお、分注加圧ユニット15を構成する上記の各部材は、一つのユニットを構成するのではなく、個別に設けられていてもよい。
【0059】
<吸引及び吐出機構>
この吸引及び吐出機構(ピペット)22a、22bは、直接に洗浄液等を有するボトルと接続された配管を通じて洗浄液等を分注するのではなく、先端に装着した分注チップ32を介して液体を注入することを特徴とする。従来は、洗浄液、回収液等の液体の種類ごとに多数の分注機構を用意する必要があるという課題があった。また、先端の吐出ノズルを一つとしておき、切替弁等によって吐出させる液体を切り替える方法がある。しかし、この場合には切替時の混入を避けるために切替後の液体による洗浄等を行う必要があり、無駄な液体の廃棄が生じていた。これに対して、この吸引及び吐出機構22a、22bによれば、分注する液体ごとに分注チップ32を代えて分注を行うことができる。つまり、実質的に一組の吸引及び吐出機構22a、22bによって様々な液体を分注することができる。また、分注チップ32内の気体を吸引又は吐出して、分注チップ32内に液体を吸引又は吐出を行うことができる。
【0060】
また、
図14Dに示すように、吸引及び吐出機構22a、22bは、例えば、先端に第1口径のOリングを有し、第1口径の第1分注チップ32aを着脱可能な第1分注チップ装着部26a、26bと、先端より内側に第1口径より大きな第2口径のOリングを有し、第2口径の第2分注チップ32bを着脱可能な第2分注チップ装着部27a、27bと、を有してもよい。これによって、一つの吸引及び吐出機構22a、22bによって、容量の異なる2種類の分注チップ32a、32bを装着することができる。これにより分注量によって適切な分注チップを使い分けることができる。
【0061】
<液体供給機構>
図16の(a)は、分注加圧ユニット15における液体を吐出する液体供給ノズル21a、21bを示す平面図であり、
図16の(b)は、分注加圧ユニット15の側面図であり、
図16の(c)は、分注加圧ユニット15の正面図であり、
図16の(d)は、液体供給ノズル(液体供給機構)21a、21bに接続されたチューブポンプ71及び試薬ボトル36fを示す概略図である。この液体供給ノズル21a、21bは、チューブポンプ71によって試薬ボトル36fから試薬(例えば、洗浄液)を供給する。液体供給ノズル21a、21bによる1回の供給量は、例えば、12ml以下であり、0.25ml単位で供給してもよい。
【0062】
<加圧ヘッド(加圧気体供給機構)>
図17の(a)は、分注加圧ユニット15における加圧ヘッド23a、23bを示す平面図であり、
図17の(b)は、分注加圧ユニット15の側面図であり、
図17の(c)は、分注加圧ユニット15の正面図であり、
図17の(d)は、加圧ヘッド23a、23bに接続された配管を示す概略図である。
この加圧ヘッド23a、23bは、換気口に設けられたエアフィルタ81a、81bと、パルスモータ82a、82b、加圧ポンプ83a、83b、圧力センサ86a、86bを介してそれぞれ接続されている。圧力の設定範囲は、例えば、30kPa以上160kPa以下である。なお、加圧気体としては、例えば空気、窒素を用いることができる。
なお、加圧ヘッド23a、23bは、吸引及び吐出機構22a、22b及び液体供給ノズル21a、21bの動作と干渉しないように配置されている。
【0063】
<移動機構>
移動機構24は、容器53、63の鉛直上方に分注加圧ユニット15の全体を移動させることができる。例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、移動機構24としては、X軸アクチュエータ24a、Y軸アクチュエータ24b、Z軸アクチュエータ24cを用いることができる。
【0064】
<制御部>
制御部16によって、核酸分離装置10を構成する分注チップ/試薬セット部11と、サンプルセット部12と、加温/撹拌部13と、核酸抽出部14と、分注加圧ユニット15とを制御する。制御部16は、例えば、コンピュータであってもよい。コンピュータは、物理的な構成要素、例えば、CPU1、メモリ2、記憶部3、表示部4、入力部5、インタフェース6等を備えていればよい。また、ID管理部17は制御部16と共通のハードウェア及びソフトウェアによって実現してもよい。
【0065】
<核酸分離方法>
図18は、実施の形態1に係る核酸分離方法の各工程を示すフローチャートである。
図18において、試薬添加工程(S01)から撹拌工程(S09)までが前処理(溶解処理)工程であり、移液工程(S10)から加圧工程(S19)までが核酸抽出(分離回収)工程である。
(1)サンプルセット部12において、サンプルラック41a、41b、41cをセットする際にセット方向44と交差する方向からサンプル容器42のサンプルIDを読み取る(
図19)(サンプルID読み取り工程S01)。サンプルIDは、例えばバーコード45aによって表示されていてもよい。
図19に示すように、バーコード45aは、サンプル容器42の長手方向に沿って配置されていてもよい。
(2)核酸抽出部14において、コレクションチューブラック62a、62b、62cをセットする際にコレクションチューブ66のコレクションチューブIDを読み取る(
図20)(コレクションチューブID読み取り工程S02)。コレクションチューブIDは、例えば2次元コード75で表示されていてもよい。2次元コードは狭い面積にも設けることが可能であり、小さなコレクションチューブ66の底面に設けることができる。ID管理部17において、上記サンプルIDと、対応するコレクションチューブIDとを関連付ける。この関連付けに基づいて、その後、サンプル容器42に収容された核酸を含む試料液が溶解処理され(S07)、処理後の核酸を含む回収液が対応するコレクションチューブ66に収容される(S19)。
(3)試薬容器36から試薬(前処理酵素)を分注チップ32に吸引し(
図21(a))、処理チューブ53に分注する(
図21(b))(試薬添加工程S03)。
(4)サンプル容器(採血管、42)から試料(全血)を分注チップ32に吸引し(
図22(a))、処理チューブ53に分注する(
図22(b))(試料添加工程S04)。
(5)試薬容器36から試薬(溶解液)を分注チップ32に吸引し(
図23(a))、処理チューブ53に分注する(
図23(b))(試薬添加工程S05)。
(6)処理チューブ53を撹拌する(
図24)(撹拌工程S06)。処理チューブ53の撹拌は、モータの回転数が1500rpm以下で行う。また、振幅は1mm以上10mm以下である。
(7)処理チューブ53を加温する(
図25)(加温工程S07)。加温は、例えば、20℃以上60℃以下の温度範囲で行う。
【0066】
「溶解処理」は、細胞膜および核膜を溶解して核酸を可溶化する試薬(例えば、カオトロピック塩またはグアニジン塩、界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含む溶液)を含む水溶液で処理するもので、例えば、対象となる試料が全血の場合、フィルタ64への非特異吸着および目詰まりを防ぐために赤血球および各種タンパク質を分解、低分子化し、抽出の対象である核酸を可溶化させるために白血球および核膜の溶解を行う。「水溶性有機溶媒」としてはエタノール、イソプロパノールまたはプロパノールなどが挙げられ、中でもエタノールが好ましい。水溶性有機溶媒の濃度は好ましくは5重量%以上90重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以上60重量%以下である。エタノールの添加濃度は、凝集物を生じない程度でできるだけ高くすることが特に好ましい。
全血や、細胞またはウィルスを含む検体を溶解処理することにより核酸を液中に分散させた溶液に水溶性有機溶媒が添加された状態となる。
(8)試薬容器36から試薬(エタノール)を分注チップ32に吸引し(
図26(a))、処理チューブ53に分注する(
図26(b))(試薬添加工程S08)。
(9)処理チューブ53を撹拌する(
図27)(撹拌工程S09)。処理チューブ53の撹拌は、モータの回転数が1500rpm以下で行う。また、振幅は1mm以上10mm以下である。
【0067】
(10)処理チューブ53から溶解処理された核酸を含む試料液を分注チップ32に吸引し(
図28(a))、フィルタカートリッジ63に分注する(
図28(b))(移液工程S10)。これによって、溶解処理された核酸を含む試料液をフィルタカートリッジ63に注入できる。
(11)フィルタカートリッジ63を加圧ろ過する(
図29)(加圧工程S11)。加圧ろ過は、フィルタカートリッジ63内に加圧エアを導入して加圧することによって行う。この場合に、フィルタカートリッジ63内は密閉状態に保たれる。これによって、フィルタ64を通して試料液を通過させ、フィルタ64に核酸を吸着させる。フィルタ64を通過した液状部分は、フィルタカートリッジ63の下方に配置されたウェストチューブ65を介して排出する。試料液が全てフィルタ64を通過すると、圧力が液排出完了圧力以下に低下し、各圧力センサ86a、86bによって全部のフィルタカートリッジ63で抽出終了が検出される。その後、例えば、加圧ヘッド23a、23bが上昇移動して密閉状態が解除され、加圧工程を終了する。
(12)フィルタカートリッジ63に試薬(洗浄液)を液体供給ノズル21a、21bから分注する(
図30)(試薬添加工程S12)。
【0068】
<洗浄液>
「洗浄液」は、核酸と一緒にフィルタ64に付着した試料液中の不純物を洗い流す機能を有し、核酸の吸着はそのままで不純物を離脱させる組成を有する。「洗浄液」としては、例えば、主剤と緩衝剤、および必要に応じて界面活性剤を含む水溶液からなる。主剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−イソプロパノール、ブタノール、アセトン等である。また、主剤は、上記水溶液中で約10重量%以上100重量%以下、好ましくは20重量%以上100重量%以下、さらに好ましくは40重量%以上80重量%以下である。
【0069】
(13)フィルタカートリッジ63を加圧ろ過する(
図31)(加圧工程S13)。加圧ろ過は、フィルタカートリッジ63内に加圧エアを導入して加圧することによって行う。これによって、フィルタ64に核酸を保持したまま、その他の不純物の洗浄除去を行う。フィルタ64を通過した洗浄液等の液状部分は、フィルタカートリッジ63に接続されたウェストチューブ65を介して排出する。
(14)フィルタカートリッジ63に試薬(洗浄液)を液体供給ノズル21a、21bから分注する(
図32)(試薬添加工程S14)。
(15)フィルタカートリッジ63を加圧ろ過する(
図33)(加圧工程S15)。
(16)フィルタカートリッジ63に試薬(洗浄液)を液体供給ノズル21a、21bから分注する(
図34)(試薬添加工程S16)。
(17)フィルタカートリッジ63を加圧ろ過する(
図35)(加圧工程S17)。上記試薬添加工程S12と加圧工程S13と、試薬添加工程S14と加圧工程S15と、試薬添加工程S16と加圧工程S17と、の組み合わせをここでは3回繰り返している。なお、上記の例に限られず、少なくとも1組の試薬添加工程と加圧工程を行えばよい。
【0070】
(18)フィルタカートリッジ63をフィルタカートリッジラック61a、61b、61cからコレクションチューブラック62a、62b、62cに移動させる(
図13A、
図13B)。例えば、
図13Bの矢印67に示すように、フィルタカートリッジ63を上方に移動させる。次に、矢印68に示すように、フィルタカートリッジ63をコレクションチューブ66の上に横移動させる。次いで、矢印69に示すようにフィルタカートリッジ63を下方に移動させ、コレクションチューブ66の上にフィルタカートリッジ63を配置する。各フィルタカートリッジ63についても順次同様に移動させて、コレクションチューブ66の上にフィルタカートリッジ63をそれぞれ配置する。
(19)試薬容器36から試薬(回収液)を分注チップ32に吸引し(
図36(a))、フィルタカートリッジ63に分注する(
図36(b))(試薬添加工程S18)。
【0071】
<回収液>
「回収液」は、塩濃度が低いことが好ましく、特には0.5M以下の塩濃度の溶液、例えば、精製蒸留水、TEバッファ等が使用される。回収液のpHは、pH2以上pH11以下、さらには、pH5以上pH9以下であることが好ましい。
【0072】
(20)フィルタカートリッジ63を加圧ろ過する(
図37)(加圧工程S19)。加圧ろ過は、フィルタカートリッジ63内に加圧エアを導入して加圧することによって行う。回収液によってフィルタ64と核酸との結合力を弱め、フィルタ64に吸着されている核酸を離脱させ、回収液と共に、核酸をコレクションチューブ66に回収できる。その後、コレクションチューブ66は、必要に応じて蓋をしてもよい。
以上によって、核酸を含む回収液を回収できる。このコレクションチューブ66内の核酸について、次の核酸分析処理等が行われる。
【0073】
この核酸分離装置10及び核酸分離方法によれば、複数のサンプル容器42について、各サンプル容器ごとに前処理工程から核酸抽出工程まで連続して順次行われる。そこで、従来の手作業による前処理工程を行う必要がない。
【0074】
なお、この実施の形態では、複数組のサンプル容器42、処理チューブ53、フィルタカートリッジ63を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1に係る核酸分離装置10は、一組のサンプル容器42、処理チューブ53、フィルタカートリッジ63についても適用が可能である。
【0075】
さらに、この核酸分離装置10では、装置内部に紫外線を照射して殺菌するUV照射部(図示せず)を備えていてもよい。UV照射部は、装置内部を、例えばxy方向に移動しながら紫外線を照射するように構成してもよい。これによって、装置内部を清潔に保つことができる。
【0076】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。