特開2018-171671(P2018-171671A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018171671-樹脂シートの分断装置及び分断方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-171671(P2018-171671A)
(43)【公開日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】樹脂シートの分断装置及び分断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/06 20060101AFI20181012BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
   B26D1/06 Z
   B26D3/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-70134(P2017-70134)
(22)【出願日】2017年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084364
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 宜喜
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
(72)【発明者】
【氏名】栄田 光希
【テーマコード(参考)】
3C027
【Fターム(参考)】
3C027HH05
3C027HH10
3C027HH17
(57)【要約】
【課題】樹脂シートをブレイクバーを用いて分断したときに、樹脂シートがブレイクバーに付着することを防止すること。
【解決手段】下移動部材20にブレイクバー21と一対の弾性体22,23を取付ける。樹脂シートの面に垂直にブレイクバー21と一対の弾性体22,23とを下降させ、弾性体22,23を収縮させて樹脂シート33をブレイクする。ブレイク後にブレイクバー21を上昇させるときに弾性体22,23が元の状態に復帰するので、樹脂シート23がブレイクバー21に付着することを防止することができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの分断に用いられる分断装置であって、
粘着テープ上に分断の対象となる樹脂シートを保持した枠状体と、
上下動自在に保持された移動部材と、
前記移動部材の下面に垂直に保持され、下面がシートに平行に保持された板状のブレイクバーと、
前記移動部材の下面で前記ブレイクバーの両側に設けられた一対の弾性体と、
前記樹脂シートの面に対して前記移動部材を垂直に上下動させる昇降機構と、
前記ブレイクバーに対して前記枠状体が配置されたテーブルを相対的に移動させる相対移動手段と、を具備し、
前記ブレイクバーの下端から前記樹脂シートの厚み分上方の位置を基準位置とすると、前記一対の弾性体の下端は前記基準位置よりも下方にあり、前記樹脂シート上に前記ブレイクバーを降下させることによって樹脂シートを分断する樹脂シートの分断装置。
【請求項2】
前記一対の弾性体は、スポンジである請求項1記載の樹脂シートの分断装置。
【請求項3】
前記一対の弾性体は、帯電防止仕様のスポンジである請求項2記載の樹脂シートの分断装置。
【請求項4】
枠状体によって保持された粘着テープ上に樹脂シートを粘着させて保持し、
上下動自在のブレイクバーの両側に一対の弾性体を保持し、
前記枠状体上に保持した前記樹脂シートの面にブレイクバーを降下させると共に、前記一対の弾性体を収縮させ、前記ブレイクバーより前記樹脂シートを分断する樹脂シートの分断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーンシート等の樹脂シートを分断するための分断装置及び分断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には熱可塑性の樹脂シートをブレイクバーを用いて切断する分断方法及び分断装置が示されている。ここではダイシングリングに貼られた粘着テープ上に分断の対象となる樹脂シートを保持し、弾性支持板上にダイシングリングを保持して鋭角の刃先を有するブレイクバーを分断予定ラインに沿って押し下げることによって樹脂シートを分断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−188968公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに樹脂のみで形成された樹脂シート101にダイシングリングに貼られたダイシングテープ102上に保持して分断する際に、図1(a)に示すようにブレイクバー110を分断予定ラインに沿って押し下げると、ブレイクバー110が樹脂シート101に食い込み、密着してしまうことがある。そして分断を終了した後にブレイクバー110を上昇させると、図1(b)に示すように分断された樹脂シート101がダイシングテープ102から外れてブレイクバー110に付着して上昇してしまうことがあるという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであって、分断した後の樹脂シートがブレイクバーに密着してダイシングリングの粘着シートから外れることなく分断を完了することができる分断装置及び分断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の樹脂シートの分断装置は、樹脂シートの分断に用いられる分断装置であって、粘着テープ上に分断の対象となる樹脂シートを保持した枠状体と、上下動自在に保持された移動部材と、前記移動部材の下面に垂直に保持され、下面がシートに平行に保持された板状のブレイクバーと、前記移動部材の下面で前記ブレイクバーの両側に設けられた一対の弾性体と、前記樹脂シートの面に対して前記移動部材を垂直に上下動させる昇降機構と、前記ブレイクバーに対して前記枠状体が配置されたテーブルを相対的に移動させる相対移動手段と、を具備し、前記ブレイクバーの下端から前記樹脂シートの厚み分上方の位置を基準位置とすると、前記一対の弾性体の下端は前記基準位置よりも下方にあり、前記樹脂シート上に前記ブレイクバーを降下させることによって樹脂シートを分断するものである。
【0007】
ここで前記一対の弾性体は、スポンジとしてもよい。
【0008】
ここで前記一対の弾性体は、帯電防止仕様のスポンジとしてもよい。
【0009】
この課題を解決するために、本発明の樹脂シートの分断方法は、枠状体によって保持された粘着テープ上に樹脂シートを粘着させて保持し、上下動自在のブレイクバーの両側に一対の弾性体を保持し、前記枠状体上に保持した前記樹脂シートの面にブレイクバーを降下させると共に、前記一対の弾性体を収縮させ、前記ブレイクバーより前記樹脂シートを分断するものである。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、ブレイクバーの両側に弾性体を設けている。従って分断予定ラインに沿ってブレイクバーを押し下げてブレイクすると、一対の弾性体が収縮して樹脂シートを押圧する。そのため分断を終了しブレイクバーを上昇させたときに弾性体が元の状態に復帰するまで樹脂シートを粘着テープに押し付けるため、分断された樹脂シートがブレイクバーに密着することなく、樹脂シートを粘着テープ上に保持して分断を終了することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は従来の分断装置の樹脂の分断状態を示す図である。
図2図2は本発明の実施の形態による分断装置の概略斜視図である。
図3図3は下移動部材に取付けられるブレイクバーと一対の弾性体を示す斜視図である。
図4図4は下移動部材に取付けられるブレイクバーと一対の弾性体を示す側面図である。
図5図5はテーブルとその上部に保持される樹脂シートの詳細を示す斜視図である。
図6図6はテーブル上にダイシングリングを保持し、ブレイクバーを押下する前の状態を示す側面図である。
図7図7はブレイクバーを押下し分断した状態を示す側面図である。
図8図8は分断後にブレイクバーを上昇させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態による樹脂シートの分断装置10について説明する。分断装置10は、図2に示すようにx軸に平行なラインに沿って2分割され、互いにy軸の正又は負方向へ移動することが可能なテーブル11を有している。テーブル11の下方にはテーブル11をその面に沿ってy軸方向に移動させ、更にその面に沿って回転させるY軸移動機構12が設けられている。テーブル11の上部にはコ字状の水平固定部材13が設けられ、その上部にはサーボモータ14が保持されている。サーボモータ14の回転軸にはボールネジ15が直結され、ボールネジ15の下端は、別の水平固定部材16にて回転できるように支持されている。上移動部材17は中央部にボールネジ15に螺合する雌ネジ18を備え、その両端部から下方に向けて支持軸19a,19bを備えている。支持軸19a,19bは水平固定部材16の一対の貫通孔を貫通して下移動部材20に連結されている。下移動部材20の下面には後述するブレイクバーがテーブル11の面に垂直に取付けられている。こうすればサーボモータ14によりボールネジ15を回転させた場合、上移動部材17と下移動部材20とが一体となって上下動し、ブレイクバーも同時に上下動することとなる。ここでY軸移動機構12はブレイクバーとテーブルを相対的に移動させる相対移動手段を構成しており、サーボモータ14と水平固定部材13,16は上下の移動部材17,20を昇降させる昇降機構を構成している。
【0013】
さてこの実施の形態では図3に斜視図、図4に側面図を示すように、下移動部材20の下面にブレイクバー21と、その両側に一対の弾性体22,23とを取付ける。ブレイクバー21は細長い平板で先端を鋭くした金属製の刃物状の部材である。ここでこの先端部分の頂角は10°以上、好ましくは15°以上であり且つ30°以下とする。頂角が10°以下となれば欠け易く寿命が短くなり、30°以上となれば精度が低下することとなる。そしてこのブレイクバー21は鋭い先端部分が下方となるように下移動部材20の下面に長手方向に沿って垂直に取付けられる。
【0014】
弾性体22,23は下移動部材20の下面に配置され、ブレイクバー21の両側の側方に一定間隔を隔てて取付けられた直方体状の部材である。弾性体22,23は外力によって収縮し、外力がなくなれば元の状態に復帰するスポンジ等の部材とする。この弾性体22,23の下端は図4(a)に示すようにブレイクバー21の下端よりもやや低い位置となる高さとする。分断の対象となる樹脂シートが例えば電子部品の基板である場合には、電子部品に悪影響を与えないように帯電防止機能を有する弾性体、例えば帯電防止仕様のスポンジ等を用いることが好ましい。
【0015】
ここでは図4(a)に示すように左右の弾性体22,23の下面よりもブレイクバーの先端が上方になるようにしているが、図4(b)に示すようにブレイクバー21の先端が下方になるような長さのものを用いてもよい。この場合にはブレイクバーの下端L1より樹脂シートの厚さ分上方にある位置を基準位置L0とすると、一対の弾性体22,23の下端は基準位置L0より下方に位置するものとする。弾性体22,23の下端が図4(a)に示すようにブレイクバー21の下端よりもやや低い位置となる場合も、この条件を満たしている。このように弾性体22,23の高さを設定しておくことによって、ブレイクバー21の先端が樹脂シートの下面に達し樹脂シートを完全に分断したときに、弾性体22,23は圧縮されることとなる。
【0016】
図5はテーブル11の上部に保持される樹脂シートの詳細を示す斜視図、図6はその側面図である。本実施の形態では、分断の対象をシリコーン樹脂シートとし、このシートを保持するために、半導体ウエハをチップに分離する際に用いられる円環の枠状体であるダイシングリング31を使用している。図示のように、ダイシングリング31の内側には上向きに粘着材を有する粘着テープ32が貼り付けられている。この粘着テープ32は塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート等の基材の層と、その上面に粘着材の層を有する2層構造のテープである。基材層は例えば厚さを80μm、粘着材の層は20μmとし、合わせて100μmの厚さとする。そしてこの粘着テープ32の上面中央には分断の対象となる樹脂シート33、ここではシリコーン樹脂シートが貼り付けられる。本実施の形態では樹脂シート33は0.1〜1.0mmの厚さ、ここでは例えば0.1mm厚さの略正方形状のシリコーン樹脂シートとする。この樹脂シート33を1×1mm四方の多数の正方形の微小シートとなるように高精度で分断するものとする。
【0017】
本実施の形態では、シリコーン樹脂シート33を破断する際に弾性支持板40を用いる。弾性支持板40は図5に斜視図を示すようにゴム製等の弾性を有する長方形の平板であって、シリコーン樹脂シート33より1回り大きい大きさとする。弾性支持板40は例えば厚さを1mm程度とし、硬度は好ましくは80度以上、100度以下とする。ここでは1mm厚、90度の硬度の弾性支持板40を用いた。
【0018】
前述した分断装置10のテーブル11上には図5に示すように弾性支持板40を載置する。そしてテーブル11上には、弾性支持板40の上部に樹脂シート33が位置するようにダイシングリング31を配置する。そしてテーブル11の下方より図示しない真空吸着手段等で樹脂シート33を保持する。そうすれば図6に示すように粘着テープ32の下面が吸着されるため、弾性支持板40と粘着テープ32及びその上面の樹脂シート33をテーブル11上に保持することができる。
【0019】
次に樹脂シート33の分断方法について説明する。まずブレイクバー21の直下に樹脂シート33の分断予定ラインが位置するようにY軸移動機構12によりテーブル11を移動させる。このときテーブル11を2分割しておくと、その隙間からブレイクバー21の位置を確認することができる。位置確認を終えた後はテーブル11を閉じておく。
【0020】
次にサーボモータ14を駆動し、上移動部材17と下移動部材20とを同時に低下させてブレイクバー21をテーブル11に対して垂直に保ちつつ徐々に降下させる。こうすれば図7に示すように、まず弾性体22,23が樹脂シート33に接触し、押されて収縮する。更にブレイクバー21を降下させると、樹脂シート33がブレイクバー21に押されて変形し、沈み込んで弾性支持板40がV字状にわずかに変形する。そして弾性支持板40がわずかに均等に変形していくことで、ブレイクバー21に接する分断予定ラインに沿って亀裂が下方に伸展していくこととなる。そしてブレイクバー21を十分降下させることによって、樹脂内の亀裂が伸展して分断が完了することとなる。
【0021】
そして分断が完了すると、サーボモータ14を逆転させて下移動部材20を上昇させる。このとき樹脂シート33は弾性体22,23が元の状態に復帰するまで粘着テープ32の面に押し付けられていることから、ブレイクバー21の上昇に伴いブレイクバー21に付着して樹脂シート33が上昇することがなく、図8に示すように分断した樹脂シート33をそのまま粘着テープ32上に保持することができる。そしてブレイクバー21を上昇させ、樹脂シート33がブレイクバー21から離れると、一対の弾性体22,23も圧縮状態から元の状態に復帰する。
【0022】
次にY軸移動機構12により所定のピッチでテーブル11をy軸方向にわずかに移動させた後、ブレイクバー21を再び降下させ、同様にして分断を繰り返す。そしてある方向で全ての分断を終えた後、Y軸移動機構12によりテーブル11を90°回転させて同様にブレイクバー21を降下させ、弾性体22,23を変形させつつ樹脂シート33を分断する。そしてブレイクバー21を上昇させて分断を終了する。更にテーブル11をy軸方向にブレイクラインのピッチ分だけ移動させて、同様にしてブレイクバー21を降下させる。こうすれば全面の分断が完了し、格子状に樹脂シート33を分断することができる。
【0023】
尚この実施の形態では、分断の対象となる樹脂シートをシリコーン樹脂として説明しているが、他の樹脂、例えばエポキシ樹脂など1種類の樹脂のシートであってもよい。又樹脂とセラミック基板やガラス板などの脆性材料基板とを積層した積層型の樹脂シートであってもよい。
【0024】
更にこの実施の形態では、樹脂シートを枠状のダイシングリングに張った粘着テープ上に保持するようにしているが、枠状体であれば足りるので、ダイシングリングに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は分断装置を用いて樹脂シートを正確に分断することができるので、樹脂シートを精密に分断する分断装置に好適である。
【符号の説明】
【0026】
10 分断装置
11 テーブル
12 Y軸移動機構
13,16 水平固定部材
14 サーボモータ
17 上移動部材
20 下移動部材
21 ブレイクバー
22,23 弾性体
31 ダイシングリング
32 粘着テープ
33 樹脂シート
40 弾性支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8