【解決手段】フィルム成形装置は、環状の吐出口18aからチューブ状に溶融樹脂を押し出すダイと、吐出口18aから押し出される溶融樹脂の膜厚を調節する膜厚調節部2と、を備える。ダイは、吐出口18aの外周を定める外周部材14を含む。膜厚調節部2は、外周部材14の周りに設けられ、吐出口18aの径方向の幅を調節する複数の調節ユニット16と、外周部材14および複数の調節ユニット16の上方に配置され、吐出口18aから押し出された溶融樹脂に冷却風を吹き付ける冷却装置3と、冷却装置3と外周部材14との間から溶融樹脂への空気の流れ込みを抑制する閉塞部材66と、含む。
前記閉塞部材は、前記複数の調節ユニットのうちの少なくとも1つの調節ユニットによって径方向の移動が規制されることを特徴とする請求項2または3に記載のフィルム成形装置。
前記抑制手段は、前記複数の調節ユニットの下方また外周側から前記複数の調節ユニットと前記冷却装置との間に空気が流れ込まないように前記複数の調節ユニットを覆うカバーであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム成形装置。
前記カバーは、前記複数の調節ユニットを環囲し、上端が前記冷却装置に当接する円筒部と、前記円筒部の下端から径方向内側に延在し、内周側が前記ダイの外周面に固定される底部と、を含むことを特徴とする請求項6に記載のフィルム成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るフィルム成形装置1の概略構成を示す。フィルム成形装置1は、チューブ状のフィルムを成形する。フィルム成形装置1は、ダイ10と、膜厚調節部2と、一対の安定板4と、一対のピンチロール5と、厚みセンサ6と、制御装置7と、を備える。
【0012】
ダイ10は、押出機(不図示)より供給された溶融樹脂をチューブ状に成形する。ダイ10は特に、リング状のスリット18(
図2で後述)から溶融樹脂を押し出すことにより、溶融樹脂をチューブ状に成形する。膜厚調節部2は、ダイ10から押し出された溶融樹脂を、膜厚を調節しながら冷却する。溶融樹脂が冷却されると、フィルムが成形される。
【0013】
一対の安定板4は、ダイ10および膜厚調節部2の上方に配置され、成形されたフィルムを一対のピンチロール5の間に案内する。ピンチロール5は、安定板4の上方に配置され、案内されたフィルムを引っ張り上げながら扁平に折りたたむ。折りたたまれたフィルムは、巻取機(不図示)によって巻き取られる。
【0014】
厚みセンサ6は、ダイ10および膜厚調節部2と安定板4との間に配置される。厚みセンサ6は、チューブ状のフィルムの周りを周りながら、フィルムの厚みを測定する。厚みセンサ6による測定結果は制御装置7に送られる。制御装置7は、厚みセンサ6から受け付けた測定結果に応じた制御指令を膜厚調節部2に送る。膜厚調節部2は、この制御指令を受けて、厚みのばらつきが小さくなるようスリット18(特にその吐出口)の幅を調節する。
【0015】
図2は、ダイ10および膜厚調節部2を示す断面図である。
図3は、ダイ10および膜厚調節部2の上面図である。
図3では、冷却装置3の表示を省略している。また
図3では、支持部材58および閉塞部材66を半透明で示す。
【0016】
ダイ10は、ダイ本体11と、内周部材12と、外周部材14と、を含む。内周部材12は、ダイ本体11の上面に載置される略円柱状の部材である。外周部材14は、環状の部材であり、内周部材12を環囲する。内周部材12と外周部材14との間には、リング状に上下方向に延びるスリット18が形成される。このスリット18を溶融樹脂が上側に向かって流れ、スリット18の吐出口(すなわち上端開口)18aから溶融樹脂が押し出され、吐出口18aの幅に応じた厚さのフィルムが形成される。
【0017】
ダイ本体11の外周には、複数のヒータ56が装着される。また、外周部材14の下部(具体的には後述の大径部27)の外周と、外周部材14の上部(具体的には後述の小径部25)の外周にもヒータ56が装着される。ダイ本体11および外周部材14は、ヒータ56によって所要の温度に加熱される。これにより、ダイ10の内部を流れる溶融樹脂を適度な温度および溶融状態に保つことができる。
【0018】
膜厚調節部2は、冷却装置3と、複数(ここでは32個)の調節ユニット16と、支持部材58と、閉塞部材66と、を含む。
【0019】
冷却装置3は、エアーリング8と、環状の整流部材9と、を備える。エアーリング8は、内周部が下方に凹んだリング状の筐体である。エアーリング8の内周部には、上側に開口したリング状の吹出口8aが形成されている。吹出口8aは特に、中心軸Aを中心とするリング状のスリット18と同心となるよう形成される。
【0020】
なお、以降では、中心軸Aと平行な方向を軸方向とし、中心軸Aに垂直な平面上で中心軸Aを通る任意の方向を半径方向とし、径方向において中心軸Aに近い側を内周側、中心軸Aから遠い方を外周側とし、中心軸Aに垂直な平面上において中心軸Aを中心とする円の円周に沿った方向を周方向として説明する。
【0021】
エアーリング8の外周部には、複数のホース口8bが周方向に等間隔で形成されている。複数のホース口8bのそれぞれにはホース(不図示)が接続され、このホースを介してブロワー(不図示)からエアーリング8内に冷却風が送り込まれる。エアーリング8内に送り込まれた冷却風は、吹出口8aから吹き出て溶融樹脂に吹き付けられる。
【0022】
整流部材9は、吹出口8aを取り囲むようエアーリング8内に配置される。整流部材9は、エアーリング8内に送り込まれた冷却風を整流する。これにより、冷却風は、周方向において均一な流量、風速で、吹出口8aから吹き出る。
【0023】
複数の調節ユニット16は、外周部材14の上端側を囲むように周方向に例えば等間隔に配置される。調節ユニット16は特に、片持ち状に外周部材14に取り付けられる。複数の調節ユニット16はそれぞれ、外周部材14に径方向内向きの押圧荷重または径方向外向きの引張荷重を付与できる。したがって、複数の調節ユニット16を調節することによって、吐出口18aの幅を周方向で部分的に調節でき、フィルムの厚さを周方向で部分的に制御できる。フィルムに厚みのばらつきが生じている場合、例えば、肉厚が薄い部分に対応する(例えば肉厚が薄い部分の下方に位置する)調節ユニット16から外周部材14に引張荷重を付与させ、肉厚が薄い部分の下方の吐出口18aの間隙を大きくする。これにより、フィルムの厚みのばらつきが小さくなる。
【0024】
支持部材58は、断面が略矩形状の環状の部材であり、外周部材14の上部を環囲するように複数の調節ユニット16に載置され固定される。支持部材58の上方には冷却装置3が固定される。つまり支持部材58は冷却装置3を支持する。
【0025】
閉塞部材66は、環状の部材であり、エアーリング8の内周部と複数の調節ユニット16との間に設けられる。閉塞部材66の詳細な機能構成は、
図9に関連して後述する。
【0026】
図4、5は、外周部材14の上部とそれに取り付けられた調節ユニット16を示す斜視図および側面図である。
図4、5では、調節ユニット16を1つだけ示し、残りの調節ユニット16の表示を省略している。
図6、7は、調節ユニット16を示す斜視図である。
図7では、一対の支持部材30の一方を取り外した状態を示す。
【0027】
外周部材14の上部は、上端に形成された小径部25と、小径部25の下方に小径部25よりも大径に形成された中径部26と、中径部26の下方に中径部26よりも大径に形成された大径部27と、を有する。小径部25は、フレキシブルリップ部22を有する。フレキシブルリップ部22は、周方向に沿って設けられた凹状の切り欠き部20より上側の小径部25の部分をいう。フレキシブルリップ部22は、切り欠き部20を境に弾性変形する。フレキシブルリップ部22は、円筒状の本体部28と、本体部28から径方向外側に張り出す環状の張出環囲部29と、を含む。
【0028】
調節ユニット16は、外周部材14に取り付けられる一対の支持部材30と、一対の支持部材30に固定される回動軸32と、回動軸32を支点として回動可能に支持されるレバー34と、レバー34による回転力を受けて軸線方向に作動する作動ロッド36と、作動ロッド36とフレキシブルリップ部22とを軸線方向に連結する連結部材38と、作動ロッドを軸線方向に摺動可能に支持する軸受部材40と、レバー34に回転力を付与するアクチュエータ24と、を含む
【0029】
一対の支持部材30は、平板状に形成され、互いに平行となるよう外周部材14にねじ留めされる。一対の支持部材30の間には、レバー34を介在させるためのスペースが設けられる。軸受部材40は、長方体状に形成され、支持部材30の径方向内側にて外周部材14にねじ留めされる。軸受部材40には、径方向に貫通する挿通孔42が形成されている。挿通孔42の内周面がいわゆる滑り軸受(無給油タイプの軸受)を構成し、作動ロッド36を摺動可能に支持する。
【0030】
回動軸32は、その軸が水平方向を向き、かつ、径方向に略直交するよう一対の支持部材30に固定される。
【0031】
作動ロッド36は、段付円柱状に形成され、その中間部が軸受部材40の挿通孔42に挿通される。作動ロッド36の径方向外側には、縮径部44が設けられている。縮径部44は、後述するようにレバー34との連結部として機能する。作動ロッド36の径方向内側には、凹状の係合部46が設けられている。係合部46は、後述するように連結部材38との接続部として機能する。フレキシブルリップ部22の張出環囲部29の外周面(以下、「受圧面23」と呼ぶ)は、作動ロッド36の先端面と対向する。
【0032】
連結部材38は、縦断面視で二股形状に形成される。具体的には、連結部材38には、軸方向において外周部材14と対向する面に、下側に突出する係合部48,50が設けられている。係合部48は、作動ロッド36の係合部46と概ね相補形状をなす。また、フレキシブルリップ部22の張出環囲部29には、軸方向下向きに凹んだ環状の係合溝52が形成されている。係合部50は、この係合溝52と概ね相補形状をなす。
【0033】
係合部48が係合部46に、係合部50が係合溝52に係合するよう作動ロッド36と連結部材38とがねじ留めされる。係合部48と係合部46との互いの対向面はテーパ面とされている。これにより、ねじ54を締結するにつれて作動ロッド36の先端面がフレキシブルリップ部22の受圧面23に押しつけられ、作動ロッド36とフレキシブルリップ部22とがしっかりと固定される。連結部材38の係合部50と、作動ロッド36の先端部とによりフレキシブルリップ部22の一部が挟まれる。これにより、作動ロッド36がその軸線方向にフレキシブルリップ部22と接続される。
【0034】
レバー34は、径方向に延びる長尺板状の本体60を有し、その一端部が回動軸32に回動可能に支持されている。レバー34は、非作動の状態において本体60と作動ロッド36とがほぼ平行となるように設けられている。また、本体60の一端部からその本体60の軸線と直角方向に延出するように二股形状の連結部62が設けられている。すなわち、連結部62は一対の連結片64からなり、それらの間隔が作動ロッド36の縮径部44の外径よりやや大きく、それらの幅が縮径部44の長さよりもやや小さく構成されている。このような構成により、連結部62が縮径部44に嵌合する態様でレバー34と作動ロッド36とが連結される。
【0035】
なお、レバー34の回転力が作動ロッド36に直接付与される構成であれば、本実施形態に限定されない。例えば、連結部62が本体60の軸線から直角方向に延出しない構成としてもよい。本体60の軸線と連結部62の延出方向とが鋭角をなしてもよいし、あるいは鈍角をなしてもよい。また、レバー34が非作動の状態において本体60と作動ロッド36とが平行とならないようにしてもよい。
【0036】
アクチュエータ24は、本実施の形態では空圧駆動式であり、圧縮空気の給排により作動する二組のベローズ70,72およびベローズ71,73と、第1ベース75と、第1ベース75の軸方向下側に配置される第2ベース76と、4本の連結棒77と、を含む。第1ベース75と第2ベース76は、軸方向に離間して配置され、4本の連結棒77により連結される。レバー34と第1ベース75との間にベローズ70,72が配置され、レバー34と第2ベースとの間にベローズ71,73が配置されている。すなわち、レバー34の力点となる端部は、ベローズ70,72とベローズ71,73との間に挟まれるように支持される。ベローズ70,72またはベローズ71,73の一方に圧縮空気が供給されることにより、レバー34が図中時計回りまたは反時計回りに回転駆動される。
【0037】
図5では、圧縮空気の供給によりベローズ70,72に圧力が付与されベローズ70,72が伸長すると、レバー34が図中反時計回りに回動し、その回転力が作動ロッド36の軸線方向左側(すなわち径方向外側)への力に変換される。その結果、フレキシブルリップ部22に対して引っ張り荷重が付与され、対応する(すなわちその調節ユニット16の径方向内側の)スリット18の吐出口18aの部分の間隙が増大する方向に変化する。一方、圧縮空気の供給によりベローズ71,73に圧力が付与されベローズ71,73が伸長すると、レバー34が図中時計回りに回動し、その回転力が作動ロッド36の軸線方向右側(すなわち径方向内側)への力に変換される。その結果、フレキシブルリップ部22に対して押圧荷重が付与され、対応するスリット18の部分の間隙が減少する方向に変化する。
【0038】
このような空圧駆動を実現するために、第1ベース75に形成された供給路75aや第2ベース76に供給された供給路76aを介して、図示しない圧力調整装置から圧縮空気が供給される。圧力調整装置は、調節動作制御部83(後述)からの制御指令に基づいて、ベローズ70〜73内の圧力を制御する。
【0039】
図8は、調節ユニット16の動作を説明するための説明図である。
図8(A)は調節ユニット16の中立状態(ベローズ70〜73がともに非作動の状態)を示し、
図4(B)は調節ユニット16の拡開作動状態(ベローズ70,72のみが作動した状態)を示す。
【0040】
調節ユニット16によれば、レバー34の回転力が作用点Pにおいて作動ロッド36に直接付与される。すなわち、レバー34の回転力が作動ロッド36の軸線方向の力としてフレキシブルリップ部22に付与される。その際、作動ロッド36が外周部材14により安定に支持されるため、その軸線方向の力がフレキシブルリップ部22へ効率良く伝達される。その結果、内周部材12と外周部材14との間の間隙調整のための駆動力を効率的に作用させることが可能となる。
【0041】
本実施の形態では、
図8(A)に示すように、レバー34と作動ロッド36との接続点(レバー34の作用点P)と、回動軸32(レバー34の支点)とを結ぶ直線L1が、作動ロッド36の軸線L2と直交するように構成される。これにより、回動軸32を中心として作用点Pを通る仮想円Cの接線方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。
【0042】
このため、
図8(B)に示すように、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。その結果、レバー34の回転力がそのまま作動ロッド36の軸線方向の駆動力となり、力の伝達効率を最大限に高めることができる。すなわち、フレキシブルリップ部22を拡開作動させる際のアクチュエータ24の駆動力を極めて効率的に作用させることが可能となる(図中太線矢印参照)。
【0043】
図示を省略するが、調節ユニット16の狭小作動状態(ベローズ71,73のみが作動した状態)においても、
図8(B)における力の向きが逆になるだけで、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。その結果、拡開作動時と同様にレバー34の回転力がそのまま作動ロッド36の軸線方向の駆動力となり、力の伝達効率を最大限に高めることができる。すなわち、調節ユニット16によれば、スリット18の吐出口18aの間隔調整のための駆動力を効率的に作用させることが可能となる。
【0044】
なお、レバー34の回転力が作動ロッド36に直接付与される構成であれば、本実施形態に限定されない。例えば、連結部62の延出方向(回動軸32と作用点Pとを結ぶ方向)と作動ロッド36の軸線方向とが鋭角又は鈍角をなす結果、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向(便宜上「回転力作用方向」ともいう)と、作動ロッド36の軸線方向(便宜上「軸線力作用方向」ともいう)とが一致しない構成としてもよい。その場合、本体60と作動ロッド36とが平行である一方、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが鋭角又は鈍角をなすものでもよい。あるいは、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが直角をなす一方、本体60と作動ロッド36とが平行でないものでもよい。あるいは、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが鋭角又は鈍角をなし、且つ本体60と作動ロッド36とが平行でないものでもよい。また、本体60として少なくとも一部に屈曲部又は湾曲部を有するもの(軸線を必ずしも特定できない構成)を採用してもよい。
【0045】
図9は、調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図10は、実施の形態と比較すべき比較例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。比較例に係るフィルム成形装置は、閉塞部材66を有しない。
【0046】
エアーリング8の吹出口8aから上向きに冷却風が吹き上げられることにより、吹出口8aの下方の空間90、すなわちエアーリング8と溶融樹脂と複数の調節ユニット16とにより囲まれる空間90は、負圧になる。これにより、
図10の比較例では、外周部材14のフレキシブルリップ部22の本体部28とエアーリング8の内周部との間の環状の隙間84を通じてエアーリング8の下方から空間90に空気が流れ込み、溶融樹脂に吹き付けられる。具体的には、調節ユニット16の下方または/および外周側から、調節ユニット16間の複数(ここでは32)の隙間を通ってエアーリング8と複数の調節ユニット16との間の空間88に空気が流れ込み、その空間88から空間90に空気が流れ込む。調節ユニット16間の隙間は周方向に不連続であるため、空間88に流れ込む空気の風量は周方向でばらつき、したがって空間88から空間90に流れ込む空気の風量も周方向でばらつく。周方向で風量が不均一な風が溶融樹脂に吹き付けられると、溶融樹脂が固化するタイミングが周方向で不均一となり、フィルムの厚みが周方向で不均一となる。
【0047】
図9の本実施の形態では、エアーリング8の内周部と調節ユニット16との間に閉塞部材66が設けられている。閉塞部材66は、扁平な環状の部材である。言い換えると、閉塞部材66は、中央に孔が形成された薄い円板状の部材である。閉塞部材66は、好ましくは断熱性が比較的高い材料により形成される。従来では、ダイ10からの輻射熱がエアーリング8内のエアーに伝わるのを抑止するためにエアーリング8の下面8cに断熱板を貼り付けていたが、これが不要となる。あるいは、エアーリング8の下面8cに断熱板を張り付け、さらに閉塞部材66を断熱性が比較的高い材料により形成することで、ダイ10からの輻射熱がエアーリング8内のエアーに伝わるのをさらに抑止できる。閉塞部材66は、調節ユニット16の軸受部材40に載置され、ねじ留めなどにより軸受部材40に固定される。閉塞部材66は、軸受部材40に固定されることによって径方向の移動が規制される。なお、閉塞部材66は、エアーリング8の下面8cに固定されてもよい。この場合、閉塞部材66の外径をより小さくすること、すなわち閉塞部材66の全体が軸受部材40の内周側に位置するように閉塞部材66を形成することも可能である。
【0048】
閉塞部材66は隙間84を塞ぐよう構成される。言い換えると、閉塞部材66は、外周部材14および複数の調節ユニット16とエアーリング8との間から、エアーリング8の内周側を通ってエアーリング8の上方に向かう流路を塞ぐよう構成される。具体的には、閉塞部材66の下面66aが外周部材14のフレキシブルリップ部22の本体部28の上面28aに当接し、上面66bがエアーリング8の内周部の下面8cに当接する。閉塞部材66により、空間90への空気の流れ込みが抑制される。なお、閉塞部材66はフレキシブルリップ部22に当接するもののフレキシブルリップ部22に固定はされないので、フレキシブルリップ部22は調節ユニット16からの荷重を受けて弾性変形しうる。
【0049】
図11は、制御装置7の機能および構成を模式的に示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0050】
制御装置7は、保持部80と、取得部81と、決定部82と、調節動作制御部83と、を含む。取得部81は、厚みセンサ6による測定結果を取得する。保持部80は、フィルムの厚みと、調節ユニット16が外周部材14に加えるべき荷重とを対応付けて保持する。より具体的には、保持部80は、フィルムの厚みと、その厚みを有するフィルムを目標の厚みにするために調節ユニット16が外周部材14に加えるべき荷重とを対応付けて保持する。
【0051】
決定部82は、厚みのばらつきを小さくするために各調節ユニット16が外周部材14に付与すべき荷重を決定する。決定部82は特に、厚みセンサ6によって測定された厚みと保持部80とを参照して、外周部材14に付与すべき荷重を決定する。また、決定部82は、決定した荷重が外周部材14に付与されるように、調節ユニット16のベローズ70〜73の圧力をいくつに制御するかを算出する。調節動作制御部83は、ベローズ70〜73の圧力が決定部82によって算出された圧力となるよう圧力調整装置に制御指令を送る。
【0052】
以上のように構成されたフィルム成形装置1の動作を説明する。
ダイ10の吐出口18aから溶融樹脂が押し出される。冷却装置3は押し出された溶融樹脂に冷却風を吹き付ける。このとき、吹出口8aの下方の空間90は負圧になるものの、隙間84は閉塞部材66によって塞がれているため、空間90への空気の流れ込みが抑制される。制御装置7は、厚みセンサ6による測定結果によりフィルムの厚みのばらつきを把握し、その厚みのばらつきを小さくするよう膜厚調節部2の各調節ユニット16を制御する。
【0053】
以上、説明した本実施の形態に係るフィルム成形装置1によると、エアーリング8の内周部とフレキシブルリップ部22の本体部28との隙間84が閉塞部材66により塞がれる。これにより、空間90が負圧になっても、空気が空間90に流れ込むのが抑制され、フィルムの厚みを円周方向で比較的均一にできる。
【0054】
また、本実施の形態に係るフィルム成形装置1によると、閉塞部材66は、調節ユニット16の軸受部材40に固定されることによって径方向の移動が規制される。これにより、閉塞部材66の位置がずれて隙間84が開放されるのを抑止できる。
【0055】
(第2の実施の形態)
図12は、第2の実施の形態に係るフィルム成形装置の調節ユニットとその周辺を示す断面図である。本実施の形態では、膜厚調節部2は、閉塞部材66の代わりにカバー166を含む。カバー166は、断面が略L字状の環状の部材であり、円筒部166aとその下端から径方向内側に延在する環状の底部166bとを有する。円筒部166aは、ダイ10および複数の調節ユニット16を環囲する。円筒部166aの上端は、エアーリング8の外周部の下面に当接する。底部166bは、複数の調節ユニット16の下方に位置する。底部166bの内周は、外周部材14の外周面に当接する。カバー166は、例えば底部166bが、外周部材14に圧入されもしくは隙間嵌めによって接着固定される。
【0056】
本実施の形態に係るフィルム成形装置によれば、複数の調節ユニット16の下方および外周側がカバー166により覆われるため、すなわち複数の調節ユニット16の下方および外周側から複数の調節ユニット16とエアーリング8との間に向かう流路が塞がれるため、空間90が負圧になっても、複数の調節ユニット16の下方または外周側から、エアーリング8と複数の調節ユニット16との間、隙間84を通じて空間90に向かう空気の流れが生じ得ない。つまり、本実施の形態に係るフィルム成形装置によれば、周方向に風量が不均一な風が空間90に流れ込むのが抑制され、フィルムの厚みを円周方向で比較的均一にできる。
【0057】
(第3の実施の形態)
図13は、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置のダイ10および膜厚調節部2を示す断面図である。
図14は、ダイ10および膜厚調節部2の上面図である。
図14では、冷却装置3の表示を省略している。また
図14では、支持部材58および整流部形成部材67を半透明で示す。
【0058】
膜厚調節部2は、冷却装置3と、複数(ここでは32個)の調節ユニット16と、支持部材58と、整流部形成部材67と、を含む。
【0059】
支持部材58は、環状の部材であり、外周部材14の上部を環囲するように複数の調節ユニット16に載置され固定される。支持部材58の上方には冷却装置3が後述のように固定される。
【0060】
整流部形成部材67は、環状の部材であり、エアーリング8の内周部と複数の調節ユニット16との間に設けられる。整流部形成部材67の詳細な機能構成は、
図15に関連して後述する。
【0061】
図15は、エアーリング8の吹出口8aとその周辺を示す断面図である。
図16は、本実施の形態と比較すべき比較例に係るフィルム成形装置のエアーリング8の吹出口8aとその周辺を示す断面図である。比較例に係るフィルム成形装置は、本実施の形態に係るフィルム成形装置1と異なり、整流部形成部材67を備えていない。
【0062】
まず、
図16の比較例について説明する。外周部材14の中径部26の上面26aは、小径部25の上面すなわちフレキシブルリップ部22の本体部28の上面28aよりも外周側かつ下側に位置する。大径部27の上面27aは、中径部26の上面26aよりも外周側かつ下側に位置する。この中径部26の上面aおよび大径部27の上面27aと、エアーリング8の下面8cとの間には、中心軸A(
図15では不図示)を中心とした環状の隙間92が存在している。隙間92は、ダイ10の外部と空間90とに通じている。空間90は、エアーリング8の吹出口8aの下方の空間であって、エアーリング8と、外周部材14(特にフレキシブルリップ部22の本体部28)と、吐出口18aから押し出されるべき溶融樹脂とで囲まれる空間である。隙間92は、この空間90をダイ10の外部の空間に接続する流路85を構成する。
【0063】
エアーリング8の吹出口8aから上向きに冷却風が吹き上げられることにより、空間90は負圧になろうとする。これにより、外周部材14の外部から流路85を通じて空間90に空気が流れ込み、流れ込んだ空気が溶融樹脂に吹き付けられる。
【0064】
ここで、流路85(すなわち隙間92)には、複数の調節ユニット16が進入している。具体的には、調節ユニット16のレバー34、作動ロッド36、連結部材38および軸受部材をはじめとする調節ユニット16の各種構成要素が流路85に進入している。これら各種構成要素は、周方向に不連続で存在している。したがって、ダイ10の外部から流れ込んだ空気が通りうる流路85内の空間は、周方向に不均一となる。そのため、流路85を通じて空間90に流れ込む空気は、風量が周方向で不均一となる。風量が周方向で不均一な空気が溶融樹脂に吹き付けられると、溶融樹脂が固化するタイミングが周方向で不均一となり、フィルムの厚みが周方向で不均一となる。
【0065】
こうした風量が周方向で不均一な空気が空間90に流れ込まないように隙間92を塞ぐことも考えられるが、そうすると空間90が負圧になる。溶融樹脂には、その内側に、内周部材12に形成されている不図示の吹出口から溶融樹脂を膨らませるための空気が吹き付けられている。したがって、空間90が負圧になると、内側に吹き付けられている空気によって溶融樹脂がばたつくおそれがある。溶融樹脂がばたつくと、フィルムの厚みが周方向で不均一となりうる。
【0066】
続いて
図15の本実施の形態について説明する。本実施の形態では、エアーリング8の内周部と調節ユニット16との間に整流部形成部材67が設けられている。整流部形成部材67は、扁平な環状の部材である。言い換えると、整流部形成部材67は、中央に孔が形成された薄い円板状の部材である。整流部形成部材67は、内周側がフレキシブルリップ部22の本体部28の上面28aに載置され、外周側が調節ユニット16の軸受部材40に載置された状態で、ねじ留めなどにより軸受部材40に固定される。整流部形成部材67は、軸受部材40に固定されることによって径方向の移動が規制される。エアーリング8の下面8cと整流部形成部材67の上面67aが、断面形状が周方向で一様な流路である整流部78を構成する。具体的には、エアーリング8の下面8cが整流部78の上面を画定し、整流部形成部材67の上面67aが整流部78の下面を画定する。流路85内を流れる空気は、この整流部78を流れることにより整流され、風量が周方向で均一化される。
【0067】
また、本実施の形態では、支持部材58の外周面にはおねじ58cが形成されている。エアーリング8は、下側に突出した環状の突出部8dを有し、この突出部8dの内周面には支持部材58のおねじに対応するめねじ8eが形成されている。エアーリング8全体を回してエアーリング8を支持部材58に螺合することにより、エアーリング8が支持部材58に固定される。エアーリング8の螺合量を調節してエアーリング8の軸方向の高さ位置を調節するで、整流部78の軸方向の厚みを調節できる。具体的には、螺合量を多くするとエアーリング8が下がって整流部78の軸方向の厚みが薄くなり、螺合量を小さくするとエアーリング8が上がって整流部78の軸方向の厚みが厚くなる。整流部78の軸方向の厚みは、実験や知見に基づいて、所望の整流効果を得られる厚みに決定すればよい。なお、エアーリング8の軸方向の高さ位置を変えると吹出口8aの高さ位置も変わるため固化位置にも影響する。したがって、これも考慮しながら整流部78の軸方向の厚みを決定すればよい。
【0068】
以上のように構成されたフィルム成形装置の動作を説明する。
ダイ10の吐出口18aから溶融樹脂が押し出される。冷却装置3は押し出された溶融樹脂に冷却風を吹き付ける。このとき、吹出口8aの下方の空間90に外周部材14の外部から、整流部78を含む流路85を通って空気が流れ込む。制御装置7は、厚みセンサ6による測定結果によりフィルムの厚みのばらつきを把握し、その厚みのばらつきを小さくするよう膜厚調節部2の各調節ユニット16を制御する。
【0069】
以上、説明した本実施の形態に係るフィルム成形装置1によると、整流部78で整流され、風量が周方向で比較的均一になった空気が空間90に流れ込み、溶融樹脂に吹き付けられる。つまり、風量が周方向で不均一な空気が空間90に流れ込んだり、空間90が負圧になることがないため、フィルムの厚みを周方向で比較的均一にできる。
【0070】
また、本実施の形態に係るフィルム成形装置1によると、エアーリング8の支持部材58に対する螺合量を調節してエアーリング8の高さ位置を調節することで、所望の整流効果を得られるように整流部78の軸方向の厚みを調節できる。
【0071】
以上、実施の形態に係るフィルム成形装置の構成と動作ついて説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0072】
(第1の変形例)
図17は、第1の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図17は
図9に対応する。本変形例では、閉塞部材66は、実施の形態よりも外径が大きく形成されており、軸受部材40よりも径方向外側に位置する支持部材58にまで達している。閉塞部材66は、支持部材58に載置され、ねじ留めなどにより支持部材58に固定される。支持部材58は、その上面58aから上側に突出する環状の突出部58bを有する。閉塞部材66は、突出部58bにより径方向の移動が規制される。本変形例に係るフィルム成形装置によれば、第1の実施の形態に係るフィルム成形装置1によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0073】
(第2の変形例)
図18は、第2の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図18は
図9に対応する。本変形例では、閉塞部材66は、第1部分66cと、第2部分66dと、を含む。第1部分66cは、第1の実施の形態や第1の変形例の閉塞部材66に対応する。第2部分66dは、内周側が開放された概ね横向きのU字状の断面形状を有する環状の部材である。第2部分66dは、複数の調節ユニット16を収容し、内周側の開放部分がエアーリング8および外周部材14によって塞がれるようにエアーリング8および外周部材14に固定される。支持部材58は、閉塞部材66と一体に形成されている。もちろん、支持部材58は閉塞部材66と別体として形成されてもよい。
【0074】
本変形例に係るフィルム成形装置によれば、第1の実施の形態に係るフィルム成形装置1によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例に係るフィルム成形装置によれば、調節ユニット16間の複数の不連続な隙間が閉塞部材66の第2部分66dにより覆われる。これにより、それら不連続な隙間を通る空気の流れ、すなわち周方向で風量が不均一な空気の流れがそもそも生じ得ない。したがって、本変形例によれば、風量が円周方向に不均一な空気が空間90に流れ込むのをより確実に抑制できる。
【0075】
(第3の変形例)
図19は、第3の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図19は
図9に対応する。本変形例では、閉塞部材66は、上側ほど径が大きくなるように形成された蛇腹状の伸縮部材であり、上端がエアーリング8の内周部に固定され、下端がフレキシブルリップ部22の本体部28に固定される。閉塞部材66が伸縮するため、閉塞部材66をフレキシブルリップ部22に固定しても、フレキシブルリップ部22は弾性変形しうる。本変形例によれば、閉塞部材66がエアーリング8とフレキシブルリップ部22とに固定されるため、隙間84を確実に塞ぐことができる。
【0076】
(第4の変形例)
図20は、第4の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図20は
図2に対応する。
図21は、
図20の調節ユニットの構成を示す部分拡大断面図である。
図20は
図8(A)に対応する。本変形例では、連結部62の延出方向(回動軸32と作用点Pとを結ぶ方向)と本体60の軸線とが鈍角をなし、レバー34が非作動の状態において本体60の軸線と作動ロッド36の軸線とは非平行となる。アクチュエータの回転力に基づき外周部材14に荷重を付与しているため、このように本体60の軸線と作動ロッド36の軸線とが非平行な構成が可能となる。この場合、調節ユニット16の配置自由度が向上する。
【0077】
(第5の変形例)
図22は、第5の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図22は
図2に対応する。
図23は、
図22の調節ユニット16の構成を示す部分拡大断面図である。
図23は
図8(A)に対応する。本変形例では、調節ユニット16は、軸方向上側に向かって外周部材14に荷重を付与するよう配置される。本変形例に係るフィルム成形装置によれば、各実施の形態に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0078】
(第6の変形例)
図24は、第6の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図24は、
図18および
図22に対応する。すなわち、本変形例は、
図22の第5の変形例のダイ10および調節ユニット16の構成に、
図18の第2の変形例の閉塞部材66を適用した構成である。本変形例によれば、第2の変形例に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0079】
(第7の変形例)
図25は、第7の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニット16とその周辺を示す断面図である。
図25は、
図12および
図20に対応する。すなわち。本変形例は、
図20の第4の変形例のダイ10および調節ユニット16の構成に、
図12の第2の実施の形態のカバー166を適用した構成である。本変形例によれば、第2の実施の形態に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0080】
(第8の変形例)
第1の実施の形態の閉塞部材66を設ける代わりに、複数の調節ユニット16の軸受部材40間に隙間ができないようにシールした上で、複数の軸受部材40の上面をエアーリング8の下面8cに当接させるようにしてもよい。なお、軸受部材40間の隙間をシールする代わりに、複数の軸受部材40を、複数の軸受部材40が一体となったような形状を有する円環状の軸受部材に交換してもよい。本変形例によれば、第1の実施の形態に係るフィルム成形装置1によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0081】
(第9の変形例)
第1の実施の形態および第4の変形例では、閉塞部材66が軸受部材40によって径方向の移動が規制される場合について説明したが、これに限られず、閉塞部材66は調節ユニット16の他の部材によって径方向の移動が規制されてもよい。また、閉塞部材66は、軸受部材40や調節ユニット16の他の部材に固定されずに、その外周が軸受部材40や調節ユニット16の他の部材に突き当たるように構成されることによって径方向の移動が規制されてもよい。
【0082】
(第10の変形例)
図26は、第10の変形例に係るフィルム成形装置の調節ユニットとその周辺を示す断面図である。
図26は、
図9に対応する。本変形例では、フレキシブルリップ部22の本体部28は、その上端外縁に、下側に凹んだ環状の凹部94が形成されている。一例としては、小径部25の厚みは基本的には6.5mmとされ、小径部25のフレキシブルリップ部22の本体部28のうちの径方向外側に凹部94が形成された部分の厚みは4.5mmとされる。
【0083】
閉塞部材66は、内径が、凹部94の底面94aの内径(本体部28の上面28aの外径)よりも大きく、底面94aの外径よりも小さく形成されている。閉塞部材66は、下面66aの内周側端部が凹部94の底面94aに当接(載置)し、
図17の例と同様に下面66aの外周側端部が支持部材58に当接(載置)するよう設けられている。
【0084】
外周部材14の本体部28および閉塞部材66は、所定の基準面に対する閉塞部材66の上面66bの高さが、当該基準面に対する本体部28の上面28aの高さ以下となるよう構成されている。図示の例では、閉塞部材66の上面66bの高さと本体部28の上面28aと高さが同じになっている。
【0085】
ところで、本体部28の上面28aや閉塞部材66の上面66bに樹脂が固着することがある。例えばフィルムの成形を停止するべくダイ10からの溶融樹脂の供給を止めるときに、瞬時にその供給が止まらずに本体部28の上面28aや閉塞部材66の上面66bに流れて固着する。本体部28の上面28aに樹脂が固着したままにすると、次回、フィルムを成形するとき、フィルムに筋ができるなどの問題が生じうる。そのため、フィルムの成形を再開する前に、上面28aに固着した樹脂を除去する掃除を実施する。具体的には、ヘラやスクレーパーなどの用具で本体部28の上面28aに固着した樹脂を刮ぎ落とす。このとき、閉塞部材66が本体部28よりも上側に突出していると、その作業を実施しにくい。
【0086】
これに対し、本変形例では、上述のように閉塞部材66の上面66bの高さが本体部28の上面28aの高さ以下となるため、そうではない場合と比べて本体部28の上面28aに固着した樹脂を除去しやすい。また、図示のように閉塞部材66の上面66bと本体部28の上面28aが同じ高さの場合、本体部28の上面28aと一緒に、閉塞部材66の上面66bに固着した樹脂も除去できる。
【0087】
閉塞部材66は、調節ユニット16等が組み付けられた外周部材14を内周部材12を環囲するように組み付け、外周部材14を内周部材12に対して位置決めした後に、下面66aの内周側端部が凹部94の底面94aに当接し、下面66aの外周側端部が支持部材58に当接するように組み付けられる。閉塞部材66は、フレキシブルリップ部22の弾性変形を阻害しないように、内周面が全周にわたって本体部28と非接触となるように外周部材14に対して位置決めされる。
図26では、閉塞部材66の内周面と本体部28とが当接しているように描いているが、実際は、それらの間に例えば数ミリ以下の隙間がある。例えば、閉塞部材66が固定されていない状態で、制御装置7がすべての調節ユニット16を、外周部材14に径方向外向きの引張荷重を付与するように動作させることにより、閉塞部材66を位置決めしてもよい。なお、閉塞部材66は、外周部材14を内周部材12に組み付ける前に、外周部材14に対して組み付けられ、外周部材14に対して位置決めされてもよい。
【0088】
閉塞部材66を外周部材14に対して位置決めしたあと、閉塞部材66をねじ留めなどにより例えば軸受部材40または/および支持部材58に固定してもよい。この場合、閉塞部材66に固着した樹脂を用具で除去するときに、樹脂ごと閉塞部材66が浮き上がるなどして閉塞部材66の位置がずれるのを抑止できる。
【0089】
(第11の変形例)
図27は、第11の変形例に係るフィルム成形装置の吹出口とその周辺を示す断面図である。第11の変形例に係るフィルム成形装置は、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置と異なり、整流部形成部材67を備えていない。
【0090】
本変形例では、軸受部材40は、径方向の幅が比較的厚くなるよう形成されている。そして、軸受部材40の上面40aとエアーリング8の下面8cとが、整流部78を構成する。具体的には、エアーリング8の下面8cが整流部78の上面を画定し、軸受部材40の上面40aが整流部78の下面を画定する。なお、軸受部材40の径方向の幅は、所望の整流効果が得られる幅に設定されればよい。また、各調節ユニット16の軸受部材40は、望ましくは、ほぼ隙間なく周方向に隣接するよう形成される。
【0091】
本変形例によれば、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例によれば、整流部形成部材67が不要になり、部品点数が減る。なお、軸受部材40以外の調節ユニット16の構成部品が整流部78の下面を画定するよう構成されてもよい。この場合も、整流部形成部材67が不要になり、部品点数が減る。
【0092】
(第12の変形例)
図28は、第12の変形例に係るフィルム成形装置の吹出口とその周辺を示す断面図である。第12の変形例に係るフィルム成形装置は、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置と異なり、整流部形成部材67を備えていない。
【0093】
本変形例のフィルム成形装置は、吐出口18aの径方向の幅を調節する機能を有しない。具体的には、膜厚調節部2は、冷却装置3と、支持部材58と、を含み、調節ユニット16を含まない。また、外周部材14は、径方向の幅が比較的厚く形成される。本変形例では、エアーリング8の下面8cと、外周部材14の上面14aとが整流部78を画定する。
【0094】
外周部材14の外周側には、軸方向下向きに凹んだ環状の凹部14bが形成されている。支持部材58は、この凹部14bの底面に載置されている。凹部14bの底面には上向きに突出した突出部14cが形成されている。支持部材58は、突出部14cにより径方向の移動が規制されている。支持部材58には、径方向に貫通する複数の貫通穴58dが形成されており、この貫通穴58dを通って外周部材14の外側の空気が流路85内に流れ込む。
【0095】
なお、支持部材58は、外周部材14と一体に形成されてもよい。つまり、支持部材58は外周部材14の一部であってもよい。
【0096】
本変形例によれば、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0097】
(第13の変形例)
図29は、第13の変形例に係るフィルム成形装置の吹出口とその周辺を示す断面図である。
図29は
図25に対応する。
図29の調節ユニット16は、
図21の調節ユニットと同様に構成される。
【0098】
(第14の変形例)
図30は、第14の変形例に係るフィルム成形装置の吹出口とその周辺を示す断面図である。
図30は
図25に対応する。
図30の調節ユニット16は、
図23の各調節ユニットと同様に構成される。本変形例では、整流部形成部材67は、第3の実施の形態よりも外径が大きく形成されており、支持部材58にまで達している。整流部形成部材67は、支持部材58に載置され、ねじ留めなどにより支持部材58に固定される。整流部形成部材67には軸方向に貫通する複数の貫通穴67bが周方向に並ぶように形成されている。ダイ10の外部の空気は、この貫通穴67bを通じて流路85に流れ込む。本変形例では、貫通穴67bよりも内周側の整流部形成部材67の部分と、エアーリング8の下面8cとにより整流部78が形成される。本変形例に係るフィルム成形装置によれば、第3の実施の形態に係るフィルム成形装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0099】
(第15の変形例)
第3の実施の形態および上述の第11〜第14の変形例では特に言及しなかったが、不図示のホースを介して不図示のブロワーから流路85内に空気を送り込んでもよい。なお、固化位置に影響しないように、温風を送り込んでもよい。本変形例によれば、空間90の圧力を所望の圧力に維持して溶融樹脂を安定させることができる。
【0100】
(第16の変形例)
第3の実施の形態では、エアーリング8の支持部材58に対する螺合量を調節することによって整流部78の軸方向の厚みを調節する場合について説明したが、これに限られない。例えば、整流部形成部材67を、軸方向の厚みが異なるものに交換することによって整流部78の軸方向の厚みが調節されてもよい。
【0101】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。例えば請求項に記載の抑制手段は、閉塞部材66またはカバー166により実現されてもよい。