【実施例】
【0044】
以下のとおりに、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンの組み合わせによる、精子の運動能力向上作用及びメタボリックシンドローム改善作用を通じた妊娠サポート効果を評価した。
【0045】
[1.精子の運動能力向上作用]
(1)被験物質
レスベラトロール(「ヴィネアトロール(登録商標)20M」;アクティケム社)、還元型コエンザイムQ10(「カネカQH(登録商標)」;カネカ社」)及びリコピン(「Lyc−O−MATO(登録商標)6%」;サンブライト株式会社)を質量比1:1:1で混合したものをCB−1と呼ぶこととした。
【0046】
CB−1をDMSOにて溶解し、1mg/mLのCB−1溶液を得た。1mg/mLのCB−1溶液をHTF培地(九動株式会社)にて、1.0、3.3及び10μg/mLに希釈し調製したものを被験物質とした。調製した被験物質は、後述する精子懸濁液と等量添加することで、最終濃度として0.5、1.7及び5.0μg/mLとした。なお、ControlにはHTF培地を用いた。
【0047】
(2)被験動物
12週齢の雄性ICR系マウス(日本エスエルシー株式会社)を6日間馴化させた。飼育環境として、照明時間は12時間とし、ケージは木材チップ(ソフトチップ;日本エスエルシー株式会社)を床じきとしたポリカーボネイト製平底ケージ(W182×L260×H128mm;日本クレア株式会社)を用いた。
【0048】
馴化期間において、給餌方法は原則として自由摂取とした。馴化時の飼料はMF固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)を用い、飲水は水道水を用いた。
【0049】
(3)試験手順
馴化期間終了後の13週齢の被験動物3匹を頸椎脱臼により安楽死させ、精巣上体尾部を摘出し、精子を採取した。採取した精子をHTF培地で37℃、5% CO
2インキュベーター内で30分間培養した。
【0050】
採取した精子を被験物質100μLが入った96wellプレートに1.2×10
5cells/wellとなるように100μLを播種し、37℃、5% CO
2インキュベーター内で1時間培養した。
【0051】
培養後、HTF培地で1回洗浄し、HTF培地で100倍希釈したCell counting kit−8溶液(株式会社同仁化学研究所)を添加した。37℃、5% CO
2インキュベーター内で適度に発色させた後、Varioskan(Thermo Scientific)を用いて450nmにおける吸光度を測定した。得られたデータをもとに、下記の式を用いてミトコンドリア活性(% of Control)を算出した。
% of Control=(Data sample
*1−Data blank
*2)/(Data Control
*3−Data blank)×100
*1:各被験物質で培養した際の吸光度
*2:HTF培地の吸光度
*3:HTF培地で培養した際の吸光度
【0052】
(4)統計処理
得られた値は、各群で平均値(mean)、標準偏差(S.D.)を算出した。得られた値に対してControlとの対応のないt検定を行った。有意水準は危険率5%とした。
【0053】
(5)結果
1時間培養後の精子ミトコンドリア活性を表1及び
図1に示す。これらの図表が示すように、Control(培地のみ)と比較して、CB−1を添加することで用量依存的にミトコンドリア活性が上昇した。特にCB−1 5μg/mLで精子を培養することでミトコンドリア活性が有意に上昇した。
【0054】
【表1】
【0055】
上記結果より、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンを含む組成物は、精子のミトコンドリア活性作用を通じて、精子の運動能力向上作用を有することがわかった。また、このことより、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンを含む組成物は、精子の運動能力向上作用を通じて、妊娠サポート効果を発揮し得ることが示された。
【0056】
[2.メタボリックシンドローム改善作用]
(1)被験物質
レスベラトロール(「ヴィネアトロール(登録商標)20M」;アクティケム社)、還元型コエンザイムQ10(「カネカQH(登録商標)」;カネカ社)及びリコピン(「Lyc−O−MATO(登録商標)6%」;サンブライト株式会社)を質量比1:1:1で混合したものをCB−1と呼ぶこととした。
【0057】
(2)被験飼料
下記表2に示す試験群に対応する被験飼料について、主飼料及び被験物質を乳鉢及び乳棒を用いて各成分が均一になるように混合することにより調製した。なお、主飼料について、普通飼料としてはMF固形飼料(オリエンタル酵母工業社)を用い、高脂肪飼料(high fat diet)としてはD12492(Resaerch diet,inc.)を用いた。
【0058】
【表2】
【0059】
なお、試験群3及び4の被験飼料は、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンの各成分を、それぞれ0.5質量%及び1.0質量%で含有する。
【0060】
(3)被験動物
7週齢の雄性C57BL/6J系マウス(日本エスエルシー株式会社)を5〜6日間馴化させた。飼育環境として、照明時間は12時間とし、馴化期間は木材チップ(ソフトチップ;日本エスエルシー株式会社)を床じきとしたポリカーボネイト製平底ケージ(W182×L260×H128mm;日本クレア株式会社)を用いた。また、試験期間はステンレス製5連ケージ(W150×L210×H128mm、トキワ株式会社)を用いた。収容個体数は、前者が1ケージあたり3匹、後者が1区間あたり1匹とした。
【0061】
馴化期間において、給餌方法は原則として自由摂取とした。馴化時の飼料はMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)を用い、飲水は水道水を用いた。
【0062】
馴化期間終了後に健常な被験動物は、体重がほぼ均一となるように表2に示す4群に10匹ずつ分けて、8週齢にて試験に供した。
【0063】
(4)試験手順
馴化期間終了後に群分けされた8週齢の被験動物について、試験開始日より各試験群に対応した被験飼料を、混餌投与により6週間摂取させた。給餌器はローデンカフェ(オリエンタル酵母工業株式会社)を用いた。
【0064】
給餌開始42日目(6週間後)に解剖を行った。解剖はペントバルビタールナトリウム(ソムノペンチル(登録商標))麻酔下で行い、開腹後、下大静脈より全採血した。また、生理食塩水を全身へ潅流させた後、内臓脂肪及び肝臓を採取し、各種測定項目について評価した。
【0065】
(5)測定項目
(5−1)体重測定
動物はかり(DH−R1500N:新光電子株式会社)を使用し、動物入荷日、試験開始日及び試験期間は週1回測定した。
【0066】
(5−2)摂餌量及び摂食効率測定
動物はかりを使用し、摂餌量を測定した。原則として週2回測定した。摂餌量は、給餌前後の給餌器重量(ローデンカフェを含む)の差し引き、及び食べこぼし量より算出した。摂食効率はカロリー換算した摂食量(普通食:359kcal/100g、高脂肪食:524kcal/100g)あたりの体重増加量で算出した。
【0067】
(5−3)解剖:採血
摂食下のマウスをペントバルビタールナトリウム(ソムノペンチル(登録商標))麻酔下(腹腔内投与)で開腹した。あらかじめヘパリンを50μL(200U/mL)入れた1mLシリンジと針23G 1・1/4針で下大静脈より全採血後に左心室から生理食塩水を潅流した。得られた血液を8000rpm、4℃で20分間遠心し、血漿を採取した後、測定するまで−30℃で凍結保存した。
【0068】
(5−4)解剖:臓器採取
肝臓及び内臓脂肪(白色脂肪:腸間膜、精巣周囲、腎周囲、後腹膜)を摘出した。水分を拭った後にそれぞれ重量を測定した。重量測定後、液体窒素で凍結し、−30℃にて冷凍保存した。また、病理評価用組織として、肝臓を10%中性緩衝ホルマリン液で固定した。
【0069】
(5−5)血液測定
下記に示す血液性状を測定した。
グルタチオン(GSH)濃度:採取した血漿を用いて、Glutathione Assay Kit(Cayman Chemical Company)にて測定した。
マロンジアルデヒド(MDA)濃度:採取した血漿を用いて、TBARS Assay Kit(Cayman Chemical Company)にて測定した。
トリグリセライド(TG)濃度:採取した血漿を用いて、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)にて測定した。
【0070】
(5−6)肝臓中TG濃度
冷凍保存した肝臓を解凍して秤量し、ホモジナイズした後、Folch法に準じて肝臓中の脂質を抽出した。得られた脂質抽出液を用いて、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)にてTG濃度を測定した。
【0071】
(5−7)肝臓中脂質代謝関連遺伝子(ACO、MCAD、Cpt1a)発現評価
冷凍保存した肝臓を解凍し、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit(株式会社キアゲン)にて各臓器のRNAを回収した。その後、RNAはReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡株式会社)を用いて逆転写を行い、各種遺伝子に対応するプライマー及びQuantiNova SYBER Green PCR Kit(株式会社キアゲン)を用いてリアルタイムPCRで発現量の測定を行った。解析は相対定量により行い、ACTB(アクチンβ遺伝子)を内部標準として遺伝子発現量を補正した。使用したプライマーを表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
(6)統計処理
得られた値は、各群で平均値(mean)、標準偏差(S.D.)を算出した。HFD群と比較し、他の群に対して一元配置分散分析を行い、有意な差が認められた場合にはDunnett検定による多重比較を行った。有意水準は危険率5%とした。
【0074】
(7)結果
各測定項目の結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
図2に、試験期間中の体重、体重増加量、総摂餌量及び摂食効率の測定結果を示す。普通食群と比較して、HFD群は体重が有意に増加し、HFD+3%CB−1群はHFD群と比較して有意に体重の増加が抑制されていた。また、総摂餌量はHFDの摂取により低下していたが、HFD群、HFD+1.5%CB−1群及びHFD+3%CB−1群の群間で総摂餌量に有意な差はなかった。この結果より、CB−1を混餌することにより、食欲を減退させずに体重増加を抑制できることがわかった。
【0077】
図3に、内臓脂肪重量の測定結果を示す。腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪、腎周囲脂肪及び後腹膜脂肪の全ての脂肪重量が普通食群に比べてHFD群で有意に増加しており、白色脂肪全重量もまた普通食群に比べてHFD群は有意に増加していた。また、HFD群に比べHFD+3%CB−1群は有意に白色脂肪重量が減少していた。この結果より、CB−1を混餌することにより、被験体の白色脂肪重量を減少できることがわかった。
【0078】
図4に、血中TG濃度の測定結果を示す。血中TG濃度はHFD群と比較し、HFD+3%CB−1群で有意に減少していた。この結果より、CB−1を混餌することにより、被験体の血中TG濃度を減少できることがわかった。
【0079】
図5に、血中酸化及び抗酸化マーカーの測定結果を示す。酸化マーカーであるMDA濃度はHFD群で有意に増加していた。また、HFD+3%CB−1群はHFD群に比べ有意にMDA濃度が減少していた。抗酸化マーカーである血中GSH濃度は普通食群と比べHFD群で有意に減少し、HFD+1.5%CB−1群及びHFD+3%CB−1群ではHFD群に比べ、GSH濃度の減少が有意に抑制されていた。この結果より、CB−1を混餌することにより、血中酸化及び抗酸化マーカーを改善することがわかった。
【0080】
図6に、肝臓重量及び肝臓中TG濃度の測定結果を示す。肝臓重量は各群有意な差はなかった。一方、脂肪肝の指標である肝臓中TG濃度は普通食群に比べHFD群で有意に増加し、HFD+3%CB−1群はHFD群に比べ肝臓中TG濃度が有意に減少していた。この結果より、CB−1を混餌することにより、肝臓中TG濃度を減少せしめることがわかった。
【0081】
図7に、肝臓中の脂質代謝関連遺伝子の相対発現量の測定結果を示す。脂肪酸代謝(分解)関連遺伝子であるACO、MCAD及びCpt1aのうち、ACO発現量はHFD群に比べ、HFD+3%CB−1群で有意に高く、Cpt1a発現量はHFD群に比べ、HFD+1.5%CB−1群及びHFD+3%CB−1群で有意に高かった。これらの結果より、CB−1を混餌することにより、肝臓中の脂質代謝関連遺伝子の発現量を増加せしめ、肝臓での脂質分解を促進することが示唆された。
【0082】
以上の結果から、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンを含む組成物は、体重の増加抑制作用、肝臓脂肪の増加抑制作用、内臓脂肪の増加抑制作用、血中中性脂肪値の低下作用及び肝臓中性脂肪値の低下作用を通じて、肥満症などのメタボリックシンドロームの改善作用を有することがわかった。また、このことより、レスベラトロール、還元型コエンザイムQ10及びリコピンを含む組成物は、メタボリックシンドローム改善作用を通じて、妊娠サポート効果を発揮し得ることが示された。