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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-173044(P2018-173044A)
(43)【公開日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/10 20060101AFI20181012BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20181012BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20181012BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
   F01P11/10 K
   F01P5/04 G
   F01P5/06 510
   F02D29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-72365(P2017-72365)
(22)【出願日】2017年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔己
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA08
3G093BA04
3G093DA01
3G093DB10
(57)【要約】
【課題】冷却ファンの風によって、ラジエータ周辺に付着した塵埃をしっかりと取り除くための時間を確保することが可能な作業機が要望されている。
【解決手段】エンジン冷却水の放熱を行うラジエータと、ラジエータを冷却する冷却ファンと、冷却ファンの風向きを、ラジエータに冷却風が供給される正流状態と、正流状態とは逆向きの逆流状態とに切り替える切り替え機構と、冷却ファンの風向きが正流状態と逆流状態とに順次切り替わり、かつ、正流状態が逆流状態よりも長い時間行われる交互モード、及び逆流状態が継続して行われる逆流モードを選択する選択部と、が備えられている作業機。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン冷却水の放熱を行うラジエータと、
前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンの風向きを、前記ラジエータに冷却風が供給される正流状態と、前記正流状態とは逆向きの逆流状態とに切り替える切り替え機構と、
前記冷却ファンの風向きが前記正流状態と前記逆流状態とに順次切り替わり、かつ、前記正流状態が前記逆流状態よりも長い時間行われる交互モード、及び前記逆流状態が継続して行われる逆流モードを選択する選択部と、が備えられている作業機。
【請求項2】
機体の状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、機体の状態が特定条件を満たすか否かを判定する判定部と、が備えられ、
前記選択部は、前記判定部によって機体の状態が前記特定条件を満たしていると判定された場合、自動的に前記逆流モードを選択する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
エンジン駆動力によって駆動される作業装置と、
前記作業装置にエンジン駆動力を伝達する入状態と、前記作業装置へのエンジン駆動力を遮断する切状態とに切り替え可能な作業クラッチと、が備えられ、
前記特定条件は、エンジン回転数が一定回転数以下で、かつ、前記作業クラッチが前記入状態に設定されている請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記選択部は、前記正流状態において、エンジン回転数が前記一定回転数以下の場合に、前記作業クラッチが前記切状態から前記入状態に切り替わると、すぐさま前記逆流モードを選択する請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記選択部は、前記正流状態において、エンジン回転数が前記一定回転数以下の場合に、前記作業クラッチが前記切状態から前記入状態に切り替わると、前記作業クラッチが前記入状態に切り替わった時から一定時間が経過した時に、前記逆流モードを選択する請求項3に記載の作業機。
【請求項6】
前記交互モードは、エンジン回転数が前記一定回転数よりも高く、かつ、前記作業クラッチが前記入状態である場合に選択され、
前記選択部は、前記交互モード中において、エンジン回転数が前記一定回転数以下に低下した場合、前記正流状態であれば、前記交互モードにおける次の前記逆流状態に切り替わる時に前記逆流モードを選択し、前記逆流状態であれば、前記交互モードにおける前記逆流状態を継続することで、前記逆流モードに移行させる請求項3から5の何れか一項に記載の作業機。
【請求項7】
前記選択部は、前記逆流モード中において、前記作業クラッチが前記切状態に切り替わることにより前記特定条件が満たされなくなった場合は、前記正流状態が継続して行われる正流モードに移行させ、エンジン回転数が前記一定回転数を超過することにより前記特定条件が満たされなくなった場合は、前記交互モードに移行させる請求項3から6の何れか一項に記載の作業機。
【請求項8】
前記作業装置は、エンジン回転数が一定回転数よりも高い特定回転数以上の回転数領域において、通常作動するように構成され、
前記作業クラッチが前記入状態で、かつ、エンジン回転数が前記特定回転数よりも低い場合に、警報を行う警報装置が備えられている請求項3から7の何れか一項に記載の作業機。
【請求項9】
人為操作によって、前記交互モードを選択する交互指令、及び前記逆流モードを選択する逆流指令を出力可能な操作部が備えられ、
前記選択部は、前記操作部によって出力された指令に基づいて、前記交互モード及び前記逆流モードを選択する請求項1に記載の作業機。
【請求項10】
前記選択部は、前記正流状態において、前記逆流指令を受けると、すぐさま前記逆流モードを選択する請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記選択部は、前記正流状態において、前記逆流指令を受けると、前記逆流指令を受けた時から一定時間が経過した時に、前記逆流モードを選択する請求項9に記載の作業機。
【請求項12】
前記選択部は、前記逆流モード中に前記交互指令を受けた場合、前記正流状態で前記交互モードに移行させる請求項9から11の何れか一項に記載の作業機。
【請求項13】
前記選択部は、前記逆流モード中に前記交互指令を受けた場合、前記逆流状態で前記交互モードに移行させる請求項9から11の何れか一項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機として、エンジン冷却水の放熱を行うラジエータと、ラジエータを冷却する冷却ファンと、冷却ファンの風向きを、ラジエータに冷却風が供給される正流状態と、正流状態とは逆向きの逆流状態とに切り替える切り替え機構と、を備えている作業機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の作業機には、ファンを冷却用の正転方向に回転駆動する正転状態と除塵用の逆転方向に回転駆動する逆転状態とに切り換え可能な回転状態切換機構が備えられている。特許文献1に記載の作業機では、ファンを正転駆動する正転状態に切り換え、その後、正転用設定時間が経過すると、ファンを逆転駆動する逆転状態に切り換える。そして、逆転状態に切り換えてから逆転用設定時間が経過すると、再度、正転状態に切り換える。このような正転状態と逆転状態とに切り換える動作を繰り返して、設定時間間隔おきにファンを逆転駆動させて、防塵網に付着した塵埃を吹き飛ばす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−57809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業機では、冷却ファンの風向きが逆流状態となる時間が僅かしかない。このため、冷却ファンの風によって、ラジエータ周辺に付着した塵埃を十分に取り除くことが難しい。
【0006】
上記状況に鑑み、冷却ファンの風によって、ラジエータ周辺に付着した塵埃をしっかりと取り除くための時間を確保することが可能な作業機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、
エンジン冷却水の放熱を行うラジエータと、
前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンの風向きを、前記ラジエータに冷却風が供給される正流状態と、前記正流状態とは逆向きの逆流状態とに切り替える切り替え機構と、
前記冷却ファンの風向きが前記正流状態と前記逆流状態とに順次切り替わり、かつ、前記正流状態が前記逆流状態よりも長い時間行われる交互モード、及び前記逆流状態が継続して行われる逆流モードを選択する選択部と、が備えられていることにある。
【0008】
本特徴構成によれば、交互モードでは、冷却ファンの風向きが正流状態と逆流状態とに順次切り替わり、かつ、正流状態が逆流状態よりも長い時間行われる。したがって、交互モードが選択された場合は、ラジエータを効果的に冷却すると共に、冷却ファンの風によって、ラジエータ周辺に付着した塵埃をある程度取り除くことができる。一方、逆流モードが選択された場合は、冷却ファンの風が逆流状態で継続して流れる。これにより、選択部によって逆流モードを選択すれば、冷却ファンの風向きを必要な時間ずっと逆流状態とすることができる。この結果、冷却ファンの風によって、ラジエータ周辺に付着した塵埃をしっかりと取り除くための時間を確保することができる。
【0009】
さらに、本発明において、
機体の状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、機体の状態が特定条件を満たすか否かを判定する判定部と、が備えられ、
前記選択部は、前記判定部によって機体の状態が前記特定条件を満たしていると判定された場合、自動的に前記逆流モードを選択すると好適である。
【0010】
本特徴構成によれば、特定条件として、逆流状態が継続して行われるのに適した条件を設定することにより、逆流モードを適切なタイミングで選択することができる。
【0011】
さらに、本発明において、
エンジン駆動力によって駆動される作業装置と、
前記作業装置にエンジン駆動力を伝達する入状態と、前記作業装置へのエンジン駆動力を遮断する切状態とに切り替え可能な作業クラッチと、が備えられ、
前記特定条件は、エンジン回転数が一定回転数以下で、かつ、前記作業クラッチが前記入状態に設定されていると好適である。
【0012】
本特徴構成によれば、作業者が作業クラッチを入状態に切り替えたことをもって、作業者に逆流モードを選択する意思があることを確認することができる。すなわち、本特徴構成によれば、作業者に逆流モードを選択する意思があることを確認した上で、エンジン回転数が一定回転数以下というエンジン冷却水が比較的低温の状況下において、逆流モードを適切なタイミングで選択することができる。
【0013】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記正流状態において、エンジン回転数が前記一定回転数以下の場合に、前記作業クラッチが前記切状態から前記入状態に切り替わると、すぐさま前記逆流モードを選択すると好適である。
【0014】
本特徴構成によれば、作業クラッチが入状態に切り替わったタイミングに合わせて、正流状態から逆流状態への切り替えを早期に行うことができる。
【0015】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記正流状態において、エンジン回転数が前記一定回転数以下の場合に、前記作業クラッチが前記切状態から前記入状態に切り替わると、前記作業クラッチが前記入状態に切り替わった時から一定時間が経過した時に、前記逆流モードを選択すると好適である。
【0016】
作業者が意図せずに作業クラッチを入状態に切り替えてしまった場合(例えば、作業クラッチを入状態と切状態とに切り替え操作する操作具に、不意に身体が触れた場合)、すぐさま逆流モードが選択されると、都合が悪い場合がある。一方、作業クラッチが入状態に切り替わった時から一定時間が経過すれば、当該一定時間の経過をもって、作業者に逆流モードを選択する意志があると推認することができる。すなわち、本特徴構成によれば、作業者の意に反して逆流モードが選択されてしまう事態を回避することができる。
【0017】
さらに、本発明において、
前記交互モードは、エンジン回転数が前記一定回転数よりも高く、かつ、前記作業クラッチが前記入状態である場合に選択され、
前記選択部は、前記交互モード中において、エンジン回転数が前記一定回転数以下に低下した場合、前記正流状態であれば、前記交互モードにおける次の前記逆流状態に切り替わる時に前記逆流モードを選択し、前記逆流状態であれば、前記交互モードにおける前記逆流状態を継続することで、前記逆流モードに移行させると好適である。
【0018】
本特徴構成によれば、交互モードと逆流モードとで、逆流状態を行う制御構成を共通化して、制御構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記逆流モード中において、前記作業クラッチが前記切状態に切り替わることにより前記特定条件が満たされなくなった場合は、前記正流状態が継続して行われる正流モードに移行させ、エンジン回転数が前記一定回転数を超過することにより前記特定条件が満たされなくなった場合は、前記交互モードに移行させると好適である。
【0020】
本特徴構成によれば、逆流モードにおいて、作業クラッチが切状態に切り替わった場合は、作業者に逆流モードを中断する意思が認められる。この場合は、逆流状態が行われないように、正流モードに移行させるのが適切である。一方、逆流モードにおいて、エンジン回転数が一定回転数を超過することにより特定条件が満たされなくなった場合は、作業者が逆流モードを中断する意思を示した訳ではないため、正流モードではなく、交互モードに移行させるのが適切である。すなわち、本特徴構成によれば、逆流モード中において、特定条件が満たされなくなった態様に応じて、正流モードに移行させるか、あるいは、交互モードに移行させるかを適切に選択することができる。
【0021】
さらに、本発明において、
前記作業装置は、エンジン回転数が一定回転数よりも高い特定回転数以上の回転数領域において、通常作動するように構成され、
前記作業クラッチが前記入状態で、かつ、エンジン回転数が前記特定回転数よりも低い場合に、警報を行う警報装置が備えられていると好適である。
【0022】
本特徴構成によれば、逆流モードが選択されている場合、すなわち、エンジン回転数が一定回転数以下で、かつ、作業クラッチが入状態である場合は、警報装置によって警報が行われることになる。これにより、作用装置用の警報装置を利用して、作業者に逆流モードが選択されていることを明確に認識させることができる。
【0023】
さらに、本発明において、
人為操作によって、前記交互モードを選択する交互指令、及び前記逆流モードを選択する逆流指令を出力可能な操作部が備えられ、
前記選択部は、前記操作部によって出力された指令に基づいて、前記交互モード及び前記逆流モードを選択すると好適である。
【0024】
本特徴構成によれば、作業者が操作部を操作することにより、交互モード及び逆流モードを臨機応変に選択することができる。
【0025】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記正流状態において、前記逆流指令を受けると、すぐさま前記逆流モードを選択すると好適である。
【0026】
本特徴構成によれば、作業者が操作部を操作したタイミングに合わせて、正流状態から逆流状態への切り替えを早期に行うことができる。
【0027】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記正流状態において、前記逆流指令を受けると、前記逆流指令を受けた時から一定時間が経過した時に、前記逆流モードを選択すると好適である。
【0028】
本特徴構成によれば、作業者が意図せずに操作部を操作してしまった場合(例えば、作業者が誤操作した場合)、すぐさま逆流モードが選択されると、都合が悪い場合がある。一方、逆流指令を受けた時から一定時間が経過すれば、当該一定時間の経過をもって、作業者に逆流モードを選択する意志があると推認することができる。すなわち、本特徴構成によれば、作業者の意に反して逆流モードが選択されてしまう事態を回避することができる。
【0029】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記逆流モード中に前記交互指令を受けた場合、前記正流状態で前記交互モードに移行させると好適である。
【0030】
本特徴構成によれば、逆流モードから交互モードへの移行直後から、冷却ファンの冷却風によってラジエータを冷却することができる、
【0031】
さらに、本発明において、
前記選択部は、前記逆流モード中に前記交互指令を受けた場合、前記逆流状態で前記交互モードに移行させると好適である。
【0032】
本特徴構成によれば、逆流モードから交互モードへの移行直後に、冷却ファンの風向き(逆流状態)が変化しないため、逆流モードから交互モードへの移行をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】普通型コンバインを示す右側面図である。
図2】制御ブロックを示す図である。
図3】正流モード、交互モード及び逆流モードの夫々における機体の状態と冷却ファンの風向きを示す表である。
図4】エンジン回転数、脱穀クラッチの状態、警報装置の状態及び冷却ファンの風向きの関係を示す図である。
図5】正流モード又は交互モードから逆流モードに切り替わる態様を示す表である。
図6】逆流モードから正流モード又は交互モードに切り替わる態様を示す表である。
図7】別実施形態において、逆流モードから交互モードへの移行時における逆流モードと交互モードとの境界を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、図1に示す矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Fの方向に向かって左側を「機体左側」、矢印Fの方向に向かって右側を「機体右側」とする。
【0035】
〔普通型コンバインの全体構成〕
図1には、普通型コンバイン(本発明に係る「作業機」に相当)を示している。本コンバインには、機体フレーム1と、走行装置2と、が備えられている。走行装置2には、駆動可能な左右一対の前輪2Fと、操向可能な左右一対の後輪2Rと、が備えられている。機体の前方には、植立穀稈を刈り取る刈取部3が設けられている。機体の前部には、運転者が搭乗する運転部4と、運転部4を覆うキャビン5と、が設けられている。
【0036】
キャビン5の後方には、穀粒を貯留する穀粒貯留タンク6が設けられている。穀粒貯留タンク6の下隣には、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置7(本発明に係る「作業装置」に相当)が設けられている。刈取部3と脱穀装置7とに亘って、刈取穀稈を脱穀装置7に向けて搬送するフィーダ8が設けられている。穀粒貯留タンク6内の穀粒を排出する穀粒排出装置9が設けられている。
【0037】
機体の前部右側には、エンジンEが設けられている。機体の後部右側には、エンジン冷却水の放熱を行うラジエータ10、及びラジエータ10を冷却する冷却ファン11が設けられている。機体の右側部のうちラジエータ10に対向する部分には、ラジエータ10を機体横外側(右側)から覆うように、防塵網12が取り付けられている。
【0038】
エンジンEからの駆動力を脱穀装置7に伝達する動力伝達経路には、脱穀クラッチ(本発明に係る「作業クラッチ」に相当。図示省略)が設けられている。前記脱穀クラッチは、脱穀装置7にエンジン駆動力を伝達する入状態と、脱穀装置7へのエンジン駆動力を遮断する切状態とに切り替え可能である。
【0039】
運転部4には、前記脱穀クラッチを入状態と切状態とに切り替え操作するクラッチレバー(図示省略)や、エンジン回転数を操作するアクセルレバー(図示省略)及びアクセルペダル(図示省略)が設けられている。
【0040】
〔制御ブロック〕
【0041】
図2に示すように、冷却ファン11の風向きを、ラジエータ10に冷却風が供給される正流状態と、正流状態とは逆向きの逆流状態とに切り替える切り替え機構13が設けられている。正流状態では、機体外部の空気が冷却風として防塵網12を介して機体内部に向かって流れ、逆流状態では、機体内部の空気が防塵網12を介して機体外部に向かって流れる。
【0042】
切り替え機構13は、例えば、冷却ファン11の回転方向を、正流状態に対応する方向(正転方向)と逆流状態に対応する方向(逆転方向)とに切り替えるアクチュエータや、冷却ファン11の羽根の向きを、正流状態に対応する向きと逆流状態に対応する向きとに切り替えるアクチュエータである。これらのアクチュエータは、電動モータであってもよいし、あるいは、油圧モータや電動シリンダ、油圧シリンダであってもよい。
【0043】
制御部14の入力側には、エンジン回転数センサ15(本発明に係る「検出部」に相当)及びクラッチセンサ16(本発明に係る「検出部」に相当)が接続されている。エンジン回転数センサ15は、エンジン回転数を検出する。クラッチセンサ16は、前記クラッチレバーの位置(前記脱穀クラッチが入状態となる入位置、前記脱穀クラッチが切状態となる切位置)を検出する。制御部14の出力側には、切り替え機構13及び警報装置17が接続されている。警報装置17は、例えば、スピーカやディスプレイであり、制御部14(警報部20)からの警報指令に基づいて警報を行う。
【0044】
制御部14には、判定部18と、選択部19と、警報部20と、が備えられている。判定部18は、エンジン回転数センサ15及びクラッチセンサ16の各検出結果に基づいて、機体の状態が特定条件(詳しくは、後述する)を満たすか否かを判定する。本実施形態における「機体の状態」とは、エンジン回転数及び前記脱穀クラッチの状態(入状態であるか、切状態であるか)である。
【0045】
選択部19は、正流モード、交互モード及び逆流モードを選択する。選択部19は、判定部18によって機体の状態が特定条件を満たしていると判定された場合、自動的に逆流モードを選択する。
【0046】
図3に示すように、正流モードは、正流状態が継続して行われるモードである。正流モードは、前記脱穀クラッチが切状態の場合に選択される。すなわち、前記脱穀クラッチが切状態であれば、エンジン回転数にかかわらず、正流モードが選択される。
【0047】
交互モードは、冷却ファン11の風向きが正流状態と逆流状態とに順次切り替わり、かつ、正流状態が逆流状態よりも長い時間行われるモードである。交互モードは、エンジン回転数が一定回転数Ncよりも高く、かつ、前記脱穀クラッチが入状態である場合に選択される。本実施形態では、正流状態が行われる時間を正流状態時間t1とし、逆流状態が行われる時間を逆流状態時間t2としている(図4参照)。
【0048】
逆流モードは、逆流状態が継続して行われるモードである。逆流モードは、エンジン回転数が一定回転数Nc以下で、かつ、前記脱穀クラッチが入状態である場合に選択される。すなわち、本実施形態における「特定条件」は、エンジン回転数が一定回転数Nc以下で、かつ、前記脱穀クラッチが入状態に設定されている。ここで、「継続」とは、交互モードにおける逆流状態が行われる時間(図4中の逆流状態時間t2)より長い時間行われることを意味している。
【0049】
ところで、脱穀装置7は、エンジン回転数が一定回転数Ncよりも高い特定回転数(図4中の特定回転数Nh)以上の回転数領域において、通常作動する(すなわち、通常の脱穀処理を行う)ように構成されている。警報部20は、前記脱穀クラッチが入状態で、かつ、エンジン回転数が特定回転数Nhよりも低い場合に、警報装置17に対して警報を行う旨を指令(警報指令)する。
【0050】
〔制御内容〕
図4に示すように、エンジン始動後における作業開始前(前記脱穀クラッチが切状態)は、正流モードが選択されている。図4中のA1−1において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下の状態で、前記脱穀クラッチが切状態から入状態に切り替わると、判定部18は、機体の状態が特定条件を満たしていると判定する。そうすると、選択部19は、自動的に逆流モードを選択する。具体的には、選択部19は、前記脱穀クラッチが入状態に切り替わった時から一定時間tcが経過した時に、逆流モードを選択する。すなわち、図5のA1−1の欄に示すように、選択部19は、正流モード(正流状態)において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下の場合に、前記脱穀クラッチが切状態から入状態に切り替わると、前記脱穀クラッチが入状態に切り替わった時から一定時間tcが経過した時に、逆流モードを選択する。ここで、一定時間tcは、逆流状態時間t2よりも長い時間に設定されている。なお、詳細な説明は省略するが、図4中のA1−2においても、A1−1と同様の態様により逆流モードが選択される(図5のA1−2の欄参照)。
【0051】
図4中のB1において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下の状態で、前記脱穀クラッチが入状態から切状態に切り替わると、判定部18は、機体の状態が特定条件を満たしていないと判定する。図4中のB1では、逆流モード中において、前記脱穀クラッチが切状態に切り替わることにより特定条件が満たされなくなっている。この場合、選択部19は、正流モードを選択する。具体的には、選択部19は、前記脱穀クラッチが入状態から切状態に切り替わった時から逆流状態時間t2が経過した時に、正流モードを選択する。すなわち、図6のB1の欄に示すように、選択部19は、逆流モード中において、前記脱穀クラッチが切状態に切り替わることにより特定条件が満たされなくなった場合は、正流モードに移行させる。
【0052】
図4中のB2−1において、前記脱穀クラッチが入状態で、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過すると、判定部18は、機体の状態が特定条件を満たしていないと判定する。図4中のB2−1では、逆流モード中において、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過することにより特定条件が満たされなくなっている。この場合、選択部19は、交互モードを選択する。具体的には、選択部19は、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過した時から逆流状態時間t2が経過した時に、交互モードを選択する。すなわち、図6のB2−1の欄に示すように、選択部19は、逆流モード中において、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過することにより特定条件が満たされなくなった場合は、交互モードに移行させる。なお、詳細な説明は省略するが、図4中のB2−2においても、B2−1と同様の態様により交互モードが選択される(図6のB2−2の欄参照)。
【0053】
図4中のA2において、前記脱穀クラッチが入状態で、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下すると、判定部18は、機体の状態が特定条件を満たしていると判定する。そうすると、選択部19は、自動的に逆流モードを選択する。具体的には、図4中のA2では、交互モードにおいて、正流状態であるため、選択部19は、交互モードにおける次の逆流状態に切り替わる時に逆流モードを選択する。すなわち、図5のA2の欄に示すように、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、正流状態であれば、交互モードにおける次の逆流状態に切り替わる時に逆流モードを選択する。
【0054】
図4中のA3において、前記脱穀クラッチが入状態で、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下すると、判定部18は、機体の状態が特定条件を満たしていると判定する。そうすると、選択部19は、自動的に逆流モードを選択する。具体的には、図4中のA3では、交互モードにおいて、逆流状態であるため、選択部19は、交互モードにおける逆流状態を継続し、逆流モードに移行させる。すなわち、図5のA3の欄に示すように、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、逆流状態であれば、交互モードにおける逆流状態を継続することで、逆流モードに移行させる。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、正流モード、交互モード及び逆流モードが備えられている。しかし、これに代えて、正流モードが備えられていなくてもよい。この場合、正流モードが交互モードに置き換えられることになる。あるいは、正流モード、交互モード及び逆流モードに加えて、別のモードが備えられていてもよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、選択部19は、正流状態において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下の場合に、前記脱穀クラッチが切状態から入状態に切り替わると、前記脱穀クラッチが入状態に切り替わった時から一定時間tcが経過した時に、逆流モードを選択する。しかし、これに代えて、選択部19は、正流状態において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下の場合に、前記脱穀クラッチが切状態から入状態に切り替わると、すぐさま逆流モードを選択するように構成されていてもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では、本発明に係る「作業クラッチ」として前記脱穀クラッチが備えられている。しかし、これに代えて、あるいは、これと共に、本発明に係る「作業クラッチ」として、刈取部3にエンジン駆動力を伝達する入状態と、刈取部3へのエンジン駆動力を遮断する切状態とに切り替え可能な刈取クラッチ(図示省略)が備えられていてもよい。
【0058】
(4)上記実施形態では、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、正流状態であれば、交互モードにおける次の逆流状態に切り替わる時に逆流モードを選択する。しかし、これに代えて、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、正流状態であれば、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した時に逆流モードを選択するように構成されていてもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、逆流状態であれば、交互モードにおける逆流状態を継続することで、逆流モードに移行させる(図4中のA3参照)。すなわち、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、逆流状態であれば、交互モードにおける逆流状態の終了時(逆流状態時間t2が経過した時)に、逆流モードに移行させる。しかし、これに代えて、選択部19は、交互モード中において、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した場合、逆流状態であれば、エンジン回転数が一定回転数Nc以下に低下した時(交互モードにおける逆流状態時間t2中)に逆流モードに移行させるように構成されていてもよい。
【0060】
(6)上記実施形態では、図4中のB2−1及びB2−2における逆流モードと交互モードとの境界を、例えば、図7に示すように設定することもできる。すなわち、図4では、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過した時から逆流状態時間t2が経過した時までの逆流状態が、逆流モードに含まれているのに対して、図7では、エンジン回転数が一定回転数Ncを超過した時から逆流状態時間t2が経過した時までの逆流状態が、交互モードに含まれている。
【0061】
(7)上記実施形態では、選択部19は、判定部18によって機体の状態が特定条件を満たしていると判定された場合、自動的に前記逆流モードを選択する。しかし、これに代えて、あるいは、これと共に、人為操作によって、交互モードを選択する交互指令、及び前記逆流モードを選択する逆流指令を出力可能な操作部(図示省略)が備えられ、選択部19は、前記操作部によって出力された指令に基づいて、交互モード及び逆流モードを選択するように構成されていてもよい。
【0062】
この場合、選択部19は、正流状態において、逆流指令を受けると、すぐさま逆流モードを選択するように構成されていてもよい。あるいは、選択部19は、正流状態において、逆流指令を受けると、逆流指令を受けた時から一定時間が経過した時に、逆流モードを選択するように構成されていてもよい。
【0063】
また、選択部19は、逆流モード中に交互指令を受けた場合、正流状態で交互モードに移行させてもよい。あるいは、選択部19は、逆流モード中に交互指令を受けた場合、逆流状態で交互モードに移行させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、普通型コンバインの他、自脱型コンバインやトウモロコシ収穫機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
7 脱穀装置(作業装置)
10 ラジエータ
11 冷却ファン
13 切り替え機構
15 エンジン回転数センサ(検出部)
16 クラッチセンサ(検出部)
17 警報装置
18 判定部
19 選択部
Nc 一定回転数
tc 一定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7