特開2018-173375(P2018-173375A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-173375(P2018-173375A)
(43)【公開日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】酸素センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20181012BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
   G01N27/404 341Z
   G01N27/416 323
   G01N27/416 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-72379(P2017-72379)
(22)【出願日】2017年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】北澤 直久
(57)【要約】      (修正有)
【課題】常温使用時の出力安定性の低下を抑制でき、低温使用時や高温使用時の出力安定性も得られる酸素センサを提供する。
【解決手段】負極3を備え、負極3は、結晶粒界で結晶粒同士が剥がれ前述した欠けが負極3で発生することを抑制でき、負極3の欠けを抑制できる分、欠けることによって生じた破片が正極2に接触することが抑制されるスズとアンチモンとを少なくとも含有するSn−Sb合金を含む、酸素センサを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極を備え、
前記負極は、スズとアンチモンとを少なくとも含有するSn−Sb合金を含む、酸素センサ。
【請求項2】
前記負極は、鉛を含まない、請求項1に記載の酸素センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船倉内部やマンホール内部の酸欠状態のチェックのために使用されたり、麻酔器や人工呼吸器などの医療機器における酸素濃度の測定用に使用されたりする酸素センサが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の酸素センサは、ガルバニ電池式酸素センサであり、ケース内部に正極、負極、電解液、酸素透過膜とを備え、前記正極が銀(Ag) を含み、前記負極が錫(Sn)を含むことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−194708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の酸素センサは、常温使用時の出力安定性が低下する場合があった。更に、近年では、当該酸素センサは、常温使用時の出力安定性に加え、低温使用時や高温使用時の出力安定性も要求されつつある。
【0006】
本実施形態は、常温使用時の出力安定性の低下を抑制でき、低温使用時や高温使用時の出力安定性も得られる酸素センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の酸素センサは、負極を備え、前記負極は、スズとアンチモンとを少なくとも含有するSn−Sb合金を含む。上記の構成により、常温使用時の出力安定性の低下を抑制でき、低温使用時や高温使用時の出力安定性も得られる。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、常温使用時の出力安定性の低下を抑制でき、低温使用時や高温使用時の出力安定性も得られる酸素センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る酸素センサの断面図である。
図2図2は、出力電圧が安定することを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る酸素センサの一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。本実施形態の酸素センサ1は、電気化学式酸素センサである。本実施形態では、電気化学式酸素センサの一例として、ガルバニ電池式酸素センサについて説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0011】
本実施形態のガルバニ電池式酸素センサ1は、電気化学式酸素センサの1種であり、正極2と負極3との間に抵抗11を接続したものである。具体的には、ガルバニ電池式酸素センサでは、正極2で酸素ガスが電気化学的に還元されることによって電流が生じる。生じた電流が前記抵抗11において電圧に変換される。生じた電流と酸素ガス濃度とが比例関係を有することから、電流から変換された前記電圧を測定することによって、ガルバニ電池式酸素センサ1は、気体中の酸素ガスの濃度を測定することができる。
【0012】
ガルバニ電池式酸素センサ1は、図1に示すように、ホルダー4と、ホルダー4内に収容された正極2と負極3と電解液9とを含む。電解液9は、キレート剤を含有してもよい。正極2及び負極3は、電解液9に接触している。負極3は、スズ−アンチモン合金(以下、単にSn−Sb合金ともいう)を含む。
【0013】
ホルダー4は、内部に正極2と負極3と電解液9とを収容している。ホルダー4の材質は、特に限定されないが、後に詳述する電解液9によって腐食等を受けにくいものが好ましい。ホルダー4の材質としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)が好ましい。
【0014】
正極2は、酸素ガスを電気化学的に還元することによって電流を生じさせる触媒極21と、触媒極21で生じた電流を集める集電体22とを有する。正極2は、板状(シート状)の触媒極21及び板状(シート状)の集電体22が互いに重なり合うことによって形成されている。集電体22には、正極2で生じた電流を上記抵抗11を介して負極3と導通させるための正極リード線10が取り付けられている。
【0015】
触媒極21の材質は、酸素ガスの還元によって電流を生じさせるものである。触媒極21の材質としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、又は、チタン(Ti)が好ましい。本実施形態では、触媒極21の材質は、金(Au)である。
【0016】
集電体22は、触媒極21で生じた電流を集めるものである。集電体22の材質は、特に限定されないが、本実施形態では、チタン(Ti)が用いられる。
【0017】
負極3は、スズ(Sn)とアンチモン(Sb)とを少なくとも含有するSn−Sb合金を含む。本実施形態では、負極3は、Sn−Sb合金によって板状(シート状)に形成されている。Sn−Sb合金は、例えば、Sn−Sb合金全体に対して、アンチモン(Sb)を1.0質量%以上10.0質量%以下含む。なお、Sn−Sb合金中のSn−Sb合金全体に対するスズ(Sn)やアンチモン(Sb)の含有量は、本願発明の要旨を逸脱しない(発明の効果を有しない:以下同じ)限りにおいて特に限定されない。
【0018】
Sn−Sb合金は、本願発明の要旨を逸脱しない限りにおいて不純物を含んでもよい。
不純物としては、In、Ni、Au、Al、Bi、Fe、Mg、Na、Zn、S、Se及びCa等が挙げられる。
【0019】
Sn−Sb合金は、本願発明の要旨を逸脱しない限りにおいてAl、Ag、Bi、Cu、Fe、Mg、Na、Zn、S、Se、及びCaからなる群から選択された少なくとも1種(以下、Sn−Sb合金を構成するSn及びSb以外の他の元素(他の金属)という)をさらに含む合金であってもよい。例えば、Sn−Sb合金としては、スズ−アンチモン−銅合金(Sn−Sb−Cu合金)、スズ−アンチモン−銀合金(Sn−Sb−Ag合金)、スズ−アンチモン−銀−銅合金(Sn−Sb−Ag−Cu合金)、又は、スズ−アンチモン−ビスマス合金(Sn−Sb−Bi合金)などが挙げられる。
【0020】
Sn−Sb合金において、Sn及びSbのそれぞれの含有量、及び、Sn−Sb合金を構成するSn及びSb以外の他の元素(他の金属)の含有量は、下記のようにして測定する。詳しくは、Sn−Sb合金のランダムに選んだ表面の一部において、EDX分析(ビーム径1mm)を行う。この分析によって測定されたSn−Sb合金の全質量に対する、Sn、Sb、及び前記他の元素(他の金属)の各々の質量%を求める。詳しくは、Sn−Sb合金の全質量は、Sn、Sb、SnやSb以外の他の元素(他の金属)、並びに、前記不純物の合計質量とする。この合計質量を100質量%として、各金属元素の質量%を求める。
【0021】
負極3は、鉛を含まないことが好ましい。「鉛を含まない」とは、負極3に含まれる鉛(Pb)の含有量が1000ppm未満であることである。このような負極3(具体的には鉛の含有量が1000ppm未満のSn−Sb合金)を用いることで、欧州連合(EU)における特定有害物質の使用規制に関する指令[いわゆるRoHS指令(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)にも対応可能な酸素センサ1を得ることができる。
【0022】
電解液9は、通常、溶媒とキレート剤とを含有する。電解液9は、キレート剤のみを含有してもよく、溶媒で希釈させて所定濃度となったキレート剤を含有してもよい。また、電解液9は、1種のキレート剤を含有してもよく、複数種が組み合わされたキレート剤を含有してもよい。なお、電解液9は、キレート剤以外の他の成分を含有してもよい。キレート剤の種類や、キレート剤の電解液9における濃度は、本願発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、特に限定されない。電解液9の溶媒としては、通常、水が採用される。
【0023】
キレート剤は、キレート化合物を作る多座配位子を有する物質である。具体的に、キレート剤としては、EDTA、NTA、HIDA、HEDTA、DTPA、TTHA、GLDA、DHEG、PDTA、およびDPTA−OH、ならびにこれらの塩が挙げられる。EDTAは、Etylene Diamine Tetraacetic Acid(エチレンジアミン四酢酸)の略称である。NTAは、Nitrilo Triacetic Acid(ニトリロ三酢酸)の略称である。HIDAは、Hydroxyethyl Imino Diacetic Acid(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)の略称である。HEDTAは、Hydroxyethyl Ethylene Diamine Triacetic Acid(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)の略称である。DTPAは、Diethylene Triamine Pentaacetic Acid(ジエチレントリアミン五酢酸)の略称である。TTHAは、Triethylene Tetramine Hexaacetic Acid(トリエチレンテトラミン六酢酸)の略称である。GLDAは、Dicarboxymethyl Glutamic Acid(グルタミン酸二酢酸塩)の略称である。DHEGは、Dihydroxyethyl Glycine(ジヒドロキシエチルグリシン)の略称である。PDTAは、1,3-Propanediamine Tetraacetic Acid(1,3−プロパンジアミン四酢酸)の略称である。DPTA−OHは、1,3-Diamino-2-hydroxypropane Tetraacetic Acid(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸)の略称である。
【0024】
電解液9がキレート剤を含有する場合、キレート剤の濃度は、0.001mol/L以上であることが好ましく、0.005mol/L以上であることがより好ましい。これによって、酸素センサ1が酸素ガスに応答する速度がより速くなるという利点がある。酸素センサ1を医療機器に適用する場合など、厳格な要件が求められる場合には、キレート剤の濃度は、0.1mol/L以上であることが好ましく、1.0mol/L以上であることがより好ましい。
一方、キレート剤が高濃度になるほど上記の応答速度が速い状態を長時間維持することができるため、キレート剤の濃度は、電解液9で溶解するキレート剤の飽和濃度であることが好ましい。
【0025】
本実施形態における酸素センサに係る電気化学反応は、電解液9が酸性の場合とアルカリ性の場合とで、電荷の担い手が異なるが、いずれの場合でも、正極2(触媒極21)と負極3との間に、酸素ガスの濃度に比例した電流が発生する。正極2(触媒極21)での正極反応によって生じた電流は、触媒極21に圧接された集電体22に集電され、さらに正極リード線10によって外部に導かれる。発生した電流は、抵抗11及び温度補償用サーミスタ12(後述)を通して負極3に流れ込むことによって電圧信号に変換され、出力電圧が得られる。得られた出力電圧は、周知の方法で酸素濃度に変換され、酸素濃度が測定される。なお、電気化学反応に伴い、負極3のSn−Sb合金の表面に酸化スズ(SnO)が発生するが、発生した酸化スズは、電解液9に溶解する。これに伴い、酸化スズの内側にあったスズ(Sn)が表面に露出し、露出したスズ(Sn)が酸化されることによって上記の電気化学反応が継続される。
【0026】
本実施形態の酸素センサ1は、上記の電気化学反応を継続させることによって、酸素ガスの濃度を測定するように構成されている。すなわち、本実施形態の酸素センサ1は、負極3における金属を消耗しつつ酸素ガスの濃度を測定している。なお、前記負極がスズ(Sn)である場合は、主に、負極3のSnの表面で消耗されるが、負極3のSnの内部でも消耗される。従って、スズ(Sn)が消耗された金属内部の強度が低下するため、内部で負極の一部が破損し、これにより破片が生じ得る。生じた破片は、電解液9を経由して、正極2(触媒極21)に接触し得る。これによって、酸素センサ1の出力が変動したり、出力値が異常になったりし得る。
【0027】
これに対して、負極3を構成する金属材料の硬度を単に高めることが考えられるが、単に金属材料の硬度を高めただけでは、上記の電気化学反応を抑制してしまう場合もある。このような場合、負極3の活性が低い状態であるため、正確な酸素濃度を測定することが難しくなり、酸素センサ1が機能しなくなるおそれがある。そこで、上記の電気化学反応を十分に進めさせることと、負極3の金属材料の欠けを抑制することとを同時に解決させるべく、負極3の金属材料としてSn−Sb合金を採用する。これにより、本実施形態の酸素センサ1は、酸素センサとして十分に機能し、かつ、負極3における欠けも抑制(出力安定性の低下を抑制)することができる。
詳しくは、Sn金属の場合、その電気化学反応が起こる一方で、Sn結晶間の結晶粒界においても、上記の電気化学反応が起こる。後者の反応によって、Sn結晶間の結晶粒界における結合力が弱まり得る。しかしながら、負極に含まれるSbによって、Sn結晶間の結晶粒界における結合力が比較的大きくなると考えられる。従って、Sn−Sb合金において、結晶粒界で結晶粒同士が剥がれ前述した欠けが負極3で発生することを抑制できる。また、負極3の欠けを抑制できる分、欠けることによって生じた破片が正極2に接触することが抑制される。斯かる破片が正極2に接すると酸素センサ1で安定した出力を得られにくいところ、上記のごとく負極3の欠けを抑制できることから、酸素センサ1において安定した出力を得ることができると考えられる。
このように、本実施形態の酸素センサ1では、酸素センサの出力が変動したり、出力値が異常になったりすることを抑制できる。従って、少なくとも常温(25℃)使用時の出力安定性の低下を抑制できる。また、前述した欠けを抑制できるため酸素センサの寿命を長くすることができる。
【0028】
本実施形態の作用効果について、上記のごとく技術的思想を示しつつ説明した。ただし、作用効果については、推定を含んでおり、その正否は、本発明を限定しない。また、実施形態における構成要素のうち、最も上位の概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素である。
【0029】
また、前記負極は、Sn−Sb合金であるため、常温(25℃)使用時の出力安定性に加え、低温(0℃)使用時及び高温(40℃)使用時の出力安定性も有している。よって、寒冷地域や低温場所に加え、熱帯地域や高温場所でも、当該酸素センサを好適に使用することができる。
【0030】
ホルダー4は、図1に示すように、正極2と負極3と電解液9とを収容するホルダー本体41と、ホルダー本体41の開口を塞ぐホルダー蓋42とを有する。ホルダー本体41及びホルダー蓋42のいずれにも、一方向を向く開口が形成されている。
【0031】
ホルダー本体41は、開口が形成された開口部を有する。開口部において開口を取り囲む周壁の外側には、ネジ(ネジ山及びネジ溝)が形成されている。ホルダー蓋42において開口を取り囲む周壁の内側にもネジ(ネジ山及びネジ溝)が形成されている。ホルダー蓋42及びホルダー本体41のネジ同士が噛み合うことによって、ホルダー蓋42とホルダー本体41とは、螺合するように構成されている。
【0032】
ホルダー蓋42は、ホルダー本体41と螺合する外蓋42bと、該外蓋42bの内側に配置され正極2の触媒極21をホルダー本体41に押し付ける内蓋42aとを有する。
外蓋42bは、内蓋42aを介して、ホルダー本体41の開口を塞ぐように構成されている。外蓋42bは、一方向に開口する筒状に形成されている。外蓋42bの内壁に形成されたネジは、ホルダー本体41の開口部に形成されたネジと螺合できる。外蓋42bの材質は、特に限定されないが、外蓋42bの材質としては、通常、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂などが採用される。中蓋42aの材質は、特に限定されないが、中蓋42aの材質としては、通常、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂などが採用される。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の酸素センサ1は、正極2の触媒極21に到達する酸素ガスの量を制御する隔膜6と、該隔膜6の一方の面に接し隔膜6を保護する保護膜5と、正極2を保持する集電体保持部7と、ホルダー本体41と内蓋42aとの聞に配置されたO−リング8とを備える。また、本実施形態の酸素センサ1は、正極2及び負極3に直列に接続された抵抗11及び温度補償用サーミスタ12とを備える。
【0034】
隔膜6は、正極2への酸素ガスの侵入を制御するために、正極2よりも外側に配置されている。隔膜6によって、正極2に到達する酸素ガスが多くなりすぎないようにすることができる。隔膜6としては、酸素ガスを選択的に透過させつつ、酸素ガスの透過量を制限できるものが好ましい。隔膜6の材質は、特に限定されないが、隔膜6の材質としては、通常、四フッ化エチレン樹脂や四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマー等のフッ素樹脂、又は、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂などが採用される。
【0035】
保護膜5は、隔膜6の一方の面であって外側の面に接する。本実施形態において、保護膜5は、多孔性であり且つ樹脂製である。保護膜5によって、ゴミやチリが隔膜6に付着すること、水が膜状となって隔膜6に付着することを妨止することができる。保護膜5の材質は、特に限定されないが、保護膜5の材質としては、通常、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂が採用される。
【0036】
集電体保持部7は、正極2よりも内側に配置されている。集電体保持部7には、正極2に電解液9を供給するための穿孔と、正極リード線10を通すための穿孔とが形成されている。集電体保持部7の材質は、特に限定されないが、通常、ABS樹脂である。
【0037】
O−リング8は、ホルダー本体41と内蓋42aとの聞に配置される。O−リング8は、ゴム弾性を有し、ホルダー本体41とホルダー蓋42とのネジ締めによって押圧されて変形する。これにより、O−リング8は、ホルダー4の気密性及び液密性を保持させることができる。O−リング8の材質は、特に限定されないが、O−リング8の材質としては、通常、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素樹脂ゴムなどが採用される。
【0038】
上述したようにホルダー蓋42(外蓋42b)とホルダー本体41とを螺合(ネジ締め)した状態で、ホルダー蓋42の内蓋42aは、隔膜6や正極2の触媒極21をホルダー本体41に押し付ける部材として機能する。隔膜6や正極2の触媒極21がホルダー本体41に押し付けられた状態では、内蓋42aと隔膜6との間にゴム弾性を有するO−リング8が配置される。O−リング8を介して隔膜6や正極2の触媒極21がホルダー本体41に押し付けられることにより、ホルダー4は、気密性及び液密性を保持した状態で、隔膜6や正極2の触媒極21をホルダー本体41に固定できるように構成されている。
【0039】
上記実施形態の電気化学式酸素センサ1は、一般的な方法によって構成部材を組み立てることにより、製造できる。
【0040】
尚、本発明の電気化学式酸素センサは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0041】
上記の実施形態では、電気化学式酸素センサの一例として、ガルバニ電池式酸素センサについて詳しく説明したが、本発明では、酸素センサが、定電位式酸素センサであってもよい。定電位式酸素センサは、正極と負極との間に一定電圧を印加する酸素センサである。印加される電圧は、各電極の電気化学特性や検知されるガスの種類によって、適宜設定される。定電位式酸素センサでは、正極と負極との間に所定の電圧を印加すると、正極と負極との間で流れる電流と、酸素ガス濃度とが比例関係を有する。従って、電流から変換した電圧を測定することにより、定電位式酸素センサでは、ガルバニ電池式酸素センサと同様に、気体の酸素ガス濃度を測定することができる。
【実施例】
【0042】
以下に示すようにして、ガルバニ電池式酸素センサ(電気化学式酸素センサ)を製造した。なお、本発明は、以下の実施例の酸素センサに限定されるものでない。
【0043】
(実施例1)
正極として金(Au)の板(シート)を用いた。負極として、スズ−アンチモン合金(スズ:95.0質量%/アンチモン:5.0質量%)の板(シート)を用いた。
電解液としては、キレート剤としてエチレンジアミン四ナトリウム(モル濃度0.6mol/L)を用いた。
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、及びホルダーを用いて、一般的な方法によって酸素センサを組み立てて製造した。
【0044】
(比較例1〜4)
負極として、比較例1(スズ−銅合金(スズ:99.25質量%/銅:0.75質量%))、比較例2(スズ−銀合金(スズ:96.5質量%/銀:3.5質量%))、比較例3(スズ−銀−銅合金(スズ:96.5質量%/銀:3.0質量%/銅:0.5質量%))、比較例4(スズ金属(スズ:99.9質量%))を用いた点以外は、実施例1と同様にして各々比較例に係る酸素センサを製造した。
【0045】
<出力安定性の評価>
実施例及び比較例で製造した酸素センサの1.常温使用時、2.低温使用時及び3.高温使用時の出力安定性について下記の方法によって評価した。
1.常温使用時
常温(25℃)及び乾燥室内(酸素ガスを約21%含む気体(空気中)環境下)で、各酸素センサを放置し、酸素センサの出力電圧が安定しているかどうか評価した。
2.低温使用時
低温(0℃)及び乾燥室内(酸素ガスを約21%含む気体(空気中)環境下)で、各酸素センサを放置し、酸素センサの出力電圧が安定しているかどうか評価した。
3.高温使用時
高温(40℃)及び乾燥室内(酸素ガスを約21%含む気体(空気中)環境下)で、各酸素センサを放置し、酸素センサの出力電圧が安定しているかどうか評価した。
なお、上記1.から3.でいう出力電圧が安定するとは、図2に示すように、横軸を測定時間、縦軸を出力電圧として、測定時間における出力電圧の傾向をプロットした場合に、図2に示すような略直線を描く場合を言う。
表1に上記1.から3.の出力安定性の評価結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
1.から3.の出力安定性の評価結果を表1に示す。
表1から把握されるように、スズ及びアンチモンを少なくとも含有するSn−Sb合金を含む負極を備えた酸素センサ(ガルバニ電池式酸素センサ)では、1.常温(25℃)使用時、2.低温(0℃)使用時、3.高温(40℃)使用時すべてにおいて安定した出力を得ることができた。
【符号の説明】
【0048】
1:ガルバニ電池式酸素センサ(電気化学式酸素センサ)、
2:正極、
21:触媒極、 22:集電体、
3:負極、
4:ホルダー、
41:ホルダー本体、 42:ホルダー蓋、 42a:内蓋、 42b:外蓋、
5:保護膜、
6:隔膜、
7:正極保持部
8:O−リング、
9:電解液、
10:正極リード線、
11:抵抗、
12:温度補償用サーミスタ。
図1
図2