【解決手段】感圧機能付きタッチセンサ装置は、第1導電性基板と、第1導電性基板から離して対向配置される第2導電性基板と、第1導電性基板及び第2導電性基板に接続され、第1導電性基板又は第2導電性基板の少なくとも一方により指示媒体が第2導電性基板にタッチしたタッチ位置を、第1導電性基板又は第2導電性基板の少なくとも一方により検出し、かつ、第1導電性基板及び第2導電性基板との間の距離が変化することによる第1導電性基板及び第2導電性基板の静電容量の変化に基づいて指示媒体による押圧力を検出する検出部と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
[第1の実施の形態]
<タッチセンサ装置の基本構成>
始めに、本発明の第1の実施の形態に係るタッチセンサ装置の構成について説明する。
図1は、タッチセンサ装置10の基本構成例を示す説明図である。
図1の上側にはタッチセンサ装置10全体の断面図を示し、
図1の下側にはタッチセンサ装置10の右端部分の拡大図を示す。タッチセンサ装置10は、静電容量方式により入力操作面のタッチ位置を検出することが可能であり、さらにタッチセンサ装置10の入力操作面が押圧されたことを検出する感圧機能を有しており、感圧機能付きタッチセンサ装置の一例として用いられる。
【0013】
タッチセンサ装置10の最下部(図中のZ方向の下側)に下部導電性基板11(第1導電性基板の一例)が配置され、タッチセンサ装置10の最上部(図中のZ方向の上側)に可撓性を有する上部導電性基板12(第2導電性基板の一例)が配置される。上部導電性基板12は、下部導電性基板11から離して対向配置される。下部導電性基板11、上部導電性基板12は、共にガラス、ポリカーボネー卜等の樹脂プレート又は樹脂フィルムにより矩形状に形成される。上部導電性基板12の入力操作面は、ユーザーの指、又は絶縁性(非導電性)スタイラスペン等の指示媒体が直接触れて押圧される。
【0014】
従来の静電容量方式のタッチパネル装置を操作するには導電性スタイラスペンが必要であったため、このタッチパネル装置に感圧機能も持たせた場合にも導電性スタイラスペンを必要としていた。一方、本実施の形態に係るタッチセンサ装置10では、導電性スタイラスペンだけでなく、絶縁性(非導電性)スタイラスペンを用いても押圧操作することが可能である。そして、このタッチセンサ装置10を備えるタッチパネル装置30(後述する
図7を参照)においても絶縁性(非導電性)スタイラスペンを用いてタッチ操作することが可能となる。
【0015】
以下、指示媒体として、ユーザーの指が上部導電性基板12をタッチし、押し込むものとする。上部導電性基板12の上には、加飾、強度向上、耐久性向上を目的として、後述する
図7に示すトッププレート33が設けられることもある。この場合には、指がトッププレート33を押込むときの押圧力が上部導電性基板12に加わることで、上部導電性基板12が押込まれる。
【0016】
下部導電性基板11の上には下部電極13(第1電極の一例)が配置され、上部導電性基板12の下には、上部電極14(第2電極の一例)が配置される。下部電極13及び上部電極14は、上部導電性基板12の入力操作面に指が直接又は間接的にタッチしたときに、XY平面のタッチ位置を検出するためのX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極として用いられる。このため、下部電極13及び上部電極14は、直線状、ダイヤモンド型等のタッチセンサ装置にて構成される一般的なタッチセンサ電極と同様に配置される。なお、下部電極13及び上部電極14は、互いに交差していれば、直交する構成でもよいし、直交しない構成でもよい。また、下部電極13及び上部電極14は、互いに接近したときに、上部導電性基板12に押圧力が加わったことを検出するための感圧センサ電極としても用いられる。
【0017】
下部電極13及び上部電極14は、透明導電膜(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))、メタルメッシュ,金属ナノワイヤ(例えば、Ag−NW(Nano Wire)),カーボン・ナノチューブ(C−NT:Carbon NanoTube)等のいずれかの導電部材によって構成される。下部電極13は、下部導電性基板11の上に直接形成してもよいし、下部導電性基板11以外の他の基板に形成された後、下部導電性基板11の上に貼り合わせてもよい。同様に上部電極14は、上部導電性基板12の下に直接形成してもよいし、上部導電性基板12以外の他の基板に形成された後、上部導電性基板12の下に貼り合わせてもよい。
【0018】
そして、下部電極13及び上部電極14間には、下部導電性基板11と上部導電性基板12との間隔を維持するためのスペーサ15(間隔維持部材の一例)が配置される。スペーサ15が配置される位置は、タッチセンサ装置10の端の部分である。タッチセンサ装置10がタッチパネル装置30(
図7参照)に内包して構成される場合には、スペーサ15がタッチパネル装置30の額縁に配置されるが、タッチパネル装置30には、スペーサ15を設置するための額縁のスペースを特に設けなくてもよい。スペーサ15の上下面には不図示の接着剤等が塗布されており、下部電極13及び上部電極14の間に接着固定される。ただし、後述する
図5に示すように下部電極13及び上部電極14が形成される範囲が下部導電性基板11及び上部導電性基板12よりも小さければ、スペーサ15は下部導電性基板11及び上部導電性基板12の間に接着固定される。
【0019】
下部電極13及び上部電極14の間には、スペーサ15と同じ高さの空間層16が設けられる。空間層16は、上部導電性基板12が押し下げられたときに、下部電極13及び上部電極14が変形し、互いに近接しやすくするために設けられる。なお、後述する
図2Cに示すように下部電極13及び上部電極14が変形しない場合には、スペーサ15が変形することで下部電極13及び上部電極14が互いに近接しやすくするために空間層16が設けられる。また、後述する
図2Dに示すように下部電極13及び上部電極14、スペーサ15のいずれもが変形する場合にも空間層16が設けられる。空間層16には、何も充填しなくてもよいが、上部導電性基板12が押圧されたときに上部電極14の変形を妨げないような液体や、柔軟性を有する透明樹脂等を充填してもよい。この場合、空間層16に充填された液体又は透明樹脂等が、下部導電性基板11と上部導電性基板12の全面に配置され、可撓性を有する間隔維持部材の一例として用いられる。
【0020】
検出部1は、下部導電性基板11が備える下部電極13、及び上部導電性基板12が備える上部電極14に接続される。そして、検出部1は、指示媒体が第2導電性基板にタッチしたタッチ位置を、第1導電性基板又は第2導電性基板の少なくとも一方により検出し、かつ、第1導電性基板11と第2導電性基板12との間の距離が変化することによる第1導電性基板11及び第2導電性基板12の静電容量の変化に基づいて指示媒体による押圧力を検出する。静電容量方式には、投影容量方式(相互容量方式)と自己容量方式がある。本明細書において投影容量方式と相互容量方式は同じ意味で用いており、以下の説明では投影容量方式(相互容量方式)と記載する。そして、検出部1は、第1導電性基板11及び第2導電性基板12の間の静電容量の変化を検出する投影容量方式(相互容量方式)と、第1導電性基板11又は第2導電性基板12の静電容量の変化を検出する自己容量方式とを微小時間で切替える。このため、検出部1は、入力操作面がほとんど押圧されていなくても、従来の静電容量方式のタッチパネルと同様にタッチ位置を検出することが可能となる。また、検出部1は、複数の箇所が押圧された場合に、押圧された複数の箇所も検出することができる。検出部1は、ハードウェア又はファームウェアで構成される。検出部1は、静電容量の変化を検出すると、静電容量の変化に応じた検出信号を信号処理部2に出力する。
【0021】
信号処理部2は、検出部1から入力する検出信号に基づいて所定の処理を行う。例えば、信号処理部2が、タッチセンサ装置10に接続された不図示の電子機器に対して制御信号を出力してもよい。検出部1及び信号処理部2は、
図2以降のタッチセンサ装置10にも接続されているが、図面の記載を簡略化するため、
図2以降では、検出部1及び信号処理部2の図示を省略している。
【0022】
図2は、タッチセンサ装置10の動作例を示す説明図である。上部導電性基板12が押圧されたことにより、下部電極13及び上部電極14が近づくタッチセンサ装置10にはいくつかの構成がある。
図2Aには、上部導電性基板12の入力操作面に指が接触しておらず、上部導電性基板12が押圧されていない状態が示される。
【0023】
図2B〜
図2Dには、指が上部導電性基板12を押圧した状態が示される。
図2Bに示す上部導電性基板12が可撓性を有し、スペーサ15が剛性を有していれば、上部導電性基板12が指で押された部分だけが距離d1だけ下に変形する。そして、この部分の下部電極13及び上部電極14が近接して静電容量が変化するため、検出部1は、静電容量の変化を検出することができる。
【0024】
図2Cに示すタッチセンサ装置10Aは、タッチセンサ装置10の可撓性を有する上部導電性基板12を、剛性を有する上部導電性基板12Aに置き換え、剛性を有するスペーサ15を、弾性を有するスペーサ15Aに置き換えたものである。この場合、押圧されたときに上部導電性基板12Aは変形しないため、上部導電性基板12Aにより弾性体であるスペーサ15Aが圧縮されて変形する。そして、上部導電性基板12Aが距離d2だけ押し下げられ、下部電極13及び上部電極14が近接して静電容量が変化するため、検出部1は、静電容量の変化を検出することができる。
【0025】
図2Dに示すタッチセンサ装置10Bは、タッチセンサ装置10を構成する剛性を有するスペーサ15を、弾性を有する弾性体15Aに置き換えたものである。この場合、押圧されたときに弾性体のスペーサ15Aが圧縮されて変形し、さらに、上部導電性基板12が指で押された部分が下に変形することで、上部導電性基板12が押された部分が距離d3だけ押し下げられる。そして、下部電極13及び上部電極14が近接して静電容量が変化するため、検出部1は、静電容量の変化を検出することができる。
【0026】
<タッチセンサ装置の動作方式>
図3は、タッチセンサ装置の動作方式の例を示す説明図である。
図3(1)には、従来の投影容量方式(相互容量方式)のタッチセンサ装置の動作例を示し、
図3(2)には、従来の自己容量方式のタッチセンサ装置の動作例を示す。また、
図3(3)には、本実施の形態のタッチセンサ装置10の動作例を示す。ただし、
図3(1)と
図3(2)に示す従来のタッチセンサ装置は、通常、X座標タッチ電極に対してY座標タッチ電極が接近しないものであるが、ここでは、X座標タッチ電極に対してY座標タッチ電極が接近するものとして説明する。
【0027】
図3(1)に示す投影容量方式(相互容量方式)のタッチセンサ装置は、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極を備える。投影容量方式(相互容量方式)のタッチセンサ装置が備える検出部は、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極からの出力に基づいて複数の箇所がタッチされたこと(マルチタッチ)を検出する。一方、
図3(2)に示すタッチセンサ装置が備える検出部は、自己容量方式により、1箇所がタッチされたこと(シングルタッチ)を検出する。
【0028】
ここで、対向する2つのX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の静電容量は、次式(1)で算出することができる。
【0029】
C=ε
0ε
rS/d …(1)
C:静電容量、ε
0:真空の誘電率、ε
r:X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の比誘電率、S:X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極の対向面積、d:X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の距離
【0030】
式(1)より、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極の対向面積が大きくなるほど、又はX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の距離が短くなるほど、静電容量が増加することが示される。従来のタッチセンサ装置では、入力操作面が押圧され、2つの電極間の距離が短くなることで増加する静電容量に基づいて押圧されたことが検出されていた。
【0031】
図3(1)に示す投影容量方式(相互容量方式)の感圧センサ装置では、時刻t0〜t1にて入力操作面にタッチされていない状態(非タッチ)であれば、静電容量が基準値と同じである。しかし、時刻t1〜t2にてほぼ押圧力がない状態で入力操作面がタッチされると静電容量が減少する。これは、入力操作面にタッチされた指によりX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極の電荷が移動するためである。そして、時刻t2〜t3にて入力操作面が押込まれ、押圧力がほぼ1Nになると、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の距離が短くなり、静電容量が増加する。さらに、時刻t3〜t4にて入力操作面が押込まれ、押圧力がほぼ5Nになると、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間の距離も一層短くなり、静電容量が増加する。そして、時刻t4にて入力操作面から指が離れると、入力操作面にタッチされていない状態となるため、静電容量が基準値に戻る。
【0032】
図3(2)に示す自己容量方式の感圧センサ装置では、時刻t0〜t1にて入力操作面にタッチされていない状態(非タッチ)であれば、静電容量が基準値と同じである。しかし、時刻t1〜t2にて入力操作面がタッチされると静電容量が増加する。これは、自己容量方式の感圧センサ装置を構成するX座標タッチ電極又はY座標タッチ電極のいずれかの電極又は特定の電位とで形成される容量素子と、ユーザーの指と電極とで形成される容量素子が並列であり、指が電極にタッチしたことにより、各容量素子の静電容量が加算されるためである。そして、時刻t2〜t3にて入力操作面が押込まれ、時刻t3〜t4にてさらに入力操作面が押込まれると、静電容量も増加する。そして、時刻t4にて入力操作面から指が離れると、入力操作面にタッチされていない状態となるため、静電容量が基準値に戻る。
【0033】
ここで、投影容量方式(相互容量方式)の感圧センサ装置では、時刻t2〜t3の静電容量が基準値と同じである。このため、時刻t2〜t3では、入力操作面にタッチされていない状態であるか、入力操作面が押込まれた状態であるかを判断することができない。また、投影容量方式(相互容量方式)の感圧センサ装置は、X座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間に基板等が挟み込まれているため、本来はX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極間を接近させて、押圧力を検出することはできない構成である。また、自己容量方式の感圧センサ装置は、1箇所のタッチ位置しか検出することができず、マルチタッチに対応していない。
【0034】
そこで、本実施の形態のタッチセンサ装置10の検出部1は、投影容量方式(相互容量方式)と自己容量方式を微小時間で切替える。このとき、検出部1は、押圧力が加わっていない状態で指が第2導電性基板12にタッチすると(時刻t1〜t2)、元の基準値より低い新たな基準値を設定する。この新たな基準値は、
図3(1)の投影容量方式(相互容量方式)により、時刻t1〜t2で静電容量が変化した値と同じであり、指が第2導電性基板12にタッチされている間、設定が維持される。そして、本実施の形態のタッチセンサ装置10の検出部1は、新たな基準値に対する静電容量の変化に基づいて押圧力を検出する。
【0035】
例えば、時刻t1にて入力操作面にタッチされた瞬間に、タッチセンサ装置10の検出部1は、投影容量方式(相互容量方式)により減少した静電容量の値を新たな基準値とする。新たな基準値は、元の基準値よりも少ない値である。その後、検出部1は、新たな基準値から増加した静電容量に基づいて押圧力を検出する。また、検出部1は、投影容量方式(相互容量方式)と自己容量方式を高速に切替えて、押圧力及びタッチ位置を検出する。
従来の投影容量方式(相互容量方式)だけでは、
図3(1)に示すように、タッチ押圧力が1Nであるときに(時刻t2〜t3)、静電容量が基準値と一致するため、押圧力が加わったことを検出することができなかった。
【0036】
これに対し、
図3(3)に示す本実施の形態では、検出部1が投影容量方式(相互容量方式)により1Nであるタッチ押圧力を検出することが可能となる。また、検出部1は、
図3(2)に示す自己容量方式だけでは、1箇所の押圧力しか検出できなかったのに対し、
図3(3)に示す本実施の形態では、投影容量方式(相互容量方式)を併用することで複数箇所の押圧力を検出することが可能となる。そして、本実施の形態の検出部1は、指が入力操作面から離れてタッチ位置を検出できなくなると、新たな基準値を消去する。これにより、再び指が入力操作面にタッチしたときに、新たな基準値を設定することができる。
【0037】
<タッチセンサ装置の他の変形例>
図4は、下部電極13及び上部電極14との間にドットスペーサ15Bを設けたタッチセンサ装置10Cの構成例を示す説明図である。
【0038】
図4の上側に示すようにタッチセンサ装置10Cは、下部導電性基板11と上部導電性基板12の全面に所定間隔に配置した複数のドットスペーサ15Bを設けて構成される。ドットスペーサ15Bは、例えば、樹脂等で形成される。ドットスペーサ15Bは、下部電極13及び上部電極14が交差する箇所に対応して設けられる。ただし、ドットスペーサ15Bは、下部電極13及び上部電極14が交差する箇所以外の箇所に設けられてもよい。
【0039】
図4の下側には、上部導電性基板12が指で押圧される様子が示される。タッチセンサ装置10Cでは、ドットスペーサ15Bが配置されることにより、上部導電性基板12が1箇所押圧され、下部導電性基板11及び上部導電性基板12間の間隔が狭まっても、その押圧された箇所以外の箇所では、下部導電性基板11及び上部導電性基板12間の間隔が維持される。そして、押圧された箇所だけで、下部導電性基板11及び上部導電性基板12間の間隔が狭まる。このため、検出部1は、下部導電性基板11と上部導電性基板12の距離が、ドットスペーサ15Bにより維持された下部導電性基板11と上部導電性基板12の距離よりも短くなった複数の箇所が押圧されたことを、押圧された箇所毎に検出することが可能となる。このようにタッチセンサ装置10Cではドットスペーサ15Bを配置することにより、検出部1は、複数の箇所のタッチ位置により、複数の箇所が押圧されたことを同時に検出することができる。
【0040】
図5は、タッチセンサ装置の変形例を示す説明図である。
上述したように、下部電極13及び上部電極14間には空間層16が残るため(
図1参照)、上部電極14と空間層16の境界面、及び下部電極13と空間層16の境界面には、光の反射が起こる。このため、下部電極13及び上部電極14における光の透過性が減少する。そこで、下部導電性基板11の少なくとも一方の面、及び上部導電性基板12の少なくとも一方の面に、外部から入射する光の反射を防止する反射防止部材を設けることが考えられる。
【0041】
そこで、
図5Aに示すタッチセンサ装置10Dは、下部電極13の上に下部反射防止部材17を配置し、上部電極14の下に上部反射防止部材18を配置した構成としている。下部反射防止部材17と上部反射防止部材18として、例えば、SVME(登録商標)が用いられる。SVME(Super View Moth Eye)は、PET(PolyEthylene Terephthalate)の上に形成される微細構造体(凹凸)により光の反射を防止する機能を有する。
図5Aでは、下部電極13及び上部電極14の空間層16側にSVMEが配置されている(PETの図示は省略)。そして、下部反射防止部材17と上部反射防止部材18により、下部電極13及び上部電極14間の空間層16における光の反射が抑制される。
【0042】
図5Bに示すタッチセンサ装置10Eは、下部導電性基板11と下部電極13間に下部反射防止部材17を配置し、上部導電性基板12と上部電極14の間に上部反射防止部材18を配置した構成としている。このような構成としても、下部反射防止部材17と上部反射防止部材18により、下部電極13及び上部電極14間の空間層16における光の反射が抑制される。
【0043】
図5Cに示すタッチセンサ装置10Fは、下部電極13の上に下部反射防止部材19を配置し、上部電極14の下に上部反射防止部材20を配置した構成としている。この下部反射防止部材19と上部反射防止部材20の配置自体は、
図5Aと同じではあるが、
図5Cでは、それぞれの反射防止部材19、20を形成する材料が異なっている。
【0044】
すなわち、
図5Cの例では、上部反射防止部材20と下部反射防止部材19として、例えば、AR(Anti Reflection)層が用いられる。AR層は、PETの上に形成された薄膜であり、下部電極13及び上部電極14の空間層16側にAR層が配置される。上部反射防止部材20を使うことにより、上部反射防止部材20が反射する光の位相と、上部反射防止部材20を透過して、下部反射防止部材19により反射した光の位相が逆になるため、上部反射防止部材20が反射する光を抑えることができる。
【0045】
なお、反射防止フィルムとARフィルムを組み合わせ、一方に反射防止フィルムを用い、他方にARフィルムを用いてもよい。例えば、上部電極14の下にSVMEが配置された上部反射防止部材18を配置し、下部電極13の上にAR層が形成された下部反射防止部材19を配置してもよい。逆に、上部電極14の下にAR層が形成された上部反射防止部材20を配置し、下部電極13の上にSVMEが配置された下部反射防止部材17を配置してもよい。
【0046】
図6は、偏光機能部を備えるタッチセンサ装置10Gの構成例を示す説明図である。
タッチセンサ装置10Gは、タッチセンサ装置10に対して、偏光機能部の一例としての偏光板21、上部位相差板23、下部位相差板22を備える。
偏光板21(偏光部の一例)は、上部導電性基板12の上に配置される。偏光板21は、特定方向に偏光した光(例えば、直線偏光)を通過させる。
下部位相差板22(第1位相差部材の一例)は、下部導電性基板11と下部電極13の間に配置される。
上部位相差板23(第2位相差部材の一例)は、上部電極14と上部導電性基板12の間に配置される。このため、下部位相差板22と上部位相差板23は、空間層16を挟むように配置されている。
【0047】
偏光板21を通過した光は直線偏光であり、直線偏光が、上部位相差板23と下部位相差板22を通過することで円偏光となる。そして、円偏光が下部導電性基板11にて反射され、下部位相差板22、上部位相差板23の順に戻って直線偏光となる。この直線偏光の偏光角は、外部から偏光板21通過した直線偏光の偏光角とは異なるため、偏光板21を通過しない。このため、偏光板21を通過した光による反射が抑えられる。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここでは、タッチセンサ装置を備えるタッチパネル装置の構成について説明する。
【0049】
<タッチパネル装置の概略構成>
図7は、タッチパネル装置30の概略構成図である。
図7の上には、上面視したタッチパネル装置30(情報処理装置の一例)の例が示される。タッチパネル装置30は、額縁32を有する筐体31を備えており、筐体31内にタッチセンサ装置10が収容される。タッチセンサ装置10を構成する下部導電性基板11及び上部導電性基板12は、筐体31内のほぼ全面に配置される。そして、
図7には、筐体31内の下部導電性基板11及び上部導電性基板12の位置と、額縁32の位置とが破線で示されている。下部導電性基板11の端は、額縁32の上に乗った状態である。
図7では、額縁32を識別しやすくするために額縁32の幅を広く記載しているが、実際にタッチパネル装置30に設けられる額縁32の幅は狭くてよい。
【0050】
図7の下には、タッチパネル装置30及びタッチセンサ装置10の断面図が示される。タッチパネル装置30は、
図1に示した検出部1及び信号処理部2を備える。検出部1は、タッチパネル装置30が備えるタッチセンサ装置10の下部電極13及び上部電極14間の静電容量の変化に基づいて、タッチセンサ装置10が押圧されたことを検出する。検出部1は、検出信号を信号処理部2に出力する。信号処理部2は、検出信号に基づいて所定の処理を行う。例えば、信号処理部2が検出信号に基づいて、表示パネル35(表示装置の一例)に表示される画像、アイコン等を切替えて表示する制御を行う。検出部1及び信号処理部2は、感圧センサ装置10、タッチパネル装置30のいずれかに備える構成としてよい。
【0051】
トッププレート33は、タッチパネル装置30の内部を保護する。トッププレート33には透明のガラス基板やフィルム等が用いられる。トッププレート33の表面は、ユーザーがタッチ入力を行うために指を接触させる入力操作面34となる。
【0052】
上部導電性基板12の上面には、例えば、両面粘着テープであるOCA(Optical Clear Adhesive)が貼り付けられている。このため、上部導電性基板12とトッププレート33がOCAを介して貼り合わされる。また、下部導電性基板11の下面にもOCAが貼り付けられている。このため、下部導電性基板11と表示パネル35がOCAを介して貼り合わされる。
【0053】
下部導電性基板11の端が筐体31の額縁32の上に配置される。下部電極13及び上部電極14が平面的に重なる領域が、XY平面の座標検知領域となる。そして、座標検知領域に、表示領域が重なるように表示パネル35が配置されている。表示パネル35の表示領域には、信号処理部2が行う画像表示処理により、下部電極13及び上部電極14により検出されたタッチ位置、及び、下部電極13及び上部電極14間の静電容量の変化(押圧変化)に応じた文字、図形、映像、アイコン等の画像が表示される。そして、ユーザーは、例えば、指、導電性スタイラスペン又は絶縁性(非導電性)スタイラスペンのいずれを用いても、トッププレート33を押圧する押圧操作と、トッププレート33上の座標を指示するタッチ操作を行うことが可能である。
【0054】
このように筐体31の額縁32の上にタッチセンサ装置10を配置することにより、入力操作面34を押し下げても、表示パネル35に押圧力が伝達されない。このため、表示パネル35に電流変動が生ずることがないので、表示パネル35に表示される画像の品質を高めることができる。
【0055】
以上説明した第1及び第2の実施の形態では、下部電極13及び上部電極14が対向して配置され、入力操作面に押圧力が加わり、上部導電性基板12が押し下げられると、上部電極14が下部電極13に接近し、下部電極13及び上部電極14間の静電容量が増加する。このように下部電極13及び上部電極14が、入力操作面に押圧されたことを検出するための感圧センサ電極として用いられるので、検出部1は、入力操作面の押圧を検出することができる。また、下部電極13及び上部電極14は、入力操作面のタッチ位置を検出するためのタッチセンサ電極としても用いられるので、検出部1は、入力操作面のタッチ位置を検出することが可能である。
【0056】
本実施の形態では、入力操作面の全体にわたって下部導電性基板11及び上部導電性基板12が形成されており、下部電極13及び上部電極14についても入力操作面の全体にわたって形成される。このため、従来、感圧センサ装置を設けるために用意していた額縁32を広くしなくても、検出部1が、下部電極13及び上部電極14から、入力操作面が押圧されたことを検出できる。そして、本実施の形態に係るタッチセンサ装置10の構成は、従来の抵抗膜式タッチセンサ装置のように下部導電性基板11及び上部導電性基板12の間に隙間を設けたシンプルな構成であるため、タッチセンサ装置10の製造コストを抑えることができる。
【0057】
また、下部導電性基板11及び上部導電性基板12の間には、反射防止部材が設けられるため、下部導電性基板11及び上部導電性基板12の間、又は上部導電性基板12の表面における光の反射を防止することができる。
【0058】
また、検出部1は、投影容量方式(相互容量方式)と自己容量方式を高速に切替えて、押圧力及びタッチ位置を検出することができる。このため、例えば、従来の静電容量方式のタッチパネル装置では使用できなかった絶縁性(非導電性)スタイラスペン等を用いて入力操作を行った場合であっても、検出部1は押圧力及びタッチ位置を正確に検出することができる。また、ユーザーが手に手袋をはめていたとしても、手袋の生地の厚さに依存することなく、ユーザーが押圧操作及びタッチ操作を行うことが可能となる。
【0059】
また、従来の静電容量方式のタッチセンサ装置で用いられているX座標タッチ電極及びY座標タッチ電極をそのまま、タッチセンサ装置10及びタッチパネル装置30の下部電極13及び上部電極14として用いることができる。このため、タッチセンサ装置10及びタッチパネル装置30の製造工程を大きく変更しなくてよく、製造コストを減少することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。