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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-173889(P2018-173889A)
(43)【公開日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】カード状媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/063 20060101AFI20181012BHJP
   G06K 13/067 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
   G06K13/063 A
   G06K13/067 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-72547(P2017-72547)
(22)【出願日】2017年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 幸生
【テーマコード(参考)】
5B023
【Fターム(参考)】
5B023BA01
5B023EA03
5B023FA03
(57)【要約】
【課題】記録媒体のパンチ穴または切欠きによる搬送処理の異常を防止可能なカード状媒体処理装置を提供する。
【解決手段】カード状の記録媒体が搬送される通路である搬送路と、記録媒体を搬送する搬送機構と、搬送路上の所定位置における記録媒体の有無を検出する検出器と、検出器の出力値に基づいて搬送機構を制御する制御部と、を備え、搬送路には記録媒体の挿入口および排出口が設けられており、記録媒体にはその厚み方向に貫通したパンチ穴または記録媒体の搬送方向と平行な記録媒体の辺の一部を切欠く切欠きが形成されており、制御部は、検出器が記録媒体を検出し、その後、検出器の検出範囲から記録媒体を見失ったときに、少なくともパンチ穴の直径分または記録媒体の搬送方向における切欠きの寸法分、記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ記録媒体を追加搬送することを特徴とするカード状媒体処理装置により解決する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状の記録媒体が搬送される通路である搬送路と、
前記記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送路上の所定位置における前記記録媒体の有無を検出する検出器と、
前記検出器の出力値に基づいて前記搬送機構を制御する制御部と、を備え、
前記搬送路には前記記録媒体の挿入口および排出口が設けられており、
前記記録媒体にはその厚み方向に貫通したパンチ穴または前記記録媒体の搬送方向と平行な前記記録媒体の辺の一部を切欠く切欠きが形成されており、
前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、少なくとも前記パンチ穴の直径分または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送することを特徴とするカード状媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、前記パンチ穴の直径または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法と前記検出器の検出範囲の幅とを合計した長さ分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送することを特徴とする請求項1に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項3】
前記搬送機構に搬送された前記記録媒体の移動量を推定する移動量推定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項4】
前記搬送機構はその駆動源としてステッピングモータを有しており、
前記制御部は、前記ステッピングモータのステップ数から前記記録媒体の移動量を推定可能であることを特徴とする請求項3に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項5】
前記搬送機構を構成する可動部のいずれかには、該可動部の駆動量を検出するエンコーダが設けられており、
前記制御部は、前記エンコーダの出力値から前記記録媒体の移動量を推定可能であることを特徴とする請求項3に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項6】
前記検出器は光センサであることを特徴とする請求項1から請求項5に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項7】
前記搬送路には複数の前記検出器が配置されており、
複数の前記検出器は、前記記録媒体の搬送方向に沿って、該記録媒体の搬送方向における長さよりも短い間隔で並べられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記検出器のいずれかが前記記録媒体を検出し、その後、複数の前記検出器のすべての検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、少なくとも前記パンチ穴の直径分または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送することを特徴とする請求項7に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項9】
前記搬送路の挿入口には、該挿入口を開閉可能なシャッタが設けられており、
前記制御部は、前記搬送路への前記記録媒体の取り込みを検出して、前記シャッタにより前記挿入口を一時的に遮蔽することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカード状媒体処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、前記搬送機構を停止させることなく前記追加搬送を行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のカード状媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード状媒体の搬送位置特定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動改札機などに搭載される媒体処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/018419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駅の改札口に設置される自動改札機は、一般に、乗客が投入した乗車券をローラで装置内に取り込み、データを処理した後に乗車券を装置外に排出、または回収する。この間、自動改札機内の乗車券は、搬送路に設けられたセンサによりその現在位置が監視される。
【0005】
乗車券の運用のされ方によっては、駅員が乗車券にパンチ穴を空けたり、乗車券の縁を改札鋏で切り欠いたりすることがある。このとき、これらパンチ穴等の形成位置がセンサの検出範囲に重なった場合、乗車券の搬送時にセンサが乗車券を見失い、自動改札機が乗車券の処理に失敗するおそれがある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、記録媒体のパンチ穴や切欠きなどによる搬送処理の異常を防止可能なカード状媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のカード状媒体処理装置は、カード状の記録媒体が搬送される通路である搬送路と、前記記録媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送路上の所定位置における前記記録媒体の有無を検出する検出器と、前記検出器の出力値に基づいて前記搬送機構を制御する制御部と、を備え、前記搬送路には前記記録媒体の挿入口および排出口が設けられており、前記記録媒体にはその厚み方向に貫通したパンチ穴または前記記録媒体の搬送方向と平行な前記記録媒体の辺の一部を切欠く切欠きが形成されており、前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、少なくとも前記パンチ穴の直径分または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送することを特徴とする。
【0008】
検出器の検出範囲から前記記録媒体が不意に消失したとき、すなわち、検出器が記録媒体を見失っているときに、そこで搬送処理を終了させるのではなく、パンチ穴の直径分または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法分(以下、「パンチ穴等の幅分」ともいう。)だけさらに記録媒体を搬送してみることにより、記録媒体が実際に検出器の検出範囲を通り過ぎたのか(または手動で取り出されたのか)、それともパンチ穴または切欠き(以下、「パンチ穴等」ともいう。)の形成位置が検出器の検出範囲と重なっていたのかを判別することができる。
【0009】
ここで、前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、前記パンチ穴の直径または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法と前記検出器の検出範囲の幅とを合計した長さ分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送する構成としてもよい。
【0010】
検出器として例えばフォトインタラプタのような光センサが使用され、そのビーム幅の一部だけでも受光素子に到達しているときにはそこに記録媒体はないとみなす場合、パンチ穴等の幅分の追加搬送だけでは、ビーム幅の一部がパンチ穴等の範囲に残るおそれがある。そこで、パンチ穴等の幅分だけではなく、パンチ穴等の幅と検出器の検出範囲の幅とを合計した長さ分、記録媒体を追加搬送することにより、上述のような状態を避けることができ、パンチ穴等の判別精度を高めることができる。
【0011】
また、本発明のカード状媒体処理装置は、前記搬送機構に搬送された前記記録媒体の移動量を推定する移動量推定手段を備えていることが好ましい。
【0012】
記録媒体を追加搬送するときには、検出器は記録媒体を見失っている。そのため、検出器を用いて記録媒体の現在位置を特定することはできない。そこで、記録媒体の移動量を推定可能な何らかの手段(移動量推定手段)を別途備えることにより、見失った記録媒体の移動量を制御することが可能となる。これにより、記録媒体の現在位置が不明な場合でも、記録媒体をパンチ穴等の判別に必要となる距離だけ追加搬送することが可能となる。
【0013】
前記移動量推定手段の一形態としては、前記搬送機構がステッピングモータを備え、前記制御部が前記ステッピングモータのステップ数から前記記録媒体の移動量を推定する構成が考えられる。
【0014】
ステッピングモータはその回転角度をステップ数で特定することができる。ステッピングモータのこの性質を利用し、ステップ数と記録媒体の移動量との関係を関数化することにより、ステッピングモータを駆動したステップ数から記録媒体の移動量を算出することができる。これにより、記録媒体の現在位置が不明な場合でも、記録媒体をパンチ穴等の判別に必要となる距離だけ追加搬送することが可能となる。
【0015】
また、前記移動量推定手段の他の形態としては、前記搬送機構を構成する可動部のいずれかに該可動部の駆動量を検出するエンコーダを設け、前記制御部が、前記エンコーダの出力値から前記記録媒体の移動量を推定する構成が考えられる。
【0016】
搬送機構の動作を、搬送機構を構成するいずれかの可動部に設けたエンコーダを使ってフィードバック制御することにより、記録媒体の移動量を可動部の実際に即した駆動量に基づいて推定することができる。これにより、オープンループ制御を用いた移動量の推定よりも高い精度で、記録媒体をパンチ穴等の判別に必要な距離だけ追加搬送することが可能となる。
【0017】
また、前記検出器は光センサであることが好ましい。
【0018】
光センサにより記録媒体を非接触で検出することにより、検出器が記録媒体に接触することによる記録媒体の損傷を避けることができる。
【0019】
また、前記搬送路には複数の前記検出器が配置されており、複数の前記検出器は、前記記録媒体の搬送方向に沿って、該記録媒体の搬送方向における長さよりも短い間隔で並べられていることが好ましい。
【0020】
複数の検出器が記録媒体の長さよりも短い間隔で並べられていることにより、いずれかの検出器で常に記録媒体を捉えることができ、記録媒体の現在位置をより正確に特定することが可能となる。
【0021】
また、前記制御部は、複数の前記検出器のいずれかが前記記録媒体を検出し、その後、複数の前記検出器のすべての検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、少なくとも前記パンチ穴の直径分または前記記録媒体の搬送方向における前記切欠きの寸法分、前記記録媒体を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ該記録媒体を追加搬送することが好ましい。
【0022】
検出器が搬送路内の前記記録媒体を見失ったときに、そこで搬送処理を終了させるのではなく、パンチ穴等の幅分だけさらに記録媒体を搬送してみることにより、記録媒体が実際に搬送路から排出されたのか(または手動で取り出されたのか)、それともパンチ穴等の形成位置が検出器の検出範囲と重なっていたのかを判別することができる。ここで、パンチ穴等の幅分だけではなく、パンチ穴等の幅と検出器の検出範囲の幅とを合計した長さ分、記録媒体を追加搬送することにより、検出方式の関係でパンチ穴等の幅分の追加搬送だけでは記録媒体の存在を検出できない検出器が用いられた場合でも、より確実にパンチ穴等を判別することが可能となる。
【0023】
また、本発明のカード状媒体処理装置は、前記搬送路の挿入口に該挿入口を開閉可能なシャッタが設けられ、前記制御部は、前記搬送路への前記記録媒体の取り込みを検出して、前記シャッタにより前記挿入口を一時的に遮蔽することが好ましい。
【0024】
記録媒体がパンチ穴等の幅よりも短い間隔で挿入された場合、記録媒体の間隔をパンチ穴等と誤判断してしまうおそれがある。記録媒体の取り込み時にシャッタを一時的に遮蔽することにより、記録媒体が少なくともパンチ穴等の幅以上の間隔を空けて搬送されることを担保することができる。
【0025】
また、前記制御部は、前記検出器が前記記録媒体を検出し、その後、該検出器の検出範囲から前記記録媒体を見失ったときに、前記搬送機構を停止させることなく前記追加搬送を行うことが好ましい。
【0026】
本発明のカード状媒体処理装置は、搬送物を見失ったときに搬送物を排出口側に追加搬送することでパンチ穴等を判別する。すなわち、搬送物の搬送を中断することなくパンチ穴等を判別することができる。これにより、記録媒体のスムーズな処理とパンチ穴等の判別との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明のカード状媒体処理装置によれば、記録媒体のパンチ穴等による搬送処理の異常を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態にかかるカード状媒体処理装置の内部構造を示す側面視透視図である。
図2】カード状媒体処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】乗車券の外観を示す図である。
図4】制御装置がパンチ穴を判別する様子を示す模式図である。
図5】制御装置が複数の光センサによりパンチ穴を判別する様子を示す模式図である。
図6】カード状媒体処理装置によるパンチ穴の判別処理を示すフローチャートである。
図7】他の実施形態にかかる乗車券の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[全体構成]
(構成概要)
以下、本発明のカード状媒体処理装置の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、駅の改札口に設置される自動改札機に本発明のカード状媒体処理装置を組み込み、乗車券の磁気データの読み取りや書き込みなどを行う例である。
【0030】
図1は、本実施形態のカード状媒体処理装置10の内部構造を示す側面視透視図である。図2は、カード状媒体処理装置10の機能構成を示すブロック図である。図3はカード状媒体処理装置10で処理されるカード状の記録媒体である乗車券90の外観を示す図である。なお、以下の説明において、カード状媒体処理装置10について「上」および「下」とは、図1に描かれた座標軸表示のZ軸方向における上下を意味している。「前」および「後ろ」とは、同座標軸表示のX軸に平行な方向であり、X側が「前」、X側を「後ろ」とする。また、「左右」、「側方」とは、同座標軸表示のY軸に平行な方向を意味している。
【0031】
本例のカード状媒体処理装置10は、磁気データ処理部10dおよび印字処理部10pにより構成されている。磁気データ処理部10dは乗車券90の磁気データの読み取り、乗車券90への磁気データの書き込みを行う機構部である。印字処理部10pは、感熱処理により乗車券90に印字を施す機構部である。
【0032】
磁気データ処理部10dはカード状媒体処理装置10の前側に配置されており、印字処理部10pは磁気データ処理部10dの後端から上方へ起立するように配置されている。このため、側方から見たときのカード状媒体処理装置10は、略L字型の外観を呈している。
【0033】
図2に示すように、カード状媒体処理装置10は、その制御部として制御装置11を備えている。制御装置11はカード状媒体処理装置10を構成する各装置(後述)に接続されており、カード状媒体処理装置10の動作を一元的に管理する。また、制御装置11は上位装置である自動改札機の制御部に接続されており、上位装置とコマンドやデータの送受信を行う。
【0034】
(搬送路)
磁気データ処理部10dの前面には、乗車券90が挿入される開口部である挿入口31が設けられている。印字処理部10pの上面には、乗車券90が排出される開口部である排出口39が設けられている。これら挿入口31および排出口39は、乗車券90が搬送される通路である搬送路30で連通されている。挿入口31に挿入された乗車券90は、磁気データ処理部10dの搬送路30を後方に向かって搬送され、印字処理部10pへの到達後、印字処理部10pの搬送路30を略上方に向かって搬送される。
【0035】
搬送路30の挿入口31には、挿入口31を開閉するシャッタ32が設けられている。制御装置11は、後述する第1光センサ71および第2光センサ72により搬送路30内への乗車券90の取り込みを検出し、乗車券90が排出口39から排出されるまで、シャッタ32により挿入口31を一時的に遮蔽する。
【0036】
(乗車券)
図3(a)は本例の乗車券90の平面図である。図3(b)は図3(a)の乗車券90のA−A方向断面図である。本例の乗車券90は長方形状の紙製のカードである。乗車券90の表面90aには感熱方式での印字が可能である。また、乗車券90の裏面90bには磁性体が塗布されており、磁気データを記録することが可能とされている。乗車券90は、搬送方向に対してその長手方向90Lが平行となる向きで挿入口31に挿入され、搬送路30内を搬送される。
【0037】
乗車券90には、その厚み方向90tに貫通したパンチ穴91が空けられている。パンチ穴91は乗車券90の短手方向90wにおける略中心に形成されている。パンチ穴91を穿つ位置は駅員次第であり、これを制限することはできないものとする。そのため、乗車券90のパンチ穴91の形成位置は一定ではない。また、本例のパンチ穴91の位置は、後述する第1光センサ71〜第10光センサ80(以下、これら光センサを指して「光センサ71〜80」ともいう。)による光の照射位置70pに重なっている。
【0038】
(搬送機構)
カード状媒体処理装置10の搬送機構20は、駆動源であるステッピングモータ21(以下、単に「モータ21」という。)により駆動される。搬送機構20は乗車券90を搬送する複数の搬送部材を有しており、本例の搬送部材は、搬送路30の挿入口31側から排出口39側に向かって、順に、挿入口31付近に設けられた取り込みローラ22、一対の無端ベルトである上側ベルト24および下側ベルト26、並びにこれらを回動させる上側プーリ23および下側プーリ25、第1プラテンローラ27および第2プラテンローラ28、そして、排出口39付近に設けられた排出ローラ29により構成されている。これらの搬送部材は図示しないプーリやベルト、歯車列などの動力伝達機構を介してモータ21に連結されている。
【0039】
取り込みローラ22は搬送路30の下側から搬送路30内に臨むように配置されている。取り込みローラ22の上方には、取り込みローラ22の従動ローラであるパッドローラ22aが対向配置されている。パッドローラ22aは図示しない付勢部材により取り込みローラ22側に付勢されており、取り込みローラ22は、パッドローラ22aとともに乗車券90を挟み込んで搬送路30の後方へと送り出す。
【0040】
上側プーリ23および下側プーリ25は、それぞれ、モータ21に駆動される駆動ローラおよび従動ローラを含んでおり、また、一部のローラについてはその図示を省略している。上側プーリ23には上側ベルト24が架け渡されており、下側プーリ25には下側ベルト26が架け渡されている。上側ベルト24および下側ベルト26は、取り込みローラ22から送り出されてきた乗車券90を受け取り、乗車券90を挟み込んで搬送路30の後方へと搬送する。そして、磁気データ処理が済んだ乗車券90を印字処理部10pへと送り出す。
【0041】
第1プラテンローラ27および第2プラテンローラ28は印字処理部10pに配置されている。第1プラテンローラ27は搬送路30の上側から搬送路30内に臨むように配置されており(印字処理部10pの搬送路30は上下に延びているため、カード状媒体処理装置10全体で見たときには、第1プラテンローラ27は搬送路30の前側から搬送路30内に臨んでいることになる。以下、説明の便宜上、印字処理部10pの搬送路30については、カード状媒体処理装置10全体で見たときの前側を搬送路30の上、後ろ側を搬送路30の下とする。)、第2プラテンローラ28は搬送路30の下側から搬送路30内に臨むように配置されている。第1プラテンローラ27および第2プラテンローラ28は、後述するサーマルヘッドにより印字可能な位置に乗車券90を配置し、印字処理の済んだ乗車券90を排出口39側へと送り出す。
【0042】
排出ローラ29は搬送路30の上側から搬送路30内に臨むように配置されている。排出ローラ29の下方には、排出ローラ29の従動ローラであるパッドローラ29aが対向配置されている。パッドローラ29aは図示しない付勢部材により排出ローラ29側に付勢されており、排出ローラ29は、パッドローラ29aとともに乗車券90を挟み込んで排出口39から排出する。
【0043】
(磁気データ処理部)
取り込みローラ22の直後には、乗車券90の裏表を検査する磁気ヘッドであるプリヘッド40が配置されている。プリヘッド40は搬送路30の下側から搬送路30に臨んでいる。プリヘッド40の上方には、従動ローラであるパッドローラ40aが対向配置されている。乗車券90がその表面90aを上にして挿入されると、磁性体が塗布された乗車券90の裏面90bがプリヘッド40に接触し、プリヘッド40から磁気信号が出力される。一方、乗車券90がその裏面90bを上にして挿入された場合には、プリヘッド40からは磁気信号が出力されない。これにより乗車券90がどちらを表にして挿入されたのかが特定される。
【0044】
乗車券90の磁気データを処理する磁気ヘッドは大きく2つのグループに分かれている。これらグループはそれぞれ、読み込み用の磁気ヘッド(第1リードヘッド51,第2リードヘッド61)、書き込み用の磁気ヘッド(第1ライトヘッド52,第2ライトヘッド62)、および、書き込み結果を検証するための磁気ヘッド(第1ベリファイヘッド53,第2ベリファイヘッド63)を有している。
【0045】
第1リードヘッド51、第1ライトヘッド52、および第1ベリファイヘッド53は、搬送路30の下側から搬送路30に臨んでおり、これらは乗車券90の裏面90bが下に向けられているときに使用される。これら第1リードヘッド51、第1ライトヘッド52、および第1ベリファイヘッド53の上方にはそれぞれ、従動ローラであるパッドローラ51a,52a,53aが対向配置されている。パッドローラ51a,52a,53aは、図示しない付勢部材により第1リードヘッド51、第1ライトヘッド52、および第1ベリファイヘッド53側に付勢されている。
【0046】
第2リードヘッド61、第2ライトヘッド62、および第3ベリファイヘッド63は、搬送路30の上側から搬送路30に臨んでおり、これらは乗車券90の裏面90bが上に向けられているときに使用される。これら第2リードヘッド61、第2ライトヘッド62、および第3ベリファイヘッド63の下方にはそれぞれ、従動ローラであるパッドローラ61a,62a,63aが対向配置されている。パッドローラ61a,62a,63aは、図示しない付勢部材により第2リードヘッド61、第2ライトヘッド62、および第2ベリファイヘッド63側に付勢されている。
【0047】
磁気データ処理部10dにおける処理が済んだ乗車券90は、上側ベルト24および下側ベルト26により印字処理部10pへと送り出される。
【0048】
(印字処理部)
印字処理部10pは、感熱処理により乗車券90の表面90aに印字を施す第1サーマルヘッド54および第2サーマルヘッド64を備えている。
【0049】
第1サーマルヘッド54は、搬送路30の上側から搬送路30に臨むように配置されている。第1サーマルヘッド54は、挿入口31への乗車券90の挿入時に、乗車券90の表面90aが上に向けられていた場合に使用される。第1サーマルヘッド54の下方には、駆動ローラである第1プラテンロ一ラ27が第1サーマルヘッド54に対向配置されている。
【0050】
第2サーマルヘッド64は、搬送路30の下側から搬送路30に臨むように配置されている。第2サーマルヘッド64は、挿入口31への乗車券90の挿入時に、乗車券90の表面90aが下に向けられていた場合に使用される。第2サーマルヘッド64の上方には、駆動ローラである第2プラテンロ一ラ28が第2サーマルヘッド64に対向配置されている。
【0051】
第1サーマルヘッド54または第2サーマルヘッド64による印字処理が済んだ乗車券90は、第1プラテンロ一ラ27および第2プラテンロ一ラ28により排出ローラ29側に送り出され、排出ローラ29によりカード状媒体処理装置10から排出される。
【0052】
(位置検出センサ)
搬送路30には、乗車券90の搬送位置を検出する検出器である光センサ71〜80が配置されている。本例の光センサ71〜80はフォトインタラプタであり、光センサ71〜80のうちのいずれかが常に乗車券90を検出可能な間隔で配置されている。光センサ71〜80は制御装置11に接続されており、制御装置11は光センサ71〜80の出力値に基づいて搬送機構20の動作や他の装置の動作を制御する。
【0053】
以下、搬送路30の挿入口31側から排出口39側に向かって、搬送路30上の光センサ71〜80の配置を説明する。まず、第1光センサ71は挿入口31の直後に配置されており、挿入口31への乗車券90の挿入を検出する。第2光センサ72は、乗車券90の表裏を検知するプリヘッド40の直後に配置されており、搬送路30内への乗車券90の取り込みを検出する。第3光センサ73はリードヘッド51,61の直前、第4光センサ74はリードヘッド51,61の直後に配置されている。第5光センサ75はライトヘッド52,62の直前に配置されている。第6光センサ76はベリファイヘッド53,63の直前、第7光センサ77はベリファイヘッド53,63の直後に配置されている。第8光センサ78はサーマルヘッド54,64の直前、第9光センサ79はサーマルヘッド54,64の直後に配置されている。第10光センサ80は排出ローラ29の直後に配置されている。
【0054】
本実施形態では、乗車券90の検出器として光センサ71〜80が採用され、乗車券90の搬送位置を非接触で検出することにより、紙製の乗車券90に検出器が接触することによる乗車券90の損傷を回避している。一方、検出器は、搬送路30上の所定位置における乗車券90の有無を検出可能なものであればよく、光センサには限られない。例えば超音波を用いたセンサや、乗車券90の磁気を検出する磁気センサ、または、乗車券90との物理的な接触が許容できる場合は、スイッチレバーなどの機械的な検出器を用いることもできる。
【0055】
[パンチ穴判別機能]
(追加搬送処理)
以下、図4および図5を用いて、カード状媒体処理装置10のパンチ穴判別機能について説明する。ここで「パンチ穴の判別」とは、搬送中の乗車券90を光センサ71〜80の検出範囲から見失ったときに、それがパンチ穴91の形成位置に起因する一時的な消失なのか、それとも乗車券90が光センサ71〜80の検出範囲に存在しないことに起因する消失なのかを判別することをいう。乗車券90が光センサ71〜80の検出範囲に存在しないことに起因する消失とは、より具体的には、乗車券90が実際に搬送路30内から取り出されたことに起因する消失、または、光センサ71〜80が配置される間隔よりも搬送方向において短い乗車券が搬送される場合に、光センサ71〜80の検出範囲の間に乗車券が存在することに起因する消失が考えられる。そして、「追加搬送」とは、パンチ穴91の判別のための搬送動作をいう。なお、図4および図5のビーム幅70wは、説明の便宜上やや広く誇張して描かれている。
【0056】
本例の光センサ71〜80はフォトインタラプタであり、カード状媒体処理装置10の制御装置11は、各光センサ71〜80のビーム幅70wの一部だけでも受光素子に到達しているときには、その光センサ71〜80の位置には乗車券90はないものと判断する。
【0057】
一方、上でも述べたように、乗車券90に穿たれるパンチ穴91の位置は一定ではない。そのため、パンチ穴91の形成位置が光センサ71〜80による光の照射位置70pに重なった場合には、乗車券90の搬送中に光センサ71〜80の照射光の一部がパンチ穴91から漏出し、受光素子に到達する。この場合、制御装置11は、乗車券90が消失、または乗車券90がその光センサ71〜80の位置を通り過ぎたものと誤判断し、乗車券90のデータ処理に失敗するおそれがある。そして、本例の乗車券90は、図3に示すように、パンチ穴91の位置が光センサ71〜80による光の照射位置70pに重なっている。
【0058】
これに対して、本例のカード状媒体処理装置10は、光センサ71〜80のいずれかが乗車券90を検出し、その後、光センサ71〜80のすべての検出範囲から乗車券90を見失ったときには、パンチ穴の直径91dと、光センサ71〜80のビーム幅70wとを合計した長さ分、乗車券90を搬送路30の排出口39側へ追加搬送する。なお、ここでいうビーム幅70wとは、光センサ71〜80のうちいずれか一つのビーム幅70wである。本例では、乗車券90を見失う直前に乗車券90を検出していた光センサ71〜80のビーム幅70wを用いるものとする。
【0059】
図4は、第5光センサ75を例として、制御装置11がパンチ穴91を判別する様子を示す模式図である。
【0060】
図4(a)では、第5光センサ75の照射光は、そのビーム幅70wの全体が乗車券90により遮断されている。このとき制御装置11は、乗車券90が第5光センサ75の位置にあるものと判断する。図4(b)の位置まで乗車券90が搬送されると、第5光センサ75のビーム幅70wの範囲にパンチ穴91が重なり、漏出した照射光が受光素子に到達する。これにより制御装置11は、乗車券90の現在位置を見失うこととなる。そして、制御装置11は、乗車券90の消失がパンチ穴91に起因するものかどうかを判別するため、図4(c)に示すように、乗車券90をパンチ穴の直径91d分、追加搬送する。しかし、この例では、この段階でも第5光センサ75のビーム幅70wの一部にパンチ穴91が重なっており、制御装置11は依然として乗車券90の現在位置を検出することができない。そこで制御装置11は、図4(d)に示すように、ビーム幅70wの長さの分だけ乗車券90をさらに追加搬送する。これにより乗車券90が第5光センサ75に検出され、制御装置11は搬送を中止することなく乗車券90の処理を続ける。
【0061】
なお、本例のカード状媒体処理装置10は、各光センサ71〜80のビーム幅70wの一部だけでも受光素子に到達しているときには、その光センサ71〜80の位置に乗車券90がないものと判断する仕様であるため、結果的にパンチ穴の直径91dと第5光センサ75のビーム幅70wとを合計した長さ分、乗車券90を追加搬送することとなったが、パンチ穴の直径91d分の追加搬送のみでパンチ穴91を判別可能な検出器を用いた場合や、パンチ穴の直径91d分の搬送中に乗車券90を検出した場合には、追加搬送をそこで中止することもできる。または、これとは逆に、パンチ穴の直径91dとビーム幅70wとを合計した長さ分、無条件に一度に追加搬送してもよい。その他、光センサ71〜80のビーム幅70wや検出精度を調節することで、パンチ穴91の判別に必要な追加搬送量を調節することも可能と考えられる。なお、当然ではあるが、第10センサ80により乗車券90の排出を認めたときは、搬送路30から乗車券90が消失しても追加搬送を行う必要はない。
【0062】
このように、本例のカード状媒体処理装置10では、光センサ71〜80が搬送路30内の乗車券90を見失ったときに、そこで搬送処理を終了させるのではなく、少なくともパンチ穴の直径91d分だけさらに乗車券90を搬送してみることにより、乗車券90が光センサ71〜80の検出範囲に存在しないのか、それともパンチ穴91の形成位置が光センサ71〜80による光の照射位置70pに重なっていたのかを判別することができる。そして、パンチ穴の直径91d分だけではなく、パンチ穴の直径91dと光センサ71〜80のビーム幅70wとを合計した長さ分、乗車券90を追加搬送することにより、検出方式の関係でパンチ穴の直径91d分の追加搬送だけでは乗車券90の存在を検出できない場合でも、より確実にパンチ穴91を判別することが可能となる。
【0063】
また、自動改札機では、次から次に投入される乗車券90を遅滞なくスムーズに処理しなければならない。本例のカード状媒体処理装置10は、乗車券90を見失ったときに、乗車券90を見失ったときの搬送方向と同じ方向へ乗車券90を追加搬送することでパンチ穴91を判別する。より具体的には、カード状媒体処理装置10は、乗車券90を見失ったときに乗車券90を排出口39側に追加搬送することでパンチ穴91を判別する。この追加搬送は搬送機構20を停止させることなく連続的に行われている。これにより、乗車券90のスムーズな処理とパンチ穴91の判別との両立が図られている。
【0064】
図5は、第5光センサ75と第6光センサ76を例として、複数の光センサによりパンチ穴91が判別される様子を示す模式図である。以下に説明する図5のパンチ穴91は、図3に示されるパンチ穴91の形成位置よりも、乗車券90の搬送方向における乗車券90の後端(以下、単に「乗車券90の後端」という。)側に形成されている。
【0065】
本例の光センサ71〜80は、乗車券90の搬送方向に沿って、乗車券90の搬送方向における長さ90Lよりも短い間隔iで並べられている。そのため、常に光センサ71〜80のうちのいずれかは乗車券90を捉えることができ、乗車券90の搬送位置をより正確に特定することが可能とされている。
【0066】
図5(a)では、第5光センサ75の照射光は、そのビーム幅70wの全体が乗車券90により遮断されている。このとき制御装置11は、乗車券90は第5光センサ75の位置にあるものと判断する。図5(b)の位置まで乗車券90が搬送されると、第5光センサ75のビーム幅70wの範囲にパンチ穴91が重なり、漏出した照射光が受光素子に到達する。これにより制御装置11は、乗車券90の現在位置を見失うこととなる。そして、制御装置11は、乗車券90の消失がパンチ穴91に起因するものかどうかを判別するため、図5(c)に示すように、乗車券90をパンチ穴の直径91d分、追加搬送する。しかし、この例では、この段階でも第5光センサ75のビーム幅70wの一部にパンチ穴91に重なっており、制御装置11は依然として乗車券90の現在位置を検出することができない。そこで制御装置11は、図5(d)に示すように、ビーム幅70wの長さの分だけ乗車券90をさらに追加搬送する。
【0067】
このとき、図5の例ではパンチ穴91の位置が乗車券90の後端寄りであったことから、乗車券90の追加搬送により、乗車券90の後端が第5光センサ75のビーム幅70wの範囲内に入り込んでいる。そのため、乗車券90は、ビーム幅70wの全長を遮断することができず、以降、制御装置11は第5光センサ75によって乗車券90を検出することはできない。
【0068】
上でも述べたように、本例の光センサ71〜80は、乗車券90の搬送方向における長さ90Lよりも短い間隔iで並べられており、常に光センサ71〜80のうちのいずれかで乗車券90を捉えることが可能とされている。すなわち、乗車券90の後端が第5光センサ75のビーム幅70wの範囲内に入ったということは、第5光センサ75では検出不能な位置まで乗車券90が搬送されたということであり、それはつまり、乗車券90が、第5光センサ75に隣接する第6光センサ76で検出可能な位置に到達したことを意味している。よってこの場合には、制御装置11は、第6光センサ76の位置に乗車券90を検出することができる。
【0069】
その他、例えば乗車券90がパンチ穴の直径91dよりも短い間隔で挿入された場合、乗車券90同士の間隔をパンチ穴91と誤判断してしまうおそれがある。一方、上で述べたように、本例の搬送路30の挿入口31にはシャッタ32が設けられており、挿入口31に乗車券90が挿入されると、その乗車券90が排出されるまではシャッタ32により挿入口31が遮蔽される。これにより、乗車券90の連続投入の問題が未然に回避されている。
【0070】
(移動量推定手段)
乗車券90を追加搬送するときは、光センサ71〜80は乗車券90を見失っているから、光センサ71〜80で乗車券90の現在位置を特定することはできない。乗車券90の位置が不明なときにパンチ穴91の判別に必要となる距離だけ正確に乗車券90を追加搬送するためには、光センサ71〜80とは別に、乗車券90の移動量を推定する手段を備える必要がある。
【0071】
ここで、本例のモータ21はステッピングモータである。ステッピングモータはその回転角度をステップ数で特定することができる。ステッピングモータのこの性質を利用し、モータ21のステップ数と乗車券90の移動量との関係を関数化することにより、モータ21を駆動したステップ数から乗車券90の移動量を算出することができる。本例では、モータ21を乗車券90の移動量推定手段として用いることにより、見失った乗車券90の移動量を制御することが可能とされている。
【0072】
その他、乗車券90の移動量推定手段としては、搬送機構20を構成する可動部のいずれか、例えば下側プーリ25のいずれかの従動ローラに、その従動ローラの駆動量を検出するエンコーダEを設け(図1参照)、制御装置11がエンコーダEの出力値から乗車券90の移動量を推定する構成としてもよい。従動ローラに設けたエンコーダEを使って搬送機構20をフィードバック制御することにより、乗車券90の移動量をその従動ローラの実際の駆動量に基づいて推定することができる。これにより、オープンループ制御を用いた移動量の推定よりも高い精度で、見失った乗車券90の移動量を制御することができる。
【0073】
(パンチ穴判別の手順)
図6は、カード状媒体処理装置10によるパンチ穴91の判別手順を説明するフローチャートである。乗車券90の搬送が開始されると、制御装置11は、光センサ71〜80の出力値に基づいて乗車券90の位置を監視しながら搬送機構20を駆動し、乗車券90の磁気データ処理および印字処理を行う(S1:NとS2:Nのループ)。乗車券90の磁気データ処理および印字処理が終了し、乗車券90が排出口39から排出されると、制御装置11は搬送処理を終了する(S2:Y)。
【0074】
乗車券90の搬送中に制御装置11が乗車券90の現在位置を見失うと(S1:Y)、制御装置11は乗車券90の追加搬送を行う(S3)。そして光センサ71〜80のいずれかにより乗車券90が検出されたとき(S4:Y)は搬送を再開する(S5)。追加搬送によっても乗車券90が検出されないときには(S4:N)、搬送異常の発生、または乗車券90が手動で取り出されたものとして搬送を終了する。
【0075】
(他の実施の形態)
以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明においては、先の実施形態と同一または同様の構成については、先の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図7は、切欠きが形成された乗車券90の外観を示す図である。図7(a)は本例の乗車券90の平面図である。図7(b)は図7(a)の乗車券90のA−A方向断面図である。上述した形態では、乗車券90には、その厚み方向90tに貫通したパンチ穴91が空けられているが、パンチ穴91は、いわゆる改札鋏による鋏痕のように、乗車券90が搬送される方向と平行な乗車券90の辺の一部を切欠く切欠き91bであっても良い。この場合には、乗車券90が搬送される方向における切欠き91bの寸法である切欠き幅91e分、乗車券90を追加搬送することにより、搬送中の乗車券90を光センサ71〜80の検出範囲から見失ったときに、それが切欠き91bの形成位置に起因する一時的な消失なのか、それとも乗車券90が光センサ71〜80の検出範囲に存在しないことに起因する消失なのかを判別することが可能になる。
【0077】
また、切欠き幅91e分だけではなく、切欠き幅91eと光センサ71〜80のビーム幅70wとを合計した長さ分、乗車券90を追加搬送することにより、検出方式の関係で切欠き幅91e分の追加搬送だけでは乗車券90の存在を検出できない場合でも、より確実に切欠き91bを判別することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 カード状媒体処理装置
10d 磁気データ処理部
10p 印字処理部
11 制御装置(制御部)
20 搬送機構
21 ステッピングモータ(移動量推定手段)
23 上側プーリ(エンコーダ)
25 下側プーリ(エンコーダ)
30 搬送路
31 挿入口
32 シャッタ
39 排出口
71〜80 第1光センサ〜第10光センサ(検出器)
70w 光センサのビーム幅(検出器の検出範囲)
i 光センサの配置間隔
90 乗車券(記録媒体)
91 パンチ穴
91b 切欠き
91d パンチ穴の直径
91e 切欠き幅
90L 乗車券の長さ
90t 乗車券の厚み

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7