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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-174490(P2018-174490A)
(43)【公開日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】スペクトル拡散受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7075 20110101AFI20181012BHJP
   H04B 1/7093 20110101ALI20181012BHJP
【FI】
   H04B1/7075
   H04B1/7093
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-72474(P2017-72474)
(22)【出願日】2017年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 治
(72)【発明者】
【氏名】谷島 正信
(72)【発明者】
【氏名】中台 光洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智隼
(57)【要約】
【課題】受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と周波数検波により周波数オフセットの推定とを同時に実行可能である汎用的初期捕捉回路を有するスペクトル拡散受信機の提供
【解決手段】スペクトル拡散受信機に、受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、受信信号と設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、を含む初期捕捉回路を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、
前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【請求項2】
前記相関フィルタ部は、マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとのchip毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングとchip毎の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項3】
前記相関フィルタ部は、部分マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとをそれぞれK分割してそれぞれの部分相関部の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと K分割されたそれぞれの部分相関部の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項4】
前記相関フィルタ部は、マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとのchip毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前記相関フィルタ部から受け付けた相関信号列を第1の相関信号列として それぞれの桁毎の相関信号を実数成分毎と虚数成分毎に複数の隣接する相関信号相互と平均化して纏めた第2の相関信号列を演算し、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの第2の相関信号列を保持し、保持した当周期の第2の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項5】
前記相関フィルタ部は、部分マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとをそれぞれK分割して 並び通りに各部分を構成する各chip相互の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングとchip毎の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項6】
前記周波数オフセット推定部は、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって位相値を検出する際に、所定数の桁毎に隣り合う相関信号の位相値をそれぞれ検出して、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項7】
前記周波数オフセット推定部は、検出した位相値群を平均して周波数オフセット推定値を算出する際に、当周期の位相値群と共に過去のchip周期で検出した位相値群を含めた平均の値を周波数オフセット推定値として算出することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項8】
前記初期捕捉回路を具備して人工衛星にコマンド受信用として搭載されることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【請求項9】
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、
前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を具備することを特徴とする初期捕捉回路。
【請求項10】
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを算出することと並列的に、
前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次算出し、
前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、
保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、
検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として算出する
ことを特徴とするスペクトル拡散受信機における初期捕捉用情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期捕捉回路を具備するスペクトル拡散受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル拡散受信機(以下、単に受信機とも記載)は、送信機側で拡散コードを用いてスペクトル拡散された送信波を受信して、逆拡散処理や復調を実施する。この逆拡散処理は、受信信号に含まれる拡散系列に同期する処理が含まれる。このため受信機では、拡散系列の先頭タイミングを検出するための初期捕捉が行われている。この初期捕捉は、受信信号と逆拡散用の拡散コードとの相関を取って、そのピークを用いて拡散系列の先頭タイミングを導出している。なお、受信機は、送信機(受信電波の搬送波)と受信機内で用いる搬送周波数の間に周波数誤差があると相関ピークが訛るため、高精度な初期捕捉を行えない。この対策として、マッチドフィルタを用いて周波数誤差推定処理で周波数同期を取った後に初期捕捉を実施することも行われている。
【0003】
関連する技術としては、特許文献1や2が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、初期捕捉と周波数同期を同時に実現することで、周波数誤差が存在する環境でも高速に精度良く初期捕捉を試みるスペクトル拡散受信機が記載されている。このスペクトル拡散受信機は、周期を有する拡散系列が乗算された信号を受信信号として用いることができる。
【0005】
また、特許文献2には、通信効率を損なうことなく高速に周波数同期処理を試みるスペクトル拡散受信機が記載されている。この受信機では、同期処理として、初期捕捉処理の他に、送信機と受信機との間に存在する周波数オフセットの推定および補正を行う。この受信機は、送信情報に依らず同一の周期であって送信情報毎に繰り返しパターンが異なる変調信号に対して拡散符号を乗算した信号を、受信信号として用いることができる。
【0006】
近年周波数帯の逼迫によって、例えば衛星通信にKa帯(30GHz帯)が使用されるように、RF(Radio Frequency)周波数が高くなる傾向にある。高周波数帯の利用では、ドップラーシフトなどによる周波数オフセットが拡大する。
【0007】
幾つかの受信機では、マッチドフィルタによって、受信信号に含まれる拡散コードと受信機に設定されている拡散コードとの相関出力が最大となる位相タイミングを、拡散コードが同期する位相タイミングとして検出している。
【0008】
マッチドフィルタは周波数特性を有しており、フィルタの設計における搬送波周波数に対して受信搬送波周波数が一致する場合、相関出力が最大値となる特性を有する。しかし、受信搬送波周波数がフィルタ設計における搬送波周波数より離れる(周波数オフセットが大きくなる)に従って、相関出力が低下する傾向が生じる。
【0009】
拡散コードが同期する位相タイミングの検出は、受信信号と雑音や他信号との違いを識別するために、相関出力が任意の相関値以上になった時に判定する仕組みで行われることが多い。この仕組みでは、任意の相関値以上の範囲について拡散コードが同期する位相タイミングを検出できる。換言すれば、受信機の位相タイミングを検出する範囲は、検出可能な周波数オフセット範囲が任意の相関値以上の範囲に限定される。この結果、大きな周波数オフセットが生じた環境では受信機は位相タイミングの検出ができない。
【0010】
この対策として、大きな周波数オフセットに対して、異なる搬送波周波数で設計した複数のマッチドフィルタを多量に用いて、拡散コードに同期する位相タイミングを検出することも可能である。
【0011】
非特許文献1は、位相タイミングの検出周波数帯域の改善方法として、FFT(Fast Fourier Transform)を用いて、拡散コードに同期する位相タイミングと周波数オフセットを同時に推定する方法を開示する。FFTでは、周波数ドメインの信号で処理する為、大きな周波数オフセットを有する環境下でも、拡散コードに同期する位相タイミングの検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015−026972号公報
【特許文献2】特開2015−162722号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】奥田慎治,片山正昭,山里敬也,小川明,“搬送波周波数偏差に伴うスペクトル拡散信号の周波数・拡散系列同期捕捉,”信学論(A),vol.J79-A,no.10,pp.1725-1733,Oct. 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
直接拡散方式のスペクトル拡散通信の受信機において、検出過程で受信機の期待する搬送波周波数と受信波の搬送波周波数の差が大きい場合、すなわち周波数オフセットが許容量より大きい場合、初期捕捉を実施できない。
【0015】
この対策として、受信機において、拡散処理された受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と同時に、周波数検波により周波数オフセット(受信機の期待する搬送波周波数と受信波の搬送波周波数の差)を推定する。
【0016】
この際に、非特許文献1のFFT方式、複数のマッチドフィルタによる方式を用いた場合、何れにしてもそれ相当の回路規模が必要である。
【0017】
また、非特許文献1に記載されたFFT方式を用いた方式の場合、周波数オフセット推定精度がFFTポイント数から制限される問題点もある。
【0018】
他方、特許文献1や2に記載された方式(スペクトル拡散受信機)では、初期捕捉と周波数同期を同時に実現することができるものの、受信信号として用いることができる信号波の変調方式や通信規格について、それぞれ限定されている。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、スペクトル拡散通信に関して受信搬送波周波数に拡散処理された受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と周波数検波により周波数オフセットの推定とを同時に実行可能に構成された汎用的初期捕捉回路を具備したスペクトル拡散受信機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態に係るスペクトル拡散受信機は、実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とする。
【0021】
本発明の一実施形態に係る初期捕捉回路は、実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、を具備することを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施形態に係るスペクトル拡散受信機における初期捕捉用情報取得方法は、実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを算出することと並列的に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次算出し、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スペクトル拡散通信に関して受信搬送波周波数に拡散処理された受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と周波数検波により周波数オフセットの推定とを同時に実行可能に構成された汎用的初期捕捉回路を具備したスペクトル拡散受信機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態の初期捕捉回路10を具備したスペクトル拡散受信機1を示した構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態の初期捕捉回路10を示した構成図である。
図3図3は、スペクトル拡散受信機1における周波数オフセット識別方法の処理フローを示したフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態の初期捕捉回路101を示した構成図である。
図5】本発明の第3の実施形態の初期捕捉回路102を示した構成図である。
図6】本発明の第4の実施形態の初期捕捉回路103を示した構成図である。
図7】本発明の第5の実施形態の初期捕捉回路104を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の初期捕捉回路10を具備したスペクトル拡散受信機1を示した構成図である。図2は、第1の実施形態の初期捕捉回路10を示した構成図である。
【0027】
スペクトル拡散受信機1は、初期捕捉回路10を具備する。スペクトル拡散受信機1は、少なくとも初期捕捉回路10によって導出された周波数オフセットに基づいた周波数補正と拡散コードの位相タイミングによる復調を実施する。初期捕捉回路10は、複素信号である受信信号を受け付けて、周波数オフセット推定値と受信信号に含まれる拡散コードと受信機1に設定されている拡散コードとの相関のピークタイミングとを出力する。周波数オフセット推定値と拡散コードの相関ピークタイミングは、それぞれ後段回路で使用される。
【0028】
図2に示す初期捕捉回路10は、相関フィルタ部11と周波数オフセット推定部12を含み構成されている。
【0029】
相関フィルタ部11は、受信機1に設定されている拡散コードと受信信号の拡散コードとの相関ピークタイミングを検出して出力する。また、相関フィルタ部11は、受信信号と受信機1に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁とした相関信号列を逐次出力するように構成されている。この各桁となる相関信号のそれぞれの列の組み合わせには、周波数オフセット量での複素正弦波成分が現れる。相関フィルタ部11は、例えばマッチドフィルタ回路や部分マッチドフィルタ回路を用いて構成すればよい。
【0030】
相関信号列には、拡散コードのchipごとの相関信号を各桁に設定してもよいし、また部分マッチドフィルタ回路の分割されたそれぞれの部分相関部の相関信号を各桁に設定してもよい。
【0031】
周波数オフセット推定部12は、相関フィルタ部11から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付けて、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持する。この保持された当周期の相関信号列について、周波数オフセット推定部12は、周波数検波によって隣り合う相関信号の位相値をそれぞれ検出する。なお、位相値とは位相差の値である。最後に周波数オフセット推定部12は、検出した位相値群について平均化フィルタによって平均処理した値を周波数オフセット推定値として出力する。なお、周波数検波結果には雑音成分が含まれるため、複数の周波数検波結果の時間平均処理を施した結果を周波数オフセット推定値とする。
【0032】
周波数オフセット推定部12は、例えば図示しているように、ピークタイミング相関信号列保持部13、周波数検波部14、平均処理部15のように回路を構成すればよい。
【0033】
ピークタイミング相関信号列保持部13は、複素信号である入力信号(それぞれの所定長毎の相関信号)について、相関フィルタ部11から入力される相関ピークタイミング毎にそのタイミングの相関信号列を実数部と虚数部に分けてそれぞれ記憶保持し、記憶した各タイミングの相関信号(各桁の値(複素数の値))を 隣接信号毎に周波数検波部14に出力する回路である。
【0034】
例えば、255桁の相関信号列であれば、1桁目と2桁目を最初のペアとして、2桁目と3桁目を2番目のペアとして、・・・254桁目と255桁目を最後のペアとして、周波数検波部14に出力するように動作する。
【0035】
また、周波数オフセット推定部13は、保持した当周期の相関信号列について、所定数の桁ごとに隣り合う相関信号を周波数検波部14に出力するようにしてもよい。例えば3桁毎であれば、1桁目と4桁目を最初のペアとして、5桁目と8桁目を2番目のペアとして、最後のペアを組めるまで繰り返して、隣接信号のペア列を周波数検波部14に出力するように動作させる。以下の実施形態も同様である。
【0036】
周波数検波部14は、ピークタイミング相関信号列保持部13から出力された それぞれ複素信号である隣接した相関信号のペアを逐次受け付けて、それぞれのペアごとに周波数検波を行い、それぞれのペアの周波数オフセット(位相値)を検出して逐次出力する回路である。
【0037】
平均処理部15は、入力信号(周波数オフセット(位相値))を逐次受け付けて、平均化フィルタによって平均処理した値を出力する。なお、平均処理部15による平均化処理は、同周期の位相値群のみの平均化を図っても良いものの、同周期の位相値群と共に過去のchip周期で検出した位相値群を含めた平均の値を周波数オフセット推定値として算出するように構成してもよい。
【0038】
このように初期捕捉回路10を構成して、受信信号の拡散コードと設定されている拡散コードの相関ピークタイミングの検出と周波数オフセットの推定とを並列的かつ同時的に実行可能に構成できる。また、この回路構成によれば、必要に応じて所定長の相関信号を所定桁数並べた相関信号列を用いることで、必要に応じた広帯域な受信搬送波周波数に拡散処理された様々なスペクトル拡散通信の態様の受信信号にも対応可能であり、且つ必要に応じた小型の初期捕捉回路を構築することも可能である。この際、相関信号列の桁数の設定などで結果的に、推定精度や消費演算能力、消費電力なども調整できる。結果、スペクトル拡散通信に関して受信搬送波周波数に拡散処理された受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と周波数検波により周波数オフセットの推定とを同時に実行可能に構成された汎用的初期捕捉回路を具備したスペクトル拡散受信機を得られる。
【0039】
次に、第1の実施形態のスペクトル拡散受信機1における周波数オフセット識別方法を説明する。
【0040】
図3は、スペクトル拡散受信機1における周波数オフセット識別方法の処理フローを示したフローチャートである。なお、以下のフローと同時並列的に相関フィルタ部11によって実施する受信信号の所定chip周期毎の相関ピークタイミングを検出することはマッチドフィルタ回路や部分マッチドフィルタ回路の出力をそのまま用いることとしてもよく、特に限定しない。
【0041】
まず、スペクトル拡散受信機1(相関フィルタ部11)は、受信信号に含まれる拡散コードを構成するサンプル周期を定義された所定長の複素信号と自受信機に設定されている拡散コードを構成する同様の所定長の複素信号についての部分的相関を取得して、それぞれの部分の相関値信号をそれぞれ出力する(S101)。所定長の複素信号は、例えば拡散コードのchip長をサンプル長に設定すれば、chip毎の拡散コードの相関を取ることに成る。
【0042】
次に、スペクトル拡散受信機1(周波数オフセット推定部12)は、前回ピークを示したタイミングのそれぞれの部分的相関信号を記憶保持する(S102)。すなわち、現chip周期では、相関フィルタ部11によって前回のchip周期のピーク検出において特定された相関ピークタイミングと同じ部分にあたるサンプルタイミングの各部分の相関信号列を保持する。
【0043】
次に、スペクトル拡散受信機1(周波数オフセット推定部12)は、相関信号列の隣接信号毎に逐次的に周波数検波して周波数検波して位相値列を出力する(S103)。各位相値は、隣接した相関信号の位相の差分の値である。
【0044】
次に、スペクトル拡散受信機1(周波数オフセット推定部12)は、位相値群を平均化処理して得た平均位相値を周波数オフセット推定値として識別する(S104)。
【0045】
このように動作することで、例えば広帯域な受信搬送波周波数に拡散処理された受信信号の拡散コードの相関ピークタイミングの検出処理と同時並列的に、周波数検波により周波数オフセットの推定を実行できる。
【0046】
次に、幾つかの回路構成例を示して本発明を説明する。
【0047】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態の初期捕捉回路101を示した構成図である。
【0048】
図4に示す初期捕捉回路101は、マッチドフィルタ回路と周波数検波を用いた回路構成を採る。
【0049】
初期捕捉回路101は、マッチドフィルタ回路111と、周波数オフセット推定回路121を含む。
【0050】
マッチドフィルタ回路111は、受信信号に含まれる拡散コードと自受信機に設定されている各拡散コードとの相関出力が全体で最大となる位相タイミングを、それぞれの受信信号に含まれる拡散コードを構成する各chipの相関値を加算し、振幅若しくは電力を参照してNchip周期でピークサーチして出力する回路構成を有する。
【0051】
また、このマッチドフィルタ回路111は、受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとのchip毎の相関信号を各桁にもつ相関信号列を周波数オフセット推定回路121に逐次出力する。
【0052】
なお、Nchip周期のピークサーチ結果である相関出力が全体で最大となる位相タイミングは、周波数オフセット推定回路121にも入力するように構成する。以下の実施形態も同様である。
【0053】
周波数オフセット推定回路121は、マッチドフィルタ回路111からNchip周期毎の相関ピークタイミングとchip毎の相関信号からなる相関信号列を受け付け、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当Nchipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当Nchipの相関信号列について隣り合う相関信号の位相値を周波数検波して逐次的に検出し、その位相値の列を平均フィルタに入力して(L×N)chip分平均処理して得た平均位相値を周波数オフセット推定値として出力する。なお、このLはchip周期の繰り返し回数を示し、このNは符号長を示す。
【0054】
なお、周波数オフセット推定の開始タイミングは、予め、少なくても1度コード長Nchipで、相関ピークタイミングを推定した後に、周波数オフセット推定処理を実施する。また、コード長Nchipの代わりにNchipの整数倍で相関ピークタイミング推定を行った後に、周波数オフセット推定処理を実施するように構成してもよい。また、Nchip毎の相関ピークタイミング推定を数度行い、安定した相関ピークタイミングが得られた後に、周波数オフセット推定処理を実施するように構成してもよい。以下の実施形態も同様である。
【0055】
この構成によれば、1つのマッチドフィルタ回路を使用し、拡散コードのコードを構成するchip毎の隣接する相関信号相互に含まれる周波数成分を逐次的に周波数検波し、その検波結果の平均処理を施した結果を、周波数オフセット推定値とすることで、拡散コードの相関ピークタイミングの検出と周波数オフセットの推定が高精度に実施可能になる。
【0056】
[第3の実施形態]
図5は、第3の実施形態の初期捕捉回路102を示した構成図である。
【0057】
図5に示す初期捕捉回路102は、部分マッチドフィルタ回路と周波数検波を用いた回路構成を採る。
【0058】
初期捕捉回路102は、部分マッチドフィルタ回路112と、周波数オフセット推定回路122を含む。
【0059】
部分マッチドフィルタ回路112は、受信信号に含まれる拡散コードと自受信機に設定されている各拡散コードとの相関出力がNchip毎の全体で最大となる相関ピークタイミングを、K分割されている各部分相関器(0からK−1)によって出力された各相関値の振幅若しくは電力を加算し、Nchip周期でピークサーチして出力する回路構成を有する。
【0060】
また、このマッチドフィルタ回路111は、拡散コードを含む受信信号と自受信機に設定されている拡散コードとをそれぞれK分割してそれぞれの部分の相関信号を各とした相関信号列として周波数オフセット推定部122に逐次出力する。
【0061】
周波数オフセット推定回路122は、部分マッチドフィルタ回路112からNchip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当N-chipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当Nchipの相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、その位相値群を平均処理して得た平均位相値を周波数オフセット推定値として出力する。
【0062】
この構成によれば、1つの部分マッチドフィルタ回路を使用し、拡散コードが含まれる部分毎の隣接する相関信号相互に含まれる周波数成分を逐次的に周波数検波し、その検波結果の平均処理を施した結果を、周波数オフセット推定値とすることで、広帯域な受信搬送波周波数においても、拡散コードの相関ピークピークタイミングの検出と周波数オフセットの推定が可能になる。また、周波数オフセットの推定精度等を所要に設定できる。
【0063】
[第4の実施形態]
図6は、第4の実施形態の初期捕捉回路103を示した構成図である。
【0064】
図6に示す初期捕捉回路103は、マッチドフィルタ回路と周波数検波を用いた回路構成を採る。初期捕捉回路103は、マッチドフィルタ回路113と、周波数オフセット推定回路123を含む。この実施形態で周波数オフセット推定回路123内の構成が第2の実施形態の周波数オフセット推定回路121と異なる。また、マッチドフィルタ回路113は、マッチドフィルタ回路111と同一の構成である。
【0065】
マッチドフィルタ回路113は、受信信号に含まれる拡散コードと自受信機に設定されている各拡散コードとの相関出力がNchip毎に全体で最大となる相関ピークタイミングを、受信信号に含まれる拡散コードを構成する各chipの相関値を加算し、振幅若しくは電力を参照してNchip周期でピークサーチして出力する回路構成を有する。
【0066】
また、このマッチドフィルタ回路113は、受信信号に含まれる拡散コードを構成する各chipと拡散コードを構成する各chipとの相関信号を各桁の信号とした相関信号列を周波数オフセット推定回路123に逐次出力する。
【0067】
周波数オフセット推定回路123は、マッチドフィルタ回路113からNchip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、マッチドフィルタ回路113から受け付けた相関信号列(第1の相関信号列)について、それぞれの相関信号を実数成分毎と虚数成分毎に複数の隣接信号を平均化して相関信号列(第2の相関信号列)を出力する。また、周波数オフセット推定回路123は、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当Nchipの相関タイミングの第2の相関信号列を保持し、保持した当Nchipの第2の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として逐次的に出力する。
【0068】
この構成によれば、1つのマッチドフィルタを使用し、拡散コードが含まれる部分毎の隣接する相関出力相互に含まれる周波数成分を逐次的に周波数検波し、その検波結果の平均処理を施した結果を、周波数オフセット推定値とすることで、拡散コードの相関ピークタイミングの検出と周波数オフセットの推定が可能になる。また、周波数オフセットの推定精度等を所要に設定できる。
【0069】
[第5の実施形態]
図7は、第5の実施形態の初期捕捉回路104を示した構成図である。
【0070】
図7に示す初期捕捉回路104は、部分マッチドフィルタ回路と周波数検波を用いた回路構成を採る。初期捕捉回路104は、部分マッチドフィルタ回路114と、周波数オフセット推定回路124を含む。この実施形態の周波数オフセット推定回路124内で周波数検波に利用する信号(相間信号列)は、第2の実施形態(マッチドフィルタ回路111)の出力を用いて生成した信号(相間信号列)と同じに構成している。また、部分マッチドフィルタ回路114は、0からK−1のそれぞれの部分でそれぞれのchip毎の相関結果をchip毎に出力する。
【0071】
部分マッチドフィルタ回路114は、受信信号に含まれる拡散コードと自受信機に設定されている各拡散コードとの相関出力が全体で最大となる位相タイミングを、K分割されている各部分相関部(0からK−1)によって構成されている。この部分マッチドフィルタ回路114は、出力された各相関値の振幅若しくは電力を加算し、Nchip周期でピークサーチして出力する回路構成を有する。
【0072】
この部分マッチドフィルタ回路114は、Nchip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した位相タイミングにあたる当Nchipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当Nchipの相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として逐次出力する。
【0073】
この構成によれば、1つの部分マッチドフィルタ回路を使用し、拡散コードのコードを構成するchip毎の隣接する相関信号相互に含まれる周波数成分を逐次的に周波数検波し、その検波結果の平均処理を施した結果を、周波数オフセット推定値とすることで、広帯域な受信搬送波周波数においても、拡散コードに同期する位相タイミングの検出と周波数オフセットの推定が可能になる。
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、スペクトル拡散通信に関して受信搬送波周波数に拡散処理された受信信号の拡散コードの位相タイミングの検出と周波数検波により周波数オフセットの推定とを同時に実行可能に構成された汎用的初期捕捉回路を具備したスペクトル拡散受信機を提供できる。この本発明に係る構成は、複数のマッチドフィルタによる同等機能を提供する方式や、FFT方式に比較し、回路規模が小さくなる特徴を奏する。また、スペクトル拡散通信に使用する通信波の態様や所要演算能力等を所要に調整できる。 なお、実施形態を例示して本発明を説明した。しかし、本発明の具体的な構成は前述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施形態のブロック構成の分離併合、手順の入れ替えなどの変更は本発明の趣旨および説明される機能を満たせば自由であり、上記説明が本発明を限定するものではない。例えば、上記説明した初期捕捉回路の一部についてソフトウェアを用いてプロセッサで実現して置換することとしてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、
前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【0076】
[付記2]
前記相関フィルタ部は、マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとのchip毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングとchip毎の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする付記1に記載のスペクトル拡散受信機。
【0077】
[付記3]
前記相関フィルタ部は、部分マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとをそれぞれK分割してそれぞれの部分相関部の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと K分割されたそれぞれの部分相関部の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする付記1に記載のスペクトル拡散受信機。
【0078】
[付記4]
前記相関フィルタ部は、マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとのchip毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前記相関フィルタ部から受け付けた相関信号列を第1の相関信号列として それぞれの桁毎の相関信号を実数成分毎と虚数成分毎に複数の隣接する相関信号相互と平均化して纏めた第2の相関信号列を演算し、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの第2の相関信号列を保持し、保持した当周期の第2の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する
ことを特徴とする付記1に記載のスペクトル拡散受信機。
【0079】
[付記5]
前記相関フィルタ部は、部分マッチドフィルタ回路で構成され、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとをそれぞれK分割して 並び通りに各部分を構成する各chip相互の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力し、
前記周波数オフセット推定部は、前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングとchip毎の相関信号からなる相関信号列を逐次受け付けて、周波数オフセット推定値を出力する
ことを特徴とする付記1に記載のスペクトル拡散受信機。
【0080】
[付記6]
前記周波数オフセット推定部は、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって位相値を検出する際に、所定数の桁毎に隣り合う相関信号の位相値をそれぞれ検出して、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力することを特徴とする付記1ないし5の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【0081】
[付記7]
前記周波数オフセット推定部は、検出した位相値群を平均して周波数オフセット推定値を算出する際に、当周期の位相値群と共に過去のchip周期で検出した位相値群を含めた平均の値を周波数オフセット推定値として算出することを特徴とする付記1ないし6の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【0082】
[付記8]
前記初期捕捉回路を具備して人工衛星にコマンド受信用として搭載されることを特徴とする付記1ないし7の何れか1項に記載のスペクトル拡散受信機。
【0083】
[付記9]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について N-chip毎の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号に含まれる拡散コードを構成する各chipと 前記自受信機に設定されている拡散コードを構成する各chipの相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力するマッチドフィルタと、
前記マッチドフィルタからN-chip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当N-chipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当N-chipの相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【0084】
[付記10]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について N-chip毎の相関ピークタイミングを出力すると共に、拡散コードを含む前記受信信号と自受信機に設定されている前記拡散コードとをそれぞれK分割してそれぞれの部分を各桁とした相関信号列を逐次出力する部分マッチドフィルタと、
前記部分マッチドフィルタからN-chip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当N-chipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当N-chipの相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【0085】
[付記11]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について N-chip毎の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号に含まれる拡散コードを構成する各chipと 前記自受信機に設定されている拡散コードを構成する各chipの相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力するマッチドフィルタと、
前記マッチドフィルタからN-chip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前記マッチドフィルタから受け付けた相関信号列を第1の相関信号列として それぞれの相関信号を実数成分毎と虚数成分毎に複数の隣接信号と平均化して纏めた第2の相関信号列を演算し、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当N-chipの相関タイミングの第2の相関信号列を保持し、保持した当N-chipの第2の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路
を具備して成ることを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【0086】
[付記12]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について N-chip毎の相関ピークタイミングを出力すると共に、拡散コードを含む前記受信信号と自受信機に設定されている前記拡散コードとをそれぞれK分割して 並び通りに各部分を構成する各chip相互の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する部分マッチドフィルタと、
前記部分マッチドフィルタからN-chip毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当N-chipの相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当N-chipの相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を含む初期捕捉回路を具備することを特徴とするスペクトル拡散受信機。
【0087】
[付記13]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを出力すると共に、前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次出力する相関フィルタ部と、
前記相関フィルタ部から所定chip周期毎の相関ピークタイミングと相関信号列を逐次受け付け、前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として出力する周波数オフセット推定部と、
を具備することを特徴とする初期捕捉回路。
【0088】
[付記14]
実数部と虚数部を有する受信信号に含まれる拡散コードと 自受信機に設定されている拡散コードと の相関出力について所定chip周期の相関ピークタイミングを算出することと並列的に、
前記受信信号と 自受信機に設定されている拡散コードとの所定長毎の相関信号を各桁の信号とした相関信号列を逐次算出し、
前回のピークを示した相関タイミングにあたる当周期の相関タイミングの相関信号列を保持し、
保持した当周期の相関信号列について周波数検波によって隣り合う相関信号の位相差の値を示す位相値をそれぞれ検出し、
検出した位相値群を平均した値を周波数オフセット推定値として算出する
ことを特徴とするスペクトル拡散受信機における初期捕捉用情報取得方法。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、衛星搭載用コマンド受信機となるスペクトル拡散受信機に使用できる。例えば、人工衛星の追跡管制システムにおける衛星通信用に使用できる。また、移動体通信におけるスペクトル拡散受信機への利用が考えられる。
【符号の説明】
【0090】
1 スペクトル拡散受信機
10 初期捕捉回路
11 相関フィルタ部
12 周波数オフセット推定部
13 ピークタイミング相関信号列保持部
14 周波数検波部
15 平均処理部
101,102,103,104 初期捕捉回路
111,113 マッチドフィルタ回路
112,114 部分マッチドフィルタ回路
121,122,123,124 周波数オフセット推定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7