(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-175031(P2018-175031A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】信号処理方法及びバイタルセンサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20181019BHJP
G01H 11/02 20060101ALI20181019BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20181019BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20181019BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20181019BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
A61B5/00 101R
G01H11/02 Z
A61B5/02 712
A61B5/10 315
A61B5/10 310A
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-74762(P2017-74762)
(22)【出願日】2017年4月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 博樹
【テーマコード(参考)】
2G064
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB05
2G064BD19
4C017AA02
4C017AA14
4C017AC40
4C017BB02
4C017BC07
4C017BC11
4C017DD14
4C017FF05
4C038SS08
4C038SV01
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB32
4C038VB33
4C117XA01
4C117XB01
4C117XE41
4C117XJ05
4C117XJ17
4C117XJ21
4C117XJ44
(57)【要約】
【課題】入力された信号の周期を測定する際に波形信号の処理時間を動的に設定できる信号処理方法及びバイタルセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る信号処理方法は、周期の精度は低いが大きな誤りが生じにくいクロックカウント方式と、周期の精度は高いが大きな誤差が発生する可能性がある自己相関方式を組み合わせることで周期算出の精度を向上させる。このように算出した精度の良い周期を波形信号の処理時間にフィードバックすることで、波形信号の処理時間を動的に設定でき、さまざまな周期の信号に対応することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して入力される入力信号から一定タイミング毎に処理時間T分の信号を波形信号として切り出す波形信号取得手順と、
前記波形信号取得手順で取得した前記波形信号からノイズ成分及びオフセット成分を除去する波形整形手順と、
前記波形整形手順で整形された前記波形信号の最大値と最小値を検出し、前記最大値と前記最小値との間に第1しきい値を設定し、前記第1しきい値と前記最小値との間に第2しきい値を設定し、前記波形整形手順で整形された前記波形信号が前記第1しきい値と前記第2しきい値との間を跨いだ回数から前記波形信号の周期を取得するクロックカウント手順と、
前記波形整形手順で整形された前記波形信号を遅延させた遅延信号を生成し、前記波形整形手順で整形された前記波形信号と前記遅延信号とを重ね合わせ、相関が最も高い前記遅延信号の遅延時間を前記波形信号の周期として取得する自己相関手順と、
前記自己相関手順で取得した周期と前記クロックカウント手順で取得した周期とのずれが前記クロックカウント手順で取得した周期の任意割合未満であれば前記自己相関手順で取得した周期を選択し、前記任意割合以上であれば前記クロックカウント手順で取得した周期を選択する周期算出手順と、
を行う信号処理方法。
【請求項2】
前記周期算出手順で選択した周期を蓄積し、蓄積した周期に対して統計処理を施した値を前記入力信号の周期とする周期決定手順を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記周期決定手順で蓄積した周期の分散が閾値を超えた時、又は前回前記処理時間Tを設定した後に所定時間が経過した時に、前記処理時間Tを再設定する処理時間制御手順を行うことを特徴とする請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記処理時間制御手順で、前記処理時間Tを、前記周期決定手順で決定した周期の2倍以上3倍以下に再設定することを特徴とする請求項3に記載の信号処理方法。
【請求項5】
電磁波を被検体に照射し、被検体の表面で反射した電磁波を受信して電気信号へ変換するデータ取得手段と、
前記データ取得手段が出力する前記電気信号を前記入力信号として請求項1から4のいずれかに記載の信号処理方法で前記入力信号の周期を解析する解析手段と、
前記解析手段が解析した前記入力信号の周期を前記被検体の呼吸周期として、あるいは前記入力信号の周期から心拍数を計算して出力する出力手段と、
を備えるバイタルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、未知の信号の周期を解析する信号処理方法とこれを用いて呼吸周期や心拍数を検知するバイタルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダで呼吸心拍数をカウントする機器がある。当該機器の原理は、呼吸に由来する体表面のmm単位の微細な距離変動を、電波の位相変動として捉え、呼吸数、心拍数をカウントする(例えば、特許文献1を参照。)。当該機器は、電波の位相変動を電気信号の波形に変換し、当該電気信号から一定期間の波形(波形信号)を切り出し、この波形信号から周期を計数して呼吸心拍数としている。波形信号から周期を計数する方法として、
図1のように一定期間の波形の最大値と最小値から2つのしきい値を設けるヒステリシスを利用するクロックカウント方式がよく知られている(例えば、特許文献2を参照。)。クロックカウント方式は、2つのしきい値の間を信号が跨ぐ毎に0.5回と計数する。
【0003】
また、
図2のように自身の波形信号を時間をずらして重ね合わせ、相関度が高くなったずれ時間を周期とする自己相関方式も知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
図2の場合、
図2(A)のずれ時間では相関度が低いが、
図2(B)のずれ時間は相関度が高い。例えば、ずれ時間に対する相関係数を計算し、相関係数が最大となるずれ時間を周期とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−097638号公報
【特許文献2】特開平06−205746号公報
【特許文献3】特開2012−130391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロックカウンタ方式の場合、波形信号がどのような周期でも計数できるが、0.5回単位でしか計数できないので量子化誤差が発生する。また、
図3(A)のように波形信号の期間が短いと正しい最大値と最小値を取得できずに正しいしきい値を設定できず、正しい周期を判断することができない。例えば、正しい周期は10秒であっても波形信号の期間が5秒の場合、当該期間にしきい値を2回跨いでいるので周期は5秒/(0.5×2回)=5秒と判断される。一方、
図3(B)のように波形信号の期間が長いと被検体の動きによって波形が乱れ、波形信号がしきい値を跨がなくなり正しい周期を判断することができない。例えば、正しい周期は10秒であっても波形信号の期間が20秒の場合、その期間中に被検体が動き、波形が乱れるとしきい値を1回しか跨がないことになり、周期は20秒/(0.5×1回)=40秒と判断される。このように、クロックカウンタ方式には、波形信号の期間によって正確な周期を測定できないという課題がある。
【0006】
また、自己相関方式の場合、クロックカウンタ方式のような量子化誤差が発生せず正確な周期を測定することができるが、波形信号の歪や不連続点の影響で2倍周期や4倍周期を信号の周期と捉えてしまうことがある。
図4は、正しい周期が2秒の信号波形を用いて自己相関方式で周期を測定した結果であり、ずれ時間に対する自己相関係数をプロットした図である。
図4(A)は正しく測定できた場合の図であり、
図4(B)は波形信号の歪や不連続点の影響で2倍周期を測定してしまった場合の図である。つまり、自己相関方式の場合も、波形信号の期間が短いと重ね合わせできる期間が短くなり、一方長くすれば被検体が動いてしまい波形が乱れ、2倍周期や4倍周期を信号の周期と捉えてしまい正確な呼吸数や心拍数を測定できないという課題がある。
【0007】
このように、未知の信号の周期を測定するためには、クロックカウンタ方式も自己相関方式も処理する波形信号の期間をどのように設定するかが重要となる。そこで、本発明は、上記課題を解決するために、入力された信号の周期を測定する際に波形信号の処理時間を動的に設定できる信号処理方法及びバイタルセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る信号処理方法は、クロックカウント方式と自己相関方式を併用し、両者の測定結果の周期のうち確からしい周期を採用して波形信号の処理時間に反映させることとした。
【0009】
具体的には、本発明に係る信号処理方法は、
連続して入力される入力信号から一定タイミング毎に処理時間T分の信号を波形信号として切り出す波形信号取得手順と、
前記波形信号取得手順で取得した前記波形信号からノイズ成分及びオフセット成分を除去する波形整形手順と、
前記波形整形手順で整形された前記波形信号の最大値と最小値を検出し、前記最大値と前記最小値との間に第1しきい値を設定し、前記第1しきい値と前記最小値との間に第2しきい値を設定し、前記波形整形手順で整形された前記波形信号が前記第1しきい値と前記第2しきい値との間を跨いだ回数から前記波形信号の周期を取得するクロックカウント手順と、
前記波形整形手順で整形された前記波形信号を遅延させた遅延信号を生成し、前記波形整形手順で整形された前記波形信号と前記遅延信号とを重ね合わせ、相関が最も高い前記遅延信号の遅延時間を前記波形信号の周期として取得する自己相関手順と、
前記自己相関手順で取得した周期と前記クロックカウント手順で取得した周期とのずれが前記クロックカウント手順で取得した周期の任意割合未満であれば前記自己相関手順で取得した周期を選択し、前記任意割合以上であれば前記クロックカウント手順で取得した周期を選択する周期算出手順と、
を行う。
【0010】
また、本発明に係るバイタルセンサは、
電磁波を被検体に照射し、被検体の表面で反射した電磁波を受信して電気信号へ変換するデータ取得手段と、
前記データ取得手段が出力する前記電気信号を前記入力信号として前記信号処理方法で前記入力信号の周期を解析する解析手段と、
前記解析手段が解析した前記入力信号の周期を前記被検体の呼吸周期として、あるいは前記入力信号の周期から心拍数を計算して出力する出力手段と、
を備える。
【0011】
本信号処理方法は、周期の精度は低いが大きな誤りが生じにくいクロックカウント方式と、周期の精度は高いが大きな誤差が発生する可能性がある自己相関方式を組み合わせることで周期算出の精度を向上させる。このように算出した精度の良い周期を波形信号の処理時間にフィードバックすることで、波形信号の処理時間を動的に設定でき、さまざまな周期の信号に対応することができる。従って、本発明は、入力された信号の周期を測定する際に波形信号の処理時間を動的に設定できる信号処理方法及びバイタルセンサを提供することができる。
【0012】
本信号処理方法は、さらに周期算出の精度を向上させるために、前記周期算出手順で選択した周期を蓄積し、蓄積した周期に対して統計処理を施した値を前記入力信号の周期とする周期決定手順を行うことを特徴とする。
【0013】
本信号処理方法は、波形信号の処理時間Tへのフィードバックとして、前記周期決定手順で蓄積した周期の分散が閾値を超えた時、又は前回前記処理時間Tを設定した後に所定時間が経過した時に、前記処理時間Tを再設定する処理時間制御手順を行うことを特徴とする。例えば、前記処理時間制御手順では、前記処理時間Tを、前記周期決定手順で決定した周期の2倍以上3倍以下に再設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、入力された信号の周期を測定する際に波形信号の処理時間を動的に設定できる信号処理方法及びバイタルセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】クロックカウンタ方式の課題を説明する図である。
【
図5】本発明に係るバイタルセンサを説明する図である。
【
図6】本発明に係る信号処理方法を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明に係る信号処理方法の波形整形手順を説明する図である。
【
図9】本発明に係るバイタルセンサの効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
図5は、本実施形態のバイタルセンサを説明する図である。本バイタルセンサは、
電磁波50を被検体100に照射し、被検体100の表面で反射した電磁波50を受信して電気信号へ変換するデータ取得手段11と、
データ取得手段11が出力する電気信号を入力信号として後述する信号処理方法で入力信号の周期を解析する解析手段12と、
解析手段12が解析した入力信号の周期を被検体100の呼吸周期として、あるいは入力信号の周期から心拍数を計算して出力する出力手段13と、
を備える。
【0018】
図6は、解析手段12が行う信号処理方法を説明するフローチャートである。本実施形態の信号処理方法は、
連続して入力される入力信号から一定タイミング毎に処理時間T分の信号を波形信号として切り出す波形信号取得手順(ステップS11)と、
波形信号取得手順で取得した波形信号からノイズ成分及びオフセット成分を除去する波形整形手順(ステップS12及びS13)と、
波形整形手順で整形された波形信号の最大値と最小値を検出し、最大値と最小値との間に第1しきい値を設定し、第1しきい値と最小値との間に第2しきい値を設定し、波形整形手順で整形された波形信号が第1しきい値と第2しきい値との間を跨いだ回数から波形信号の周期を取得するクロックカウント手順(ステップS14)と、
波形整形手順で整形された波形信号を遅延させた遅延信号を生成し、波形整形手順で整形された波形信号と遅延信号とを重ね合わせ、相関が最も高い遅延信号の遅延時間を波形信号の周期として取得する自己相関手順(ステップS15)と、
自己相関手順で取得した周期とクロックカウント手順で取得した周期とのずれがクロックカウント手順で取得した周期の任意割合未満であれば自己相関手順で取得した周期を選択し、任意割合以上であればクロックカウント手順で取得した周期を選択する周期算出手順(ステップS16)と、
を行う。
【0019】
ステップS10では、レーダや赤外線等の電磁波50を被検体100へ照射し、その反射に基づいて被検体100の表面の動きを電気信号として出力する。例えば、レーダの場合、24GHzの電磁波を用いており、被検体100の表面の動き(データ取得手段と被検体との距離の変位)を位相変化として取得し、電気信号へ変換する。24GHzの電磁波の波長は12mmなので、電磁波が往復することより被検体100の表面が6mm動くと位相は360°回転し、3mm動くと位相は180°回転することになる。この様子を
図7(A)に示す。
【0020】
ところが、被検体100の姿勢が変わると反射強度が変わり、IQ平面上での軌跡が三日月形へ変形したり、位相が一方に回転し続けることにもなる。この状態を
図7(B)に示す。このような状態だと、時間に対して位相が往復せずに一方向へ移動し続けてしまい、このような波形ではクロックカウント方式でも自己相関方式でも信号の周期を計測することが困難である。
【0021】
そこで、解析手段12は、ステップS11において、データ取得手段11から連続的に送られてくる信号から一定のタイミングs毎に処理時間T分の信号を波形信号として切り出す。ここでs≦Tであっても、s>Tであってもよい。また、初期時は、処理時間Tとして予め決められた値を使用してもよいし、前回測定時に使用した値を使用してもよい。後述するが、処理時間Tは入力信号に応じて周期の2から3倍程度となるように変化する。
【0022】
続いて、解析手段12は、ステップS12及びステップS13において、ノイズ成分やオフセットを除去する。例えば、データ取得手段11がレーダであれば位相情報に基づく微細変動を抽出する。データ取得手段11がレーザ測距計であればDCカット(基準距離決定)などで微細変動を抽出する。この微細変動から周波数解析やウェーブレット変換によるノイズ除去処理により、呼吸由来の微細変動成分あるいは心拍由来の微細変動成分を抽出する。心拍由来の微細変動成分を抽出する場合においては、体動、呼吸由来の微細変動成分がノイズ成分となり、呼吸由来の微細変動成分を抽出する場合においては、体動、心拍由来の微細変動成分がノイズ成分に該当する。また、解析手段12は、処理時間内での緩やかな変動を緩和して呼吸等の計数が容易になるように各種のフィルタで波形を整形する。具体的には、
図8のように切り出した波形信号から近似曲線を作成し、この近似曲線をオフセット成分として除去する。このようにオフセット成分を除去することで、姿勢によって位相のみならず反射強度も変化した場合でも、呼吸数を計数可能になる。
【0023】
解析手段12は、ステップS14において、波形整形された波形信号についてクロックカウント方式で波形信号の周期を取得する。解析手段12は、波形信号の最大値と最小値を検出する。そして、解析手段12は、この最大値と最小値から2つのしきい値(第1しきい値と第2しきい値)を設定する。例えば、解析手段12は、最大値と最小値の平均値を計算し、第1しきい値=平均値+(最大値−平均値)×0.70、第2しきい値=平均値+(最小値−平均値)×0.70として設定することができる。解析手段12は、波形信号が第1しきい値と第2しきい値との間を1回移動する毎に呼吸0.5回、第1しきい値と第2しきい値との間を往復すると呼吸1回と数え、例えば、10秒間で呼吸2回の場合、周期が5秒となる。
【0024】
解析手段12は、ステップS15において、波形整形された波形信号について自己相関方式で波形信号の周期を取得する。解析手段12は、波形信号から任意時間だけ遅延させた遅延信号を生成し、波形信号と重ね合わせて相関係数を取得する。例えば、解析手段12は、相関係数が最も高い遅延信号の遅延時間を周期とする。
【0025】
解析手段12は、ステップS16において、ステップS14で得られた周期とステップS15で得られた周期とを比較する。比較した結果、両者の周期が近い(例えば、1秒未満、又は両者の周期差がクロックカウント方式で取得した周期の25%未満)ならば、自己相関方式で取得した周期を選択する。一方、比較した結果、両者の周期が大きく異なる(例えば、1秒以上、又は両者の周期差がクロックカウント方式で取得した周期の25%以上)ならば、自己相関方式で取得した周期が2倍周期や4倍周期などを誤ったものと判断し、クロックカウント方式で取得した周期を選択する。なお、任意割合として25%を例としたが、この値には限られない。
また、両者の周期がかけ離れている場合、大きく違う場合は信頼性が低いとして出力しないとしてもよい。
【0026】
解析手段12は、ステップS17において、ステップS16で選択された周期を周期メモリに記憶する。例えば、ステップS16では、一定のタイミングs毎に周期が選択されるので、ステップS17では過去の時間Nの周期を記憶しておく。
【0027】
解析手段12は、ステップS18において、ステップS17で周期メモリに記憶された複数の周期に対して統計処理を施した値を入力信号の周期とし、出力手段13へ出力する。出力手段13は、当該周期をモニタ等で表示する。
【0028】
ここで、ステップS18で行う統計処理について説明する。ステップS18で行う統計処理は次のような処理を例示できる。
(1)平均値
例えば、一定タイミングsが2秒であり、過去の時間Nが10秒間のデータを統計処理する場合、記憶されている5回分の周期の平均値を入力信号の周期とする。
(2)中央値
例えば、一定タイミングsが2秒であり、過去の時間Nが10秒間のデータを統計処理する場合、記憶されている5回分の周期の中央値を入力信号の周期とする。異常値が出力されることを回避できる。
【0029】
解析手段12は、ステップS19において、ステップS18で決定した周期に応じて処理時間Tを再設定する。例えば、解析手段12は、処理時間Tを決定した周期の定数倍(例えば2倍や3倍)や、事前に定めたテーブルに基づいて再設定することができる。ステップS19の実施タイミングは、周期メモリ内の周期の値の分散が閾値を超えた時、あるいは過去の時間Nより十分大きい時間ごとなどである。
【0030】
本実施形態のバイタルセンサは、
図6のような信号処理方法を行うことで、
図9のように直近の周期に応じて処理時間Tを適宜切り替えることができる。
図9(A)と(C)は処理時間が20秒であるときの波形信号である。
図9(A)の場合、処理時間内に2.5回分の周期が含まれている(8秒周期)。従って、バイタルセンサは処理時間Tを20秒のままとする(
図9(B))。一方、
図9(C)の場合、処理時間内に3.5回分の周期が含まれている(4秒周期)。従って、バイタルセンサは処理時間内に周期が2〜3回入るように処理時間を10秒へ変更する(
図9(D))。
このように、処理時間Tを適宜切り替えることでクロックカウンタ方式も自己相関方式も正確な呼吸数や心拍数を測定が可能となる。
【0031】
(効果)
処理時間Tを短くしすぎると呼吸一回を細切れに捉えてしまい、呼吸数が実際より大きくなる。逆に、処理時間Tを長くしすぎるとその間に体が動く可能性が高くなる。体が動くと呼吸のカウントはできない。また、適切な処理時間Tであってもmm単位のオフセットがかかると呼吸のカウントができなくなることがある。本発明は、処理時間Tを呼吸周期の2から3倍に動的に変化させることで呼吸カウントの精度を向上させる。心拍カウントの場合も同様である。また、オフセット除去として多項式近似を用いることでカウントの精度を向上できる。
【符号の説明】
【0032】
11:データ取得手段
12:解析手段
13:出力手段
50:電磁波
100:被検体