【解決手段】水槽と、水槽内部に回転可能に取り付けられた脱水槽と、水槽を収容する筐体と、筐体と水槽との間に取り付けられた水槽用バネと、筐体と水槽との間に取り付けられて水槽の振動を減衰する水槽用ダンパと、筐体を支持する脚本体110と、筐体と脚本体110との間に取り付けられた脚用バネ120と、脚本体110と接触する摩擦材141と、筐体に取り付けられると共に摩擦材141を収容する収容部材143とを有し、筐体の振動を減衰する脚用ダンパ140と、を備える。
前記第2ダンパの前記接触体は、前記支持体に対する前記収容体の相対変位量が所定量未満である場合には当該支持体に対して移動せず、当該相対変位量が当該所定量以上である場合に当該支持体に接触しながら当該支持体に対して移動する
請求項1に記載の洗濯機。
前記第2ダンパは、前記支持体に対する前記収容体の前記相対変位量が前記所定量未満である場合に、前記接触体と前記収容体とが一体的に移動する状態と一体的に移動しない状態とに切り替え可能である
請求項2に記載の洗濯機。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る洗濯機1の概略構成を示す図である。
図1は、洗濯機1を右方向から見た断面図である。
図1の左側が洗濯機1の手前側、
図1の右側が洗濯機1の奥側であり、
図1の上側が洗濯機1の上側、
図1の下側が洗濯機1の下側である。
【0009】
本発明の実施形態に係る洗濯機1は、水槽10と、水槽10内部に回転可能に取り付けられた回転体の一例としての脱水槽20と、水槽10及び脱水槽20を収容する筐体30とを備えている。
脱水槽20の回転軸21は、前後方向に延びており、洗濯機1を手前側から見た場合に、脱水槽20の回転方向は左回転(反時計回転)である。
筐体30の外形は略直方体状であり、前面には、洗濯物を投入するための開口部が形成されており、扉31がこの開口部を開閉可能に筐体30に取り付けられている。
【0010】
また、洗濯機1は、モータ40と、モータ40の回転力を脱水槽20の回転軸21に伝達する伝達部50とを備えている。伝達部50は、回転軸21に取り付けられたプーリや、プーリ間に掛け回されたベルトなどにより構成されている。
【0011】
また、洗濯機1は、筐体30の上部32と水槽10の上部との間に取り付けられた第1弾性体の一例としての水槽用バネ60と、筐体30の底部33と水槽10の下部との間に取り付けられて水槽10の振動を減衰する第1ダンパの一例としての水槽用ダンパ70とを備えている。水槽用バネ60は、コイルバネであることを例示することができる。水槽用ダンパ70は、オイルを作動流体とする粘性ダンパであることを例示することができる。水槽用バネ60及び水槽用ダンパ70は、それぞれ複数設けられている。
【0012】
また、洗濯機1は、筐体30の底部33に取り付けられて筐体30を支持する脚ユニット100を備えている。脚ユニット100は、筐体30の底部33の四隅にそれぞれ1つずつ設けられている。以下では、洗濯機1の左部の前部に設けられた脚ユニット100を左手前脚101、左部の奥部に設けられた脚ユニット100を左奥脚102、右部の前部に設けられた脚ユニット100を右手前脚103(
図2参照)、右部の奥部に設けられた脚ユニット100を右奥脚(不図示)と称す場合がある。
【0013】
図2は、第1の実施形態に係る脚ユニット100の概略構成を示す図である。
図3は、第1の実施形態に係る脚ユニット100の断面図である。
図2は、代表して右手前脚103を示しているが、構成部品は全て同一であり、後述する収容部材143の第3円筒状部148の外側突出部148bの形状が異なる。
【0014】
脚ユニット100は、筐体30を支持する支持体の一例としての脚本体110と、筐体30の振動を緩和する第2弾性体の一例としての脚用バネ120と、脚用バネ120の下端部を支持するバネ受け130と、筐体30の振動を減衰する第2ダンパの一例としての脚用ダンパ140とを備えている。
【0015】
脚本体110は、洗濯機1を設置する床に接触する脚ベース111と、脚ベース111を保持する円筒状のパイプ112と、パイプ112に対する脚ベース111の位置を定めるロックナット113と、脚本体110が筐体30から脱落するのを抑制する抑制部材114とを備えている。
【0016】
脚ベース111は、床に接触する円盤状の床接触部111aと、先端部に雄ねじ111bが形成された軸部111cとを有している。雄ねじ111bが、パイプ112の下端部の内周面に形成された雌ねじ112aにねじ込まれることで軸部111cがパイプ112の内部に挿入され、パイプ112に対する脚ベース111の相対位置が定まる。そして、ロックナット113にて脚ベース111の位置が固定される。
抑制部材114は、パイプ112の上端側の開口部に圧入される円柱状の圧入部114aと、六角柱状のフランジ部114bとを有する。フランジ部114bが後述する規制部材144に突き当たることで、脚本体110が筐体30から脱落するのが抑制される。
【0017】
脚用バネ120は、コイルバネであることを例示することができる。
バネ受け130は、パイプ112の下端部の外側に固定された円筒状の部材である。バネ受け130の内周部に凹部131が形成されており、凹部131とパイプ112の外周面との間で脚用バネ120の下端部を収容する円筒状の空間を形成する。バネ受け130は、パイプ112の下端部に圧入されることで固定されても良いし、バネ受け130の内周面に形成された雌ねじにパイプ112の外周面に形成された雄ねじがねじ込まれることで固定されても良い。
【0018】
脚用ダンパ140は、パイプ112の外周面と接触するようにパイプ112の周囲に配置された接触体の一例としての摩擦材141と、摩擦材141を内部に保持する保持体の一例としての保持部材142とを備えている。また、脚用ダンパ140は、摩擦材141及び保持部材142を収容する収容体の一例としての収容部材143と、摩擦材141及び保持部材142の移動を規制する規制部材144とを備えている。以下、摩擦材141及び保持部材142を「摩擦材ユニット145」と称する場合もある。
【0019】
摩擦材141は、円筒状の部材である。摩擦材141の材質は、耐摩耗性が優れた材質であれば特に限定されない。例えば、摩擦材141の材質は、ウレタン樹脂、ウレタンゴムであることを例示することができる。また、摩擦材141の材質は、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)であることを例示することができる。また、摩擦材141の材質は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂であることを例示することができる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂を例示することができる。また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂を例示することができる。また、摩擦材141の材質は、金属でも良い。金属としては、銅、真鍮を例示することができる。
【0020】
保持部材142は、基本的には円筒状であり、内周部に、内周面の一部が凹んだ凹部142aが形成されている。そして、保持部材142は、パイプ112の外側に配置された状態で、凹部142aに摩擦材141を収容する。摩擦材141の体積は、凹部142aの容積よりも大きく、凹部142aに摩擦材141を保持する保持部材142がパイプ112の外側に配置されることで、摩擦材141は、パイプ112の外周面と保持部材142とで圧縮される。
なお、摩擦材ユニット145とパイプ112との摺動、及び摩擦材ユニット145と収容部材143との摺動を円滑にするために、摩擦材141及び保持部材142の周囲にはグリスが塗布されている。
【0021】
収容部材143は、内径及び外径がそれぞれ異なる3つの円筒状の部位である、第1円筒状部146、第2円筒状部147、第3円筒状部148が、上端部から中心線方向に順に並んだ形状である。
第1円筒状部146の内径は保持部材142の外径以上であり、第1円筒状部146の中心線方向(上下方向)の長さは保持部材142よりも大きい。第1円筒状部146の内部に摩擦材141及び保持部材142(摩擦材ユニット145)が収容される。第1円筒状部146の下端部には、内周面から内側に突出した内側突出部146aが全周に亘って設けられている。保持部材142の下方への移動が内側突出部146aにて規制される。
【0022】
第2円筒状部147の内径は脚用バネ120の外径よりも大きい。第2円筒状部147の内周面とパイプ112の外周面との間に脚用バネ120の上端部が収容されている。脚用バネ120の上端は第1円筒状部146の内側突出部146aにて支持されている。
【0023】
第3円筒状部148の内径は、バネ受け130の外径よりも大きい。第3円筒状部148の上端部には、内周面から内側に突出して第2円筒状部147の外周面に接続する内側突出部148aが全周に亘って設けられている。脚用バネ120が縮んだときに、内側突出部148aがバネ受け130の上面に突き当たることで脚用バネ120の縮み量が制限される。
第3円筒状部148は、下端部から外側に突出する外側突出部148bを有している。外側突出部148bには、上下方向(中心線方向)に貫通する貫通孔148cが形成されている。貫通孔148c及び筐体30の底部33に形成された貫通孔を通されたボルト81と、ナット82とにより、収容部材143は、筐体30の底部33に固定されている。
【0024】
規制部材144は、第1円筒状部146の内周面に嵌め込まれる円柱状の嵌合部144aと、フランジ部144bとを有する。規制部材144は、第1円筒状部146の内周面に圧入されることで固定されても良いし、第1円筒状部146の内周面に形成された雌ねじに嵌合部144aの外周面に形成された雄ねじがねじ込まれることで固定されても良い。フランジ部144bには、上面から凹んだ六角柱状の凹部144cが形成されている。脚本体110の抑制部材114のフランジ部114bが凹部144cの底面に突き当たることで、脚本体110が筐体30から脱落するのが抑制される。
【0025】
図4は、収容部材143が脚本体110に対して変位した状態を示す断面図である。なお、
図3は、収容部材143が脚本体110に対して変位していない状態を示す断面図である。
以上のように構成された脚ユニット100においては、筐体30の底部33に固定された収容部材143と脚本体110との間に脚用バネ120が配置されているので、筐体30の振動が脚用バネ120を介して脚本体110に伝達される。これにより、筐体30の振動が脚用バネ120にて緩和されて床に伝達される。
【0026】
また、脚用ダンパ140においては、第1円筒状部146の内周面、内側突出部146aの上端面、パイプ112の外周面及び規制部材144の下端面にて囲まれた空間である減衰空間Sdに摩擦材141及び保持部材142(摩擦材ユニット145)が収容される。減衰空間Sdにおける中心線方向の長さである減衰空間長さLdは、摩擦材ユニット145における中心線方向の長さであるユニット長さLfよりも大きい。以下では、減衰空間長さLdからユニット長さLfを減算した値を「長さ偏差ΔL」(=Ld−Lf)と称す。
【0027】
収容部材143が脚本体110に対して長さ偏差ΔL変位するまでは(脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔLとなるまでは)、規制部材144は、摩擦材ユニット145に接触しない。そのため、収容部材143の変位に対して摩擦材ユニット145の摩擦材141による摩擦力は生じず、減衰力も生じない。
脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔLを超えると、規制部材144が摩擦材ユニット145に突き当たり、摩擦材ユニット145は、脚本体110に対して変位する。そのため、脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔLを超えると、摩擦材ユニット145の摩擦材141による摩擦力が生じ、この摩擦力に応じた減衰力が生じる。
【0028】
<洗濯機1の作用及び効果>
図5は、第1の実施形態に係る洗濯機1の振動モデルを示す図である。
以上説明した構成により、洗濯機1の振動は、
図5に示した2自由度モデルにより吸収される。
なお、
図5において、k
1は、水槽用バネ60のバネ定数、c
1は、水槽用ダンパ70の減衰係数、m
1は、水槽用バネ60及び水槽用ダンパ70にて支持されている物の質量、例えば、水槽10、脱水槽20等の質量である。k
2は、脚用バネ120のバネ定数、c
2は、脚用ダンパ140の減衰係数、m
2は、脚用バネ120及び脚用ダンパ140にて支持されている物の質量、例えば、筐体30等の質量である。
【0029】
図6は、洗濯機1の振動と脱水槽20の回転速度ωの関係を示すシミュレーション結果である。
図6には、第1の実施形態に係る洗濯機1に対して、脚用バネ120及び脚用ダンパ140を備えていない点が異なる1自由度モデルの洗濯機(以下、「比較洗濯機」と称す。)の振動と脱水槽20の回転速度ω(rpm)の関係を破線で示している。なお、ω0は、脱水行程における定常期の回転速度であり、以下では、「定常回転速度ω0」と称す。
【0030】
図6に示すように、定常回転速度ω0よりも小さい回転速度領域において、実線で示した2自由度モデルの洗濯機1の共振点の振動の大きさは、破線に示した1自由度モデルの比較洗濯機の共振点の大きさの1/4以下となっている。また、約600(rpm)より大きな回転速度領域において、比較洗濯機の振動の大きさが、回転速度ωが大きくなるのに従って大きくなっているのに対して、第1の実施形態に係る洗濯機1の振動の大きさは、回転速度ωが大きくなるのに従って小さくなっている。
【0031】
図7は、第1の実施形態に係る洗濯機1を床に設置した状態で脱水行程を行ったときに脚ユニット100が床を押す力(実線)と、比較洗濯機を床に設置した状態で脱水行程を行ったときに脚が床を押す力(破線)とを比較する実験結果である。縦軸に脚が床を押す力(N)を、横軸に時間(s)を示している。脚が床を押す力(以下、「伝達力」と称す。)は、脚ユニット100と床との間に置いたロードセルにて測定した結果である。なお、
図7には、脱水槽20の回転速度ω(rpm)を二点鎖線で示している。
【0032】
図7に示すように、比較洗濯機においては、脱水初期から終了時まで、ほぼ脱水槽20の回転速度ωに比例した伝達力となっている。例えば、脱水槽20の回転速度ωが0である状態から定常回転速度ω0まで上昇する過渡期において、回転速度ωが大きくなるのに従って伝達力も大きくなっている。これに対して、第1の実施形態に係る洗濯機1においては、過渡期に脱水槽20の回転速度ωが定常回転速度ω0の約1/6までは回転速度ωが大きくなるのに従って伝達力も大きくなっているが、脱水槽20の回転速度ωが定常回転速度ω0の約1/6を超えても伝達力が上昇しない。これによると、第1の実施形態に係る洗濯機1によれば、比較洗濯機と比較して、脱水初期から終了時まで伝達力が大幅に低いことがわかる。また、比較洗濯機の伝達力は、脱水槽20の回転速度ωが1000〜1200(rpm)であるときに、床との共振箇所に大きなピークが存在するが、第1の実施形態に係る洗濯機1においては、床との共振を回避できていることがわかる。
【0033】
また、第1の実施形態に係る脚用ダンパ140は、脚本体110に対する筐体30(収容部材143)の相対変位量が長さ偏差ΔLとなるまでは摩擦材141の摩擦力に起因する減衰力が生じず、脚本体110に対する筐体30の相対変位量が長さ偏差ΔLを超えると、摩擦材141の摩擦力に起因する減衰力が生じる、所謂可変ダンパである。可変ダンパであることにより、脱水行程の過渡期に筐体30が大きく変位する場合には、減衰力が作用して相対変位量を減少させるようにし、筐体30の振幅が小さくなる脱水行程の定常期においては、相対変位量を長さ偏差ΔL未満として減衰効果を発生しないようにして、床への伝達力を小さくすることが可能となる。
【0034】
言い換えると、長さ偏差ΔLを、脱水槽20の回転速度ωが定常回転速度ω0である場合の相対変位量よりも大きく、かつ、脱水槽20の回転速度ωが定常回転速度ω0となるまでの過渡期における相対変位量よりも小さくなるようにすることで、脱水行程の過渡期の振動を減少させるようにし、定常期に減衰効果を発生しないようにして床への伝達力を小さくすることが可能となる。
【0035】
また、第1の実施形態に係る脚用ダンパ140は、摩擦力に起因する減衰力を生じさせるものであるため、例えばエアやオイルを用いるダンパとは異なり、筐体30の変位速度に依存しない。それゆえ、第1の実施形態に係る脚用ダンパ140によれば、脱水槽20の回転速度ωが大きくなっても減衰力は大きくならないため、例えばエアやオイルを用いるダンパと比べて床への伝達力を小さくすることができる。
【0036】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る洗濯機1は、第1の実施形態に係る洗濯機1に対して、脱水槽20の回転軸21よりも左側に配置された左手前脚101,左奥脚102の減衰力を、回転軸21よりも右側に配置された右手前脚103,右奥脚(不図示)の減衰力よりも大きくした点が異なる。
【0037】
ここで、洗濯機1の脱水行程においては、脱水槽20はモータ40により高速度の定常回転速度ω0(例えば1300rpm)で左回転方向(反時計回転方向)に回転駆動される。脱水槽20が高速度で回転される脱水行程時に水槽10に発生する振動は、脱水槽20が低速度で回転される洗い、すすぎ、乾燥の行程時に水槽10に発生する振動よりも大きい。特に、脱水槽20の上昇回転側である回転軸21よりも右側の振動に比べて、脱水槽20の下降回転側である回転軸21よりも左側の振動の方が大きい。
【0038】
かかる事項に鑑み、第2の実施形態に係る洗濯機1においては、脱水槽20の回転軸21よりも左側に配置された左手前脚101,左奥脚102(以下、総称して「左側脚105」と称す。)の減衰力が、回転軸21よりも右側に配置された右手前脚103,右奥脚(不図示)(以下、総称して「右側脚106」と称す。)の減衰力よりも大きい。
左側脚105の減衰力を右側脚106の減衰力よりも大きくする手法としては、以下の(1)、(2)の少なくともいずれかを採用することを例示することができる。(1)左側脚105における脚本体110に対する収容部材143の単位相対変位量当たりの摩擦材141による摩擦力を、右側脚106の摩擦力よりも大きくする。(2)左側脚105における減衰空間長さLdからユニット長さLfを減算した値である長さ偏差ΔLを、右側脚106の長さ偏差ΔLよりも小さくする。
【0039】
(1)左側脚105における脚本体110に対する収容部材143の単位相対変位量当たりの摩擦材141による摩擦力を、右側脚106の摩擦力よりも大きくする手法としては、以下の(i)〜(v)の少なくともいずれかを採用することを例示することができる。(i)左側脚105の摩擦材141の材質を、摩擦係数が右側脚106の摩擦材141の材質の摩擦係数よりも大きい材質とする。(ii)左側脚105の摩擦材141のパイプ112との接触面積を、右側脚106の摩擦材141のパイプ112との接触面積よりも大きくする。(iii)左側脚105の摩擦材141のパイプ112との接触圧力(パイプ112の外周面と保持部材142とで摩擦材141を圧縮する力)を、右側脚106の摩擦材141のパイプ112との接触圧力よりも大きくする。(iv)左側脚105の摩擦材141の表面粗さを、右側脚106の摩擦材141の表面粗さよりも大きくする。(v)左側脚105の摩擦材141に塗布するグリスを、粘性抵抗が右側脚106の摩擦材141に塗布するグリスの粘性抵抗よりも大きいグリスとする。
【0040】
(2)左側脚105における減衰空間長さLdからユニット長さLfを減算した値である長さ偏差ΔLを、右側脚106の長さ偏差ΔLよりも小さくする。これにより、左側脚105の減衰力を右側脚106の減衰力よりも早期に大きくすることができる。
【0041】
第2の実施形態に係る洗濯機1によれば、脱水槽20の回転軸21よりも左側に配置された左手前脚101,左奥脚102の減衰力が、回転軸21よりも右側に配置された右手前脚103,右奥脚(不図示)の減衰力よりも大きいので、洗濯機1の振動を効果的に抑制でき、床への伝達力を小さくすることができる。
【0042】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る洗濯機1は、脱水行程の定常期及び定常期付近の回転速度において脚用ダンパ140の減衰力を異ならせる点が、第1の実施形態に係る洗濯機1に対して異なる。
脚用ダンパ140は、脱水行程の定常期の振幅は小さく、脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔL未満であるため、脱水行程時の定常期及び定常期付近の回転速度において、摩擦材ユニット145は脚本体110に対して相対変位せずに収容部材143が摩擦材ユニット145に対して相対変位する。それゆえ、収容部材143が摩擦材ユニット145に対して相対変位する分の減衰力が生じる。つまり、収容部材143の第1円筒状部146の内周面が摩擦材ユニット145の保持部材142の外周面と接触する際の摩擦力、又は、第1円筒状部146の内周面と保持部材142の外周面との間に介在するグリスの粘性抵抗の分の減衰力(以下、この減衰力を、「保持部材減衰力」と称す。)が生じる。ただし、保持部材減衰力は、摩擦材ユニット145の摩擦材141による減衰力よりも非常に小さい。
【0043】
一方、脱水行程において、定常期及び過渡期においても定常回転速度ω0に近づくにつれて、複数の脚本体110に掛かる荷重の位相が同期してくることが実験より判明した。それゆえ、複数の脚本体110に掛かる荷重を合計すると、同位相の場合には全て重なるため合計値が大きな値となる。
【0044】
そこで、第3の実施形態に係る洗濯機1においては、左手前脚101、左奥脚102、右手前脚103、右奥脚(不図示)の少なくともいずれかの脚ユニット100の保持部材減衰力を他の脚ユニット100の保持部材減衰力と異ならせている。保持部材減衰力を異ならせる手法としては、以下の(i)〜(iii)の少なくともいずれかを採用することを例示することができる。(i)保持部材142の材質を、摩擦係数が異なる材質とする。(ii)保持部材142の外周面の表面粗さを異ならせる。(iii)保持部材142の外周面に塗布するグリスの粘性抵抗を異ならせる。
第3の実施形態に係る洗濯機1によれば、複数の脚本体110に掛かる荷重に位相差を設けることができ、複数の脚本体110に掛かる荷重の合計値を減少させ、床に伝わる伝達力を減少させることができる。
【0045】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る洗濯機1は、脚用ダンパ140を、可変ダンパと、摩擦材ユニット145の摩擦材141による減衰力が常時作用する固定ダンパとに切り替えることが可能である点が、第1の実施形態に係る洗濯機1に対して異なる。
【0046】
図8は、第4の実施形態に係る脚ユニット100の断面図である。
第4の実施形態に係る脚ユニット100は、収容部材143の上端部に設けられると共にボビンに巻付けられたコイル160と、コイル160に通電するためのリード線(不図示)等を備えている。そして、収容部材143、規制部材144及び保持部材142を磁性体にし、コイル160に通電することで電磁石を構成して摩擦材ユニット145を規制部材144側に引き寄せ可能とする。
【0047】
第1の実施形態に係る洗濯機1においては、脱水行程の過渡期においても脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔLとなるまでは、収容部材143の変位に対して摩擦材ユニット145の摩擦材141による摩擦力は生じず、減衰力も生じない。その結果、十分な減衰力を得られないおそれがある。
【0048】
これに対して、第4の実施形態に係る洗濯機1においては、脱水行程開始時からコイル160に通電することで摩擦材ユニット145を規制部材144側に引き寄せて、収容部材143と摩擦材ユニット145とを一体的に脚本体110に対して変位させる。これにより、第4の実施形態に係る洗濯機1によれば、脱水行程開始時から摩擦材ユニット145の摩擦材141による減衰力を生じさせ床に伝える伝達力を減少させることが可能となる。
【0049】
一方、第4の実施形態に係る洗濯機1においては、脚本体110に対する収容部材143の相対変位量が長さ偏差ΔL未満である脱水行程の定常期には、コイル160への通電を停止し、摩擦材ユニット145の摩擦材141による減衰力を生じさせないようにすると良い。減衰力が生じることに起因して床に伝わる伝達力が却って大きくなることを抑制することができる。このように、第4の実施形態に係る洗濯機1によれば、脱水行程開始時から大きな減衰力を生じさせることと定常期に減衰力を小さくすることとの両立を図ることができ、例えば、磁性流体等を使って減衰力を可変するダンパのように定常期にも不必要な減衰力を生じさせるダンパを備える構成と比べて効果的に床に伝わる振動を抑制することができる。