【解決手段】回収装置1は、対象物Xに対して高所から接近して対象物Xを回収する装置であって、高所に形成された床面Fに配置され中央に開口部2aを有する懸垂台2と、懸垂台2から吊り下げられ中央に開口部3aを有する昇降台3と、昇降台3に着脱可能に配置されたマニピュレータ4と、懸垂台2の開口部2a及び昇降台3の開口部3aを介して物品を昇降台3まで搬送する荷役装置5と、を備えている。
前記マニピュレータは、前記昇降台に着脱可能に配置されたマニピュレータアームと、該マニピュレータアームの先端に着脱可能に配置された先端ツールと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の回収装置。
【背景技術】
【0002】
「燃料デブリ」とは、原子炉燃料が原子炉内でデブリ化した核燃料物質であり、冷却材の喪失により原子炉燃料が溶融して原子炉構造材や制御棒等とともに冷えて固化したものである。燃料デブリは、溶損燃料と称する場合もある。かかる燃料デブリは、原子炉圧力容器(RPV:Reactor Pressure Vessel)内に存在していることが多いものと考えられる。
【0003】
原子炉を廃炉にする際には、外部環境の放射能汚染を防止する観点から、RPV内の構造物や燃料デブリを事前に回収することが重要である。一般に、燃料デブリの回収方法には、燃料デブリを冠水させた状態で取り出す方法(冠水工法)が知られている。この冠水工法によれば、水の遮断効果によって作業員の被曝や外部環境への放射能汚染を低減することができる。
【0004】
しかしながら、RPVに穴が空いていたりクラックが生じたりしている場合には、この穴やクラックを塞いでシールしなければならない。また、燃料デブリが存在している原子炉では、作業員が内部に入ることが困難であり、穴やクラックの位置を特定したり、穴やクラックを塞いだりする作業を行うことは難しい。したがって、冠水工法を採用せずに燃料デブリを回収することができる代替工法が望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1には、天井クレーンにより移動可能に吊り下げされた移動台車と、移動台車に配置された作業マニピュレータと、作業マニピュレータの振動を抑制する制振装置と、を備え、かかる移動台車及び作業マニピュレータを遠隔操作することによって燃料デブリ等の回収を行う装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された発明では、オペレーションフロア(燃料交換床)の上方に配置された天井クレーンによって移動台車(昇降台)を吊り下げていることから、移動台車の吊り下げ距離が長くなり、移動台車の昇降に時間がかかるという問題があった。さらに、移動台車をオペレーションフロアまで戻さなければ作業マニピュレータのメンテナンスや先端ツールの交換を行うことができず、移動台車の昇降回数が増え、作業効率が低いという問題もあった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑み創案されたものであり、昇降台の移動距離の短縮及び昇降台の昇降回数の削減を図ることにより作業効率の向上を図ることができる回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、対象物に対して高所から接近して前記対象物を回収する回収装置であって、前記高所に形成された床面に配置され中央に開口部を有する懸垂台と、該懸垂台から吊り下げられ中央に開口部を有する昇降台と、該昇降台に着脱可能に配置されたマニピュレータと、前記懸垂台の開口部及び前記昇降台の開口部を介して物品を前記昇降台まで搬送する荷役装置と、を備えることを特徴とする回収装置が提供される。
【0010】
前記マニピュレータは、前記昇降台に着脱可能に配置されたマニピュレータアームと、該マニピュレータアームの先端に着脱可能に配置された先端ツールと、を備えていてもよい。
【0011】
また、前記昇降台は、前記荷役装置により搬送される前記マニピュレータアームを案内するガイド部材を有していてもよい。さらに、前記マニピュレータアームは、前記ガイド部材に当接するガイドローラを有していてもよい。
【0012】
また、前記回収装置は、前記先端ツールを収容する搬送容器を備えていてもよい。さらに、前記搬送容器は、前記荷役装置に連結されるように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記昇降台は、外周に存在する壁面に当接可能な複数の固定装置を有していてもよい。
【0014】
また、前記懸垂台は、前記昇降台を昇降可能に支持する複数のホイストを備えていてもよい。
【0015】
また、前記回収装置は、前記昇降台に配置され前記マニピュレータに接続されたケーブル又はワイヤを制御する中継装置を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係る回収装置によれば、対象物の回収作業を行うマニピュレータを昇降台に着脱可能に配置し、懸垂台に吊り下げられた昇降台まで荷役装置によりマニピュレータを搬送するようにしたことから、昇降台を作業現場付近から懸垂台が配置された床面まで移動させることなく、荷役装置を操作することによって、マニピュレータの全部又は一部の交換を行うことができる。したがって、本発明によれば、昇降台の移動距離の短縮及び昇降台の昇降回数の削減を図ることにより作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図6を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る回収装置を示す平面図である。
図2は、
図1におけるA−A断面矢視図である。
図3は、回収装置の使用例を示す全体概略図である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る回収装置1は、
図1〜
図3に示したように、対象物Xに対して高所から接近して対象物Xを回収する装置であって、高所に形成された床面Fに配置され中央に開口部2aを有する懸垂台2と、懸垂台2から吊り下げられ中央に開口部3aを有する昇降台3と、昇降台3に着脱可能に配置されたマニピュレータ4と、懸垂台2の開口部2a及び昇降台3の開口部3aを介して物品を昇降台3まで搬送する荷役装置5と、を備えている。なお、
図1及び
図2では、説明の便宜上、荷役装置5の図を省略してある。
【0020】
懸垂台2は、例えば、
図1及び
図2に示したように、略環状の鉄骨構造体である。例えば、懸垂台2は、床面Fに配置される底板21と、昇降台3を支持する天板22と、底板21と天板22とを連結する複数の支柱23と、天板22に配置され昇降台3の昇降を行う複数のホイスト24と、を備えている。
【0021】
底板21及び天板22は、それぞれ略環状に形成されており、中央に開口部21a,22aを有している。これらの開口部21a,22aにより懸垂台2の開口部2aが構成される。また、底板21及び天板22は、周上の一部にスリット21b,22bが形成されていてもよい。これらのスリット21b,22bを周上の同じ位置に形成することによって、懸垂台2の搬出入口2bが構成される。なお、搬出入口2b(スリット21b,22b)は、必要に応じて省略することができる。
【0022】
ホイスト24は、ワイヤ24aを介して昇降台3を昇降可能に支持する巻上機である。ホイスト24は、昇降台3を安定に支持するためには、少なくとも三台以上あればよい。また、本実施形態では、五台のホイスト24を配置している。このように、四台以上のホイスト24を配置することにより、昇降台3を支持するワイヤ24aの多重化を図ることができ、回収装置1の安全性を向上させることができる。
【0023】
昇降台3は、例えば、
図1及び
図2に示したように、略環状の鉄骨構造体である。昇降台3は、周上の一部にスリット3bが形成されていてもよい。このスリット3bの位置を懸垂台2の搬出入口2b(スリット21b,22b)と同じ位置に形成することによって、スリット3bを介して物品の搬出入を行うことができる。なお、スリット3bは、必要に応じて省略することができる。
【0024】
また、昇降台3は、ワイヤ24aに接続される金具31と、マニピュレータ4が接続される連結部32と、外周に存在する壁面に当接可能な複数の固定装置33と、を有していてもよい。金具31は、例えば、昇降台3の上面に周方向に均等な間隔で配置される。連結部32は、例えば、昇降台3の下面に配置される。連結部32は、マニピュレータ4を着脱可能に支持する端子を構成している。
【0025】
固定装置33は、例えば、昇降台3の上面に略放射状に均等な間隔で配置されている。固定装置33は、例えば、径方向外方に向かって伸縮可能なシリンダ(油圧シリンダ、電動シリンダ等)によって構成される。かかる固定装置33により、シリンダを伸長することによって昇降台3の近傍に存在する壁面に先端を当接させることができ、昇降台3の高さ方向の位置決めを容易に行うことができる。なお、図示した固定装置33の構成は単なる一例であり、かかる構成に限定されるものではない。
【0026】
マニピュレータ4は、例えば、昇降台3に着脱可能に配置されたマニピュレータアーム41と、マニピュレータアーム41の先端に着脱可能に配置された先端ツール42と、マニピュレータアーム41を連結部32に接続するコネクタ43と、マニピュレータアーム41を荷役装置5で吊り下げるための吊りピース44と、を備えている。
【0027】
マニピュレータアーム41は、いわゆる多関節アームであり、先端ツール42に応じた構造のものを任意に選択して使用することができる。マニピュレータアーム41の先端には、作業内容に応じた先端ツール42が接続される。先端ツール42は、例えば、対象物Xを切削するカッター、対象物Xを破砕するドリル、対象物Xの切片を掬い取るショベル等であるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
なお、マニピュレータアーム41の関節の回転駆動機構及び各関節や先端ツール42に接続される電気ケーブル、ホース類のアーム内敷設方法については、国際公開第2016/100939号に開示されている技術を用いてもよい。
【0029】
先端ツール42は、マニピュレータアーム41に対して着脱可能に構成されていてもよいし、マニピュレータアーム41と一体に構成されていてもよい。先端ツール42がマニピュレータアーム41と一体に構成されている場合には、マニピュレータアーム41ごと交換することによって先端ツール42を交換することができる。なお、先端ツール42がマニピュレータアーム41に対して着脱可能に構成されている場合には、マニピュレータアーム41を交換することなく、先端ツール42のみを交換することができる。
【0030】
コネクタ43は、連結部32に機械的に接続可能な端子であり、コネクタ43を連結部32に接続することによって駆動系も接続されるように構成されている。かかる連結構造は、例えば、土木作業用の重機等で既に実用化されていることから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
荷役装置5は、例えば、
図3に示したように、懸垂台2を跨ぐように配置可能な門型のガントリークレーンである。荷役装置5は、例えば、一対の脚部51と、脚部51間に掛け渡されたビーム52と、ビーム52上に移動可能に配置された複数のトロリー53と、トロリー53にホイストを介して昇降可能に配置されたフック54と、を備えている。なお、荷役装置5は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、天井クレーンによって代用するようにしてもよい。
【0032】
かかる荷役装置5によれば、マニピュレータ4の吊りピース44をフック54に係止し、マニピュレータ4を懸垂台2の上方から開口部2a,3aを介して昇降台3の位置まで下降させることができる。なお、本実施形態において、荷役装置5は、マニピュレータ4を交換する際に使用されているが、その他の用途(例えば、回収した対象物Xを収容したバケットの搬送等)に使用してもよい。
【0033】
ところで、上述した回収装置1は、例えば、
図3に示したような原子炉6に使用することができる。
図3に示した原子炉6は、いわゆる沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)であり、原子炉圧力容器61、原子炉格納容器62、原子炉建屋63等を有している。原子炉圧力容器61は、炉心を収容する容器であって、高温・高圧に耐え得る鋼鉄製の容器である。原子炉格納容器62は、原子炉圧力容器61等の主要設備を格納する容器であって、密閉性・耐圧性の高い鋼鉄製又はコンクリート製の容器である。
【0034】
原子炉圧力容器61及び原子炉格納容器62は、コンクリート製の原子炉建屋63内に格納されている。原子炉建屋63は原子炉の事故時に放射性物質の漏洩を防止する役割を有しており、燃料ペレット、燃料被覆管、原子炉圧力容器61、原子炉格納容器62及び原子炉建屋63により構成される五重の障壁の一つである。
【0035】
原子炉建屋63内は、複数の区画された空間が形成されており、この区画空間には原子炉格納容器62の下部に環状に配置された圧力抑制プール64、使用済み燃料を貯蔵する燃料貯蔵プール65、メンテナンス時等に機器を仮置きする機器仮置プール66等が配置されている。なお、
図3では、制御棒や冷却系の詳細については図を省略してある。また、原子炉建屋63は、図示した構成に限定されるものではない。
【0036】
原子炉格納容器62内の底部には、原子炉圧力容器61を支持する円筒形状のペデスタル67が形成されており、ペデスタル67の内部には制御棒駆動機構(図示せず)が配置されている。ペデスタル67の上部には、原子炉圧力容器61を囲う円筒形状のγ線遮蔽体68が配置されている。
【0037】
原子炉格納容器62の頂部には、原子炉格納容器62を密閉状態に封止するドライウェルヘッド62aが配置されている。また、原子炉圧力容器61の頂部には、原子炉圧力容器61を密閉状態に封止する上蓋61aが配置されている。なお、
図3では、上蓋61aが撤去された状態を図示しているが、説明の便宜上、上蓋61aを一点鎖線で図示している。
【0038】
また、ドライウェルヘッド62aの上方に形成された縦穴は、原子炉ウェル63aと呼ばれており、複数の遮蔽プラグ63bによって封止されている。遮蔽プラグ63bは、例えば、コンクリート製の三枚の円板によって構成されている。なお、これらの遮蔽プラグ63bは、重量物であることから、幅方向に複数に分割されている場合もある。
【0039】
遮蔽プラグ63b、燃料貯蔵プール65、機器仮置プール66の上面には、作業用の床面Fが形成されている。床面Fは、燃料交換床やオペレーションフロアと称する場合もある。また、原子炉建屋63の上部には、機器搬送用の天井クレーン63cが設置されていてもよい。
【0040】
炉心溶融等の事故が生じた場合には、冷却材の喪失により原子炉燃料が溶融して原子炉構造材や制御棒等とともに冷えて固化し、燃料デブリ(対象物X)と化すことがある。燃料デブリは、例えば、図示したように、原子炉圧力容器61内に存在していることが多いものと考えられる。かかる燃料デブリが発生している原子炉6を廃炉にする際には、外部環境の放射能汚染を防止する観点から、原子炉圧力容器61内の構造物や燃料デブリを事前に回収することが重要である。
【0041】
原子炉圧力容器61内の対象物Xを回収する際には、例えば、原子炉ウェル63aを封止している遮蔽プラグ63bの上に遮蔽ポート7を固定した後、遮蔽プラグ63bの一部を除去して開口部を形成する。遮蔽ポート7は、開閉可能な開閉扉を有しており、任意のタイミングで原子炉ウェル63aにアクセス可能な通路を形成することができる。また、対象物Xに届く位置まで昇降台3を搬送するには、ドライウェルヘッド62aに開口部を形成し、原子炉圧力容器61の上蓋61aを撤去しておく。
【0042】
遮蔽ポート7の上方に懸垂台2を配置し、昇降台3を作業現場に移動させる際には、図示したように、遮蔽ポート7の開閉扉を開放した状態とし、ホイスト24を作動させて昇降台3を遠隔操作により下降させる。マニピュレータ4が対象物Xに届く位置に到達したら、ホイスト24を停止し、固定装置33を作動させて原子炉圧力容器61の壁面に昇降台3を固定する。なお、図示しないが、昇降台3は、作業現場の状況を監視するカメラや作業現場の状況を調査する各種センサ等を有していてもよい。
【0043】
マニピュレータ4の故障やメンテナンス等のために、マニピュレータ4(マニピュレータアーム41を含む)を交換する場合には、荷役装置5のフック54をマニピュレータ4の吊りピース44に係止させ、上方に引き上げることによりマニピュレータ4を昇降台3から離脱させ、床面Fまで搬送する。次に、交換用のマニピュレータ4を荷役装置5のフック54に係止させ、懸垂台2の開口部21aを通して原子炉圧力容器61内に下降させる。
【0044】
ここで、
図4は、マニピュレータの連結方法の一例を示す説明図であり、(a)は下降工程、(b)は水平位置調整工程、(c)は案内工程、(d)は回動工程、を示している。なお、各図において、説明の便宜上、昇降台3の構成を一部簡略化して図示するとともに吊りピース44に係止されたフック54の図を省略してある。
【0045】
図4(a)に示したように、昇降台3は、荷役装置5により搬送されるマニピュレータ4を案内するガイド部材34を有していてもよい。また、マニピュレータ4は、ガイド部材34に当接するガイドローラ45を有していてもよい。ガイドローラ45は、例えば、マニピュレータ4のコネクタ43の両側部に配置されている。なお、ガイド部材34及びガイドローラ45は、マニピュレータ4を昇降台3の連結部32に案内する部品の一例であり、かかる構成に限定されるものではない。
【0046】
ガイド部材34は、昇降台3の内縁部に配置された一対の板材により構成されており、板材は左右のガイドローラ45と対応する位置に配置されている。なお、
図4(a)〜(d)の各図において、説明の便宜上、一方のガイド部材34のみを図示している。
【0047】
また、ガイド部材34には、ガイドローラ45を昇降台3の連結部32に案内する案内溝34aが形成されている。案内溝34aは、昇降方向にガイドローラ45を案内しつつ昇降台3の径方向外側にガイドローラ45を案内するように形成されている。また、案内溝34aの入口部には、径方向内側よりも径方向外側の方が高くなるように形成された突出部34bが配置されている。
【0048】
図4(a)に示したように、下降工程では、ガイドローラ45が突出部34bと略同じ高さとなるまでマニピュレータ4を下降させる。次に、
図4(b)に示したように、水平位置調整工程では、ガイドローラ45を突出部34bに当接するようにマニピュレータ4を水平方向に移動させる。次に、
図4(c)に示したように、案内工程では、マニピュレータ4を下降させることによってガイドローラ45を案内溝34aに沿って移動させる。
【0049】
ガイドローラ45が案内溝34aの下端に到達した後、
図4(d)に示したように、マニピュレータ4を回動させる。かかる回動工程では、吊りピース44を径方向内側に移動させることにより、ガイドローラ45を支点としてマニピュレータ4を径方向外側に回動させる。かかる処理により、マニピュレータ4のコネクタ43が昇降台3の連結部32に連結される。
【0050】
次に、マニピュレータ4の先端ツール42のみを交換する場合について説明する。ここで、
図5は、先端アームの搬送容器を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、である。マニピュレータ4のマニピュレータアーム41を昇降台3に設置した状態で先端ツール42を交換する場合には、
図5(a)及び
図5(b)に示した搬送容器46を使用する。
【0051】
搬送容器46は、例えば、側面の一部に開口部46aを有する略直方体形状を有している。また、搬送容器46の上部には荷役装置5のフック54に係止可能な吊りピース46bが配置されている。搬送容器46内には先端ツール42を収容した状態で吊りピース46bにフック54を係止し、荷役装置5により昇降台3の位置まで下降させる。
【0052】
その状態でマニピュレータアーム41を遠隔操作してマニピュレータアーム41の先端を先端ツール42のコネクタ42aに接近させ連結させる。このとき、搬送容器46の位置を固定するために、交換対象ではない他のマニピュレータ4を使用して搬送容器46の外面を把持するようにしてもよい。
【0053】
マニピュレータアーム41の先端から先端ツール42を取り外して回収する際には、空の搬送容器46を荷役装置5により昇降台3の位置まで下降させ、交換対象のマニピュレータアーム41を遠隔操作して先端ツール42を搬送容器46の開口部46aから挿入する。その状態でマニピュレータアーム41を遠隔操作して先端ツール42を離脱させることにより、搬送容器46内に先端ツール42を収容することができる。
【0054】
このとき、搬送容器46の位置を固定するために、交換対象ではない他のマニピュレータ4を使用して搬送容器46の外面を把持するようにしてもよい。その後、荷役装置5により搬送容器46を床面Fまで上昇させて回収する。
【0055】
上述した本実施形態に係る回収装置1によれば、昇降台3を天井クレーンではなく、床面Fに配置した懸垂台2により昇降させるようにしたことから、床面Fから天井クレーンまでの高さ分だけ昇降台3の移動距離を物理的に短縮することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る回収装置1によれば、対象物Xの回収作業を行うマニピュレータ4を昇降台3に着脱可能に配置し、懸垂台2に吊り下げられた昇降台3まで荷役装置5によりマニピュレータ4を搬送するようにしたことから、昇降台3を作業現場付近から懸垂台2が配置された床面Fまで移動させることなく、荷役装置5を遠隔操作することによって、マニピュレータ4の全部(マニピュレータアーム41を含む)又は一部(先端ツール42のみ)の交換を行うことができる。
【0057】
したがって、本実施形態に係る回収装置1によれば、昇降台3の移動距離の短縮及び昇降台3の昇降回数の削減を図ることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0058】
また、回収装置1は、昇降台3に配置されマニピュレータ4に接続されたケーブル47を制御する中継装置48を備えていてもよい。ここで、
図6は、マニピュレータの中継装置を示す説明図である。中継装置48は、例えば、床面Fから昇降台3の位置まで延設されたケーブル47が巻かれたリール48aと、先端ツール42から昇降台3の位置まで延設されたケーブル47が巻かれたリール48bと、を備えている。
【0059】
また、図示しないが、中継装置48は、昇降台3に係止可能なフックと、荷役装置5のフック54に係止可能な吊りピースと、を有している。かかる中継装置48を床面Fから昇降台3まで搬送することにより、マニピュレータ4に連結された先端ツール42の移動に合わせてリール48bのみを制御してケーブル47の長さを調節することができる。したがって、かかる中継装置48を用いることによりケーブルマネジメントを容易に行うことができる。
【0060】
ここでは、先端ツール42に接続されたケーブル47を制御する場合について説明したが、中継装置48は、ワイヤを制御するものであってもよいし、マニピュレータアーム41に接続されるケーブルやワイヤを制御するものであってもよい。
【0061】
上述した実施形態では、回収装置1を原子炉6に使用する場合について説明したが、かかる使用例に限定されるものではない。本実施形態に係る回収装置1は、対象物Xが存在する場所よりも高所に懸垂台2を配置して昇降台3を作業現場にアクセスさせることが必要な施設や設備(例えば、放射性廃液貯蔵タンク等)にも使用することができる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。