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特開2018-176064スケール防止剤及びスケール防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-176064(P2018-176064A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】スケール防止剤及びスケール防止方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/10 20060101AFI20181019BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20181019BHJP
   C02F 5/14 20060101ALI20181019BHJP
   F22B 37/52 20060101ALI20181019BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
   C02F5/10 620D
   C02F5/00 610G
   C02F5/10 620A
   C02F5/00 620B
   C02F5/10 620C
   C02F5/14 C
   F22B37/52 Z
   F28F19/00 501A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-79126(P2017-79126)
(22)【出願日】2017年4月12日
(11)【特許番号】特許第6249123号(P6249123)
(45)【特許公報発行日】2017年12月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】林 倩
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸祐
(57)【要約】
【課題】ボイラ水系システム等において、給水系から混入する硬度成分に起因するスケールを防止する技術、特に、硬度成分の混入量が多い場合であっても、より少ない添加量でスケール防止効果を発揮し得るスケール防止剤及びスケール防止方法を提供する。
【解決手段】ポリメタクリル酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(A)、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(B)、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(C)を含有する、蒸気発生設備用スケール防止剤、及びこれを用いた蒸気発生設備のスケール防止方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメタクリル酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(A)、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(B)、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(C)を含有する、蒸気発生設備用スケール防止剤。
【請求項2】
前記ポリメタクリル酸又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜100,000である、請求項1に記載のスケール防止剤。
【請求項3】
前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜200,000である、請求項1又は2に記載のスケール防止剤。
【請求項4】
前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体を構成するモノマーであるアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とのモル比が、95:5〜50:50である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
【請求項5】
前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が、90:10〜10:90である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
【請求項6】
前記成分(A)と前記成分(B)の合計と前記成分(C)との質量比が、50:50〜98:2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
【請求項7】
前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気発生設備用スケール防止剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のスケール防止剤を用いる、蒸気発生設備のスケール防止方法。
【請求項9】
前記スケール防止剤を前記蒸気発生設備の給水系に添加する、請求項8に記載のスケール防止方法。
【請求項10】
前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、請求項9に記載のスケール防止方法。
【請求項11】
前記成分(A)〜(C)の合計添加量が、給水中の硬度成分の炭酸カルシウム換算質量濃度に対して0.3〜2倍の質量濃度となるように添加する、請求項8〜10のいずれか1項に記載のスケール防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等の蒸気発生設備において発生するスケールを防止するためのスケール防止剤及び蒸気発生設備のスケール防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟水又は逆浸透(RO)装置処理水を補給水とするボイラ等の蒸気発生設備においては、軟水器からリークしたり、RO装置で除去しきれなかった硬度成分が、蒸気発生設備等の水系に混入し、伝熱面等でスケールが生じて付着する場合がある。このようなスケールの発生や付着は、伝熱阻害やエネルギー損失を招き、水系設備自体の障害を引き起こすおそれがある。
【0003】
ボイラ水系等におけるスケールを防止する方法としては、従来から種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、分子量20,000〜70,000のポリアクリル酸塩を含むスケール防止剤が提案されている。
また、特許文献2には、ポリメタクリル酸又はその塩と、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体(以下、PAA/AMPSと略称する場合がある。)又はその塩とを含む鉄スケール防止剤が提案されている。また、特許文献3には、アクリル酸系重合体又はその塩と、ホスホン酸、α−アミノカルボン酸又はそれらの水溶性塩とを含む亜鉛スケール防止剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−172816号公報
【特許文献2】特開2015−13252号公報
【特許文献3】特開昭59−95998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスケール防止剤は、水質条件にもよるが、給水中の硬度に対して同量以上、好ましくは1.5倍以上、さらに水質によっては2.0倍を超える濃度となるような添加量が必要であり、添加量が不足すると、スケール防止効果が著しく低下する。そのため、硬度成分の混入量が多い場合は、スケール防止剤の添加量を増加し、また、頻繁に補充しなければならず、処理コストが高くなるとともに、ブロー水の化学的酸素要求量(COD)が高くなるという課題も有していた。
【0006】
一方、上記特許文献2及び3におけるスケール防止剤は、配管等の材質の鉄成分や亜鉛成分に起因するスケール、すなわち、鉄スケールや亜鉛スケールを防止するものであり、カルシウムやマグネシウムの硬度成分に起因するスケールの防止効果についての検討はなされていない。
【0007】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、ボイラ水系システム等において、給水系から混入する硬度成分に起因するスケールを防止する技術、特に、硬度成分の混入量が多い場合であっても、より少ない添加量でスケール防止効果を発揮し得るスケール防止剤及びスケール防止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬度成分(カルシウムやマグネシウム)の濃度が高いボイラ等の蒸気発生設備において、特定の重合体及び化合物を含む薬剤を用いることにより、従来のスケール防止剤よりも少ない添加量で、優れたスケール防止効果が得られることを見出したことに基づいてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[11]を提供する。
[1]ポリメタクリル酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(A)、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(B)、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(C)を含有する、蒸気発生設備用スケール防止剤。
[2]前記ポリメタクリル酸又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜100,000である、上記[1]に記載のスケール防止剤。
[3]前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜200,000である、上記[1]又は[2]に記載のスケール防止剤。
[4]前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体を構成するモノマーであるアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とのモル比が、95:5〜50:50である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
[5]前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が、90:10〜10:90である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
[6]前記成分(A)と前記成分(B)の合計と前記成分(C)との質量比が、50:50〜98:2である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
[7]前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の蒸気発生設備用スケール防止剤。
【0010】
[8]上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のスケール防止剤を用いる、蒸気発生設備のスケール防止方法。
[9]前記スケール防止剤を前記蒸気発生設備の給水系に添加する、上記[8]に記載のスケール防止方法。
[10]前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、上記[9]に記載のスケール防止方法。
[11]前記成分(A)〜(C)の合計添加量が、給水中の硬度成分の炭酸カルシウム換算質量濃度に対して0.3〜2倍の質量濃度となるように添加する、上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載のスケール防止方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラ等の蒸気発生設備において、給水系から混入する硬度成分に起因するスケールを効果的に防止することができる。特に、硬度成分の混入量が多い場合であっても、従来のスケール防止剤よりも少ない添加量で、スケール防止効果を発揮することができる。
したがって、本発明のスケール防止剤及びスケール防止方法は、ボイラ等の蒸気発生設備の安定的かつ安全な運転、及びエネルギーコストの低減化に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のスケール防止剤及びこれを用いたスケール防止方法を詳細に説明する。
【0013】
[スケール防止剤]
本発明のスケール防止剤は、蒸気発生設備用スケール防止剤であり、ポリメタクリル酸(以下、PMAと略称する。)及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(A)、PAA/AMPS及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(B)、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(以下、HEDPと略称する。)及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(C)を含有するものである。
本発明のスケール防止剤は、前記成分(A)〜(C)の3成分を必須成分とするものであり、蒸気発生設備において、優れたスケール防止効果を発揮し得るものである。
【0014】
前記スケール防止剤は、成分(A)〜(C)が予め調製混合されたものであっても、各成分が使用時にそれぞれ添加されるものであってもよい。添加する際の取り扱い容易性等の観点からは、予め調製混合された水溶液であることが好ましい。この場合、水溶液中の成分(A)〜(C)の合計含有量は、取り扱い性や粘性の観点から、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
【0015】
(成分(A))
成分(A)は、PMA及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物、すなわち、PMA及び/又はその塩である。
【0016】
PMA又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜50,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、スケールに対して良好な分散効果が得られる。
なお、前記重量平均分子量、及び後述するPAA/AMPS又はその塩の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0017】
PMAの塩は、PMAを構成するモノマー単位の少なくとも一部にメタクリル酸塩を含むものである。例えば、PMAを中和することにより得ることができる。また、原料モノマーであるメタクリル酸を中和してメタクリル酸塩とし、これを重合して得ることもできる。このようにして得られるPMAの塩は、PMAの完全中和物に限られるものではなく、部分中和物であってもよい。
PMA又は原料モノマーであるメタクリル酸の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属系の中和剤の他、アンモニア、モルフォリン、ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中和剤は、後述するPAA/AMPSもしくはその原料モノマー又はHEDPの中和剤としても用いることができる。
PMAの塩の具体例としては、PMAのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。これらの塩は、該スケール防止剤が用いられる蒸気発生設備の圧力や処理方式に応じて、適したものを適宜選択して使用することができる。
【0018】
(成分(B))
成分(B)は、PAA/AMPS及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物、すなわち、PAA/AMPS及び/又はその塩である。
【0019】
PAA/AMPS又はその塩は、重量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜50,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、良好なスケール分散効果が得られる。
PAA/AMPSを構成するモノマーであるアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とのモル比は、スケール分散効果の観点から、95:5〜50:50であることが好ましく、より好ましくは90:10〜70:30である。
【0020】
PAA/AMPSの塩は、PAA/AMPSを構成するモノマー単位の少なくとも一部にアクリル酸塩及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を含むものである。例えば、PAA/AMPSを中和することにより得ることができる。また、原料モノマーであるアクリル酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を中和してアクリル酸塩及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩とし、これを共重合して得ることもできる。このようにして得られるPAA/AMPSの塩は、PAA/AMPSの完全中和物に限られるものではなく、部分中和物であってもよい。
PAA/AMPSの塩の具体例としては、PAA/AMPSのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。これらの塩は、該スケール防止剤が用いられる蒸気発生設備の圧力や処理方式に応じて、適したものを適宜選択して使用することができる。
【0021】
(成分(C))
成分(C)は、HEDP及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物、すなわち、HEDP又はその塩である。
【0022】
HEDPの塩は、HEDPを中和することにより得ることができる。HEDPの塩は、完全中和物に限られるものではなく、部分中和物であってもよい。
HEDPの塩の具体例としては、HEDPのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。これらの塩は、該スケール防止剤が用いられる蒸気発生設備の圧力や処理方式に応じて、適したものを適宜選択して使用することができる。
【0023】
前記スケール防止剤中の成分(A)と成分(B)の質量比は、良好なスケール防止効果を得る観点から、90:10〜10:90であることが好ましく、より好ましくは70:30〜30:70である。
また、成分(A)と成分(B)の合計と成分(C)との質量比は、特に硬度成分に対するスケール防止効果の観点から、50:50〜98:2であることが好ましく、より好ましくは70:30〜95:5である。
【0024】
前記スケール防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、成分(A)〜(C)以外に、アルカリや脱酸素剤、防食剤等の従来のスケール防止剤に用いられている添加剤成分を、必要に応じて添加含有させてもよい。例えば、脱酸素剤を添加することにより、該スケール防止剤の蒸気発生設備における水中での安定性が高まり、スケール防止効果の経時による低下を抑制することができる。
【0025】
また、アルカリとして、苛性アルカリを遊離アルカリ濃度で0.05質量%以上となるように添加することにより、該スケール防止剤の腐敗を防止することができる。
なお、通常、HEDPは、強アルカリ性の水に対しては有効に作用しないことが知られているが、本発明のスケール防止剤によれば、強アルカリ性であっても良好なスケール防止効果が得られる。このため、前記蒸気発生設備の水系のpHが8よりも高い場合であっても、さらに、pHが11よりも高い場合であっても、HEDPを含むスケール防止剤によって、良好なスケール防止効果を得ることができる。
【0026】
[スケール防止方法]
本発明のスケール防止方法は、蒸気発生設備において、上記の本発明のスケール防止剤を用いるスケール防止方法である。前記スケール防止剤を添加する工程を含んでいれば、通常の水系処理で行われる他の工程を含んでいてもよい。
前記方法においては、良好なスケール防止効果を得る観点から、特に、蒸気発生設備の給水系、例えば、給水タンクや給水ライン等に、前記スケール防止剤を添加することが好ましい。前記蒸気発生設備の水系のpHが8よりも高い場合、さらに、pHが11よりも高い強アルカリ性の場合においても、上述したように、本発明のスケール防止方法によれば、良好なスケール防止効果が得られる。
【0027】
本発明のスケール防止方法は、スケール防止剤を添加する対象である給水中の硬度成分の炭酸カルシウム換算質量濃度が0〜50mgCaCO/Lである場合に好適に適用することができ、シリカ濃度が20mg/L程度と低い場合も、45mg/L以上と高い場合でも、同様に優れたスケール防止効果を発揮し得る。
【0028】
前記スケール防止剤の添加量は、特に硬度成分に対するスケール防止効果を十分に得る観点から、成分(A)〜(C)の合計添加量が、給水中の硬度成分の炭酸カルシウム換算質量濃度(mgCaCO/L)に対して0.3倍以上の質量濃度(mg/L)となるようにすることが好ましい。より好ましくは0.6倍以上である。また、前記合計添加量は、多すぎても添加量に見合った効果の向上は認められず、コスト高となることから、2.0倍以下で十分である。
【0029】
前記スケール防止方法においては、例えば、給水中の硬度を検知し、その硬度に応じて、給水に対するスケール防止剤の添加量を自動制御することにより、安全かつ連続的に、スケール防止効果を発揮させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
下記試験1,2に示す水質及び運転条件で、テストボイラにおけるスケール付着性の評価を行った。なお、下記実施例及び比較例において、スケール防止剤に用いた、PMA、PAA/AMPS及びPAAは、いずれもナトリウム塩であるが、塩である旨の表記は省略する。詳細を以下に示す。
PMA :ポリメタクリル酸ナトリウム;重量平均分子量10,000
PAA/AMPS:アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体のナトリウム塩;各モノマーのモル比80:20;重量平均分子量11,000
PAA :ポリアクリル酸ナトリウム;重量平均分子量50,000
【0031】
[試験1]
(実施例1)
ステンレス製テストボイラ(保有水量4L)においてステンレス製伝熱チューブ(表面積200cm×3本)を用い、給水は、純水に塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、メタケイ酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムを添加して、カルシウム硬度20mgCaCO/L、マグネシウム硬度10mgCaCO/L、シリカ45mgSiO/L、酸消費量(pH4.8)100mgCaCO/Lに調整した。ボイラ缶水のpHは11.5(25℃)であった。
これに、PMA、PAA/AMPS及びHEDP(有効成分)を純分濃度(質量)比40:50:10で混合したスケール防止剤(有効成分16質量%水溶液)を125mg/L(有効成分として20mg/L)となるように添加し、圧力0.7MPa、蒸発量8L、濃縮倍数10として、64時間運転した。運転後に3本の伝熱チューブを取り出して秤量し、試験開始前との比較からスケール付着量を算出した。
【0032】
(比較例1〜10)
実施例1のスケール防止剤に代えて、下記表1の比較例1〜10に示すものを用い、それ以外は実施例1の場合と同様に、テストボイラを運転し、伝熱チューブへのスケール付着量を求めた。
ただし、比較例2においては、スケール防止剤の添加量を60mg/Lとした。
【0033】
各実施例及び比較例についての試験1の結果を表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示したように、試験1の水質及びボイラ運転条件においては、スケール防止剤がPMA、PAA/AMPS及びHEDPの3成分を含む場合(実施例1)、前記3成分のうちPAA/AMPSを含まない場合(比較例7)、前記3成分のうちPMAを含まない場合(比較例8)、また、PAAのみ60mg/L添加の場合(比較例2)は、伝熱チューブへのスケールの付着は認められなかった。
これに対して、スケール防止剤がPAAのみ20mg/L添加の場合(比較例1)、実施例1の3成分のうち2成分を含まない場合(比較例3〜5)、前記3成分のうちHEDPを含まない場合(比較例6)、実施例1の3成分のうちPAA/AMPSに代えてPAAを用いた場合(比較例9)、また、実施例1の3成分のうちPMAに代えてPAAを用いた場合(比較例10)は、伝熱チューブに大量のスケールの付着が確認された。
【0036】
[試験2]
上記試験1において伝熱チューブへのスケールの付着が認められなかった実施例1及び比較例2,7,8について、シリカ濃度が低い水質条件(シリカ20mgSiO/L、酸消費量(pH4.8)50mgCaCO/L)で、それ以外は試験1と同様にテストボイラを運転し、伝熱チューブへのスケール付着量の測定を行った。ボイラ缶水のpHは11.8(25℃)であった。
また、ブロー水中の硬度成分の濃度(全硬度)を原子吸光分光光度計(AA−6400F;株式会社島津製作所)にて測定し、ブローからの硬度成分排出率を求めた。
実施例1及び比較例2,7,8についての試験2の結果も、試験1の結果と併せて表1に示した。
【0037】
表1に示したように、試験1よりもシリカ濃度が低い試験2の水質条件では、スケール防止剤が実施例1の3成分のうちPAA/AMPSを含まない場合(比較例7)は、伝熱チューブに大量のスケールの付着が確認された。このため、ブロー水中の硬度成分の濃度測定は行わなかった。
これに対して、スケール防止剤がPMA、PAA/AMPS及びHEDPの3成分を含む場合(実施例1)、前記3成分のうちPMAを含まない場合(比較例8)は、伝熱チューブへのスケールの付着は認められなかった。しかし、ブローからの硬度成分の排出率は、実施例1では100%であったが、比較例8では約90%であった。なお、PAAのみ60mg/L添加の場合(比較例2)も、伝熱チューブへのスケールの付着は認められず、ブローからの硬度成分の排出率は100%であった。
以上から、実施例1のスケール防止剤は、従来のスケール防止剤よりも少ない添加量で、伝熱面におけるスケール防止のみならず、ボイラ缶内全体に対して優れたスケール防止効果を発揮し得ると言える。
【手続補正書】
【提出日】2017年9月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメタクリル酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(A)、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(B)、並びに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩からなる群のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である成分(C)を含有し、
前記成分(A)と前記成分(B)の合計と前記成分(C)との質量比が、70:30〜95:5である、蒸気発生設備用スケール防止剤。
【請求項2】
前記ポリメタクリル酸又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜100,000である、請求項1に記載のスケール防止剤。
【請求項3】
前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体又はその塩は、重量平均分子量が1,000〜200,000である、請求項1又は2に記載のスケール防止剤。
【請求項4】
前記アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体を構成するモノマーであるアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とのモル比が、95:5〜50:50である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
【請求項5】
前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が、90:10〜10:90である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスケール防止剤。
【請求項6】
前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、請求項1〜のいずれか1項に記載の蒸気発生設備用スケール防止剤。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のスケール防止剤を用いる、蒸気発生設備のスケール防止方法。
【請求項8】
前記スケール防止剤を前記蒸気発生設備の給水系に添加する、請求項に記載のスケール防止方法。
【請求項9】
前記蒸気発生設備の水系のpHが11よりも高い、請求項に記載のスケール防止方法。
【請求項10】
前記成分(A)〜(C)の合計添加量が、給水中の硬度成分の炭酸カルシウム換算質量濃度に対して0.3〜2倍の質量濃度となるように添加する、請求項のいずれか1項に記載のスケール防止方法。