【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンク側壁部が、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤を内方側から外方側に向けて備えるように構成された液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法であって、その特徴構成は、
前記外槽に相当する試験用の平板状部材と前記冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを前記平板状部材の厚み方向に並べ、且つ、前記試験用部材が前記平板状部材の厚み方向に厚みを備えかつ前記試験用部材の前記平板状部材から離れる側の端面が前記平板状部材と平行状に形成された試験体を、設定低温状態にて前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、前記試験体を、前記試験用部材の前記平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧することを行う負荷作用処理を行い、その後、前記試験用液の前記試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行う点にある。
【0008】
すなわち、先ず、負荷作用処理によって、外槽に相当する試験用の平板状部材と冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを平板状部材の厚み方向に並べた試験体を、設定低温状態にて平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、試験体を、試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて、試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧することになる。
そして、負荷作用処理の後で、試験用液の試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行うことになる。
【0009】
尚、試験用部材の平板状部材の厚み方向に沿う厚みは、冷熱抵抗緩和材の実際の厚みに対応する厚みにすることが好ましいが、実際の厚みよりも、大きくあるいは小さくしてもよい。
【0010】
負荷作用処理における、設定低温状態にて平板状部材の厚み方向に向けて、試験体を設定圧縮力にて圧縮することは、液漏れが発生したときに、低温の液体が冷熱抵抗緩和材を低温状態で押圧することに対応することになる。
つまり、試験体を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で押圧して、冷熱抵抗緩和材としての試験用部材に対して圧縮力を作用させるようにする。
【0011】
ちなみに、設定低温状態は、例えば、液化天然ガスを貯蔵する場合には、天然ガスを液化させる低温温度の低温状態にする等、冷熱抵抗緩和材が低温の液体の接触によって低下する温度に相当する温度にすることが好ましい。
【0012】
また、設定圧縮力は、冷熱抵抗緩和材に作用する最大荷重又はそれに安全率を掛けた荷重に応じた圧縮力にすることが好ましい。つまり、タンク側壁部の上下方向に沿って設けられる冷熱抵抗緩和材には、貯蔵されている液の重量によって、下方側ほど大きな荷重が作用することになるから、設定圧縮力は、冷熱抵抗緩和材の下端側部分に作用する荷重又はそれに安全率を掛けた荷重に応じた圧縮力にすることが好ましい。
【0013】
負荷作用処理における、試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧することは、液漏れが発生したときに、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応することになる。
つまり、試験体と試験用液との関係を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応する関係にして、試験用液を試験体における試験用の試験用部材に浸透させるようにする。
【0014】
検査処理は、負荷作用処理によって、試験体における試験用の試験用部材に浸透させた試験用液の浸透具合を検査する処理であって、試験用液が試験用部材を浸透して平板状部材に達していなければ、試験用部材つまり冷熱抵抗緩和材の液密性が確保されていることになる。
【0015】
このように、本発明によれば、試験体を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で押圧して、冷熱抵抗緩和材としての試験用部材に対して圧縮力を作用させ、かつ、試験体と試験用液との関係を、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応する関係にして、試験用液を試験体における試験用部材に浸透させるようにし、そして、試験体における試験用部材に浸透させた試験用液の浸透具合を検査するものである。
【0016】
したがって、試験用部材としての冷熱抵抗緩和材の液密性を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で検査しながら、冷熱抵抗緩和材単独の液密性を適切に評価することができる。
【0017】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の特徴構成によれば、冷熱抵抗緩和材単独での液密性を適切に評価できる。
【0018】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する点にある。
【0019】
すなわち、負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続するものであるから、試験体における試験用部材に対する試験用液の浸透具合を的確に評価することができる。
【0020】
つまり、タンク側壁部に液漏れが発生すると、例えば、72時間等、処置時間が経過するまでの間には、タンクに貯蔵されている液体が除去される処置が行われることになるから、設定浸透試験時間を処置時間に応じて定めておけば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の試験用部材に対する浸透具合、つまり、処置時間が経過するまでの間における試験用液の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0021】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、処置時間が経過するまでの間における試験用液の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0022】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記負荷作用処理として、前記設定低温状態で、前記試験体を前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮する加圧処理と、常温状態で、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理とを順次行う点にある。
【0023】
すなわち、負荷作用処理として、設定低温状態で行う加圧処理と、常温状態で行う液体浸透処理とを順次行うことになる。
つまり、試験体を平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮して、試験体の試験用部材に対して圧縮力を作用させることは、試験用部材の剛性が温度によって変化することに鑑みて、加圧処理は設定低温状態で行う。
そして、加圧処理後において、試験体の試験用部材に試験用液を浸透させる液体浸透処理は、常温状態で行うようにする。
【0024】
このように、加圧処理は、実際に液漏れが発生したときと同様に、設定低温状態で行うようにしながらも、液体浸透処理は、常温状態で行うようにすることにより、試験用液の管理が容易となり、負荷作用処理を良好に行うことができるものとなる。
【0025】
つまり、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧することを、設定低温状態で行うようにすると、設定低温状態が液化ガスに対応した低温状態であるため、試験用液を設定低温状態において液体状態に維持することが煩雑になる等、負荷作用処理が煩雑になるが、本特徴構成によれば、試験用液を常温状態において液体状態に維持することになるため、負荷作用処理を良好に行うことができるのである。
【0026】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、負荷作用処理を良好に行うことができる。
【0027】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記液体浸透処理が、前記加圧処理後の前記試験体を底部に前記試験用液を貯留した試験容器に投入し、かつ、常温状態で、前記試験容器に圧縮空気を供給して、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する処理である点にある。
【0028】
すなわち、液体浸透処理として、加圧処理後の試験体を、底部に試験用液を貯留した試験容器に投入し、かつ、常温状態で、試験容器に圧縮空気を供給して、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧する処理を行うようにする。
【0029】
試験用液を貯留した試験容器に試験体を投入して圧縮空気を供給すれば、圧縮空気が、試験体を押圧することに加えて、試験用液の表面のうちの試験体が存在しない部分を押圧することになるから、試験用液と試験体における試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部とを、設定圧縮力にて接触する状態を適切にもたらすことができる。
【0030】
つまり、試験用液と試験体における試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部とを設定圧縮力にて接触する状態を、試験容器に圧縮空気を供給する簡単な操作により、適切にもたらすことができる。
【0031】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、試験容器に圧縮空気を供給する簡単な操作により、試験用液と試験体における試験用部材とを適切に接触させることができる。
【0032】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記液体浸透処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する点にある。
【0033】
すなわち、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理が、設定浸透試験時間に亘って継続するものであるから、試験用液が試験体における試験用部材に対する浸透具合を的確に評価することができる。
【0034】
つまり、タンク側壁部に液漏れが発生すると、例えば、72時間等、処置時間が経過するまでの間には、タンクに貯蔵されている液体が除去される処置が行われることになるから、設定浸透試験時間を処置時間に応じて定めておけば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の試験用部材に対する浸透具合、つまり、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0035】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0036】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記試験用液が、着色液である点にある。
【0037】
すなわち、試験用液が、着色液であれば、試験体の試験用部材に対する試験用液の浸透具合を、目視でも確認し易いものであるから、検査処理を良好に行うことができる。
【0038】
尚、試験用液としての着色液は、染料、顔料等の着色料を液に混合して形成することができる。
【0039】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、検査処理を良好に行うことができる。
【0040】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、貯蔵される液が、液化用低温度で液化させた液化ガスであり、前記設定低温状態が、前記液化用低温度の状態である点にある。
【0041】
すなわち、貯蔵される液が、例えば、液化天然ガスや液化石油ガス等、液化用低温度で液化させた液化ガスであることに応じて、負荷作用処理を行う設定低温状態を、液化ガスの貯蔵温度に対応させて、液化用低温度の状態にするものであるから、液化用低温度で液化させた液化ガスを貯蔵する場合における冷熱抵抗緩和材の評価を良好に行うことができる。
【0042】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、液化用低温度で液化させた液化ガスを貯蔵する場合における冷熱抵抗緩和材の評価を良好に行うことができる。