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特開2018-17626液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-17626(P2018-17626A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20180105BHJP
   G01N 13/04 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   G01M3/20 P
   G01N13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-148679(P2016-148679)
(22)【出願日】2016年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 丈能
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】新村 知也
(72)【発明者】
【氏名】八木 浩二
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA48
2G067BB04
2G067BB40
2G067CC18
2G067DD10
2G067DD27
(57)【要約】
【課題】冷熱抵抗緩和材単独での液密性を適切に評価できる、液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法を提供する。
【解決手段】タンク側壁部Tsが、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤5を備える液貯蔵タンクTに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法であって、外槽に相当する試験用の平板状部材と冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを平板状部材の厚み方向に並べた試験体を、設定低温状態にて平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、試験体を、試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧することを行う負荷作用処理を行い、その後、試験用液の試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク側壁部が、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤を内方側から外方側に向けて備えるように構成された液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法であって、
前記外槽に相当する試験用の平板状部材と前記冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを前記平板状部材の厚み方向に並べ、且つ、前記試験用部材が前記平板状部材の厚み方向に設定大きさの厚みを備えかつ前記試験用部材の前記平板状部材から離れる側の端面が前記平板状部材と平行状に形成された試験体を、設定低温状態にて前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、前記試験体を、前記試験用部材の前記平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧することを行う負荷作用処理を行い、その後、前記試験用液の前記試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行う、液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項2】
前記負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する請求項1記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項3】
前記負荷作用処理として、前記設定低温状態で、前記試験体を前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮する加圧処理と、常温状態で、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理とを順次行う請求項1記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項4】
前記液体浸透処理が、前記加圧処理後の前記試験体を底部に前記試験用液を貯留した試験容器に投入し、かつ、常温状態で、前記試験容器に圧縮空気を供給して、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する処理である請求項3記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項5】
前記液体浸透処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する請求項3又は4記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項6】
前記試験用液が、着色液である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【請求項7】
貯蔵される液が、液化用低温度で液化させた液化ガスであり、前記設定低温状態が、前記液化用低温度の状態である請求項1〜6のいずれか1項に記載の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク側壁部が、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤を内方側から外方側に向けて備えるように構成された液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク側壁部が、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤を内方側から外方側に向けて備えるように構成された液貯蔵タンクは、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)等の液化ガスを貯蔵するタンクとして使用されるものであって、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する場合にはLNGタンクと呼称される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような液貯蔵タンクは、内槽の内方側に液化ガスを貯留し、断熱層にて保冷して、液化ガスの蒸発を防止し、防液堤にて漏液時の液密性を確保することになる。
そして、冷熱抵抗緩和材が、万が一内槽に液漏れが発生したときに、防液堤に作用する冷熱に抵抗して緩和する機能を発揮することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014‐193726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液貯蔵タンクの側壁部は、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤の複合構造で、液漏れが発生した際の液密性を確保する構成である。
したがって、冷熱抵抗緩和材は、液漏れが発生した際に、最初に液に接触する部材であるので、冷熱抵抗緩和材単独での液密性を適切に評価することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、冷熱抵抗緩和材単独での液密性を適切に評価できる、液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンク側壁部が、内槽、断熱層、冷熱抵抗緩和材、外槽及び防液堤を内方側から外方側に向けて備えるように構成された液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法であって、その特徴構成は、
前記外槽に相当する試験用の平板状部材と前記冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを前記平板状部材の厚み方向に並べ、且つ、前記試験用部材が前記平板状部材の厚み方向に厚みを備えかつ前記試験用部材の前記平板状部材から離れる側の端面が前記平板状部材と平行状に形成された試験体を、設定低温状態にて前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、前記試験体を、前記試験用部材の前記平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧することを行う負荷作用処理を行い、その後、前記試験用液の前記試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行う点にある。
【0008】
すなわち、先ず、負荷作用処理によって、外槽に相当する試験用の平板状部材と冷熱抵抗緩和材にて形成される試験用部材とを平板状部材の厚み方向に並べた試験体を、設定低温状態にて平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、試験体を、試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて、試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧することになる。
そして、負荷作用処理の後で、試験用液の試験用部材に対する浸透具合を検査する検査処理を行うことになる。
【0009】
尚、試験用部材の平板状部材の厚み方向に沿う厚みは、冷熱抵抗緩和材の実際の厚みに対応する厚みにすることが好ましいが、実際の厚みよりも、大きくあるいは小さくしてもよい。
【0010】
負荷作用処理における、設定低温状態にて平板状部材の厚み方向に向けて、試験体を設定圧縮力にて圧縮することは、液漏れが発生したときに、低温の液体が冷熱抵抗緩和材を低温状態で押圧することに対応することになる。
つまり、試験体を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で押圧して、冷熱抵抗緩和材としての試験用部材に対して圧縮力を作用させるようにする。
【0011】
ちなみに、設定低温状態は、例えば、液化天然ガスを貯蔵する場合には、天然ガスを液化させる低温温度の低温状態にする等、冷熱抵抗緩和材が低温の液体の接触によって低下する温度に相当する温度にすることが好ましい。
【0012】
また、設定圧縮力は、冷熱抵抗緩和材に作用する最大荷重又はそれに安全率を掛けた荷重に応じた圧縮力にすることが好ましい。つまり、タンク側壁部の上下方向に沿って設けられる冷熱抵抗緩和材には、貯蔵されている液の重量によって、下方側ほど大きな荷重が作用することになるから、設定圧縮力は、冷熱抵抗緩和材の下端側部分に作用する荷重又はそれに安全率を掛けた荷重に応じた圧縮力にすることが好ましい。
【0013】
負荷作用処理における、試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧することは、液漏れが発生したときに、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応することになる。
つまり、試験体と試験用液との関係を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応する関係にして、試験用液を試験体における試験用の試験用部材に浸透させるようにする。
【0014】
検査処理は、負荷作用処理によって、試験体における試験用の試験用部材に浸透させた試験用液の浸透具合を検査する処理であって、試験用液が試験用部材を浸透して平板状部材に達していなければ、試験用部材つまり冷熱抵抗緩和材の液密性が確保されていることになる。
【0015】
このように、本発明によれば、試験体を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で押圧して、冷熱抵抗緩和材としての試験用部材に対して圧縮力を作用させ、かつ、試験体と試験用液との関係を、液漏れした高圧の液体にて冷熱抵抗緩和材を押圧する状態に対応する関係にして、試験用液を試験体における試験用部材に浸透させるようにし、そして、試験体における試験用部材に浸透させた試験用液の浸透具合を検査するものである。
【0016】
したがって、試験用部材としての冷熱抵抗緩和材の液密性を、実際に液漏れが発生したときと同様な条件で検査しながら、冷熱抵抗緩和材単独の液密性を適切に評価することができる。
【0017】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の特徴構成によれば、冷熱抵抗緩和材単独での液密性を適切に評価できる。
【0018】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する点にある。
【0019】
すなわち、負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続するものであるから、試験体における試験用部材に対する試験用液の浸透具合を的確に評価することができる。
【0020】
つまり、タンク側壁部に液漏れが発生すると、例えば、72時間等、処置時間が経過するまでの間には、タンクに貯蔵されている液体が除去される処置が行われることになるから、設定浸透試験時間を処置時間に応じて定めておけば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の試験用部材に対する浸透具合、つまり、処置時間が経過するまでの間における試験用液の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0021】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、処置時間が経過するまでの間における試験用液の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0022】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記負荷作用処理として、前記設定低温状態で、前記試験体を前記平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮する加圧処理と、常温状態で、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理とを順次行う点にある。
【0023】
すなわち、負荷作用処理として、設定低温状態で行う加圧処理と、常温状態で行う液体浸透処理とを順次行うことになる。
つまり、試験体を平板状部材の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮して、試験体の試験用部材に対して圧縮力を作用させることは、試験用部材の剛性が温度によって変化することに鑑みて、加圧処理は設定低温状態で行う。
そして、加圧処理後において、試験体の試験用部材に試験用液を浸透させる液体浸透処理は、常温状態で行うようにする。
【0024】
このように、加圧処理は、実際に液漏れが発生したときと同様に、設定低温状態で行うようにしながらも、液体浸透処理は、常温状態で行うようにすることにより、試験用液の管理が容易となり、負荷作用処理を良好に行うことができるものとなる。
【0025】
つまり、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧することを、設定低温状態で行うようにすると、設定低温状態が液化ガスに対応した低温状態であるため、試験用液を設定低温状態において液体状態に維持することが煩雑になる等、負荷作用処理が煩雑になるが、本特徴構成によれば、試験用液を常温状態において液体状態に維持することになるため、負荷作用処理を良好に行うことができるのである。
【0026】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、負荷作用処理を良好に行うことができる。
【0027】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記液体浸透処理が、前記加圧処理後の前記試験体を底部に前記試験用液を貯留した試験容器に投入し、かつ、常温状態で、前記試験容器に圧縮空気を供給して、前記試験体を前記試験用液に向けて前記設定圧縮力にて押圧する処理である点にある。
【0028】
すなわち、液体浸透処理として、加圧処理後の試験体を、底部に試験用液を貯留した試験容器に投入し、かつ、常温状態で、試験容器に圧縮空気を供給して、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧する処理を行うようにする。
【0029】
試験用液を貯留した試験容器に試験体を投入して圧縮空気を供給すれば、圧縮空気が、試験体を押圧することに加えて、試験用液の表面のうちの試験体が存在しない部分を押圧することになるから、試験用液と試験体における試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部とを、設定圧縮力にて接触する状態を適切にもたらすことができる。
【0030】
つまり、試験用液と試験体における試験用部材の平板状部材から離間する側の端面部とを設定圧縮力にて接触する状態を、試験容器に圧縮空気を供給する簡単な操作により、適切にもたらすことができる。
【0031】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、試験容器に圧縮空気を供給する簡単な操作により、試験用液と試験体における試験用部材とを適切に接触させることができる。
【0032】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記液体浸透処理を、設定浸透試験時間に亘って継続する点にある。
【0033】
すなわち、試験体を試験用液に向けて設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理が、設定浸透試験時間に亘って継続するものであるから、試験用液が試験体における試験用部材に対する浸透具合を的確に評価することができる。
【0034】
つまり、タンク側壁部に液漏れが発生すると、例えば、72時間等、処置時間が経過するまでの間には、タンクに貯蔵されている液体が除去される処置が行われることになるから、設定浸透試験時間を処置時間に応じて定めておけば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の試験用部材に対する浸透具合、つまり、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0035】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、処置時間が経過するまでの間における試験用液体の冷熱抵抗緩和材に対する浸透具合を適切に評価できる。
【0036】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、前記試験用液が、着色液である点にある。
【0037】
すなわち、試験用液が、着色液であれば、試験体の試験用部材に対する試験用液の浸透具合を、目視でも確認し易いものであるから、検査処理を良好に行うことができる。
【0038】
尚、試験用液としての着色液は、染料、顔料等の着色料を液に混合して形成することができる。
【0039】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、検査処理を良好に行うことができる。
【0040】
本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成は、貯蔵される液が、液化用低温度で液化させた液化ガスであり、前記設定低温状態が、前記液化用低温度の状態である点にある。
【0041】
すなわち、貯蔵される液が、例えば、液化天然ガスや液化石油ガス等、液化用低温度で液化させた液化ガスであることに応じて、負荷作用処理を行う設定低温状態を、液化ガスの貯蔵温度に対応させて、液化用低温度の状態にするものであるから、液化用低温度で液化させた液化ガスを貯蔵する場合における冷熱抵抗緩和材の評価を良好に行うことができる。
【0042】
要するに、本発明の液貯蔵タンクに用いられる冷熱抵抗緩和材の評価方法の更なる特徴構成によれば、液化用低温度で液化させた液化ガスを貯蔵する場合における冷熱抵抗緩和材の評価を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】液貯蔵タンクの一部切欠側面図
図2】タンク側壁部の縦断面図
図3】試験体の斜視図
図4】低温圧縮試験機の正面図
図5】常温加圧液密性試験機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔液貯蔵タンクの構成〕
図1に示すように、液貯蔵タンクの一例としてのPCLNGタンクT(以下、LNGタンクと略称)は、天然ガスを液化用低温度(例えば、−164℃)で液化させた液化天然ガス(LNG)を貯蔵するものであって、多数本の杭にて支持される平板状のタンク底部Td、円筒状のタンク側壁部Ts、ドーム型の屋根部Tyを備える平底円筒状に構成されている。
【0045】
タンク側壁部Tsは、図2に示すように、内槽1、断熱層2、冷熱抵抗緩和材3、外槽4及び防液堤としてのPC防液堤5を内方側から外方側に向けて備えるように構成されている。
断熱層2は、内方側のグラスウール層2aと外方側のパーライト層2bとからなる二重構造に構成されている。
冷熱抵抗緩和材3は、例えば、ポリウレタンフォームからなるものであって、外槽4の表面に形成されている。ちなみに、冷熱抵抗緩和材3の内面(断熱層2に隣接する面)には、図示は省略するが、補強層としてのガラスクロスが設けられている。
【0046】
PC防液堤5は、PC鋼材に対して鉛直方向及び円周方向に予め圧縮力を与えるようにしたPC(プレストレストコンクリート)によって構成されている。
内槽1は、図1に示すように、短冊状の複数の内槽形成用板1aを周方向及び上下方向に並設して構成されている。
外槽は、図示は省略するが、短冊状の外槽形成用板を周方向に並べて形成した環状体を上下方向に並べて構成されている。
【0047】
タンク底部Tdは、図1に示すように、多数本の杭にて支持されるコンクリート製の基礎体6を備え、PC防液堤5の下端部が、基礎体6の外周縁部に結合されている。
基礎体6の上部には、詳細な説明は省略するが、外槽用底板、底部断熱層、内槽用底板が設けられることになる。
【0048】
ドーム型の屋根部Tyは、内槽用屋根形成体、屋根部断熱層、外槽用屋根形成体を備えることになるが、本実施形態においては、詳細な説明を省略する。
【0049】
(冷熱抵抗緩和材の評価方法)
次に、内槽1が破損して液漏れが発生した際における冷熱抵抗緩和材3の機能を評価する評価方法について説明する。
つまり、冷熱抵抗緩和材3は、液漏れが発生した際に、PC防液堤5に作用する冷熱に抵抗し、緩和することを目的とするものであるから、液漏れが発生した際に、漏れ出た液(LNG)が冷熱抵抗緩和材3を浸透する具合を評価する方法について説明する。
【0050】
図3に示すように、外槽4に相当する試験用の平板状部材7と冷熱抵抗緩和材3(ポリウレタンフォーム)にて形成された試験用部材8とを平板状部材7の厚み方向に並べた試験体Pを形成する。
試験用部材8は、平板状部材7の厚み方向に沿う厚みを備え且つ平板状部材7から離れる側の端面が平板状部材7と平行状に形成されている。
尚、試験用部材8の平板状部材7から離れる側の端面には、タンク側壁部Tyに設置された冷熱抵抗緩和材3と同様に、ガラスクロスの補強層8aが一体成型されている。
【0051】
ちなみに、冷熱抵抗緩和材3のタンク径方向に沿う厚さが50mmであるから、試験用部材8における平板状部材7の厚み方向に沿う厚みHが50mmであり、厚み方向と直交する第1幅Y1及び第2幅Y2の夫々が、50mm程度となるように形成される。
【0052】
尚、外槽4は、円筒状であるものの、外槽4における周方向における50mm程度の部分は、平板状であると見なすことができるため、外槽4に相当する試験用部分を、平板状部材7とした。
【0053】
冷熱抵抗緩和材3の評価方法として、試験体Pを、設定低温状態にて平板状部材7の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、試験体Pを、試験用部材8の平板状部材7から離間する側の端面部を試験用液Qに接触させた状態にて試験用液Qに向けて設定圧縮力にて押圧することを行う負荷作用処理を行い、その後、試験用液Qの試験用部材8に対する浸透具合を検査する検査処理を行うことになる。
【0054】
本実施形態においては、負荷作用処理として、設定低温状態で、試験体Pを平板状部材7の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮する加圧処理と、常温状態で、試験体Pを試験用液Qに向けて設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理とを順次行うようにした。
そして、液体浸透処理として、加圧処理後の試験体Pを底部に試験用液Qを貯留した試験容器K(図5参照)に投入し、かつ、常温状態で、試験容器Kに圧縮空気を供給して、試験体Pを試験用液Qに向けて設定圧縮力にて押圧する処理を行うようにした。
【0055】
また、液体浸透処理を、設定浸透試験時間(例えば、72時間)に亘って継続するようにした。
つまり、タンク側壁部Tyに液漏れが発生すると、例えば、72時間等の処置時間が経過するまでの間には、タンクTに貯蔵されている液体が除去される処置が行われることになるから、設定浸透試験時間を処置時間に応じた時間に定めて、処置時間が経過するまでの間における試験用液体Qの試験用部材8に対する浸透具合を評価するようにした。
【0056】
本実施形態においては、図4に示すように、低温圧縮試験機Aにて加圧処理を行うように構成されている。
すなわち、低温圧縮試験機Aは、内部温度を設定温度に維持する恒温槽9の内部に、試験体Pを上下から挟んで圧縮する一対の挟持体10を備えるものである。
尚、一対の挟持体10は、図示は省略するが、流体圧シリンダ機構やネジ式機構にて遠近方向に移動操作されることになる。
【0057】
本実施形態のLNGタンクTは、液化用低温度で液化する液化天然ガスLNGを貯蔵するタンクであるから、設定低温状態が、液化用低温度の状態である。
具体的には、本実施形態においては、天然ガスを液化させる液化用低温度が−164℃であるから、恒温槽9の内部温度を、−164℃に維持した状態で、加圧処理が行われることになる。
【0058】
また、本実施形態では、内槽1が破損して液漏れが発生した際に、PC防液堤5の下端に作用する最大圧力が、単位面積mm2当たり0.19MPaであるので、その圧力に安全率1.2を乗じた圧力(0.23MPa)に、試験用部材8の横断面積(本実施形態では、2,500mm2)を乗じた値を、上記設定圧縮力とする。
尚、安全率1.2は、一般社団法人日本ガス協会のLNG地上式貯槽指針に示されるレベル2耐震性能評価時の保冷材の圧縮強さに対する安全率である。
【0059】
したがって、試験体Pを、平板状部材7の厚み方向に向けて一対の挟持体10によって、設定圧縮力にて圧縮する状態で、加圧処理が行われることになる。
すなわち、一対の挟持体10は、1分当たりに4mm程度進む速さで試験体Pを挟持することになり、そして、圧縮力が、挟持圧と試験用部材8の横断面積(本実施形態では、2,500mm2)との積に相当する荷重に達すると、その時点で、圧縮を解除する形態で、試験体Pを挟持するように構成されている。
【0060】
図5に示すように、液体浸透処理を行う試験容器Kは、底部及び側壁部を備える有底円筒状の本体部Khと開閉自在な蓋部Kfとを備え、蓋部Kfには、圧縮空気を供給する空気供給管11が設けられ、空気供給管11には、供給圧力を設定する圧力設定部12及び供給圧力を表示する圧力表示部13が設けられている。
【0061】
試験用液Qが、着色液であり、本実施形態では、水に墨汁を混合させて着色液を形成するように構成されている。
【0062】
したがって、試験用液Qの試験用部材8に対する浸透具合を検査する検査処理は、本実施形態においては、目視検査にて行われることになる。
【0063】
(試験結果の考察)
上述の如く形成した試験体Pについて、設定低温状態(−164℃の状態)で、加圧処理を行い、次に、当該加圧処理後の試験体Pを底部に試験用液Qを貯留した試験容器Kに投入して、常温状態で、設定圧縮力にて押圧する液体浸透処理を行った。
【0064】
液体浸透処理を行った後、試験体Pに対して検査処理を行った結果、上述の如く形成した試験体Pにおける墨汁の浸透範囲は極表層にとどまっており、試験用部材8の内部にはほとんど浸透しないことが確認できた。
つまり、冷熱抵抗緩和材3が、内槽1に液漏れが発生したときに、PC防液堤5に作用する冷熱に抵抗して緩和する機能を適切に発揮することが確認できた。
【0065】
〔別実施形態〕
次に、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、試験用液Qを、墨汁を混合させて着色液に構成する場合を例示したが、試験用液Qを着色液に構成するにあたり、墨汁に代えて、顔料系着色料又は染料系着色料を用いるようにしてもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、負荷作用処理として、加圧処理と液体浸透処理とを順次行う場合を例示したが、例えば、試験容器Kに相当するシリンダ状の容器に、試験用液Qとして液化天然ガス(LNG)を貯留して、設定低温状態に維持し、シリンダ状の容器に沿って摺動するピストンに、試験体Pを装着して、試験体Pを試験用液Qに設定圧縮力にて押付ける形態で、負荷作用処理を実施してもよい。
【0067】
すなわち、試験体Pを、平板状部材7の厚み方向に向けて設定圧縮力にて圧縮すること、及び、試験体Pを、試験用部材8の平板状部材から離間する側の端面部を試験用液に接触させた状態にて試験用液Qに向けて設定圧縮力にて押圧することを、設定低温状態で同時に行う形態で、負荷作用処理を行うようにしてもよい。
この場合、負荷作用処理を、設定浸透試験時間に亘って継続することになる。
【0068】
また、この形態で負荷作用処理を行う場合、試験用液Qとして液化天然ガス(LNG)を、顔料系着色料又は染料系着色料を混合させる等により、着色させておけば、検査処理を目視検査にせ良好に行えるものとなる。
【0069】
(3)上記実施形態では、試験用部材8を立方体状に形成する場合を例示したが、例えば、試験用部材8における平板状部材7の厚み方向に沿う厚みHを50mmにする場合において、厚み方向と直交する第1幅Y1又は第2幅Y2の一方を50mm程度とし、他方を50mmよりも大きくして、試験用部材8を直方体状に形成してもよい。
また、平板状部材7の厚み方向に沿う方向視における試験用部材8の形状は、矩形状に限らず、3角形、5角形等の多角形、円形等、種々の形状に形成することができる。
【0070】
(4)上記実施形態では、冷熱抵抗緩和材3の内面に補強層としてガラスクロスが設けられることに対応して、試験用部材8にガラスクロス8aを設ける場合を例示したが、ガラスクロス8aを省略する形態で実施してもよい。
【0071】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 内槽
2 断熱層
3 冷熱抵抗緩和材
4 外槽
5 防液堤
7 平板状部材
8 試験用部材
P 試験体
Q 試験用液
Ts タンク側壁部
図1
図2
図3
図4
図5