(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-176422(P2018-176422A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】個液分離汚水処理機
(51)【国際特許分類】
B28D 7/02 20060101AFI20181019BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
B28D7/02
B28D1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-73463(P2017-73463)
(22)【出願日】2017年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】515039650
【氏名又は名称】有限会社日向栄進産業
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3C069
【Fターム(参考)】
3C069AA01
3C069BA04
3C069CA07
3C069CA09
3C069DA06
3C069DA07
3C069EA00
(57)【要約】
【課題】コンクリート又はアスファルトの切断により発生する汚水を、切削水として再利用可能とすることで、環境に配慮しつつ、汚水処理のコストを低減可能な固液分離汚水処理機を提供すること。
【解決手段】個液分離汚水処理機1は、コンクリート又はアスファルトを切断する切断機50による切断箇所に供給された切削水と、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理し、汚水から排出された排水と、固体と液体を分離する固液分離剤と、を攪拌する固液分離剤溶液攪拌部10を備え、固液分離剤溶液攪拌部10は、攪拌された固液分離剤溶液を、切削水として切断機50に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート又はアスファルトを切断する切断機による切断箇所に供給された切削水と、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理する固液分離汚水処理機であって、
前記汚水から排出された排水と、固体と液体を分離する固液分離剤と、を攪拌する固液分離剤溶液攪拌部を備え、
前記固液分離剤溶液攪拌部は、攪拌された固液分離剤溶液を、前記切削水として前記切断機に供給する固液分離汚水処理機。
【請求項2】
前記汚水に含まれる汚泥を脱水する汚泥脱水部を、更に備え、
前記汚泥脱水部は、汚泥の脱水により排出した排水を、前記固液分離剤溶液攪拌部に給水する請求項1に記載の固液分離汚水処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個液分離汚水処理機に関し、詳しくは、コンクリート又はアスファルトを切断する切断機による切断箇所に供給された切削水と、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理する固液分離汚水処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート又はアスファルトを切断機で切断すると、塵が発生する。このため、切断機には、この塵の飛散を防止する機構が設けられている。
【0003】
このような切断機として、カッターブレードに対する防塵カバーを設け、油圧メインモータの回転を伝導してカッターブレードを回転させてコンクリート構造物を切断するコンクリート構造物の切断装置が提案されている(特許文献1)。
この切断装置によれば、防塵カバーにより、切断時に発生する塵の飛散を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような切断機には、コンクリート又はアスファルトの切断箇所に切削水を供給しながら、切断する場合がある。切削水を供給しながら、切断することで、塵の飛散をより防止できる。
【0006】
しかしながら、供給された切削水は、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と混合し汚水となる。このような汚水は、そのまま排水すれば環境に悪影響を及ぼす可能性があり、また、排水可能な状態にするための処理には多大なコストが掛かる。
【0007】
本発明は、コンクリート又はアスファルトの切断により発生する汚水を、切削水として再利用可能とすることで、環境に配慮しつつ、汚水処理のコストを低減可能な固液分離汚水処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) コンクリート又はアスファルトを切断する切断機による切断箇所に供給された切削水と、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理する固液分離汚水処理機であって、
前記汚水から排出された排水と、固体と液体を分離する固液分離剤と、を攪拌する固液分離剤溶液攪拌部を備え、
前記固液分離剤溶液攪拌部は、攪拌された固液分離剤溶液を、前記切削水として前記切断機に供給する固液分離汚水処理機。
【0009】
(1)の発明によれば、個液分離汚水処理機は、固液分離剤溶液攪拌部を備え、コンクリート又はアスファルトを切断する切断機による切断箇所に供給された切削水と、コンクリート又はアスファルトの切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理する。
分離剤溶液攪拌部は、汚水から排出された排水と、固体と液体を分離する固液分離剤と、を攪拌する。
そして、分離剤溶液攪拌部は、攪拌された固液分離剤溶液を、切削水として切断機に供給する。
【0010】
これにより、切断機により、コンクリート又はアスファルトを切断したことにより発生した汚水を、固液分離剤とともに攪拌し、再び、切断機の切削水として供給できるので、汚水を再利用することが可能となる。
したがって、コンクリート又はアスファルトの切断により発生する汚水を、切削水として再利用可能とすることで、環境に配慮しつつ、汚水処理のコストを低減可能な固液分離汚水処理機を提供できる。
【0011】
また、切断機の切削水を固液分離剤溶液とすることで、切断機による切断時に、ブレードの回転で、汚水と固液分離剤とを攪拌することも可能となるので、汚水の処理効率が向上する。
【0012】
(2) 前記汚水に含まれる汚泥を脱水する汚泥脱水部を、更に備え、
前記汚泥脱水部から排出された排水を、前記固液分離剤溶液攪拌部に給水する(1)に記載の個液分離汚水処理機。
【0013】
(2)の発明によれば、汚泥脱水部により、汚水に含まれる汚泥を脱水した排水と、固液分離剤と、を攪拌した固液分離剤溶液を、切削水として再利用できるので、汚泥により切断機等が故障する可能性を低減できるので、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリート又はアスファルトの切断により発生する汚水を、切削水として再利用可能とすることで、環境に配慮しつつ、汚水処理のコストを低減可能な固液分離汚水処理機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る個液分離汚水処理機1を適用した個液分離汚水処理システム100の概要を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る個液分離汚水処理システム100において、切削水を再利用可能に循環する処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0017】
まず、前記実施形態に係る個液分離汚水処理機1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る個液分離汚水処理機1を適用した個液分離汚水処理システム100の概要を説明する図である。
【0018】
個液分離汚水処理システム100は、個液分離汚水処理機1と、個液分離汚水処理機1から切削水を供給され、コンクリート又はアスファルト等の被切断物200の切断により発生する汚水が、個液分離汚水処理機1により回収される切断機50と、を備える。
【0019】
個液分離汚水処理機1は、固液分離剤溶液攪拌部10と、汚泥脱水部20と、を備え、被切断物200を切断する切断機50による切断箇所に供給された切削水と、被切断物200の切断により発生した塵と、が混合した汚水を処理する。
なお、図示は省略するが、個液分離汚水処理機1は、後述する攪拌モータ12、給水ポンプ13、循環ポンプ24等の電気で駆動する機器に電気を供給する電源部(図示無し)を備える。
【0020】
固液分離剤溶液攪拌部10は、固液分離剤攪拌槽11と、攪拌モータ12と、給水ポンプ13と、を備え、汚水から排出された排水と、固体と液体を分離する固液分離剤と、を攪拌する。
【0021】
固液分離剤攪拌槽11は、液体を収容可能なタンク形状に形成され、切断機50の切断工程により発生した汚水から、汚泥脱水部20により排出された排水と、固液分離剤と、一般的に切削水として利用される液体(例えば、水道水等)と、が混合された固液分離剤溶液を収容する。
【0022】
固液分離剤は、排水に含まれる個体(例えば、被切断物200の切断時に発生した塵等)に吸着する物質であり、例えば、ゼオライト、消石灰、硫酸アルミニウム、石膏、高分子凝集剤等である。
【0023】
攪拌モータ12は、電源部(図示無し)から供給された電気により回転軸を回転し、回転軸に設けられた羽により、固液分離剤攪拌槽11内に収容された排水と、固液分離剤と、切削水として利用される液体と、が混合された固液分離剤溶液を、攪拌する。
【0024】
給水ポンプ13は、電源部(図示無し)から供給された電気により、固液分離剤攪拌槽11に収容された固液分離剤溶液を切削水として、配管を介して、切断機50に供給する。
【0025】
切断機50は、この供給された固液分離剤溶液を、被切断物200の切断箇所(例えば、ブレード51と被切断物200が当接する部分)に供給しながら、ブレード51を回転させ、被切断物200を切断する。
このとき、回転するブレード51により、被切断物200から発生した塵と、供給した固液分離剤溶液と、を攪拌する。これにより、被切断物200を切断しながら、塵と固液分離剤溶液とを攪拌できるので、作業効率が向上する。
なお、被切断物200がアスファルトの場合、油成分も発生するが、この油成分を分離することなく回収できる。
【0026】
汚泥脱水部20は、汚水集水槽21と、汚泥脱水処理槽22と、排水槽23と、循環ポンプ24と、を備え、汚水に含まれる汚泥を脱水し、汚泥の脱水により排出した排水を、固液分離剤溶液攪拌部10に給水する。
【0027】
汚水集水槽21は、液体を収容可能なタンク形状に形成され、切断機50による切断箇所に供給された切削水と、被切断物200の切断により発生した塵と、が混合した汚水が、貯留される。
汚水集水槽21は、底に排水口が設けられ、この排水口に向かって内法が小さくなる先細りの形状に形成されている。汚水集水槽21に収容された汚水は、この底の排水口より、下方に落下し、汚泥脱水処理槽22に収容される。
【0028】
汚泥脱水処理槽22は、汚水集水槽21の下方に配置され、汚水集水槽21から落下された汚水を収容可能なタンク形状に形成され、底面に固液分離脱水排水フィルタ221が配置されている。これにより、汚水集水槽21から落下された汚水に含まれる固形残渣が固液分離脱水排水フィルタ221の上に残り、汚水から固形残渣が除かれた排水が、固液分離脱水排水フィルタ221を通過し、下方に落下し、排水槽23に収容される。
【0029】
排水槽23は、汚泥脱水処理槽22の固液分離脱水排水フィルタ221の下方に配置され、固液分離脱水排水フィルタ221を通過した排水を収容可能なタンク形状に形成されている。
【0030】
循環ポンプ24は、電源部(図示無し)から供給された電気により、排水槽23に収容された排水を、配管を介して、固液分離剤溶液攪拌部10の固液分離剤攪拌槽11に供給する。
【0031】
なお、
図1に示す例では、切断機50は、床面を切断する切断工として記載しているが、これに限らず、湿式の回転機器切断機であれば、例えば、ウォールソーイング切断工や、コア切削工等の任意の切断機であってよい。
【0032】
次に、個液分離汚水処理システム100において、切削水を再利用可能に循環する処理の流れを説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る個液分離汚水処理システム100において、切削水を再利用可能に循環する処理の流れを説明する図である。
【0033】
個液分離汚水処理システム100では、個液分離汚水処理機1の固液分離剤溶液攪拌部10から、固液分離剤と切削水とが混合された固液分離剤溶液を、切断機50に給水する。
【0034】
切断機50は、固液分離剤溶液を、被切断物の切断箇所(例えば、ブレードと被切断物が当接する部分)に供給しながら、ブレードを回転させ、被切断物200を切断する。
このとき、回転するブレードにより、被切断物200から発生した塵と、供給した固液分離剤溶液と、が攪拌され、汚水となる。
【0035】
この汚水は、個液分離汚水処理機1により回収され、汚泥脱水処理槽22において、汚水に含まれる汚泥が脱水され、汚泥の脱水により排出された排水の一部が、排水槽23に貯留され、固液分離剤溶液攪拌部10に給水され再利用され、一部が放流される。また、汚泥の脱水により発生した固形残渣は、排水槽23に残り、取り出され産業廃棄物として処理される。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 個液分離汚水処理機
10 固液分離剤溶液攪拌部
11 固液分離剤攪拌槽
12 攪拌モータ
13 給水ポンプ
20 汚泥脱水部
21 汚水集水槽
22 汚泥脱水処理槽
23 排水槽
24 循環ポンプ
29 平成
50 切断機
51 ブレード
100 個液分離汚水処理システム
200 被切断物
221 固液分離脱水排水フィルタ