【解決手段】ダッシュボード40の下方で、ボンネット20の内部空間と運転部4との境界部位に、運転部4側からボンネット20の内部空間側への通気が可能であるように通気孔を備えた隔壁部3が設けられ、ボンネット20の内部では、機体前方側寄り箇所にエンジンが配置され、エンジンよりも機体後方側寄りのボンネット20内部にエアクリーナの吸気口が後方側へ向けて設けられ、隔壁部3には、ボンネット20の内部空間に面する箇所に吸音材34を取り付けた防音壁板32が設けられている。
前記隔壁部は、格子状に形成された主枠部と、多数の通気孔を備えて前記主枠部の後面側に設けられた外壁板と、前記主枠部の前面側に設けられた前記防音壁板とが組み合わされたものであり、
前記防音壁板は、前記主枠部の前面側に対向する板金製の遮音板部と、前記ボンネットの内部空間に面する軟質樹脂製の前記吸音材とを備え、
前記遮音板部が前記主枠部の前面側との間に通気用の間隔を隔てて配設されている請求項1〜3のいずれか一項記載の作業車。
前記エアクリーナの吸気管には、後方側へ向けて設けられた前記吸気口とは別に、前記ボンネット内部の前部側に位置する前部吸気口が備えられている請求項1〜4のいずれか一項記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、壁状の大きな吸気用のボックスを用い、その外気供給口が後方の運転部側へ向けられ、後方側から吸気して、ボンネットの前方側からエンジン冷却風を排出している。このように後方側から吸気することにより、例えば、ボンネットの前方側からエアクリーナへの吸気を吸い込んで後方側へ排出する構造のものに比べて、刈草や塵埃がボンネットの前面に張り付いて吸気し難くなるような事態を避けやすい点で有用である。また、エンジンの後方側に壁状の吸気用のボックスを設けていることで、運転部側へのエンジンの騒音がある程度抑えられる点で有用ではあるが、吸気用のボックスの外気供給口が後方の運転部側へ向けられているので、その外気供給口を通して、比較的大きな吸気音が後方の運転部側へ伝播する可能性がある点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、エアクリーナへの吸気を後方側から行って、ボンネット前側の防塵網の目詰まりによる影響を回避し易くしながら、後方の運転部側へのエンジン騒音や吸気音の伝播を抑制しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明に係る作業車は、機体前部に原動部が備えられ、その原動部の後方側に運転部が備えられ、前記原動部に備えたボンネットの内部にエンジンが配置され、前記運転部には、前記ボンネットの後方側に位置するダッシュボード、及びそのダッシュボードから後方側に離れて位置する運転座席が備えられ、前記ダッシュボードの下方で、前記ボンネットの内部空間と前記運転部との境界部位に、前記運転部側から前記ボンネットの内部空間側への通気が可能であるように通気孔を備えた隔壁部が設けられ、前記ボンネットの内部では、機体前方側寄り箇所にエンジンが配置され、前記エンジンよりも機体後方側寄りのボンネット内部にエアクリーナの吸気口が後方側へ向けて設けられ、前記隔壁部には、前記ボンネットの内部空間に面する箇所に吸音材を取り付けた防音壁板が設けられている。
【0007】
この手段によると、ボンネットの内部空間と運転部との境界部位に、運転部側からボンネットの内部空間側への通気が可能な隔壁部が設けられ、エアクリーナの吸気口は、エンジンよりも機体後方側寄りのボンネット内部で後方側へ向けて設けられている。そのため、ボンネット前部の防塵網の目詰まり状況による影響の少ない状態で確実に吸気し易い。
そして、エアクリーナの吸気口が後方側へ向けて設けられていても、その後方側の隔壁部には、ボンネットの内部空間に面する箇所に吸音材を取り付けた防音壁板が設けられているので、エアクリーナの吸気音は減衰され、隔壁部を越えて運転部側へ大きな騒音として伝播する虞は少なくて済む。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ボンネット内で前記エンジンよりも後方側箇所にラジエータ及び冷却ファンが備えられ、前記エアクリーナの吸気口が前記ラジエータよりも前方側に位置し、前記防音壁板が前記ラジエータよりも後方側に設けられている。
【0009】
この手段によると、ボンネット内でエンジンよりも後方側箇所にラジエータ及び冷却ファンが位置することで、相対的にエンジンをできるだけ運転座席から遠ざけて配置した状態となり、運転座席位置でのエンジン騒音による影響を低減することができる。そして、エアクリーナの吸気口をラジエータよりも前方側に位置させることにより、ラジエータも遮音用部材に利用して、エアクリーナの吸気音をより一層低減することができる。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記隔壁部において、前記ダッシュボードの下方側箇所にバッテリーの収容空間が設けられ、前記防音壁板は、上下方向で前記ダッシュボードと前記バッテリーとの間に対応する位置に設けられている。
【0011】
この手段によると、ダッシュボードの下方側箇所がバッテリーの収容空間として有効利用され、かつ、そのバッテリーを防音用部材としても利用することができる。つまり、ダッシュボードもバッテリーも存在していない範囲に対してのみ防音壁板を設けることで、運転部側への騒音抑制が可能な隔壁部を構成することができる。
その結果、防音壁板による防音面積の必要範囲を節減して、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記隔壁部は、格子状に形成された主枠部と、多数の通気孔を備えて前記主枠部の後面側に設けられた外壁板と、前記主枠部の前面側に設けられた前記防音壁板とが組み合わされたものであり、前記防音壁板は、前記主枠部の前面側に対向する板金製の遮音板部と、前記ボンネットの内部空間に面する軟質樹脂製の前記吸音材とを備え、前記遮音板部が前記主枠部の前面側との間に通気用の間隔を隔てて配設されている。
【0013】
この手段によると、隔壁部としての所要の強度が、格子状に形成された主枠部と多数の通気孔を備えた外壁板とで確保される。
そして、格子状の主枠部と通気孔を備えた外壁板とを採用して、運転部側からボンネットの内部空間側への通気を可能にしながら、防音壁板を用いてボンネットの内部空間側から運転部側への音の伝播を抑制している。
つまり、板金製の遮音板部と軟質樹脂製の吸音材とを用いて構成される防音壁板を、遮音板部が主枠部の前面側との間に通気用の間隔を隔てた状態に配設して、ボンネットの内部空間側から運転部側への音の伝播を抑制しながら、運転部側からボンネットの内部空間側への通気は、防音壁板を迂回させて支障なく取り込むことができる。したがって、運転部側からの外気導入に際して、防音壁板を構成する遮音板部や吸音材を通過させる必要がなく、導入外気への通気抵抗が大きくなることを避けられるようにしてある。
【0014】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記エアクリーナの吸気管には、後方側へ向けて設けられた前記吸気口とは別に、前記ボンネット内部の前部側に位置する前部吸気口が備えられている。
【0015】
この手段によると、後方側へ向けて設けられた吸気口とは別に、ボンネット内部の前部側に前部吸気口が備えられるので、運転部に対する騒音レベルをあまり増大させることなく、エアクリーナに対する吸気条件を向上させられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用したトラクタ(作業車の一例)の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0018】
〔全体構成〕
本実施形態で示す作業車の一例であるトラクタは、次のように構成されている。
図1及び
図2に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体の骨組みを形成する車体フレーム1、車体フレーム1の前部側に支持される原動部2、車体フレーム1の後部側に位置する搭乗式の運転部4、左右の走行装置5、及び、車体フレーム1の後端部に連結される保護フレーム6、などを備えている。
左右の走行装置5は、操舵可能で原動部2からの動力で駆動される左右の前輪5A、及び、原動部2からの動力で駆動される左右の後輪5B、を備える四輪駆動型に構成されている。
【0019】
図1乃至
図4に示すように、車体フレーム1は、前後方向に沿う左右一対の鋼板製のサイドメンバー10、及び左右のサイドメンバー10の前端にわたる鋼板製のフロントメンバー11を備えている。
そして、左右のサイドメンバー10の前後方向におけるほぼ中央位置には、左右のサイドメンバー10にわたってセンタピラー12が備えられている。また、左右のサイドメンバー10の後端部近く位置には、原動部2に備えられているエンジン21の動力を変速して、左右の走行装置5等へ伝達するトランスミッション13が取り付けられている。
【0020】
原動部2の後方側に設けられる運転部4では、トランスミッション13の上方に運転座席42が配置され、運転座席42と原動部2との前後方向間隔幅内に、運転者が搭乗可能な運転部ステップ15が設けられ、運転座席42の左右両側に後輪フェンダ16が設けられている。
原動部2のボンネット20よりも後方側の部位にダッシュボード40が設けられている。このダッシュボード40は、前輪操舵用のステアリングホイール41、及びエンジン回転数などを表示する計器類が設けられていて、運転部4の一部を構成する部材として機能するものである。
【0021】
上記のダッシュボード40の下部と運転部ステップ15との間には、後述する隔壁部3が設けられている。
したがって、ダッシュボード40は、計器類などを装備する運転部4の構成要素として用いられているものであるが、同時に、隔壁部3の上側を蓋して、隔壁部3とともに原動部2におけるエンジンルーム2Aの一部を構成する原動部2側の部材としても機能している。
【0022】
〔原動部〕
原動部2は次のように構成されている。
図1乃至
図4に示されるように、原動部2では、左右のサイドメンバー10にわたって固定されたセンタピラー12よりも前方側が、ボンネット20によって覆われたエンジンルーム2Aとなっている。センタピラー12よりも後方側では、隔壁部3の上部に運転部4の一部分を構成するダッシュボード40が設けられている。これによって、ボンネット20で覆われた空間と、隔壁部3の内部空間とが、原動部2の内部空間であるエンジンルーム2Aに相当する。
【0023】
エンジンルーム2A内には、車体フレーム1の前部に防振支持される水冷式のガソリンエンジンで構成されたエンジン21が設けられている。さらにエンジンルーム2A内には、エンジン21の後方に配置される冷却ファン22、冷却ファン22の後方に配置されるラジエータ23、エンジン21の上方に配置されるエアクリーナ24、及び、エンジン21よりも前方側に位置させたマフラー25などが配置されている。
【0024】
ボンネット20は、原動部2の前端部を覆う通気可能なフロントカバー20a、原動部2の横側部を覆う左右のサイドカバー20b、原動部2の上部を覆うアッパカバー20c、及び、ヘッドライトユニット20d、などが一体的に連結される一体型のものである。このボンネット20が、車体フレーム1の前端部に位置する左右向きの支軸x1を支点にして上下方向に開閉揺動可能に構成されている。
これにより、ボンネット20は、原動部2を覆う閉じ位置と原動部2を開放する開き位置とにわたって上下揺動可能で、その開き位置ではボンネット20内の後部側を大きく解放する後開き式に構成されている。その結果、原動部2の後部側に配備されるラジエータ23及びエアクリーナ24などに対するメンテナンスが行い易くなっている。
【0025】
エンジンルーム2A内の後端部にラジエータ23が設けられていて、そのラジエータ23に対して外気を接触させるための外気導入用の冷却ファン22が、ラジエータ23よりも前方のエンジンルーム2Aに設けられている。このラジエータ23に供給される外気は、後方側の隔壁部3を通過して吸引導入され、ラジエータ23、エンジン21,及びマフラー25を冷却したのち、前部のフロントカバー20a部分から排出される。
【0026】
前記ボンネット20の内部では、エンジン21よりも機体後方側寄りで、ラジエータ23よりも前方側の位置に、エアクリーナ24の吸気口24aが後方側へ向けて設けられている。この吸気口24aは、
図4に示すように、斜め後方下向きに開口しており、隔壁部3及びラジエータ23を通過した外気が吸気口24aからエアクリーナ24内に吸気される。
【0027】
〔隔壁部〕
隔壁部3は次のように構成されている。
図4乃至
図7に示すように、隔壁部3は、格子状に形成された主枠部30と、多数の通気孔を備えて主枠部30の後面側に設けられた外壁板31と、主枠部30の前面側に設けられた防音壁板32とが組み合わされたものである。
この隔壁部3は、ダッシュボード40の下方側箇所で、運転部ステップ15上に設けられている。左右方向で隔壁部3の中間部に相当する箇所が後方向きに膨出し、平面視ではほぼ門形に形成されている。この平面視形状で門形となる隔壁部3の内周側の空間s1は、バッテリー26の収容空間として用いられている。
【0028】
主枠部30と外壁板31とは、上下方向ではダッシュボード40の下部と運転部ステップ15との間にわたって設けられ、ダッシュボード40及び運転部ステップ15に対して脱着可能に構成されている。
主枠部30は、左右方向の両端部から、左右方向で斜め後方の中央側へ向かう側面部分30bと、その側面部分30bの後端部に連結される後端面部分30aとを備えて、前述した平面視での門形形状に形成されている。外壁板31は、主枠部30の後面側に対向して、主枠部30の後面と同形状で平面視門形に形成されている。
防音壁板32は、ダッシュボード40の下部と、バッテリー26の上部近くとにわたる範囲に設けてある。この防音壁板32は、主枠部30の後端面部分30aの前面側に対向する板金製の遮音板部33と、ボンネット20の内部空間に面する軟質樹脂製の吸音材34とを備えている。吸音材34は多孔質のスポンジ材などで構成され、遮音板部33に貼着されている。
遮音板部33は、センタピラー12よりも後方側で車体フレーム1上に立設されたダッシュボード支持枠17に対して、取付ステー17aを介して脱着可能に取り付けられている。
【0029】
図4及び
図8に示されるように、遮音板部33は、平面視で左右方向の中間部に位置する平板状の中間板部分33aと、その中間板部分33aから斜め前方横側方へ向けて延出された平板状の左右平板部分33b,33bとを備えており、平面視で前方側が幅広となる状態で開放された台形状に形成されている。
そして、この遮音板部33は、後方側に相対向する主枠部30との間に、吸気通路R1,R2が形成されるように、主枠部30とは異なる平面形状に形成されている。
つまり、
図5乃至
図8に示すように、遮音板部33は、平面視で後方向きに膨出して内周側が凹入湾曲した主枠部30の前面側、つまり内周面側に対向する状態で設置される。このとき、主枠部30の後端面部分30aと側面部分30bとの交差箇所に形成される角部30cを跨ぐように、遮音板部33の左右平板部分33b,33bが位置するので、この左右平板部分33b,33bと前記角部30cとで囲まれた箇所に、平面視三角形状の角部吸気通路R1が形成される。
【0030】
また、主枠部30の後端面部分30aがある程度の曲率を有した湾曲形状に形成されているのに対して、後端面部分30aに対向する遮音板部33の中間板部分33aはほとんど平坦な面を有したものであるため、その中間板部分33aと後端面部分30aとの間にも隙間が生じ、この隙間によって後部吸気通路R2が形成される。
このように、遮音板部33が対向する主枠部30や外壁板31との間に間隔を隔てて、間に吸気通路R1,R2が形成されることにより、冷却ファン22による吸引作用で外壁板31の通気孔を経て吸い込まれた外気は、吸気通路R1,R2を経てエンジンルーム2A内に吸い込まれる。
【0031】
上記の板金製の遮音板部33と軟質樹脂製の前記吸音材34とが、ダッシュボード40の下部と、バッテリー26の上部近くとにわたる範囲に設けてある。つまり、ダッシュボード40やバッテリー26が存在していれば、そのダッシュボード40やバッテリー26が遮音材として機能し、エンジンルーム内の騒音が運転部4側へ漏れ出すことを抑制できるものであるが、このようなダッシュボード40やバッテリー26が存在していない箇所の隔壁部3で、防音壁板32により吸音又は反射して、エンジンルーム2A内の騒音が運転部4側へ拡散することを効果的に抑制することができる。
【0032】
〔エンジン回転制限装置〕
図4及び
図10に示すように、エンジン21におけるエンジン本体の横側部位置に、エンジン21のスロットルを操作するスロットルレバー27が設けられている。このスロットルレバー27は、
図4及び
図10に示す上下方向軸心y1の周りで水平方向に回動可能に支持され、その先端側にアクセルワイヤ28が連結されている。
したがって、運転部4に備えたアクセル操作具29の操作に基づいて、前記アクセルワイヤ28が押し引き操作されることにより、スロットルレバー27の回転角が変更され、エンジン21の回転数が調節される。
【0033】
スロットルレバー27による高速操作側への最大操作範囲を調節する最高速制限機構7(エンジン回転制限装置に相当する)が、前記スロットルレバー27の操作領域に望む状態で設けられている。最高速制限機構7は、エンジン本体の横側部位置に備えた前記アクセルワイヤ28を支持するブラケット部分70と、そのブラケット部分70に装着された速度調節ボルト71とを備えている。
この最高速制限機構7では、ブラケット部分70に対する速度調節ボルト71の取付状態を変更することで、速度調節ボルト71の一部がスロットルレバー27の回転角の調節代を制限して、エンジン回転数が所定範囲に制限された状態と、その制限を解除する状態とに、切り換え操作可能に構成されている。
つまり、速度調節ボルト71をブラケット部分70に対して出退操作して、速度調節ボルト71の突出端部がスロットルレバー27の高速側への操作域で、スロットルレバー27の高速側への端縁と相対向して当接するように、位置調節することにより、スロットルレバー27によって操作可能な最高速位置を設定することができる。
【0034】
〔ボンネットロック解除部〕
図5、
図6及び
図9に示すように、ダッシュボード40の左側の内部には、ボンネット20の開放作動を規制するロック機構8が設けられている。このロック機構8は、ダッシュボード40の左側上面に形成された開口43から、何らかの工具、あるいは工具の代用となる、例えばエンジンキーなどの何らかの操作具を挿入して回動操作することにより、ロック解除可能に構成されている。
そして開口43は、常時開放状態では、雨水や塵埃の入り込みがあるので通常は軟質樹脂製などの栓部材44を用いて閉塞されている。しかしながら、栓部材44を単独で用いていると、紛失しがちであるため、本発明では次のようにしてある。
【0035】
図6及び
図9に示すように、栓部材44から弾性変形可能な軟質の紐部分44aを延出し、ダッシュボード40の開口43の周辺には、その紐部分44aを巻き付け可能な複数本の突起部45が設けられている。
したがって、開口43から紐部分44aを通して、ダッシュボード40の裏面側に突出している複数本の突起部45に巻き付けることにより、栓部材44を、ダッシュボード40の開口43に挿入した閉塞状態と、栓部材44を開口43から抜き出してダッシュボード40の上面側に位置させた開放状態とに切り換えて用いることができる。いずれの場合にも、栓部材44の紐部分44aは突起部45に巻き付けられた状態で用いることができる。
【0036】
〔運転部下方の防音〕
図11に示すように、運転座席42はトランスミッション13の上側に座席支持装置(図示ぜず)を介して設置されている。
トランスミッション13の上側には、防音対策として、ゴム製のシート(図示せず)を敷設するなどしているが、運転座席42の横側部で、トランスミッション13の上側には、ハンドブレーキ46等の操作部材が設けられている。このため、それらの操作部材が通過するための穴や切り欠きをシートに形成する必要があり、十分な防音効果を得難いものであった。
【0037】
この発明のものでは、トランスミッション13の上側で運転座席42と左右の後輪フェンダ16との間に、防音カバー50を設けている。この防音カバー50は、板金製の上部カバーの下面側に吸音材を貼り付けたものである。また、この防音カバー50は、運転座席42の前後方向の中間部あたりで前後に二分された部材で構成されている。したがって、防音カバー50は、前方側と後方側との両側から挟み込むようにして、運転座席42の周辺部に設けやすく構成されている。
このように、トランスミッション13の上側に敷設されたゴム製のシートとは別に、上記の防音カバー50を設けたことで、操作部材が通過するための穴や切り欠きをシートに形成していても、防音カバー50に形成される穴や切り欠きは多少位置ずれし、穴や切り欠きを通しての音漏れを低減し易い。
【0038】
〔運転部後方の防音〕
図1及び
図3に示すように、運転座席42の後方側には、車体フレーム1の後端部に連結された門形の保護フレーム6が備えられている。
この門形の保護フレーム6は、運転座席42の後方側の左右両側に左右の支柱部6a,6aが位置し、その左右の支柱部6a,6aの上端側は一体に連続するように屈曲されて、前後方向視で門形に形成されている。
運転座席42の後方側においては、左右の支柱部6a,6aにわたって、背部カバー部材60が取り付けられている。この背部カバー部材60は、上部に位置する樹脂網61と、下部に位置する板金製プレート62とを備えたものである。
【0039】
下部側の板金製プレート62は、下端が左右の支柱部6a,6aの下端部近くに位置している。そして、上端が、運転座席42の背もたれ部42aにおける上下方向での中間位置ぐらいの高さである。そして、板金製プレート62よりも高い位置に取り付けられる上側の樹脂網61は、その上端が運転座席42の背もたれ部42aの上端部と同程度の高さ位置にあるように取り付けられている。
つまり、板金製プレート62と樹脂網61とで構成される背部カバー部材60が、保護フレーム6の下端部近くから運転座席42の背もたれ部42aの上端部と同程度の高さ位置に達するように、起立姿勢で取り付けられている。
【0040】
このように背部カバー部材60を採用したことで、騒音発生源の一つとなるトランスミッション13に近い下部側では、背部カバー部材60の板金製プレート62を、保護フレーム6の下端部側に寄せて配設して、下方のトランスミッション13側からの音の回り込みを効果的に抑制している。
そして、運転者が搭乗する運転座席42に近い上部側では、後方側を見通し可能な樹脂網61を取り付けているので、後方視界が遮られることを避けながら、運転座席42に搭座する運転者の耳元への騒音の伝播をある程度抑制し得る点でも有利である。
【0041】
〔別実施形態の1〕
上記実施形態では、ボンネット20内に設けられるエアクリーナ24の吸気口24aの位置を、エンジン21よりも機体後方側寄りで、ラジエータ23よりも前方側の位置に、エアクリーナ24の吸気口24aが後方側へ向けて設けられた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば
図12に示すように、前記吸気口24aがエンジン21よりも機体後方側寄りで後方側へ向けて設けられた構造のものに加えて、エアクリーナ24から前方へ導出した吸気管24bをエンジン21よりも機体前方側寄りのフロントグリルの近くに設けて、吸気管24bの前端部に備えた前部吸気口24cを介して機体前方側から外気を導入するようにしてもよい。
このように、エンジン21よりも機体後方側寄りで、エアクリーナ24の吸気口24aが後方側へ向けて設けられた構造のものと、エンジン21よりも前方のフロントグリル2Bの近くの前部吸気口24cとの両方に吸気構造を備えることにより、エアクリーナ24への吸気量を十分に確保し易い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0042】
〔別実施の形態の2〕
上記実施形態では、隔壁部3として、格子状に形成された主枠部30と、多数の通気孔を備えて主枠部30の後面側に設けられた外壁板31と、主枠部30の前面側に設けられた防音壁板32とが組み合わされた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、主枠部30と外壁板31とを一体に構成したもの、又は主枠部30とその前面側に設けられた防音壁板32とを一体に構成したもの、あるいは主枠部30と外壁板31と防音壁板32との三者を一体に構成したものであってもよい。ただし、外壁板31の通気孔や、主枠部30と防音壁板32との間の吸気通路R1,R2は確保された状態で設けられる必要がある。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0043】
〔別実施の形態の3〕
上記実施形態では、隔壁部3で後方側を囲まれる空間の内部に、バッテリー26を備えて、そのバッテリー26の上部とダッシュボード40の下部との間に防音壁板32を設けた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、バッテリー26を設けずに、同程度の大きさの工具箱を設ける、あるいは、バッテリー26や工具箱などの他装置を設けていない構造のものであってもよい。この場合には、防音壁板32をダッシュボード40の下部と運転部ステップ15との間の全域にわたって設けるとよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0044】
〔別実施の形態の4〕
上記実施形態では、運転座席42の後方側に設けられる門形の保護フレーム6に対して、左右両側の支柱部6a,6aにわたる背部カバー部材60が取り付けられている。そして、この背部カバー部材60が上部に位置する樹脂網61と、下部に位置する板金製プレート62との組み合わせで構成された構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、背部カバー部材60としては、全体が板金製プレート62で構成されたもの、あるいは全体が樹脂板等のある程度の防音効果を有した適宜材料で構成されたものであっても良い。また、背部カバー部材60の配設高さ位置も、保護フレーム6の下端部近くから運転座席42の背もたれ部42aの上端部と同程度の高さ位置であるものに限らず、例えば、保護フレーム6の下端部よりも高い位置に下端部の高さが設定されたり、背もたれ部42aの上端部よりも高い位置に上端部の高さが設定されていてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0045】
〔別実施の形態の5〕
上記実施形態では、原動部2内に配設されるエンジン21として、水冷式のガソリンエンジンを採用した構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。例えば、エンジン21として空冷式のガソリンエンジンを採用しても良い。また、ガソリンエンジンではなくディーゼルエンジンを採用した構造のもの、及びDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)を有する排気処理装置を備える構造のものを採用してもよい。
さらには、原動部2が、エンジン21と電動モータとを備えて、ハイブリッド仕様に構成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。