【解決手段】天面部とスカート部とを備えるキャップ本体のスカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビード及び下ビードと、上ビードと下ビードとの間でスカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップの製造方法であって、天面部及びスカート部となる円筒部を備えるキャップ材を形成するキャップ材成形工程と、キャップ材の円筒部に上ビードと、下ビードと、上ビードと下ビードとの間で円筒部の半径方向内方に屈曲する屈曲部と、を円筒部の周方向に沿って形成するビード成形工程と、ビード成形工程の後に、屈曲部に複数のスリット及び複数のブリッジを形成するスリット成形工程と、を備える。
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップの製造方法であって、
前記天面部及び前記スカート部となる円筒部を備えるキャップ材を形成するキャップ材成形工程と、
前記キャップ材の前記円筒部に前記上ビードと、前記下ビードと、該上ビードと該下ビードとの間で前記円筒部の半径方向内方に屈曲する屈曲部と、を前記円筒部の周方向に沿って形成するビード成形工程と、
前記ビード成形工程の後に、前記屈曲部に前記複数のスリット及び前記複数のブリッジを形成するスリット成形工程と、を備えることを特徴とするピルファープルーフキャップの製造方法。
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップの製造装置であって、
前記天面部及び前記スカート部となる円筒部を備えるキャップ材に嵌合するインナーツールと、前記インナーツールにより押し付けられた前記キャップ材が前記インナーツールとともに転動させられることにより、前記インナーツールとの間で前記キャップ材を挟持して成形するアウターツールと、を備え、
前記インナーツールは、前記下ビードの内面を成形するための下ビード成形凸部と、前記上ビードの内面を成形するための上ビード成形凸部と、前記上ビード成形凸部と前記下ビード成形凸部との間を凹状に形成した逃げ溝部と、前記逃げ溝部内で、該上ビード成形凸部及び前記下ビード成形凸部より半径方向内方に配置され、前記複数のスリットを形成するための第1切刃部と、を有し、
前記アウターツールは、前記インナーツールとともに前記キャップ材を転動させる第1領域と、前記第1領域を転動した前記キャップ材をさらに転動させる第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記上ビード成形凸部との間で前記円筒部を変形させて前記上ビードの外面を成形する上ビード成形部と、前記下ビード成形凸部との間で前記円筒部を変形させて前記下ビードの外面を成形する下ビード成形部と、前記下ビードと前記上ビードとの間に位置し、半径方向内方に屈曲する屈曲部の外面を成形する屈曲部成形凸部と、を有し、
前記第2領域は、前記第1領域で成形された前記屈曲部を前記第1切刃部との間で切断して前記スリットを形成する複数の第2切刃部を有することを特徴とするピルファープルーフキャップの製造装置。
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップであって、
前記複数のブリッジは、前記スカート部の縦断面視において、前記上ビード及び前記下ビードよりも前記スカート部の半径方向内方に屈曲していることを特徴とするピルファープルーフキャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の構成では、インナーツールは、上ビード成形凸部及び下ビード成形凸部を備えている。また、アウターツールは、周方向に間隔を置いて形成された複数の切刃部と、該切刃部の間に配置され成形時にブリッジを収容するための複数のブリッジ収容部と、切刃部の上方に形成される上ビードを収容する上ビード収容部と、切刃部の下方の下ビードを収容する下ビード収容部と、を備えている。このため、特許文献1の構成では、キャップ材をインナーツールとともにアウターツールに沿って転動させることにより、上ビード及び下ビードが形成されるとともに、これらビードの間にスリット及びブリッジが形成される。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、上ビードと下ビードとを形成しながらその間にスリットを形成するので、スリットが形成される位置近傍のキャップ材に引張り力が作用し、キャップ材の成形時に、ブリッジが切れるおそれがある。また、成形時にはブリッジ切れとならない場合にも、容器への装着時等にブリッジが切れるおそれもある。
このため、ブリッジ切れの発生を抑制できるピルファープルーフキャップが望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ブリッジ切れの発生を抑制できるピルファープルーフキャップの製造方法、製造装置及びピルファープルーフキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のピルファープルーフキャップの製造方法は、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップの製造方法であって、前記天面部及び前記スカート部となる円筒部を備えるキャップ材を形成するキャップ材成形工程と、前記キャップ材の前記円筒部に前記上ビードと、前記下ビードと、該上ビードと該下ビードとの間で前記円筒部の半径方向内方に屈曲する屈曲部と、を前記円筒部の周方向に沿って形成するビード成形工程と、前記ビード成形工程の後に、前記屈曲部に前記複数のスリット及び前記複数のブリッジを形成するスリット成形工程と、を備える。
【0009】
このように、キャップ材の円筒部に上ビード、下ビード、及び各ビード間に形成される屈曲部を形成した後、その屈曲部に複数のスリットを形成するので、そのスリット成形工程においては、スリットが形成される位置近傍に作用する引張り力を低減することができる。したがって、ピルファープルーフキャップの製造時におけるブリッジ切れを抑制できる。
【0010】
本発明のピルファープルーフキャップの製造装置は、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップの製造装置であって、前記天面部及び前記スカート部となる円筒部を備えるキャップ材に嵌合するインナーツールと、前記インナーツールにより押し付けられた前記キャップ材が前記インナーツールとともに転動させられることにより、前記インナーツールとの間で前記キャップ材を挟持して成形するアウターツールと、を備え、前記インナーツールは、前記下ビードの内面を成形するための下ビード成形凸部と、前記上ビードの内面を成形するための上ビード成形凸部と、前記上ビード成形凸部と前記下ビード成形凸部との間を凹状に形成した逃げ溝部と、前記逃げ溝部内で、該上ビード成形凸部及び前記下ビード成形凸部より半径方向内方に配置され、前記複数のスリットを形成するための第1切刃部と、を有し、前記アウターツールは、前記インナーツールとともに前記キャップ材を転動させる第1領域と、前記第1領域を転動した前記キャップ材をさらに転動させる第2領域と、を有し、前記第1領域は、前記上ビード成形凸部との間で前記円筒部を変形させて前記上ビードの外面を成形する上ビード成形部と、前記下ビード成形凸部との間で前記円筒部を変形させて前記下ビードの外面を成形する下ビード成形部と、前記下ビードと前記上ビードとの間に位置し、半径方向内方に屈曲する屈曲部の外面を成形する屈曲部成形凸部と、を有し、前記第2領域は、前記第1領域で成形された前記屈曲部を前記第1切刃部との間で切断して前記スリットを形成する複数の第2切刃部を有する。
【0011】
このような構成によれば、インナーツールが嵌合されたキャップ材を、アウターツールの第1領域に押し付けつつ転動させると、キャップ材の円筒部には、上ビード及び下ビードが形成される。この際、上ビード成形凸部により押圧された部位と下ビード成形凸部により押圧された部位との間に位置する部位(上ビードと下ビードとの間の部位)は、屈曲部成形凸部により押圧され、各ビード成形凸部により押圧された方向とは反対方向に凹んだ状態にて、インナーツールの逃げ溝部に収容される。このため、上ビードと下ビードとの間に半径方向内方に屈曲する屈曲部が形成される。
そして、アウターツールの第1領域を転動したキャップ材をアウターツールの第2領域に押し付けつつ転動させると、第1切刃部に第2切刃部が近接して、第1切刃部及び第2切刃部のそれぞれにより屈曲部の一部が切り裂かれて、スリットが形成される。また、隣り合うスリット間に残されるブリッジは、屈曲部により形成されるため、半径方向内方に屈曲した状態となる。
【0012】
本発明の製造装置では、インナーツールを嵌合したキャップ材をアウターツールの第1領域から第2領域に順次転動することにより、ビード成形とスリット成形とを分けて行うことができ、ブリッジ切れの生じにくいピルファープルーフキャップを効率よく製造することができる。
【0013】
本発明のピルファープルーフキャップは、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなるスカート部とを備えるキャップ本体の前記スカート部に、該スカート部の半径方向外方に突出する上ビードと、該上ビードの下側で、前記スカート部の半径方向外方に突出する下ビードと、前記上ビードと前記下ビードとの間で前記スカート部の周方向に交互に配置される複数のスリット及び複数のブリッジと、が形成されたピルファープルーフキャップであって、前記複数のブリッジは、前記スカート部の縦断面視において、前記上ビード及び前記下ビードよりも前記スカート部の半径方向内方に屈曲している。
【0014】
このようなピルファープルーフキャップの複数のブリッジが、上ビード及び下ビードよりもスカート部の半径方向内方に屈曲しているので、該ピルファープルーフキャップが容器口部に装着される際等に、スカート部のブリッジ近傍の部位が引張られた場合であっても、該ブリッジの屈曲部位が伸びて、略直線状に変化することにより、引張り力を緩和することができる。また、その装着時にスカート部の下端部が絞られて縮径させられる(裾巻きされる)ことにより、圧縮応力も生じるが、ブリッジが屈曲していることにより、その圧縮応力も低減することができる。したがって、容器口部への装着時等の際のピルファープルーフキャップのブリッジ切れを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上ビード、下ビード及び屈曲部を形成するブリッジ成形工程の後、該屈曲部に複数のスリット及び隣り合うスリット間に位置するブリッジを形成するスリット成形工程を施すので、上ビード、下ビード、複数のスリット及びブリッジを一度に形成する場合に比べて、該スリットが形成される位置近傍に作用する引張り力を低減することができ、ブリッジ切れを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るピルファープルーフキャップの製造方法、製造装置及びピルファープルーフキャップの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のピルファープルーフキャップ3(PPキャップとも称す。)は、例えば38mm口径のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶(本発明でいう容器)の口部に装着されて密栓するものである。
【0018】
図1及び
図2は、ボトル缶に装着する前のピルファープルーフキャップ3を示しており、該ピルファープルーフキャップ3は、内外面が塗装されたアルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に成形してなるキャップ本体4と、そのキャップ本体4の内面に設けたライナ5とを有する。キャップ本体4は、天面部41と、その天面部41の周縁から略垂下されてなるスカート部42とを備えている。
【0019】
ライナ5は、上記ボトル缶のピルファープルーフキャップ3による閉止時に当該ボトル缶の口部(図示略)に当接し、ボトル缶の内部を密封し得るように形成されている。そして、ライナ5は、キャップ本体4の天面部41の内面側に配置され、その天面部41の内面と摺動する摺動層51と、摺動層51に直接又はバリア層等の中間層を介して積層され、摺動層51よりも柔軟で外径の小さい密封層52とから構成される多層構造とされる。また、密封層52は、ボトル缶の口部に密着する環状で厚肉のシール部54と、該シール部54の内側に形成され、シール部54よりも薄肉の薄肉部55とにより構成されている。
【0020】
スカート部42の下部には、該スカート部42の半径方向外方に突出する上ビード45と、上ビード45の下側で、スカート部42の半径方向外方に突出する下ビード46と、が形成されており、これら上ビード45及び下ビード46は、スカート部42の周方向に沿って形成されている。また、これら上ビード45と下ビード46との間には、スカート部42の半径方向内方に屈曲する屈曲部47が形成されている。この屈曲部47には、周方向に断続的に形成された複数のスリット48と、隣り合うスリット48間に位置するブリッジ49とが形成されている。このため、ブリッジ49は、スカート部42の半径方向内方に屈曲している。
【0021】
このようなスカート部42は、上述した複数のスリット48によって上下に分割可能な筒上部43と筒下部44とを有し、隣接するスリット48間に形成される複数のブリッジ49によって筒上部43と筒下部44とを連結した形状とされている。
これらのうち筒下部44は、容器口部に設けられた膨出部(図示略)の下面に係止されて、キャップ本体4が容器口部に装着される。一方、筒状部43は、容器口部に設けられたねじに螺合されており、容器に装着されたキャップ本体4がスカート部42の周方向(ねじの螺合を開放する方向)に回動されると、ブリッジ49が破断されて、キャップ本体4の天面部41及び筒上部43が容器から取り外され、筒下部44が容器に残される。
【0022】
また、
図1及び
図2に示すように、キャップ本体4の上部には、周方向に沿って溝部14が形成され、その溝部14と天面部41との間には、周方向に複数並べられたナール凹部11と、開栓時に内圧を開放する開口部12を有する複数のフック部13とが形成されている。これらナール凹部11及びフック部13が間隔をあけて配置されることによりスカート部42の外周面に凹凸表面が形成され、開栓時にライナ付キャップ3を把持する指との間の摩擦抵抗を増大し、容易に開栓可能になっている。
【0023】
フック部13は、スカート部42の開口部12によって分断された上側の部分を半径方向内方に押し込むことにより形成された部位であり、天面部41に配置されたライナ5を係止する。このため天面部41からフック部13の半径方向内方の先端までの間隔は、摺動層51の厚さより大きい間隔に設定されている。そして、各フック部13により構成される内接円C(
図2参照)は、ライナ5の摺動層51の外径より小さく設定されており、この摺動層51がフック部13と天面部41の内面との間に配置されることにより、ライナ5がフック部13により支持され、キャップ本体4に取り付けられる。
【0024】
次に、本実施形態のピルファープルーフキャップ3の製造方法を、
図3〜
図9を参照して説明する。この製造方法では、キャップ材成形工程、ビード成形工程及びスリット成形工程を備えており、上ビード45、下ビード46、屈曲部47、複数のスリット48及び複数のブリッジ49を有しないキャップ材4Aをまず成形し(キャップ材成形工程)、そのキャップ材4Aに上ビード45、下ビード46及び屈曲部47を成形し(ビード成形工程)、上ビード45、下ビード46及び屈曲部47が形成されたキャップ材4Bに複数のスリット48及び複数のブリッジ49を成形する(スリット成形工程)。
なお、以下の説明では、キャップ本体4について、ビード成形工程前の状態、つまり、上ビード45、下ビード46、屈曲部47、スリット48及びブリッジ49が形成される前の状態をキャップ材4Aとし、そのキャップ材4Aにおいてスカート部42となる部分を円筒部42Aという。また、スリット成形工程前の状態をキャップ材4Bとし、そのキャップ材4Bにおいてスカート部42となる部分を円筒部42Bという。以下、工程順に説明する。
【0025】
[キャップ材成形工程]
まず、アルミニウム合金等の板材(図示略)の内外面を塗装する。この塗装した板材の表面に潤滑剤を塗布してプレスでカップ状に打ち抜くことにより、
図3に示すように、天面部41及び該天面部41の端部からストレートに垂下する円筒状の円筒部42Aを有するキャップ材4Aを形成する。
【0026】
[ビード成形工程]
ビード成形工程及びスリット成形工程は、
図5に示すように、装置本体に固定状態の凸状円弧面を有するアウターツール7と、キャップ材4A,4Bに嵌合し、アウターツール7の凸状円弧面に沿って転動可能なインナーツール6と、を備える製造装置8によって施される。この実施形態の場合、アウターツール7の凸状円弧面は、キャップ材4Aが一回転以上転動可能な円弧状の第1領域7Aと、第1領域7Aに連続して配置され、キャップ材4Bが一回転以上転動可能な円弧状の第2領域7Bとを備えている。そして、ビード成形工程は、インナーツール6とアウターツール7の第1領域7Aとにより施され、スリット成形工程は、インナーツール6とアウターツール7の第2領域7Bとにより施される。以下に詳しく説明する。
【0027】
(インナーツールの構成)
インナーツール6は、キャップ材4A,4Bの天面部41が下側に位置し、天面部41から円筒部42A,42Bが上方向に位置する状態で、該キャップ材4A,4Bに上方から嵌合される。このため、
図6〜
図9においては、図示を省略しているが天面部41が下側に位置し、円筒部42A,42Bの先端が上側に位置している。また、これらの
図6〜
図9は、円筒部42A,42Bの端部付近のみを示している。以下の説明では、これらの図において紙面に対する向きと同じ方向に上方向、下方向というものとする。
インナーツール6は、
図6〜
図9に示すように、複数枚の円板状のプレートを積層して構成され、円筒部42Aに各ビード45,46を形成する部分には、下ビード46の内面を成形する下ビードプレート61と、上ビード45の内面を成形する上ビードプレート62とを備えている。
【0028】
下ビードプレート61の外周面611には、半径方向外方に突出する下ビード成形凸部612が形成されている。この下ビード成形凸部612は、
図8に示すように、縦断面視で三角形状に形成され、外周面611から半径方向外方に向けて下り勾配に傾斜する第1傾斜面613と、第1傾斜面613の端部から下ビードプレート61の端面616に向けて傾斜する第2傾斜面614とを備えている。この第1傾斜面613と第2傾斜面614とにより形成される頂部は、円弧状面615により形成されている。
【0029】
上ビードプレート62において、下ビードプレート61の端面616に当接する端面621の外周端は、第2傾斜面614との間に隙間が設けられており、端面621とその外周端から垂下する外周面622との稜線は、第1切刃部623を構成する。
また、この第1切刃部623よりも下方位置には、第1切刃部623を形成している外周面622より半径方向外方に突出する上ビード成形凸部624が形成されている。この上ビード成形凸部624は、縦断面視で略半円の上部が切り欠かれた形状に形成され、外周面622から半径方向外方に向けて下り勾配に傾斜する第1傾斜面625と、第1傾斜面625の外周端から半径方向外側に突出する円弧状面626と、円弧状面626の端部から、上ビードプレート62の端面628に向けて傾斜する第2傾斜面627とを備えている。この上ビード成形凸部624において、最も外周端に位置する頂部は、縦断面視において円弧状に形成される円弧状面626により構成されている。
【0030】
なお、上ビード成形凸部624の頂部を構成する円弧状面626の曲率半径は、下ビード成形凸部612の頂部を構成する円弧状面615の曲率半径より大きく設定されており、かつ、上ビード成形凸部624は、下ビード成形凸部612よりも半径方向外方に位置している。このため、上ビード45の幅(縦方向の寸法)が下ビード46の幅(縦方向の寸法)よりも大きく、かつ、下ビード46よりもスカート部42の径方向外側に突出して形成される。
また、第1切刃部623は、上ビード成形凸部624の円弧状面626と下ビード成形凸部612の円弧状面615との接線より半径方向内方に位置している。このため、下ビードプレート61の第2傾斜面614と、上ビードプレート62の端面621、外周面622、及び第1傾斜面625とにより囲まれた領域は、逃げ溝部S1を形成している。
なお、符号63は、上ビードプレート62に当接した中間プレートを示しており、この中間プレート63に他の複数のプレート(図示略)が順次積層される。
【0031】
(アウターツールの第1領域の構成)
アウターツール7は、円筒部42Aに各ビード45,46を形成する部分である第1領域7Aには、
図6〜
図8に示すように、下ビード46の外面を成形する下ビード下縁プレート71と、上ビード45の外面を成形する上ビード上縁プレート73と、下ビード下縁プレート71と上ビード上縁プレート73との間に位置する屈曲部成形プレート72とを備えている。
下ビード下縁プレート71は、その外周面711と、屈曲部成形プレート72に当接する端面712とにより下ビード成形部713が形成されており、この下ビード成形部713は、縦断面視において円弧状に形成され、下ビード成形凸部612よりもわずかに上側に位置している。
【0032】
上ビード上縁プレート73は、インナーツール6の中間プレート63に対向して配置される。この上ビード上縁プレート73の外周面731と端面732とにより形成される上ビード成形部733は、縦断面視において円弧状に形成され、上ビード成形凸部624よりも下側に位置している。
屈曲部成形プレート72は、下ビードプレート61の下ビード成形凸部612と上ビードプレート62の上ビード成形凸部624とに対向して配置され、外周面721には、半径方向外方に突出する屈曲部成形凸部722が形成されている。この屈曲部成形凸部722は、
図6〜
図8に示すように、縦断面視で三角形状に形成され、頂部が円弧状面723により形成されている。また、屈曲部成形凸部722は、インナーツール6の下ビード成形凸部612より下方で、かつ上ビード成形凸部624よりも上方に形成されている。
【0033】
図5に示すように、インナーツール6をキャップ材4Aに嵌合させて、アウターツール7の第1領域7Aを転動させると、
図8に示すように、円筒部42Aの内面がインナーツール6の下ビード成形凸部612及び上ビード成形凸部624により押圧され、円筒部42Aの外面が下ビード成形部713、屈曲部成形凸部722及び上ビード成形凸部733により押圧される。また、上ビード成形凸部624により押圧された部位の下側の部位は、上ビード成形部733により押圧され、下ビード成形凸部612により押圧された部位の上側の部位は、下ビード成形部713により押圧される。これにより、円筒部42Aに上ビード45、下ビード46及び屈曲部47が形成される。
このようにして、円筒部42Aが上ビード45、下ビード46及び屈曲部47を有する円筒部42Bに成形され、キャップ材4Bが形成される。
【0034】
[スリット成形工程]
スリット成形工程は、インナーツール6及びアウターツール7の第2領域7Bにより施される。
(アウターツールの第2領域の構成)
アウターツール7の第2領域7Bは、
図9に示すように、下ビード下縁プレート71と上ビード上縁プレート73とを有する点は、
図6及び
図7に示す第1領域7Aと同じであるが、下ビード下縁プレート71と上ビード上縁プレート73との間に位置するプレートが、第1領域7Aの屈曲部成形プレート72に代えて、複数のスリット48を形成するためのスリットプレート74とされている点が相違する。
【0035】
スリットプレート74の外周面741には、
図9に示すように、半径方向外方に突出する突出片742が周方向に間隔をあけて形成されている。この突出片742は、スリットプレート74においてブリッジ49の幅に相当する間隔をあけて配置される。
突出片742は、縦断面視で薄肉の略三角形のくさび状に形成され、外周面741から半径方向外方に直線状に延びる第1面743と、第1面743の先端から上方向に直線状に延びる第2面744と、第2面744の端部からスリットプレート74の端面748に向けて半径方向内方に向けて上り勾配に傾斜する第1傾斜面746と、を備えている。これらのうち第1面743と第2面744との稜線は、第2切刃部745を構成する。また、第2面744と第1傾斜面746とにより形成される角部747は、縦断面視において円弧状に形成されている。
この第2切刃部745の第1面743は、インナーツール6における第1切刃部623の端面621との間にわずかなクリアランスをおいて配置され、また、インナーツール6をアウターツール7の第2領域7Bに当接させたときに、第2切刃部745は、第1切刃部623よりもインナーツール6の半径方向内方の逃げ溝部S1内に到達するまで食い込むようになっている。
【0036】
図5に示すように、インナーツール6をキャップ材4Bに嵌合させて、アウターツール7の第2領域7Bを転動させると、円筒部42Bの屈曲部47が突出片742の円弧状の角部747により押圧されて、第1切刃部623に押し付けられるとともに、第1切刃部623と突出片742の先端に位置する第2切刃部745とにより屈曲部47が破断され、屈曲部47にスリット48が形成される。
【0037】
なお、図示は省略したが、上述したインナーツール6を構成する複数枚の円板状のプレートには、天面部41付近の溝部14や、ナール凹部11、開口部12及びフック部13を成形するプレート(図示略)が含まれている。また、アウターツール7の第1領域7Aには、溝部14を成形するプレート(図示略)が含まれ、第2領域7Bには、円筒部42Bにナール凹部11、開口部12及びフック部13を成形するプレート(図示略)が含まれている。このため、詳しい説明は省略するが、ビード成形工程において円筒部42Aに溝部14が成形され、スリット成形工程において円筒部42Bにナール凹部11、開口部12及びフック部13が成形される。
そして、上記製造工程により製造されたピルファープルーフキャップ3は、ボトル缶の口部に被せた状態でキャッピング加工が施され、キャップ付ボトル缶(図示略)が形成される。
【0038】
本実施形態のピルファープルーフキャップ3の製造方法では、ビード成形工程の後、スリット形成工程を施すので、スリット48が形成される位置近傍に作用する引張り力を低減することができる。したがって、ピルファープルーフキャップ3の製造時におけるブリッジ切れを抑制できる。
また、ピルファープルーフキャップ3の複数のブリッジ49が、上ビード45及び下ビード46よりもスカート部42の半径方向内方に屈曲しているので、該ピルファープルーフキャップ3が容器口部に装着される際に屈曲部47が伸ばされ、その分、引っ張り応力及び圧縮応力の発生を低減して、ピルファープルーフキャップ3のブリッジ切れを抑制できる。
さらに、製造装置8では、インナーツール6を嵌合したキャップ材41Aをアウターツールの第1領域7Aから第2領域7Bに順次転動させながら、ビード成形とスリット成形とを分けて行うようにしており、ブリッジ切れの生じにくいピルファープルーフキャップ3を効率よく製造することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、キャップ付ボトル缶及びボトル缶に装着されるピルファープルーフキャップについて説明を行ったが、本発明でいうキャップ付容器の容器は、ボトル缶に限定されるものではなく、ボトル缶の他、ガラスビンやPETボトル等の容器も含まれる。
【実施例】
【0040】
ここで、本発明の効果を検証するために、外径が38mmのキャップ材4Aの円筒部42Aに上ビード45、下ビード46、複数のスリット48及び複数のブリッジ49を一度に成形する従来の成形工程(一括工程)と、キャップ材4Aの円筒部42Aに上ビード45、下ビード46及び屈曲部47をビード成形工程により成形した後、これらが形成されたキャップ材4Bの円筒部42Bに複数のスリット48及び複数のブリッジ49をスリット成形工程により成形する本発明の製造工程(本製造工程)と、を比較する以下のような実験を行った。
一括工程の場合及び本製造工程の場合のそれぞれにおいて、複数のスリット48を成形したサンプルを各20個作成し、(A)開栓トルク、(B)開栓角度、 (C)引張限界条件でのブリッジ切れ発生数、及び(D)圧縮限界条件でのブリッジ切れ発生数のそれぞれを評価した。
【0041】
上述した各評価項目の定義及び評価方法は、以下の通りである。
(A)開栓トルク: ボトル缶に被着されたピルファープルーフキャップ3を開栓したときに、複数のブリッジ49のうちの1つが、最初に破断するトルクの値を開栓トルクとする。この開栓トルクの値は、160[N/cm]以下であることが望ましい。
【0042】
(B)開栓角度: ボトル缶に被着されたピルファープルーフキャップ3を開栓したときに、複数のブリッジ49が全て破断されるまでのピルファープルーフキャップ3の回転角度を開栓角度とする。この開栓角度の値は、300度以下であることが望ましい。
【0043】
(C)引張限界条件でのブリッジ切れ発生数: キャッピング時にブリッジに強い引張応力が発生する条件に設定し、ブリッジが切れる本数をカウントする。このときの限界試験の条件設定は以下の通りである。
(1)キャッピング時に端縁部に絞り成形を行うときの軸方向の荷重:970[N] (2)筒下部44に裾巻き加工を行うときの裾巻きロールのトルク:3.8[Nm]
(3)裾巻きロールと端縁部に絞り成形を行う金型との距離:14.9[mm]
(4)内圧:2.2[kgf/cm
2]
【0044】
(D)圧縮限界条件でのブリッジ切れ発生数: キャッピング時にブリッジに強い圧縮応力が発生する条件に設定し、ブリッジが切れる本数をカウントする。このときの限界試験の条件設定は以下の通りである。
(1)キャッピング時に筒下部44に絞り成形を行うときの軸方向の荷重:1回目が950[N]、2回目が850[N]
(2)筒上部43の雌ねじ形成予定部に雌ねじ加工を行うときのねじロールのトルク:1回目が 3.8[Nm]、2回目が3.0[Nm]
(3)筒下部44に裾巻き加工を行うときの裾巻きロールのトルク:1回目と2回目共に3.8[Nm]
(4)ねじロールと端縁部に絞り成形を行う金型との距離:1回目と2回目共に2.6[mm]
(5)裾巻きロールと端縁部に絞り成形を行う金型との距離:1回目が15.9[mm]、2回目が15.6[mm]
【0045】
実験結果は、以下の表1に示すとおりである。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、(A)開栓トルクは、一括工程の場合が120[N/cm]、本製造工程の場合が115[N/cm]であり、いずれも160[N/cm]以下であった。
(B)開栓角度は、一括工程の場合が200°、本製造工程の場合が220°であり、いずれも300°以下であった。このように開栓角度が一括工程により製造されたピルファープルーフキャップよりも若干大きくなったのは、ブリッジ49がスカート部42の半径方向内方に屈曲していることから、開栓時にブリッジ49の屈曲部位が伸びて、略直線状に変化することが原因と考えられる。しかしながら、本製造工程により成形した場合であっても、開栓トルク及び開栓角度が所望の範囲内であるため、一括工程で製造されたピルファープルーフキャップと略同じように使用できることから、本製造工程により製造されたピルファープルーフキャップ3は、一括工程により製造されたピルファープルーフキャップと変わらないと認められる。
【0048】
また、(C)引張限界条件でのブリッジ切れ発生数においては、一括工程によりスリット48を形成した20個のピルファープルーフキャップのうち、2個のピルファープルーフキャップにおいてブリッジ切れが発生した。これに対し、本製造工程により製造した20個ピルファープルーフキャップ3では、全てにおいてブリッジ切れが発生しなかった。
さらに、(D)圧縮限界条件でのブリッジ切れ発生数においては、一括工程によりスリット48を形成した20個のピルファープルーフキャップのうち、3個のピルファープルーフキャップにおいてブリッジ切れが発生した。これに対し、本製造工程により製造した20個ピルファープルーフキャップ3では、全てにおいてブリッジ切れが発生しなかった。
したがって、本製造工程により製造したピルファープルーフキャップ3がブリッジ切れの発生を抑制できることが検証できた。