【課題】柔軟性、伸縮性とともに、ヒートシール部分が素早く安定化し、梱包直後の結束力に優れる宙づり梱包や保定梱包に好適に使用することができる張力梱包用フィルム及びそれを用いた梱包部材、梱包容器を提供することを目的とする。
前記エチレン系樹脂組成物(A)は、更に、前記エチレン/α−オレフィンブロック共重合体以外のエチレン系樹脂(a2)を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の張力梱包用フィルム。
少なくともα層とβ層とを有する張力梱包用フィルムであって、前記α層が請求項1乃至4のいずれか記載のエチレン系樹脂組成物(A)からなることを特徴とする張力梱包用フィルム。
シート材料と、前記シート材料の表面に非接着の状態で重ねられ、張力を利用して被梱包物を支持する弾性フィルムと、を備える梱包部材であって、前記弾性フィルムは請求項1乃至6のいずれか記載の張力梱包用フィルムであることを特徴とする梱包部材。
所定の厚さの枠体の一方の面に設けた窓の部分に弾性フィルムが張り渡されている支持体と、前記支持体の寸法に対応する内寸を持った外箱と、を備える梱包容器であり、前記弾性フィルムは請求項1乃至6のいずれか記載の張力梱包用フィルムであることを特徴とする梱包容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、保定梱包における梱包部材は、シート材料の外側に筒状の弾性フィルムを有するものがあるが、筒状の弾性フィルムにシート材料を挿入するのでは工程が煩雑となる為、シート材料へ弾性フィルムを帯掛け包装し、該シート材料の外側に筒状の弾性フィルムを形成することが提案されている。この場合、弾性フィルムにはヒートシール性が良好であることが求められる。また、シート材料に帯掛け包装を施す場合、シート材料の外周長よりも数%短い弾性フィルムを伸長させ、弾性フィルムに張力が掛かった状態でヒートシールさせる為、弾性フィルムのシール部分が素早く安定化(固化)することが必要となる。しかしながら、従来のポリエチレン系樹脂からなる弾性フィルムは、柔軟性や伸縮性には優れるものの、張力が掛かった状態でのヒートシール性は満足できるものではなかった。
【0008】
また、従来のポリエチレン系樹脂からなる弾性フィルムを用いた場合、被梱包物を固定してからある程度時間が経過した後においては結束力が安定するものの、梱包直後(弾性フィルムによって被梱包物をシート材料へ押し付けた直後)において、弾性フィルムの結束力が安定せず、被梱包物が載置された位置から動いてしまうことがある。この問題は、特に精密機器や割れ物等の被梱包物を輸送する際に大きな問題となる。なお、以下、上述した宙づり梱包や保定梱包等のように、フィルムの張力を利用して被梱包物を梱包容器内において位置決めし、支持・固定する梱包形態を張力梱包と称するものとする。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、柔軟性、伸縮性に優れるとともに、ヒートシール性、梱包直後の結束力に優れる宙づり梱包や保定梱包に好適に使用することができる張力梱包用フィルム及びそれを用いた梱包部材、梱包容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、一般的な直鎖状低密度ポリエチレンよりも密度が低く、融点が高いエチレン/α−オレフィンブロック共重合体に着目し、当該樹脂を用いることにより、梱包直後の結束力を落とすことなく、シール部分を素早く安定化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、
(1)エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系樹脂組成物(A)からなる層を備えることを特徴とする張力梱包用フィルムが提供され、
(2)前記エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)は、密度が900kg/m
3以下、融点が100℃以上であることを特徴とする(1)記載の張力梱包用フィルムが提供され、
(3)前記エチレン系樹脂組成物(A)は、更に、前記エチレン/α−オレフィンブロック共重合体以外のエチレン系樹脂(a2)を含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の張力梱包用フィルムが提供され、
(4)前記エチレン/α−オレフィンブロック共重合体以外のエチレン系樹脂(a2)は、密度が910kg/m
3以上の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする(3)記載の張力梱包用フィルムが提供され、
(5)少なくともα層とβ層とを有する張力梱包用フィルムであって、前記α層が(1)乃至(4)のいずれか記載のエチレン系樹脂組成物(A)からなることを特徴とする張力梱包用フィルムが提供され、
(6)前記β層が、密度が910kg/m
3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とすることを特徴とする(5)記載の張力梱包用フィルムが提供され、
(7)シート材料と、前記シート材料の表面に非接着の状態で重ねられ、張力を利用して被梱包物を支持する弾性フィルムと、を備える梱包部材であって、前記弾性フィルムは(1)乃至(6)のいずれか記載の張力梱包用フィルムであることを特徴とする梱包部材が提供され、
(8)(7)記載の梱包部材と、前記シート材料の寸法に対応する内寸を持った外箱と、を備えることを特徴とする梱包容器が提供され、
(9)所定の厚さの枠体の一方の面に設けた窓の部分に弾性フィルムが張り渡されている支持体と、前記支持体の寸法に対応する内寸を持った外箱と、を備える梱包容器であり、前記弾性フィルムは(1)乃至(6)のいずれか記載の張力梱包用フィルムであることを特徴とする梱包容器が提供され、
(10)前記支持体は、弾性フィルム面が対抗するよう配置された上側の支持体及び下側の支持体からなることを特徴とする(9)記載の梱包容器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の張力梱包用フィルムは、1)柔軟性、2)伸縮性に優れるとともに、3)ヒートシール部分が素早く安定化する為、帯掛け包装により生産性良く連続的にシート材料へ弾性フィルムを巻き付けることができ、4)引き伸ばした後(梱包直後)であっても高い結束力を発揮する為、梱包直後における被梱包物の位置ずれや落下を抑制することができ、宙づり梱包や保定梱包等に使用する張力梱包用フィルムとして好適に用いることができる。また、本発明の張力梱包用フィルムを用いた梱包部材、梱包容器は、被梱包物を安全に輸送・保管することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[エチレン系樹脂組成物(A)]
本発明の張力梱包用フィルムは、エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系樹脂組成物(A)から成る層を備える。
【0015】
<エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)>
エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)は、エチレンに基づく単量体単位が重合したハードブロックとα−オレフィンに基づく単量体単位が重合したソフトブロックとが交互に繋がった構造をしており、ハードブロックは高耐熱性に、ソフトブロックは柔軟性と低温特性とに寄与することが知られている。当該エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)は、密度が900kg/m
3以下であっても、100℃以上の融点を有する。このようなエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)の具体例として、ダウ・ケミカル(株)製の「インフューズ(Infuse(登録商標))」を挙げる。
ソフトブロックを形成するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられるが、柔軟性と加工し易さを考慮すると1−オクテンが好ましい。
【0016】
エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)を張力梱包用フィルムに採用すると、梱包直後の結束力に優れるとともに、張力が掛かった状態でのヒートシール性に優れるフィルムを得ることができる。これはエチレン/α−オレフィンブロック共重合体のハードブロックがシール部の素早い安定化に寄与し、ソフトブロックが結束力向上に寄与する為と思われる。本発明では、エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)のなかでも、密度900kg/m
3以下で、100℃以上の融点を有するものを好適に採用することができ、特に密度890kg/m
3以下で、118℃以上の融点を有するものを好適に採用することができる。密度が高くなり過ぎると張力梱包用フィルムの結束力が低下し、融点が低くなり過ぎるとシール部の安定性が低下する恐れがある。尚、融点は示差走査熱量測定により求めることができるが、昇温時の吸熱ピークが複数存在する場合、本発明ではピークが現れる全ての温度を融点と呼び、少なくとも1つの融点が100℃以上、特に118℃以上であることが望まれる。
【0017】
<エチレン/α−オレフィンブロック共重合体以外のエチレン系樹脂(a2)>
またエチレン系樹脂組成物(A)は、上記エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)以外に、他のエチレン系樹脂(a2)を含むことができる。張力梱包用フィルムを形成するエチレン系樹脂組成物(A)に用いられるエチレン系樹脂(a2)は、エチレンに基づく単量体単位を主単位として有する重合体であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量がエチレン系樹脂(a2)の全重量(100重量%)に対して50重量%以上の重合体である。当該エチレン系樹脂(a2)は、従来、ストレッチフードフィルム等に用いられているエチレン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンに基づく単量体単位と酢酸ビニルに基づく単量体単位とが共重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができる。
【0018】
フィルムの結束性や原料価格を考慮すると、エチレン系樹脂(a2)として、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位とがランダムに共重合された直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが望ましい。直鎖状低密度ポリエチレンにおけるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどを例示することができるが、1−ヘキセンや1−オクテンが製膜性安定性の観点から望ましい。該直鎖状低密度ポリエチレンは、マルチサイト系触媒またはシングルサイト系触媒を用いて重合されるものであるが、密度が900kg/m
3以下のものは、通常シングルサイト触媒により重合され、融点は100℃を下回る。
【0019】
張力梱包用フィルムは、フィルムの張力によって被梱包物を支持・固定するものであるが、該フィルムと被梱包物が密着して剥がれなくなり、被梱包物が取り出しにくくなることがある。そこで、フィルムと被梱包物との密着性を改善するためにエチレン樹脂(a2)として、比較的密度の高い直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。具体的には、エチレン系樹脂(a2)として密度が910kg/m
3以上、好ましくは915kg/m
3以上の直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0020】
エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)とエチレン系樹脂(a2)の配合割合は特に限定されるものではないが、エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1):エチレン系樹脂(a2)=10〜90重量%:90〜10重量%が望ましい。エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)、エチレン系樹脂(a2)はいずれも10重量%未満では各樹脂の特性を発揮することが難しい。またエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)は、一般的なエチレン系樹脂(a2)に比べて高価であるので、エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1):エチレン系樹脂(a2)=10〜50重量%:90〜50重量%が望ましく、特に10〜40重量%:90〜60重量%が好ましい。エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が10重量%未満ではフィルムの結束力、シール部の安定性を改善することができず、40重量%程度添加されると、所期の目的をおおむね達成することができる。
【0021】
<その他の成分>
エチレン系樹脂組成物(A)には、上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)、エチレン系樹脂(a2)の他に、これらの樹脂の特性を阻害しない範囲で、他の樹脂成分を配合することができる。また必要に応じて、公知の充填剤、顔料、核剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤などの添加剤を添加することができる。
【0022】
[多層フィルム]
本発明の張力梱包用フィルムは、上述したエチレン系樹脂組成物(A)のみからなる単層構成のフィルムであってもよいが、エチレン系樹脂組成物(A)から成る層を備える多層フィルムであることが好ましい。多層フィルムである場合、少なくとも(α)層/(β)層の構成から成る2層以上のフィルムであることが好ましく、特に(α)層/(β)層/(α)層の構成からなる3層以上のフィルムであることが望ましい。以下、張力梱包用フィルムが、(α)層/(β)層/(α)層の3層フィルムである場合について詳細に説明するが、本発明の張力梱包用フィルムはこれに限定されるものではない。また本発明の目的を達成しうる範囲で、各層の間に他の層を設けることも可能である。
【0023】
<α層>
α層は、フィルムのシール性能に最も関与する層で、上述したエチレン系樹脂組成物(A)から成ることが好ましい。エチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)を含むため、シール部を素早く安定化することができる。α層は、後述する保定梱包の実施形態においては、シート材料へ筒状にフィルムを帯掛け包装する際の最内に位置する層で、フィルムを円筒状に加工する際にシール面となる層、或いは被梱包物との接地面となる層である。
【0024】
<β層>
β層は、フィルムが3層以上の構成である場合、芯層となる層である。β層としては、上述したエチレン系樹脂(a2)を用いることができるが、β層の結束力を高める為、該層は比較的密度の低い直鎖状低密度ポリエチレンを主成分(β層を形成する樹脂のうち、最も重量割合の大きい成分)とすることが好ましい。具体的には、密度が910kg/m
3以下、好ましくは905kg/m
3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。また該層にも、上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)を配合することができる。β層にエチレン/α−オレフィンブロック共重合体を配合することにより、帯掛け包装時のシール性や梱包時の結束力が更に向上する。
【0025】
尚、α層におけるエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の配合割合をWs重量%、β層におけるエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の配合割合をWc重量%とするとき、WsはWcよりも大きいことが望ましい。張力梱包用フィルム全体におけるエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の量が同じであっても、フィルムの表面に位置する層、即ちα層に多くエチレン/α−オレフィンブロック共重合体が配合されている方が、β層に多く配合されているよりも、フィルムの結束力は高くなる。
【0026】
また上述した各層には、直鎖状低密度ポリエチレンやエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の他に、これらの樹脂の特性を阻害しない範囲で、他の樹脂成分や各種添加剤を添加することができる。高圧法による低密度ポリエチレンを5〜10重量%程度配合させると、フィルムの製膜安定性が図れる。
【0027】
本発明の張力梱包用フィルムの厚さは、引裂強度、結束力等を考慮すると、10〜250μmが好ましく、特に20〜150μmが好ましい。膜厚が厚くなり過ぎると、結束力が強くなり過ぎ、被梱包物がフィルムの張力によって損傷を受ける可能性がある。また薄くなり過ぎると引き裂けやすくなる恐れがある。
【0028】
本発明の張力梱包用フィルムは、α層/β層の2層フィルムである場合、各層の厚さ構成比は、1:1〜1:10或いは1:1〜10:1程度が好ましい。またα層/β層/α層の3層フィルムである場合、各層の厚さ構成比は、1:1:1〜1:10:1程度が好ましい。エチレン/α−オレフィンブロック共重合体の配合量を低く抑えながら、本発明の効果を奏するためにはα層が薄いことが望ましいが、上述する範囲よりも薄くなると、生産安定性や生産効率が悪くなる。
【0029】
[製造方法]
本発明の張力梱包用フィルムは、例えば上述した樹脂をインフレーション押出法やTダイキャスト押出法等、従来公知の製膜法により製造することができる。また張力梱包用フィルムが多層フィルムである場合は、共押出し法により製膜する方法、各層を別々に製膜した後、熱等により貼り合わせるラミネート法や、α層を別々に製膜した後、これらの層の間にβ層を形成する樹脂を溶融状態で流し込む押出ラミネート法等を用いることができる。
【0030】
[保定梱包の実施形態1]
次に、本発明の張力梱包用フィルムを用いた保定梱包の実施形態1について説明する。
図1は本実施形態1に係る梱包部材を具備する梱包容器の構成例を示す斜視図である。なお、本発明でいう保定梱包とは、被梱包物をフィルムとシート材料との間でフィルムの張力を利用して保定する梱包形態である。
【0031】
図1に示すように、梱包部材2は、シート材料3と、該シート材料の表面に非接着の状態で重ねられ、張力を利用して被梱包物を支持する弾性フィルム4と、を備えており、該フィルムとして上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系組成物(A)からなる層を備える張力梱包用フィルムを用いる。
【0032】
シート材料3としては、特に制限するものではないが、例えば、紙製やプラスチック製の段ボール等を用いることができる。シート材料3の厚さは、その材質にもよるが、折り曲げ可能な程度に平板状を有していればよく、本発明の要旨を変更しない範囲において制限されない。シート材料3の形状も、本発明の要旨を変更しない範囲において制限されず、例えば正方形状、長方形状、円形状のいずれも採用できるが、ここでは略長方形状が採用されている。
【0033】
シート材料3は、被梱包物が搭載される主面5を有している。主面5の一方の対向側辺(両端縁)には折り曲げ線6が設けられており、この折り曲げ線6を介して立ち下げ部7が形成されている。立ち下げ部7は、主面5から下方に立ち下げ外箱に収容されて施蓋された状態で外箱の下面に当接して、被梱包物を外箱9の所定の位置に支持するものであり、被梱包物の大きさに合わせて立ち下げ部7の高さを適宜設計すれば良い。なお、ここでは主面5の一方の対向側辺に設けられた折り曲げ部6を介して下方に折り曲げた立ち下げ部7としているが、折り曲げ線を介して上方に折り曲げる立ち上がり部としても良い。その場合の立ち上がり部は、外箱に収容されて施蓋された状態で外箱の上面に当接して、被梱包物を外箱9の所定の位置に支持することとなる。
【0034】
シート材料3は、主面5と立ち下げ部7とを通過する2本の略平行な水平折り曲げ線8を有している。この水平折り曲げ線8を介してシート材料3の両端縁部を上方に折り曲げることにより弾性フィルム4を弛ませることができ、シート材料3と弾性フィルム4との隙間に被梱包物を挿入・載置することができる。水平折り曲げ線8は、シート材料3の折り曲げ線6に対して略直交するように形成されていることが好ましい。なお、本実施形態では2本の水平折り曲げ線を設けているが、水平折り曲げ線は1本でも良く、また2本以上設けられていても良い。
【0035】
弾性フィルム4は、シート材料3の表面に非接着の状態で重ねられており、ここではシート材料3の外側の周りに筒状に配置される。弾性フィルム4は、少なくとも被梱包物を載置するシート材料の主面5の一部を覆うように配置され、そのような構成とすることにより、シート材料の主面5と弾性フィルム4との隙間に被梱包物を保定することができる。より安定的に被梱包物を支持するために弾性フィルム4を主面5と主面の両端縁に位置する立ち下げ部7の一部とを覆うよう配置しても良い。なお、弾性フィルム4は、シート材料の表面に非接着の状態で重ねられ、シート材料と弾性フィルムとの隙間に載置される被梱包物を該フィルムの張力を利用して支持・固定することができるよう配置されていればよく、例えば、フィルムの両縁端がシート材料の両端縁部付近に固定されている構成も可能である。
【0036】
シート材料3の外側の周りに弾性フィルム4を筒状に配置する方法としては、特に制限するものではないが、生産性の観点から、平板状のシート材料に弾性フィルムを帯掛け包装する方法が好ましい。
【0037】
ここで、梱包部材2を用いて被梱包物を梱包する手順について説明する。先ず、シート材料3と弾性フィルム4との間に被梱包物を挿入する。このときシート材料3をシート材料の主面5と立ち下げ部7とを通過する2本の水平折り曲げ線8を介してシート材料の両端縁部を上方に折り曲げて弾性フィルム4を弛ませると、被梱包物を挿入しやすくなる。次に、両端縁部を水平に戻し、シート材料の立ち下げ部7を下方に立ち下げる。そうすると、筒状の弾性フィルム4が周方向に引っ張られて緊張し、被梱包物を主面5に押し付ける。これによって、被梱包物は所定の位置に固定される。
【0038】
また、
図1に示すように、梱包容器1は、上記梱包部材2と、梱包部材の立ち下げ部7が立ち下がった状態のシート材料3の寸法に対応する内寸を持った外箱9と、を備える。外箱9は、被梱包物を載置・支持した上記梱包部材2を収容し、被梱包物を保護する役割を有する。外箱としては、特に制限するものではないが、例えば、紙製やプラスチック製の段ボールを用いることができる。
【0039】
[保定梱包の実施形態2]
本発明の張力梱包用フィルムを用いた保定梱包の実施形態2について説明する。
図2は本実施形態2に係る梱包部材を具備する梱包容器の構成例を示す斜視図である。
【0040】
図2に示すように、梱包部材12はシート材料13と、該シート材料の表面に非接着の状態で重ねられ、張力を利用して被梱包物を支持する弾性フィルム14とを備えており、該フィルムとして上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系組成物からなる層を備える張力梱包用フィルムを用いる。
【0041】
シート材料13は、被梱包物が搭載される主面15を有している。主面15の一方の対向側辺(両端縁)には第1折り曲げ線16aが設けられており、この第1折り曲げ線16aを介して主面15の底面側に折り返される折り返し部18が形成されている。折り返し部18は、弾性フィルム14の両端縁が底面側の接着部20で固定されており、折り返し部18を上方に立ち上げた状態とすることにより弾性フィルム14を弛ませてシート材料13と弾性フィルム14との隙間に被梱包物を容易に挿入することができる。被梱包物を挿入した後は、折り返し部18を主面15の底面側に折り返すことにより、被梱包物に張力を掛けて保定することができる。なお、本実施形態では2本の第1折り曲げ線16aを設けているが、第1折り曲げ線16aは1本でも良く、また2本以上設けられていても良い。
【0042】
主面15の他方の対向側辺(両端縁)には第2折り曲げ線16bが設けられており、この第2折り曲げ線16bを介して立ち上がり部17が形成されている。立ち上がり部17は、主面15から立ち上がり外箱19に収容されて施蓋された状態で外箱19の上面に当接して、被梱包物を外箱19の所定の位置に支持するものであり、被梱包物の大きさに合わせて立ち上がり部の高さを適宜設計すれば良い。なお、ここでは主面15の他方の対向側辺に設けられた第2折り曲げ線16bを介して上方に折り曲げた立ち上がり部17としているが、折り曲げ線を介して下方に折り曲げる立ち下げ部としても良い。
【0043】
弾性フィルム14は、主面15に非接着の状態で重ねられ、両端縁が折り返し部の底面側の接着部20に固定されている。弾性フィルム14の折り返し部18における接着部20への固定は接着剤を用いても、熱溶着されていても良い。弾性フィルム14は、少なくとも被梱包物を載置するシート材料の主面の一部を、好ましくは全面を覆うように配置され、そのような構成とすることにより、シート材料の主面15と弾性フィルム14との隙間に被梱包物を支持・固定することができる。
【0044】
ここで、梱包部材12を用いて被梱包物を梱包する手順について説明する。先ず、シート材料13と弾性フィルム14との間に被梱包物を挿入する。このとき主面15の一方の対向側辺に設けられた折り返し部18を、第1折り曲げ線16aで上方に折り曲げて弾性フィルム14を弛ませると、被梱包物を挿入しやすくなる。次に、折り返し部18を第1折り曲げ部16aで主面15の底面側に折り返し、主面15の他方の対向側辺に設けられた第2折り曲げ線16bを介して立ち上がり部17を上方に立ち上げる。そうすると、弾性フィルム14が折り返し部18とともに主面の下方に折り曲げられる。弾性フィルム14は、主面の第1折り曲げ線16a側に引っ張られて緊張し、被梱包物を主面に押し付ける。これによって、被梱包物は所定の位置に固定される。
【0045】
また、
図2に示すように、梱包容器11は、上記梱包部材12と、梱包部材の立ち上がり部7が立ち上がった状態のシート材料3の寸法に対応する内寸を持った外箱19と、を備える。上述したように、外箱19は、被梱包物を支持・固定した上記梱包部材を収容し、被梱包物を保護する役割を有し、紙製やプラスチック製の段ボール等を用いることができる。
【0046】
[保定梱包の実施形態3]
本発明の張力梱包用フィルムを用いた保定梱包の実施形態3について説明する。
図3は本実施形態3に係る梱包部材を具備する梱包容器の構成例を示す斜視図である。
【0047】
図3に示すように、梱包部材22はシート材料23と、所定厚さの枠体の一方の面に設けた窓の部分に弾性フィルム24が張り渡されている支持体25と、を備えており、該フィルムとして上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系組成物からなる層を備える張力梱包用フィルムを用いる。
【0048】
支持体25は、シート材料23の表面に弾性フィルム面が非接着の状態で重ねられるように配置される。このような構成とすることにより、シート材料23と支持体25の弾性フィルム面との隙間に載置された被梱包物を弾性フィルム24の張力により支持体25に押し付け支持することができる。なお、シート材料23及び支持体25としては、上述した紙製やプラスチック製の段ボール等を用いることができる。
【0049】
また、
図3に示すように、梱包容器21は、上記梱包部材22と該梱包部材の寸法に対応する外箱29とを備える。上述したように、外箱29は、被梱包物を載置・支持した上記梱包部材を収容し、被梱包物を保護する役割を有し、紙製やプラスチック製の段ボール等を用いることができる。なお、ここではシート材料を用いたが、外箱の底面をシート材料の代わりとして一体化されていても良い。
【0050】
[宙づり梱包の実施形態4]
次に、本発明の張力梱包用フィルムを用いた宙吊り梱包の実施形態4について説明する。
図4は本実施形態4に係る梱包容器の構成例を示す斜視図である。なお、本発明でいう宙づり梱包とは、被梱包物を2つのフィルムの間にフィルムの張力を利用して宙づりまたは保持する梱包形態である。
【0051】
図4に示すように、梱包容器31は、所定の厚さの枠体の一方の面に設けた窓の部分に弾性フィルム34が張り渡されている支持体35と、該支持体の寸法に対応する外箱39と、を備えており、該フィルムとして上述したエチレン/α−オレフィンブロック共重合体(a1)が配合されたエチレン系組成物からなる層を備える張力梱包用フィルムを用いる。
【0052】
支持体35は、弾性フィルム面が対抗するように上側の支持体35a及び下側の支持体35bが配置される。このような構成とすることにより、上側の支持体35a及び下側の支持体35bの弾性フィルム間に被梱包物を挟持させ、弾性フィルムの張力を利用して被梱包物を宙づり又は保持することができる。なお、本実施形態では2個の支持体を用いているが、これらの支持体が繋がっている構成としても良い。
【0053】
支持体35や外箱39としては、従来公知のものを使用することができ、例えば上述した紙製やプラスチック製の段ボールを用いることができる。また本実施形態における梱包容器は、本発明の張力梱包用フィルムを用いる限り、支持体及び外箱の形状・寸法、支持体の数、支持体と外箱の関係などは、包装しようとする物品の種類、形状・寸法に応じて任意に選択できる。
【0054】
以上の如く、本発明の張力梱包用フィルムを用いた保定梱包、宙づり梱包の実施形態を説明したが、本発明の張力梱包用フィルムはこれらの実施形態に限られるものではない。保定梱包、宙づり梱包にはさまざまな変更態様が考案され実施されているが、そのいずれに対しても、本発明は適用可能である。また、上述したシート材料の主面上に被梱包物を載置した後、弾性フィルムを帯かけ包装することにより梱包する態様であっても良い。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の張力梱包用フィルムについて、実施例に基づき説明する。尚、各フィルムの結束力は以下の方法で評価した。
【0056】
[結束力]
1)各フィルムを、縦150mm、横10mmの矩形に切断し、試験片を作成する。尚、フィルムのMD方向(長さ方向)の結束力を測定する際は、試験片の縦方向がフィルムのMD方向となるように、フィルムのTD方向(幅方向)の結束力を測定する際は、試験片の縦方向がフィルムのTD方向となるように、試験片を切り出す。
2)該試験片をオートグラフのチャック間にセットし、チャック間を40mmにセットする(
図5(A))。このとき試験片41が、チャック42、42’にそれぞれ45mm挟持され、チャック間に60mm在るようにする。底辺20mm、高さ10mmの略二等辺三角形で、一つの頂部がR=6.5mmの曲線である略二等辺三角形を断面形状とする三角柱状の抑え具44を先端に有する冶具43を用い、抑え具44の頂部を試験片41に当て、試験片41がチャック42、42’間でストレスなく張った状態となるようにする。
3)チャック間距離を100mmまで広げ、試験片を約100%(元の長さの約2倍)引き伸ばし、このときの荷重を測定し(
図5(B))、測定値をフィルム厚さ(μm)で割って100倍し、100μmあたりの値に換算する。得られた値を「100%引張荷重」とする。
4)チャック間を70mmに縮め、試験片を約50%(元の長さの約1.5倍)引き伸ばした状態にし、このときの荷重を測定し(
図5(C))、測定値を厚さ100μmあたりの値に換算したものを「50%直後荷重」とする。
5)
図5(C)に示す状態で15分経過後、オートグラフに係る荷重を測定し、測定値を厚さ100μmあたりの値に換算したものを「50%15分荷重」とする。
【0057】
100%引張荷重値、50%直後荷重、50%15分荷重の結果を表1に記す。50%直後荷重は、フィルムの張力によって被梱包物を支持・固定した直後の結束力を示す値で、該値が大きいフィルムほど、フィルムの張力によって被梱包物を支持・固定した直後の位置ずれを防止する効果に優れる。また50%15分荷重は、フィルムを被梱包物に被せた後、経時後の結束力を示す値で、該値が大きいフィルムは、保定包装を行っている間の結束力が高い。
【0058】
各実施例、比較例で使用した原料は以下の通りである。
LL1 直鎖状低密度ポリエチレン MFR:1.0g/10min 密度:916kg/m
3
LL2 直鎖状低密度ポリエチレン MFR:1.0g/10min 密度:902kg/m
3
LL3 直鎖状低密度ポリエチレン MFR:0.8g/10min 密度:905kg/m
3
LD 高圧法低密度ポリエチレン MFR:2.0g/10min 密度:921kg/m
3
EBC エチレン/α−オレフィンブロック共重合体 MFR:0.5g/10min 密度:877kg/m
3 融点:122℃
尚、MFRはJIS K7210に準拠し測定された値である。
【0059】
[実施例1乃至3 比較例1]
表1に示す樹脂組成物を用いて、インフレーション共押出法にて、α層/β層/α層からなる三層の張力梱包用フィルムを得た。張力梱包用フィルムの膜厚は50μm、各層の厚み比は1:5:1であった。尚、シール層及び表面層を形成する樹脂組成物には、表1に記す樹脂100重量部に対し、3重量部のアンチブロッキング剤を添加した。得られたフィルムの結束力を表1に併せて記す。
【0060】
【表1】
【0061】
エチレン/α−オレフィンブロック共重合体が配合された組成物から成るフィルム(実施例1乃至3)は、配合されていないフィルム(比較例1)よりも結束力の最低値が大きいことがわかる。結束力の最低値が高いほど被梱包物の位置ずれを起こし難い。比較例1のフィルムを用いて保定包装すると、フィルムを被せた直後のフィルムのTD方向の結束力が低いため、包装直後動かす際に位置ずれし易い。また両外層(α層)にエチレン/α−オレフィンブロック共重合体が配合されている実施例1のフィルムの方が、芯層(β層)にエチレン/α−オレフィンブロック共重合体が配合されている実施例2のフィルムよりも、フィルム全体に配合されるエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の量が少ないにもかかわらず、結束力が大きかった
【0062】
[実施例4、5 比較例2乃至4]
表2に示す樹脂組成物を用いて、インフレーション共押出法にて、α層/β層/α層からなる三層の張力梱包用フィルムを得た。張力梱包用フィルムの膜厚は100μm、各層の厚み比は1:5:1であった。尚、実施例4、5、比較例2、3の両外層(α層)を形成する樹脂組成物には、表2に記す樹脂100重量部に対し、3重量部のアンチブロッキング剤を添加した。また比較例4を形成する樹脂組成にも、該樹脂100重量部に対し3重量部のアンチブロッキング剤を添加した。得られたフィルムの結束力を表2に併せて記す。
【0063】
フィルムのシール強度(ホットタック強度)を以下の方法で測定した。
[シール強度]
1)各フィルムから縦300mm、横50mmの矩形の試験片を二枚切り出す。このとき試験片の縦方向が、張力梱包用フィルムのMD方向となるようにする。
2)一方の試験片45の一端45aを冶具47に固定し、他方の試験片46の一端46aをデジタルフォースゲージ48(IMADA社製 ZP−500N)に固定する(
図6(A))。
3)一方の試験片の他端45bと他方の試験片の他端46bとを重ね、ヒートシール機(テスター産業社製 TP−701−B ヒートシールテスター)にてヒートシールし、シール部49を形成する(
図6(B))。尚、上シールバーは幅3mmのものを使用し、フッ素樹脂含浸ガラスクロス粘着テープを充ててヒートシールした。下シールバーはシリコーンラバー(ゴム硬度50)のものを使用し、上シールバーと同様にフッ素樹脂含浸ガラスクロス粘着テープを充てて試験を行った。シール圧は1.8MPa、シール時間は1.0秒、上シールバーの温度は120℃、下シールバーの温度を23℃とした。
4)ヒートシール後、直ちにデジタルフォースゲージを垂直に下げ、更にシール部49が剥離するまでシール部49に荷重をかけ(
図6(C))、剥離したときの荷重を読み取り、これをシール強度とする。
5)上シールバーの温度を120℃から210℃まで、10℃刻みで変化させ、各温度のシール強度を測定する。
【0064】
該測定方法によると、ヒートシール直後のシール部の強度を確認することができる。上シールバーの温度が高い領域(180℃を超える領域)において、高いシール強度を示すフィルムは、筒状に加工するためにシールした直後、シール部が高温であっても、シール部に負荷をかけることができる。よって、高速包装することができる。一方、上シールバーの温度が高い領域において低いシール強度を示すフィルムは、シール後、シール部の温度がある程度低くなるまでシール部に負荷をかけることができない。その為、包装速度は遅くなる。
実施例4、5、比較例2乃至4のシール部の安定性を測定し、測定結果を表3に記す。またシール強度が4N/50mm以上であれば、筒状のフィルムを押し広げ、シール部に負荷をかけることができる。シール強度が4N/50mm以上である温度のうち最も高温となる温度をシール安定温度とし表2に合せて記す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
エチレン/α−オレフィンブロック共重合体が配合された組成物から成るフィルム(実施例4、5)は、配合されていないフィルム(比較例2)よりも結束力の最低値が大きいことがわかる。
両外層に密度の低い直鎖状低密度ポリエチレン(LL2、LL3)が配合された比較例3、4のフィルムは、結束力の最低値は比較的大きかったが、シール適性が劣っていた。これはフィルム全体の樹脂密度が低く、耐熱性が下がっており、冷却固化に時間を要するためと思われる。また密度の低い直鎖状低密度ポリエチレンのみから成る比較例4のフィルムを用いて帯掛け包装を行ったところ、フィルムがブロッキングしてロールからフィルムを繰り出すことができなかった。