【解決手段】下記式で示す部分構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマーと、加水分解性の珪素化合物とを、水の存在下で接触させてゾルゲル反応を生じさせることにより、ナノメートルサイズ(1μm以下)の粒径をもち、ポリマーとシリカとが複合した微粒子が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、ナノメートルサイズ(1μm以下)の粒径をもち、ポリマーとシリカとが複合した微粒子の新規かつ簡便な製造方法、及び新規なゾルゲル反応触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アミド結合となる構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマーと、加水分解性の珪素化合物とを、水の存在下で接触させるとゾルゲル反応を生じ、粒子の形状の揃った、ポリマーとシリカとの複合材料である微粒子が得られることを見出した。一般に、ゾルゲル反応を生じさせるためには酸触媒又は塩基触媒の存在が必要となるが、上記のポリマーに含まれるアミド結合は中性であり、かつ上記のポリマーの他にゾルゲル反応を触媒するような酸や塩基の存在しない条件でゾルゲル反応を生じるのは意外なことである。また、上記の方法で得られた複合微粒子は、粒径の揃ったナノメートルサイズであり、上記のポリマーが何らかのテンプレートになってゾルゲル反応が生じている可能性がある。これまで、サイズの揃ったナノメートルサイズの微粒子を得るのは技術的な困難を伴うものであったが、本知見により得られた製造方法によれば、上記ポリマーと加水分解性の珪素化合物とを水溶液中で混合するだけでそれが実現される。これらの事実は大変意外なものであり、本発明はそうした意外な知見に基づいてなされたものである。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
[1]本発明は、下記式で示す部分構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマーと、加水分解性の珪素化合物とを、水の存在下で接触させてゾルゲル反応を生じさせることを特徴とする、シリカ含有微粒子の製造方法である。
【化1】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0011】
[2]また本発明は、上記ポリマーが、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示す繰り返し単位を備えることを特徴とする[1]記載のシリカ含有微粒子の製造方法である。
【化2】
(上記一般式(1)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
1は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
11は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化3】
(上記一般式(2)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
21は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
22は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
23は、単結合又は2価の有機基を示し、R
21は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
22は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
23は、水素原子又は1価の有機基を示し、nは、1以上の整数を示す。)
【化4】
(上記一般式(3)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
3は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
31は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
32は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
33は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化5】
(上記一般式(4)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
4は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
41は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
42は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
41とR
42とは互いに結合して環構造を形成してもよく、R
43は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0012】
[3]また本発明は、上記加水分解性の珪素化合物がアルコキシシランである[1]項又は[2]項記載のシリカ含有微粒子の製造方法である。
【0013】
[4]本発明は、下記式で示す構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマーを処理対象である基材の表面に付着させる付着工程と、上記付着工程を経た基材の表面に加水分解性の珪素化合物を接触させることにより、上記基材の表面でゾルゲル反応を生じさせシリカを含む膜を形成させるゾルゲル工程と、を含むことを特徴とする、基材の表面に対するコーティング施工方法でもある。
【化6】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0014】
[5]また本発明は、上記ポリマーが、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示す繰り返し単位を備えることを特徴とする[4]項記載のコーティング施工方法である。
【化7】
(上記一般式(1)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
1は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
11は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化8】
(上記一般式(2)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
21は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
22は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
23は、単結合又は2価の有機基を示し、R
21は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
22は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
23は、水素原子又は1価の有機基を示し、nは、1以上の整数を示す。)
【化9】
(上記一般式(3)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
3は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
31は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
32は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
33は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化10】
(上記一般式(4)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
4は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
41は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
42は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
41とR
42とは互いに結合して環構造を形成してもよく、R
43は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0015】
[6]本発明は、下記式で示す部分構造を繰り返し単位中に含み水溶性のポリマーからなる、加水分解性の珪素化合物に対するゾルゲル反応用触媒でもある。
【化11】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0016】
[7]また本発明は、上記ポリマーが、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示す繰り返し単位を備えることを特徴とする請求項5記載の加水分解性の珪素化合物に対するゾルゲル反応用触媒である。
【化12】
(上記一般式(1)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
1は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
11は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化13】
(上記一般式(2)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
21は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
22は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
23は、単結合又は2価の有機基を示し、R
21は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
22は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
23は、水素原子又は1価の有機基を示し、nは、1以上の整数を示す。)
【化14】
(上記一般式(3)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
3は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
31は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
32は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
33は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【化15】
(上記一般式(4)中、鉤括弧は繰り返し単位を示し、X
4は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
41は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
42は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
41とR
42とは互いに結合して環構造を形成してもよく、R
43は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ナノメートルサイズ(1μm以下)の粒径をもち、ポリマーとシリカとが複合した微粒子の新規かつ簡便な製造方法、及び新規なゾルゲル反応触媒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のシリカ含有微粒子の製造方法の一実施態様、本発明の基材の表面に対するコーティング施工方法の一実施態様、及び本発明のゾルゲル反応用触媒の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施態様及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<シリカ含有微粒子の製造方法>
まずは、本発明のシリカ含有微粒子の製造方法の一実施態様について説明する。本発明のシリカ含有微粒子の製造方法は、下記式で示す部分構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマー(以下、単に「ポリマー」とも呼ぶ。)と、加水分解性の珪素化合物とを、水の存在下で接触させてゾルゲル反応を生じさせることを特徴とする。
【0022】
上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。つまり、本発明で用いるポリマーは、上記式で表す部分構造が主鎖又は側鎖に組み込まれており、ポリマーの繰り返し単位の数、すなわち重合度の大きさに応じて上記式で表す部分構造を複数備える。ところで、上記式で表す部分構造の典型例は、アミド結合である。アミド結合に含まれる窒素原子は二級又は三級アミンだが、この窒素原子に含まれる非共有電子対は隣接するカルボニル基へ引きつけられており、ゆえにアミド結合に含まれる窒素原子は塩基性を示さない。つまり、アミド結合部分は中性であり、ゾルゲル反応を触媒するための塩基としての作用は本来期待できない。
【0023】
しかしながら、本発明者による検討では、上記式で示すアミド結合を繰り返し単位中に含むポリマーは、意外なことに、水溶液中でゾルゲル反応を生じさせるための触媒として機能することが見出された。そのような機能を生じる理由は必ずしも明らかでないが、アミド結合に含まれるN−C=O結合は極めて高度に分極しており、その分極率は2.5Dにも達する。このような高い分極率を備えた部分構造が水溶液中に存在すると、その部分構造の周囲に存在する水分子が活性化(すなわち分極)され、水酸化物イオンを放出しやすくなることが一因として考えられる。
【0024】
さらに、本発明者の検討により、上記のようなポリマーを触媒として加水分解性の珪素化合物を水溶液中でゾルゲル反応させると、ナノメートルオーダーで形状の揃った、シリカと上記ポリマーとが複合した複合微粒子が得られることが見出された。この複合微粒子は、溶液中での分散性が極めて高く、粉末として取り出すことも可能である。加水分解性の珪素化合物を水溶液中で塩基触媒によりゾルゲル反応させると、通常、その溶液全体がゲル化しまうことを考えると、この結果は極めて意外なものである。このような効果の得られる理由もまた明らかでないが、上記のようにポリマー周辺に存在する水分子が活性化されると考えられる状況においては、ゾルゲル反応はポリマーの周囲でのみ生じることになり、それゆえポリマーが粒子形成のテンプレートとなって複合微粒子を形成させるに至ったと考えられる。
【0025】
上記ポリマーは、水溶性である。そして、上記ポリマーは、中性の水溶液中で加水分解性の珪素化合物をゾルゲル反応させる。
【0026】
より具体的には、上記式で表す部分構造を含むポリマーとして、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示す繰り返し単位を備えるものを挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)中、鉤括弧はポリマーにおける繰り返し単位を示し、X
1は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
11は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。X
1としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の二価の基が挙げられ、これらの中でも、エチレン基が好ましく挙げられる。R
11としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、形状の揃った複合微粒子を得られるとの観点からはメチル基が好ましく例示される。
【0029】
上記一般式(1)で示す繰り返し単位を備えるポリマーとしては、上記一般式(1)で示す繰り返し単位のみを備えたホモポリマーであってもよいし、上記一般式(1)で示す繰り返し単位と他の繰り返し単位とを備えたコポリマーであってもよい。コポリマーとする場合、他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等を挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」との記載は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」との記載は、アクリレート又は
メタクリレートを意味する。
【0030】
上記一般式(1)で示す繰り返し単位を備えるポリマーとしては、オキサゾリン化合物を開環重合させて得られるポリオキサゾリンが挙げられ、中でも、2−メチル−2−オキサゾリンを開環重合して得られ、下記式(1a)で示す繰り返し単位を備えたポリメチルオキサゾリンが好ましく挙げられる。なお、下記式(1a)中、鉤括弧はポリマーにおける繰り返し単位を示す。
【0032】
なお、オキサゾリン化合物を開環重合させるには、オキサゾリン化合物を含む水溶液へ脱離基を備えた求核試薬を反応させればよい。求核試薬としてp−トルエンスルホン酸メチル(CH
3−OTs)を用いて2−メチル−2−オキサゾリンを開環重合させたときの重合機構を、一例として下記Scheme 1に示す。下記に示すように、この反応は、重合末端にカチオンを生じるリビング重合であり、反応系内に存在するオキサゾリンの窒素原子が重合末端に存在するカチオンを攻撃してポリマー鎖が伸長する。最後に、重合停止剤として求核試薬(Nu
−)を反応系内に加えることで、その求核試薬が重合末端に結合して伸長反応が停止する。
【0035】
上記一般式(2)中、鉤括弧はポリマーにおける繰り返し単位を示し、X
21は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
22は、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、X
23は、単結合又は2価の有機基を示し、R
21は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
22は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
23は、水素原子又は1価の有機基を示し、nは、1以上の整数を示す。X
21としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の二価の基が挙げられ、これらの中でも、メチレン基が好ましく挙げられる。X
22としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の二価の基が挙げられ、これらの中でも、エチレン基が好ましく挙げられる。2価の有機基としてのX
23としては、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられ、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、フェニレン基、フェニレンメチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。R
21としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましく例示される。R
22としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、水素原子及びメチル基が好ましく挙げられる。
【0036】
上記一般式(2)で示す繰り返し単位を備えるポリマーとしては、上記一般式(2)で示す繰り返し単位のみを備えたホモポリマーであってもよいし、上記一般式(2)で示す繰り返し単位と他の繰り返し単位とを備えたコポリマーであってもよい。コポリマーとする場合、他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等を挙げることができる。
【0037】
より具体的な態様として、上記一般式(2)で表される繰り返し単位は、ビニル基を有する化合物をラジカル重合してなるものであり、ビニル基を有する化合物として、スチレン化合物を挙げることができる。このようなスチレン化合物として下記化学反応式の出発原料として示したp−クロロメチルスチレンが例示できる。このようなスチレン化合物には、脱離基であるハロゲン原子やトシラート基、トリフラート基等を備えたアルキル基が結合しており、それを重合することにより、側鎖に脱離基を備えたポリスチレン誘導体が得られる。下記化学反応式では、脱離基として塩素原子を備えたスチレン化合物(p−クロロメチルスチレン)とメタクリル酸エステル(メチルメタクリレート)とを共重合させた例を示している。このような脱離基を備えたポリマー(下記化学反応式にて中間に示したもの)と2−メチル−2−オキサゾリンとを反応させると、上記Scheme 1に示すような開環重合反応が起こり、側鎖にポリオキサゾリン鎖を有する、櫛形構造のポリマーが得られる(下記化学反応式を参照)。下記化学反応式において、重合鎖の途中に斜体で示した「ran」は、この共重合体がランダムコポリマーであることを示す。また、下記化学反応式において、ポリオキサゾリン鎖の末端に示した「*」は、ポリオキサゾリン鎖の伸長反応が停止する際に結合した末端基である。この末端基は、上記一般式(2)におけるR
23に対応し、水素原子又は1価の有機基である。したがって、上記一般式(2)におけるR
23は、どのような有機基であってもよく、どのような有機基が選択されたとしても本発明の効果に影響はない。
【0040】
上記一般式(3)中、鉤括弧はポリマーにおける繰り返し単位を示し、X
3は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
31は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
32は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R
33は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。X
3としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の二価の基が挙げられ、これらの中でも、メチレン基が好ましく挙げられる。R
31としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R
32としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R
33としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、水素原子又はメチル基が好ましく挙げられる。
【0041】
上記一般式(3)で示す繰り返し単位を備えるポリマーとしては、上記一般式(3)で示す繰り返し単位のみを備えたホモポリマーであってもよいし、上記一般式(3)で示す繰り返し単位と他の繰り返し単位とを備えたコポリマーであってもよい。コポリマーとする場合、他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(3)で示す繰り返し単位は、(メタ)アクリルアミドモノマーを由来とするものである。(メタ)アクリルアミドは、1級から3級までのアミノ基を持ちうるが、本発明では、上記R
31及びR
32の説明から理解されるように、1級のアミノ基は持たない。1級のアミノ基を持つ(メタ)アクリルアミドを重合して得られたポリマーでは、複合微粒子が得られない。
【0044】
上記一般式(4)中、鉤括弧はポリマーにおける繰り返し単位を示し、X
4は、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R
41は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
42は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
41とR
42とは互いに結合して環構造を形成してもよく、R
43は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。X
4としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の二価の基が挙げられ、これらの中でも、メチレン基が好ましく挙げられる。R
41としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R
42としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R
43としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、水素原子又はメチル基が好ましく挙げられる。R
41及びR
42は、互いに結合して、5〜10員環を形成してもよい。このような環として、5員環であるピロリドン環が好ましく例示できる。
【0045】
上記一般式(4)で示す繰り返し単位を備えるポリマーとしては、上記一般式(4)で示す繰り返し単位のみを備えたホモポリマーであってもよいし、上記一般式(4)で示す繰り返し単位と他の繰り返し単位とを備えたコポリマーであってもよい。コポリマーとする場合、他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等を挙げることができる。
【0046】
上記一般式(4)で示す繰り返し構造としては、ビニルピロリドンを由来とするものが好ましく例示できる。
【0047】
以上に例示したポリマーの中でも、上記式(1a)で示す繰り返し単位を備えたポリ2−メチル−2−オキサゾリンが特に好ましい。上記式(1a)で示す繰り返し単位を備えたポリ2−メチル−2−オキサゾリンを用いてゾルゲル反応を行うことにより、形状及び粒子径の揃ったナノメートルオーダーで球状の複合微粒子が得られる。
【0048】
加水分解性の珪素化合物は、水と反応することにより加水分解され、ゾルゲル反応を生じるものであればよい。このような珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、ジプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、ジイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン、ジクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化シラン、オルトケイ酸テトラエチル等を挙げることができる。これらの中でも、アルコキシシランが好ましく挙げられ、中でもテトラメトキシシランが好ましく挙げられる。これらの加水分解性の珪素化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上述の水溶性ポリマーと加水分解性の珪素化合物とを水の存在下で接触させ、ゾルゲル反応を生じさせる。より具体的には、上述の水溶性ポリマーの水溶液に加水分解性の珪素化合物を加え、室温で5〜30分程度撹拌すればよい。このときの反応溶液となる水のpHは、中性とする。すなわち、上述の水溶性ポリマーの他には、酸触媒や塩基触媒を存在させない。これらの酸触媒や塩基触媒が存在すると、溶液全体がゲル化してしまい、複合微粒子を得ることができない。なお、ここでいう中性とは、pHが6.0〜8.0程度、好ましくはpHが6.5〜7.5程度、より好ましくはpHが7.0であることを意味する。
【0050】
本発明の製造方法で得られる複合微粒子は、ナノメートルサイズの微粒子であり、シリカと上述のポリマーとを含有する。このシリカは、加水分解性の珪素化合物が加水分解し、縮重合してシリカとなったものである。ゾルゲル反応で得たシリカの場合、縮重合されずに残留した水酸基等の基を含む場合もあるが、このような場合であっても本発明ではシリカとして扱う。
【0051】
水溶性ポリマーと加水分解性の珪素化合物との混合割合としては、ポリマーに含まれる、下記式で示す構造1当量に対して、加水分解性の珪素化合物を1〜20当量とすることを挙げることができるが、特に限定されず、所望する複合粒子の形状等に応じて適宜増減すればよい。
【0052】
【化24】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0053】
ゾルゲル反応を行うに際の反応条件としては、室温で30分間〜2時間程度撹拌することを挙げることができる。反応終了後、遠心分離や、メンブランフィルター等を用いた濾過等の手段により、反応溶液から複合微粒子を分離すればよい。
【0054】
得られた複合微粒子は、目的の用途にそのまま用いてもよいし、焼成して金属酸化物粒子としてから目的の用途に用いてもよい。焼成してシリカ粒子としても、粒子は微粒子の状態を維持する。
【0055】
本発明の製造方法で得た複合微粒子は、それ自身が水中で極めて高い分散性を有する。このことは、例えば通常のシリカ微粒子であれば表面シラノール基の存在により、水中で凝集状態をとり易いことと対照的である。本発明の製造方法で得た複合微粒子がこのように高い分散性を備える理由は必ずしも明らかでないが、シリカとともに複合微粒子に含まれるポリマーが粒子表面に何らかの影響を与えている可能性がある。このように、本発明の製造方法で得た複合微粒子は、高い分散性を備え、また上述のように形状の揃った粒子なので、例えば液晶のスペーサ等の用途に好適に用いることができる。
【0056】
<基材の表面に対するコーティング施工方法>
次に、本発明の基材の表面に対するコーティング施工方法(以下、単に「本発明のコーティング施工方法」とも呼ぶ。)の一実施態様を説明する。本発明のコーティング施工方法は、下記式で示す構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマー(以下、単に「ポリマー」とも呼ぶ。)を処理対象である基材の表面に付着させる付着工程と、上記付着工程を経た基材の表面に加水分解性の珪素化合物を接触させることにより、上記基材の表面でゾルゲル反応を生じさせシリカを含む膜を形成させるゾルゲル工程と、を含むことを特徴とする。上記本発明のシリカ含有微粒子の製造方法では、シリカとポリマーとの複合微粒子を水溶液中で生成させたが、本施工方法は、この複合微粒子を基材の表面で生成させ、基材の表面に複合微粒子の集合からなるコーティング膜を施すものである。なお、本発明のコーティング施工方法において用いるポリマー及び加水分解性の珪素化合物については、上記本発明のシリカ含有微粒子の製造方法におけるものと同じなので、ここでの説明を適宜省略する。
【0057】
【化25】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0058】
[付着工程]
コーティングを施される基材は、まず付着工程に付される。この工程は、上記式で示す構造を繰り返し単位中に含み水溶性であるポリマーを処理対象である基材の表面に付着させる工程である。
【0059】
処理対象である基材としては、金属、ガラス、プラスチック、木材、紙等を例示することができるが、特に限定されない。塗布される基材の「表面」とは、平面、凹凸面、曲面等、空間に面したあらゆる表面を挙げることができる。
【0060】
本発明で用いるポリマーは、上記シリカ含有微粒子の製造方法で述べたものと同じである。このため、ポリマーについてのここでの説明を省略する。
【0061】
上記ポリマーを処理対象である基材の表面に付着させるには、ポリマーを溶液としてからその溶液を基材の表面に塗布すればよい。このために用いる溶媒としては、水、アルコール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等、ポリマーを溶解可能な各種の溶媒を挙げることができる。これらの中でも、ポリマーを溶解させる溶媒として水が好ましく挙げられる。ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とするに際しては、塗布可能な粘度であり、かつ基材表面上に十分な量のポリマーを付着させることのできる濃度となるように、ポリマーと溶媒の混合比率を適宜調整すればよい。
【0062】
ポリマーの溶液を基材の表面に塗布する方法としては、刷毛塗り法、スプレーコート法、グラビアコーティング法、浸漬(ディッピング)法、スピンコート法等、公知のものを特に制限無く挙げることができる。
【0063】
ポリマーの溶液を表面に塗布された基材は、乾燥されないまま、又は乾燥された後にゾルゲル工程に付される。
【0064】
[ゾルゲル工程]
ゾルゲル工程は、上記付着工程を経た基材の表面に加水分解性の珪素化合物を接触させることにより、当該基材の表面でゾルゲル反応を生じさせシリカを含む膜を形成させる工程である。既に説明したように、この膜は、シリカと上記ポリマーとを含む複合微粒子が基材の表面に密に集合することにより形成される。
【0065】
加水分解性の珪素化合物は、上記シリカ含有微粒子の製造方法で述べたものと同じである。このため、加水分解性の珪素化合物についてのここでの説明を省略する。
【0066】
加水分解性の珪素化合物は、そのまま又は溶媒に溶解された状態で本工程にて用いられる。なお、ゾルゲル反応を生じさせるには、加水分解性の珪素化合物を加水分解する必要がある。この観点からは、加水分解性の珪素化合物を水溶液として用いるのが好ましい。なお、先の付着工程でポリマーの水溶液を基材表面に塗布し、水分を含んだまま(すなわち乾燥しないまま)本工程での処理を行う場合には、加水分解性の珪素化合物をそのまま用いても差しつかえない。また、加水分解性の珪素化合物は常温で液体であることが多いが、常温で固体の場合には、溶液に溶解させて用いればよい。ゾルゲル反応を行う際の溶液中のpHは中性とする。なお、ここでいう中性とは、pHが6.0〜8.0程度、好ましくはpHが6.5〜7.5程度、より好ましくはpHが7.0であることを意味する。
【0067】
基材の表面に加水分解性の珪素化合物を付着させるには、上記のようにして用意した加水分解性の珪素化合物若しくはその溶液に基材を浸漬させる、又は基材の表面に対して加水分解性の珪素化合物若しくはその溶液を塗布すればよい。これらの浸漬又は塗布は、室温で行うことができる。そして、十分にゾルゲル反応を完了させるために5〜30分程度、浸漬状態又は塗布された状態を維持する。
【0068】
既に述べたように、上記ポリマーは、加水分解性の珪素化合物をゾルゲル反応させるための触媒として機能し、上記ポリマーとシリカとを含む複合微粒子を基材表面に密に形成させる。このようにして形成された複合微粒子は、基材表面におけるコーティング層となる。コーティング層が形成された後、基材表面に残留した余分な加水分解性の珪素化合物を水や、アルコール、アセトン等の有機溶媒で洗浄する。
【0069】
本発明のコーティング施工方法で形成されたコーティング層は、形状の揃ったナノサイズの有機/無機複合微粒子からなり、基材の表面保護、光反射防止、選択的光透過、光干渉、光触媒等の分野において好ましく用いられる。
【0070】
<ゾルゲル反応用触媒>
次に、本発明のゾルゲル反応用触媒の一実施形態について得説明する。本発明のゾルゲル反応用触媒は、下記式で示す部分構造を繰り返し単位中に含み、水溶性のポリマー(以下、単に「ポリマー」とも呼ぶ。)からなる。このゾルゲル反応用触媒は、水が存在する中性の環境において、加水分解性の珪素化合物のゾルゲル反応を促進させる。
【0071】
【化26】
(上記式において、波線を付した単結合は、ポリマーの主鎖又は側鎖中の原子に対して結合する単結合であることを意味する。)
【0072】
ゾルゲル反応は、通常、酸性又は塩基性条件下において、加水分解性の珪素化合物を加水分解させ、これにより生じた水酸基を縮重合させることでシリカを形成させる。このとき、酸や塩基は、加水分解及び縮重合反応における触媒となる。しかしながら、本発明のゾルゲル反応触媒は、中性である上記ポリマーからなり、中性条件下で加水分解性の珪素化合物のゾルゲル反応を促進させる。また、通常、酸性又は塩基性溶液中でゾルゲル反応させると溶液全体がゲル化してしまうが、上記ポリマーをゾルゲル反応触媒として用いると、ゾルゲル反応が局所的に生じてシリカと上記ポリマーとを含む複合微粒子を形成させる。その際、このポリマーが触媒としての役割を担うとともに、粒子形成のテンプレートとしての役割も担うと考えられ、その結果として得られた複合微粒子は、形状の揃ったナノサイズの粒子となる。得られた複合微粒子は、粉末として取り出すことも可能である。これらのことは既に説明した通りである。
【0073】
本発明のゾルゲル反応用触媒となる上記ポリマーは、上記シリカ含有微粒子の製造方法で述べたものと同じである。このため、ポリマーについてのここでの説明は省略する。
【0074】
また、本発明のゾルゲル反応用触媒の基質となる加水分解性の珪素化合物についても既に説明した通りであるのでここでの説明を省略する。
【0075】
本発明のゾルゲル反応用触媒によれば、中性条件下において、加水分解性の珪素化合物をゾルゲル反応させ、シリカと上記ポリマーとが複合されてなり、形状の揃ったナノメートルサイズの複合微粒子に転換することが可能である。なお、ここでいう中性とは、pHが6.0〜8.0程度、好ましくはpHが6.5〜7.5程度、より好ましくはpHが7.0であることを意味する。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の各実施例では、特に指定しない限り、「%」は質量%を意味する。
【0077】
[ポリメチルオキサゾリン(PMOZ)の合成]
100mLの反応容器の内部を窒素置換した後、アセトニトリル30mL、2−メチル−2−オキサゾリン8.0mL、及び開始基材としてp−トルエンスルホン酸メチル0.2gを加え、70℃で24時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈して酢酸エチルに注ぎ、合成されたポリマーを沈殿させた。回収した沈殿物を再度酢酸エチルで洗浄し、室温で24時間減圧乾燥することにより、白色固体のポリメチルオキサゾリン(PMOZ)を得た(収量8.3g)。得られたPMOZのGPCによる重量平均分子量(Mw)は5400、数平均分子量(Mn)は4150、分子量分布(Mw/Mn)は1.30だった。
【0078】
[PMOZ/シリカ複合微粒子の合成(実施例1)]
0.1gのPMOZを50mLの蒸留水に溶解し、その溶液にテトラメトキシシラン(TMOS)2mLを加えた後、室温にて1時間撹拌した。得られた混合物を5分間遠心分離(15000回転)した後、上澄みを除去し、沈殿物を蒸留水で2回、アセトンで2回、遠心分離機にて洗浄し、白色固体のPMOZ/シリカ複合微粒子を得た。室温乾燥後の粉末の収量は0.29gだった。
【0079】
この粉末を熱重量分析した結果を
図1に示す。
図1は、実施例1で得たPMOZ/シリカ複合微粒子の熱重量分析チャートである。
図1に示すように、100℃以下での重量損失(水)が約10%、100〜600℃の間での重量損失(PMOZ相当部分)が約25%、残留分(SiO
2に相当)が65%だった。このことから、PMOZ/シリカ複合微粒子において、乾燥状態におけるシリカ含有量は約72%であることがわかった。以上の結果から、PMOZはテトラメトキシシランのゾルゲル反応を促進させる上で有効な触媒であることが示された。
【0080】
また、実施例1で得たPMOZ/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を
図2に示す。
図2は、実施例1で得たPMOZ/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図2に示すように、実施例1で得られたPMOZ/シリカ複合微粒子は、球状であり、かつその粒径は250nm以下のほぼ単分散性を示した。
【0081】
さらに、実施例1で得たPMOZ/シリカ複合微粒子を600℃にて3時間焼成し、それを走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図3に示す。
図3は、実施例1で得たPMOZ/シリカ複合微粒子を600℃にて3時間焼成した後の粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図3に示すように、PMOZ/シリカ複合微粒子は、焼成してシリカ微粒子となった後も球状を維持し、粒径も250nm以下のままだった。この結果は、PMOZは、アルコキシシランのゾルゲル反応の触媒として機能するだけでなく、球状シリカを析出させるテンプレートとしても機能することを強く示唆するものである。
【0082】
[PEOZ/シリカ複合微粒子の合成(実施例2)]
実施例1におけるPMOZに代えて、市販のポリエチルオキサゾリン(PEOZ、分子量50000)0.1gを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の手順でPEOZ/シリカ複合微粒子の合成を行った。収量は0.27gだった。
【0083】
これを熱重量分析した結果を
図4に示す。
図4は、実施例2で得たPEOZ/シリカ複合微粒子の熱重量分析チャートである。
図4に示すように、100℃以下での重量損失(水)が約10%、100〜600℃の間での重量損失(PEOZ相当部分)が約27%、残留分(SiO
2に相当)が63%だった。このことから、PEOZ/シリカ複合微粒子において、乾燥状態におけるシリカ含有量は約70%であることがわかった。以上の結果から、PEOZはテトラメトキシシランのゾルゲル反応を促進させる上で有効な触媒であることがわかった。
【0084】
また、実施例2で得たPEOZ/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図5に示す。
図5は、実施例2で得たPEOZ/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図5に示すように、実施例2で得られたPEOZ/シリカ複合微粒子は、球状ではあるものの、その径は1μmほどと大きく、形状は不均一で部分的に凝集も大きい結果だった。
【0085】
さらに、実施例2で得たPEOZ/シリカ複合微粒子を600℃にて3時間焼成し、それを走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図6に示す。
図6は、実施例2で得たPEOZ/シリカ複合微粒子を600℃にて3時間焼成した後の粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図6に示すように、PEOZ/シリカ複合微粒子は、焼成してシリカ微粒子となった後でも球状は維持されていたものの、凝集部分の粒子サイズは250nm前後となり、焼成前と比べて小さくなっていた。このことから、PEOZは、ゾルゲル反応の触媒として用いることが可能であるが、球状シリカを析出させるためのテンプレートとしての機能は、PMOZに比べて劣ることがわかった。
【0086】
[PNIPAM/シリカ複合微粒子の合成(実施例3)]
実施例1におけるPMOZに代えて、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM、重量平均分子量35000)0.1gを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の手順でPNIPAM/シリカ複合微粒子の合成を行った。収量は0.17gだった。
【0087】
これを熱重量分析した結果を
図7に示す。
図7は、実施例3で得たPNIPAM/シリカ複合微粒子の熱重量分析チャートである。
図7に示すように、100℃以下での重量損失(水)が約10%、100〜600℃の間での重量損失(PNIPAM相当部分)が約19%、残留分(SiO
2に相当)が71%だった。このことから、PNIPAM/シリカ複合微粒子において、乾燥状態におけるシリカ含有量は約79%であることがわかった。以上の結果から、PNIPAMはテトラメトキシシランのゾルゲル反応を促進させる上で有効な触媒であることがわかった。
【0088】
また、実施例3で得たPNIPAM/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図8に示す。
図8は、実施例3で得たPNIPAM/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図8に示すように、実施例3で得られたPNIPAM/シリカ複合微粒子は、球状ではあるものの、粒子径にはばらつきがあり、その径は多くが500nm以上と大きかった。
【0089】
[PVP/シリカ複合微粒子の合成(実施例4)]
実施例1におけるPMOZに代えて、市販のポリビニルピロリドン(PVP、重量平均分子量50000)0.1gを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の手順でPVP/シリカ複合微粒子の合成を行った。収量は0.21gだった。
【0090】
これを熱重量分析した結果を
図9に示す。
図9は、実施例4で得たPVP/シリカ複合微粒子の熱重量分析チャートである。
図9に示すように、100℃以下での重量損失(水)が約10%、100〜600℃の間での重量損失(PVP相当部分)が約38%、残留分(SiO
2に相当)が52%だった。このことから、PVP/シリカ複合微粒子において、乾燥状態におけるシリカ含有量は約58%であることがわかった。以上の結果から、PVPはテトラメトキシシランのゾルゲル反応を促進させる上で有効な触媒であることがわかった。
【0091】
また、実施例4で得たPVP/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図10に示す。
図10は、実施例4で得たPVP/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図10に示すように、実施例4で得られたPVP/シリカ複合微粒子では、球状粒子の他に、不規則な形状の粒子が多く混ざっていた。このことから、PVPは、ゾルゲル反応触媒としては有用であるものの、球状シリカを析出させるためのテンプレートとしての機能は不十分であることがわかった。
【0092】
[マクロ開始剤のPMMA−r−PCMSの合成]
【化27】
【0093】
100mLの反応容器にメチルメタクリレート(MMA)13.1g(131mmol)、クロロメチルスチレン(CMS)2.00g(13.1mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.123g(0.749mmol)及び1,4−ジオキサン100gを加えた。その後、室温で窒素を流し込みながら30分間撹拌し、さらに80℃で24時間撹拌した。撹拌しながら冷却した後、良溶媒としてテトラヒドロキシフラン(THF)、貧溶媒としてメタノールを用いて沈殿精製を行い、10分間撹拌した後、得られた沈殿物を濾別した。同様の操作を3回繰り返した。その後、減圧乾燥を経て、9.79gの白色固体のランダム共重合体PMMA−r−PCMSを得た。得られたポリマーのGPCによる重量平均分子量(Mw)は54600、数平均分子量(Mn)は28700、分子量分布(Mw/Mn)は1.9だった。また、この共重合体のMMAとCMSの組成比は概ね9:1だった。
【0094】
[PMMA−r−PCMSを開始剤とするポリメチルオキサゾリンの合成]
【化28】
【0095】
50mLの反応容器にPMMA−r−PCMS1.37g(47.8μmol)及びヨウ化カリウム0.435g(2.62mmol)を加え、窒素置換をした後、脱水ジメチルアセトアミド(DMA)30mLを加えて常温で撹拌した。その後、2−メチル−2−オキサゾリン3.30mL(38.0mmol)を加え、85℃で24時間撹拌した。室温で放冷後、良溶媒としてメタノール、貧溶媒としてジエチルエーテルを用いて沈殿精製を行い、5分間撹拌した後、得られた沈殿物を遠心分離により回収した。同様の操作を3回繰り返した。その後、減圧乾燥して、淡黄色固体のPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)を得た。構造確認は
1H−NMRで行った。反応溶液の
1H−NMRより残留モノマーとポリマーとの存在比から転化率を算出し、その転化率からPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)におけるポリメチルオキサゾリン(PMOZ)ブラシの平均重合度が約30になると見積もられた。各種同定データは次の通りである。
【0096】
【化29】
【0097】
数平均分子量Mn(H
1−NMR)=97697
収量:4.28g(収率90.8%)
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS):δ(ppm)3.9〜3.0(br,t:H
a:4H),3.8〜3.3,3.1〜2.5(br,s:H
b:3H),2.4〜2.0(br,s:H
c:3H)
【0098】
[PMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)/シリカ複合微粒子の合成(実施例5)]
スクリュー管に撹拌子と蒸留水9.5mLを加え、そこへPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)10mgのジメチルホルムアミド(DMF)溶液(0.5mL)をゆっくりと撹拌しながら滴下した後、撹拌を止めて室温で一晩放置した。その溶液に、テトラメトキシシラン(TMOS)0.2mLを加え、室温で2時間撹拌した。得られた固体を遠心分離機(13000rpm、10分間)で回収し、水で3回、アセトンで1回洗浄した。その後、減圧乾燥させ、PMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)/シリカ複合微粒子を得た。収量は23mgだった。また、この複合微粒子の熱重量分析によるシリカ含有量は66%だった。
【0099】
実施例5で得たPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図11に示す。
図11は、実施例5で得たPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)/シリカ複合微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
図11に示すように、実施例5の複合微粒子は、実施例1や2等と異なり、粒径が25nm前後で極めて小さかった。このことは、ゾルゲル反応触媒として用いたPMMA−r−P(CMS−g−PMOZ)が水性媒体中でナノミセルを形成し、そのミセル表面のPMOZ層が触媒として働き、シリカをデポジットさせた結果によるものと推測された。