【課題】脱水素触媒の触媒活性を十分に維持しつつ、脱水素触媒上に堆積したコークを効率良く除去することによって、プロセス全体の効率化を実現することが可能な、不飽和炭化水素の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルカン及びオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種の炭化水素を含む原料ガスを、第14属金属元素及びPtを含む脱水素触媒に接触させて、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を含む生成ガスを得る脱水素工程と、脱水素工程を経た脱水素触媒に、310〜450℃の温度条件下で、分子状酸素を含む再生ガスを接触させる再生工程と、を備える、不飽和炭化水素の製造方法。
アルカン及びオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種の炭化水素を含む原料ガスを、第14属金属元素及びPtを含む脱水素触媒に接触させて、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を含む生成ガスを得る脱水素工程と、
前記脱水素工程を経た前記脱水素触媒に、310〜450℃の温度条件下で、分子状酸素を含む再生ガスを接触させる再生工程と、
を備える、不飽和炭化水素の製造方法。
請求項6に記載の再生方法で再生された脱水素触媒を用いてアルカンの脱水素反応を行い、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を得る工程を備える、不飽和炭化水素の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係る脱水素触媒の製造方法は、アルカン及びオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種の炭化水素を含む原料ガスを、第14属金属元素及びPtを含む脱水素触媒に接触させて、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を含む生成ガスを得る脱水素工程と、脱水素工程を経た脱水素触媒に、310〜450℃の温度条件下で、分子状酸素を含む再生ガスを接触させる再生工程と、を備える。
【0020】
本実施形態に係る製造方法では、脱水素工程において不飽和炭化水素を得つつ、再生工程において使用済みの脱水素触媒を効率良く再生することができる。再生工程で再生された脱水素触媒は、脱水素工程に再利用してよく、他の工程に利用してもよい。
【0021】
本実施形態において、原料ガスは、アルカン及びオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種の炭化水素を含む。原料ガスがアルカンを含む場合、脱水素工程は、アルカンの脱水素反応により、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を得る工程であってよい。また、原料ガスがオレフィンを含む場合、脱水素工程は、オレフィンの脱水素反応により、共役ジエンを得る工程であってよい。原料ガスは、アルカン及びオレフィンのうちいずれか一方を含むものであってよく、両方を含むものであってもよい。
【0022】
原料ガスに含まれる炭化水素の炭素数は、目的とする不飽和炭化水素の炭素数と同じであってよい。アルカンの炭素数は、2以上であればよく、例えば3以上であってよく、4以上であってもよい。また、アルカンの炭素数は、例えば10以下であってよく、6以下であってもよい。オレフィンの炭素数は、4以上であればよい。また、オレフィンの炭素数は、例えば10以下であってよく、6以下であってもよい。
【0023】
アルカンは、例えば、鎖状であってよく、環状であってもよい。鎖状アルカンとしては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等が挙げられる。より具体的には、直鎖状アルカンとしては、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等が挙げられる。また、分岐状アルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2、3−ジメチルペンタン、イソヘプタン、イソオクタン、イソデカン等が挙げられる。環状アルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。原料ガスは、アルカンを一種含むものであってよく、二種以上含むものであってもよい。
【0024】
オレフィンは、例えば、鎖状であってよく、環状であってもよい。鎖状のオレフィンは、例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン及びデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。鎖状のオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。直鎖状のオレフィンは、例えば、n−ブテン、n−ペンテン、n−ヘキセン、n−ヘプテン、n−オクテン、n−ノネン及びn−デセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。分岐状のオレフィンは、例えば、イソペンテン、2−メチルペンテン、3−メチルペンテン、2、3−ジメチルペンテン、イソヘプテン、イソオクテン、イソノネン及びイソデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。原料ガスは、上記オレフィンの一種を単独で含むものであってよく、二種以上を含むものであってもよい。
【0025】
原料ガスにおいて、炭化水素の分圧は1.0MPa以下としてよく、0.1MPa以下としてもよく、0.01MPa以下としてもよい。原料ガスの炭化水素分圧を小さくすることで炭化水素の転化率が一層向上しやすくなる。
【0026】
また、原料ガスにおける炭化水素の分圧は、原料流量に対する反応器サイズを小さくする観点から、0.001MPa以上とすることが好ましく、0.005MPa以上とすることがより好ましい。
【0027】
原料ガスは、窒素、アルゴン等の不活性ガスを更に含有していてもよい。また、原料ガスは、スチームを更に含有していてもよい。
【0028】
原料ガスがスチームを含有するとき、スチームの含有量は、炭化水素に対して1.0倍モル以上とすることが好ましく、1.5倍モル以上とすることがより好ましい。スチームを原料ガスに含有させることで、触媒の活性低下が抑制される場合がある。なお、スチームの含有量は、例えば、炭化水素に対して50倍モル以下であってよく、好ましくは10倍モル以下である。
【0029】
原料ガスは、上記以外に水素、酸素、一酸化炭素、炭酸ガス、ジエン類等の他の成分を更に含有していてもよい。
【0030】
本実施形態において、生成ガスは、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を含む。オレフィン及び共役ジエンの炭素数は、いずれも原料ガス中の炭化水素の炭素数と同じであってよい。例えば、生成ガスに含まれるオレフィンの炭素数は、2以上であってよく、3以上であってもよく、4以上であってもよい。また、生成ガスに含まれるオレフィンの炭素数は、例えば10以下であってよく、6以下であってもよい。また、生成ガスに含まれる共役ジエンの炭素数は、例えば4〜10であってよく、4〜6であってもよい。
【0031】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられ、これらはいずれの異性体であってもよい。共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1,3−ノナジエン、1,3−デカジエン等が挙げられる。生成ガスは、不飽和炭化水素を一種含むものであってよく、二種以上の不飽和炭化水素を含むものであってよい。例えば、生成ガスは、オレフィン及び共役ジエンを含むものであってよい。
【0032】
以下に、本実施形態における脱水素触媒について詳述する。
【0033】
脱水素触媒は、第14属金属元素及びPtを含む固体触媒である。脱水素触媒は、例えば、担体に、第14属金属元素及びPtを含む担持金属を担持させた触媒であってよい。
【0034】
担体は、無機酸化物担体であることが好ましい。無機酸化物担体としては、例えば、アルミナ、アルミナマグネシア、マグネシア、チタニア、シリカ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、フェライト、スピネル型構造物(マグネシウムスピネル、鉄スピネル、亜鉛スピネル、マンガンスピネル)等の無機酸化物を含む担体が挙げられる。
【0035】
担体としては、アルミニウム(Al)を含む担体が好ましい。担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で25質量%以上であってよく、50質量%以上であることが好ましい。
【0036】
担体は、スピネル型構造を有するスピネル型構造体、例えばマグネシウムスピネル(MgAl
2O
4)であることが好ましい。これにより、担体の酸性度が小さくなり、炭素析出が抑制されるという効果が奏される。
【0037】
脱水素触媒には、第14族金属元素及びPtを含む担持金属が担持されている。第14族金属元素は、Ge、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、Snであることが好ましい。
【0038】
脱水素触媒は、アルカンを原料とする脱水素反応の触媒として、好適に利用することができる。この脱水素反応では、アルカンから、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも1種の不飽和炭化水素が得られる。
【0039】
また、脱水素触媒は、オレフィンを原料とする脱水素反応の触媒としても好適に利用することができる。この脱水素反応では、オレフィンから共役ジエンが得られる。
【0040】
アルカンを原料とする脱水素反応用とする場合、脱水素触媒における第14属金属元素の担持量は、例えば、脱水素触媒の全質量基準で1質量%以上であってよく、1.3質量%以上であることが好ましく、9質量%以下であってよく、7質量%以下であることが好ましい。このような担持量とすることで、アルカンを原料とする脱水素反応における脱水素能が向上するとともに、該脱水素反応におけるコークの析出を抑制して触媒の長寿命化を図ることができる。
【0041】
オレフィンを原料とする脱水素反応用とする場合、脱水素触媒における第14属金属元素の担持量は、例えば、脱水素触媒の全質量基準で5質量%以上であってよく、7質量%以上であることが好ましく、25質量%以下であってよく、18質量%以下であることが好ましい。このような担持量とすることで、オレフィンを原料とする脱水素反応における脱水素能が向上するとともに、該脱水素反応におけるコークの析出を抑制して触媒の長寿命化を図ることができる。
【0042】
脱水素触媒におけるPtの担持量は、例えば、脱水素触媒の全質量基準で0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であることが好ましい。これにより脱水素触媒の触媒活性が一層向上する。また、脱水素触媒におけるPtの担持量は、例えば、脱水素触媒の全質量基準で5質量%以下であってよく、2質量%以下であることが好ましい。これにより脱水素触媒においてPtの分散性が向上し、担持量当たりの活性が向上する傾向がある。
【0043】
なお、脱水素触媒における第14属金属元素及びPtの担持量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法により測定できる。測定では、試料溶液を霧状にしてArプラズマに導入し、励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光し、その波長から元素の定性を行い、その強度から元素の定量を行う。
【0044】
脱水素触媒では、第14属金属元素とPtとが相互作用していてよく、例えば合金を形成していてよい。これにより脱水素触媒の耐久性が向上する傾向がある。
【0045】
脱水素触媒は、上述のように、アルカンを原料とする脱水素反応用の触媒、又は、オレフィンを原料とする脱水素反応用の触媒として、好適に用いることができる。なお、脱水素触媒は、これら以外の用途に用いることもでき、例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸等の含酸素化合物の脱水素反応用の触媒、脱水素反応の逆反応である水素化反応用の触媒等として、用いることもできる。後述する再生工程で再生された脱水素触媒は、これらのいずれの反応に適用してもよい。
【0046】
脱水素触媒は、還元処理を施してから反応に使用してよい。還元処理は、例えば、還元ガス雰囲気下、40〜600℃に脱水素触媒を保持することで行うことができる。保持時間は、例えば0.05〜24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等であってよい。
【0047】
脱水素触媒は、成形性を向上させる観点から、成形助剤を更に含有していてもよい。成形助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水材、可塑剤、バインダー原料等であってよい。
【0048】
脱水素触媒の形状は特に限定されず、例えば、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
【0049】
脱水素触媒の製造方法に関し、担体へ担持金属を担持させる方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法が挙げられる。
【0050】
本実施形態では、例えば、担体に第14属金属元素を担持させた後に、Ptを担持させてよい。また、担体にPtを担持させた後に、第14属金属元素を担持させてもよい。また、担体に第14属金属元素とPtとを同時に担持させてもよい。
【0051】
担体に担持金属を担持させる方法として、例えば、担持金属を含む金属源を溶解させた溶液を準備し、担体にこの溶液を含浸させ、乾燥及び焼成することで、担体に第14属金属元素を担持させる方法が挙げられる。
【0052】
担持金属を含む金属源は、例えば、金属塩又は錯体であってよい。担持金属の金属塩は、例えば、無機塩、有機酸塩又はこれらの水和物であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩等であってよい。有機酸塩は、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩等であってよい。また、担持金属の錯体は、例えば、アルコキシド錯体、アンミン錯体等であってよい。
【0053】
金属源としては、塩素原子を含まない金属源が好適に用いられる。塩素原子を含まない金属源を用いて第14属金属元素及びPtを担体に担持させた脱水素触媒は、再生工程における触媒活性の低下がより顕著に抑制される傾向がある。
【0054】
例えば、塩素原子を含まず、第14属金属元素を含む金属源としては、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、硫酸スズ、酸化スズ、シュウ酸スズ、酢酸スズ、メタ錫酸、塩化スズ等が挙げられる。
【0055】
また、塩素原子を含まず、Ptを含む金属源としては、例えば、テトラアンミン白金(II)酸、テトラアンミン白金(II)酸塩(例えば、硝酸塩等)、テトラアンミン白金(II)酸水酸化物溶液、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸硝酸溶液、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸エタノールアミン溶液等が挙げられる。
【0056】
次いで、本実施形態における脱水素工程について詳述する。
【0057】
脱水素工程は、原料ガスを脱水素触媒に接触させて炭化水素の脱水素反応を行い、不飽和炭化水素を含む生成ガスを得る工程である。
【0058】
脱水素工程は、例えば、脱水素触媒を充填した反応器を用い、当該反応器に原料ガスを流通させることにより実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0059】
脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点からは固定床式が好ましい。
【0060】
脱水素反応の反応温度、すなわち反応器内の温度は、反応効率の観点から300〜800℃であってよく、500〜700℃であってよい。反応温度が500℃以上であれば、不飽和炭化水素の生成量が一層多くなる傾向がある。反応温度が700℃以下であれば、高い活性がより長期にわたって維持される傾向がある。
【0061】
反応圧力、すなわち反応器内の気圧は0.01〜1MPaであってよく、0.05〜0.8MPaであってよく、0.1〜0.5MPaであってよい。反応圧力が上記範囲にあると、脱水素反応がより進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
【0062】
脱水素工程を、原料ガスを連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、重量空間速度(以下、「WHSV」という。)は、0.1h
−1以上であってよく、1.0h
−1以上であってもよく、100h
−1以下であってよく、30h
−1以下であってもよい。ここで、WHSVとは、連続式の反応装置における、脱水素触媒の質量Wに対する原料ガスの供給速度(供給量/時間)Fの比(F/W)である。なお、原料ガス及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、WHSVは上記範囲に限定されるものではない。
【0063】
脱水素工程では、反応器に2種以上の触媒が充填されていてもよい。
【0064】
例えば、本実施形態では、反応器に、アルカンからオレフィンへの脱水素反応の触媒活性に優れる第一の脱水素触媒と、オレフィンから共役ジエンへの脱水素反応の触媒活性に優れる第二の脱水素触媒とが充填されていてよい。この態様では、原料ガスをアルカンを含むものとし、アルカンから効率良く共役ジエンを得ることができる。
【0065】
本実施形態では、第一の脱水素触媒及び第二の脱水素触媒の少なくとも一方が、上述した脱水素触媒であればよく、他方は他の脱水素触媒であってよい。他の脱水素触媒としては、例えば、貴金属触媒、Fe及びKを含有する触媒、Mo等を含有する触媒等が挙げられる。
【0066】
また、本実施形態では、第一の脱水素触媒及び第二の脱水素触媒の両方が上述した脱水素触媒であってもよい。このとき、第一の脱水素触媒及び第二の脱水素触媒のいずれか一方が後述の再生工程に供されてよく、両方が後述の再生工程に供されてもよい。
【0067】
次いで、本実施形態における再生工程について詳述する。
【0068】
再生工程では、脱水素工程で用いられた脱水素触媒に、310〜450℃の温度条件下で、分子状酸素を含む再生ガスを接触させる工程である。
【0069】
再生ガスは、分子状酸素を含んでいればよく、例えば、酸素ガスと不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等)との混合ガスであってよく、空気であってもよい。
【0070】
再生ガス中の分子状酸素の濃度は特に限定されないが、例えば0.05体積%以上であってよく、0.1体積%以上であってよく、0.5体積%以上であってもよい。再生ガス中の分子状酸素の濃度を高くすることで、触媒上のコーク燃焼に要する時間が短くなる傾向がある。また、再生ガス中の分子状酸素の濃度は、例えば20体積%以下であってよく、10体積%以下であってよく、5体積%以下であってもよい。
【0071】
再生時の温度条件は、好ましくは310℃以上であり、より好ましくは330℃以上である。また、再生時の温度条件は、好ましくは450℃以下であり、より好ましくは430℃以下である。
【0072】
再生工程に供される脱水素触媒には、コークが堆積されている。再生前のコークの堆積量は、例えば脱水素触媒100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよい。また、再生前のコークの堆積量は、例えば脱水素触媒100質量部に対して、20質量部以下であってよく、10質量部以下であってもよい。
【0073】
再生工程では、脱水素触媒上に堆積したコークが燃焼により除去される。再生後のコークの堆積量は、例えば脱水素触媒100質量部に対して、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0質量部であることが特に好ましい。
【0074】
再生後の脱水素触媒は、例えば、アルカンを原料とする脱水素反応用の触媒、又は、オレフィンを原料とする脱水素反応用の触媒として、好適に用いることができる。また、再生後の脱水素触媒は、例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸等の含酸素化合物の脱水素反応用の触媒、脱水素反応の逆反応である水素化反応用の触媒等としても用いることができる。
【0075】
再生後の脱水素触媒は、上述した脱水素工程に再利用されてよい。また、再生後の脱水素触媒は、上述した脱水素工程以外の工程に利用されてもよい。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記では、不飽和炭化水素の製造方法として本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
本発明の一側面は、炭化水素の脱水素反応に使用された脱水素触媒を再生する再生方法であってよい。この再生方法は、上述した再生工程によって脱水素触媒を再生する方法であってよい。
【0078】
本発明の他の一側面は、上記再生方法で再生された脱水素触媒を用いてアルカンの脱水素反応を行い、オレフィン及び共役ジエンからなる群より選択される少なくとも一種の不飽和炭化水素を得る脱水素工程を備える、不飽和炭化水素の製造方法であってよい。この製造方法における脱水素工程は、脱水素触媒として再生後の脱水素触媒を用いること以外は、上述した脱水素工程と同様であってよい。
【0079】
本発明の更に他の一側面は、上記再生方法で再生された脱水素触媒を用いてオレフィンの脱水素反応を行い、共役ジエンを得る脱水素工程を備える、不飽和炭化水素の製造方法であってよい。この製造方法における脱水素工程は、脱水素触媒として再生後の脱水素触媒を用いること以外は、上述した脱水素工程と同様であってよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例A−1)
<脱水素触媒A−1の調製>
市販のγ−アルミナ(水澤化学工業製、ネオビードGB−13)20.0gと、硝酸マグネシウム六水和物(和光純薬工業製、Mg(NO
3)
2・6H
2O)25.1gを水(約150ml)に溶解した水溶液とを混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、続けて800℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物と、硝酸マグネシウム六水和物(和光純薬工業製、Mg(NO
3)
2・6H
2O)25.1gを水(約150ml)に溶解した水溶液とを混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、続けて800℃で3時間焼成を行った。これにより、スピネル型構造を有するアルミナ−マグネシア担体を得た。なお、得られたアルミナ−マグネシア担体は、X線回折測定により、2θ=36.9、44.8、59.4、65.3degにMgスピネルに由来する回折ピークが確認された。
【0082】
上記アルミナ−マグネシア担体10.0gに対し、ジニトロジアンミン白金(II)の硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH
3)
2(NO
2)
2]/HNO
3)を用いて、白金担持量が約1質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。次いで、スズ酸ナトリウム(昭和化工製、Na
2SnO
3・3H
2O)0.62gを約30mlの水に溶解した水溶液と混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、脱水素触媒A−1を得た。
【0083】
<脱水素反応試験(1)>
1.0gの脱水素触媒A−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は52%であった。
【0084】
<再生試験>
1.0gの脱水素触媒A−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、450℃にて40分間の水素還元した後、反応温度570℃、常圧にて1−ブテンを4.5g/h、窒素を20cc/minで30分間フィードした。その後、窒素に切り替えて450℃まで降温した後、空気と窒素の混合ガスを90分間流して再生を行った。この操作を5回繰り返した後の脱水素触媒A−1のコーク量を熱重量天秤にて測定した。なお、熱重量天秤で窒素下300℃、10分間保持した後、空気下で600℃に昇温して10分間保持した後の重量(W)に対する、空気下で減少した重量(w)の比率をコーク量(%)とした。再生後の脱水素触媒A−1のコーク量は0%であった。
【0085】
<脱水素反応試験(2)>
再生試験後の脱水素触媒A−1を0.9g取り、内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は43%であった。また、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率の比は、0.83であった。
【0086】
(実施例A−2)
再生試験における再生温度を400℃に変更したこと以外は、実施例A−1と同様にして、再生試験及び脱水素反応試験(2)を行った。脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率は52%であり、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する比は1.0であった。
【0087】
(比較例a−1)
再生試験における再生温度を550℃に変更したこと以外は、実施例A−1と同様にして、再生試験及び脱水素反応試験(2)を行った。脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率は26%であり、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する比は0.50であった。
【0088】
(比較例a−2)
再生試験における再生温度を500℃に変更したこと以外は、実施例A−1と同様にして、再生試験及び脱水素反応試験(2)を行った。脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率は34%であり、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する比は0.65であった。
【0089】
(比較例a−3)
再生試験における再生温度を300℃に変更したこと以外は実施例A−1と同様にして再生試験を行ったが、脱水素触媒上にコークの堆積が確認され、コークを十分に除去できなかった。
【0090】
(実施例B−1)
<脱水素触媒B−1の調製>
市販のγ−アルミナ(水澤化学工業製、ネオビードGB−13)10.0gと、スズ酸ナトリウム(昭和化工製、Na
2SnO
3・3H
2O)1.65gを約50mlの水に溶解した水溶液とを混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。次いで、テトラアンミン白金(II)硝酸塩の水溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2)を用いて、白金担持量が約1質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、脱水素触媒B−1を得た。
【0091】
<脱水素反応試験(1)>
1.0gの脱水素触媒B−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は59%であった。
【0092】
<再生試験>
1.0gの脱水素触媒B−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、450℃にて40分間の水素還元した後、反応温度570℃、常圧にて1−ブテンを4.5g/h、窒素を20cc/minで30分間フィードした。その後、窒素に切り替えて400℃まで降温した後、空気と窒素の混合ガスを90分間流して再生を行った。この操作を5回繰り返した後の脱水素触媒B−1のコーク量を熱重量天秤にて測定したところ、コーク量は0%であった。
【0093】
<脱水素反応試験(2)>
再生試験後の脱水素触媒B−1を0.9g取り、内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は48%であった。また、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率の比は、0.81であった。
【0094】
(実施例C−1)
<脱水素触媒C−1の調製>
実施例A−1と同様にしてアルミナ−マグネシア担体を調製した。得られたアルミナ−マグネシア担体3.0gに、79.6mgのH
2PtCl
6・2H
2Oを16mLの水に溶解させた水溶液を加えた。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaAで30分間撹拌し、40℃、常圧で30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間焼成した。得られた固体に0.311gのSnCl
2・2H
2Oを20mLのEtOHに溶解させた溶液を加えた。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、常圧で1時間撹拌し、その後減圧下でEtOHを除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間焼成した。更に550℃で2時間の水素還元を行い、脱水素触媒C−1を得た。
【0095】
<脱水素反応試験(1)>
1.0gの脱水素触媒C−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は60%であった。
【0096】
<再生試験>
1.0gの脱水素触媒C−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、450℃にて40分間の水素還元した後、反応温度570℃、常圧にて1−ブテンを4.5g/h、窒素を20cc/minで30分間フィードした。その後、窒素に切り替えて400℃まで降温した後、空気と窒素の混合ガスを90分間流して再生を行った。この操作を5回繰り返した後の脱水素触媒C−1のコーク量を熱重量天秤にて測定したところ、コーク量は0%であった。
【0097】
<脱水素反応試験(2)>
再生試験後の脱水素触媒C−1を0.9g取り、内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度550℃、常圧にてブタンの脱水素反応を行った。原料にはブタンを用い、原料ガス組成はブタン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブタン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は39%であった。また、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率の比は、0.65であった。
【0098】
(実施例D−1)
<脱水素触媒D−1の調製>
実施例A−1と同様にしてアルミナ−マグネシア担体を調製した。得られたアルミナ−マグネシア担体10.0gに対し、スズ酸ナトリウム(昭和化工製、Na
2SnO
3・3H
2O)3.7gを約100mlの水に溶解した水溶液を混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。次いで、ジニトロジアンミン白金(II)の硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH
3)
2(NO
2)
2]/HNO
3)を用いて、白金担持量が約1質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、脱水素触媒D−1を得た。
【0099】
<脱水素反応試験(1)>
1.0gの脱水素触媒D−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度600℃、常圧にてブテンの脱水素反応を行った。原料には2−ブテン(trans−2−ブテンとcis−2−ブテンの混合物)を用い、原料ガス組成は2−ブテン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブテン転化率を求めた。その結果、ブテン転化率は38%であった。
【0100】
<再生試験>
1.0gの脱水素触媒D−1を内径10mmφの流通式リアクターに充填し、450℃にて40分間の水素還元した後、反応温度600℃、常圧にて1−ブテンを4.5g/hで60分間フィードした。その後、窒素に切り替えて400℃まで降温した後、空気と窒素の混合ガスを90分間流して再生を行った。この操作を5回繰り返した後の脱水素触媒D−1のコーク量を熱重量天秤にて測定したところ、コーク量は0%であった。
【0101】
<脱水素反応試験(2)>
再生試験後の脱水素触媒D−1を0.9g取り、内径10mmφの流通式リアクターに充填し、550℃にて3時間の水素還元した後、反応温度600℃、常圧にてブテンの脱水素反応を行った。原料には2−ブテン(trans−2−ブテンとcis−2−ブテンの混合物)を用い、原料ガス組成は2−ブテン:窒素:水=1.0:5.3:3.2(モル比)とした。WHSVは、1.0h
−1とした。反応開始から4時間後に、それぞれ生成ガスを採取し、ガスクロマトグラフ(Agilent社GC−6850、FID+TCD検出器)にて分析し、ブテン転化率を求めた。その結果、ブタン転化率は38%であった。また、脱水素反応試験(1)におけるブタン転化率に対する脱水素反応試験(2)におけるブタン転化率の比は、1.0であった。