【解決手段】皮膚用組成物は、(A)トレハロース、キシロース、キシリトール及びマルチトールから選ばれた一種又は二種以上、(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール、(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシルが配合されたものであり、皮膚処理方法は、その皮膚用組成物を使用するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る皮膚用組成物は、下記成分(A)、(B)及び(C)が配合されたものである。また、当該組成物の使用上許容されるのであれば、公知の皮膚用組成物、又は、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を、更に配合しても良い。
(A)トレハロース、キシロース、キシリトール及びマルチトールから選ばれた一種又は二種以上
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール
(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシル
【0015】
本実施形態の皮膚用組成物を使用する際、塗布対象となる皮膚は、特に限定されない。例えば、スカルプケアの対象となる頭皮、スキンケアの対象となる顔の皮膚である。
【0016】
頭皮に本実施形態の皮膚用組成物を塗布する場合、ヘアドライヤーの熱に曝されやすい頭皮は熱変性する可能性が高いものの、上記成分(A)及び(B)の配合により、その熱変性の抑制を期待できる。
【0017】
また、毛髪及び頭皮に本実施形態の皮膚用組成物を塗布する場合、成分(A)及び(B)の配合が、損傷した毛髪の補修、及び熱処理などで受ける損傷の抑制に適する。
【0018】
本実施形態の皮膚用組成物において、成分(A)の配合量は、成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールの配合量よりも多いと良い。この配合量関係であると、毛髪にも塗布する場合に、毛髪の損傷抑制と毛髪の補修により適する。成分(B)の配合量に対する成分(A)の配合量である「成分(A)の配合量/成分(B)の配合量」は、1.5以上が良く、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。一方で、「成分(A)の配合量/成分(B)の配合量」の上限は、例えば5.0である。
【0019】
上記成分(A)の配合量は、本実施形態の皮膚用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。毛髪にも塗布する場合に、0.03質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の皮膚用組成物の低コスト化を図れる。
【0020】
本実施形態の皮膚用組成物において、前記成分(A)としてトレハロースが配合されたものが良い。毛髪にも塗布する場合に、トレハロースは、毛髪の補修、毛髪の損傷抑制のために好適な成分である。
【0021】
本実施形態の皮膚用組成物において、成分(A)であるトレハロースの配合量は、成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールの配合量よりも多いと良い。この配合量関係であると、毛髪にも塗布する場合に、毛髪の損傷抑制と毛髪の補修により適する。成分(B)の配合量に対するトレハロースの配合量である「成分(a)の配合量/成分(B)の配合量」は、1.5以上が良く、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。一方で、「成分(a)の配合量/成分(B)の配合量」の上限は、例えば5.0である。
【0022】
上記トレハロースの配合量は、本実施形態の皮膚用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。毛髪にも塗布する場合に、0.03質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の皮膚用組成物の低コスト化を図れる。
【0023】
本実施形態の皮膚用組成物には、上記の通り、(B)酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコールが配合される。このポリエチレングリコールを配合することで、公知の通り、皮膚や毛髪の保湿感などを付与できる。また、平均付加モル数が6以上であると、平均付加モル数が6未満のポリエチレングリコールと比べて、毛髪にも塗布する場合に、優れた毛髪の損傷抑制および毛髪補修が可能となる。
【0024】
上記成分(B)であるポリエチレングリコールにおいて、酸化エチレンの平均付加モル数は、12以上が良く、16以上が好ましい。毛髪にも塗布する場合に、平均付加モル数が12以上であれば、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れる。
【0025】
上記の平均付加モル数は、例えば400以下であり、100以下が良く、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。毛髪にも塗布する場合に、平均付加モル数が小さい程、毛髪表面のみならず、内部の損傷抑制および毛髪補修が可能となる。
【0026】
上記成分(B)としては、例えば、PEG−6、PEG−8、PEG−12、PEG−16、PEG−20、PEG−30、PEG−32、PEG−40、PEG−60、PEG−75、PEG−90、PEG−150、PEG−180、PEG−220、PEG−240、PEG−400、PEG−450が挙げられる(上記において、「PEG」は、ポリエチレングリコールを意味し、「PEG−」に続く整数は、ポリエチレングリコールにおける酸化エチレンの平均付加モル数を表す。)。
【0027】
本実施形態の皮膚用組成物には、成分(B)であるポリエチレングリコールから選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。当該皮膚用組成物における成分(B)の配合量は、0.01質量%以上0.2質量%以下が良く、0.01質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。毛髪にも塗布する場合に、成分(B)の配合量が0.01質量%以上であると、毛髪の損傷抑制および毛髪補修がより優れ、0.2質量%以下であると、成分(B)の配合で生じる毛髪の感触への影響が低く抑えられる。
【0028】
本実施形態の皮膚用組成物は、上記の通り、(C)イソノナン酸イソトリデシル及び/又はイソノナン酸イソデシルが配合される。毛髪にも塗布する場合に、毛髪補修の観点から、イソノナン酸イソトリデシルが配合されたものが好ましい。
【0029】
上記成分(C)の配合量は、本実施形態の皮膚用組成物において、0.03質量%以上5質量%以下が良く、0.04質量%以上3質量%以下が好ましく、0.07質量%以上1質量%以下がより好ましい。毛髪にも塗布する場合に、0.03質量%以上であると、毛髪の補修がより優れる。5質量%以下であると、本実施形態の皮膚用組成物の低コスト化を図れる。
【0030】
本実施形態の皮膚用組成物には、上記の通り、公知の皮膚用組成物、又は、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を更に配合しても良い。その原料としては、当該組成物の用途に応じて適宜選定され、例えば、水、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、エステル油、シリコーン、高分子化合物である。
【0031】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。皮膚用組成物にノニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物におけるノニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0032】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。皮膚用組成物にアニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物におけるアニオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0033】
カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。皮膚用組成物にカチオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物におけるカチオン界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0034】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。皮膚用組成物に両性界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物における両性界面活性剤の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0035】
高級アルコールとしては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコールが挙げられる。皮膚用組成物に高級アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物における高級アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上10質量%以下である。
【0036】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールが挙げられる。皮膚用組成物に多価アルコールを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物における多価アルコールの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0037】
油脂としては、例えばアボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ローズヒップ油が挙げられる。皮膚用組成物に油脂を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物における油脂の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0038】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。皮膚用組成物にエステル油を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物におけるエステル油の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0039】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンが挙げられる。皮膚用組成物にシリコーンを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物におけるシリコーンの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上50質量%以下である。
【0040】
合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸系高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマーが挙げられる。半合成高分子化合物としては、例えば、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロースなど)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸など)、グアーガム誘導体(カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガムなど)が挙げられる。また、天然高分子としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。皮膚用組成物に高分子化合物(合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物)を配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、皮膚用組成物における高分子化合物の配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0041】
本実施形態の皮膚用組成物を使用する皮膚処理方法は、その組成物を公知の皮膚処理において使用するものである。例えば、本実施形態の皮膚用組成物を、洗顔料、クリーム、化粧水、メイクアップベース、ファンデーション、口紅類、浴用化粧品、化粧油、日焼けどめ化粧品として使用する。また、頭皮に塗布後に洗い流す又は洗い流さずに使用するスカルプケア用組成物として本実施形態の皮膚用組成物を使用して、本実施形態の皮膚処理方法を行っても良い。
【0042】
本実施形態の皮膚用組成物を、頭皮及び毛髪に塗布する方法において使用しても良い。例えば、(1)濡れた頭皮及び毛髪に塗布後、頭皮及び毛髪を水洗して使用する洗い流すトリートメント、(2)濡れた頭皮及び毛髪、又は、乾燥した頭皮及び毛髪に塗布後、毛髪を水洗しないで使用する洗い流さないトリートメント、(3)頭皮及び毛髪表面を洗浄するために、濡れた頭皮及び毛髪に塗布後、頭皮及び毛髪を水洗して使用する洗浄剤として、本実施形態の皮膚用組成物が用いられる。
【0043】
上記皮膚用組成物が、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又は洗浄剤として用いられる場合、成分(A)、(B)及び(C)と共に配合される原料の組合せ例を挙げれば次の通りである。洗い流すトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、エステル油、合成高分子化合物、及び水である。洗い流さないトリートメントにおいて配合される原料の組合せとしては、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、油脂、エステル油、合成高分子化合物、天然高分子化合物、及び水である。洗浄剤において配合される原料の組合せとしては、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、半合成高分子化合物、及び水である。
【0044】
本実施形態の皮膚用組成物の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。また、本実施形態の皮膚用組成物が油相と水相を有する場合、外相が水である水中油型の剤型、外相が油相である油中水型の剤型のいずれであっても良い。水中油型の剤型である場合、水の配合量は、例えば60質量%以上である。油中水型の剤型である場合、水の配合量は、例えば10質量%以下である。
【0045】
本実施形態の皮膚用組成物の25℃におけるpHは、適宜設定されるべきものであるが、例えば4.0以上7.0以下である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例などに基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。なお、下記表1〜7における配合量の単位は、「質量%」である。
【0047】
(実施例1、比較例1)
実施例1及び比較例1の皮膚用組成物を、下記表1に記載の通り、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)、フェノキシエタノール、香料、トレハロース、PEG−20、イソノナン酸イソトリデシル、及び水を用いて製造した。
【0048】
(皮膚処理)
無作為に選定した日本人女性が、実施例1又は比較例1の皮膚用組成物を1日に1回の頻度での使用を1か月継続することで、皮膚処理としての頭皮処理を行った。皮膚用組成物の使用においては、洗髪、毛髪をタオルドライした後の頭皮に対して、上記皮膚用組成物を噴霧してから指で馴染ませることを、頭皮全体に行った(皮膚組成物の1回の使用料は、2ml程度)。使用後は、日常と異なる作業を指示しなかった。
【0049】
(TEWL(経皮水分蒸散量))
株式会社アサヒテクノラボ製経皮水分蒸散量測定器「VAPO SCAN AS−VT100RS」により、上記皮膚処理の開始前と1か月継続使用後の頭頂部(毛髪の分け目以外)を測定し、その平均を算出した。なお、平均の算出では、実施例1が10名の測定値、比較例1が10名の測定値に基づいて行った。
【0050】
下記表1に、実施例1及び比較例1の皮膚用組成物に配合した成分、その配合量と共に、TEWLの結果を示す。表1に示す通り、成分(A)、(B)及び(C)に該当するトレハロース、PEG−20及びイソノナン酸イソトリデシルを配合した実施例1では、TEWLが改善されていた。
【0051】
【表1】
【0052】
(参考例1a、1b:皮膚ケラチンの熱変性温度)
成分(A)及び(B)の併用による皮膚ケラチンの熱変性温度を、以下の通り確認した。ケラチンヒト表皮由来(SIGMA−Aldrich社製)を、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)、50mM塩化ナトリウム水溶液中で透析した。この透析において、透析膜にはスペクトラ/ポア3(MWCO 3.5kDa)を用いた。透析後のケラチン含有液(参考例1b)と、トレハロースが0.075質量%、PEG−20が0.025質量%となるように添加した透析後のケラチン含有液(参考例1a)について、20℃から95℃前後まで1℃/minで昇温させたときのCD(遠紫外円偏光二色性)測定を行った(日本分光社製円二色分散計「J−720W」、ペルチェ式恒温キュベットホルダー「PTC−348W」を使用して測定した。)。そして、昇温させたときの温度と、ケラチンのα−へリックスに由来する222nmのCD測定結果と、に基づく曲線関係から変曲点を算出した。この変曲点が、皮膚ケラチンの熱変性温度とされるものである。
【0053】
下記表2に、参考例1a、1bの皮膚ケラチンの熱変性温度の結果を示す。表2に示す通り、成分(A)及び(B)に該当するトレハロース及びPEG−20を配合した参考例1aは、参考例1bよりも熱変性温度が高い。つまり、成分(A)及び(B)の配合により、ドライヤーなどの熱による皮膚変性が抑えられる。
【0054】
【表2】
【0055】
(参考例2a〜2c、3a〜3b、4a〜4b、5a〜5c)
参考例2a〜2c、3a〜3b、4a〜4bの皮膚用組成物を、下記表3〜5に記載の通り、トレハロース、PEG−20、及び水を用いて製造した。また、参考例5a〜5cの皮膚用組成物を、下記表6に記載の通り、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.0.)(4P.O.)、1,3−ブチレングリコール、トレハロース、PEG−20、イソノナン酸イソトリデシル、及び水を用いて製造した。
【0056】
(損傷抑制の評価1)
熱による毛髪損傷の抑制の評価を、次の通り行った。酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20〜30cm、0.5g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、次の(1)〜(2)の処理を7回行った。(1)参考例2a〜2cのいずれかの皮膚用組成物に3分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥。(2)市販のヘアアイロン(株式会社ティ.アイ.プロス製ヘアアイロン「TIPシェイプアイロンSL」)における一対の発熱体の設定温度を180℃とし、その発熱体間で上記乾燥後の毛髪を10秒間加熱。そして、処理後の各毛束における毛髪30本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0057】
(損傷抑制の評価2)
アルカリ性脱色剤による毛髪損傷の抑制の評価を、次の通り行った。酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20〜30cm、3g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、次の(1)〜(3)の処理を行った。(1)参考例3a又は参考例3bの皮膚用組成物に5分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥。(2)9g程度の脱色剤(ミルボン社製「パウダーブリーチ」1質量部とミルボン社製「オルディーブ OXIDANT 6%」3質量部の混合液)を毛束に塗布後、30分間放置。(3)水洗により脱色剤を毛束から除去した後に、ドライヤーを用いて乾燥。そして、処理後の各毛束における毛髪44本又は56本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0058】
(毛髪補修の評価1)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20〜30cm、2g程度の毛束を作成した。この毛束を、参考例4a又は参考例4bの皮膚用組成物に5分間浸漬した後、水洗し、更にドライヤーを用いて乾燥させた。そして、乾燥後の各毛束における毛髪40本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0059】
(毛髪補修の評価2)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、長さ20〜30cm、1g程度の毛束を作成した。この毛束を、参考例5a〜5cのいずれかの皮膚用組成物に4時間浸漬した後、水洗し、更に室温で放置して乾燥させた。そして、乾燥後の各毛束における毛髪29本について、初期弾性率を測定し、平均値を算出した。
【0060】
(初期弾性率の測定)
上記「毛髪補修の評価」、「損傷抑制の評価1」、「損傷抑制の評価2」における初期弾性率の測定を、次の通り行った。毛髪一本につき、20mmの長さでカットし、両端にテープを貼りつけた。その毛髪の毛径を測定した後、この毛髪試料を、蒸留水を入れたシャーレに終夜浸漬した。その後、初期弾性率をTENSILON YTM−II−20(ORIENTEC社製)を用いて、2mm/minの速度で延伸したときの応力を測定し、得られたデータを解析プログラム(X軸を延伸率、Y軸を応力としたときの初期の傾き、いわゆるフックの傾きを算出)を使って求めた。
【0061】
「損傷抑制の評価1」の結果を、参考例2a〜2cの皮膚用組成物に配合した成分と共に、下表3に示す。表3に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した参考例2aは、初期弾性率が高い結果であった。つまり、参考例2aは、熱による毛髪損傷の抑制に優れていた。
【0062】
【表3】
【0063】
「損傷抑制の評価2」の結果を、参考例3a〜3bの皮膚用組成物に配合した成分と共に、下表4に示す。表4に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した参考例3aは、初期弾性率が高い結果であった。つまり、参考例3aは、アルカリ性の脱色剤による毛髪損傷の抑制に優れていた。
【0064】
【表4】
【0065】
「毛髪補修の評価1」の結果を、参考例4a及び参考例4bの皮膚用組成物に配合した成分と共に、下表5に示す。表5に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した参考例4aは、初期弾性率が高い結果であった。つまり、参考例4aは、毛髪の補修に優れていた。
【0066】
【表5】
【0067】
「毛髪補修の評価2」の結果を、参考例5a〜5cの皮膚用組成物に配合した成分と共に、下表6に示す。表6に示す通り、成分(A)であるトレハロースと成分(B)である酸化エチレンの平均付加モル数が6以上であるポリエチレングリコール(PEG-20)とを配合した参考例5a、5bは、初期弾性率が高い結果であった。つまり、両参考例は、毛髪の補修に優れていた。また、成分(C)であるイソノナン酸イソトリデシルを配合した参考例5bは、最も初期弾性率が高く、毛髪の補修に優れていた。
【0068】
【表6】
【0069】
(参考例6a〜6d)
参考例6a〜6dの皮膚用組成物を、下記表7に記載の通り、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、及びシクロペンタシロキサンを用いて製造した。
【0070】
(示差走査熱量(DSC)測定)
酸化染毛剤による処理履歴がある毛髪を日本人女性から採取し、1.0g程度の毛束を作成した。この毛束に対して、参考例6a〜6dのいずれかの皮膚用組成物に5分間浸漬した後、毛髪表面のその組成物をふき取って一晩放置して、乾燥させた。この乾燥させた毛束を裁断後、毛髪のα-結晶が融解するときの吸熱ピークを、昇温速度10℃/分の条件でDSC測定装置(島津製作所社製「SC-60 Plus」)を使用して測定した。測定は、裁断した毛髪から2回採取し、2回の測定値の平均値を算出した。
【0071】
「DSC測定」の結果を、参考例6a〜6dの皮膚用組成物に配合した成分と共に、下表7に示す。表7に示す通り、成分(C)であるイソノナン酸イソデシル又はイソノナン酸イソトリデシルを配合した参考例6a、6bは、参考例6c、6dよりもDSC測定値が高く、参考例6bの測定値は、最も高い結果であった。つまり、毛髪損傷の抑制に関して、イソノナン酸イソデシルが優れ、イソノナン酸イソトリデシルがより優れていた。
【0072】
【表7】