【解決手段】水面に浮上するフロート18(A,B)と、フロート18(A,B)から水中に垂れ下がる遮水用フェンス17と、遮水用フェンス17の下端を沈めるための錘体4と、エアの浮力によって遮水用フェンス17の下端を浮上させ得るようにエアを給排可能に形成された袋体5とを備える。袋体5は、遮水用フェンスの下端に支持された第1袋体51と、第1袋体51に収容されエアを給排可能に形成された第2袋体52とを備える。錘体4は、第2袋体52に収容されている。
水面に浮かぶフロートと、前記フロートから水中に垂れ下がる遮水用フェンスと、前記遮水用フェンスの下端を沈めるための錘体と、エアの浮力によって前記遮水用フェンスの下端を浮上させ得るようにエアの給排が可能に形成された袋体とを備え、
前記錘体と前記袋体との何れか一方は、前記何れか他方に収容されていることを特徴とする浮沈式フェンス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような浮沈式フェンスは、袋体の外側方に袋体とは別途に錘体が配置されているため、袋体と錘体とが嵩張ってしまい、袋体と錘体のそれぞれが水の抵抗になってしまう。そのため、フェンス下端に配置した錘体と袋体とを水中に沈めておく通常状態の場合に、円滑に水を流し難くなる。また、水の抵抗によってフェンス下端の円滑な上げ下げが阻害されることも考えられる。さらに、フェンス下端の上げ下げに際して、錘体やこれに引っ掛かった異物によってフェンスを損傷することも考えられる。
【0005】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、錘体と遮水用フェンスの下端を浮上させる袋体とがコンパクトで、水の抵抗を受けにくい浮沈式フェンスの提供を目的とする。より好ましくは、フェンスの上げ下げに際して錘体やこれに引っ掛かった異物によって損傷を与えるおそれの少ない浮沈式フェンスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、水面に浮かぶフロートと、前記フロートから水中に垂れ下がる遮水用フェンスと、前記遮水用フェンスの下端を沈めるための錘体と、エアの浮力によって前記遮水用フェンスの下端を浮上させ得るようにエアの給排が可能に形成された袋体とを備え、前記錘体と前記袋体との何れか一方は、前記何れか他方に収容されていることを特徴とする浮沈式フェンスを提供する。
【0007】
この構成によれば、袋体にエアを給気して錘体の重量よりも大きい浮力を発生させることで、遮水用フェンスの下端を上げる(浮上させる)ことができる。しかも、錘体と袋体との何れか一方が他方に収容されているため、コンパクトなものにでき、水の抵抗を低減することが可能となる。したがって、遮水用フェンスの下端に配置した錘体と袋体とを水中に沈めておく通常状態の場合に、円滑に水を流すことができる。また、遮水用フェンスの下端を上げ下げする場合も、水の抵抗を低減して円滑に行うことができる。
【0008】
なお、上記の浮沈式フェンスにおいて、前記袋体は、前記錘体を収容する錘体収容部を備え、前記錘体は、前記錘体収容部に収容されている構成とすることができる。
【0009】
例えば袋体の外側方に錘体が袋体と別途に配置されて錘体が露出していると、錘体に異物が引っ掛かり易い。特に錘体としてチェーンを用いた場合には異物が引っ掛かりやすく、その異物が、フェンス下端の上げ下げに際してフェンスに擦れ、フェンスが損傷を受けるおそれがある。また、錘体に異物が引っ掛かっていない場合でも、錘体自体がフェンス下端の上げ下げに際してフェンスに擦れてフェンスが損傷を受けるおそれがある。
【0010】
しかし、錘体が袋体に収容されている上記構成によれば、例えば錘体としてチェーンを用いた場合でも、錘体に異物が引っ掛かることがなく、遮水用フェンスの下端を上げる際に当該異物が遮水用フェンスに擦れて遮水用フェンスが損傷を受けることが防止される。また、錘体が直接遮水用フェンスに擦れることがないため、例えばチェーンを錘体として用いた場合でも、当該チェーンによる損傷から遮水用フェンスを保護することができる。つまり、上記構成によれば、フェンス下端を浮沈させるためにエアが給排される袋体を、異物の引っ掛かりを防止するために錘体を覆うものとして兼用した合理的な構成が達成される。
【0011】
また、上記の浮沈式フェンスにおいて、前記袋体は、前記遮水用フェンスの下端に支持された第1袋体と、前記第1袋体に収容された第2袋体とを備え、前記第2袋体は、エアの給排が可能に形成され、前記錘体収容部は、前記第2袋体に形成されている構成とすることができる。
【0012】
この構成によれば、錘体を収容した第2袋体が第1袋体に収容されているため、第2袋体が遮水用フェンスに擦れて損傷を受けることが防止される。したがって、長期の使用でも、袋体が破れてフェンス下端の上げ下げに支障が生じたり錘体が露出することを防止することが可能となる。
【0013】
前記錘体は、内部に袋体収容部を有した筒状を成しかつ内外を連通させる複数の貫通孔が周面に形成された筒状体を備え、前記袋体は、前記袋体収容部に収容されている構成とすることができる。
【0014】
この構成によれば、錘体の袋体収容部に収容された袋体にエアを給気させて錘体の重量よりも大きい浮力を発生させることで、遮水用フェンスの下端を上げることができる。また、袋体が筒状体の内部に収容されているため、コンパクトなものにでき、円滑に水を流すことができ、また、遮水用フェンスの下端の上げ下げを円滑に行うことができる。
【0015】
なお、上記の浮沈式フェンスにおいて、前記筒状体は、断面外周形状が円形状又は楕円状であるのが好適である。
【0016】
この構成によれば、遮水用フェンスの下端の上げ下げ時の水の抵抗を低減でき、また、遮水用フェンスの下端を上げる際に錘体が直接遮水用フェンスに擦れた場合でも錘体の接触抵抗が小さく、遮水用フェンスが損傷を受け難くなる。
【0017】
一方、本発明の浮沈式フェンスシステムは、上述した浮沈式フェンスと、水流によって前記遮水用フェンスに働く外力又は当該外力に比例する物理量を検出する検出部と、前記検出部による検出値が設定値以上となると、当該遮水用フェンスの下端を浮上させるべく、前記袋体に対するエアの供給を制御する制御部と備えるものである。
【0018】
この浮沈式フェンスシステムによれば、増水時など遮水用フェンスに働く外力が大きくなる状況が発生した場合に、自動的に遮水用フェンスの下端部を浮上させて通水を促すことが可能となる。そのため、増水等による損傷から遮水用フェンスを保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明の浮沈式フェンスによれば、錘体と遮水用フェンスの下端を浮上させる袋体とがコンパクトで、水の抵抗を受け難い浮沈式フェンスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、ダム湖に設置した本発明の第1実施形態の浮沈式フェンスの平面図であり、
図2は、上流側から見た浮沈式フェンスの正面図であり、
図3は、浮沈式フェンスシステムの全体構成を示す回路図である。
【0022】
第1実施形態の浮沈式フェンス1は、ダム湖10の水面に浮上するフロート18(A,B)と、遮水用フェンス17と、遮水用フェンス17の下端を沈めるための錘体4と、遮水用フェンス17の下端を浮上させる袋体5とを備えている。そして、この浮沈式フェンス1と、前記袋体5にエアを給排する給排装置60とにより、浮沈式フェンスシステムが構成されている。なお、
図2では、便宜上、フロート18(A)は線で示している。
【0023】
前記フロート18(A,B)は、左岸と右岸(左、右は、上流側から下流側を見ての方向。以下同様。)にそれぞれ設置したアンカーブロック16,16のワイヤーに両端部が連結されている。この実施形態の浮沈式フェンス1の全長は、例えば約302mであり、最大たわみDは、例えば約65mである。前記フロート18(A,B)の全長L1も、浮沈式フェンス1の全長とほぼ同等である。
【0024】
フロート18(A,B)は、ダム湖10の水面に常時浮かぶ固定フロート18(A)と、エアの給排で浮沈する浮沈フロート18(B)とで構成されている。
【0025】
固定フロート18(A)は、右岸側と左岸側とにそれぞれ配置されており、右岸側の固定フロート18(A)と左岸側の固定フロート18(A)との間に、浮沈フロート18(B)が配置されている。
【0026】
浮沈フロート18(B)は、管理用小型ボートが通過できる幅L5(例えば約6m)で深さH2(例えば約2m)まで沈下可能な長さの通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と、この通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と共に所望の通水量を確保するための通水専用浮沈フロート18(B−2)とで構成されている。この実施形態では、これらフロート18(B−1)、(B−2)の合計長さ(L2+L3)は約40mである。
【0027】
通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)は、浮沈式フェンス1の略中央部から左岸側に長さL2で設けられ、通水専用浮沈フロート18(B−2)は、同中央部から右岸側に長さL3で設けられている。
【0028】
通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)は、合成ゴムで形成されており、エアの給気状態では円筒状(例えば外径が約400mm)に膨張している。
【0029】
なお、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の上部の両端位置には、チェーン等で補助フロート(図示せず)がそれぞれ連結されており、この補助フロートにより通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の沈下時に水面に浮上することで、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の沈下位置を規制するようになっている。
【0030】
また、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の上部の中央寄りの両側位置には、チェーン等で通船表示ブイ(図示せず)がそれぞれ連結されており、この左右一対の通船表示ブイが通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の沈下時(一点鎖線参照)に水面に浮上することで、通船可能幅(例えば約6m)L5を表示するようになっている。
【0031】
通水専用浮沈フロート18(B−2)は、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と同様に、合成ゴムで形成されており、エアの給気状態では円筒状(例えば外径が約400mm)に膨張している。
【0032】
この実施形態では、通水専用浮沈フロート18(B−2)の上部の適当な位置(本例では4箇所)に、チェーン等で補助フロート(図示せず)がそれぞれ連結されており、この補助フロートが通水専用浮沈フロート18(B−2)の沈下時に水面に浮上することで、通水専用浮沈フロート18(B−2)の沈下位置を規制するようになっている。
【0033】
通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の右端部と通水専用浮沈フロート18(B−2)の左端部とは、後述する連通弁28および接続金具を介してエア連通可能に連結されている。一方、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の左端部と左岸側の固定フロート18(A)の右端部とは接続金具のみで連結され、同様に、通水専用浮沈フロート18(B−2)の右端部と右岸側の固定フロート18(A)の左端部とは接続金具のみで連結されている。すなわち、フロート18(B−1)、(B−2)と固定フロート18(A)とはエア連通不能な状態で単に連結されている。
【0034】
前記遮水用フェンス17は、上端がフロート18(A,B)に連結され、後記錘体4の重量によって下端側がフロート18(A,B)から水中に垂れ下がるように配置されている。この実施形態では、遮水用フェンス17は合成樹脂製のシートで構成されており、その長さは、フロート18(A,B)と略同じ長さで、遮水用フェンス17の高さHは、例えば約15mである。なお、遮水用フェンス17は、場所や用途に応じて断水性のものとある程度の通水性を有したものが使用される。この実施形態では、断水性のものが使用されている。
【0035】
前記袋体5は、遮水用フェンス17の下端に支持された第1袋体51と、第1袋体51に収容された第2袋体52とを備えている。
【0036】
第1袋体51は、
図4に示すように、内部に第2袋体52を収容する第2袋体収容部51aを有する筒状体から構成されている。この実施形態では、第1袋体51は、遮水用フェンス17を構成するシートの下端が折り返されて筒状に形成されることにより設けられている。よって、第1袋体は、
図2に示すように、遮水用フェンス17の全長とほぼ同じ長さを有し、遮水用フェンス17の下端の全領域にわたって配置されている。なお、第1袋体51は、遮水用フェンス17とは別体に、合成樹脂製のシートなどから形成された筒状体が遮水用フェンス17の下端に連結されたものであってもよい。
【0037】
第2袋体52は、この実施形態では、
図4に示すように、内部に錘体4を収容する錘体収容部52aを有する合成ゴム製の筒状体から構成されている。また、第2袋体52は、エアの浮力によって前記遮水用フェンス17の下端を浮上させ得るように錘体収容部52aにエアを給排可能に形成されている。
【0038】
この第2袋体52は、第1袋体51とほぼ同じ長さを有し、第1袋体51の第2袋体収容部51aに全体が収容されている。
【0039】
錘体4は、この実施形態では、複数の鎖素子が順次連結されたチェーン(鎖)からなり、遮水用フェンス17の長さと略同じ長さを有する。この錘体4は、第2袋体52の錘体収容部52aに収容されており、全体が第2袋体52に覆い隠されている。錘体4は、その長手方向の両端を含む、複数箇所で第2袋体52に固定されている。なお、
図2では、錘体4の一部だけが表されている。
【0040】
前記給排装置60は、
図3に示すように、エア供給機(コンプレッサ)6と、エア供給機6から延びた給気ホースと、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)とを繋ぐ連通弁28と、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)に設けられた排気弁30とを備えている。なお、
図3では、第1袋体51及び錘体4は省略されている。
【0041】
前記給気ホースは、エア供給機6から通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)に延びるフロート用給気ホース29と、エア供給機6から第2袋体52に延びる袋体用給気ホース54と、エア供給機6から連通弁28に延びる連通弁用給気ホース32aと、エア供給機6から排気弁30に延びる排気弁用給気ホース33aとを備える。
【0042】
フロート用給気ホース29には、フロート用給気弁31が設けられ、袋体用給気ホース54には、袋体用給排気弁71が設けられている。また、連通弁用給気ホース32aと排気弁用給気ホース33aとには、それぞれ、連通弁28と排気弁30の開閉を制御するエア駆動用弁32b,33bがそれぞれ設けられている。さらに、袋体用給気ホース54には、三方弁等の袋体用給排気弁71が設けられている。
【0043】
なお、この実施形態では、制御部7によって第2袋体52へのエアの給気が袋体用給排気弁71を介して自動制御されるようになっている。
【0044】
詳しくは、遮水用フェンス17には、水流によって遮水用フェンス17にかかる張力を検出する検出センサ72(本発明の検出部に相当する)が備えられている。制御部7は、袋体用給排気弁71と検出センサ72とのそれぞれと通信可能に接続されている。そして、検出センサ72が遮水用フェンス17に設定張力(本発明の設定値に相当する)以上の張力がかかったことを検出すると、制御部7は袋体用給排気弁71を制御することにより、エア供給機6から第2袋体52にエアを送る。
【0045】
給気弁31、エア駆動用弁32b,33bは、陸上等の作業員が手動で操作可能であるが、管理用小型ボートの乗員等がリモコン等で遠隔操作することもできる。
【0046】
また、袋体用給排気弁71は、制御部7によって自動制御される形態のものに限らず、手動操作できるものであってもよく、適宜変更できる。また、検出センサ72は、遮水用フェンス17にかかる張力を検出するものに限らず、例えば水流の流量や流速を検出するものであってもよく、要は、水流によって遮水用フェンス17に働く外力又は当該外力に比例する物理量を検出するものであればよい。
【0047】
次に、以上のように構成された第1実施形態の浮沈式フェンス1の動作について説明する。まず、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)との動作から説明する。
【0048】
通常は、排気弁30を閉じ、連通弁28を開くことで、エア供給機6から給気ホース29を介して通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)にエアが給気され、連通弁28を介して通水専用浮沈フロート18(B−2)にもエアが給気される。これにより、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)とが水面に浮かんだ状態に保たれる。そのため、上流側の水は、遮水用フェンス17の下方を通じてのみ下流側に流れる。
【0049】
この際、遮水用フェンス17の下端に配置した錘体4が袋体51、52に収容されているため、錘体と袋体とが別途に配置されている場合に比べて水の抵抗が小さくなる。したがって、遮水用フェンス17の下方から下流側に円滑に水を流すことができる。
【0050】
そして、必要に応じて排気弁30と連通弁28を開くと、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)のエアが排気されるので、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)とは水中に沈下するようになる。これにより、上流側の水は、遮水用フェンス17の上端のうち、沈下した通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)の部分を通じても下流側に流れるようになる。
【0051】
なお、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)と通水専用浮沈フロート18(B−2)とが水面に浮かんだ状態で、管理用小型ボートを通過させるためには、連通弁28を閉じ、排気弁30を開けば、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)のエアだけが排気されるので、通水専用浮沈フロート18(B−2)を水面に浮かべたままで、通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)だけを幅L5に亘って深さH2まで水中に沈下させることができる。これにより、小型ボートを通水兼通船用浮沈フロート18(B−1)の上流側と下流側とに自由に通過させることができる。
【0052】
次に、袋体5の動作について説明する。例えば上流側から多量の濁水が早い速度で流れ込み、遮水用フェンス17に前記設定張力以上の張力がかかったことが検出センサ72により検出されると、制御部7は、袋体用給排気弁71を制御し、当該袋体用給排気弁71を介してエア供給機6から第2袋体52にエアを送る。これにより、
図4、
図5に示すように、錘体4が収容された第2袋体52にエアが溜まり、第2袋体52に錘体4の重量よりも大きい浮力が働くと、第2袋体52が錘体4と共に水面まで浮上することとなる。これに伴い、遮水用フェンス17の下部が水面まで浮上する結果、当該遮水用フェンス17による遮水状態が解除される。したがって、遮水用フェンス17が多量の濁水の水圧を受け続けることによって損傷することが防止される。
【0053】
この際、遮水用フェンス17の下端に配置した錘体4は袋体51、52に収容されているため、遮水用フェンス17の下端を上げる際には、錘体と袋体とが別途に配置されている場合に比べて水の抵抗を小さくでき、遮水用フェンス17の下端を円滑に浮上させることができる。
【0054】
また、錘体4が外部に露出している場合には、チェーンからなる錘体4に異物が引っ掛かりやすく、その異物が、遮水用フェンス17の下端の浮上に際して遮水用フェンス17に擦れて遮水用フェンス17が損傷を受けるおそれがある。また、錘体4に異物が引っ掛かっていない場合でも、錘体4自体が遮水用フェンス17の浮上に際して遮水用フェンス17に擦れて遮水用フェンス17が損傷を受けるおそれがある。
【0055】
しかし、上記実施形態の遮水用フェンス17によれば、錘体4が袋体51、52に収容されているため、チェーンからなる錘体4に異物が引っ掛かるおそれがなく、遮水用フェンス17の下端を上げる際に当該異物によって遮水用フェンス17が損傷を受けることがない。また、遮水用フェンス17の下端を上げる際に錘体4が直接遮水用フェンス17に擦れることがなく、よって、錘体4により遮水用フェンス17が損傷を受けることもない。
【0056】
また、錘体4を収容した第2袋体52がさらに第1袋体51に収容されているため、第2袋体52が遮水用フェンス17に擦れることがなく、第2袋体52が遮水用フェンス17に擦れて損傷を受けることが防止される。したがって、長期の使用でも、袋体が破れてフェンス下端の上げ下げに支障が生じたり錘体が露出することを防止することが可能となる。
【0057】
なお、遮水用フェンス17を元の状態(
図1に示す状態)に戻すには、作業員が手動で、又はリモコン等による遠隔操作で袋体用給排気弁71を操作し、当該袋体用給排気弁71から第2袋体52のエアを排気させる。これにより、錘体4の重量によって遮水用フェンス17の下部を水中に沈下させる。
【0058】
この場合も、遮水用フェンス17の下端に配置した錘体4は袋体51、52に収容されているため、遮水用フェンス17の下端を浮上させる場合と同様に、水の抵抗を小さくでき、遮水用フェンス17の下端を円滑に下げることができる。また、錘体4が袋体51、52に収容されているため、チェーンからなる錘体4に異物が引っ掛かるおそれがなく、遮水用フェンス17の下端を下げる際に当該異物によって遮水用フェンス17が損傷を受けることがない。また、遮水用フェンス17の下端を下げる際に錘体4が直接遮水用フェンス17に擦れることがなく、よって、錘体4により遮水用フェンス17が損傷を受けることもない。
【0059】
なお、上記第1実施形態では、袋体5は、第1袋体51と第2袋体52とから構成されたが、この形態のものに限らず、例えば第2袋体52のみで構成されてもよく、適宜変更できる。但し、第1袋体51と第2袋体52とからなる構成によれば、流木等の異物との接触により第2袋体52(エアが供給される袋体)が損傷を受けることが防止される。そのため、浮沈式フェンス1の耐久性を向上させることができるという利点がある。
【0060】
次に、第2実施形態の浮沈式フェンス100について、
図6〜
図8に基づいて説明する。第2実施形態の浮沈式フェンス100は、第1実施形態のものと同様に、フロート18(A,B)と、遮水用フェンス17と、錘体104と、袋体152とを備えている。そして、この浮沈式フェンス100と給排装置60(
図3参照)とで浮沈式フェンスシステムが構成されている。なお、フロート18(A、B)、遮水用フェンス17及び給排装置60は、第1実施形態のものと同様の構成を採っている。
【0061】
第2実施形態の錘体104は、内部に袋体収容部142を有する筒状体から構成されている。この錘体104は、例えば合成樹脂(ゴム)製の断面外周形状が楕円状のフレキシブルチューブであり、遮水用フェンス17の長さと略同じ長さを有し、遮水用フェンス17の下端を沈め得る重量を有する。なお、錘体104は、断面外周形状が楕円状に限らず、例えば断面外周形状が円形状のものでもよく、適宜変更できる。
【0062】
錘体104の周面には、外部から袋体収容部142に貫通する複数の貫通孔141が形成されている。これらの貫通孔141は、袋体収容部142への水の侵入を許容して内部の空気を排出させるためのもので、錘体104の長手方向に亘って形成されている。なお、
図6では、一部の貫通孔141だけ表している。
【0063】
袋体152は、合成ゴム製の筒状体から構成されている。そして、袋体152は、錘体104の袋体収容部142に収容されている。また、袋体152は、袋体用給気ホース54を介して袋体用給排気弁71に連結されている。
【0064】
このように構成された第2実施形態の浮沈式フェンス100では、通常は、袋体152にエアが供給されておらず、遮水用フェンス17の下端は、錘体104の重量で沈下した状態となっている。
【0065】
この状態で、遮水用フェンス17に前記設定張力以上の張力がかかったことが検出センサ72により検出されると、制御部7による袋体用給排気弁71の制御により、エア供給機6から第2袋体52にエアが送られる。これにより、
図7、
図8に示すように、錘体104に収容された袋体152にエアが溜まり、袋体152に錘体104の重量よりも大きい浮力が働くと、袋体152と共に錘体104が水面まで浮上することとなる。これに伴い、遮水用フェンス17の下部が水面まで浮上する結果、当該遮水用フェンス17による遮水状態が解除される。したがって、遮水用フェンス17が多量の濁水の水圧を受けて損傷することが防止される。
【0066】
その際、遮水用フェンス17の下端に配置した袋体152は錘体104に収容されているため、遮水用フェンス17の下端を上げる際に、錘体と袋体とを別途に配置している場合に比べて水の抵抗を小さくでき、遮水用フェンス17の下端を円滑に浮上させることができる。
【0067】
また、錘体104は、断面外周形状が楕円形状であるため、錘体104に異物が引っ掛かり難く、遮水用フェンス17の下端を上げる際に当該異物が遮水用フェンス17に擦れることが軽減される。また、遮水用フェンス17の下端を上げる際に錘体104が直接遮水用フェンス17に擦れた場合でも、錘体104の接触抵抗が小さく、遮水用フェンス17を損傷し難くい。従って、錘体104やこれに引っ掛かった異物との擦れによる損傷から遮水用フェンス17を保護することができる。
【0068】
なお、遮水用フェンス17を元の状態(
図6に示す状態)に戻すには、作業員が手動で、又はリモコン等による遠隔操作で袋体用給排気弁71を操作し、当該袋体用給排気弁71から袋体152のエアを排気させる。これにより、錘体104の重量によって遮水用フェンス17の下部を水中に沈下させる。
【0069】
この場合も、錘体104は断面外周形状が楕円状であるため、遮水用フェンス17の下端を浮上させる場合と同様に、水の抵抗を小さくでき、遮水用フェンス17の下端を円滑に下げることができる。また、遮水用フェンス17の下端を下げる際に、錘体104が直接遮水用フェンス17に擦れた場合でも、錘体104の接触抵抗が小さく、遮水用フェンス17を損傷し難くい。従って、錘体104やこれに引っ掛かった異物との擦れによる損傷から遮水用フェンス17を保護することができる。
【0070】
また、遮水用フェンス17の下端が沈んだ状態で、遮水用フェンス17の下端に配置した錘体104に袋体152が収容されているため、錘体104と袋体152とを別途に配置している場合に比べて水の抵抗を小さくできる。したがって、遮水用フェンス17の下方から下流側に円滑に水を流すことができる。
【0071】
また、このように錘体104に袋体152が収容されていることで、流木等の異物との接触により袋体152が損傷を受けることが防止される。そのため、浮沈式フェンス100の耐久性を向上させることができるという利点もある。
【0072】
なお、上記実施形態では、フロート18(A,B)は、固定フロート18(A)と、浮沈フロート18(B)とで構成されたが、この形態のものに限らず、例えば固定フロート18(A)だけで構成されたものでもよく、適宜変更できる。