【解決手段】グラフィックス表示体100は、基材1に印刷された画像層2を含む。画像層2は、基材1に印刷された黒色又は暗色UVインクを含有する有孔遮蔽層21と、有孔遮蔽層21に印刷された白色UVインクを含有する有孔白版層22と、有孔白版層22に印刷された白色UVインクとは異なるUVインクを含有する有孔表示層23とを含む。画像層2は、有孔遮蔽層21と有孔白版層22と有孔表示層23とにのみ形成されている開口孔30を複数有する。開口孔30は、有孔遮蔽層21と有孔白版層22と有孔表示層23のそれぞれに同軸、かつ同孔径で形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグラフィックス表示体は、その製造過程において、(1)透明フィルム層の形成工程、(2)画像層の印刷工程、(3)接着剤層のラミネート工程、および(4)基材への貼付工程を含む複数の製造工程を経なければならず、製造コストが高くつく場合があった。
【0006】
また、従来のグラフィックス表示体においては、使用する際に、基材に人力等で接着貼付しなければならず、手間な作業となっていた。この作業は、基材との間に空気を侵入させないように貼付しなければならず、取扱性にも課題があった。このため、貼付作業に熟練度が要求され、コスト増となる場合があった。基材との間に空気が存在すると、粘着力が弱くなるという問題もあった。
【0007】
さらに、従来のグラフィックス表示体は、基材と透明フィルム層とが接着された積層フィルム構造体であるため、単層構造のものと比べてフィルム代やラミネート代が必要となり、材料費に係るコスト代も高くつくものとなっていた。
【0008】
このように、従来のグラフィックス表示体においては、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の点で問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の向上を実現することができるグラフィックス表示体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のグラフィックス表示体は、基材に印刷された画像層を含むグラフィックス表示体であって、前記画像層は、前記基材に印刷された黒色又は暗色UVインクを含有する有孔遮蔽層と、該有孔遮蔽層に印刷された白色UVインクを含有する有孔白版層と、該有孔白版層に印刷された白色UVインクとは異なるUVインクを含有する有孔表示層とを含み、前記有孔遮蔽層と前記有孔白版層と前記有孔表示層とにのみ形成されている開口孔を複数有し、該開口孔は、前記有孔遮蔽層と前記有孔白版層と前記有孔表示層とのそれぞれに同軸、かつ同孔径で形成されていることを特徴とする。
【0011】
孔径とは、開口孔の開口方向から観察して、開口孔の形状によらず、開口孔の大きさの最大寸法をいう。
【0012】
また、本発明のグラフィックス表示体は、基材に印刷された画像層を含むグラフィックス表示体であって、前記画像層は、前記基材に印刷された第一の意匠が形成されたUVインクを含有する無孔表示層と、該無孔表示層に印刷された黒色又は暗色UVインクを含有する有孔遮蔽層と、該有孔遮蔽層に印刷された白色UVインクを含有する有孔白版層と、該有孔白版層に印刷された白色UVインクとは異なるUVインクを含有する有孔表示層とを含み、前記有孔遮蔽層と前記有孔白版層と前記有孔表示層とにのみ形成されている開口孔を複数有し、該開口孔は、前記有孔遮蔽層と前記有孔白版層と前記有孔表示層とのそれぞれに同軸、かつ同孔径で形成されていることを特徴とする。
【0013】
意匠とは、文字、図形、記号、模様、絵画、絵柄、写真、色彩又はこれらの結合をいう。また、有孔とは、前記開口孔を有することをいい、無孔とは、前記開口孔を有しないことをいう。
【0014】
さらに、本発明のグラフィックス表示体は、前記無孔表示層が、前記基材に印刷された下塗り層と、該下塗り層に印刷された上塗り層とを含むことを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本発明のグラフィックス表示体は、前記第一の意匠と異なる第二の意匠が前記有孔表示層に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のグラフィックス表示体は、前記開口孔の開口率が、30〜45%であることを特徴とする。
【0017】
開口率とは、グラフィックス表示体の単位面積当たりの、開口孔の開口方向から観察して、基材又は無孔表示層が露見される面積の割合を百分率で表したものをいう。
【0018】
本発明のグラフィックス表示体は、前記基材が、フレキシブルシートで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のグラフィックス表示体によれば、上記構成とされているので、ラミネートや接着貼付をすることなく使用でき、作業性、取扱性、経済性、又は生産性を向上することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明のグラフィックス表示体によれば、上記の構成とされており、第一の意匠が形成された無孔表示層を含むので、第一の意匠を表示する機能を発揮するとともに、作業性、取扱性、経済性、又は生産性を向上することができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明のグラフィックス表示体によれば、無孔表示層は、基材に印刷された下塗り層と、下塗り層に印刷された上塗り層とを含むので、内照の際に、第一の意匠の色彩が薄くなることを防止することができるという効果を奏する。
【0022】
さらにまた、本発明のグラフィックス表示体によれば、第一の意匠と異なる第二の意匠が有孔表示層に形成されているので、内照の際と非内照の際とで異なる意匠を表示することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明のグラフィックス表示体によれば、開口孔の開口率が、30〜45%であるので、内照の際と非内照の際のいずれにおいても表示内容を快適に視認することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明のグラフィックス表示体によれば、基材は、フレキシブルシートで構成されているので、柔軟性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。ここで、長尺方向とは、
図1,3に示す矢印X方向をいい、開口方向とは、
図1,3に示す矢印Y方向をいう。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
(第一の実施形態)
【0027】
本実施形態のグラフィックス表示体100は、例えば、ポスター、パネル、バナー、バス/電車ラッピング、ウィンドウフィルム等のサイングラフィックス用途や、料金表、方向指示板等の各種表示板用途に用いられるものである。グラフィックス表示体100は、基材1と、画像層2とを含む。画像層2は、15μm〜120μm厚の範囲内となるように基材1に印刷されている。
【0028】
基材1は、透明又は光透過性を有するものが好ましい。透明とは、光が通過する性質を有し、透過率が極めて高く、物質を通してその向こう側が透けて見える状態の性質をいう。透過率が極めて高いとは、可視光線、すなわち波長範囲380nm〜780nmにおいて、光透過率が80%以上であることをいう。
【0029】
また、透光性とは、光が通過する性質を有し、透過する光が拡散されるため、又は透過率が低いために、透明と違ってその性質を通して向こう側の形状等を明確に認識できない、又はまったく認識できない状態の性質をいう。
【0030】
基材1は、例えば、透明又は透光性の平面フィルム、透明又は透光性の平面シート、透明又は透光性のフレキシブルシートが挙げられる。好ましくは、透光性のフレキシブルシートが、柔軟性、耐候性の点で好ましい。さらに、防水性、防炎性、防汚性、印刷性に優れたものであれば、より好ましい。
【0031】
基材1の材質としては、上記特性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、塩化ビニル、ガラス繊維、ポリエステル、ポリエステル繊維、ポリオレフィン、フッ素樹脂、PET(ポリエチレンテフタラート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)等が挙げられる。基材1が透明な場合、その光透過によって第一の意匠を構成する。
【0032】
本実施形態の画像層2は、
図1に示すように、有孔遮蔽層21と、有孔白版層22と、有孔表示層23とを含む印刷多層構造である。そして、画像層2には、複数の開口孔30を有する。画像層2及び開口孔30は、UVインクを用いたインクジェット印刷によって、単層の基材上に設けられている。
【0033】
有孔遮蔽層21は、画像層2の下層のUVインク層であり、黒色又は暗色UVインクを含有し、黒色又は暗色に表現されている。本実施形態の有孔遮蔽層21は、開口孔30の最下層周縁部を有し、インクジェット印刷によって基材1に印刷されて形成されている。有孔遮蔽層21は、基材1の第一の意匠を遮蔽する機能を発揮する。
【0034】
有孔遮蔽層21の黒色の表現方法としては、例えば、CMYKカラーにおいて、スミベタ、リッチブラック、4色ベタ等が挙げられる。スミベタは、黒インクK100%の濃度で表現されている。リッチブラックは、CMYKそれぞれの色をかけ合わせて作成されている。4色ベタは、CMYKそれぞれの色をすべて100%で作成されている。
【0035】
有孔白版層22は、画像層2の中層のUVインク層であり、白色UVインクを含有し、白色に表現されている。白色UVインクの濃度は100%が好ましい。有孔白版層22は、開口孔30の中層周縁部を有し、有孔遮蔽層上にインクジェット印刷によって印刷されて形成されている。有孔白版層22は、有孔表示層23の下塗り(以下、「白打ち」ともいう。)の機能を発揮する。
【0036】
有孔表示層23は、画像層2の上層のUVインク層であり、白色UVインクとは異なるUVインクを含有する。有孔表示層23に含有するUVインクは、特に限定されるものではなく、フルカラー等、種々のものが利用できる。有孔表示層23は、開口孔30の最上層周縁部を有し、有孔白版層上にインクジェット印刷によって印刷されて形成されている。
【0037】
有孔表示層23には、そのUVインクを用いて第二の意匠を施すことができる。この第二の意匠を有孔表示層23に施す場合において、基材1が透明のときは、有孔白版層22の白打ちを、この意匠と同一又は対応する意匠にしてもよい。このとき有孔表示層23の第二の意匠は、多色でも単一色であってもよいし、白黒、モノクロ、その他の色彩のみであってもよい。勿論、意匠はフルカラーであってもよい。
【0038】
開口孔30は、有孔遮蔽層21と有孔白版層22と有孔表示層23とにのみ複数有し、グラフィックス表示体100の表面に開口する有底筒状に形成されている。複数の開口孔30は、有孔遮蔽層21と有孔白版層22と有孔表示層23とのそれぞれの層に同位置、同軸、かつ同孔径で形成されている。ここで、同位置とは、印刷データのデータム又は他の形状に定められた理論的な正確な位置からの点、直線形状又は平面形状の狂いがない又は許容範囲内であることをいう。
【0039】
各開口孔30は、有孔遮蔽層21と有孔白版層22と有孔表示層23とのそれぞれの印刷データにおいて、その位置、大きさ、間隔が設定されている。この印刷データに基づき、コンピューターからUVインクジェットプリンターに印刷出力することで、それら開口孔30の部分を印刷しないで、他の部分を印刷した画像層2が形成される。
【0040】
開口孔30の開口率は、本来、グラフィックス表示体100の大きさ、寸法にもよるが、一般的に、開口孔30の開口方向から観察して、有孔表示層23もしくは第二の意匠と、基材1もしくは第一の意匠とをともに快適に視認可能となる範囲内に設定されていることが好ましい。例えば、100平方mm当たり所定数の開口孔30を有するグラフィックス表示体100の場合、開口率は、28%〜47%、好ましくは30%〜45%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、開口率は38%前後が好ましい。
【0041】
開口率が30%未満になると、製作が難しく、内照の際に、グラフィックス表示体100が暗く、見づらくなる。また、開口率が45%を超えると、隠蔽率が下がり、第一の意匠が、通常時である非内照の際に、開口孔30を介して目視可能となってしまう。
【0042】
開口孔30の孔径は、1,600μm〜2,000μmの範囲内であることが好ましい。開口孔30の孔径が、1,600μm未満の場合、内照の際に、視認しづらくなる。また、開口孔30の孔径が、2,000μmを超えると、非内照の際に、基材1もしくは有孔遮蔽層21と、有孔表示層23とが混同し、判別しにくくなる。
【0043】
複数の開口孔30は、
図2に示すように、例えば100平方mm当たりに縦横に配列されており、長尺方向における、任意の一の列に配列された複数の開口孔30と、この列から最も近い位置にある他の列に配列された複数の開口孔30とは、それぞれ中心点の位置が略ジグザグ状となるように千鳥配列されている。また、グラフィックス表示体100は、画像層2の一辺側面に、有底半円筒状の開口孔が複数配列されている。
【0044】
本実施形態のグラフィックス表示体100は、近傍又は近辺から見たときに、ドット状の穴が穿たれているような模様が視認される。しかし、グラフィックス表示体100には貫通孔を有さず、その表面には若干の凹部が形成されたUVインクを含有する画像層2を有し、裏面は平面状の基材1からなる。本実施形態のグラフィックス表示体100は、有孔表示層23の色彩が視認され、その裏面はほとんど黒く見える。
【0045】
本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、内照の際に、画像層2がほとんど中高輝度の昼光色、昼白色、白色、温白色又は電球色に見える。また、非内照の際に、遠方から本実施形態のグラフィックス表示体100を見たときは、ほとんど有色の単色に見える。有孔表示層23に第二の意匠を施している場合には、その意匠を視認できる。遠方から本実施形態のグラフィックス表示体100を見たときも同様である。
【0046】
このようにして、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、上記構成としたので、グラフィックス表示体100の画像を、日中は自然光を介して認識でき、夜間はグラフィックス表示体100の裏面から透過した照明光を介して認識することができる。
【0047】
そして本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、上記構成とされているので、使用過程においてラミネートや接着貼付をすることなく使用でき、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の向上を実現することができる。また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、予め上記印刷データを作成し、画像層2の形成工程のみで製造できるので、その製造工程においても経済性又は生産性の向上を実現することができる。グラフィックス表示体100によれば、単層の基材1に印刷多層構造を設けた構造であるので、材料費も安価に済む。
【0048】
特に、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、UVインクジェットプリンターを用いて印刷を行うので、水性、溶剤系インクジェットプリンターを用いた場合と比較して、インクの瞬時乾燥が可能で、高スループットが可能である。また、インクの非吸収メディアへの直接印刷が可能で、溶剤系インクで問題となる揮発性有害化合物(VOC)が生じず、環境にやさしい。
【0049】
また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、開口孔30の開口率が、30〜45%であるので、暗すぎず、明るすぎず、適度に、内照の際と非内照の際のいずれにおいても表示内容を快適に視認することができる。
【0050】
さらに、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、基材1が透明のガラスフィルムで構成されている場合には、PVCで構成されているものと比べて、透明性が高く、明るく、はっきりと視認することができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、例えば、レーザ光の照射やパンチを用いた貫通孔が形成されておらず開口孔30を有する構成であるので、後付けでラミネートしたい場合にも、容易にできる。貫通孔が形成されていると、次の点でラミネートをうまくできない。例えば貫通孔がくすむ、貫通孔の中が曇る、空気が入りやすくなるという不具合が発生しやすい。これに対し、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、貫通孔を有さず開口孔30を複数有する構成としたので、これらの問題を解決することができる。
【0052】
本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、複数の開口孔30が均等に配置されているので、色ムラのような模様の発生を防止できる。また、本実施形態のグラフィックス表示体100によれば、UVインク印刷をしているので、白色フィルムにシルク印刷をしたときのようなドットが残ることを防止することができる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、複数の開口孔30の各列は、それぞれ中心点の位置が略ジグザグ状となるように千鳥配列されているが、何らこれに限定されず、例えば、略碁盤の目状に交差配列されていてもよい。
【0054】
(第二の実施形態)
次に、
図3を参照して、第二の実施形態のグラフィックス表示体200について説明する。
図3は、第二の実施形態のグラフィックス表示体200を示す模式的拡大断面図である。なお、第一の実施形態と同一の部分については同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0055】
第二の実施形態のグラフィックス表示体200は、基材10と、基材上に印刷された無孔表示層40と、無孔表示層上に印刷された画像層2とを備えている。すなわち、本実施形態の画像層は、第一の実施形態の画像層2に対し、さらに無孔表示層40を含む構成であり、無孔表示層40は、基材10と画像層2との間に設けられている。無孔表示層40と画像層2は、合計で30μm〜200μm厚の範囲内となるように基材上に印刷されている。
【0056】
基材10は、400μm〜800μm厚のフレキシブルシートで構成されている。このフレキシブルシートは、光透過率が約33%で、従来のフレキシブルシートに比べて、約1.5倍の明るさを有する。基材10は、この高透過性に加えて、照明光のイメージが見えにくく、糸目が見えないという特性を有する。耐気性能を有し、耐候性に優れる。勿論、軽く、柔軟性に優れるので、低温下での施工も良好である。
【0057】
無孔表示層40は、開口孔30を有さないUVインク層である。無孔表示層40に含有するUVインクは、特に限定されるものではなく、種々のものが利用できる。例えば、このUVインクを用いて第一の実施形態とは異なる第一の意匠を施すことができる。この意匠は、多色でも単一色であってもよいし、白黒、モノクロ、その他の色彩のみであってもよい。勿論、その意匠はフルカラーであってもよい。また、無孔表示層40に施す第一の意匠は、有孔表示層23に施す第二の意匠と同一とすることもできるし、異なるものとすることができる。
【0058】
また、本実施形態の無孔表示層40は、下塗り層41と、上塗り層42とを含む。下塗り層41は、基材10に印刷されており、上塗り層42は、下塗り層41に印刷されている。本実施形態では、無孔表示層40と有孔表示層23にはそれぞれ異なる意匠が施されている。具体的には、有孔表示層23には単色色彩付き有色文字からなる第二の意匠24が施されており、無孔表示層40にはその略全面を占めるフルカラーの風景写真が施されている。下塗り層41と上塗り層42とに施されたフルカラーの風景写真は、同一の意匠であり、これが2度書きされていることで、無孔表示層40に第一の意匠43が形成されている。
【0059】
本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、
図4に示すように、非内照の際に、全体的に、有孔表示層23の色彩が視認され、有孔表示層23に施された第二の意匠24が有孔表示層23の色彩とは異なる色彩の文字として視認できる。遠方から本実施形態のグラフィックス表示体200を見たときも同様である。
【0060】
そして、内照の際には、
図5に示すように、グラフィックス表示体200の略全面を占める風景写真が視認できる。これは、無孔表示層40に施された第一の意匠43が照明光を介して視認されている。さらに、有孔表示層23に施された第二の意匠24が、背景の第一の意匠43の前面に浮かび上がったかのように一際高輝度の文字として、中高輝度の昼光色、昼白色、白色、温白色又は電球色に見える。
【0061】
このように、本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、基材10と無孔表示層40と画像層2とを含む上記構成とされているので、無孔表示層40に施された第一の意匠43を表示する機能を発揮することができる。さらに、無孔表示層40と画像層2とが単層の基材上に印刷されて構成されているので、ラミネートや接着貼付をすることなく使用でき、作業性、取扱性、経済性、又は生産性の向上を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、無孔表示層40は、下塗り層41と、上塗り層42とを含むので、内照の際に、第一の意匠43の色彩が薄くなることを防止することができる。本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、第一の意匠43と異なる第二の意匠24が有孔表示層23に形成されているので、内照の際と非内照の際とで異なる意匠を表示することができる。
【0063】
さらに、本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、開口孔30の開口率が、30〜45%であるので、内照の際と非内照の際のいずれにおいても表示内容を快適に視認することができる。開口率が30%未満になると、内照の際に、第一の意匠43が露見(出現)しにくくなる。また、暗く、見づらくなる。また、開口率が45%を超えると、隠蔽率が下がり、第一の意匠43が、通常時、すなわち非内照の際に、開口孔30を介して目視可能となってしまう。
【0064】
さらにまた、本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、有孔白版層22を備えているので、第二の意匠24を正確に表現することができる。すなわち、UVインクは透過性があるため、有孔白版層22を形成する工程を省くと第二の意匠24の色彩がその前工程の有孔遮蔽層21の黒色又は暗色と混ざり混色を起こしてしまう。これに対し、本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、有孔白版層22を備えているので、これを防止することができる。
【0065】
本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、上記の構成を備えているので、第一の意匠43が第二の意匠24の干渉を受けず、両意匠の選択の自由度が高い。また、夜間、すなわち内照の際に、白色を表現することができる。本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、内照の際に、第二の意匠24である単色色彩付き有色文字が、第一の意匠43であるフルカラーの背景の風景写真の前面に白く浮き上がったように視認することができる。
【0066】
本実施形態のグラフィックス表示体200によれば、基材10は、フレキシブルシートで構成されているので、柔軟性に優れる。また、ガラスフィルムで構成された場合に比べて、低コストを実現できる。さらに、アクリル板で構成された場合に比べて、作業性、取扱性に優れる。
【0067】
[印刷データ変更テスト]
上記した実施形態のグラフィックス表示体を作製する際に、開口孔30の開口率、有孔遮蔽層21の有無、有孔白版層22の有無、基材等を種々変更し、印刷されたグラフィックス表示体の視認性を調べた。当該視認性の評価方法は以下のとおりである。
【0068】
<視認性>
各実施例で得られたグラフィックス表示体を、近傍、遠望(非内照時)、遠望(内照時)において、第二の意匠24の文字が視認できるかどうかを、下記の3段階で官能評価した。
○:適度な視認性を有する。
△:明るすぎる、又は暗く、見づらい。
×:まったく認識できない。
【0069】
<反射色・透過色>
各実施例で得られたグラフィックス表示体を、遠望(非内照時)、遠望(内照時)において、第二の意匠24の反射色・透過色を判別できるかどうかを、下記の3段階で官能評価した。
○:非内照時にカラーで表現され、かつ、内照時に白色で表現されている。
△:非内照時にカラーで表現されているが、内照時に白色で表現できない。
×:まったく認識できない。
【0070】
[実施例1]
1−1) <印刷データの作成>
各層同一サイズに設定した所定サイズの複数レイヤーからなる印刷データを用意し、有孔遮蔽層用レイヤーと、有孔白版層用レイヤーと、有孔表示層用レイヤーとを含む構成とした。有孔表示層用レイヤーには、フルカラーの第二の意匠24を含む。印刷データの大きさは、例えばA3サイズまたはそれ以上のものが挙げられる。
【0071】
そして、開口率のパラメータを設定した。開口孔30の孔径が1,800μmとなるように直径1,800μmの略円状のパスを設定し、これを複数用いて開口孔30の開口率がおよそ38%程度となるように開口孔30の孔数を設定した。次いで、これら複数のパスが所定のピッチとなるように有孔遮蔽層用レイヤーに配置した。ピッチとは、印刷データの任意の一つのパスと、このパスから最も近い位置にあるパスとの中心点間の間隔をいう。
【0072】
さらに、これら複数のパスを、有孔白版層用レイヤー及び有孔表示層用レイヤーに同位置、同心、かつ同孔径で設定孔数分のパスを均等に配置して、開口孔30が画像層全てでそれぞれに同位置、同軸、かつ同孔径で形成されるようにした。同心とは、印刷データのデータム円中心と同一中心状にあるべき点のデータム円中心からの狂いがない又は許容範囲内であることをいう。このように設定した開口率のパラメータを含む印刷データをコンピューターに保存した。
【0073】
1−2) <画像層の形成>
基材として所定の大きさの透明のガラスフィルムに、上記開口率のパラメータを保存した印刷データを用いて、コンピューターからUVインクジェットプリンター(株式会社ルキオ製、型名:LDP3200)に印刷出力することで、実施例1のグラフィックス表示体を得た。
【0074】
このとき、最上層の有孔表示層を形成する際に、第二の意匠24を上記開口率のパラメータを含む印刷データに置き換えてUVインクジェットプリンターに出力することで、有孔白版層上にフルカラーの有孔表示層23を印刷した。これにより、第二の意匠24を施した有孔表示層23を含む画像層2を基材上に形成した。
【0075】
[実施例2]
フルカラーの第一の意匠43を含む無孔表示層用レイヤーを追加した印刷データを用いた。そして、印刷の際に、第一の意匠43を開口率のパラメータを含む印刷データに変換することなくコンピューターからUVインクジェットプリンターへ印刷出力するようにした。
【0076】
また、基材を所定の大きさの透光性フレキシブルシート(カンボウプラス株式会社製「品番:TRI−B」に変更し、上記無孔表示層レイヤーを用いて、このフレキシブルシートにフルカラーのUVインクを印刷して第一の意匠43を施した下塗り層41を形成し、下塗り層上にフルカラーのUVインクを印刷して第一の意匠43を施した上塗り層42を形成し、第一の意匠43を2度書きした無孔表示層40を印刷形成した。上塗り層上に黒色のUVインクを印刷して開口孔30を複数有する有孔遮蔽層21を形成し、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2のグラフィックス表示体を得た。
【0077】
[実施例3]
開口孔の開口率を25%に変更し、それ以外は、実施例2と同様にして、実施例3のグラフィックス表示体を得た。
【0078】
[実施例4]
開口孔の開口率を50%に変更し、それ以外は、実施例2と同様にして、実施例4のグラフィックス表示体を得た。
【0079】
[実施例5]
有孔遮蔽層21を形成する工程を省いて上塗り層上に直接有孔白版層22を印刷し、それ以外は、実施例2と同様にして、実施例5のグラフィックス表示体を得た。
【0080】
[実施例6]
有孔白版層22を形成する工程を省いて有孔遮蔽層上に直接有孔表示層23を印刷し、それ以外は、実施例2と同様にして、実施例6のグラフィックス表示体を得た。
【0081】
[実施例7]
基材として、3M社製透光性フレキシブルシートを用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例7のグラフィックス表示体を得た。
【0082】
そして、得られたグラフィックス表示体の視認性及び反射色・透過色を、上記した方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0084】
<評価結果の考察>
実施例の比較から、開口率の範囲、有孔遮蔽層、有孔白版層を含む構成とした効果が明らかにわかる。すなわち、本発明の構成によれば、非内照の際に適度な隠蔽性を有し、かつ、内照の際に第二の意匠24を明るく白く視認できることを確認できた。
【0085】
なお、本発明のグラフィックス表示体に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、基材や開口孔の形状、構造に係る構成、及びグラフィックス表示体の大きさ、寸法、厚み等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0086】
たとえば、本発明に係るグラフィックス表示体は、上記実施例の如く、直径1,800μmの有底筒状の開口孔を画像層に複数有するものに限定されず、他の寸法の孔径に形成されていてもよいし、他の形状、構造の開口孔であってもよい。例えば、開口孔30は、方形筒状であってもよいし、平面視三角形状であってもよいし、平面視多角状であってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、複数の開口孔30を同一ピッチで縦横に均等に配置したが、本発明に係るグラフィックス表示体は、何らこれに限定されず、配列や配置、孔径等を変化させたり、また、なだらかにグラデーションを施すことができる。この場合において、ドットが残らないので、見た目がきれいに仕上がる。
【0088】
さらに、第二実施形態では、有孔表示層23には単色色彩付き有色文字が施されており、無孔表示層40にはフルカラーの風景写真が施されているが、本発明のグラフィックス表示体は、何らこれに限定されず、その他の文字、図形、記号、模様、絵画、絵柄、写真、色彩又はこれらの結合が施されていてもよい。例えば、昼夜で異なる文字を表示するようにしてもよい。有孔白版層22に有孔表示層23と同大・同書体・同間隔で白色の文字が施されていてもよい。