【解決手段】バッテリーケース11は、バッテリーモジュール27を収容し、車両ボディ40に対しその下面40Lと対向するように取り付けられるものであって、バッテリーケース11を構成する上壁部21の内面21Lに設けられ、バッテリーモジュール27の上面27Uに当接するケース内押圧部24と、上壁部21の外面21Uに設けられ、車両ボディ40の下面40Lに当接可能なケース外押圧部25を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、複数の前記バッテリーモジュールが近接して配されており、1つの前記ケース内押圧部が前記複数のバッテリーモジュールの前記上面に当接していてもよい。この構成によれば、ケース内押圧部の数を少なくして、バッテリーケースの内面形状を簡素化することができる。
【0010】
本発明は、前記ケース内押圧部と前記ケース外押圧部が平面視において重なるように配されていてもよい。この構成によれば、ケース内押圧部に作用する上向きの押圧力が、ケース外押圧部に直接、作用するので、上壁部の不正な変形を防止できる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図9を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1〜8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の後方については、
図1〜7における斜め左下方を前方、斜め右上方を後方と定義する。
【0012】
本実施例1では、バッテリーケース11(バッテリーパック10)をブラケット39によって車両ボディ40の下面40L(床下の外面)に取り付けるための取付け構造について説明する。バッテリーパック10は、バッテリーケース11と、バッテリーケース11内に収容される複数の冷却器26と、バッテリーケース11内に収容される複数のバッテリーモジュール27とを備えて構成されている。
【0013】
バッテリーケース11は、略水平な板状をなすロアケース12(
図4を参照)と、ロアケース12に対し上から覆うように組み付けられた合成樹脂製のカバー20(
図3を参照)とを備えている。ロアケース12は、金属製のトレイ13と、合成樹脂製の絶縁層16と、合成樹脂製の保護層19とを備えて構成されている。
【0014】
図8に示すように、トレイ13は、水平な平板状をなすロアプレート14と、ロアプレート14とは別体部品のフレーム15とからなる。フレーム15は、内部が中空の角筒材を溶接等により方形に組み付けたものであり、ロアプレート14の上面外周縁に導通可能に固着されている。ロアプレート14の材料とフレーム15の材料は、電食対策のため同一種類の金属である。
【0015】
絶縁層16は、トレイ13の内面と上面を、その全領域に亘り且つ隙間なく覆うように密着している。換言すると、絶縁層16は、ロアプレート14の上面の全領域と、フレーム15の内周面の全領域と、フレーム15の上面の全領域を覆っている。更に、絶縁層16の外周縁部16Eは、その全周に亘り、フレーム15の外周面よりも外方へ水平なフランジ状に張り出している。
【0016】
また、絶縁層16のうちロアプレート14の上面を覆う水平領域には、前後方向に細長い複数本のリブ17が突出形成されている。複数本のリブ17のうち左右両端に位置する一対のリブ17は、トレイ13の左右両側縁部の内面から張り出した形態である。トレイ13(ロアケース12)の上面には、リブ17によって区画されることで、前後方向に細長く延び且つ左右方向に並列した複数の収容凹部18が形成されている。
【0017】
図8に示すように、保護層19は、トレイ13の外面(下面)と外周面を、その全領域に亘り且つ隙間なく覆うように密着している。換言すると、保護層19は、ロアプレート14の下面の全領域と、フレーム15の外周面の全領域を覆っている。更に、保護層19の外周縁部19Eは、その全周に亘り、フレーム15の外周面よりも外方へ水平なフランジ状に張り出して、絶縁層16の外周縁部16Eの下面に対し面接触状態で積層するように固着されている。絶縁層16の外周縁部16Eの下面と保護層19の外周縁部19Eの上面とが接触する領域は、溶着、ガスケット、シール部材等のシール手段(図示省略)により液密状にシールされた状態となっている。
【0018】
ロアケース12を製造する際には、シートブロー成形やホットプレス成形によって、絶縁層16と保護層19をトレイ13と一体化させる。リブ17は、絶縁層16をトレイ13と一体化させる工程で一体形成する。トレイ13と絶縁層16と保護層19を一体化させた状態では、絶縁層16の外周縁部16Eと保護層19の外周縁部19Eが全周に亘って液密状に密着するとともに、トレイ13の外面の全領域が絶縁層16と保護層19とによって液密状に覆われる。したがって、ロアケース12の外部の液体が金属製のトレイ13に付着する虞はない。
【0019】
図3,8に示すように、カバー20は、合成樹脂材料からなり、水平な上壁部21と、上壁部21の外周縁から全周に亘って下方へ延出した周壁部22と、周壁部22の下端縁から全周に亘って外方へ水平に張り出したフランジ部23とを備えた単一部品である。カバー20は、そのフランジ部23を絶縁層16の外周縁部16Eの上面に面当たり状態で積層するようにして、ロアケース12に取り付けられている。
【0020】
カバー20のフランジ部23の下面と絶縁層16の外周縁部16Eの上面とが接触する領域は、溶着、ガスケット、シール部材等のシール手段(図示省略)により液密状にシールされた状態となっている。尚、シール手段は、インサート等によってカバー20のフランジ部23と一体化させてもよい。
【0021】
カバー20を構成する上壁部21の下面21L(バッテリーモジュール27の上面27Uと対向する内面)には、複数のケース内押圧部24が一体に形成されている。各ケース内押圧部24は、上壁部21から軸線を上下方向に向けた円筒状をなして下向きに突出している。上壁部21の上面21U(バッテリーケース11を車両ボディ40に取り付けた状態で車両ボディ40の下面40Lと対向する外面)には、複数のケース外押圧部25が一体に形成されている。各ケース外押圧部25は、上壁部21から軸線を上下方向に向けた円筒状をなして上向きに突出している。平面視において、ケース内押圧部24とケース外押圧部25は同じ位置に配置されている。また、ケース内押圧部24の外径とケース外押圧部25の外径は同じ寸法である。
【0022】
ロアケース12の上面に形成された各収容凹部18内には、夫々、冷却器26が収容されている。冷却器26は、前後方向に細長く且つ上下寸法の小さい偏平な板状をなす。冷却器26の内部には、バッテリーの熱をバッテリーパック10(バッテリーケース11)の外部へ排出するための冷却液(図示省略)が流動するようになっている。冷却器26は、熱伝導率の高い材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金など)からなる。
【0023】
図7に示すように、1つのバッテリーモジュール27は、前後方向に積層した複数のバッテリーセル28と、複数のバッテリーセル28を収容するモジュールケース29とを備えている。バッテリーセル28は、前後方向の寸法が、高さ寸法(上下寸法)及び幅寸法(左右寸法)に比べて小さい厚板状をなす。各バッテリーセル28の上端面には(+)電極30と(−)電極31が設けられており、複数のバッテリーセル28は、(+)電極30と(−)電極31を繋ぐバスバー32によって直列接続されている。
【0024】
モジュールケース29は、上面に複数の位置決め溝34が並列して形成された概ね水平板状をなす合成樹脂製又は金属製の底板部材33と、底板部材33の外周縁に取り付けた合成樹脂製又は金属製のケース本体35とを備えて構成されている。モジュールケース29の内部には、複数のバッテリーセル28が位置決め溝34に嵌合して位置決めされた状態で収容されている。ケース本体35の上面の開口縁部のうち前後方向に沿った左右両側縁部には、バッテリーセル28の浮き上がりを抑えるための板状の押え部36が形成されている。
【0025】
バッテリーセル28の上端面のうち左右両端部を除いた大部分の領域と、(+)電極30及び(−)電極31は、ケース本体35の上面の開口領域においてモジュールケース29の外部(上方)に露出している。ケース本体35の前端部下端縁と後端部下端縁には、夫々、前方へ板状に突出した形態の左右一対の固定片37が形成されている。
【0026】
バッテリーパック10を組み付ける際には、ロアケース12の上面に形成されている複数の収容凹部18に、夫々、冷却器26を収容し、その後、バッテリーモジュール27をロアケース12にセットする。このとき、各冷却器26の上面を、前後方向に間隔を空けて並べた複数(本実施例1では4つ)のバッテリーモジュール27で覆うようにする。バッテリーモジュール27は冷却器26の上面に面当たり状態で載置されるか、若しくはバッテリーモジュール27の左右両側縁がリブ17の上面に載置された状態となる。
【0027】
また、前側のバッテリーモジュール27と後側のバッテリーモジュール27との間に、二対の固定片37が左右に並ぶように配置する。最前端のバッテリーモジュール27の前方には一対の固定片37が配され、最後端のバッテリーモジュール27の後方にも一対の固定片37が配される。また、左右に隣り合うバッテリーモジュール27は、殆ど隙間を空けずに接近した状態、又は互いに当接した状態となっている。
【0028】
次に、左右方向に細長い固定バー38(
図6を参照)を、前側のバッテリーモジュール27と後側のバッテリーモジュール27との隙間に落とし込むように収容して、二対の固定片37の上面に載せる。同様に、最前端のバッテリーモジュール27の前方の固定片37の上面と、最後端のバッテリーモジュール27の後方の固定片37の上面にも、固定バー38を載せる。そして、各固定バー38に貫通したボルト(図示省略)を、リブ17にネジ込んで締め付ける。ボルトの締付けにより、
図2に示すように、複数のバッテリーモジュール27が、冷却器26の上面を覆った状態でロアケース12に固定される。
【0029】
複数のバッテリーモジュール27をロアケース12に固定した後、バッテリーモジュール27を上から覆い隠すようにカバー20を被せ、被せたカバー20を溶着等によってロアケース12に固定する。これにより、バッテリーケース11が構成されるとともに、バッテリーケース11内に複数のバッテリーモジュール27と複数の冷却器26が固定された状態で収容される。以上により、バッテリーパック10の組付けが完了する。
【0030】
バッテリーパック10を組み付けてバッテリーケース11内にバッテリーモジュール27を収容した状態では、ケース内押圧部24の下端面がバッテリーモジュール27の上面27Uに面当たり状態で当接する。このとき、
図9に示すように、1つのケース内押圧部24が、前後左右に隣り合う4つのバッテリーモジュール27の上面27Uの角部に、同時に、当接する。詳細には、モジュールケース29の押え部36の上面に当接する。ケース内押圧部24が当接することにより、バッテリーモジュール27の上方への浮き上がりが抑制又は規制されている。
【0031】
バッテリーケース11内では複数のバッテリーモジュール27が前後左右に整列しているのであるが、各ケース内押圧部24は、前後左右に隣り合う4つのバッテリーモジュール27に対して、それらの集合部分に位置する4つの角部と対応する位置のみに配置されている。したがって、バッテリーケース11内の最前端、最後端、左端及び右端に配置されているバッテリーモジュール27については、1つのバッテリーモジュール27に当接するケース内押圧部24の数が1つ又は2つだけである。また、バッテリーケース11内の最前端、最後端、左端及び右端以外に配置されているバッテリーモジュール27については、各バッテリーモジュール27の4つの角部に、4つのケース内押圧部24の一部が当接する。
【0032】
バッテリーパック10を車両ボディ40の下面40Lに取り付ける際には、複数のブラケット39を、左右方向に向けてバッテリーパック10(バッテリーケース11)の下面に潜り込ませ、図示しない固定手段によって固定する。次に、バッテリーパック10とブラケット39を車両ボディ40の下に潜り込ませ、各ブラケット39の左右両端部を車両ボディ40の下面40Lに対し図示しない固定手段によって固定する。これにより、バッテリーパック10が車両ボディ40の下面40Lに固定される。
【0033】
バッテリーパック10(バッテリーケース11)を車両ボディ40に固定した状態では、複数のケース外押圧部25の上端面が、車両ボディ40の下面40Lに対し直接的に面当たり状態で当接する。換言すると、バッテリーモジュール27の上面27Uと車両ボディ40の下面40Lとの間にカバー20の上壁部21、ケース内押圧部24及びケース外押圧部25が、隙間なく介在した状態となる。そして、ブラケット39、ロアケース12、バッテリーモジュール27、カバー20及び車両ボディ40が1つの剛体となる。
【0034】
本実施例のバッテリーケース11の取付け構造では、バッテリーケース11の下面とブラケット39の下面が、下方へ露出していて、路面(図示省略)に対し他部材を介在させない状態で対向している。そのため、走行中に飛び石や縁石等がロアケース12の下面に衝突し、その衝撃によってロアケース12が変形し、ロアケース12の変形に伴って冷却器26とモジュールケース29の底板部材33も変形する虞がある。
【0035】
底板部材33が変形すると、モジュールケース29内に収容されている複数のバッテリーセル28が上下方向に位置ずれするため、隣り合うバッテリーセル28間を連結しているバスバー32が変形したり、電極30,31が変形したりする等の不具合を生じることが懸念される。
【0036】
しかし、本実施例のバッテリーパック10の取付け構造は、ロアケース12、バッテリーモジュール27、カバー20及び車両ボディ40が1つの剛体となっているため、ロアケース12の下面が受けた衝撃は、バッテリーモジュール27とケース内押圧部24と上壁部21とケース外押圧部25を介して、剛性の高い車両ボディ40に伝わり、車両ボディ40で受け止められる。
【0037】
また、ロアケース12は、金属製のトレイ13を有していて面剛性が高いので、変形を生じ難くなっている。特に、ロアケース12のうちケース内押圧部24及びケース外押圧部25が配置されている領域が衝撃を受けた場合は、その衝撃が直接、車両ボディ40で受け止められる。
【0038】
衝撃が車両ボディ40で受け止められることにより、ロアケース12やモジュールケース29の底板部材33が変形を生じる虞がなくなるので、隣り合うバッテリーセル28同士が上下方向に位置ずれする虞もない。したがって、バスバー32が変形したり、電極30,31が変形したりすることを防止することができる。
【0039】
本実施例のバッテリーケース11は、バッテリーモジュール27を収容し、車両ボディ40に対しその下面40Lと対向するように取り付けられるものである。バッテリーケース11を構成する上壁部21の内面(下面21L)には、バッテリーモジュール27の上面27Uに当接するケース内押圧部24が設けられている。上壁部21の外面(上面21U)には、車両ボディ40の下面40Lに当接可能なケース外押圧部25が設けられている。
【0040】
この構成によれば、バッテリーケース11の底部(ロアケース12)に上向きの押圧力が付与されると、その押圧力は、バッテリーモジュール27とケース内押圧部24とケース側押圧部を介して車両ボディ40の下面40Lで受け止められるので、バッテリーケース11の底部(底板部材33)に不正な変形が生じることを防止できる。
【0041】
また、バッテリーケース11内では複数のバッテリーモジュール27が近接して配されており、1つのケース内押圧部24が複数のバッテリーモジュール27の上面27Uに当接している。この構成によれば、ケース内押圧部24の数を少なくして、バッテリーケース11の内面形状を簡素化することができる。また、ケース内押圧部24とケース外押圧部25は、平面視において重なるように配されている。この構成によれば、ケース内押圧部24に作用する上向きの押圧力が、ケース外押圧部25に直接、作用するので、上壁部21の不正な変形を防止できる。
【0042】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、1つのケース内押圧部が、4つのバッテリーモジュールの上面に当接するようにしたが、1つのケース内押圧部が当接するバッテリーもの数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。
(2)上記実施例では、1つのバッテリーモジュールの上面に対し1つのケース内押圧部、2つのストッパ内押圧部又は4つのケース内押圧部が当接するが、1つのバッテリーモジュールに当接するケース内押圧部の数は、3つでもよくも5つ以上でもよい。
(3)上記実施例では、ケース内押圧部とケース外押圧部が平面視において重なるように配されているが、ケース内押圧部とケース外押圧部は、平面視において重ならない位置関係で配されていてもよい。
(4)上記実施例では、ケース内押圧部が上壁部から円柱形に突出した形態であるが、ケース内押圧部は細長いリブ状に突出した形態であってもよい。この場合、1本のケース内押圧部が当接するバッテリーモジュールの数は、1つだけでもよく、複数でもよい。
(5)上記実施例では、ケース外押圧部が上壁部から円柱形に突出した形態であるが、ケース外押圧部は細長いリブ状に突出した形態であってもよい。
(6)上記実施例では、ケース外押圧部をバッテリーケースの上壁部に一体に形成したが、ケース外押圧部は、バッテリーケースとは別体に製造した部品を上壁部に取り形成したものであってもよい。
(7)上記実施例では、ケース内押圧部をバッテリーケースの上壁部に一体に形成したが、ケース内押圧部は、バッテリーケースとは別体に製造した部品を上壁部に取り形成したものであってもよい。
(8)上記実施例では、ケース外押圧部が、車両ボディの下面に直接当接するようになっているが、ケース外押圧部は、パッキンを介して押圧するようにしてもよい。
(9)上記実施例では、カバーを合成樹脂製としたが、カバーは、金属製の板材からなるものでもよく、金属製の板材と合成樹脂製の板材とを積層したものであってもよい。カバーを構成する金属板材の外周縁部と、ロアケースを構成する金属製のトレイの外周縁部とを接続すれば、バッテリーモジュールを包囲して電磁波シールド機能を発揮するシールドシェルを構成することがてきる。