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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-181981(P2018-181981A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/12 20130101AFI20181019BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20181019BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20181019BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20181019BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20181019BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20181019BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20181019BHJP
【FI】
   H01G11/12
   H01M10/0585
   H01M10/0525
   H01M4/70 Z
   H01G11/06
   H01G11/70
   H01G11/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-76999(P2017-76999)
(22)【出願日】2017年4月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】加納 幸司
(72)【発明者】
【氏名】横島 克典
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB06
5E078AB12
5E078BB40
5E078FA04
5E078HA02
5E078JA03
5E078JA06
5E078JA10
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS10
5H017CC05
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH03
5H029AJ14
5H029AK08
5H029AL02
5H029AL06
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ15
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生産性に優れ、負極のプレドープ状態を均一化することが可能な電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】電気化学デバイスは、複数の電極ユニット101と、遮蔽シートと、リチウムイオン供給源と、電解液とを具備する。電極ユニットは、正極120と負極130がセパレータ140を介して交互に積層されている。遮蔽シートは、複数の電極ユニットの電極ユニット間に配置され、イオン透過性を有しない。リチウムイオン供給源は、金属リチウムを備える。電解液は、複数の電極ユニット、遮蔽シート及び上記リチウムイオン供給源を浸漬している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極ユニットであって、
前記電極ユニットは、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されている
複数の電極ユニットと、
前記複数の電極ユニットの電極ユニット間に配置され、イオン透過性を有しない遮蔽シートと、
金属リチウムを備えるリチウムイオン供給源と、
前記複数の電極ユニット、前記遮蔽シート及び前記リチウムイオン供給源が浸漬されている電解液と
を具備する電気化学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイスであって、
前記遮蔽シートは、樹脂からなるシートである
電気化学デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学デバイスであって、
前記正極は、多孔金属箔である正極集電体と、正極活物質を含み、前記正極集電体の表裏両面に積層された正極活物質層を備え、
前記負極は、多孔金属箔である負極集電体と、負極活物質を含み、前記負極集電体の表裏両面に積層された負極活物質層を備える
電気化学デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
前記複数の電極ユニットは互いに同一の厚みを有する
電気化学デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
リチウムイオンキャパシタである
電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極ユニットから構成された電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量キャパシタはエネルギー回生やロードレベリング等の大電力による充放電の繰り返しが要求される分野にて利用が進んでいる。大容量キャパシタとして従来は電気二重層キャパシタが多く利用されてきたが、近年ではエネルギー密度が高いリチウムイオンキャパシタの利用が検討されている。
【0003】
リチウムイオンキャパシタはリチウムイオンを予め負極にドープしておくプレドープが必要であるが、リチウムイオンキャパシタを長期間安定的に利用するためには負極のプレドープ状態を均一とすることが重要となる。
【0004】
ここで、リチウムイオンのプレドープは、負極に電気的に接続された金属リチウムを電解液に浸すことによって行われる。リチウムイオンは電解液中を移動して負極に到達するため、負極とリチウムイオン供給源の位置関係によってプレドープ状態が影響を受ける。
【0005】
例えば、特許文献1にはセルを構成する複数の電極ユニットの両側にリチウムイオン供給源を配置することによって、負極へリチウムイオンを供給する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/112068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、電極ユニットが2組の場合には部品点数が多くなるため、電極ユニット間にリチウムイオン供給源を配置することでプレドープを進めることができる。電極ユニットが3組以上の場合には電極ユニットにおけるプレドープの比率が変わり、ドープ量が不均一となるおそれがある。さらに、電極ユニットの端子面積当たりのリチウム両を調整する必要がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性に優れ、負極のプレドープ状態を均一化することが可能な電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、複数の電極ユニットと、遮蔽シートと、リチウムイオン供給源と、電解液とを具備する。
上記電極ユニットは、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されている。
上記遮蔽シートは、上記複数の電極ユニットの電極ユニット間に配置され、イオン透過性を有しない。
上記リチウムイオン供給源は、金属リチウムを備える。
上記電解液は、上記複数の電極ユニット、上記遮蔽シート及び上記リチウムイオン供給源が浸漬されている。
【0010】
この構成によれば、遮蔽シートによって隔てられた電極ユニット間ではリチウムイオン供給源から放出されたリチウムイオンの移動が防止されている。このため、遮蔽シートによって隔てられた区間毎にリチウムイオン供給源を配置することによって、電極ユニットの負極にドープされるリチウムイオンの量を調整することができ、電極ユニット間でのリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能となる。
【0011】
上記遮蔽シートは、樹脂からなるシートであってもよい。
【0012】
イオン透過性を有しない樹脂からなるシートを遮蔽シートとして利用することが可能である。
【0013】
上記正極は、多孔金属箔である正極集電体と、正極活物質を含み、上記正極集電体の表裏両面に積層された正極活物質層を備え、上記負極は、多孔金属箔である負極集電体と、負極活物質を含み、上記負極集電体の表裏両面に積層された負極活物質層を備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、リチウムイオン供給源から放出されたリチウムイオンは正極、負極及びセパレータによって妨げられることなく電極ユニット内を移動することができ、電極ユニット内においてリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能となる。
【0015】
上記複数の電極ユニットは互いに同一の厚みを有していてもよい。
【0016】
この構成によれば、複数の電極ユニットを同一構造の電極ユニットを利用して構成することが可能であると共に各電極ユニット内においてリチウムイオンのドープ量を均一化することが可能となる。
【0017】
上記電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、生産性に優れ、負極のプレドープ状態を均一化することが可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの斜視図である。
図2】同電気化学デバイスの断面図である。
図3】同電気化学デバイスが備える電極体の断面図である。
図4】同電気化学デバイスが備える電極体を構成する電極ユニットの拡大図である。
図5】同電気化学デバイスにおけるリチウムイオンプレドープの態様を示す模式図である。
図6】同電気化学デバイスが備える電極体の他の構成を示す断面図である。
図7】同電気化学デバイスが備える電極体の他の構成を示す断面図である。
図8】同電気化学デバイスが備える電極体の他の構成を示す断面図である。
図9】同電気化学デバイスが備える電極体の他の構成を示す断面図である。
図10】同電気化学デバイスが備える電極体の他の構成を示す断面図である。
図11】本発明の実施例及び比較例に係る電気化学デバイスのリチウム残存状態及び内部抵抗上昇率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0021】
[電気化学デバイスの構造]
図1は本実施形態に係る電気化学デバイス100の斜視図であり、図2は電気化学デバイス100の断面図である。図2図1のA−A線での断面図である。
【0022】
電気化学デバイス100はリチウムイオンのプレドープが必要な電気化学デバイスであり、リチウムイオンキャパシタとすることができる。また電気化学デバイス100はリチウムイオン電池等のリチウムイオンのプレドープが必要な他の電気化学デバイスであってもよい。以下の説明では電気化学デバイス100はリチウムイオンキャパシタであるものとする。
【0023】
図1及び図2に示すように、電気化学デバイス100は、電極ユニット101、片面リチウムイオン供給源102、両面リチウムイオン供給源103、遮蔽シート104、外装フィルム105、正極端子106及び負極端子107を備える。以下、電極ユニット101、片面リチウムイオン供給源102、両面リチウムイオン供給源103及び遮蔽シート104の積層体を電極体108とする。図3は電極体108の模式図である。
【0024】
同図に示すように、電極体108は複数の電極ユニット101を備える。図4は、一つの電極ユニット101の模式図である。同図に示すように電極ユニット101は正極120、負極130及びセパレータ140を備える。
【0025】
正極120は、正極集電体121及び正極活物質層122を備える。正極集電体121は多数の貫通孔が形成された多孔金属箔であり、例えばアルミニウム箔である。正極集電体121の厚みは例えば0.03mmである。正極集電体121は直接又は図示しない配線を介して正極端子106に電気的に接続されている。
【0026】
正極活物質層122は、正極集電体121の表裏両面に形成されている。正極活物質層122は正極活物質とバインダ樹脂が混合されたものとすることができ、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料、例えば活性炭やポリアセン炭化物等である。
【0027】
バインダ樹脂は、正極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0028】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、正極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子等であってもよい。
【0029】
負極130は、負極集電体131及び負極活物質層132を備える。負極集電体131は、多数の貫通孔が形成された多孔金属箔であり、例えば銅箔である。負極集電体131の厚みは例えば0.015mmである。負極集電体131は直接又は図示しない配線等によって負極端子107に電気的に接続されている。
【0030】
負極活物質層132は、負極集電体131の表裏両面に形成されている。負極活物質層132は負極活物質とバインダ樹脂が混合されたものとすることができ、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンを吸蔵可能な材料、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料や、Si、SiOなどの合金系材料、または、それらの複合材料を用いることができる。
【0031】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0032】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子等であってもよい。
【0033】
セパレータ140は、正極120と負極130を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。セパレータ140は、織布、不織布又は合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができ、例えばオレフィン系樹脂を主材料としたものとすることができる。
【0034】
正極120、負極130及びセパレータ140は、図4に示すように、正極120と負極130がセパレータ140を介して交互となるように積層され、セパレータ140を除く最下層及び最上層は負極130となるように構成されている。正極120及び負極130の積層数は特に限定されず、例えば正極120が9層、負極130が10層等とすることができる。
【0035】
片面リチウムイオン供給源102は、図3に示すように、電極体108の最下層及び最上層の電極ユニット101と外装フィルム105の間に配置され、電極ユニット101の負極130にリチウムイオンを供給する。図3に示すように、片面リチウムイオン供給源102は、リチウム用集電体151と金属リチウム152を備える。
【0036】
リチウム用集電体151は金属箔であり、例えば銅箔である。リチウム用集電体151は多数の貫通孔が設けられた多孔金属箔であってもよく、貫通孔を有しない金属箔であってもよい。リチウム用集電体151は、電極ユニット101の負極集電体131と直接又は負極端子107を介して電気的に接続されている。
【0037】
図3に示すように、リチウム用集電体151の主面のうち、電極ユニット101側の面を第1の主面151aとし、その反対側の面を第2の主面151bとする。
【0038】
金属リチウム152は圧着等によって第1の主面151aに貼付されている。金属リチウム152は、第1の主面151aの全面に渡って均等な厚さを有するものが好適である。
【0039】
両面リチウムイオン供給源103は、図3に示すように、2つの電極ユニット101の間に配置され、電極ユニット101の負極130にリチウムイオンを供給する。図3に示すように、両面リチウムイオン供給源103は、リチウム用集電体161と金属リチウム162を備える。
【0040】
リチウム用集電体161は金属箔であり、例えば銅箔である。リチウム用集電体161は多数の貫通孔が設けられた多孔金属箔であってもよく、貫通孔を有しない金属箔であってもよい。リチウム用集電体151は、電極ユニット101の負極集電体131と直接又は負極端子107を介して電気的に接続されている。
【0041】
図3に示すように、リチウム用集電体161の主面のうち、一方の電極ユニット101側の面を第1の主面161aとし、その反対側の面を第2の主面161bとする。
【0042】
金属リチウム162は第1の主面161a及び第2の主面161bの両面に、圧着等によってそれぞれ貼付されている。金属リチウム162は、第1の主面161a及び第2の主面161bの全面に渡って均等な厚さを有するものが好適である。
【0043】
なお、両面リチウムイオン供給源103は、二つの片面リチウム供給源102を第2の主面151bが隣接するように積層して構成されたものであってもよい。
【0044】
遮蔽シート104は、二つの電極ユニット101の間に配置され、電極ユニット101間でのイオンの移動を遮蔽する。遮蔽シート104は、イオン透過性を有しない樹脂からなるシートとすることができる。また、遮蔽シート104は、イオン透過性を有しないものであればよく、例えば金属箔であってもよい。遮蔽シート104は電極ユニット101より大きいものが好適である。
【0045】
外装フィルム105は、電極体108及び電解液を収容する収容空間を形成する。外装フィルム105はアルミニウム箔等の金属箔と樹脂を積層したラミネートフィルムであり、電極体108の周囲で融着され、封止されている。外装フィルム105に代えて、収容空間を封止可能な缶状部材等を利用してもよい。
【0046】
電極体108と共に収容空間に収容される電解液は特に限定されないが、例えばLiPF等を溶質とする溶液を用いることができる。
【0047】
正極端子106は、正極120の外部端子であり、各電極ユニット101の正極120に電気的に接続されている。正極端子106は図1に示すように外装フィルム105の間から収容空間の外部へ引き出されている。正極端子106は導電性材料からなる箔や線材であってもよい。
【0048】
負極端子107は、負極130の外部端子であり、各電極ユニット101の負極130に電気的に接続されている。負極端子107は図1に示すように外装フィルム105の間から収容空間の外部へ引き出されている。負極端子107は導電性材料からなる箔や線材であってもよい。
【0049】
[リチウムイオンのプレドープについて]
電気化学デバイス100の製造段階において、リチウム用集電体151及びリチウム用集電体161と負極集電体131を電気的に接続した状態で電極体108を電解液に浸漬させると、金属リチウム152及び金属リチウム162が溶解し、リチウムイオンが電解液中に放出される。リチウムイオンは電解液中を移動し、各電極ユニット101が備える負極130の負極活物質層132中にドープ(プレドープ)される。
【0050】
図5はリチウムイオンのプレドープを示す模式図である。同図に示すように、金属リチウム152及び金属リチウム162から放出されたリチウムイオンは、金属リチウムが隣接する電極ユニット101に供給され(図中矢印A)、ドープされる。
【0051】
ここで、電極体108において遮蔽シート104によって隔てられた区画(図中、区画D1〜D3)の間では遮蔽シート104によってリチウムイオンの移動が隔てられており、リチウムイオンは自己が溶出した金属リチウム152又は金属リチウム162と同一区画内の電極ユニット101にほぼ全量がドープされる。
【0052】
なお、リチウムイオンは電解液を介して隣接する区画への移動(図中矢印B)も可能であるが、遮蔽シート104を迂回する必要があり、隣接する区画の電極ユニット101へドープされるリチウムイオン量は極めて少なくなる。
【0053】
図5に示すように、区画D1及び区画D3ではそれぞれ一つの電極ユニット101と一つの片面リチウムイオン供給源102が設けられ、区画D2では二つの電極ユニット101と一つの両面リチウムイオン供給源103が設けられている。したがって、各電極ユニット101に供給されるリチウムイオン量は同程度となる。
【0054】
仮に遮蔽シート104が設けられない場合には、重力の影響等によってリチウムイオンの供給が偏り、電極ユニット101間でドープ量が不均一となるおそれがある。これに対して遮蔽シート104を設けることにより、区画毎にリチウムイオンの供給量を同程度とし、リチウムイオンのドープ量は均一化することが可能である。
【0055】
なお、上記のように金属リチウム152及び金属リチウム162はプレドープにおいて溶解し、電気化学デバイス100の使用時には金属リチウム152及び金属リチウム162は存在しない。しかしながら、リチウム用集電体151及びリチウム用集電体161に存在する金属リチウムの残渣等によってプレドープ前の金属リチウムの配置は判別可能である。
【0056】
[電極体の他の構成]
本発明に係る電極体108の構成は上記のものに限られず、以下に示す各構成とすることができる。
【0057】
図6に示すように、電極体108は、一つの電極ユニット101とそれに隣接する片面リチウムイオン供給源102を備える区画(図中、区画D1、D4)と、二つの電極ユニット101とその間に配置された両面リチウムイオン供給源103を備える区画(図中、区画D2、D3)を二つ以上備えるものであってもよい。
【0058】
さらに、図7に示すように電極体108は、一つの電極ユニット101とそれに隣接する片面リチウムイオン供給源102を備える区画(図中、区画D1、D2)のみを備えるものであってもよい。
【0059】
さらに、図8に示すように、電極体108は、二つの電極ユニット101とその間に配置された両面リチウムイオン供給源103を備える区画(図中、区画D1、D2)のみを備えるものであってもよい。また、図9に示すように電極体108はこの区画(図中、区画D1〜D3)を三つ以上備えるものであってもよい。
【0060】
さらに、図10に示すように、電極体108は、二つの電極ユニット101とその間に配置された両面リチウムイオン供給源103を備える区画(図中、区画D1)を一つのみ備えるものであってもよい。
【0061】
上記いずれの構成においても遮蔽シート104が区画間でのリチウムイオンの移動を遮蔽し、各区画における電極ユニット101へのリチウムイオンのドープ量を均一化させることが可能である。
【実施例】
【0062】
銅箔の片面又は両面に金属リチウムを圧着し、リチウムイオン供給源を作製した。正極と負極をセパレータを介して積層し、上述の電極ユニットを作製した。電極ユニット間に遮蔽シートを配置し、図7(実施例1)及び図10(実施例2)に示す電極体を備えるリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0063】
また、比較例として、図7に示す構成から遮蔽シートを取り除いたリチウムイオンキャパシタ(比較例1)及び図10に示す構成から遮蔽シートを取り除いたキャパシタ(比較例2)を作製した。
【0064】
実施例及び比較例に係るリチウムイオンキャパシタを40℃環境下で30日保管後、最外層の電極ユニットの外側の負極、それ以外の電極ユニットは中央部の負極にドープされたリチウムイオン量を評価した。セル容量を基準とした電流量100Cで充放電を行った。充電100CのCCCV1min、放電100C、2.2Vカットオフで充放電サイクルを実施した。初期の内部抵抗を100として、内部抵抗の変化率を評価した。なお、内部抵抗は放電曲線から求められる電圧降下から求めた。図11は内部抵抗の変化率を示す表である。
【0065】
同図に示すように、実施例に係るリチウムイオンキャパシタでは比較例に係るリチウムイオンキャパシタに比べて内部抵抗の上昇率が小さく、ドープ量の均一化により寿命が向上していることがわかる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
100…電気化学デバイス
101…電極ユニット
102…片面リチウムイオン供給源
103…両面リチウムイオン供給源
104…遮蔽シート
105…外装フィルム
106…正極端子
107…負極端子
108…電極体
120…正極
121…正極集電体
122…正極活物質層
130…負極
131…負極集電体
132…負極活物質層
140…セパレータ
151、161…リチウム用集電体
152、162…金属リチウム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11