【解決手段】電気化学デバイスは、第1電極ユニットにおいては、第1正極と第1負極とが第1セパレータを介して交互に積層されている。第2電極ユニットにおいては、第2正極と第2負極とが第2セパレータを介して交互に積層されている。リチウムイオン供給源は、上記第1電極ユニットと上記第2電極ユニットとの間に設けられている。第3セパレータは、上記第1電極ユニットに捲回されている。第4セパレータは、上記第2電極ユニットに捲回されている。上記第1電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第3セパレータの重複数は、上記第2電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第4セパレータの重複数と同じである。上記第1負極及び上記第2負極には、上記リチウムイオン供給源に設けられた金属リチウムからリチウムイオンのプレドープがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の電極ユニットのそれぞれがセパレータによって積層捲回された場合、複数の電極ユニット間に位置するセパレータの枚数が異なると、電気化学デバイスにおいて、リチウムイオンのプレドープのばらつきがより大きくなる可能性がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、リチウムイオンのプレドープのばらつきが抑制された電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、第1電極ユニットと、第2電極ユニットと、リチウムイオン供給源と、第3セパレータと、第4セパレータとを具備する。上記第1電極ユニットにおいては、第1正極と第1負極とが第1セパレータを介して交互に積層されている。上記第2電極ユニットにおいては、第2正極と第2負極とが第2セパレータを介して交互に積層されている。上記リチウムイオン供給源は、上記第1電極ユニットと上記第2電極ユニットとの間に設けられている。上記第3セパレータは、上記第1電極ユニットに捲回されている。上記第4セパレータは、上記第2電極ユニットに捲回されている。上記第1電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第3セパレータの重複数は、上記第2電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第4セパレータの重複数と同じである。上記第1負極及び上記第2負極には、上記リチウムイオン供給源に設けられた金属リチウム層からリチウムイオンのプレドープがなされている。
【0008】
このような電気化学デバイスであれば、上記第1電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第3セパレータの重複数が上記第2電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第4セパレータの重複数と同じになり、リチウムイオンのプレドープのばらつきが抑制される。
【0009】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記第1電極ユニットに捲回された上記第3セパレータの最外端は、上記第1電極ユニットの側壁に並んでもよい。上記第2電極ユニットに捲回された上記第4セパレータの最外端は、上記第2電気ユニットの側壁に並んでもよい。このような電気化学デバイスであれば、第1及び第2電気ユニットにおけるプレドープのばらつきがさらに抑制される。
【0010】
上記の電気化学デバイスは、上記第3セパレータの上記最外端を上記第3セパレータ自体に固定する第1巻止テープと、上記第4セパレータの上記最外端を上記第4セパレータ自体に固定する第2巻止テープとをさらに具備してもよい。このような電気化学デバイスであれば、第3及び第4セパレータの最外端が巻止テープによって各セパレータ自体に確実に固定されるとともに、プレドープの際、第1及び第2電気ユニットにおけるプレドープのばらつきがさらに抑制される。
【0011】
上記の電気化学デバイスは、上記第3セパレータの上記最外端を上記第3セパレータ自体に固定する第1粘着剤層と、上記第4セパレータの上記最外端を上記第4セパレータ自体に固定する第2粘着剤層とをさらに具備してもよい。このような電気化学デバイスであれば、巻止テープによる遮蔽効果が減少し、第1及び第2電気ユニットにおけるプレドープのばらつきがさらに抑制される。
【0012】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記第3セパレータの上記最外端は、熱圧着によって上記第3セパレータ自体に固定されてもよい。上記第4セパレータの上記最外端は、熱圧着によって上記第4セパレータ自体に固定されてもよい。このような電気化学デバイスであれば、このような電気化学デバイスであれば、巻止テープによる遮蔽効果が減少し、第1及び第2電気ユニットにおけるプレドープのばらつきがさらに抑制される。
【0013】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記リチウムイオン供給源とは反対側の上記第1電極ユニットに積層された上記第3セパレータの重複数は、上記第1電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第3セパレータの重複数と同じでもよい。このような電気化学デバイスであれば、さらに第1電気ユニットの積層が可能になり、蓄電容量の設計自由度が増す。
【0014】
上記の電気化学デバイスにおいては、上記リチウムイオン供給源とは反対側の上記第2電極ユニットに積層された上記第4セパレータの重複数は、上記第2電極ユニットと上記リチウムイオン供給源との間における上記第4セパレータの重複数と同じでもよい。このような電気化学デバイスであれば、さらに第2電極ユニットの積層が可能になり、蓄電容量の設計自由度が増す。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、リチウムイオンのプレドープのばらつきがより抑制された電気化学デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。XYZ軸は、互いに直交する。
【0018】
[電気化学デバイスの構成]
本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を以下に説明する。本実施形態で例示される電気化学デバイス100は、リチウムイオンキャパシタである。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
図2は、
図1の枠Pにおける電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
【0020】
図1及び
図2に示す電気化学デバイス100は、電極ユニット101(第1電極ユニット)と、電極ユニット102(第2電極ユニット)と、リチウムイオン供給源180と、セパレータ153(第3セパレータ)と、セパレータ154(第4セパレータ)とを具備する。電極ユニット101、102、リチウムイオン供給源180及びセパレータ153、154は、電解液によって浸漬されることが可能である。
図1及び
図2には、リチウムイオンが電極ユニット101、102にプレドープされる前の状態が表されている。
【0021】
電極ユニット101、リチウムイオン供給源180及び電極ユニット102は、Z軸方向(第1方向)に並ぶ。電極ユニット101、102及びリチウムイオン供給源180は、X−Y軸平面おいて、例えば、矩形状である。リチウムイオン供給源180は、例えば、シート状である。例えば、電極ユニット101がリチウムイオン供給源180に対向する主面(上面101u)は、電極ユニット102がリチウムイオン供給源180に対向する主面(下面102d)と、Z軸方向において重なる。リチウムイオン供給源180は、電極ユニット101の上面101uと、電極ユニット102の下面102dとの間に設けられている。
【0022】
本実施形態では、便宜上、電極ユニット101から電極ユニット102に向かう方向を上方、電極ユニット102から電極ユニット101に向かう方向を下方とする。但し、電気化学デバイス100の用途によっては、その方向は問われない。また、電極ユニット及びリチウムイオン供給源は、図示する数に限らない。
【0023】
図1に示すように、セパレータ153は、電極ユニット101を囲む。例えば、セパレータ153は、電極ユニット101のXZ軸平面における任意の断面において電極ユニット101を囲んでいる。これにより、リチウムイオン供給源180は、電極ユニット101に接触しなくなる。但し、セパレータ153は、電解液中に含まれるイオンを透過する。例えば、セパレータ153は、電極ユニット101の上面101uを覆い、電極ユニット101を旋回し、上面101uとは反対側の下面101dを覆い、上面101uを再び覆い、下面101dを再び覆っている。すなわち、セパレータ153は、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間で重複するように設けられている。さらに、セパレータ153は、リチウムイオン供給源180とは反対側の下面101dの側においても重複するように設けられている。
【0024】
図1の例では、この重複した部分のセパレータ153の重複数は、「2」である。セパレータ153は、
図1に例示される重複数以上に電極ユニット101に捲回されてもよい。また、
図1の例では、電極ユニット101のY軸方向(第2方向)における側壁は、セパレータ153から開放されている。電極ユニット101は、セパレータ153から開放された側壁を経由してリチウムイオン供給源180、他の電極ユニット及び電極端子等の外部との電気的な接続を図ることができる。
【0025】
セパレータ154は、電極ユニット102を囲む。例えば、セパレータ154は、電極ユニット102のXZ軸平面における任意の断面において電極ユニット102を囲む。これにより、リチウムイオン供給源180は、電極ユニット102に接触しなくなる。但し、セパレータ154は、電解液中に含まれるイオンを透過する。例えば、セパレータ154は、電極ユニット102の上面102uを覆い、電極ユニット102を旋回し、上面102uとは反対側の下面102dを覆い、上面102uを再び覆い、下面102dを再び覆っている。すなわち、セパレータ154は、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間で重複するように設けられている。さらに、セパレータ154は、リチウムイオン供給源180とは反対側の上面102uの側においても重複するように設けられている。
【0026】
図1の例では、この重複した部分のセパレータ154の重複数は、例えば、「2」である。セパレータ154は、
図1に例示される重複数以上に電極ユニット102に捲回されてもよい。また、
図1の例では、電極ユニット102のY軸方向における側壁は、セパレータ154から開放されている。電極ユニット102は、セパレータ154から開放された側壁を経由してリチウムイオン供給源180、他の電極ユニット及び電極端子等の外部との電気的な接続を図ることができる。
【0027】
電気化学デバイス100においては、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間においてセパレータ153が重複した部分のセパレータ153の重複数は、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間においてセパレータ154が重複した部分のセパレータ154の重複数と同じである。また、リチウムイオン供給源180とは反対側の電極ユニット101に積層されたセパレータ153の重複数は、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ153の重複数と同じである。さらに、リチウムイオン供給源180とは反対側の電極ユニット102に積層されたセパレータ154の重複数は、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ154の重複数と同じである。例えば、それぞれの重複数は、「2」である。また、それぞれの重複数は、「2」に限らず、例えば、3重〜10重であってもよい。
【0028】
リチウムイオン供給源180は、電極ユニット101と電極ユニット102との間に設けられている。リチウムイオン供給源180は、電極ユニット101の上面101uまたは電極ユニット102の下面102dとZ軸方向において重なる。リチウムイオン供給源180は、金属箔181と、金属リチウム層183とを有する。金属箔181は、電極ユニット101、102の負極と直接的または間接的な電気的接続がなされている。金属リチウム層183は、金属箔181の上面181u及び下面181dに設けられている。
【0029】
金属箔181には、複数の貫通孔181hが設けられてもよい。金属箔181は、例えば、多孔金属箔である。金属リチウム層183は圧着等によって金属箔181に固定されている。金属箔181の両主面に設けられた金属リチウム層183は、金属箔181の主面に沿って均等な厚さを有する。
【0030】
電気化学デバイス100においては、電極ユニット101に捲回されたセパレータ153の最外端153tは、電極ユニット101の上面101uとリチウムイオン供給源180との間から外れるように配置される。例えば、セパレータ153の最外端153tは、X軸方向(第3方向)において電極ユニット101の側壁101wに並ぶ。また、電極ユニット102に捲回されたセパレータ154の最外端154tは、電極ユニット102の下面102dとリチウムイオン供給源180との間から外れるように配置される。例えば、セパレータ154の最外端154tは、X軸方向において電気ユニット102の側壁102wに並んでいる。このように、セパレータ153の構成と、セパレータ154の構成とは、同じになっている。または、セパレータ153の構成とセパレータ154の構成とをリチウムイオン供給源180の中心軸180cに対して線対称にしてもよい。
【0031】
電気化学デバイス100においては、セパレータ153の最外端153tが巻止テープ161(第1巻止テープ)によってセパレータ153自体に固定されている。セパレータ154の最外端154tは、巻止テープ162(第2巻止テープ)によってセパレータ154自体に固定されている。巻止テープ161、162は、例えば、粘着層を有する樹脂製の粘着テープである。
【0032】
図2に示すように、電極ユニット101は、負極130(第1負極)と、正極140(第1正極)と、セパレータ151(第1セパレータ)を有する。負極130、正極140及びセパレータ151のそれぞれは、XY平面において平行に配置されている。負極130、正極140及びセパレータ151のそれぞれは、例えば、シート状である。
【0033】
電極ユニット101においては、正極140と負極130とがセパレータ151を介して交互にZ軸方向に積層されている。複数の正極140同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。複数の負極130同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。負極130の個数及び正極140の個数は、図示される数に限られない。
【0034】
負極130は、負極集電体132と、負極活物質層133とを有する。負極活物質層133は、負極集電体132の主面132a、132bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、負極集電体132は、2つの負極活物質層133の間に設けられている。負極130における任意の負極集電体132は、直接的または間接的に、他の負極集電体132、金属箔181、負極端子等に電気的に接続されている。
【0035】
正極140は、正極集電体142と、正極活物質層143とを有する。正極活物質層143は、正極集電体142の主面142a、142bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、正極集電体142は、2つの正極活物質層143の間に設けられている。正極140における任意の正極集電体142は、直接的または間接的に、他の正極集電体142、正極端子等に電気的に接続されている。
【0036】
セパレータ151は、負極130と正極140とを絶縁する。セパレータ151は、負極130と正極140を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。複数の負極130には、リチウムイオン供給源180に設けられた金属リチウムからリチウムイオンのプレドープがなされる。
【0037】
電極ユニット102は、負極135(第2負極)と、正極145(第2正極)と、セパレータ152(第2セパレータ)を有する。負極135、正極145及びセパレータ152のそれぞれは、XY平面において平行に配置されている。負極135、正極145及びセパレータ152のそれぞれは、例えば、シート状である。
【0038】
電極ユニット102においては、正極145と負極135とがセパレータ152を介して交互にZ軸方向に積層されている。複数の正極145同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。複数の負極135同士は、直接的または間接的に電気的な接続がなされている。負極135の個数及び正極145の個数は、図示される数に限られない。電極ユニット101と同様に、XY平面において、負極135が正極145よりも外側に突き出ている。
【0039】
負極135は、負極集電体137と、負極活物質層138とを有する。負極活物質層138は、負極集電体137の主面137a、137bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、負極集電体137は、2つの負極活物質層138の間に設けられている。負極135における任意の負極集電体137は、直接的または間接的に、他の負極集電体137、金属箔181、負極端子等に電気的に接続されている。
【0040】
正極145は、正極集電体147と、正極活物質層148とを有する。正極活物質層148は、正極集電体147の主面147a、147bに設けられている。すなわち、Z軸方向において、正極集電体147は、2つの正極活物質層148の間に設けられている。正極145における任意の正極集電体147は、直接的または間接的に、他の正極集電体147、正極端子等に電気的に接続されている。
【0041】
セパレータ152は、負極135と正極145とを絶縁する。セパレータ152は、負極135と正極145を隔て、電解液中に含まれるイオンを透過する。複数の負極135には、リチウムイオン供給源180に設けられた金属リチウムからリチウムイオンのプレドープがなされる。プレドープ後においては、
図1、2から、金属リチウム層183が電解液に溶解し厚さが減少する。
【0042】
図3(a)は、本実施形態に係る外装フィルムに封止された電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
図3(b)は、本実施形態に係る外装フィルムに封止された電気化学デバイスを示す模式的斜視図である。
図3(a)には、
図3(b)のA−A線断面が示されている。
【0043】
図3(a)に示すように、電気化学デバイス100は、電極ユニット101、102が外装フィルム106に封止されている。外装フィルム106内の電極ユニット101、102には、電解液120が含浸されている。
図3(a)の例では、
図1、2の構成に電極ユニット101が増設されている。増設される電極ユニットの数は、図示する数に限らない。電極ユニット101と電極ユニット102との間には、リチウムイオン供給源180が設けられている。負極端子131は、電極ユニット101、102のそれぞれの負極に電気的に接続されている。正極端子141は、電極ユニット101、102のそれぞれの正極に電気的に接続されている。
【0044】
外装フィルム106は、外装フィルム106aと外装フィルム106bとを有する。外装フィルム106aと、外装フィルム106bとは、電極ユニット102の外周で、例えば、熱圧着等によって接合されている。
【0045】
電気化学デバイス100の材料について説明する。
【0046】
金属箔181は、例えば、銅箔である。金属リチウム層183は、例えば、金属リチウム箔である。金属リチウム層183の量は、リチウムイオンのプレドープにおいて負極活物質層133、138にドープ可能な範囲で任意に調整される。
【0047】
負極集電体132、137は、例えば、金属箔である。負極集電体132、137は、例えば、銅箔等でもよい。負極活物質層133、138に含まれる負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵と放出とが可能な材料であり、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料、ケイ素、酸化ケイ素等の合金系材料、または、それらの複合材料でもよい。負極活物質層133、138は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものでもよく、さらに導電助剤を含んでもよい。例えば、負極活物質層133、138は、上記の活物質、導電助剤及び合成樹脂のスラリー状の混合物を塗布してシート状に形成し、それを裁断したものである。
【0048】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂でよい。バインダ樹脂は、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0049】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させるものでよい。導電助剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0050】
正極集電体142、147の材料は、例えば、アルミニウム等である。正極活物質層143、148に含まれる正極活物質は、例えば、活性炭、PAS(Polyacenic Semiconductor:ポリアセン系有機半導体)、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム等のリチウム複合酸化物等の活物質の少なくともいずれかを含む。正極活物質層143、148は、上記の活物質、導電助剤(例えば、カーボンブラック)及び合成樹脂(例えば、PTFE等)のスラリー状の混合物を塗布してシート状に形成し、それを裁断したものである。
【0051】
セパレータ151、152、153、154は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等でもよい。セパレータ151、152、153,154は、ガラス繊維、セルロース繊維、オレフィン系樹脂等のプラスチック繊維等からなる多孔質シートでもよい。
【0052】
電解液は、任意に選択することが可能である。例えば、電解液において、カチオンとしては、リチウムイオンを少なくとも含む。アニオンとしてはBF
4−(四フッ化ホウ酸イオン)、PF
6−(六フッ化リン酸イオン)、(CF
3SO
2)
2N
−(TFSAイオン)等のアニオンを含み、溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン等を含むものとすることができる。具体的には、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)または、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)のプロピレンカーボネート溶液等でもよい。
【0054】
本実施形態に係る電気化学デバイス100の作用を説明する前に、比較例に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0055】
図4(a)及び
図4(b)は、比較例に係る電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
【0056】
図4(a)に示す電気化学デバイス501では、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ153の重複数は、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ154の重複数と異なっている。
【0057】
例えば、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間では、セパレータ153の重複数は、「2」であり、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間では、セパレータ154が重複していない。
【0058】
このような構成においては、プレドープの際、リチウムイオンがセパレータの重複数がより少ないセパレータ154を介して電極ユニット102に浸透しやすくなる。これにより、電気化学デバイス501では、電極ユニット101と電気ユニト102とにおけるリチウムイオンのドープ量の差が大きくなってしまう。
【0059】
また、
図4(b)に示す電気化学デバイス502では、セパレータ153の最外端153tが電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間に位置している。この最外端153tは、巻止テープ161によってセパレータ153に固定されている。さらに、電気化学デバイス502では、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間にセパレータ153が重複する部分がある。一方、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間では、セパレータ154が重複していない。さらに、電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間に、巻止テープ162が位置していない。
【0060】
このような構成においては、プレドープの際、リチウムイオンがセパレータの重複数がより少ないセパレータ154を介して電極ユニット102に浸透しやすくなる。さらに、プレドープの際、巻止テープ161によってリチウムイオンが遮蔽されて巻止テープ161付近の負極130にリチウムイオンがドープされにくくなる。これにより、電気化学デバイス502では、電極ユニット101と電気ユニト102とにおいて、リチウムイオンのドープ量の差が大きくなってしまう。さらに、電極ユニット101の内部においてもリチウムイオンのプレドープのばらつきが大きくなる。
【0061】
これに対して、本実施形態に係る電気化学デバイス100では、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ153の重複数が電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間におけるセパレータ154の重複数と同じである(
図1、2)。
【0062】
これにより、電気化学デバイス100においては、プレドープの際、セパレータ153を介して電極ユニット101に拡散するリチウムイオンの量と、セパレータ154を介して電極ユニット102に拡散するリチウムイオンの量とが均衡し、電極ユニット101、102のそれぞれにおけるリチウムイオンのプレドープのばらつきがより抑制される。例えば、電気化学デバイス100では、電極ユニット101と電気ユニト102とにおけるリチウムイオンのドープ量の差が比較例に比べて減少する。
【0063】
さらに、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間及び電極ユニット102とリチウムイオン供給源180との間においてセパレータを重複させることにより、次の効果を奏する。
【0064】
例えば、電気化学デバイス100では、リチウムイオンがセパレータ153を介して電極ユニット101に浸透するときのリチウムイオンの拡散速度が単層のセパレータを用いた場合に比べて緩和される。この結果、プレドープの際には、電極ユニット101の内部への急峻なドープが抑制される。すなわち、プレドープの際には、電極ユニット101の内部にリチウムイオンが徐々に浸透し、電極ユニット101の内部におけるリチウムイオンのドープ量がより均一になる。電極ユニット102も同様な作用をする。
【0065】
また、電気化学デバイス100においては、セパレータ153の最外端153tが電極ユニット101の側壁101wの横に位置している。これにより、電極ユニット101とリチウムイオン供給源180との間では、セパレータ153の段差がなく、セパレータ153の枚数が同じになる。この結果、プレドープの際、リチウムイオンが電極ユニット101の内部により均等に浸透しやすくなり、電極ユニット101の内部におけるリチウムイオンのドープ量がより均一になる。電極ユニット102も同様な作用をする。
【0066】
また、電気化学デバイス100においては、巻止テープ161が電極ユニット101の側壁101wの横に位置している。これにより、セパレータ153の最外端153tが巻止テープ161によってセパレータ153自体に確実に固定されるとともに、プレドープの際、リチウムイオンが巻止テープ161によって遮蔽されにくくなる。この結果、電極ユニット101の内部におけるリチウムイオンのドープ量がより均一になる。電極ユニット102も同様な作用をする。
【0067】
また、プレドープ後は、リチウムイオン供給源180から金属箔181が露出し、金属箔181がセパレータに直接接触する場合がある。さらに、プレドープ後に金属リチウム層183が残存した場合には、金属リチウム片がセパレータに直接接触する場合がある。このような場合、電気化学デバイス100では、セパレータ153が電極ユニット101と金属箔181との間で重複しているため、セパレータ153の機械的強度が強くなり、セパレータ153は、破損しにくくなっている。これにより、電気化学デバイス100の耐久性が向上する。
【0068】
このように、電気化学デバイス100においては、リチウムイオンのプレドープのばらつきが抑制される。
【0069】
また、電気化学デバイス100においては、電極ユニット101(または、電極ユニット102)において、上面側及び下面側におけるセパレータの重複数が同じである。従って、
図1、2に例示する構成のほかに、電極ユニット101(または、電極ユニット102)を追加積層するこが可能になる。この場合、リチウムイオン供給源180は、それぞれの電極ユニット間に配置される。これにより、各電極ユニットにおけるリチウムイオンのドープ量がより均一になるともに、蓄電容量の設計自由度が増加する。
【0070】
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態の変形例に係る電気化学デバイスを示す模式的断面図である。
【0071】
図5(a)に示す変形例では、セパレータ153の最外端153tが粘着剤層170によってセパレータ153自体に固定されている。セパレータ154の最外端154tも、粘着剤層170によってセパレータ154自体に固定されてもよい。
【0072】
図5(b)に示す変形例では、セパレータ153の最外端153tが熱圧着によってセパレータ153自体に固定されている。例えば、セパレータ153の最外端153tは、熱圧着領域153bにおいて、セパレータ153自体に固定されている。セパレータ154の最外端154tも、熱圧着によってセパレータ154自体に固定されてもよい。
【0073】
このような構成であれば、巻止テープ161が用いられず、セパレータ153の最外端153tがセパレータ153自体に固定されている。これにより、巻止テープ161によって被覆されるセパレータ153の部分の面積が減少し、巻止テープ161によるリチウムイオンの遮蔽効果がより減退する。これにより、電気ユニット101の内部におけるリチウムイオンのドープ量がより均一になる。電気ユニット102においても同様の作用を奏する。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。