【解決手段】 積層セラミックコンデンサは、セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、積層構造において同じ端面に露出する内部電極層同士が異なる端面に露出する内部電極層を介さずに対向するエンドマージン領域、および積層構造において積層された複数の内部電極層が2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられたサイドマージン領域のうち、少なくとも一方のマージン領域は、積層構造において異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域と比較して、主成分セラミックに対する希土類元素濃度が低くかつSi,Bの合計濃度が高いことを特徴とする。
セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、
前記積層構造において同じ端面に露出する内部電極層同士が異なる端面に露出する内部電極層を介さずに対向するエンドマージン領域、および前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられたサイドマージン領域のうち、少なくとも一方のマージン領域は、前記積層構造において異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域と比較して、主成分セラミックに対する希土類元素濃度が低くかつSi,Bの合計濃度が高いことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
前記容量領域よりも主成分セラミックに対する希土類元素濃度が低くかつSi,Bの合計濃度が高いマージン領域は、前記容量領域と比較して、主成分セラミックに対するMn,Alの各濃度が高いことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
前記積層構造の積層方向の上面および下面の少なくとも一方に、前記誘電体層と主成分が同じのカバー層が備わっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
前記容量領域、前記エンドマージン領域および前記サイドマージン領域の主成分セラミックは、チタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA−A線断面図である。
図3は、
図1のB−B線断面図である。
図1〜
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0017】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0018】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.2mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0019】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。誘電体層11は、例えば、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO
3−αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO
3(チタン酸バリウム),CaZrO
3(ジルコン酸カルシウム),CaTiO
3(チタン酸カルシウム),SrTiO
3(チタン酸ストロンチウム),ペロブスカイト構造を形成するBa
1-x−yCa
xSr
yTi
1−zZr
zO
3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0020】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された2つの隣接する内部電極層12が対向する領域である。
【0021】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン領域15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン領域15である。すなわち、エンドマージン領域15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン領域15は、容量を生じない領域である。
【0022】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン領域16と称する。すなわち、サイドマージン領域16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。
【0023】
図4(a)は、サイドマージン領域16の断面の拡大図である。サイドマージン領域16は、誘電体層11と逆パターン層17とが、容量領域14における誘電体層11と内部電極層12との積層方向において交互に積層された構造を有する。容量領域14の各誘電体層11とサイドマージン領域16の各誘電体層11とは、互いに連続する層である。この構成によれば、容量領域14とサイドマージン領域16との段差が抑制される。
【0024】
図4(b)は、エンドマージン領域15の断面の拡大図である。サイドマージン領域16との比較において、エンドマージン領域15では、積層される複数の内部電極層12のうち、1つおきにエンドマージン領域15の端面まで内部電極層12が延在する。また、内部電極層12がエンドマージン領域15の端面まで延在する層では、逆パターン層17が積層されていない。容量領域14の各誘電体層11とエンドマージン領域15の各誘電体層11とは、互いに連続する層である。この構成によれば、容量領域14とエンドマージン領域15との段差が抑制される。
【0025】
エンドマージン領域15およびサイドマージン領域16(以下、マージン領域と総称することがある)は、容量領域14と比較すると、焼成時の収縮挙動が遅れることがある。例えば、マージン領域と容量領域14との密度差、内部電極層12内の共材の拡散の影響等が理由として挙げられる。特に、焼成後の逆パターン層17となるセラミックペーストを印刷工程により形成する場合には、セラミックペーストの膜密度が低いため、マージン領域の収縮挙動が容量領域14の収縮挙動と比較して遅れやすい。この収縮挙動差を起因とする応力発生により、積層セラミックコンデンサ100にクラックが発生する場合がある。このクラックは、マージン領域(特に、サイドマージン領域16)とカバー層13との接合界面に発生しやすい。また、上記応力発生により、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性が低下する場合がある。
【0026】
そこで、本実施形態においては、逆パターン層17は、誘電体層11と比較して、主成分セラミックに対する焼結助剤濃度が高くかつ希土類元素濃度が低くなっている。焼結助剤濃度が高くなることで、焼結挙動が低温度化する。焼結助剤は、網目形成酸化物としてガラスの骨格を形成するSi,Bを含む。本実施形態においては、逆パターン層17の主成分セラミックに対するSi(シリコン),B(ホウ素)の合計濃度が、誘電体層11の主成分セラミックに対するSi,Bの合計濃度と比較して高くなっている。それにより、逆パターン層17の焼結挙動が低温度化する。なお、Si,Bの合計濃度とは、SiまたはBのいずれか一方が含まれていなくてもよいことを意味する。ただし、Bは液相焼結時の軟化点(融点)を低くする働きを有するため、Bが含まれていることが好ましい。Si,B以外にも、網目修飾酸化物または中間酸化物としてSi,Bとともにガラスを構成するAl(アルミニウム),Mn(マンガン),Mg(マグネシウム),Zn(亜鉛),Cu,Li(リチウム),Na(ナトリウム),K(カリウム),Ca(カルシウム),Zr(ジルコニウム)などの焼結助剤の各濃度が、誘電体層11よりも逆パターン層17において高くなっていることが好ましい。
【0027】
また、希土類元素は、液相焼結時の軟化点(融点)を高くする働きを有する。したがって、逆パターン層17の希土類元素の濃度が低くなることで、逆パターン層17の焼結挙動が低温度化する。例えば、希土類元素として、Y(イットリウム),Eu(ユーロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホロミウム),Er(エルビウム),Yb(イッテルビウム)などが挙げられる。
【0028】
この構成によれば、マージン領域は、容量領域14と比較して、主成分セラミックに対する希土類元素濃度が低くかつSi,Bの合計濃度が高くなる。逆パターン層17の焼結挙動が十分に低温度化するため、マージン領域と容量領域14との収縮挙動の差が十分に小さくなる。それにより、収縮挙動差に起因する応力の発生が抑制される。その結果、クラックの発生が抑制されるとともに耐湿性が向上する。
【0029】
なお、本実施形態において、容量領域14のV濃度は、マージン領域のV濃度よりも高く、マージン領域のMg濃度は、容量領域のMg濃度よりも高いことが好ましい。例えば、V(バナジウム)を誘電体層11に添加して逆パターン層17には添加せず、Mgを逆パターン層17に添加して誘電体層11に添加しないことが好ましい。Vが誘電体層11の主成分セラミックに固溶し耐還元性が増すことによって寿命特性が向上し、Mgが逆パターン層17の焼結開始温度を下げることによって焼結性が向上することで、積層セラミックコンデンサ100の容量、寿命、焼結性がバランス良く向上するからである。
【0030】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図5は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0031】
(原料粉末作製工程)
まず、
図5で例示するように、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO
3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO
3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO
3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11を構成するセラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル−ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0032】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mn,V,Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Dy(ジスプロシウム),Tm(ツリウム),Ho,Tb(テルビウム),Yb(イッテルビウム),Sm(サマリウム),Eu(ユーロピウム),Gd(ガドリニウム),およびEr(エルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li,B,Na,KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0033】
本実施形態においては、好ましくは、まず誘電体層11を構成するセラミックの粒子に添加化合物を含む化合物を混合して820〜1150℃で仮焼を行う。続いて、得られたセラミック粒子を添加化合物とともに湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック粉末を調製する。例えば、セラミック粉末の平均粒子径は、誘電体層11の薄層化の観点から、好ましくは50〜300nmである。例えば、上記のようにして得られたセラミック粉末について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。
【0034】
次に、逆パターン層17を形成するための逆パターン材料を用意する。上記の誘電体材料の作製工程と同様の工程により得られたチタン酸バリウムのセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mn,V,Cr,希土類元素(Y,Dy,Tm,Ho,Tb,Yb,Sm,Eu,Gd,およびEr)の酸化物、並びに、Co,Ni,Li,B,Na,KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。本実施形態においては、誘電体材料と比較して、Si,Bの合計添加量を多くし、希土類元素の添加量を少なくする。
【0035】
本実施形態においては、好ましくは、まず逆パターン層17を構成するセラミックの粒子に添加化合物を含む化合物を混合して820〜1150℃で仮焼を行う。続いて、得られたセラミック粒子を添加化合物とともに湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック粉末を調製する。例えば、セラミック粉末の平均粒子径は、材料に合わせて、好ましくは50〜300nmである。例えば、上記のようにして得られたセラミック粉末について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。
【0036】
(積層工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、フタル酸ジオクチル(DOP)等の可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み1.2μm以下の帯状の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0037】
次に、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極層パターン(第1パターン)を配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。例えば、平均粒子径が50nm以下のBaTiO
3を均一に分散させてもよい。
【0038】
次に、逆パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターンペーストを得た。誘電体グリーンシート上において、内部電極層パターンが印刷されていない周辺領域に逆パターンペーストを印刷することで逆パターン(第2パターン)を配置し、内部電極層パターンとの段差を埋める。
【0039】
その後、内部電極層パターンおよび逆パターンが印刷された誘電体グリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれた誘電体グリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、所定層数(例えば100〜500層)だけ積層する。積層した誘電体グリーンシートの上下にカバー層13となるカバーシートを圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットし、その後に外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両端面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、積層セラミックコンデンサ100の成型体が得られる。
【0040】
(焼成工程)
このようにして得られた成型体を、250〜500℃のN
2雰囲気中で脱バインダ処理した後に、酸素分圧10
−5〜10
−8atmの還元雰囲気中で1100〜1300℃で10分〜2時間焼成することで、各化合物が焼結して粒成長する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0041】
(再酸化処理工程)
その後、N
2ガス雰囲気中で600℃〜1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0042】
本実施形態に係る製造方法によれば、逆パターン材料における主成分セラミックに対するSi,Bの合計濃度が、誘電体材料における主成分セラミックに対するSi,Bの合計濃度よりも高くなる。また、逆パターン材料における主成分セラミックに対する希土類元素濃度が、誘電体材料における主成分セラミックに対する希土類元素濃度よりも低くなる。この場合、逆パターン層17の焼結挙動が十分に低温度化し、マージン領域と容量領域14との収縮挙動の差が十分に小さくなる。それにより、収縮挙動差に起因する応力の発生が抑制される。その結果、クラックの発生が抑制されるとともに耐湿性が向上する。
【0043】
なお、Si,B以外にも、逆パターン材料における主成分セラミックに対するAl,Mn,Mg,Zn,Cu,Li,Na,K,Ca,Zrなどの焼結助剤の各濃度が、誘電体材料における主成分セラミックに対する濃度よりも高くなっていることが好ましい。なお、逆パターン材料においては、Si濃度が1.5atm%以上3.0atm%以下であることが好ましく、B濃度が0atm%以上1.0atm%以下であることが好ましく、Al濃度が0atm%以上0.3atm%以下であることが好ましく、Mn濃度が1.5atm%以上3.0atm%以下であることが好ましく、Mg濃度が0.5atm%以上1.5atm%以下であることが好ましい。また、逆パターン材料における希土類濃度は、0.1atm%未満であることが好ましく、0atm%であることがより好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0045】
(誘電体材料の作製)
実施例1では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、Mg濃度が1atm%、Mn濃度が0.15atm%、Si濃度が0.56atm%となるように、Ho
2O
3,MgO,MnCO
3,SiO
2を秤量した。実施例2,3では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、V濃度が0.093atm%、Mn濃度が0.15atm%、Si濃度が0.56atm%となるように、Ho
2O
3,V
2O
3,MnCO
3,SiO
2を秤量した。その後、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して誘電体材料を得た。
【0046】
(逆パターン材料の作製)
実施例1,3では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Mg濃度が1atm%、Mn濃度が2.25atm%、Si濃度が2.28atm%、B濃度が0.76atm%、Al濃度が0.16atm%となるようにMgO,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3,Al
2O
3を秤量した。実施例2では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、V濃度が0.093atm%、Mn濃度が2.25atm%、Si濃度が2.28atm%、B濃度が0.76atm%、Al濃度が0.16atm%となるようにV
2O
3,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3,Al
2O
3を秤量した。比較例1,5では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、Mg濃度が1atm%、Mn濃度が0.38atm%、Si濃度が1atm%、B濃度が0.16atm%となるように、Ho
2O
3,MgO,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3を秤量した。比較例2,6では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、Mg濃度が1atm%、Mn濃度が2.25atm%、Si濃度が2.28atm%、B濃度が0.76atm%、Al濃度が0.16atm%となるようにHo
2O
3,MgO,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3,Al
2O
3を秤量した。その後、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して逆パターン材料を得た。比較例3では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、V濃度が0.093atm%、Mn濃度が0.38atm%、Si濃度が1atm%、B濃度が0.16atm%となるように、Ho
2O
3,V
2O
3,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3を秤量した。比較例4では、チタン酸バリウム粉末(平均粒子径150nm)に対して、Tiを100atm%とした場合に、Ho濃度が0.38atm%、V濃度が0.093atm%、Mn濃度が2.25atm%、Si濃度が2.28atm%、B濃度が0.76atm%、Al濃度が0.16atm%となるようにHo
2O
3,V
2O
3,MnCO
3,SiO
2,B
2O
3,Al
2O
3を秤量した。その後、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して逆パターン材料を得た。
【0047】
(逆パターンペーストの作製)
逆パターン材料に有機バインダおよび溶剤を加えて、ビーズミルにて分散し、逆パターンペーストを得た。
【0048】
(積層セラミックコンデンサの作製)
誘電体材料に有機バインダおよび溶剤を加えて、ビーズミルにて分散し、約1.2μmの厚みのグリーンシートを作製した。得られたシートに内電用ペーストをスクリーン印刷し逆パターンペーストを内電用ペーストが無い部分にスクリーン印刷して内電ペーストの段差を埋めた。印刷したシートを600枚重ね、その上下にカバーシートをそれぞれ60μmずつ積層した。その後、150MPaの熱圧着により積層体を得て、所定の形状に切断した。形状寸法は、長さ1.6mm、幅0.8mm、高さ0.8mmであった。得られた積層体にNi外部電極をディップ法で形成し、N
2雰囲気で脱バインダ処理の後、還元雰囲気下(O
2分圧:10
−5〜10
−8atm)、1230℃で焼成し、1140℃でのアニール処理および900℃のN
2雰囲気下での再酸化処理を行った後、めっき処理して外部電極端子の表面にCu,Ni,Snの金属コーティングを行い、積層セラミックコンデンサを得た。なお、実施例および比較例1,2について、400サンプルずつ作製した。
【0049】
(分析)
実施例1〜3および比較例1〜6の各サンプルについて、クラックの発生率、耐湿負荷試験のNG率、容量取得率、寿命特性、および焼結性について調べた。クラックの発生率は、実体顕微鏡を用いて400個のサンプルについて外観検査をおこなった。耐湿負荷試験については、400個のサンプルについて、周囲温度:40℃、相対湿度:95%RH、印加電圧:DC6.3V、保持時間:100時間の条件で耐湿負荷試験を行い、各サンプルの絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗が1MΩ未満となるものをNGと判定した。容量取得率の測定においては、容量をLCRメーターにて測定した。この測定値と、誘電体材料の誘電率(予め誘電体材料のみでφ=10mm×T=1mmの円板状焼結体を作製して容量を測定し、誘電率を算出)、内部電極層12の交差面積、誘電体層11の厚み、積層枚数から計算される設計値を比較し、容量取得率(測定値/設計値×100)が90%〜105%のものを合格(○)とした。設計値が容量47μFであれば、OSC=0.5V、周波数120Hz条件にて47×90%=42.3μF以上で〇判定とした。寿命特性については、140℃−17V/μmの加速寿命試験において、50チップ中の50%故障値が100分以上で〇とし、100分未満で×とした。焼結性については、研磨面SEM観察による残留ポアの二値化定量手法に従い、サイドマージン領域16のポア率が6%未満で〇とし、6%以上で×とした。結果を
図6に示す。
【0050】
図6に示すように、比較例1よりも比較例2において、クラック発生率が低下した。また、比較例3よりも比較例4において、クラック発生率が低下した。また、比較例5よりも比較例6において、クラック発生率が低下した。これは、逆パターン材料における主成分セラミックに対するSi,Bの濃度が、比較例1よりも比較例2で高くなり、比較例3よりも比較例4で高くなり、比較例5よりも比較例6で高くなり、比較例2,4,6の逆パターン材料の焼結挙動が低温度化したからであると考えられる。さらに、Mn,Al濃度が、比較例1よりも比較例2で高くなり、比較例3よりも比較例4で高くなり、比較例5よりも比較例6で高くなったことも寄与したものと考えられる。しかしながら、比較例2,4,6においても、耐湿NG率は低く抑えられなかった。これは、逆パターン材料の焼結挙動が十分に低温度化しなかったからであると考えられる。これに対して、実施例1〜3では、比較例1〜6に対して、クラック発生率も耐湿NG率も低くなった。これは、逆パターン材料における主成分セラミックに対するSi,Bの合計濃度を誘電体材料における主成分セラミックに対するSi,Bの合計濃度よりも高くし、かつ逆パターン材料における主成分セラミックに対する希土類元素濃度を誘電体材料における主成分セラミックに対する希土類元素濃度よりも低くしたことで、誘電体材料と逆パターン材料との間で、収縮挙動の差が十分に小さくなったからであると考えられる。
【0051】
なお、実施例1では、良好な焼結性が得られた。これは、Mgが逆パターン層17の焼結開始温度を下げたからであると考えられる。実施例2は、良好な容量取得率および良好な寿命特性が得られた。これは、Vが誘電体層11の主成分セラミックであるチタン酸バリウムに固溶して耐還元性が増したからであると考えられる。次に、実施例1,2と比較して、実施例3では、良好な容量取得率、良好な寿命特性および良好な焼結性が得られた。これは、Vを誘電体材料に添加して逆パターン材料には添加せず、Mgを逆パターン材料に添加して誘電体材料に添加しなかったことで、積層セラミックコンデンサ100の容量、寿命、焼結性がバランス良く向上したからであると考えられる。
【0052】
図7は、実施例3および比較例5,6のそれぞれの逆パターン材料の焼結時の熱機械分析(TMA)を示す図である。
図7に示すように、比較例5,6の逆パターン材料と比較して、実施例3の逆パターン材料では、焼結挙動が低温度化していることがわかる。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。