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特開2018-182293多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-182293(P2018-182293A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20181019BHJP
【FI】
   H01L31/04 400
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-246987(P2017-246987)
(22)【出願日】2017年12月22日
(31)【優先権主張番号】201710255951.7
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】514205436
【氏名又は名称】常州時創能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Changzhou Shichuang Energy Technology Limited Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】任常瑞
(72)【発明者】
【氏名】符黎明
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA03
5F151CB30
5F151FA06
5F151FA14
5F151GA04
5F151GA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去して、多結晶シリコンセルの変換効率を向上させ、且つ、プロセスのステップがシンプルで、処理時間が短く、低コストな量産方法を提供する。
【解決手段】多結晶シリコンセルの生産プロセスにおいて、多結晶シリコンセルに、250〜350℃の温度条件にて、正のバイアス電圧を印加して600〜800mA/cm2の電流注入を行い、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法であって、
所定の温度条件において、電流注入方式により、多結晶シリコンセルに電流を注入して、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去することを特徴とする多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項2】
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することであることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項3】
250〜350℃の温度条件において、電流注入を行うことを特徴とする請求項2に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項4】
前記電流注入過程において、注入電流は600〜800mA/cmに制御されることを特徴とする請求項3に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項5】
前記電流注入時間は0.5〜1minに制御されることを特徴とする請求項4に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項6】
300〜350℃の温度条件において、電流注入を行うことを特徴とする請求項5に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項7】
前記多結晶シリコンセルでは、正面は、湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は、不動態化され、且つ、アルミナと窒化ケイ素との積層膜がめっきされるとともに、最外層に印刷されたアルミペーストが設けられることを特徴とする請求項6に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項8】
前記多結晶シリコンセルでは、正面は、湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は印刷されたアルミペーストが設けられることを特徴とする請求項6に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項9】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの電池効率、開回路電圧、短絡電流及びフィルファクターを比較することにより、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去効果をテストすることを特徴とする請求項7に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【請求項10】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの電池効率、開回路電圧、短絡電流及びフィルファクターを比較することにより、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去効果をテストすることを特徴とする請求項8に記載の多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンセルの生産プロセスにおいて、金属化されるときの高温焼結によりシリコンウエハー内の一次金属が沈殿されて分解して不安定な金属複合体になり、これら金属複合体は一定の複合活性を有することから、電池の効率を低下させる恐れがある。さらに、多結晶シリコンセルの使用過程で、これら金属複合体は電池変換効率をさらに低下させる複合活性の高い準安定状態に変換される。さらに、これら準安定状態の金属複合体は続けて分解して、電池効率を一層低下させる複合活性の高い金属原子となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去し、さらに多結晶シリコンセルの変換効率を向上させ、且つ、プロセスのステップがシンプルで、処理時間が短く、低コストで、量産に適合する多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成させるために、本発明の技術案は、所定の温度条件において、電流注入方式により、多結晶シリコンセルに電流を注入して、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去する、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法を設計することである。
【0005】
好ましくは、前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
【0006】
好ましくは、250〜350℃の温度条件において、電流注入を行う。
【0007】
好ましくは、前記電流注入過程において、注入電流は600〜800mA/cmに制御される。
【0008】
好ましくは、前記電流注入時間は0.5〜1minに制御される。
【0009】
好ましくは、300〜350℃の温度条件において、電流注入を行う。
【0010】
好ましくは、前記多結晶シリコンセルでは、正面は湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は、不動態化され、アルミナと窒化ケイ素との積層膜がめっきされるとともに最外層に印刷されたアルミペーストが設けられる。
【0011】
好ましくは、前記多結晶シリコンセルでは、正面は、湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は印刷されたアルミペーストが設けられる。
【0012】
好ましくは、電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性を比較することにより、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去効果をテストする。
【0013】
好ましくは、比較される特性には、電池効率、開回路電圧、短絡電流及びフィルファクターが含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の利点及び有益な効果は以下のとおりである。多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去して、更に多結晶シリコンセルの変換効率を向上させ、且つ、プロセスのステップがシンプルで、処理時間が短く、低コストで、量産に適合する多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法を提供する。
【0015】
本発明は、金属複合体の変換を促進して、金属イオンにして表面により捕獲されて、電池の効率を向上させることができる。具体的に、本発明は、多結晶シリコンセルにおける金属複合体を迅速に分解して金属原子にし、且つ金属原子を多結晶シリコンセルの表面へ迅速に拡散させ、最終的に複合活性の高い金属原子をすべて捕獲し、複合活性をなくすことにより、電池効率を高める。さらに、多結晶シリコンセルの後続使用過程に、効率低下を引き起こすことがない。
【0016】
本発明は、多結晶シリコン太陽電池の変換効率を高め、具体的に多結晶シリコン太陽電池の効率の絶対値を約0.2%高めることができ、特に高効率多結晶PERC電池に適用できる。
【0017】
本発明は、プロセスのステップがシンプルで、低コストの装置で実現でき、且つ処理時間が短く、装置のエネルギー消費量が低く、量産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例を利用して、本発明の実施形態についてさらに説明する。以下の実施例は、本発明の技術案を明瞭に説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0019】
実施例1
【0020】
多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法では、所定の温度条件において、電流注入方式により、多結晶シリコンセルに電流を注入して、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去した。電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性を比較することにより、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去効果をテストした。比較される特性は電池効率Eff、開回路電圧Voc、短絡電流Isc及びフィルファクターFFを含む。
【0021】
前記多結晶シリコンセルでは、正面は湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は、不動態化され、アルミナと窒化ケイ素との積層膜がめっきされ、且つ最外層に印刷されたアルミペーストが設けられる。
【0022】
具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
350℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は800mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は0.5minに制御される。
【0023】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表1に示される。
【0024】
表1
【0025】
表1のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.2%向上した。
【0026】
実施例2
【0027】
プロセスの条件を変更する以外、実施例1と同様である。具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
300℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は700mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は45sに制御される。
【0028】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表2に示される。
【0029】
表2
【0030】
表2のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.17%向上した。
【0031】
実施例3
【0032】
プロセスの条件を変更する以外、実施例1と同様である。具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
250℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は600mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は1minに制御される。
【0033】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表3に示される。
【0034】
表3
【0035】
表3のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.18%向上した。
【0036】
実施例4
【0037】
多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去方法では、所定の温度条件において、電流注入方式により、多結晶シリコンセルに電流を注入して、多結晶シリコンセル内部の金属複合体を除去した。電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性を比較することにより、多結晶シリコンセル内部の金属複合体の除去効果をテストした。比較される特性は電池効率Eff、開回路電圧Voc、短絡電流Isc及びフィルファクターFFを含む。
【0038】
前記多結晶シリコンセルでは、正面は湿式ブラックシリコンテクスチャリングによりテクスチャリング面として加工され、さらに5本のバスバーが設けられ、且つ、窒化ケイ素の保護膜がめっきされており、裏面は印刷されたアルミペーストが設けられる。
【0039】
具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
300℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は800mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は0.5minに制御される。
【0040】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表4に示される。
【0041】
表4
【0042】
表4のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.18%向上した。
【0043】
実施例5
【0044】
プロセス条件を変更する以外、実施例4と同様である。具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
330℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は650mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は50sに制御される。
【0045】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表5に示される。
【0046】
表5
【0047】
表5のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.12%向上した。
【0048】
実施例6
【0049】
プロセス条件を変更する以外、実施例4と同様である。具体的なプロセス条件は以下のとおりである。
280℃の温度条件において、電流注入を行う。
前記電流注入方式は、多結晶シリコンセルに正のバイアス電圧を印加することである。
前記電流注入過程に、注入電流は750mA/cmに制御される。
前記電流注入時間は55sに制御される。
【0050】
電流注入前後の多結晶シリコンセルの特性のテスト結果は下表6に示される。
【0051】
表6
【0052】
表6のデータから明らかなように、電流注入過程は、多結晶シリコンにおける金属沈殿を除去し、シリコンウエハー内部の複合を低下させ、電流注入後の電池効率は0.14%向上した。
【0053】
以上は本発明の好適な実施形態に過ぎず、なお、当業者であれば、本発明の技術原理を脱逸せずにいくつかの改良及び修飾を行うことができ、これら改良及び修飾も本発明の保護範囲に属する。