(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-182597(P2018-182597A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】処理槽へのアンテナ取付構造とアンテナ付き食品機械
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20181019BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20181019BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20181019BHJP
G08C 17/02 20060101ALI20181019BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20181019BHJP
F25D 29/00 20060101ALN20181019BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
A47J27/14 N
G08C17/00 Z
G08C17/02
H01Q1/42
F25D29/00 Z
F25D29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-81606(P2017-81606)
(22)【出願日】2017年4月17日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】吉良 正人
(72)【発明者】
【氏名】石田 脩平
(72)【発明者】
【氏名】越智 崇文
(72)【発明者】
【氏名】松矢 久美
(72)【発明者】
【氏名】松林 浩司
(72)【発明者】
【氏名】狩野 泰範
【テーマコード(参考)】
2F073
3L045
4B054
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AB04
2F073AB11
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD01
2F073FF01
2F073GG04
3L045AA07
3L045BA06
3L045CA02
3L045NA09
3L045PA04
4B054AA06
4B054AA23
4B054CE20
4B054CH02
5J046AA09
5J046AA12
5J046RA03
5J046RA12
5J047AA09
5J047AA12
5J047BG08
5J047BG10
(57)【要約】
【課題】処理槽が金属製の缶体から構成される場合でも、処理槽の内外で無線通信可能に、処理槽にアンテナを取り付ける。
【解決手段】処理槽1としての缶体4内に設けられる機器(たとえば品温センサ3)との間で通信するアンテナ2の処理槽1への取付構造である。缶体4の壁には、貫通穴4aが形成されると共に、この貫通穴4aの缶体4内側の開口部が電波透過性素材を用いて閉塞されて、アンテナ収容部9が設けられる。アンテナ収容部9には、アンテナ2が配置される。好ましくは、缶体4の壁には、金属製のアンテナ収容筒8が貫通して固定され、このアンテナ収容筒8は、アンテナ2が挿入されると共に、缶体4内側の開口部が電波透過性素材を用いた蓋材10で閉塞される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽としての缶体内に設けられる機器との間で通信するアンテナの処理槽への取付構造であって、
前記缶体の壁には、貫通穴が形成されると共に、この貫通穴の前記缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いて閉塞されて、アンテナ収容部が設けられ、
このアンテナ収容部に、前記アンテナが配置される
ことを特徴とする処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項2】
前記アンテナ収容部は、前記壁に取り付けられて前記アンテナを収容するアンテナ収容体を備え、
このアンテナ収容体は、前記缶体内側の端部が、電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されるか、電波透過性素材を用いた蓋材と一体形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項3】
前記缶体の壁には、前記アンテナ収容体としてのアンテナ収容筒が貫通して固定され、
このアンテナ収容筒は、前記アンテナが挿入されると共に、前記缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞される
ことを特徴とする請求項2に記載の処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項4】
前記アンテナ収容筒が金属である
ことを特徴とする請求項3に記載の処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項5】
前記アンテナは、前記蓋材に近接または当接して設けられる
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項6】
前記缶体は、食品機械の処理槽であり、
前記機器は、前記処理槽内の食品の温度を検出する品温センサ、または前記処理槽内の食品の液位を検出する水位センサである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理槽へのアンテナ取付構造。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナ取付構造にてアンテナが取り付けられた処理槽を備え、
前記機器は、前記処理槽内の食品の温度を検出する品温センサ、または前記処理槽内の食品の液位を検出する水位センサである
ことを特徴とするアンテナ付き食品機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽の内外で無線通信するためのアンテナの処理槽への取付構造と、この取付構造によりアンテナが取り付けられた食品機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空容器状の処理槽内に食品を収容して、食品を加熱または冷却等する食品機械が知られている。この種の食品機械では、各種センサが設けられる。たとえば、処理槽内の食品の温度を監視するために、品温センサが設けられる。
【0003】
従来、品温センサとして、たとえば下記特許文献1に開示されるように、有線式のものが用いられている。この場合、処理槽内の食品に挿入される測温部(プローブ)と、処理槽外の回路部(制御装置)との間が、ケーブルで接続される。
【0004】
ところが、このような有線接続では、ケーブルを、処理槽とドアとの間に挟んだり、食品容器(たとえば番重)間に挟んだりして、断線させるおそれがある。下記特許文献2に開示されるように、上方へ開口した鍋タイプの食品機械では無線式のセンサを用いることも提案されているが、密閉容器状の缶体タイプの食品機械には適用できなかった。すなわち、処理槽が金属製の缶体から構成され、内部を加圧または減圧可能に密閉構造とされる場合、食品は、処理槽を構成する金属製の壁やドアで囲われるため、処理槽の内外で無線通信を行うことができなかった。このことは、品温センサ以外のセンサについても同様であり、また、処理槽内のアクチュエータ(たとえば撹拌機)を外部からの指令で動かす場合についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−78588号公報
【特許文献2】特開2008−272313号公報(段落[0057]−[0073]、
図10、
図14、
図17)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、処理槽が金属製の缶体から構成される場合でも、処理槽の内外で無線通信可能に、処理槽にアンテナを取り付けるための構造と、この構造によりアンテナが取り付けられた食品機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽としての缶体内に設けられる機器との間で通信するアンテナの処理槽への取付構造であって、前記缶体の壁には、貫通穴が形成されると共に、この貫通穴の前記缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いて閉塞されて、アンテナ収容部が設けられ、このアンテナ収容部に、前記アンテナが配置されることを特徴とする処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、缶体の壁に設けたアンテナ収容部にアンテナを配置して、缶体内の機器との間で、処理槽の内外において無線通信可能である。その際、缶体の壁に設けた貫通穴は、缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されるので、缶体内の密閉性を確保することができると共に、缶体内の機器との間で通信を確保することができる。このようにして、無線式のセンサなどを用いることができ、断線リスクを排除することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記アンテナ収容部は、前記壁に取り付けられて前記アンテナを収容するアンテナ収容体を備え、このアンテナ収容体は、前記缶体内側の端部が、電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されるか、電波透過性素材を用いた蓋材と一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、缶体の壁に設けたアンテナ収容体にアンテナを収容して、缶体内の機器との間で、処理槽の内外において無線通信可能である。その際、アンテナ収容体は、缶体内側の端部が、電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されるか、電波透過性素材を用いた蓋材と一体形成されているので、缶体内の密閉性を確保することができると共に、缶体内の機器との間で通信を確保することができる。このようにして、無線式のセンサなどを用いることができ、断線リスクを排除することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記缶体の壁には、前記アンテナ収容体としてのアンテナ収容筒が貫通して固定され、このアンテナ収容筒は、前記アンテナが挿入されると共に、前記缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されることを特徴とする請求項2に記載の処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、缶体の壁に設けたアンテナ収容筒にアンテナを挿入して、缶体内の機器との間で、処理槽の内外において無線通信可能である。その際、アンテナ収容筒は、缶体内側の開口部が電波透過性素材を用いた蓋材で閉塞されるので、缶体内の密閉性を確保することができると共に、缶体内の機器との間で通信を確保することができる。このようにして、無線式のセンサなどを用いることができ、断線リスクを排除することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記アンテナ収容筒が金属であることを特徴とする請求項3に記載の処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、アンテナ収容筒が金属製であるため、缶体への溶接が可能となり、缶体にアンテナ収容筒を隙間なく確実に固定することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記アンテナは、前記蓋材に近接または当接して設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、アンテナを電波透過性素材の蓋材に近接または当接して設けることで、缶体内の機器との間で、通信を容易に確実に行うことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記缶体は、食品機械の処理槽であり、前記機器は、前記処理槽内の食品の温度を検出する品温センサ、または前記処理槽内の食品の液位を検出する水位センサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理槽へのアンテナ取付構造である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、食品機械において、缶体内に無線式の品温センサまたは水位センサを容易に設置することができる。
【0019】
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナ取付構造にてアンテナが取り付けられた処理槽を備え、前記機器は、前記処理槽内の食品の温度を検出する品温センサ、または前記処理槽内の食品の液位を検出する水位センサであることを特徴とするアンテナ付き食品機械である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、缶体内に無線式の品温センサまたは水位センサを設置可能な食品機械を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、処理槽が金属製の缶体から構成される場合でも、処理槽の内外で無線通信可能に、処理槽にアンテナを取り付けるための構造と、この構造によりアンテナが取り付けられた食品機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1の処理槽へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽の一部を切り欠いて示している。
【
図2】本発明の実施例2の処理槽へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽の一部を切り欠いて示している。
【
図3】本発明の実施例3の処理槽へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽の一部を切り欠いて示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1の処理槽1へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽1の一部を切り欠いて示している。
図1では、処理槽1の一側壁が示されており、この側壁を境に、左側が処理槽1内、右側が処理槽1外とされる。
【0025】
本実施例では、処理槽1の側壁にアンテナ2を取り付けて、処理槽1内の品温センサ3からの検出信号を受信することで、処理槽1外で食品Fの温度(品温)を監視できる例について説明する。
【0026】
処理槽1は、食品Fを収容して各種処理(典型的には加熱または冷却)を行う中空容器であり、金属製の缶体4から構成される。缶体4は、典型的には略矩形の箱状に形成され、内部を加圧または減圧可能な密閉構造とされる。具体的には、缶体4は、正面(
図1の紙面に対し垂直手前側)へ開口した略矩形箱状の本体と、この本体の開口部を気密に閉じるドアとを備える。ドアを開けることで、缶体4に対し食品Fを出し入れすることができ、ドアを閉じることで、缶体4の開口部を気密に閉じることができる。但し、缶体4は、正面および背面にそれぞれドアを備え、一方のドアを、缶体4内に食品Fを入れるための搬入ドアとし、他方のドアを、缶体4外へ食品Fを取り出すための搬出ドアとしてもよい。
【0027】
食品Fは、図示例では、番重のような食品容器5に入れられて、缶体4内に収容される。食品Fには、本実施例では、品温センサ3が差し込まれる。品温センサ3は、送信機を備えた無線式のものが用いられる。品温センサ3は、無線式であれば具体的構成を特に問わないが、図示例では、外観上、基端部に略円筒状のケース6が設けられる一方、その先端部に先端側へ延出して細長い針状のシース管(プローブ)7が設けられている。
【0028】
ケース6は、基端部(上端部)が略半球状面で閉塞される一方、先端部(下端部)が先細りとされてシース管7に接続されている。そして、シース管7は、基端部がケース6内へ開口する一方、先端部は先細りとされて閉塞されている。このようにして、品温センサ3は、ケース6内およびシース管7内が互いに連通されるが、外部とは遮断された密閉構造とされる。
【0029】
ケース6は、少なくとも基端部(内蔵アンテナと対応する位置)がテフロン樹脂のような電波透過性素材から形成される。図示しないが、シース管7内の先端部には、測温部として機能するセンサ本体(測温抵抗体)が封入されている。そして、センサ本体からの配線は、シース管7内を介してケース6内の基板に接続される。基板には、電池、無線ユニットおよびアンテナが接続されており、センサ本体からの検出信号(ここでは検出温度情報)を、この内蔵アンテナを介して外部へ送信可能である。
【0030】
缶体4の側壁には、品温センサ3からの検出信号を受信するためのアンテナ2が設けられる。缶体4に対するアンテナ2の取付位置は、適宜に設定されるが、高さ方向については、缶体高さ(内寸)の三分の二以上の高さに設けるのがよい。その理由は、缶体4内にアンテナ2(厳密には後述するアンテナ収容筒8)を突出させても、缶体4内に出し入れされる食品容器5との接触を防止しやすいからである。また、缶体4内では、たとえば食品Fの沸騰などに伴い食品Fが飛散するおそれもあるが、アンテナ2を上方へ設置しておけば、そのような汚れの付着を防止しやすいからである。一方、奥行方向については、アンテナ2は、缶体4の前後方向中央部かそれよりもやや手前側に設置されるのがよい。特に、ドアを開けた際に、缶体4の開口部から手が届く範囲とするのが、設置やメンテナンスする上で好適である。但し、缶体4の前後にドアを有する両ドア式の場合には、前後方向中央部にアンテナ2を設けるのがよい。
【0031】
缶体4へのアンテナ2の取付けは、次のようになされる。すなわち、缶体4の壁には、貫通穴4aが形成されると共に、この貫通穴4aの缶体4内側の開口部が電波透過性素材を用いて閉塞されて、アンテナ収容部9が設けられ、このアンテナ収容部9に、アンテナ2が配置される。この際、貫通穴4aの閉塞は、貫通穴4aまたはそれに設けられる部材の開口部(缶体4内側の開口部)を直接に塞ぐことで行ってもよいし(
図1、
図3)、その開口部を缶体4内側から覆うことで行ってもよい(
図2)。つまり、要は、缶体4の内外の連通を遮断しつつ、缶体4内側の少なくとも一部が電波透過性素材で形成されていればよい。なお、アンテナ収容部9は、前記壁(貫通穴4aが形成された壁)に取り付けられてアンテナ2を収容するアンテナ収容体8Aを備え、このアンテナ収容体8Aは、缶体4内側の端部が、電波透過性素材を用いた蓋材10で閉塞されるか、電波透過性素材を用いた蓋材10と一体形成されて閉塞されるのが好ましい。以下、具体的に説明する。
【0032】
本実施例では、缶体4の側壁には、貫通穴4aが形成されると共に、その貫通穴4aにアンテナ収容筒8が貫通して固定される。そして、そのアンテナ収容筒8の中空穴が、アンテナ収容部9とされる。アンテナ収容筒8は、典型的には円筒状とされ、たとえばエンジニアリングプラスチックから形成されてもよいが、好ましくはステンレスのような金属製とされる。その場合、缶体4の金属製の側壁に設けた貫通穴4aに、金属製のアンテナ収容筒8をはめ込んだ状態で、両者を溶接により固定することができる。このようにして、缶体4にアンテナ収容筒8を隙間なく確実に固定することができる。その際、本実施例では、缶体4の内側へ向けて、アンテナ収容筒8の端部を突出させて固定される。この突出部は、外周面にネジが形成されて、ネジ部8aとされている。
【0033】
アンテナ収容筒8の缶体4内側の開口部は、蓋材10で閉塞される。本実施例では、アンテナ収容筒8の缶体4内側の端部は、ナット状の蓋材10が着脱可能に設けられることで閉塞される。蓋材10は、アンテナ2と品温センサ3との間で通信可能に、少なくとも一部が電波透過性素材を用いて形成される。本実施例では、蓋材10の全体が、たとえばテフロン樹脂またはPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂のような電波透過性の合成樹脂製とされている。
【0034】
蓋材10は、軸方向一端部(
図1において右側)へのみ開口して、中空穴が形成されている。この中空穴は、少なくとも一部がネジ穴10aとされている。従って、アンテナ収容筒8の缶体4内側への突出部に設けたネジ部8aに、蓋材10のネジ穴10aをねじ込むことで、アンテナ収容筒8の缶体4内側の開口部を蓋材10で気密に閉じることができる。その際、好ましくは、図示例のように、蓋材10の一端面がOリングのようなパッキン11を介して、缶体4の側壁内面に当接されるように、蓋材10をねじ込むのがよい。あるいは、蓋材10の一端面と缶体4の側壁内面との間に隙間を残す場合には、蓋材10の内周面(中空穴)とアンテナ収容筒8の外周面との間に、Oリングのようなパッキンを設けて、両者の隙間を封止すればよい。
【0035】
アンテナ2は、その種類を特に問わないが、たとえばダイポールアンテナまたはモノポールアンテナから構成される。また、アンテナ2は、その形状を特に問わないが、図示例では棒状とされている。具体的には、図示例のアンテナ2は、先端部へ向けてやや先細りの丸棒状の本体部2aを備え、基端側にはケーブル2bが接続されている。このケーブル2bは、缶体4外に設置された不図示の制御装置(回路基板)に接続される。
【0036】
アンテナ2は、缶体4外から缶体4内へ向けて挿入され、適宜の手段で保持される。その際、アンテナ2は、アンテナ収容筒8の軸線に沿って、アンテナ収容筒8と同心に配置されるのが好ましい。また、アンテナ2の先端部は、蓋材10の他端壁(蓋材10の中空穴を閉じる閉塞壁)10bに、近接または当接されるのが好ましい。図示例では、蓋材10の他端壁10bに設けた凹穴に、アンテナ2の先端部をはめ込んで、アンテナ2が保持される。
【0037】
このような構成であるから、缶体4内の品温センサ3からの検出信号は、蓋材10を介してアンテナ2で受信され、アンテナ2に接続された制御装置にて監視可能となる。そして、制御装置では、そのようにして検出された品温に基づき、各種の制御を行うことができる。また、無線式の品温センサ3を用いることで、断線リスクを排除することもできる。
【0038】
なお、アンテナ収容筒8が金属製である場合、電波は入りにくくなるが、前述したとおり、缶体4に溶接により容易に取り付けることができる。また、缶体4の容積は限られており、缶体4内での電波の反射も期待され、しかも蓋材10が電波透過性素材で形成されることから、金属製のアンテナ収容筒8内にアンテナ2を収容しても通信が可能である。
【実施例2】
【0039】
図2は、本発明の実施例2の処理槽1へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽1の一部を切り欠いて示している。本実施例2のアンテナ取付構造も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0040】
前記実施例1では、アンテナ収容体8Aは、蓋材10が装着されるアンテナ収容筒8から構成されたが、本実施例2では、アンテナ収容体8Aは、軸方向一端部(
図2において右側)へのみ開口した中空容器から構成される。図示例では、アンテナ収容体8Aは、開口側の端面が缶体4の内面に密着された状態で、缶体4の側壁に固定される。この際、アンテナ収容体8Aは、缶体4の側壁に形成された貫通穴4aの開口部(缶体4内側の開口部)を覆うように設けられる。これにより、アンテナ収容体8Aによって、貫通穴4aを介した缶体4の内外の連通が遮断される。
【0041】
アンテナ収容体8A内には、アンテナ2が配置される。本実施例では、板状のアンテナ(基板でアンテナを作成したパターン型アンテナ)2が用いられる。そして、このアンテナ2は、板面がアンテナ収容体8Aの壁面(閉塞壁10b)に近接または当接して、当該壁面に重ね合わされるように配置される。また、アンテナ2のケーブル2bは、缶体4の貫通穴4aを介して、外部へ導出される。
【0042】
アンテナ収容体8Aは、少なくとも一部が電波透過性素材により形成される。特に、アンテナ2の板面と対面した位置では、電波透過性素材により形成されるのが好ましい。なお、アンテナ収容体8Aの全体が、電波透過性素材により形成されてもよい。いずれにしても、アンテナ収容体8Aの少なくとも一部が電波透過性素材を用いて構成されることで、アンテナ2を用いて缶体4の内外で無線通信が可能となる。その他は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【実施例3】
【0043】
図3は、本発明の実施例3の処理槽1へのアンテナ取付構造を示す概略断面図であり、処理槽1の一部を切り欠いて示している。本実施例3のアンテナ取付構造は、基本的には前記実施例2と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0044】
前記実施例2では、アンテナ収容体8Aは中空状とされたが、本実施例3では、アンテナ収容体8Aは、中実状とされる。具体的には、アンテナ収容体8Aは、アンテナ2を埋設した形状とされる。また、アンテナ収容体8Aは、缶体4外へ向けて円柱部8bを備え、その円柱部8bが缶体4の側壁の貫通穴4aにはめ込まれて固定される。アンテナ2のケーブル2bは、円柱部8bを介して外部へ導出される。その他は、前記実施例2と同様のため、説明を省略する。
【0045】
前記各実施例の処理槽1へのアンテナ取付構造は、各種の食品機械に適用することができる。たとえば、真空冷却装置、冷風真空複合冷却装置、飽和蒸気調理装置、蒸煮装置、蒸煮冷却装置、真空解凍装置、真空含浸装置、殺菌装置などに適用することができる。装置の目的に応じて、処理槽1(缶体4)には、各種手段が設けられる。たとえば、処理槽1内の気体を外部へ吸引排出して処理槽1内を減圧する減圧手段、減圧下の処理槽1内へ外気を導入して処理槽1内を復圧する復圧手段、処理槽1内に冷風を循環させるための冷凍機およびファン、処理槽1内へ蒸気を供給するための給蒸手段、処理槽1内へ圧縮空気を供給する加圧手段、加圧された処理槽1内からの排気手段、処理槽1に対する給排水手段、処理槽1内の貯留水の循環手段、その循環水の加熱または冷却手段などの内、所望の構成が設置されて食品機械が構成される。そして、制御装置は、品温センサ3の検出温度などを用いて、これら手段を制御して、所定の運転を実施する。
【0046】
本発明の処理槽1へのアンテナ取付構造とアンテナ付き食品機械は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、処理槽1としての缶体4内に設けられる機器との間で通信するアンテナ2の処理槽1への取付構造であって、缶体4の壁には、貫通穴4aが形成されると共に、この貫通穴4aの缶体4内側の開口部が電波透過性素材を用いて閉塞されて、アンテナ収容部9が設けられ、このアンテナ収容部9に、アンテナ2が配置されるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0047】
たとえば、前記各実施例では、缶体4の側壁にアンテナ2を設けたが、場合により、その他の箇所(たとえば背面や天井面)に設けてもよい。
【0048】
また、前記実施例1では、缶体4の側壁にアンテナ収容筒8を設けて、その中空穴にアンテナ2を挿入したが、アンテナ収容筒8の設置を省略してもよい。つまり、缶体4の側壁に形成した貫通穴4a自体をアンテナ収容部9として、そのアンテナ収容部9にアンテナ2を配置すると共に、缶体4内側の開口部を蓋材10で閉塞してもよい。言い換えれば、
図1において、アンテナ収容筒8の設置を省略して、蓋材10を直接に缶体4の側壁に固定する構成としてもよい。
【0049】
また、前記実施例1において、場合により、アンテナ収容筒8と蓋材10とを一体形成してもよい。逆に、前記実施例2,3では、アンテナ収容体は、本体部と蓋材との区別がなく一体形成されたが、場合により、前記実施例1と同様に、缶体4に固定される本体部にアンテナ2を収容した後、蓋材で閉じる構成としてもよい。いずれにしても、缶体4の内外で無線通信可能に、アンテナ収容体8Aは、少なくとも一部が電波透過性素材により形成される。但し、たとえば実施例1において、蓋材10の一部(外周部など)を金属などの電波を通さない素材(電波非透過性素材)により形成されてもよい。
【0050】
また、前記各実施例では、缶体4内に設けられる無線式のセンサとして、品温センサ3を例に説明したが、これ以外のセンサにも同様に適用可能である。たとえば、缶体4内の食品Fの液位(食品容器5の液位)を検出する水位センサにも同様に適用可能である。
【0051】
また、前記各実施例では、缶体4内に無線式のセンサ3を設け、このセンサ3からの検出信号をアンテナ2で受信する例について説明したが、通信は、片方向通信に限らず、双方向通信であってもよい。つまり、アンテナ2は、缶体4内の機器からの受信と、缶体4内の機器への送信との内、少なくとも一方を実施可能とされればよい。それに伴い、缶体4内に設けられる機器には、送信機と受信機との内、少なくとも一方が設けられる。たとえば、缶体4内に設けられるセンサ3に、送信機に加えて受信機も設置して、缶体4外の制御装置から缶体4内のセンサ3の各種設定を可能としてもよい。
【0052】
また、缶体4内に設けられる機器として、アクチュエータなど、センサ以外にも同様に適用可能である。たとえば、缶体4内に食品Fの撹拌機を設けておき、この撹拌機を缶体4外からの指令に基づき動作させてもよい。具体的には、缶体4外の制御装置からの操作信号をアンテナ2から缶体4内の撹拌機へ送信して、撹拌機を制御してもよい。
【0053】
さらに、前記各実施例では、缶体4内には、一つの機器(各実施例ではセンサであるが上述したとおりアクチュエータでもよい)のみを設置したが、場合により複数の機器を設置してもよい。その場合、缶体4内の機器と缶体4外の制御装置との間では、どの機器からの信号(あるいはどの機器への信号)かを識別するためのIDも付して通信すればよい。たとえば、缶体4内に複数のセンサを設ける場合、各センサは、自身のIDを付して検出信号を、アンテナ2を介して制御装置へ送信する。従って、制御装置では、受信したIDに基づき、どのセンサからの信号かを把握することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 処理槽
2 アンテナ(2a:本体部、2b:ケーブル)
3 品温センサ
4 缶体(4a:貫通穴)
5 食品容器
6 ケース
7 シース管
8A アンテナ収容体
8 アンテナ収容筒(8a:ネジ部、8b:円柱部)
9 アンテナ収容部
10 蓋材(10a:ネジ穴、10b:閉塞壁)
11 パッキン