特開2018-183291(P2018-183291A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-183291(P2018-183291A)
(43)【公開日】2018年11月22日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 13/00 20060101AFI20181026BHJP
   A47C 1/121 20060101ALI20181026BHJP
【FI】
   A47C13/00 Z
   A47C1/121
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-85632(P2017-85632)
(22)【出願日】2017年4月24日
(11)【特許番号】特許第6179931号(P6179931)
(45)【特許公報発行日】2017年8月16日
(71)【出願人】
【識別番号】517145810
【氏名又は名称】寺村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】寺村 剛
【テーマコード(参考)】
3B095
3B099
【Fターム(参考)】
3B095EA02
3B095EB03
3B099FA00
3B099FA24
(57)【要約】
【課題】椅子の背もたれを用いて落下物に対する防護体を出現させるとともに、この防護体の下方に形成される空間を極力広く確保する。
【解決手段】背もたれ3の下部に、着座シート2の後部が連結されるとともに、フレーム4に形成された上下方向に沿うガイド溝5に、その長さ方向に移動可能に、かつ、この移動面内で回動可能に係合させられる連結部材6が止着され、この連結部材6と前記フレーム4との間に、前記連結部材6が前記ガイド溝5の下端部および上端部に位置させられた状態において、前記連結部材6の回動を拘束することにより前記背もたれ3の向きを規制する背もたれ姿勢保持機構7が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座シートと、この着座シートの後部に上方へ向けて立ち上げるように配置される背もたれと、これらの着座シートと背もたれの両側部に配置され、これらの着座シートおよび背もたれを支持する一対のフレームとを備えた椅子であって、前記背もたれの下部に、前記着座シートの後部が連結されるとともに、前記フレームに形成された上下方向に沿うガイド溝に、その長さ方向に移動可能に、かつ、この移動面内で回動可能に係合させられる連結部材が止着され、この連結部材と前記フレームとの間に、前記連結部材が前記ガイド溝の下端部および上端部に位置させられた状態において、前記連結部材の回動を拘束することにより前記背もたれの向きを規制する背もたれ姿勢保持機構が設けられていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背もたれ姿勢保持機構が、前記連結部材が前記ガイド溝の上端部に位置させられた状態において、前記背もたれを略水平位置に保持するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記背もたれ姿勢保持機構が、前記連結部材が前記ガイド溝の下端部に位置させられた状態において、前記背もたれを略鉛直位置に保持するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項4】
前記背もたれ姿勢保持機構が、前記連結部材に突設された係合フックと、前記フレームに、前記係合フックの移動領域内に位置するように設けられ前記係合フックが係脱させられる係止突起とによって構成され、前記係合フックが、前記連結部材に対して進退可能に装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の椅子。
【請求項5】
前記係合フックと前記連結部材との間に、前記係合フックを進退方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の椅子。
【請求項6】
前記着座シートが、前記連結部材に回動可能に連結されており、前記フレームの下部に、前記連結部材が前記ガイド溝の下部に位置させられた状態において、この連結部材と前記着座シートとの連結部よりも前方側において前記着座シートの下部が当接させられる着座シートストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の椅子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椅子に係わり、特に、建築物の内部に設置される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築物の内部、たとえば、劇場等の観客スペースには多数の椅子が設置されており、これらの椅子の上方には建築物の天井が配置されている。
【0003】
そして、何らかの原因で前記天井が破損した場合、この天井の構成部材が前記椅子へ向けて落下し、この椅子に着席している人にけがをさせてしまうおそれがある。
【0004】
このような事故から人体を保護する方法として、事故発生時に人体の上方に防護体を出現させて、この防護体によって天井からの落下物を受け止めて、この落下物が人体に接触することを防止することが考えられる。
【0005】
一方、前述した防護体を、椅子回りの空間を狭めることなく設置することは極めて困難であることから、既存の椅子を用いて前記防護体を形成することが必要となる。
【0006】
このような椅子を用いた防護体の形成に利用可能と思われる技術が、たとえば、特許文献1に示されている。
【0007】
この技術は、複数列設置された椅子の、前列の椅子の背もたれを略水平状態に回動させてテーブルとして使用するようにした技術で、この水平状態に回動させた背もたれを前記防護体として利用することが可能と思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−75995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した技術を天井からの落下物に対する防護体に適用するには、以下の点で不十分である。
【0010】
すなわち、天井からの落下物から人体を保護するには、人体を前記保護体によって覆う必要があり、換言すれば、前記保護体の下方に、人体が隠れることができる大きさの空間部が形成される必要がある。
【0011】
しかしながら、前述した従来の技術では、水平状態に回動させられた背もたれの下方に形成される空間部には椅子の着座シートが位置させられており、この着座シートによって前記空間部が狭められて、人体が入り込めるような大きさの空間部を確保することができない。
【0012】
また、前記着座シートを収納位置に回動させることにより前記空間部を拡大することも考えられるが、前記着座シートを収納位置に位置させたとしても、この着座シートは、依然として前記空間部内にある。
また、前列の背もたれをテーブルとして使用することを前提とした場合、あるいは、収容人数の関係で、列間の間隔を広く設定することができない。
【0013】
したがって、前述した従来の技術を用いて前記防護体を形成するには無理がある。
【0014】
本発明は、このような従来の要望および従来の技術における不具合を解消すべくなされたもので、天井からの落下物が生じる事故発生時において、これらの落下物から人体を保護するための保護体を出現させることができるとともに、保護体の下方に形成される空間を極力広く確保することのできる椅子を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の椅子は、前述した課題を解決するために、着座シートと、この着座シートの後部に上方へ向けて立ち上げるように配置される背もたれと、これらの着座シートと背もたれの両側部に配置され、これらの着座シートおよび背もたれを支持する一対のフレームとを備えた椅子であって、前記背もたれの下部に、前記着座シートの後部が連結されるとともに、前記フレームに形成された上下方向に沿うガイド溝に、その長さ方向に移動可能に、かつ、この移動面内で回動可能に係合させられる連結部材が止着され、この連結部材と前記フレームとの間に、前記連結部材が前記ガイド溝の下端部および上端部に位置させられた状態において、前記連結部材の回動を拘束することにより前記背もたれの向きを規制する背もたれ姿勢保持機構が設けられていることを特徴としている。
【0016】
このような構成とすることにより、通常時においては、前記連結部材を前記ガイド溝の下端部に位置させるとともに、この連結部材を背もたれ姿勢保持機構を介して前記フレームに固定する。
【0017】
この状態において、前記椅子は、前記背もたれがほぼ鉛直に保持されるとともに、前記着座シートがほぼ水平状態に保持され、着座可能な状態となされる。
【0018】
そして、落下物が生じる事故の発生時にあっては、前記背もたれ姿勢保持機構による、前記下方に位置させられている前記連結部材と前記フレームとの拘束を解除した後に、前記連結部材を前記ガイド溝の上端部へ移動させる。
【0019】
このような連結部材の移動の際に、この連結部材がその移動面内において回動可能となされていることにより、この連結部材が止着されている前記背もたれを椅子の前方へ向けて傾動させることができる。
【0020】
そして、前記連結部材を前記ガイド溝の上端部へ移動させた状態において、前記背もたれを前記フレームの前方へ向けて水平に保持するとともに、前記背もたれ姿勢保持機構により、前記連結部材の前記フレームに対する回動を拘束する。
【0021】
このような前記連結部材の操作に伴い、この連結部材に連結されている前記着座シートも、その後端部が前記ガイド溝の上端部へ引き上げられるとともに、前記背もたれの前記フレーム前方への回動に伴って、前記着座シートの前端部が後方へ向けて回動させられる。
【0022】
この状態において、前記着座シートは、前記水平状態にある前記背もたれの後端部に垂れ下がるように位置させられる。
すなわち、鉛直状態の前記背もたれの位置に前記着座シートが位置させられる。
【0023】
これによって、前記フレームの前方に、上方が前記背もたれによって覆われた空間部が形成される。
この空間部に人が入り込むことによって、落下物が落下した際に、この落下物が前記背もたれによって遮られて、前記空間部内の人への衝突が防止される。
したがって、前記背もたれが落下物への防護体として機能する。
【0024】
一方、前記着座シートは前記フレームへ向けて回動させられることにより、前記空間部から離れるように移動させられることから、前記空間部が狭められることが抑制され、したがって、前記空間部を広く確保することができる。
【0025】
さらに、前記椅子の上方は空間であることから、この椅子の高さの制限が殆どなく、これによって、前記フレームの高さや前記ガイド溝の上端部の位置を容易に高く設定することができる。
【0026】
これに伴い、前記背もたれをより高い位置において水平に保持することができる。
すなわち、前記防護体の形成位置を高く設定することができ、この点からも、人が入り込む前記空間部を広くして、落下物による事故発生時における人の避難を容易にする。
【0027】
前記背もたれ姿勢保持機構は、前記連結部材に突設された係合フックと、前記フレームに、前記係合フックの移動領域内に位置するように設けられ前記係合フックが係脱させられる係止突起とによって構成することができる。
【0028】
このような構成とすることにより、前記連結部材と前記フレームとの係合を確実なものとして、通常使用時における前記背もたれの不要な動きを抑制して、良好な使用感を確保することができる。
【0029】
また、前記背もたれを防護体として落下物を受け止める際の耐衝撃性を高めることができる。
【0030】
この場合、前記係合フックを、前記連結部材に対して進退可能な構成とすることが望ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、前記係合フックと前記係止突起との係合深さを大きく設定することができ、これによって、両者の係合力をより高めることができる。
【0032】
そして、前記係合フックと前記連結部材との間に、前記係合フックを進退方向に付勢する付勢部材を設けておくことにより、前記係合フックを前記係止突起に係脱させる際に、前記係合フックを常時前記係止突起に接触させた状態に保持してその係脱を安定させることができる。
【0033】
また、前記係合フックを前記係止突起に係合させた状態において、安定した係合状態を確保することができる。
【0034】
また、前記着座シートを、前記連結部材に回動可能に連結し、前記フレームの下方に、前記連結部材が前記ガイド溝の下部に位置させられた状態において、この連結部材と前記着座シートとの連結部よりも前方側において前記着座シートの下部が当接させられる着座シートストッパーを設けた構成とすることができる。
【0035】
このような構成とすることにより、通常時において、前記着座シートを使用位置と収納位置とに選択的に位置させることができ、既成の椅子と同様の使用形態を確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の椅子によれば、椅子の背もたれを用いて落下物に対する防護体を出現させることができるとともに、この防護体の下方に形成される空間を極力広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施形態を示す正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態を示すもので、図1の左側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態を示すもので、図2においてフレームの下部を一部破断した図である。
図4】本発明の第1の実施形態を示すもので、連結部材の拡大側面図である。
図5】本発明の第1の実施形態を示すもので、図4において、連結部材の一部を取り外した状態を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態を示すもので、作動を説明するための図3と同様の図である。
図7】本発明の第1の実施形態を示すもので、作動を説明するための図3と同様の図である。
図8】本発明の第1の実施形態を示すもので、作動を説明するための図3と同様の図である。
図9】本発明の第1の実施形態を示すもので、作動を説明するための図3と同様の図である。
図10】本発明の第1の実施形態を示すもので、作動を説明するための図3と同様の図である。
図11】本発明の第2の実施形態を示す図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1ないし図10を参照して説明する。
これらの図において、符号1は、本実施形態の椅子を示す。
【0039】
本実施形態の椅子1は、たとえば、劇場等の建築物の床面に固定されて使用されるもので、着座シート2と、この着座シート2の後部に上方へ向けて立ち上げるように配置される背もたれ3と、これらの着座シート2と背もたれ3の両側部に配置され、これらの着座シート2および背もたれ3を支持する一対のフレーム4とを備え、前記背もたれ3の下部に、前記着座シート2の後部が連結されるとともに、前記フレーム4に形成された上下方向に沿うガイド溝5(図2参照)に、その長さ方向に移動可能に、かつ、この移動面内で回動可能に係合させられる連結部材6が止着され、この連結部材6と前記フレーム4との間に、前記連結部材6が前記ガイド溝5の下端部および上端部に位置させられた状態において、前記連結部材6の回動を拘束することにより前記背もたれ3の向きを規制する背もたれ姿勢保持機構7が設けられた構成となっている。
【0040】
さらに詳述すれば、前記着座シート2は、その後端両側部に、前記着座シート2の幅方向外方に突出する係合ピン8が突設されており、この係合ピン8が前記連結部材6に回動可能に嵌合させられることによって、前記着座シート2が前記連結部材6に回動可能に連結されている。
【0041】
前記背もたれ3は、その下端両側部に、前記背もたれ3の幅方向外方に突出する係合ピン9が、前記背もたれ3の上下方向に間隔をおいてそれぞれ一対突設されており、これらの係合ピン9が前記連結部材6に嵌着されることによって、前記背もたれ3に前記連結部材6が固着されている。
【0042】
前記連結部材6は、略L字状に形成されて前記背もたれ3の両側面と前記フレーム4との間に配置され、各連結部材6の一方の辺側に前記背もたれ3の前記係合ピン9が嵌着され、他方の辺側に、前記着座シート2の前記係合ピン9が回動可能に嵌合させられている。
【0043】
前記フレーム4は、前記着座シート2および前記背もたれ3の幅方向両側に配置され、建築物の床面(何れも図示略)にボルト等によって固定されるようになっている。
【0044】
前記両フレーム4は、その上部において、前記背もたれ3の後方に位置させられる上部連結ロッド10によって連結され、かつ、その下部において、前記着座シート2の下方に位置させられる下部連結ロッド11によって連結されて一体化されている。
【0045】
前記ガイド溝5は前記各フレーム4に形成されており、図2に示すように、上下方向に沿った鉛直部5aと、この鉛直部5aの下端部から前記椅子1の前方へ向かう水平部5bを備えている。
【0046】
一方、前記連結部材6の前記フレーム4との対向面で、前記着座シート2の係合ピン8が嵌合させられている位置よりも前方側には、外方へ向かう摺動突起12が一体に突設されており、この摺動突起12が前記ガイド溝5に摺動可能にかつ軸線回りの回動が可能な状態で係合させられている。
【0047】
さらに、前記背もたれ3の背面上部には、前記上部連結ロッド10に上方から係合することにより、前記背もたれ3の上部を前記フレーム4に固定する固定片13が一体に設けられている。
【0048】
一方、前記フレーム4の下部には、前記連結部材6が前記ガイド溝5の下部に位置させられた状態において、前記着座シート2に設けられた前記係合ピン8よりも前方側の部位において前記着座シート2の下部が当接させられる着座シートストッパー14が、前記両フレーム4を連結して設けられている。
【0049】
また、前記着座シート2の下面には、前記着座シートストッパー14に前面側から当接させられて、この着座シート2の後方への移動を拘束する突条15が一体に設けられている。
【0050】
前記背もたれ姿勢保持機構7は、本実施形態においては、前記上部連結ロッド10および前記下部連結ロッド11と、前記連結部材6に突設されて前記各ロッドに選択的に係合させられる係合フック16とによって構成されており、前記上部連結ロッド10および前記下部連結ロッド11が前記連結部材6の回動を拘束する係止突起となされている。
【0051】
そして、前記係合フック16は、図5に示すように、前記一対の係合ピン9を結ぶ仮想線に沿うように配置されているとともに、その基端部が前記連結部材6を摺動可能に貫通して、前記連結部材6の下部に形成されている凹部6a内に収納され、前記連結部材6の外部へ突出させられた先端部にフック部が形成されている。
【0052】
また、本実施形態においては、前記凹部6a内に収納された前記係合フック16の基端部に外方フランジ16aが一体に形成され、この外方フランジ16aの上下の面と前記凹部6a内壁との間のそれぞれに圧縮スプリング17が介装されている。
【0053】
これによって、前記係合フック16が、前記一対の圧縮スプリング17によって、前記凹部6a内の所定位置に弾性的に保持されるようになっている。
【0054】
そして、前記凹部6aは、前記係合フック16の基端部と前記圧縮スプリング17を組み込んだ後に、図4に示すように、カバー18によって閉じられるようになっている。
【0055】
前記カバー18は、図4に示すように、一対のボルト19によって前記連結部材6に固定される。
【0056】
このように構成された本実施形態の椅子1は、通常時は、前記背もたれ3の裏面に設けられている前記固定片13を前記上部連結ロッド10に掛け止めした後に、前記背もたれ3の下部を前記椅子1の前方へ向けて移動させることにより、前記連結部材6に設けられている前記係合フック16を、前記下部連結ロッド11に後方から押しつける。
【0057】
このように前記下部連結ロッド11に押しつけられた係合フック16は、前記圧縮スプリング17の一つを圧縮しつつ前記連結ロッド11から引き出されるように移動し、前記下部連結ロッド11を通過した時点で、圧縮された前記圧縮スプリング17の付勢力によって初期位置に復帰されることにより、前記下部連結ロッド11に係合させられる。
【0058】
これによって、前記背もたれ3が、その上下において前記フレーム4に固定される。
【0059】
また、前記着座シート2を前記係合ピン8回りに回動させることにより、その先端側を下方へ向けて移動させて、この着座シート2を前記着座シートストッパー14上に載置する。
【0060】
これによって、前記着座シート2が前記フレーム4によって略水平に固定される。
【0061】
以上の操作によって、前記背もたれ3および着座シート2が、前記フレーム4の規定の位置に固定されて使用状態にセットされる。
【0062】
ついで、ものが落下するような事故が発生した場合には、まず、図6に矢印で示すように、前記着座シート2を、その先端が上方へ移動するように回動させて、図6に鎖線で示すように前記背もたれ3に沿わせる。
【0063】
ついで、図7に矢印(イ)で示すように、前記背もたれ3の下部を、前記着座シート2とともに前記椅子1の後方へ向けて回動させる。
この操作によって、前記係合フック16が、前記圧縮スプリング17の一つの付勢力に抗して前記連結部材6から引き出されて、前記下部連結ロッド11から切り離される。
【0064】
さらに、前記係合フック16を前記下部連結ロッド11から切り離した後に、前記背もたれ3および着座シート2を、図7に矢印(ロ)で示すように、前記フレーム4の上方へ向けて移動させる。
【0065】
このよう上方への移動は、前記連結部材6に突設されている前記摺動突起12によって、前記ガイド溝5に沿って行なわれる。
また、このような上への移動の初期段階において、図8に示すように、前記背もたれ3に設けられている前記固定片13が前記上部連結ロッド10から離脱して、前記背もたれ3と前記フレーム4との固定状態が解除される。
【0066】
ついで、前記背もたれ3および着座シート2を前記椅子1の前方へ向けて回動させてこれらを略水平状態とした後に、この水平状態を保持した状態で、図9に矢印(ハ)で示すように、上方へ平行移動させる。
【0067】
このような前記背もたれ3および着座シート2の上方への移動の過程で、前記連結部材6に設けられている前記係合フック16が、図7に示すように、前記フレーム4に設けられている前記上部連結ロッド10の下部に当接させられる。
【0068】
これよりさらに、前記背もたれ3および着座シート2を上方へ移動させると、前記係合フック16が、前記連結部材6内に内装されている一方の圧縮スプリング17を圧縮しつつ前記連結部材6内へ押し込まれることにより、この係合フック16が前記上部連結ロッド10を超えて移動する。
【0069】
そして、前記上部連結ロッド10の上方へ移動した前記係合フック16は、前記圧縮されている前記圧縮スプリング17によって元の位置に戻される。
【0070】
ついで、前記背もたれ3および着座シート2を下方へ若干押し下げることにより、図10に示すように、前記係合フック16を前記上部連結ロッド10へ係合させて、前記前記背もたれ3および着座シート2を、前記フレーム4の上部において、前記椅子1の前方上部を覆うようにして固定することができる。
【0071】
この結果、前記フレーム4の前方に、上方が前記背もたれ3および着座シート2によって覆われた空間部が形成され、事故時の待避空間となされる。
【0072】
ここで、前記背もたれ3および着座シート2が上方に保持されて、前記空間部の水平方向には前記フレーム4のみが残されていることにより、最大限の大きさの空間部が確保できる。
【0073】
なお、前記実施形態において示した各構成部材の諸形状や構造等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0074】
たとえば、前記実施形態においては、前記着座シート2を前記背もたれ3に重ね合わせた状態で上方へ移動させて、前記フレーム4の前方に形成される空間部の上方を覆うような構成について説明したが、これに代えて、図11に示すように、前記背もたれ3と前記着座シート2との位置関係を、前記椅子1の通常使用時の位置関係に保持した状態で、図11に示すように、前記背もたれ3のみを、前記フレーム4の上部にこのフレーム4の前方上部を覆うように固定するようにすることもできる。
【0075】
この場合においては、前記着座シート2が前記フレーム4間に引き込まれて、このフレーム4の前方に形成される空間部から待避させられる。
したがって、前記空間部が狭められることがなく、十分な広さの空間部を確保することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 椅子
2 着座シート
3 背もたれ
4 フレーム
5 ガイド溝
5a 鉛直部
5b 水平部
6 連結部材
6a 凹部
7 背もたれ姿勢保持機構
8 係合ピン
9 係合ピン
10 上部連結ロッド(係止突起)
11 下部連結ロッド(係止突起)
12 摺動突起
13 固定片
14 着座シートストッパー
15 突条
16 係合フック
16a 外方フランジ
17 圧縮スプリング
18 カバー
19 ボルト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11