【解決手段】板状のワークWを切断加工するレーザ加工装置100であって、ワークWに対して相対的に移動可能であり、ワークWに対して上面Wa側からレーザ光Lを照射してワークWを切断加工するレーザヘッド10と、ワークWとレーザヘッド10との相対的な移動によりレーザ光LをワークW上の所定の閉経路R1に沿って移動させ、ワークWの一部に抜き部分Wcを形成する第1加工と、第1加工の後に閉経路R1の内側に沿った少なくとも一部にレーザ光Lを照射して抜き部分Wcにより形成された切断片Wdの一部を切断する第2加工とを行わせる制御部40と、を備える。
前記制御部は、前記第2加工において、前記レーザ光の出力、及び前記レーザ光と前記ワークとの相対的な移動速度の少なくとも1つを前記第1加工に対して変化させる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
前記制御部は、前記抜き部分の最小幅が前記ワークの板厚の1.5倍以下となる場合に、前記第2加工を行わせる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に平行な任意の方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるとして説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係るレーザ加工装置の一例を示す図である。レーザ加工装置100は、レーザ光Lを出射して加工対象である板状のワークWを切断可能である。レーザ加工装置100は、加工領域に搬入されたワークWに対して切断加工を行う。レーザ加工装置100に対する未加工のワークWの搬入及び加工済みのワークWの搬出は、後述する加工パレット50により行うが、他のローダ装置等によりワークWの搬入及び搬出を行ってもよい。なお、レーザ加工装置100は、例えばパンチプレスなどの他の加工装置が隣接して配置された複合機であってもよい。
【0016】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザヘッド10と、ヘッド駆動部20と、アシストガス供給部30と、制御部40とを備えている。レーザヘッド10は、ワークWに対して上面Wa側からレーザ光Lを照射してワークWを切断加工する。レーザヘッド10は、ヘッド本体11と、ノズル12とを有する。ヘッド本体11は、レーザ加工装置100内の加工領域に載置されたワークWの上方に配置される。ヘッド本体11は、ヘッド駆動部20によりX方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。ヘッド本体11は、ヘッド駆動部20により移動することでワークWに対して相対的に移動する。なお、ワークWに対して。ヘッド本体11が移動することに限定されない。例えば、ヘッド本体11に対してワークW(加工パレット50)が移動する構成であってもよいし、ヘッド本体11及びワークWの双方が移動する構成であってもよい。
【0017】
ノズル12は、ヘッド本体11の−Z側(下方側)に取り付けられている。ノズル12は、−Z方向(下方)に向けられており、ヘッド本体11からのレーザ光Lを−Z方向(下方)に向けて射出する。また、ノズル12は、ガス供給管等を介してアシストガス供給部30に接続されている。ノズル12は、レーザ光Lを照射する領域に向けて、アシストガス供給部30からのアシストガスGをワークWに供給する。
【0018】
レーザヘッド10は、光ファイバ13等の光伝送体を介して不図示のレーザ光源に接続されている。レーザ光源としては、例えば、炭酸ガスレーザ光源又は固体レーザ光源等が用いられる。レーザヘッド10は、不図示の照射光学系を備えており、レーザ発振器からのレーザ光Lを照射光学系によって収束してノズル12から出射する。レーザヘッド10は、ワークW上に所定径のスポットLSを形成するようにレーザ光Lを照射する。スポットLSの径は、例えば、上記した照射光学系の光学素子の一部を移動させることにより調整可能である。
【0019】
ヘッド駆動部20は、レーザヘッド10をX方向、Y方向及びZ方向に移動させる。ヘッド駆動部20は、例えば、X方向に移動可能なガントリと、ガントリに対してY方向に移動可能なスライダと、スライダに対してZ方向に移動可能な昇降部と、で構成される。ヘッド駆動部20は、ガントリ、スライダ、昇降部のそれぞれの駆動源を駆動することによりレーザヘッド10をX方向、Y方向、及びZ方向の所定位置に移動させる。ただし、ヘッド駆動部20の構成はこれに限定されず、ロボットアーム等の他の構成により行ってもよい。
【0020】
アシストガス供給部30は、レーザヘッド10のノズル12内にアシストガスGを供給する。アシストガス供給部30は、不図示のガス供給源及びガス供給管を有する。アシストガス供給部30は、ガス供給源で生成されたアシストガスGを、ガス供給管を介してノズル12内に供給する。ガス供給源としては、例えば、ガスボンベや工場等のガス供給ライン等が用いられる。アシストガスGは、例えば、窒素ガス、空気、窒素と酸素とを混合したガス等が用いられる。
【0021】
制御部40は、レーザ加工装置100を統括して制御し、レーザヘッド10、ヘッド駆動部20及びアシストガス供給部30等の動作を制御する。制御部40は、記憶部41と、第2加工指令生成部42とを有する。記憶部41は、主記憶装置や補助記憶装置等の記憶装置を有する。記憶部41は、例えば、加工プログラムが記憶されており、加工プログラムの一部又は全部である後述の第1加工指令41aが記憶される。制御部40は、加工プログラム(第1加工指令41a)を不図示の上位制御装置から無線又は有線により送られて取得してもよいし、オペレータ等により、加工プログラムを格納した他の記憶装置から記憶部41に格納させてもよい。
【0022】
制御部40は、記憶部41に記憶された加工プログラムを読み出して、この加工プログラムに従ってレーザヘッド10、ヘッド駆動部20及びアシストガス供給部30を動作させる。これにより、レーザヘッド10から出射したレーザ光LでワークWの一部を切断し、ワークWに対する切断加工を実行させる。なお、加工プログラムは、例えば、ワークWの材質、厚さなどの加工条件に応じたレーザ光の出力、切断加工する所望の寸法に沿うようなレーザ光Lの移動経路、ワークWとレーザヘッド10との相対速度、アシストガスGの供給量などを含む。
【0023】
上記したように、記憶部41に記憶された第1加工指令41aは、ワークWに対して第1加工を行わせるための加工プログラムの一部または全部である。第1加工指令41aは、例えば、ワークWとレーザヘッド10との相対的な移動によりレーザ光LをワークW上の所定の閉経路R1に沿って移動させ、ワークWの一部に抜き部分Wcを形成する加工である。抜き部分Wcの形成に伴って、抜き部分Wcの内側は切断片WdとしてワークWから除去されるべき部分が形成される。
【0024】
第2加工指令生成部42は、加工プログラムの一部である後述の第2加工指令を生成する。第2加工指令は、ワークWに対して第2加工を行わせるための加工プログラムである。第2加工は、第1加工の後、閉経路R1の内側に沿った少なくとも一部にレーザ光Lを照射し、上記の抜き部分Wcにより形成された切断片Wdの一部を切断する加工である。第2加工指令生成部42が第2加工指令を生成することにより、第1加工指令41aの変更が不要であり、制御部40の負担を軽減することができる。なお、第2加工指令生成部42は、制御部40の一部として形成されることに代えて、制御部40とは別に形成されてもよい。
【0025】
第2加工指令生成部42は、第2加工指令として、レーザ光Lを閉経路R1の内側に沿った全周にわたって照射させる指令を生成してもよいし、レーザ光Lを閉経路R1の内側に沿った一部に照射させる指令を生成してもよい。レーザ光Lを閉経路R1の内側に沿った一部に照射させる場合、例えば、抜き部分Wcの形成(レーザ光Lの照射)が完了する部分と、抜き部分Wcの中心を挟んで、この完了する部分に対称位置にある部分を含んでレーザ光Lを照射させてもよい。
【0026】
また、第2加工指令として、レーザ光Lを閉経路R1に対してどの程度内側に沿わせるかは任意に設定可能である。第2加工指令は、レーザ光Lの照射により抜き部分Wcの内側を溶融させない程度に閉経路R1の内側に沿わせるように設定され、例えば、閉経路R1から内側に、レーザ光LのスポットLSの中心までの距離が50μm〜1.0mmの範囲で沿わせるように設定されてもよい。
【0027】
また、第2加工指令は、閉経路R1の内側に沿った一定距離で閉経路R1に沿わせてもよいし、閉経路R1の一部で閉経路R1からの距離を異ならせてもよい。例えば、閉経路R1が複数の曲率半径を有して形成されている場合、曲率半径が小さい部分については他の部分に対して閉経路R1からの距離を大きく又は小さくしてもよいし、曲率半径が大きい部分については他の部分に対して閉経路R1からの距離を小さく又は大きくしてもよい。また、閉経路R1が直線を有して形成されている場合、直線部分については他の部分に対して閉経路R1からの距離を小さく又は大きくしてもよい。
【0028】
また、第2加工指令生成部42は、第2加工において、レーザ光LのスポットLSが、第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡に対して一部重なるようにワークWとレーザヘッド10とを相対的に移動させる第2加工指令を生成してもよい。第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡に対してどの程度重ねるかは任意に設定可能である。例えば、第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡に対して、第2加工のレーザ光LのスポットLSが10μm〜100μmの範囲で重なるように設定されてもよい。
【0029】
また、第2加工指令は、第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡に対して一定量重なるようにレーザ光LのスポットLSを移動させる設定であってもよいし、閉経路R1の一部で重なる量が異なるようにレーザ光LのスポットLSを移動させる設定であってもよい。
【0030】
また、第2加工指令生成部42は、第2加工において、第1加工の閉経路R1の形状と相似形の閉経路R2(
図4等参照)にレーザ光Lを照射させる第2加工指令を生成してもよい。これにより、第2加工指令生成部42は、容易に第2加工指令を生成することができ、第2加工指令生成部42(制御部40)の負担を軽減することができる。相似形の閉経路R2としては、例えば、閉経路R1に対して縮小した相似形の閉経路R2が作成される。閉経路R2において、閉経路R1に対して縮小する倍率は任意に設定可能であり、例えば、閉経路R1に対して0.80倍から0.95倍の範囲等に設定される。
【0031】
また、第2加工指令生成部42は、第2加工において、レーザ光Lの出力、及びレーザ光LとワークWとの相対的な移動速度の少なくとも1つを第1加工時に対して変化させてもよい。これにより、第2加工を行うのに最適な条件を設定することができ、切断片Wdの除去を効率よく行うことができる。第2加工指令生成部42は、第2加工において、第1加工におけるレーザ光Lの出力を下げてもよいし、又は上げてもよい。また、第2加工指令生成部42は、第2加工において、第1加工におけるレーザ光LとワークWとの相対的な移動速度に対して速くしてもよいし、又は遅くしてもよい。
【0032】
また、第2加工指令生成部42は、第2加工において、スポットLSの径を第1加工時に対して変化させてもよい。例えば、第1加工及び第2加工でレーザ光Lの出力を一定にした場合、スポットLSの径を変化させることにより、ワークWの単位面積あたりにおけるレーザ光Lの投入エネルギを変化させることが可能となる。第2加工において、スポットLSの径を第1加工時に対して変化させることにより、第2加工を適切に行うことができる。第2加工指令生成部42は、第2加工において、スポットLSの径を第1加工時より大きくしてもよいし、又は小さくしてもよい。
【0033】
第2加工指令生成部42は、例えば、抜き部分Wcの最小幅がワークWの板厚Tの1.5倍以下となる場合に、第2加工指令を生成しなくてもよい。制御部40は、記憶部41に記憶されている加工プログラム(第1加工指令41a)におけるワークWの情報に基づいて、ワークWの板厚Tと抜き部分Wcの最小幅とを比較し、抜き部分Wcの最小幅がワークWの板厚Tの1.5倍以下となる場合に第2加工指令生成部42に対して第2加工指令を生成するように指示してもよい。抜き部分Wcの最小幅は、例えば、抜き部分Wcの内周面同士の距離が最も小さくなる部分の寸法とすることができる。最小幅については、例えば、制御部40が加工プログラム(第1加工指令)の情報を読み出して算出してもよい。また、上記した閾値である1.5倍は変更可能であり、例えば、1.2倍から2.0倍の範囲などに変更されてもよい。また、第2加工指令生成部42は、ワークWの板厚Tと無関係に、常に第2加工指令を生成してもよい。
【0034】
レーザ加工装置100は、ワークWを支持する加工パレット50を有する。加工パレット50は、ワークWを載置してワークWをレーザ加工装置100内の加工領域に配置するい。加工パレット50は、例えば、不図示の駆動装置により、ワークWを載置した状態でX方向等に移動可能であってもよい。加工パレット50は、ベースプレート51及び支持プレート52を有している。支持プレート52は、ベースプレート51の上面(+Z側の面)に複数並んだ状態で設けられ、ワークWの下面(−Z側の面)Wbを支持する。各支持プレート52は、鋸歯状に形成された複数の上端部52aを有し、各上端部52aの高さが同一となるように形成されている。
【0035】
複数の上端部52aには、ワークWが載置される。上端部52aが鋸歯状に形成されているため、上端部52aとワークWとの間の接触面積が小さくなる。なお、上端部52aは、鋸歯状とすることに限定されず、例えば、剣山状や波形状としてもよい。また、加工パレット50は、例えば、複数のピンがベースプレート51上に配置されたものでもよい。ワークWは、支持プレート52に載置された状態で切断加工され、抜き部分Wcを形成した際に生じた切断片Wdは、複数の支持プレート52間に形成されている切断片排出部60に落下してワークWから除去されるようになっている。なお、加工パレット50を用いるか否かは任意である。例えば、加工パレット50に代えて、レーザ加工装置100内の加工領域に剣山状等のワーク載置部が設けられてもよい。また、上記したように、レーザ加工装置100がタレットパンチプレスを隣接させた複合機である場合、この複合機には固定のレーザヘッド(
図1に示すレーザヘッド10と同様に、ワークWを切断するためのレーザ光Lを出射する。)と、成形加工等のための固定のパンチヘッドとを備えている。レーザヘッドの下方には、ワークWの載置部に本実施形態の切断片排出部60に相当するスラグ排出孔が設けられている。レーザヘッドにより切断されたワークWの切断片Wdは、スラグ排出孔に落ちて除去される。
【0036】
次に、上記したレーザ加工装置100の動作を説明する。
図2は、実施形態に係るレーザ加工方法の一例を示すフローチャートである。また、
図3(A)及び(B)は、レーザ加工装置100による第1加工の一例を示す図である。
図4(A)及び(B)は、
図3に続いて、レーザ加工装置100による第2加工の一例を示す図である。
図5(A)及び(B)は、第2加工により切断片Wdを除去する過程の一例を示す図である。本実施形態では、ワークWに対して抜き部分Wcを形成する場合を例に挙げて説明する。以下の説明では、適宜
図1に示す内容を参照する。
【0037】
レーザ加工装置100の加工領域には、加工パレット50に載置されたワークWが配置される。ワークWは、加工パレット50により搬送されることに代えて、例えばローダ装置によってワークWが加工領域に搬送されてもよい。ワークWが加工パレット50の支持プレート52上に載置された状態で、制御部40は、記憶部41に記憶された加工プログラム(第1加工指令41a)を実行し、レーザヘッド10を動作させてワークWの第1加工を開始させる(ステップS01)。
【0038】
ステップS01において、制御部40は、レーザヘッド10からワークWの上面Waにレーザ光Lを照射する。ワークWの上面Waには、
図3(A)に示すように、所定径D1を有するレーザ光LのスポットLSが形成される。制御部40は、まず、レーザヘッド10を移動させてノズル12を抜き部分Wcの中心位置Q1に対向させた後、ノズル12からレーザ光Lを出射させる。レーザ光LのスポットLSは、抜き部分Wcの中心位置Q1に照射される。
【0039】
続いて、制御部40は、レーザヘッド10を移動させて、スポットLSを中心位置Q1から放射方向に移動させ、スポットLSの端部が抜き部分Wcの内周面Weに端部が接する位置(あるいはスポットLSの中心が閉経路R1に達した位置)Q2に移動させる。なお、レーザ光Lを、最初に抜き部分Wcの中心位置Q1に照射することに限定されない。例えば、閉経路R1の内側であればレーザ光Lを最初に照射する位置を任意に設定可能である。
【0040】
制御部40は、スポットLSを位置Q2に移動させた後、スポットLSの中心がワークW上の所定の閉経路R1に沿って移動するようにレーザヘッド10を移動させる。これにより、
図3(B)に示すように、ワークWには、閉経路R1に沿ってレーザ光Lが連続して照射される。レーザ光Lの照射に伴って、レーザヘッド10のノズル12からアシストガスGがワークWの上面Waに供給されている。ワークWは、レーザ光Lが照射された部分が溶融し、スポットLSが閉経路R1を1周した段階(位置Q2に戻った段階)で切断片WdがワークWから切り離される。これにより、スポットLSの軌跡P1に沿った抜き部分Wcが形成される。
【0041】
抜き部分Wcによって形成された切断片Wdは、ワークWの抜き部分Wcから切断片排出部60(
図1参照)に落下して除去されることが通常である。ただし、抜き部分Wcの最小幅Dが小さい場合などでは、切断片Wdが抜き部分Wcの内周面Weに引っ掛かり、切断片WdがワークWに残ってしまう場合がある。例えば、レーザ光Lの照射とともにワークWにアシストガスGを供給していると、切断片WdがアシストガスGに押されて傾き、抜き部分Wcの内周面Weに引っ掛かりやすくなる。
図5(A)は、切断片Wdが抜き部分Wcの内周面Weに引っ掛かった状態を示している。
【0042】
図5(A)に示すように、レーザ光LのスポットLSが閉経路R1を1周した段階において、アシストガスGがワークWに供給されることにより、切断片WdがアシストガスGに押されて傾き、切断片Wdの下側の縁部(
図5(A)において切断片Wdの左側)と上側の縁部(
図5(A)において切断片Wdの右側)とがそれぞれ抜き部分Wcの内周面Weに接触して、抜き部分Wcに切断片Wdが残った状態が生じている。このような状態は、抜き部分Wcの最小幅DがワークWの板厚Tの1.5倍以下である場合に生じやすい。
【0043】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、制御部40(又は第2加工指令生成部42)は、抜き部分Wcの最小幅DがワークWの板厚Tの1.5倍以下か否かを判定する(ステップS02)。制御部40(又は第2加工指令生成部42)は、ステップS02において、記憶部41に記憶された第1加工指令に含まれるデータから、ワークWの板厚Tと、抜き部分Wcの最小幅Dとを抽出する。制御部40(又は第2加工指令生成部42)は、抽出結果に基づいて、最小幅Dが板厚Tの何倍かを算出し、算出結果が1.5倍以下か否かを判定する。
【0044】
制御部40(又は第2加工指令生成部42)は、最小幅Dが板厚Tの1.5倍以下であると判定した場合(ステップS02のYES)、第2加工指令生成部42に第2加工指令の生成を指示する(ステップS03)。又は、第2加工指令生成部42は、最小幅Dが板厚Tの1.5倍以下であると判定した場合(ステップS02のYES)、第2加工指令を生成する(ステップS03)。なお、制御部40は、最小幅Dが板厚Tの1.5倍を超えると判定した場合(ステップS02のNO)、ステップS03及び以下に説明するステップS04、S05を行うことなく、加工処理を終了する。このように、切断片Wdの引っ掛かりが生じる可能性が高い場合を選択して第2加工を行うことにより、ワークWの加工効率の低下を抑制できる。ただし、ステップS02を行うか否かは任意であり、ステップS02はなくてもよい。
【0045】
ステップS02でYESの場合、第2加工指令生成部42は、第2加工を行わせるための第2加工指令を生成する(ステップS03)。第2加工指令は、閉経路R1の内側に沿った一部又は全部にレーザ光Lを照射して切断片Wdの一部を切断する第2加工を行わせる。
図4(A)に示すように、第2加工指令生成部42は、閉経路R1の相似形であり、かつ閉経路R1の内側に沿った閉経路R2の全周にわたってレーザ光Lを照射させ、レーザ光LのスポットLSが第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡P2に対して一部重なるようにレーザヘッド10を移動させる第2加工指令を生成する。
【0046】
第2加工指令を生成した後、第2加工指令生成部42は、第2加工におけるレーザ光Lの出力と、レーザヘッド10の移動速度とを設定する(ステップS04)。ステップS04において、第2加工指令生成部42は、レーザ光Lの出力、レーザヘッド10の移動速度の方又は双方を、第1加工と同様に設定してもよいし、第1加工時に対して変化させてもよい。第2加工では、切断片Wdの引っ掛かり部分を切断するだけでよいので、第2加工指令生成部42は、例えば、第2加工において、第1加工よりもレーザ光Lの出力が小さく、レーザヘッド10の移動速度が速くなるように設定することができる。この場合、第1加工に比べて短時間かつ低消費電力で切断片Wdの切断を行うことができる。
【0047】
また、第2加工指令生成部42は、第2加工におけるスポットLSの径D2を、第1加工における径D1に対して変化させてもよい。例えば、第2加工指令生成部42は、第2加工におけるスポットLSの径D2を、第1加工におけるスポットLSの径D1よりも小さくすることができる。この場合、スポットLSの外周部分が抜き部分Wcの内周面Weから離れるので、内周面Weにレーザ光Lが照射されることを抑制することができる。ステップS04において、レーザ光Lの出力及びレーザヘッド10の移動速度、並びにスポットLSの径D2が設定されると、第2加工指令生成部42は、設定された内容を第2加工指令に反映させる。
【0048】
ステップS04でレーザ光Lの出力等が設定された後、制御部40は、第2加工指令に基づいて、ワークWに対する第2加工を実行する(ステップS05)。ステップS05において、制御部40は、レーザ光LのスポットLSが閉経路R2(
図4(A)参照)上を移動するようにレーザヘッド10を移動させる。また、スポットLSは、第1加工におけるスポットLSの軌跡P1に対して一部重なるように移動する。これにより、切断片Wdは、閉経路R2に沿ってレーザ光Lが照射される。
【0049】
これにより、
図4(B)に示すように、切断片Wdのうち抜き部分Wcの内周面Weに引っ掛かっている部分も含めて、切断片Wdの周縁に沿ってレーザ光Lが照射される。レーザ光Lを、切断片Wdの周縁に沿った一周にわたってレーザ光Lを照射することにより、切断片Wdがどの位置で引っ掛かっているかを確認することなく、この引っ掛かり部分を確実に溶融することができる。切断片Wdは、引っ掛かり部分が溶融することにより、内周面Weとの引っ掛かりが解消される。また、切断片Wdは、外周部分が溶融することで寸法が小さくなるため、内周面Weに引っ掛かりにくくなる。その結果、
図5(B)に示すように、切断片Wdは、ワークの抜き部分Wcから切断片排出部60を落下して除去される。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るレーザ加工装置100及びレーザ加工方法によれば、ワークWの一部に抜き部分Wcを形成した後、閉経路R1の内側に沿った一部又は全部にレーザ光Lを照射して抜き部分Wcにより形成された切断片Wdの一部を切断するため、抜き部分Wcの内側に残っている切断片Wdの引っ掛かり部分を除去して、切断片Wdを容易にワークWから除去することができる。また、抜き部分Wcの内周面Weに再度レーザ光Lが照射されることを抑制するため、抜き部分Wcの内周面Weが溶融して抜き部分Wcの品質が低下するのを抑制できる。
【0051】
また、レーザ加工装置100がタレットパンチプレスを隣接させた複合機等である場合、レーザヘッド10によるワークWの加工後に、パンチプレス等で成形加工(タップ加工を含む)などの他の加工を行うことが一般的である。この場合、ワークWの抜き部分Wcに切断片Wdが残っていると、抜き部分Wcを成形加工するための金型(加工工具)が切断片Wdに接触して破損し、あるいは成形不良(加工不良)を生じさせることになる。本実施形態は、上記のように切断片Wdを抜き部分Wcから確実に除去するので、複合機等における金型の破損、あるいは成形不良(加工不良)が生じるのを防止することができる。
【0052】
上記した実施形態では、抜き部分Wcとして、上面Waから見て円形の場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図6(A)及び(B)は、レーザ加工装置100によりワークWを加工する過程の他の例を示す図である。
図6(A)及び(B)に示すように、ワークWに矩形状の抜き部分Wfを形成する場合についても、上記した実施形態と同様に、第1加工及び第2加工を行うことができる。
図6(A)に示すように、制御部40は、レーザ光Lを抜き部分Wfの中心位置等に照射した後、レーザヘッド10を移動させてレーザ光LのスポットLSの中心を閉経路R3に合致させ、この閉経路R3に沿ってスポットLSをワークW上で移動させる。
【0053】
これにより、
図6(A)に示すように、ワークWは、レーザ光Lが照射された部分が溶融し、スポットLSの軌跡P2に沿った矩形状の抜き部分Wfが形成され、これに伴って抜き部分Wfの内側に矩形状の切断片Wgが形成される。この矩形状の切断片Wgは、
図5(A)と同様に、抜き部分Wfの内周面Whに引っ掛かってワークWから除去されない場合がある。制御部40は、
図2に示すフローチャートと同様に、抜き部分Wfの最小幅、及びワークWの板厚Tから第2加工を行うか否か判断してもよい。
【0054】
第2加工を行う場合、第2加工指令生成部42は、
図6(B)に示すように、閉経路R3の相似形であり閉経路R3の内側に沿った閉経路R4を含む第2加工指令を生成する。制御部40は、生成された第2加工指令に基づいて、例えば、閉経路R4の全周にわたってレーザ光Lを照射させ、レーザ光LのスポットLSが第1加工におけるレーザ光LのスポットLSの軌跡P2に対して一部重なるようにレーザヘッド10を移動させる。これにより、切断片Wgの引っ掛かり部分がレーザ光Lの照射によって溶融し、切断片Wgは、引っ掛かり部分が除去されて内周面Whとの引っ掛かりが解消される。また、切断片Wgは、外周部分が溶融することで寸法が小さくなるため、内周面Whに引っ掛かりにくくなる。その結果、切断片Wgは、ワークの抜き部分Wfから落下して除去される。
【0055】
なお、ワークWに矩形状の抜き部分Wfを形成した場合、第2加工において、抜き部分Wfの直線部分と角部分とでレーザ光Lの出力、レーザヘッド10の移動速度、スポットLSの径D2のうち少なくとも1つを変化させてもよい。例えば、抜き部分Wfの角部分は、レーザヘッド10の移動速度が遅くなるので、レーザ光Lの出力を下げてもよいし、スポットLSの径D2を小さくしてもよい。なお、
図6では矩形状(四角形状)を示しているが、四角形以外の多角形状であっても同様である。
【0056】
また、上記した実施形態では、第2加工において、レーザ光Lを閉経路R1の内側に沿った閉経路R2の全周にわたって照射する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図7は、レーザ加工装置100によりワークWを加工する過程の他の例を示す図である。
図7に示すように、制御部40は、第2加工において、レーザ光Lを閉経路R2の一部分にのみ照射させてもよい。
【0057】
第2加工指令生成部42は、閉経路R1の内側に沿った全周のうち、位置Q2と位置Q3とを含む部分のそれぞれを経路R5、R6とする第2加工指令を生成してもよい。位置Q2は、第1加工において抜き部分Wcを形成するためにレーザ光Lが最後に照射する部分であり、
図5(A)に示すように、切断片Wdが引っ掛かっている部分である。位置Q3は、位置Q2と同様、
図5(A)に示すように、切断片Wdが引っ掛かっている部分である。位置Q3は、中心位置Q1に対して位置Q2の反対側である。このように、切断片Wdのうち引っ掛かっている部分が予め予測できる場合、第2加工指令において、経路R5、R6のように選択的な経路が設定されてもよい。
【0058】
第2加工では、経路R5及び経路R6に選択的にレーザ光Lが照射される。これにより、切断片Wdのうち引っ掛かっている部分が除去され、切断片WdをワークWから除去することができる。また、レーザ光Lの照射を選択的に行うので、第2加工を短時間かつ低消費電力で行うことができる。
【0059】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。上記した実施形態では、ワークWの上面Waから見て円形または矩形状の抜き部分Wc、Wfを示しているが、抜き部分としては、楕円形状、長円形状、帯状等であっても上記と同様である。