【解決手段】上型キャビティ凹部7内の樹脂充填領域の製品エリア外である外周縁部及び上型キャビティ凹部7の外周縁部に連なるエアベント溝9のうち少なくともいずれかにコイルばね10により付勢された調圧プランジャ11が設けられている。
ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型とで前記ワークが前記モールド樹脂と共にクランプされるモールド金型であって、
前記キャビティ凹部内の樹脂充填領域の製品エリア外である外周縁部及び前記キャビティ凹部の外周縁部に連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられていることを特徴とするモールド金型。
前記モールド金型は、トランスファ成形用金型であり、前記第一の金型にポット及び該ポット内に定ストロークで移動するプランジャが設けられ、前記第二の金型のゲート接続位置以外のキャビティ凹部内の製品エリア外である外周縁部及びこれに連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられている請求項1記載のモールド金型。
前記モールド金型は、圧縮成型用金型であり、ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型を備え、前記第二の金型にはキャビティ底部を構成するキャビティ駒の製品エリア外である外周縁部及びキャビティ側部を構成する可動クランパのクランプ面に形成され前記キャビティ凹部に連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられている請求項1記載のモールド金型。
ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型とで前記ワークが前記モールド樹脂と共にクランプされる圧縮成形用のモールド金型であって、
前記第二の金型にはキャビティ底部を構成するキャビティ駒がベース部に対して支持固定され、キャビティ側部を構成し前記キャビティ駒を囲んで配置された可動クランパは、前記ベース部に対して第一弾性部材を介して相対移動可能に支持されており、前記キャビティ駒には調圧部材が前記ベース部に対して第二弾性部材を介して支持されて前記キャビティ駒に対して相対移動可能に設けられていることを特徴とするモールド金型。
前記キャビティ駒には製品エリアとなるキャビティ駒凹部が形成されており、前記調圧部材は、前記キャビティ駒凹部の製品エリア外である外周縁部に沿って当該製品エリアを囲むように複数設けられており、前記キャビティ駒のキャビティ底面より退避可能に設けられている請求項5記載のモールド金型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1示すトランスファ成形によるモールド金型においては、プランジャ外周面とポット内側面との間に入り込んだ溶融樹脂の影響を受けて、摺動抵抗が増大してしまう。樹脂モールド動作ごとにプランジャの摺動抵抗が変化するため、設定した成形圧が作用しないという課題がある。
【0006】
特に、低粘度樹脂(例えば、LED用透明樹脂、MUF用樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン径樹脂等)は、ポット内周面とプランジャ外周面との隙間に樹脂が入り込み易く、特にLED用樹脂の場合には、粘度が0.1Pasを下回る場合もあり、プランジャ推力を一定に保つことが難しい。樹脂圧のばらつきは成形品質のばらつき(未充填、内部ボイド、ワイヤダメージ等)に直結する。
また、圧縮成型用のモールド金型のおいては、キャビティ凹部に供給されたモールド樹脂の樹脂量を調整することはできても、樹脂圧はプレスの型締力に依存し、樹脂圧のみを調整することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、樹脂の性質によらず安定した成形圧を印加することができるモールド金型を提供し、これを用いて成形品質を安定化させた樹脂モールド装置を提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型とで前記ワーク及び前記モールド樹脂がクランプされるモールド金型であって、前記キャビティ凹部内の製品エリア外である外周縁部及び前記キャビティ凹部の外周縁部に連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記モールド金型を用いれば、キャビティ凹部内の製品エリア外である外周縁部及びキャビティ凹部の外周縁部に連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられているため、樹脂充填領域の最外周端(最先端)でモールド樹脂が調圧部材により押圧されるため、溶融樹脂を押し込むプランジャに等圧機構(スプリングフロート若しくは油圧均等圧機構)は不要になり、プランジャの摺動抵抗が変動しても調圧部材を付勢する弾性部材により樹脂圧のばらつきを吸収して安定化した成形圧を加えたまま加熱硬化させることができる。また、調圧部材に押圧されて成形されたエリアはキャビティ駒の製品エリア外若しくはこれに連なるエアベント溝であるため、成形品質に影響を及ぼすことはない。
【0010】
前記モールド金型は、トランスファ成形用金型であり、前記第一の金型にポット及び該ポット内に定ストロークで昇降するプランジャが設けられ、前記第二の金型のゲート接続位置以外のキャビティ凹部内の製品エリア外である外周縁部及びこれに連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられていてもよい。
これにより、トランスファ成形においてプランジャに等圧ユニットを設ける必要がなく定ストローク駆動で足り、しかもプランジャの摺動抵抗が変動しても成形動作に影響しない。樹脂充填領域の最外周端(最先端)に相当するゲート接続位置以外のキャビティ凹部内の製品エリア外である外周縁部及びこれに連なるエアベント溝のうちいずれかに調圧部材を設けて最終成形圧が得られるので、成形圧を一定に維持することができる。
【0011】
前記第二の金型のポットに対向する金型カル位置に前記弾性部材により付勢された調圧部材が更に設けられていてもよい。
これにより、キャビティ凹部に充填されたモールド樹脂の樹脂圧のばらつきを金型カル側の調圧部材を付勢する弾性部材で吸収して保圧することができる。
【0012】
前記モールド金型は、圧縮成型用金型であり、ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型を備え、前記第二の金型にはキャビティ底部を構成するキャビティ駒の製品エリア外である外周縁部及びキャビティ側部を構成する可動クランパのクランプ面に形成され前記キャビティ凹部に連なるエアベント溝のうち少なくともいずれかに弾性部材により付勢された調圧部材が設けられていることが好ましい。
これにより、ワークが上型と下型にクランプされてキャビティ凹部に溶融したモールド樹脂に半導体チップが浸漬されて圧縮される際に、キャビティ駒の製品エリア外である外周縁部及び可動クランパのクランプ面に形成されたエアベント溝の少なくともいずれかに設けられた調圧部材を付勢する弾性部材の撓みにより樹脂圧のばらつきを吸収して所定の成形圧を加えることができる。よって、モールド樹脂の未充填や内部ボイドの発生を抑えて成形品質を向上させることができる。
【0013】
また、ワークを支持する第一の金型と、モールド樹脂が供給されるキャビティ凹部が形成された第二の金型とで前記ワークが前記モールド樹脂と共にクランプされる圧縮成形用のモールド金型であって、前記第二の金型にはキャビティ底部を構成するキャビティ駒がベース部に対して支持固定され、キャビティ側部を構成し前記キャビティ駒を囲んで配置された可動クランパは、前記ベース部に対して第一弾性部材を介して相対移動可能に支持されており、前記キャビティ駒には調圧部材が前記ベース部に対して第二弾性部材を介して支持されて前記キャビティ駒に対して相対移動可能に設けられていることを特徴とする。
これにより、ワークが上型と下型にクランプされてキャビティ凹部に溶融したモールド樹脂に浸漬されて圧縮成形される際に第一弾性部材が撓むことにより、可動クランパがキャビティ駒に対して相対移動してキャビティ容積が縮小すると共に、調圧部材がキャビティ駒に対して相対移動してキャビティ内から受ける樹脂圧のばらつきを第二弾性部材のたわみにより吸収して所定の成形圧を加えることができる。
【0014】
この場合、前記キャビティ駒には製品エリアとなるキャビティ駒凹部が形成されており、前記調圧部材は、前記キャビティ駒凹部の製品エリア外である外周縁部に沿って当該製品エリアを囲むように複数設けられており、前記キャビティ駒のキャビティ底面より退避可能に設けられていることが好ましい。
これにより、圧縮成形において製品エリアであるキャビティ駒凹部の容積が縮小して周囲に流出したモールド樹脂の樹脂圧によりキャビティ駒の製品エリア外に設けられた調圧部材をキャビティ底面より退避させて圧縮成形するので、所定の成形圧を加えて圧縮成形することができる。よって、製品エリアの樹脂充填性を向上させて成形品質を向上させることができる。また、キャビティ凹部に樹脂量が多く供給されたときの余剰樹脂を調圧部材の退避空間に収容して樹脂圧及び樹脂厚を調整することができる。
【0015】
前記第二弾性部材と前記ベース部との間には前記第二弾性部材の出力を検出する荷重検出部が設けられていてもよい。
これにより、調圧部材がキャビティ凹部内のモールド樹脂に作用する成形圧を荷重検出部が検出することにより、樹脂供給量やクランプ力を微調整することができる。
【0016】
樹脂モールド装置においては、上述したいずれかのモールド金型を開閉可能に設けたことにより、成形圧が安定し成形品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記モールド金型を用いれば、樹脂の性質によらず安定した成形圧を印加することができる。また、このモールド金型を開閉可能に設けることで成形品質を安定化させた樹脂モールド装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るモールド金型及び樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、ワークとしてキャリヤプレート(金属基板、ガラス基板)を用い、該キャリヤプレートに熱剥離シートを貼り合わせ、熱剥離シート上に半導体チップが多数ダイボンディングされているワークを用いて説明する。尚、キャリヤプレートに替えて有機基板、アルミ基板、リードフレーム、ウエハ等を用いてもよい。熱剥離シートはUVシートでも良い。
また樹脂モールド装置は、モールド金型を開閉する型開閉機構(油圧駆動機構、電動モータ、ねじ軸、トグルリンク機構等;図示せず)と、トランスファ成形の場合ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構を備えているものとし、モールド金型の構成を中心に説明する説明するものとする。
【0020】
先ず、トランスファ成形用のモールド金型の構成について説明する。
図1Aにおいて、下型1(第一の金型)について説明する。下型1はワーク載置部1aにワークWを支持する。下型1には、筒状のポット2が複数設けられ、各ポット2内にはそれぞれプランジャ3が昇降可能に設けられている。プランジャ3は、図示しないプランジャホルダに一体に取り付けられ、該プランジャホルダにプランジャ3が個々に立設されている。プランジャホルダ内には等圧機構(コイルばね、油圧機構)は設けられておらず、各プランジャ3は図示しないモータ駆動や油圧駆動により定ストロークで昇降するようになっている。よって、プランジャ3はトランスファ機構によりポット2内に供給されたモールド樹脂Rを送り出すのみであり、等圧機構が設けられていないため後述するように最終的な樹脂圧を印加する機能を有していない。
【0021】
次に上型4(第二の金型)の構成について説明する。上型4のクランプ面には、ポット2から送り出される樹脂路が形成されている。上型4には、ポット2に対向して上型カル5が彫り込まれている。上型カル5には上型ランナゲート6が接続して彫り込まれている。また、上型ランナゲート6に接続して上型キャビティ凹部7が彫り込まれている。上型キャビティ凹部7はワーク載置部1aに対向して所望の大きさで設けられている。ワークW及びモールド樹脂Rは下型1と上型4でクランプされ、樹脂モールドされる。
【0022】
上型4の樹脂路を含むクランプ面には、リリースフィルム8が吸着保持される。リリースフィルム8は、厚さ50μm程度で耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。なお、フィラー径の大きなモールド樹脂を用いる場合には、リリースフィルム8を省略することも可能である。
【0023】
図1Bに示すように、上型キャビティ凹部7は矩形状をしている。
図1Aに示すように、キャビティ凹部7内のゲート接続位置を除く外周縁部及びキャビティ凹部7の外周縁部の3つのコーナー部に連なるエアベント溝9のうち少なくともいずれか一つにコイルばね10(弾性部材)により付勢された調圧プランジャ11(調圧部材)が設けられている。調圧プランジャ11及びコイルばね10は、金型に設けられた有底穴内(コイルばね10の一方端が段差等により止まっていれば貫通孔であってもよい)にコイルばね10が押し縮められた状態で嵌め込まれており、調圧プランジャ11は、コイルばね10によって上型クランプ面側に突出する向きに付勢されている。また、調圧プランジャ11はランナゲートに近い位置と遠い位置で圧力を変える事ができる。一例を挙げると上型ランナゲート6に近い位置の調圧プランジャ11の圧力を強くし、遠い位置の調圧プランジャ11の圧力を弱くすることでエアを効率よく排出する機能がある。また、調圧プランジャ11に流入するタイミングごとに樹脂粘度が違う場合があり、調圧プランジャ11は上型ランナゲート6に近い位置と遠い位置で圧力を変える効果がある。
【0024】
図1Aは、上型キャビティ凹部7の外周縁部、例えばコーナー部に連なるエアベント溝9にコイルばね10(弾性部材)により付勢された調圧プランジャ11(調圧部材)を設けた実施形態を示す。エアベント溝9は上型キャビティ凹部7にモールド樹脂を充填する際にエアを金型外へ逃がすための通路であるが、流動性の高い(粘度の低い)モールド樹脂Rの場合エアベント溝9へオーバーフローする。よって、エアベント溝9に溢れたモールド樹脂Rを調圧プランジャ11で押圧して成形圧を加えることもできる。
【0025】
また、
図1Bは、上型4のゲート接続位置以外の上型キャビティ凹部7内の外周縁部に設けられる製品エリア外(半導体チップT搭載エリア外)に、コイルばね10(弾性部材)により付勢された調圧プランジャ11(調圧部材)が設けられた実施形態を示す。なお、本図コーナー部の1ヶ所には上型ランナゲート6が実際は必要だが、調圧プランジャ11を描くため、上型ランナゲート6を省略した模式図とした。また、上型ランナゲート6を4辺のうちのどれか1つの辺に設ければ、全てのコーナー部に調圧プランジャ11を設けることもできる。
図1Bに最外周に配置された半導体チップTとこれを縦横に囲む切断線L1、L2を示す。この切断線L1、L2の外側のエリアに調圧プランジャ11が配置されている。尚、調圧プランジャ11の形態は、平面視で円形状、四角形状、三角形状、L字形状のいずれでもよい。
【0026】
また、
図1Aに示すように、上型4のポット2に対向する上型カル5の位置にコイルばね10により付勢された調圧プランジャ11が更に設けられていてもよい。
プランジャ3には等圧機構がなくプランジャホルダにプランジャ3が単に立設されている。この場合は、複数のポット2に投入される樹脂量にばらつきがあった場合でも上型キャビティに充填されたモールド樹脂Rの樹脂圧のばらつきを上型カル5側の調圧プランジャ11で吸収して保圧することができる。
【0027】
上記モールド金型を用いれば、上型ランナゲート6を通じて上型キャビティ凹部7内に圧送りされたモールド樹脂Rを上型キャビティ凹部7内のゲート接続位置を除く外周縁部のコーナー部及び上型キャビティ凹部7の外周縁部のコーナー部に連なるエアベント溝9のうち少なくともいずれかに設けられた調圧プランジャ11により押圧されるため、溶融樹脂を押し込むプランジャ3に等圧機構(スプリングフロート若しくは油圧均等圧機構)は不要になり、プランジャ3の摺動抵抗が変動しても調圧プランジャ11を付勢するコイルばね10により樹脂圧のばらつきを吸収して加熱硬化させるので、安定化した成形圧を印加することができる。本実施例においては上型カル5側のパーティング面にリリースフィルム9を張設しているため、上型カル5側のパーティング面に調圧プランジャ11を設けてもモールド樹脂がプランジャ外周に入り込むことがないため、摺動抵抗が変動することも無く、作動不良となることも無い。
また、調圧プランジャ11に押圧される成形エリアは製品外エリア若しくはこれに連なるエアベント溝9であるため、成形品質に影響を及ぼすことはない。本実施例は複数のポット2及びプランジャ3を設けた場合を例示したが、単数でも良い。また、片面パッケージPを実施例にしたが、両面パッケージPにも適用可能である。
【0028】
次に、圧縮成型用のモールド金型について
図2を参照して説明する。本実施例は、上型キャビティタイプのモールド金型を示す。
図2Aにおいて、下型12(第一の金型)はワークWを支持する。ワークWは下型クランプ面に載置されていても吸着保持されていてもいずれでもよい。ワークW上には図示しないモールド樹脂が供給される。
【0029】
上型13(第二の金型)は、上型キャビティ凹部7の底部を形成する上型キャビティ駒14とその周囲を囲んで配置されたキャビティ側部を形成する上型可動クランパ15を備えている。上型可動クランパ15は図示しない上型ベースにコイルばねを介して吊り下げ支持されている。上型可動クランパ15のクランプ面には、上型キャビティ凹部7に接続するエアベント溝9が彫り込まれている。上型キャビティ凹部7を含む上型クランプ面にはリリースフィルム8が吸着保持されている。
【0030】
上記キャビティ駒14の製品エリア外である外周縁部及び上型可動クランパ15のクランプ面に形成されたキャビティコーナー部の上型キャビティ凹部7に連なるエアベント溝9のうち少なくともいずれかにコイルばね10(弾性部材)により付勢された調圧プランジャ11(調圧部材)が設けられている。
図2Aのキャビティ駒14には1つの調圧プランジャ11しか記載されていないが、他方を記載省略した図である。同様に右側に記載された上型可動クランパ15に調圧プランジャ11が記載されているが、左側の上型可動クランパ15にも同様に調圧プランジャ11の記載を省略した図である。
図2Bにおいて、調圧プランジャ11は、上型キャビティ駒14の製品エリア外である外周縁部(コーナー部4か所)及び/又は上型キャビティ凹部7に連続するエアベント溝9(4か所)に設けられているのが好ましい。
図2Bでは、調圧プランジャ11は外周縁部又はエアベント溝9に4か所に設けられているがこれに限定されるものではなく、4か所より増減してもよい。
【0031】
これにより、ワークW上にモールド樹脂が供給された下型12と上型13とを型閉じすると、ワークWが上型13と下型12にクランプされて上型キャビティ凹部7内で半導体チップが溶融したモールド樹脂Rに覆われて圧縮される際に、調圧部材11を付勢するコイルばね10の撓みにより樹脂圧のばらつきを吸収して成形圧を加えることができる。よって、モールド樹脂の未充填や内部ボイドの発生を抑えて成形品質を向上させることができる。
【0032】
次に、圧縮成型用のモールド金型の他例について
図3を参照して説明する。本実施例は下型キャビティタイプのモールド金型を示す。
図3Aにおいて、上型16(第一の金型)はワークWを吸着支持する。尚、ワークWはチャック爪等により上型クランプ面に保持されていてもよい。
【0033】
下型17(第二の金型)は、下型キャビティ凹部18の底部を形成する下型キャビティ駒19とその周囲を囲んで配置されたキャビティ側部を形成する下型可動クランパ20を備えている。下型可動クランパ20は図示しない下型ベースにコイルばねを介してフローティング支持されている。下型キャビティ凹部18を含む下型クランプ面にはリリースフィルム8が吸着保持されている。
【0034】
上記下型キャビティ駒19の製品エリア外である外周縁部及び下型可動クランパ20のクランプ面に形成され下型キャビティ凹部18のコーナー部に連なるエアベント溝9のうち少なくともいずれかに一つ以上又はすべてにコイルばね10(弾性部材)により付勢された調圧プランジャ11(調圧部材)が設けられている。
図3Bにおいて、調圧プランジャ11は、下型キャビティ駒19の製品エリア外である外周縁部(コーナー部4か所)及び/又は下型キャビティ凹部18に連続するエアベント溝9(4か所)に設けられているのが好ましい。
図3Bでは、調圧プランジャ11は外周縁部又はエアベント溝9に4か所に設けられているがこれに限定されるものではなく、コーナー以外の場所を含めて4か所より増減してもよい。
【0035】
これにより、下型キャビティ凹部18内にモールド樹脂が供給された下型17とワークWを保持した上型16とを型閉じすると、ワークWが上型16と下型17にクランプされて下型キャビティ凹部18内で溶融したモールド樹脂Rに半導体チップTが浸漬されて圧縮成形される際に調圧部材11を付勢するコイルばね10の撓みにより樹脂圧のばらつきを吸収して成形圧を加えることができる。よって、モールド樹脂の未充填や内部ボイドの発生を抑えて成形品質を向上させることができる。またさらに樹脂量を多く下型キャビティ凹部18に供給されたときには余剰樹脂を調圧プランジャ11に入れて樹脂圧及び樹脂厚を調整する機能としても有効である。本実施例は下型キャビティ圧縮成形用のモールド金型について説明したが、上型キャビティ圧縮成形用のモールド金型についても同様に適用できる。
【0036】
次に、圧縮成形用のモールド金型の他例について
図4乃至
図6を参照して説明する。尚、
図3と同一部材には同一番号付して説明を援用するものとする。
図4Aにおいて、上型16(第一の金型)はワークWを吸着支持する。尚、ワークWはチャック爪等により上型クランプ面に保持されていてもよい。
【0037】
図4A,Bにおいて、下型17(第二の金型)は、下型キャビティ凹部18の底部を形成する下型キャビティ駒19とその周囲を囲んで配置されたキャビティ側部を形成する下型可動クランパ20を備えている。下型可動クランパ20は下型ベース部21にコイルばね20a(第一弾性部材)を介してフローティング支持されている。また、下型キャビティ駒19は、下型ベース部21に立設された複数のサポートピラー22(支持部材)によって支持固定されている。
図4Bに示すように、下型キャビティ駒19のキャビティ底面側には、製品エリアM(最終パッケージP外形ライン)となるキャビティ駒凹部19bが彫り込まれており、該キャビティ駒凹部19bを囲むように所定幅のキャビティ駒上面19c(キャビティ底面)が形成されている。
【0038】
また、
図4Aに示すように、下型キャビティ駒19のキャビティ底面側とは反対側である背面側には押圧プレート23が重ねて設けられている。押圧プレート23には押圧プランジャ23a(調圧部材)が下型キャビティ駒19の製品エリアM外であって、当該下型キャビティ駒19の外周側に設けられた貫通孔19aに挿入されている(
図4B参照)。押圧プレート23は、下型ベース部21に設けられたプレート21aとの間に設けられたコイルばね24(第二弾性部材)によって常時下型キャビティ駒19に向かって押し当てられた状態にある。この結果、押圧プランジャ23aの先端側は、常時下型キャビティ凹部18内へ突き出る向きに付勢されている。また、下型キャビティ凹部18を含む下型クランプ面にはリリースフィルム8(図示せず)が吸着保持されている。
【0039】
このように下型キャビティ駒19は下型ベース部21に対してサポートピラー22により支持固定されている。また、下型キャビティ駒19を囲む下型可動クランパ20は下型ベース部21に対してコイルばね20aを介して相対移動可能に支持されており、下型ベース部21に押圧プランジャ23aがコイルばね24を介して下型キャビティ駒19に対して相対移動可能に設けられている。
図4Bに示すように、押圧プランジャ23aは、下型キャビティ駒19の製品エリアM外である外周縁部に沿って製品エリアMを囲むように複数設けられている。
図4Aに示すように、押圧プレート23はコイルばね24によって付勢されて押圧プランジャ23aの先端面がキャビティ駒上面19cより退避可能に支持されている。
【0040】
図6Bに示すように最終パッケージPの樹脂厚tは、下型可動クランパ20の上面(ワーク下面)とキャビティ駒凹部19bの底面との高さ位置の差となる。
図4Aのモールド金型が型開き状態の下型キャビティ凹部18内にモールド樹脂Rを投入し、型締めを行うと、パッケージP(
図4B;製品エリアM)より外周側に存在する樹脂をワークWとキャビティ駒上面19cの空間から除去しなければならず、仮に下型キャビティ駒19をワークWに強く押圧したとしても、モールド樹脂Rにはシリカ等の充填剤が混入している為、モールド樹脂RをワークW上からは完全に除去することができない。そのため、
図5に示すようにモールド金型が型閉じ状態では、パッケージP(製品エリアM)より外周部分に入ったキャビティ駒上面19cのモールド樹脂R(薄肉部R2;
図6A,B参照)を少し残すように、実際にはワークWとの間に予めわずかな隙間を形成する位置まで下型キャビティ駒19を加圧する寸法狙いとしている。同様に押圧プランジャ23aの上端面はワークWと隙間を形成してモールド樹脂R(厚肉部R1;
図6A,B参照)を少し残すように、実際にはワークWとの間に予めわずかな隙間を形成する位置まで加圧する寸法狙いとしている。尚、押圧プランジャ23aの場合、
図5に示すように型閉じした際にワークWとの隙間に加えてキャビティ駒上面19cより下型キャビティ駒19内に退避してワークWとの隙間が広がるため厚肉部R1が形成される。
これにより、押圧プランジャ23aに囲まれた製品エリアM内の樹脂充填性を向上させて成形品質を向上させることができる。また、下型キャビティ凹部18に樹脂量を多く供給させたときの余剰樹脂を押圧プランジャ23aの退避空間に収容して樹脂圧及び樹脂厚を調整することができる。尚、押圧プランジャ23aは押圧プレート23に起立して一体に支持されているが、コイルばね24及び押圧プレート23により個別に支持されていてもよい。
【0041】
以上より、
図5に示すように、ワークWが上型16と下型17にクランプされて下型キャビティ凹部18内で溶融したモールド樹脂Rに半導体チップTが浸漬されて圧縮される際にコイルばね20aが撓むことにより、下型可動クランパ20が下型キャビティ駒19に対して相対的に移動(下動)してキャビティ容積が縮小すると共に、樹脂圧により押圧プランジャ23aがリリースフィルム8を介してキャビティ駒上面19cより相対的に引っ込む(退避する)方向に移動してコイルばね24のたわみにより吸収して所定の成形圧を加えることができる。また、圧縮成形において下型キャビティ凹部18内のモールド樹脂Rに成形圧が加わらないことに起因する未充填や内部ボイドの発生を抑えることができる。
【0042】
また、
図4A,
図5においてコイルばね24を支持するプレート21aと下型ベース部21との間にはコイルばね24のばね出力を検出するロードセル25(荷重検出部)が設けられていてもよい。
これにより、押圧プランジャ23aが下型キャビティ凹部18内のモールド樹脂Rに作用する成形圧をロードセル25で検出することにより、精度良く樹脂圧を計測することができるため、型締め力を精度良くコントロールすることができる。
本実施例は下型キャビティ圧縮成形用のモールド金型を例示したが、上型キャビティ圧縮成形用のモールド金型にも適用できる。また、圧縮成形用のモールド金型は本実施例では1つの金型構造について説明したが、1つのプレス装置に複数の圧縮成形用のモールド金型を搭載する場合であっても複数金型間の投入樹脂量の相違による成形品の厚さのばらつき無くして成形品を一定の厚さで成形することができる。
【0043】
樹脂モールド装置においては、上述したいずれかのモールド金型を開閉可能に設けたことにより、成形圧が安定し成形品質を向上させることができる。
【0044】
上記モールド金型においては、上型が固定型、下型が可動型であってもよいし、上型が可動型、下型が固定型であってもよいし、双方を可動型としてもよい。
また、ワークWはLED用樹脂を用いた基板に限らず、半導体チップTが基板上にフリップチップ接続、ワイヤボンディング接続されたものなど他の成形品に対しても用いることができる。