【解決手段】インバータから供給される三相の各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwをサンプリングして得られる各相電圧データDvu,Dvv,Dvwおよび各相電流データDiu,Div,Diwを各相毎に乗算して各相についての個別瞬時電力データDwu,Dwv,Dwwを出力する乗算部17,18,19と、個別瞬時電力データDwu,Dwv,Dwwを加算して全体瞬時電力データDwを出力する加算部20とを備え、インバータでのスイッチング周期のn倍(nは1以上の整数)の時間間隔で全体瞬時電力データDwを平均化して三相の有効電力Wを出力する平均部22とを備えている。
インバータから供給される三相の各相電圧および各相電流をそれぞれサンプリングして得られる当該各相電圧についての各相電圧データおよび当該各相電流についての各相電流データを各相毎に乗算して各相についての個別瞬時電力データを出力する複数の乗算部と、
前記各相についての前記個別瞬時電力データを加算して前記三相についての全体瞬時電力データを出力する加算部と、
前記インバータでのスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期のn倍(nは1以上の整数)の時間間隔であって、前記相電圧および前記相電流の1/2周期未満の時間間隔で前記全体瞬時電力データを平均化して前記三相についての有効電力を出力する平均部とを備えている三相電力測定装置。
前記インバータから供給される三相の各線間電圧をそれぞれサンプリングして得られる当該各線間電圧についての各線間電圧データを入力すると共に前記各相電圧データに変換して前記複数の乗算部に出力するΔ−Y変換部を備えている請求項1から3のいずれかに記載の三相電力測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した特許文献1に開示の三相電力測定装置には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この三相電力測定装置では、上記したように、加算部から出力される瞬時有効電力をローパスフィルタで平滑して三相の有効電力を出力する構成を採用することで、測定対象である三相の各相電圧および各相電流がインバータによって生成されるものであっても、三相の有効電力に含まれるキャリア周波数成分を容易に除去(許容範囲内に低減)することが可能であり、これにより、キャリア周波数成分の十分に少ない状態で三相電力を正確に測定することが可能となっている。しかしながら、この三相電力測定装置には、信号遅延を伴うローパスフィルタを使用する構成に起因して、上記のキャリア周波数(スイッチング周波数)成分の除去(低減)の程度をより高めようとしたときに(つまり、より正確に三相電力を測定しようとしたときに)、三相の有効電力を出力するまでの遅延時間が大きくなるという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、インバータから負荷に対して供給される各相電圧および各相電流についての有効電力を遅延時間の極めて少ない状態で正確に測定し得る三相電力測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の三相電力測定装置は、インバータから供給される三相の各相電圧および各相電流をそれぞれサンプリングして得られる当該各相電圧についての各相電圧データおよび当該各相電流についての各相電流データを各相毎に乗算して各相についての個別瞬時電力データを出力する複数の乗算部と、前記各相についての前記個別瞬時電力データを加算して前記三相についての全体瞬時電力データを出力する加算部と、前記インバータでのスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期のn倍(nは1以上の整数)の時間間隔であって、前記相電圧および前記相電流の1/2周期未満の時間間隔で前記全体瞬時電力データを平均化して前記三相についての有効電力を出力する平均部とを備えている。
【0008】
請求項2記載の三相電力測定装置は、請求項1記載の三相電力測定装置において、前記時間間隔は、前記スイッチング周期の1倍である。
【0009】
請求項3記載の三相電力測定装置は、請求項1または2記載の三相電力測定装置において、前記各相電圧および前記各相電流のいずれかに基づいて前記スイッチング周波数を検出する周波数検出部を備え、前記平均部は、前記周波数検出部で検出された前記スイッチング周波数に基づく前記時間間隔で前記全体瞬時電力データを平均化する。
【0010】
請求項4記載の三相電力測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の三相電力測定装置において、前記インバータから供給される三相の各線間電圧をそれぞれサンプリングして得られる当該各線間電圧についての各線間電圧データを入力すると共に前記各相電圧データに変換して前記複数の乗算部に出力するΔ−Y変換部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の三相電力測定装置では、平均部が、インバータのスイッチング周期のn倍の時間間隔内において、加算部からA/D変換部でのサンプリング周期で出力される複数個の全体瞬時電力データを平均化して、三相についての有効電力として出力する。したがって、この三相電力測定装置によれば、加算部からサンプリング周期で出力される全体瞬時電力データをローパスフィルタで平均化する(インバータのスイッチング動作に起因して発生するスイッチング周期と同じ周期のリップルをローパスフィルタで低減する)という従来の三相電力測定装置とは異なり、ローパスフィルタでの遅延時間の発生を回避しつつ、つまり遅延時間を極めて少ない状態としつつ、スイッチング周期と同じ周期のリップルを十分に低減して、有効電力を正確に測定することができる。
【0012】
請求項2記載の三相電力測定装置によれば、加算部からサンプリング周期で出力される複数個の全体瞬時電力データを平均化する時間間隔をスイッチング周期の1倍とすることにより、サンプリング周期と同一の時間間隔(最短の時間間隔)で有効電力を測定することができる。
【0013】
請求項3記載の三相電力測定装置によれば、インバータでのスイッチング周波数を検出する周波数検出部を備えたことにより、三相電力測定装置の使用者によるこのスイッチング周波数の設定作業の手間を省くことができると共に、インバータでのスイッチング周波数が時間と共に変化する場合においても、自動追従して有効電力を正確に測定することができる。
【0014】
請求項4記載の三相電力測定装置によれば、線間電圧データが入力される場合においても、この線間電圧データを相電圧データに変換することができるため、相電流データと共に相電圧データを入力する上記の構成と同様にして、ローパスフィルタでの遅延時間の発生を回避しつつ、つまり遅延時間を極めて少ない状態としつつ、スイッチング周期と同じ周期のリップルを十分に低減して、有効電力を正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、三相電力測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、三相電力測定装置としての三相電力測定装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0018】
三相電力測定装置1は、一例として、
図2に示すようにY結線された三相電源2からY結線された三相負荷3に供給される三相の有効電力Wを測定するものであって、
図1に示すように、複数(本例では6個)のA/D変換部11,12,13,14,15,16、複数(本例では3個)の乗算部17,18,19、加算部20、周波数検出部21、平均部22および出力部23を備えて構成されている。
【0019】
図2に示すように、三相電源2は、三相インバータ(中性点Nの電位が規定されて、Y結線に基づく相電圧の測定が可能なインバータ)で構成されて、U相についての相電圧(U相電圧)Vu、V相についての相電圧(V相電圧)VvおよびW相についての相電圧(W相電圧)Vwをスイッチング動作(例えば、PWM制御に基づくスイッチング動作)によって生成して、三相負荷3に供給する。また、この構成により、三相電源2から三相負荷3に、U相についての相電流(U相電流)Iu、V相についての相電流(V相電流)IvおよびW相についての相電流(W相電流)Iwが供給される。
【0020】
したがって、各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwのいずれにも、三相電源2のスイッチング周波数と同じ周波数のリップル(各相電圧Vu,Vv,Vwでは電圧リップル、各相電流Iu,Iv,Iwでは電流リップル)が含まれている。三相電源2が例えば三相交流モータを三相負荷3として駆動する三相インバータで構成されるときには、相電圧Vu,Vv,Vwは、多くの場合、その周波数は1kHz以下である。
【0021】
また、各相電圧Vu,Vv,Vwは不図示の複数(3個)の電圧センサによって検出されて、各相電圧Vu,Vv,Vwの電圧値に応じて電圧値が変化する電圧信号として三相電力測定装置1に出力される。同様にして、各相電流Iu,Iv,Iwは不図示の複数(3個)の電流センサによって検出されて、各相電流Iu,Iv,Iwの電流値に応じて電圧値が変化する電圧信号として三相電力測定装置1に出力される。以下では、理解の容易のため、相電圧Vuに対応する上記の電圧信号を「相電圧Vu」、相電圧Vvに対応する上記の電圧信号を「相電圧Vv」、および相電圧Vwに対応する上記の電圧信号を「相電圧Vw」と表記し、また、相電流Iuに対応する上記の電圧信号を「相電流Iu」、相電流Ivに対応する上記の電圧信号を「相電流Iv」、および相電流Iwに対応する上記の電圧信号を「相電流Iw」と表記するものとする。
【0022】
この三相電力測定装置1では、
図1に示すように、A/D変換部11は、相電圧Vuを予め規定された周期(サンプリング周期)でサンプリングすることにより、相電圧Vuの瞬時値を示す相電圧データDvuを出力する。A/D変換部12は、相電流Iuを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、相電流Iuの瞬時値を示す相電流データDiuを出力する。また、A/D変換部13は、相電圧Vvを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、相電圧Vvの瞬時値を示す相電圧データDvvを出力する。A/D変換部14は、相電流Ivを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、相電流Ivの瞬時値を示す相電流データDivを出力する。また、A/D変換部15は、相電圧Vwを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、相電圧Vwの瞬時値を示す相電圧データDvwを出力する。A/D変換部16は、相電流Iwを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、相電流Iwの瞬時値を示す相電流データDiwを出力する。
【0023】
なお、このサンプリング周期は、三相電源2のスイッチング周波数(一般的には、2kHz〜20kHz)の逆数(スイッチング周期:500μs〜50μs)に対して十分に短い時間(例えば、1/10以下の時間(5μs以下))に規定されているものとする。
【0024】
乗算部17は、U相についての相電圧データDvuおよび相電流データDiuを入力して互いに乗算することにより、U相についての個別瞬時電力データDwuを出力する。また、乗算部18は、V相についての相電圧データDvvおよび相電流データDivを入力して互いに乗算することにより、V相についての個別瞬時電力データDwvを出力する。また、乗算部19は、W相についての相電圧データDvwおよび相電流データDiwを入力して互いに乗算することにより、W相についての個別瞬時電力データDwwを出力する。加算部20は、各相についての個別瞬時電力データDwu,Dwv,Dwwを入力して加算することにより、三相についての全体瞬時電力データDwを出力する。
【0025】
周波数検出部21は、三相電源2のスイッチング周波数を検出すると共に、このスイッチング周波数を示す周波数データDfを出力する。上記したように、
図2に示す各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwのいずれにも、三相電源2のスイッチング周波数と同じ周波数のリップル(各相電圧Vu,Vv,Vwでは電圧リップル、各相電流Iu,Iv,Iwでは電流リップル)が含まれているため、各A/D変換部11,12,13,14,15,16に入力される相電圧Vu、相電流Iu、相電圧Vv、相電流Iv、相電圧Vwおよび相電流Iwにも、このスイッチング周波数と同じ周波数のリップルが含まれている。
【0026】
したがって、本例の周波数検出部21は、各A/D変換部11,12,13,14,15,16に入力される相電圧Vu、相電流Iu、相電圧Vv、相電流Iv、相電圧Vwおよび相電流Iwのうちのいずれか1つの電圧信号(本例では一例として、相電圧Vu)を入力すると共に、この入力した電圧信号に含まれるリップルの周波数を検出することにより、上記の周波数データDfを出力する。また、周波数検出部21は、A/D変換部11〜16に入力される相電圧Vuなどのアナログ信号としての電圧信号からリップルの周波数を検出する上記の構成に代えて、A/D変換部11〜16から出力される相電圧データDvuなどのデジタル信号から上記のリップルの周波数を検出する構成を採用することもできる。
【0027】
なお、三相電源2のスイッチング周波数が既知であるときには、周波数検出部21に代えて操作部(図示せず)を三相電力測定装置1に設けて、三相電力測定装置1の使用者が操作部に対する操作を実行して、この既知のスイッチング周波数を示す周波数データDfを操作部から出力する構成(使用者がスイッチング周波数を設定する構成)を採用することもできる。また、三相電源2がこのスイッチング周波数を示す周波数データDfを出力し得る構成のときには、周波数検出部21および操作部のいずれについても設けずに、三相電力測定装置1が三相電源2から出力されるこの周波数データDfを直接入力する構成を採用することもできる。
【0028】
平均部22は、全体瞬時電力データDwおよび周波数データDfを入力すると共に、この周波数データDfで示される三相電源2のスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期のn倍(nは1以上の整数)の時間間隔であって、各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwの1/2周期未満の時間間隔で全体瞬時電力データDwを平均化することにより、三相についての有効電力Wを算出して出力する。本例では、平均部22では、有効電力Wの算出までの遅延時間が最も少くなるn=1の時間間隔で、全体瞬時電力データDwを平均化して有効電力Wを算出する構成を採用している。
【0029】
この構成においても、上記のサンプリング周期が上記のスイッチング周期に対して十分に短い時間(1/10以下の時間など)に規定されているときには、平均部22は、少なくとも10個の全体瞬時電力データDwを平均化することで、正確な有効電力Wを算出することが可能となっている。また、全体瞬時電力データDwを平均化する上記の時間間隔については、背景技術で説明したローパスフィルタを使用する構成での遅延時間よりも短くなる限りにおいて、nを、2,3,4・・・など、1を超える任意の数に規定することが可能であるが、遅延時間を少なくすることを考慮すると、一般的には10未満の数に規定するのが好ましい。
【0030】
なお、上記した乗算部17〜19、加算部20および平均部22については、これら全体をDSPやCPUなどのマイクロプロセッサで構成することができる。
【0031】
出力部23は、一例として、表示装置で構成されて、平均部22から出力される有効電力Wを画面上に表示する(出力する)。なお、出力部23は、表示装置に代えて種々のインターフェース回路で構成することもでき、外部インターフェース回路で構成されたときには、外部インターフェース回路を介して伝送路で接続された外部装置にこの有効電力Wを出力し、また媒体用インターフェース回路で構成されたときには、この媒体用インターフェース回路に接続された記憶媒体にこの有効電力Wを記憶する。
【0032】
次に、三相電力測定装置1の動作について説明する。
【0033】
不図示の複数の電圧センサおよび複数の電流センサから電圧信号としての各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwが入力されている状態において、三相電力測定装置1では、各A/D変換部11〜16が、相電圧Vu、相電流Iu、相電圧Vv、相電流Iv、相電圧Vwおよび相電流Iwを入力すると共に、相電圧データDvu、相電流データDiu、相電圧データDvv、相電流データDiv、相電圧データDvwおよび相電流データDiwにA/D変換して出力する。また、各乗算部17,18,19が、それぞれに対応する相電圧データおよび相電流データを入力して乗算することにより、各相についての個別瞬時電力データDwu,Dwv,Dwwを出力する。
【0034】
また、加算部20は、各個別瞬時電力データDwu,Dwv,Dwwを入力すると共に加算して、三相についての全体瞬時電力データDwを出力する。また、周波数検出部21は、一例として相電圧Vuを入力すると共に、この相電圧Vuに含まれているリップルの周波数を検出することにより、三相電源2のスイッチング周波数を示す周波数データDfを出力する。
【0035】
また、平均部22は、全体瞬時電力データDwおよび周波数データDfを入力すると共に、この周波数データDfで示される三相電源2のスイッチング周波数の逆数であるスイッチング周期のn倍(本例では1倍)の時間間隔で全体瞬時電力データDwを平均化することにより、三相についての有効電力Wを算出して出力部23に出力する。つまり、平均部22は、スイッチング周期のn倍(本例ではスイッチング周期)の時間間隔で1つの全体瞬時電力データDwを出力する。また、出力部23は、このようにして時間間隔(本例では、スイッチング周期)で平均部22から出力される有効電力Wを画面上に表示する。
【0036】
このように、この三相電力測定装置1では、平均部22が、三相インバータで構成された三相電源2のスイッチング周期のn倍(本例では1倍)の時間間隔内において、加算部20からサンプリング周期で出力される複数個の全体瞬時電力データDwを平均化して、三相についての有効電力Wとして出力する。したがって、この三相電力測定装置1によれば、加算部20からサンプリング周期で出力される全体瞬時電力データDwをローパスフィルタで平均化する(このサンプリング周期と同じ周期のリップルを低減する)という従来の三相電力測定装置とは異なり、ローパスフィルタでの遅延時間の発生を回避しつつ、つまり遅延時間を極めて少ない状態としつつ、サンプリング周期と同じ周期のリップルを十分に低減して、有効電力Wを正確に測定することができる。
【0037】
また、この三相電力測定装置1によれば、加算部20からサンプリング周期で出力される複数個の全体瞬時電力データDwを平均化する時間間隔をスイッチング周期の1倍とすることにより、サンプリング周期と同一の時間間隔(最短の時間間隔)で有効電力Wを測定することができる。
【0038】
また、この三相電力測定装置1によれば、三相電源2でのスイッチング周波数を検出する周波数検出部21を備えたことにより、三相電力測定装置1の使用者によるこのスイッチング周波数の設定作業の手間を省くことができると共に、三相電源2でのスイッチング周波数が時間と共に変化する場合においても、自動追従して有効電力Wを正確に測定することができる。
【0039】
また、この三相電力測定装置1によれば、各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwをそれぞれ入力して同じ周期でサンプリングすることにより、各相電圧データDvu,Dvv,Dvwおよび各相電流データDiu,Div,Diwを出力するA/D変換部11〜16を備えたことにより、A/D変換装置を別途用意することなく、各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwをそれぞれそのまま入力して、三相についての有効電力Wを測定することができる。
【0040】
なお、中性点Nの電位が規定されてY結線に基づく相電圧Vu,Vv,Vwの測定が可能な三相インバータで三相電源2が構成され、このY結線された三相電源2にY結線された三相負荷3がY−Y結線によって接続されているとき(
図2に示す構成のとき)の有効電力Wを測定する三相電力測定装置1について上記したが、図示はしないが、三相電源2には、中性点Nの電位が規定できないためにΔ結線に基づく線間電圧Vuv,Vvw,Vwuの測定は可能であるが、相電圧Vu,Vv,Vwの測定ができないものも存在する。このようなΔ結線された三相電源2にY結線された三相負荷3がΔ−Y結線で接続されているときの有効電力Wを測定する三相電力測定装置1aについて
図3を参照して説明する。なお、上記した三相電力測定装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、上記した三相電力測定装置1における動作と同じ動作についても、重複する説明を省略する。
【0041】
この三相電力測定装置1aに対しては、各線間電圧Vuv,Vvw,Vwuは不図示の複数(3個)の電圧センサによって検出されて、各線間電圧Vuv,Vvw,Vwuの電圧値に応じて電圧値が変化する電圧信号として三相電力測定装置1に出力される。以下では、理解の容易のため、線間電圧Vuvに対応する上記の電圧信号を「線間電圧Vuv」、線間電圧Vvwに対応する上記の電圧信号を「線間電圧Vvw」、および線間電圧Vwuに対応する上記の電圧信号を「線間電圧Vwu」と表記するものとする。
【0042】
この三相電力測定装置1aは、
図3に示すように、上記した三相電力測定装置1の構成に加えて、Δ−Y変換部25を備えている。また、三相電力測定装置1aでは、A/D変換部11は、線間電圧Vuvを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、線間電圧Vuvの瞬時値を示す線間電圧データDvuvを出力し、A/D変換部13は、線間電圧Vvwを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、線間電圧Vvwの瞬時値を示す線間電圧データDvvwを出力し、A/D変換部15は、線間電圧Vwuを上記のサンプリング周期でサンプリングすることにより、線間電圧Vwuの瞬時値を示す線間電圧データDvuwを出力する。
【0043】
Δ−Y変換部25は、例えば、乗算部17〜19、加算部20および平均部22などと共に、DSPやCPUなどのマイクロプロセッサで構成されて、公知のΔ−Y変換式に基づいて、各線間電圧データDvuv,Dvvw,Dvwuから各相電圧データDvu,Dvv,Dvwを算出する(線間電圧データDvuv,Dvvw,Dvwuを相電圧データDvu,Dvv,Dvwに変換する)。また、Δ−Y変換部25は、算出した相電圧データDvu,Dvv,Dvwを、各乗算部17,18,19に出力する。
【0044】
したがって、このように相電圧Vu,Vv,Vwに代えて線間電圧Vuv,Vvw,Vwuを入力する構成の三相電力測定装置1aにおいても、加算部20からサンプリング周期で出力される全体瞬時電力データDwをローパスフィルタで平均化する(インバータのスイッチング動作に起因して発生するスイッチング周期と同じ周期のリップルをローパスフィルタで低減する)という従来の三相電力測定装置とは異なり、ローパスフィルタでの遅延時間の発生を回避しつつ、つまり遅延時間を極めて少ない状態としつつ、スイッチング周期と同じ周期のリップルを十分に低減して、有効電力Wを正確に測定することができる。
【0045】
なお、上記の三相電力測定装置1,1aでは、各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各線間電圧Vuv,Vvw,Vwuのいずれか一方の組、並びに各相電流Iu,Iv,Iwをそのまま入力して有効電力Wを測定し得るように、A/D変換部11〜16を有する構成を採用しているが、外部のA/D変換装置から出力される各相電圧データDvu,Dvv,Dvwおよび各相電流データDiu,Div,Diwを入力して有効電力Wを測定する構成を採用することもできる。この構成を採用した場合には、三相電力測定装置1では、各A/D変換部11〜16を省くことができ、また三相電力測定装置1aでは、各A/D変換部11〜16およびΔ−Y変換部25を省くことができる。