において重み特性Aの振幅の微分値と連続であり、測定干渉信号の零周波数に相当する被測定光ファイバ上の位置において零であり、線形化手段51,52におけるサンプリング周波数の1/2の周波数に相当する被測定光ファイバ上の位置において零である。
前記第1及び第2の重みフィルタは、前記サンプリング周波数の逆数の整数倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の光周波数領域反射測定装置。
前記第1及び第2の重みフィルタは、前記サンプリング周波数の逆数の整数倍+1/2倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の光周波数領域反射測定装置。
【背景技術】
【0002】
<基本構成>
従来から、光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry;OFDR)を用いた光ファイバの歪みや温度の測定が行なわれている。従来の光周波数領域反射測定法の基本構成を
図31(a)に示す。掃引光源1は、時間に対して光周波数が直線的に変化するように波長掃引された光を出力する。測定干渉計4は、入力された光を2つに分岐し、一方の光を測定干渉計4に含まれる被測定光ファイバに入力し、被測定光ファイバからの反射光と他方の光(基準光)とを合波して出力する。
【0003】
例えば、
図31(b)に示すように、入力光は光カプラ41で2つに分岐され、一方の光が光サーキュレータ42の第1端子42aに入力される。光サーキュレータ42の第1端子42aに入力された光は第2端子42bから出力され、被測定光ファイバ43に入力される。被測定光ファイバ43からの反射光は光サーキュレータ42の第2端子42bに入力され、第3端子42cから出力される。光サーキュレータ42の第3端子42cから出力された光と、光カプラ41で分岐した他方の光(基準光)とは光カプラ45で合波されて出力される。
【0004】
測定干渉計4から出力される光は受光器11に入力される。受光器11は、入力された光をその強度に比例した電気信号に変換する。これにより、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光の干渉によるビートが電気信号として出力される。受光器11から出力される電気信号はA/D変換器12によりディジタル信号に変換され、フーリエ変換部60にてフーリエ変換が行なわれる。
【0005】
図32(a)に示すように、被測定光ファイバ43にA点、B点、C点の3つの反射点を想定し、被測定光ファイバ43の近端O点から各点までの距離をそれぞれL
A,L
B,L
Cとする。光カプラ41から出力され被測定光ファイバ43の近端O点で反射して光カプラ45に到達する光の光路長と、光カプラ41から出力され光カプラ45に到達する基準光の光路長とを等しくすると、被測定光ファイバ43のA点で反射した光は基準光に比べてt
A=2nL
A/cだけ時間が遅れて光カプラ45で基準光と合波される。
【0006】
ここで、nは被測定光ファイバ43の屈折率、cは光速である。同様にB点、C点で反射した光はt
B=2nL
B/c,t
C=2nL
C/cだけ時間が遅れる。例えば光カプラ45の入力端子の位置における、基準光の光周波数ν
R、A点からの反射光の光周波数ν
A、B点からの反射光の光周波数ν
B、C点からの反射光の光周波数ν
Cの時間変化はそれぞれ
図32(b)のようになる。掃引光源1の出力光の単位時間当たりの光周波数変化量をSとすると、A点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数f
Aは、下記の式(1)で示される。
【数1】
【0007】
同様に、B点及びC点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数は、下記の式(2)及び式(3)で表される。
【数2】
【数3】
【0008】
よって、A/D変換器12により変換されたディジタル信号をフーリエ変換すると、
図32(c)のように距離L
A,L
B,L
Cに比例した周波数f
A,f
B,f
Cのビート信号が観測される。なお、各点での反射率は十分小さいと仮定し、多重反射は無視している。以上のように、光周波数領域反射測定法によって、被測定光ファイバ43の長手方向の反射光分布を測定することができる。
【0009】
<線形化処理を含む構成>
光周波数領域反射測定法では、時間に対して光周波数が直線的に変化する掃引光源が必要であるが、実際の光源では掃引特性に直線からのずれが存在する。特に機械的に波長を掃引する外部共振器レーザの場合は、完全に直線的に光周波数を変化させることが難しい。
【0010】
掃引光源による波長掃引には、例えば、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引がある。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引を得ることができるが、使用可能な波長範囲が狭くなる問題があった。このため、被測定光ファイバを含む測定干渉計とは別の補助干渉計を用意し、波長掃引の非線形性を補正する手法が従来から提案されている。
【0011】
線形化処理を含む光周波数領域反射測定法の構成を
図33(a)に示す。光分岐部2は、掃引光源1からの光を2つに分岐し、補助干渉計3と測定干渉計4にそれぞれ入力する。
【0012】
補助干渉計3は、入力された光を2つに分岐し、それぞれ異なる遅延時間を与えて合波する。例えば、
図33(b)に示すように、補助干渉計3への入力光は光カプラ31aで2つに分岐され、一方は所定の長さの遅延ファイバ32を経由し、他方は遅延ファイバ無しの光ファイバ33を経由し、それぞれ光カプラ34に入力され合波される。
【0013】
線形化手段5は、補助干渉計3の出力信号を用いて、測定干渉計4の出力信号に対して掃引光源1の波長掃引の非線形性を補正する線形化処理を行なう。例えば、
図33(c)に示すように、補助干渉計3の出力が受光器11aで電気信号に変換されると、掃引光源1の掃引速度に比例した周波数の正弦波のビート信号が得られる。
【0014】
サンプリングタイミング算出手段13は、前記正弦波のビート信号の位相が一定間隔となるタイミングを出力する。例えば、コンパレータで前記正弦波のゼロクロス点を検出すると、コンパレータ出力の立上りは前記正弦波の位相が2πの間隔となる。
【0015】
サンプリング手段15は、サンプリングタイミング算出手段13からのタイミングに遅延付加手段14により所定の遅延時間δtが付加されたタイミングで、受光器11bで電気信号に変換された測定干渉計4の出力をサンプリングし、ディジタル信号に変換する。
【0016】
図33(c)では、サンプリングタイミング算出手段13の出力に応じてサンプリング手段15でA/D変換する構成を示したが、一定のサンプリング周波数で測定干渉計4の出力をA/D変換した後に、ディジタル処理にてサンプリングタイミング算出手段13のタイミングに応じたリサンプリングを行なう構成でも同様の効果が得られる。また、サンプリングタイミング算出手段13についても、補助干渉計3の出力信号をA/D変換した後にディジタル処理にて正弦波の位相が一定間隔となるタイミングを検出するようにしてもよい。なお、ディジタル処理でサンプリングタイミングを算出する場合には、検出する位相間隔を2π以外の任意の値にすることも容易にできる。
【0017】
定性的には、掃引光源1の掃引速度が速い場合には補助干渉計3の出力のビート周波数が高くなるため、線形化手段5は、高頻度で測定干渉計4の出力信号をサンプリングする。一方、掃引光源1の掃引速度が遅い場合には補助干渉計3の出力のビート周波数が低くなるため、線形化手段5は、低頻度で測定干渉計4の出力信号をサンプリングする。これにより、測定干渉計4から掃引速度が一定の場合に相当する測定信号を得ることができる。
【0018】
定量的には、非特許文献1に示されているように、遅延付加手段14による遅延時間をδt=τ/2に設定すると1次の誤差項がキャンセルされ、掃引速度の非線形性による誤差が低減される。ここで、τは補助干渉計3の2つの光路の遅延時間差である。以降、非線形掃引による1次の誤差項のみを取り扱う。線形化手段5により波長掃引の非線形性が補正された測定干渉計4からの測定信号はフーリエ変換部60でフーリエ変換され、光周波数領域反射測定法の測定結果が得られる。
【0019】
<光周波数領域反射測定法の応用>
被測定光ファイバ43においては、レイリー散乱又は被測定光ファイバ43に設けられたファイバブラッグ回折格子(FBG)によって、長手方向で連続的に光が反射する。被測定光ファイバ43の長手方向に歪みが加わると、レイリー散乱又はFBGによる反射光の位相が変化する。このため、光周波数領域反射測定法によって得られた周波数領域のビート信号の位相を観測することにより、被測定光ファイバ43の微小な歪みの長手方向の分布を測定することができる。
【0020】
被測定光ファイバ43の温度が変化すると、被測定光ファイバ43の長手方向に歪みが加わった場合と同様に、レイリー散乱又はFBGによる反射光の位相が変化する。このため、光周波数領域反射測定法によって得られた周波数領域のビート信号の位相を観測することにより、被測定光ファイバ43の歪みの代わりに長手方向の温度分布を測定することもできる。
【0021】
特許文献1には、複数のコアを持ったマルチコアファイバを使用して、光周波数領域反射測定法により被測定光ファイバの位置又は形状を測定する方法が示されている。特許文献1においても、レーザ監視ネットワーク中の干渉計からの信号を用いて質問器ネットワークからの信号に対してレーザの掃引の非線形性を補正するようになっており、微小な歪みを精度良く測定するために波長掃引の非線形補正が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
光周波数の掃引特性が直線でない場合において発生する誤差は、非特許文献1の手法によって補正することができる。しかしながら、非特許文献1の手法によって補正できるのは、設定された特定の遅延時間δtに対応した周波数の測定干渉計からのビート信号に限られる。つまり、所定の長さの被測定光ファイバの歪み分布を測定する場合は、特定の遅延時間δtに対応する被測定光ファイバの特定の位置においてのみ誤差を補正することができ、それ以外の位置では誤差を補正する効果が低くなるという問題があった。特に被測定光ファイバが長い場合、特定の位置から遠く離れた位置では誤差が大きくなるという問題があった。
【0025】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、被測定光ファイバの広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることが可能な光周波数領域反射測定装置及び光周波数領域反射測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、波長掃引された光を出力光として出力する掃引光源と、前記掃引光源からの前記出力光の一部を遅延ファイバに入力し、前記遅延ファイバから出力される光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて補助干渉信号として出力する補助干渉計と、前記掃引光源からの前記出力光の一部を被測定光ファイバに入力し、前記被測定光ファイバで反射された反射光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて測定干渉信号として出力する測定干渉計と、前記補助干渉信号を用いて前記測定干渉信号に対して前記掃引光源の波長掃引の非線形性を補正した信号を出力信号としてそれぞれ出力する第1及び第2の線形化手段であって、前記補助干渉信号と前記測定干渉信号の間に2つの異なる相対時間差を与えるための遅延時間をそれぞれ持つ前記第1及び第2の線形化手段と、前記第1及び第2の線形化手段からの2つの前記出力信号に対してそれぞれ第1及び第2の重み特性を付加する第1及び第2の重みフィルタと、前記第1及び第2の重み特性が付加された2つの前記出力信号を加算しフーリエ変換された周波数領域の信号を出力する加算・フーリエ変換手段と、を備える光周波数領域反射測定装置であって、前記出力信号の零周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
0とし、前記第1及び第2の線形化手段の各前記遅延時間に対応し、前記掃引光源の波長掃引の非線形性による2つの前記出力信号の誤差が極小となる前記被測定光ファイバ上の位置をそれぞれz
1及びz
2とし、前記出力信号のサンプリング周波数の1/2の周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
nとし、前記第1及び第2の重み特性は、前記被測定光ファイバ上の位置zを変数として、z
1≦z≦z
2において定義され、前記zに対して直線的に変化する重み特性Aと、z
0≦z<z
1、及び、z
2<z≦z
nにおいて定義された重み特性Bと、からなり、前記重み特性Bの振幅の前記zに対する微分値は、前記z
1及びz
2において前記重み特性Aの振幅の前記zに対する微分値と連続であり、かつ、前記z
0において零であり、かつ、前記z
nにおいて零である構成である。
【0027】
この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバの広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0028】
また、この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性からの振幅誤差の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。
【0029】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記第1及び第2の重みフィルタは、前記サンプリング周波数の逆数の整数倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタであってもよい。
【0030】
この場合、第1及び第2の線形化手段の出力信号のサンプリング周波数の1/2での周波数特性の折り返し点において、第1及び第2の重みフィルタの周波数特性の位相の連続性が保たれるため、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、所望の重み特性を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0031】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記重み特性Bの振幅は、前記z
nにおいて零であってもよい。
【0032】
この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、第1及び第2の重みフィルタの遅延時間にかかわらず、サンプリング周波数の1/2での周波数特性の折り返し点において、振幅値及び振幅の微分値が連続となるため、所望の重み特性を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0033】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、波長掃引された光を出力光として出力する掃引光源と、前記掃引光源からの前記出力光の一部を遅延ファイバに入力し、前記遅延ファイバから出力される光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて補助干渉信号として出力する補助干渉計と、前記掃引光源からの前記出力光の一部を被測定光ファイバに入力し、前記被測定光ファイバで反射された反射光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて測定干渉信号として出力する測定干渉計と、前記補助干渉信号を用いて前記測定干渉信号に対して前記掃引光源の波長掃引の非線形性を補正した信号を出力信号としてそれぞれ出力する第1及び第2の線形化手段であって、前記補助干渉信号と前記測定干渉信号の間に2つの異なる相対時間差を与えるための遅延時間をそれぞれ持つ前記第1及び第2の線形化手段と、前記第1及び第2の線形化手段からの2つの前記出力信号に対してそれぞれ第1及び第2の重み特性を付加する第1及び第2の重みフィルタと、前記第1及び第2の重み特性が付加された2つの前記出力信号を加算しフーリエ変換された周波数領域の信号を出力する加算・フーリエ変換手段と、を備える光周波数領域反射測定装置であって、前記出力信号の零周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
0とし、前記第1及び第2の線形化手段の各前記遅延時間に対応し、前記掃引光源の波長掃引の非線形性による2つの前記出力信号の誤差が極小となる前記被測定光ファイバ上の位置をそれぞれz
1及びz
2とし、前記出力信号のサンプリング周波数の1/2の周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
nとし、前記第1及び第2の重み特性は、前記被測定光ファイバ上の位置zを変数として、z
1≦z≦z
2において定義され、前記zに対して直線的に変化する重み特性Aと、z
0≦z<z
1、及び、z
2<z≦z
nにおいて定義された重み特性Bと、からなり、前記重み特性Bの振幅の前記zに対する微分値は、前記z
1及びz
2において前記重み特性Aの振幅の前記zに対する微分値と連続であり、かつ、前記z
0において零であり、前記重み特性Bの振幅は、前記z
nにおいて零である構成である。
【0034】
この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバの広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0035】
また、この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性からの振幅誤差の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。
【0036】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記第1及び第2の重みフィルタは、前記サンプリング周波数の逆数の整数倍+1/2倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタであってもよい。
【0037】
この場合、第1及び第2の線形化手段の出力信号のサンプリング周波数の1/2での周波数特性の折り返し点において、第1及び第2の重みフィルタの周波数特性の位相の連続性が保たれるため、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、所望の重み特性を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0038】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記z
0において、前記第1の重みフィルタの前記重み特性Bの振幅が1であり、かつ、前記第2の重みフィルタの前記重み特性Bの振幅が零であってもよい。
【0039】
この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、z
1付近で、波長掃引の非線形性を低減するとともに、零周波数付近で、重みフィルタの処理による雑音の増大や演算に必要なダイナミックレンジの増大を抑えることができる。
【0040】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記重み特性Bの振幅が、前記zを変数とする三角関数で表されるものであってもよい。
【0041】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記重み特性Bにおいては、z
0≦z<z
1、又は、z
2<z≦z
nの少なくとも一方が2つの領域に分割されており、前記重み特性Bの振幅は、前記2つの領域において前記zを変数とする三角関数でそれぞれ表され、かつ、前記2つの領域の三角関数の周期が等しく設定されていてもよい。
【0042】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記重み特性Bの振幅が、前記zを変数とする2次関数で表されるものであってもよい。
【0043】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置においては、前記重み特性Bにおいては、z
0≦z<z
1、又は、z
2<z≦z
nの少なくとも一方が2つ又は3つの領域に分割されており、前記重み特性Bの振幅は、前記2つ又は3つの領域において前記zを変数とする2次関数でそれぞれ表され、かつ、前記2つ又は3つの領域の2次関数の2階微分値が等しく設定されていてもよい。
【0044】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定方法は、掃引光源から波長掃引された光を出力光として出力するステップと、前記掃引光源からの前記出力光の一部を遅延ファイバに入力し、前記遅延ファイバから出力される光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて補助干渉信号として出力するステップと、前記掃引光源からの前記出力光の一部を被測定光ファイバに入力し、前記被測定光ファイバで反射された反射光と、前記掃引光源からの前記出力光の別の一部とを干渉させて測定干渉信号として出力するステップと、前記補助干渉信号を用いて前記測定干渉信号に対して前記掃引光源の波長掃引の非線形性を補正した信号を出力信号としてそれぞれ出力する第1及び第2の線形化ステップであって、前記第1及び第2の線形化ステップは、前記補助干渉信号と前記測定干渉信号の間に2つの異なる相対時間差を与えるための遅延時間をそれぞれ持つ前記第1及び第2の線形化ステップと、前記第1及び第2の線形化ステップからの2つの前記出力信号に対してそれぞれ第1及び第2の重み特性を付加するステップと、前記第1及び第2の重み特性を付加するステップにより重み特性が付加された2つの前記出力信号を加算しフーリエ変換された周波数領域の信号を出力するステップと、を含む光周波数領域反射測定方法であって、前記出力信号の零周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
0とし、前記第1及び第2の線形化手段の各前記遅延時間に対応し、前記掃引光源の波長掃引の非線形性による2つの前記出力信号の誤差が極小となる前記被測定光ファイバ上の位置をそれぞれz
1及びz
2とし、前記出力信号のサンプリング周波数の1/2の周波数に相当する前記被測定光ファイバ上の位置をz
nとし、前記第1及び第2の重み特性は、前記被測定光ファイバ上の位置zを変数として、z
1≦z≦z
2において定義され、前記zに対して直線的に変化する重み特性Aと、z
0≦z<z
1、及び、z
2<z≦z
nにおいて定義された重み特性Bと、からなり、前記重み特性Bの振幅の前記zに対する微分値は、前記z
1及びz
2において前記重み特性Aの振幅の前記zに対する微分値と連続であり、かつ、前記z
0において零であり、かつ、前記z
nにおいて零である。
【0045】
この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定方法は、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバの広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0046】
また、この構成により、本発明に係る光周波数領域反射測定方法は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性からの振幅誤差の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、被測定光ファイバの広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることが可能な光周波数領域反射測定装置及び光周波数領域反射測定方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に係る光周波数領域反射測定装置及び光周波数領域反射測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0050】
<構成>
図1に本発明に係る光周波数領域反射測定装置の基本構成を示す。光周波数領域反射測定装置は、掃引光源1と、光分岐部2と、補助干渉計3と、測定干渉計4と、第1の線形化手段51と、第2の線形化手段52と、第1の重みフィルタ61と、第2の重みフィルタ62と、加算・フーリエ変換手段7と、を備える。
【0051】
掃引光源1は、規定された掃引波長範囲及び掃引速度で出力光の波長を掃引する。波長の掃引は単発でもよく、所定の周期での繰返し掃引でもよく、図示しない外部からのトリガ信号に応じた掃引でもよい。また、掃引方向は長波長から短波長への掃引でも、短波長から長波長への掃引でもよく、両方向の掃引を利用してもよい。例えば、回折格子を用いた外部共振器レーザにおいて、回折格子又はミラーの角度を変えて共振波長を変えることにより発振波長を掃引することができる。
【0052】
光周波数領域反射測定法では、時間に対して光周波数が完全に直線的に変化する掃引が理想であるが、実際には掃引光源の掃引特性には直線からのずれが存在する。掃引光源による波長掃引には、例えば、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引がある。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引とみなすことができる。
【0053】
光分岐部2は、掃引光源1からの光を2つに分岐し、補助干渉計3と測定干渉計4にそれぞれ入力する。ここでは、光分岐部2で掃引光源1からの光を2つに分岐した後、補助干渉計3と測定干渉計4でそれぞれ更に2分岐するという構成を示しているが、これに限られるものではなく、分岐の順序を逆にしたり、一度に4分岐したりする構成でもよい。
【0054】
補助干渉計3は、入力された光を2つに分岐し、それぞれ異なる遅延時間を与えて合波する。例えば、
図2に示すように、補助干渉計3への入力光は光カプラ31bで2つに分岐され、一方は所定の長さの遅延ファイバ32を経由し、ファラデーミラー35で反射されて同経路を逆方向に伝搬する。また、他方は遅延ファイバ無しの光ファイバ33を経由し、ファラデーミラー36で反射されて同経路を逆方向に伝搬する。ファラデーミラー35,36で反射されたこれら2つの光は、光カプラ31bで合波されて補助干渉信号として、入力側と別のポートから出力される。
【0055】
つまり、補助干渉計3は、掃引光源1からの出力光の一部を遅延ファイバ32に入力し、遅延ファイバ32から出力される光と、掃引光源1からの出力光の別の一部とを干渉させて補助干渉信号を出力するようになっている。なお、光の強度に比例した電気信号を出力する受光器に補助干渉信号が入力されると、補助干渉信号が2乗検波され、干渉によるビート信号が得られる。なお、ファラデーミラー35,36を用いることにより、偏波保持ファイバや偏波コントローラを使用することなく合波時の2つの光の偏波を合わせることができる。
【0056】
測定干渉計4は、入力された光を2つに分岐し、一方の光を測定干渉計4に含まれる被測定光ファイバに入力する。そして、被測定光ファイバからの反射光と他方の光(基準光)とを合波して出力する。例えば、
図3に示すように、測定干渉計4への入力光は光カプラ41で2つに分岐され、一方の光が光サーキュレータ42の第1端子42aに入力される。光サーキュレータ42の第1端子42aに入力された光は第2端子42bから出力され、被測定光ファイバ43に入力される。被測定光ファイバ43からの反射光は光サーキュレータ42の第2端子42bに入力され、第3端子42cから出力される。光サーキュレータ42の第3端子42cから出力された光と、光カプラ41で分岐した他方の光(基準光)とは光カプラ45で合波されて測定干渉信号として出力される。
【0057】
つまり、測定干渉計4は、掃引光源1からの出力光の一部を被測定光ファイバ43に入力し、被測定光ファイバ43で反射された反射光と、掃引光源1からの出力光の別の一部とを干渉させて測定干渉信号を出力するようになっている。なお、光の強度に比例した電気信号を出力する受光器に測定干渉信号が入力されると、測定干渉信号が2乗検波され、干渉によるビート信号が得られる。
【0058】
被測定光ファイバ43が通常の単一モードファイバの場合には、伝搬中に光の偏波が変化するため、被測定光ファイバ43上の反射位置によって反射光の偏波が異なる。この場合、
図4に示すように測定干渉計4からの出力光を偏光ビームスプリッタ47で互いに直交する2つの偏波に分離し、それぞれを受光する偏波ダイバーシティ方式が用いられる。
【0059】
このとき、基準光が偏光ビームスプリッタ47の2つの偏光方向のいずれとも直交しないようにする必要があり、偏光ビームスプリッタ47で基準光の強度がほぼ1対1に分離されるのが望ましい。このため、少なくとも基準光の経路を偏波保持ファイバで構成するか、基準光の経路に偏波コントローラを挿入して基準光の偏波を調整する。
【0060】
掃引光源1の光周波数が時間的に非線形に変化することにより、測定干渉計4の被測定光ファイバ43の所定の位置からの反射光と基準光との干渉によるビート周波数が時間的に変化する。第1の線形化手段51は、補助干渉計3からの補助干渉信号を用いて、測定干渉計4の被測定光ファイバ43の所定の位置からの反射光と基準光との干渉によるビート周波数が一定になるように、測定干渉計4からの測定干渉信号をサンプリングする。
【0061】
具体的には、第1の線形化手段51は、補助干渉計3からの補助干渉信号のビート周波数に比例した周波数で、測定干渉計4からの測定干渉信号のビート信号をサンプリングする。すなわち、補助干渉計3からの補助干渉信号の正弦波の位相が一定間隔となる時刻で測定干渉計4からの測定干渉信号のビート信号がサンプリングされる。
【0062】
第2の線形化手段52は、第1の線形化手段51と同様の構成であり、補助干渉計3からの補助干渉信号の正弦波の位相が一定間隔となる時刻で測定干渉計4からの測定干渉信号のビート信号をサンプリングする。これにより、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52は、補助干渉信号を用いて測定干渉信号に対して掃引光源1の波長掃引の非線形性を補正したビート信号をそれぞれ出力することが可能になっている。
【0063】
ここで、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52は、補助干渉計3からの補助干渉信号と測定干渉計4からの測定干渉信号の間に2つの異なる相対時間差を与えるための遅延時間をそれぞれ持っている。具体的には、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52は、補助干渉計3からの補助干渉信号と測定干渉計4からの測定干渉信号の少なくともどちらか一方を遅延させる構成になっており、その遅延時間が第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で異なっている。
【0064】
第1の重みフィルタ61は、所定の周波数特性を持った時間領域フィルタであって、第1の線形化手段51からの出力信号に対して第1の重み特性を付加した結果を出力する。第2の重みフィルタ62は、第1の重みフィルタ61とは別の周波数特性を持った時間領域フィルタであって、第2の線形化手段52からの出力信号に対して第2の重み特性を付加した結果を出力する。ここで、第1の重みフィルタ61と第2の重みフィルタ62の周波数特性の振幅は、被測定光ファイバ43上の位置に応じた重みに対応している。
【0065】
加算・フーリエ変換手段7は、第1の重みフィルタ61からの重み特性が付加された出力信号と、第2の重みフィルタ62からの重み特性が付加された出力信号とを加算しフーリエ変換された周波数領域の信号を出力する。
【0066】
また、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化手段52からの出力信号との遅延時間差を補正する機能を備えている場合もある。この場合、掃引光源1の光周波数の掃引の非線形性が大きい時間領域において、この非線形性によって発生する、第1の線形化手段51による線形化後の誤差項と、第2の線形化手段52による線形化後の誤差項とが逆相になって互いに打ち消し合うように、上述の遅延時間差を補正することが望ましい。なお、以降では、第1の線形化手段51による線形化を単に「第1の線形化」とも称し、第2の線形化手段52による線形化を単に「第2の線形化」とも称する。
【0067】
この遅延時間調整は、第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化手段52からの出力信号との少なくともどちらか一方に、整数サンプル分の遅延や、サンプル間を補間して得られるサンプリング間隔未満の遅延を付加することで実現できる。あるいは、第1の重みフィルタ61又は第2の重みフィルタ62の少なくとも一方に遅延時間調整を含めることもできる。具体的には、重みフィルタ61,62を構成する時間領域フィルタの周波数特性に位相傾斜をつけることにより、サンプリング間隔未満の遅延を含めた遅延時間差を実現することができる。
【0068】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る光周波数領域反射測定装置の構成について、説明する。
図5は本実施形態の構成を詳細に表したものである。掃引光源1、光分岐部2、補助干渉計3、及び測定干渉計4の構成及び動作は、
図1の基本構成と同様である。
【0069】
さらに、本実施形態の光周波数領域反射測定装置は、受光器11a,11bと、A/D変換器12a,12bと、瞬時位相算出部17と、タイミング算出部18と、第1の遅延付加部21と、第2の遅延付加部22と、第1のリサンプリング部23と、第2のリサンプリング部24と、第1の重みフィルタ61と、第2の重みフィルタ62と、加算部27と、フーリエ変換部60と、制御部70と、を備える。
【0070】
ここで、受光器11a,11b、A/D変換器12a,12b、瞬時位相算出部17、タイミング算出部18、第1の遅延付加部21、及び第1のリサンプリング部23は、第1の線形化手段51を構成する。一方、受光器11a,11b、A/D変換器12a,12b、瞬時位相算出部17、タイミング算出部18、第2の遅延付加部22、及び第2のリサンプリング部24は、第2の線形化手段52を構成する。受光器11a,11b、A/D変換器12a,12b、瞬時位相算出部17、タイミング算出部18は、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で共用されている。また、第1の重みフィルタ61、第2の重みフィルタ62、加算部27、及びフーリエ変換部60は、加算・フーリエ変換手段7を構成する。
【0071】
補助干渉計3からの出力光は受光器11aで電気信号に変換される。受光器11aは、光の強度に比例した電流又は電圧を出力するものであり、補助干渉計3で合波された2つの光の干渉によるビート信号を出力する。補助干渉計3では遅延時間の異なる2つの光が合波されるため、掃引光源1の光周波数掃引レートに比例した周波数の正弦波信号が得られる。受光器11aから出力された電気信号は、A/D変換器12aに入力されることにより、一定のサンプリング周波数でディジタル信号に変換される。
【0072】
瞬時位相算出部17では、A/D変換器12aの出力から正弦波のビート信号の瞬時位相を算出する。瞬時位相算出部17は、例えば、少なくとも正弦波のビート信号に対応する正の周波数領域を通過させ、正弦波のビート信号に対応する負の周波数領域を遮断する複素係数のFIRフィルタと、複素係数のFIRフィルタから出力される複素数の位相を算出する逆正接関数による処理部と、で構成される。
【0073】
タイミング算出部18では、瞬時位相算出部17により算出された瞬時位相が一定間隔となるタイミングをサンプリングタイミングとして出力する。ここでは、瞬時位相が例えば−πからπまでの値に折り返されていることを考慮して、前記瞬時位相が一定間隔となるタイミングを検出する必要がある。もしくは、前記瞬時位相の折り返しを復元した後に復元された位相が一定間隔となるタイミングを検出するようにしてもよい。
【0074】
第1の遅延付加部21は、タイミング算出部18から出力されたタイミングに第1の遅延時間を付加して、第1のサンプリングタイミングとして出力する。同様に、第2の遅延付加部22は、タイミング算出部18から出力されたタイミングに第2の遅延時間を付加して、第2のサンプリングタイミングとして出力する。
【0075】
一方、測定干渉計4からの出力光は受光器11bで電気信号に変換される。受光器11bは、光の強度に比例した電流又は電圧を出力するものであり、被測定光ファイバ43からの反射光と基準光との干渉によるビート信号を出力する。
【0076】
受光器11bから出力された電気信号は、一定のサンプリング周波数でA/D変換されてディジタル信号に変換され、第1のリサンプリング部23と第2のリサンプリング部24に入力される。
【0077】
第1のリサンプリング部23は、第1のサンプリングタイミングに対応する時刻の入力信号を第1のディジタル信号として出力する。第2のリサンプリング部24は、第2のサンプリングタイミングに対応する時刻の入力信号を第2のディジタル信号として出力する。
【0078】
各サンプリングタイミングに対応する時刻はA/D変換器12bのサンプリングの時刻と一致するとは限らないため、各リサンプリング部23,24はA/D変換されたディジタル信号を補間して出力する。具体的には、各リサンプリング部23,24は、各サンプリングタイミングに対応する時刻付近の有限個のA/D変換されたディジタル信号に対して有限インパルス応答(FIR)ディジタルフィルタを用いて、各サンプリングタイミングに対応する時刻の補間された各ディジタル信号をそれぞれ算出する。
【0079】
第1のディジタル信号は第1の重みフィルタ61に入力され、第2のディジタル信号は第2の重みフィルタ62に入力される。加算部27は、各重みフィルタ61,62の出力を加算する。フーリエ変換部60は、加算部27からの出力に対してフーリエ変換を行ない、その結果を出力する。
【0080】
図4に示した偏波ダイバーシティ構成の場合、偏光ビームスプリッタ47の2つの出力に対して、それぞれ受光器、A/D変換器、第1のリサンプリング部、第2のリサンプリング部、第1の重みフィルタ、第2の重みフィルタ、加算部、及びフーリエ変換部を配置する。
【0081】
制御部70は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、光周波数領域反射測定装置を構成する上記各部の動作を制御する。さらに、制御部70は、被測定光ファイバ43の長さに応じて、第1の遅延時間、第2の遅延時間、第1の重みフィルタ61のフィルタ係数、第2の重みフィルタ62のフィルタ係数を設定する動作を含めることも可能である。これにより、様々な長さの被測定光ファイバ43を測定可能な光周波数領域反射測定装置を構成することができる。瞬時位相算出部17、タイミング算出部18、第1の遅延付加部21、第2の遅延付加部22、第1のリサンプリング部23、第2のリサンプリング部24、第1の重みフィルタ61、第2の重みフィルタ62、加算部27、及びフーリエ変換部60は、FPGAやASICなどのディジタル回路で構成することも可能で、所定のプログラムを実行することによりソフトウェア的に構成することも可能で、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせた構成も可能である。
【0082】
<遅延時間の設定>
補助干渉計3の2つの光ファイバ32,33における光路長(反射型の場合は往復の光路長)をそれぞれL
a,L
b、測定干渉計4の基準光の光路長(反射型の場合は往復の光路長)をL
r、測定干渉計4の被測定光ファイバ43側の光ファイバにおける光路長が基準光の光路長L
rと等しくなる被測定光ファイバ43上の位置をz=z
0=0とする。その他の補助干渉計3側の遅延時間と測定干渉計4側の遅延時間は等しいとする。
【0083】
測定干渉計4の被測定光ファイバ43上の位置zで反射した光の光路長は2z+L
rとなる。よって、補助干渉計3のビート信号の遅延時間t
ab、測定干渉計4において被測定光ファイバ43上の位置z
1で反射した光と基準光とのビート信号の遅延時間t
1r、測定干渉計4において被測定光ファイバ43上の位置z
2で反射した光と基準光とのビート信号の遅延時間t
2rは、下記の式(4)〜式(6)で表される。
【数4】
【数5】
【数6】
【0084】
ここで、nは光ファイバの屈折率、cは光速である。被測定光ファイバ43上の位置z
1及びz
2において非線形掃引による測定干渉信号のビート信号の周波数の誤差がゼロになるように補助干渉計3側に付加する第1の遅延時間δt
1及び第2の遅延時間δt
2は、下記の式(7)〜式(10)で表される。測定干渉計4側に遅延時間を付加する場合には、δt
1及びδt
2は逆符号になる。
【数7】
【数8】
【0085】
<重みの設定>
掃引光源1の掃引の非線形性によって発生する第1の線形化後の誤差項ψ
1、第2の線形化後の誤差項ψ
2は、下記の式(11)及び式(12)で表される。
【数9】
【数10】
【0086】
ここで、zは被測定光ファイバ43上の位置(距離)を示す変数である。第1の遅延付加部21による第1の線形化の遅延時間は、被測定光ファイバ43上の位置z
1において、掃引光源1の非線形掃引による測定干渉信号のビート信号の周波数の誤差が極小(又はゼロ)になるように設定されるものとする。また、第2の遅延付加部22による第2の線形化の遅延時間は、被測定光ファイバ43上の位置z
2において、掃引光源1の非線形掃引による測定干渉信号のビート信号の周波数の誤差が極小(又はゼロ)になるように設定されるものとする。このように設定される位置z
1,z
2を以降では極小位置z
1,z
2とも称する。すなわち、極小位置z
1,z
2は、第1及び第2の線形化手段51,52の各遅延時間にそれぞれ対応し、第1及び第2の線形化手段51,52からの2つの出力信号における、掃引光源1の波長掃引の非線形性による誤差がそれぞれ極小となる被測定光ファイバ43上の位置である。
【0087】
ここで、誤差項ψ
1,ψ
2を互いに打ち消し合わせるために、第1の重みフィルタ61により第1の線形化後の信号にr
1(z)、第2の重みフィルタ62により第2の線形化後の信号にr
2(z)の重み特性を付加して加算する構成を考える。下記の式(13)及び式(14)が成り立つように重みr
1(z)及びr
2(z)を設定すると、重みをかけて加算した信号は、測定干渉信号のビート信号の振幅を保ちつつ、誤差項ψ
1,ψ
2を互いに打ち消すことができる。
【数11】
【数12】
【0088】
上記の式(13)及び式(14)より求まる重みr
1(z)及びr
2(z)は、下記の式(15)及び式(16)で表される。
【数13】
【数14】
【0089】
式(15)及び式(16)の重みr
1(z)及びr
2(z)はzを変数とした1次関数であり、
図6(a)のようになる。z<z
1及びz>z
2の領域では、r
1(z)とr
2(z)の符号が異なるため、加算部27における各重みフィルタ61,62の出力に対する加算処理が実質的に減算処理になり雑音が増加する(S/N比が悪化する)といった問題が生じる。さらに、r
1(z)又はr
2(z)が1より大きくなるため演算に必要なダイナミックレンジが増加するといった問題も生じる。z
1とz
2の間隔を広くすると、重みの最大値が小さくなりz<z
1及びz>z
2の領域も狭くなるためこの問題が軽減されるが、z
1とz
2の中間付近において高次の非線形誤差等が残る場合がある。
【0090】
また、z<z
1及びz>z
2の領域において式(15)及び式(16)以外の重みを設定することもできる。例えば、
図6(b)のようにz<z
1及びz>z
2の領域においてr
1(z)とr
2(z)を重み1又は重み0の一定値にすると、同領域では各重みフィルタ61,62及び加算部27による重み付き加算による非線形誤差の低減効果は得られないが、減算処理による雑音の増加や、演算に必要なダイナミックレンジの増加は発生しない。
【0091】
したがって、これらの影響を考慮して適切なz
1,z
2を決定することができる。
図7(a)のように被測定光ファイバ43の測定範囲の外側にz
1,z
2を設定してもよいが、高次の非線形誤差等が残る場合がある。よって、
図7(b)のように被測定光ファイバ43の測定範囲の両端にz
1,z
2を設定する方が、高次の非線形誤差等が低減するという点で望ましい。また、
図7(c)のように被測定光ファイバ43の測定範囲の両端よりも内側にz
1,z
2を設定し、高次の非線形誤差等の最大値を低減するようにしてもよい。
【0092】
<重みフィルタの実際の特性とその改善法>
以下、重みフィルタ61,62を時間領域フィルタで実現する構成を考える。時間領域フィルタとしては、
図8に示す有限インパルス応答(FIR)ディジタルフィルタ(以下、単に「FIRフィルタ」とも称する)が広く利用されている。ここで、図中のx
iは本FIRフィルタへの入力データ、符号63は入力データを1サンプル分遅延させる遅延器、a
1,a
2,a
3,a
4,・・・,a
nはフィルタ係数、符号64は入力データに各フィルタ係数を乗算する乗算器、符号65は各乗算器64からの出力を加算する加算器を示す。図中の最も右側の加算器65は、全ての乗算器64からの出力を加算した値y
iを出力するようになっている。
【0093】
FIRフィルタは時間応答が有限のため、一般に周波数特性に誤差が生じる。重みフィルタ61,62の周波数特性に誤差があると、第1の線形化後の誤差項と第2の線形化後の誤差項を前述のように完全に打ち消し合うことができなくなり、重み付き加算後の信号に誤差が残ることになる。FIRフィルタのタップ数を大きくすると、より高精度な周波数特性を実現できるが、演算量やハードウェア規模が大きくなる問題があるため、極力少ないタップ数で所望の特性を得ることが求められている。
【0094】
FIRフィルタの係数は、フィルタの周波数特性を逆フーリエ変換することにより算出することができる。ここで、零位相の周波数特性にφ(f)=−2πτf(fは周波数)の位相傾斜をつけることにより、時間軸上で周波数fによらない一定のフィルタ遅延時間τをFIRフィルタにつけることができる。
【0095】
ここで、各リサンプリング部23,24の測定干渉信号のビート信号に対する実際のサンプリング周波数は補助干渉信号のビート周波数によって変化するため通常は一定ではないが、各重みフィルタ61,62は入力データのサンプリング周波数を一定値f
sとみなして第1及び第2のディジタル信号のフィルタ処理を行う。なお、各リサンプリング部23,24と各重みフィルタ61,62の間に図示しないバッファメモリを設けることにより、各重みフィルタ61,62への入力データの実際のサンプリング周波数を一定にすることもできる。FIRフィルタのフィルタ遅延時間τが入力データのサンプリング周期1/f
sの整数倍(k倍)の場合はτ=k/f
sとなる。つまり、φ(f)=−2πkf/f
sとなり、φ(f
s/2)とφ(−f
s/2)の差は2πの整数倍(k倍)、すなわち同位相となる。
【0096】
離散フーリエ変換では必然的に周波数f
s/2から周波数−f
s/2への折り返しが発生するが、φ(f
s/2)とφ(−f
s/2)が同位相であれば、この折り返し点において位相の連続性が保たれる。フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍でない場合にはこの関係が成立せず、周波数f
s/2における位相と周波数−f
s/2における位相が異なるため、周波数f
s/2から周波数−f
s/2への折り返し点において位相の不連続が発生する。特に、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍(k+1/2倍)の場合は、φ(f
s/2)とφ(−f
s/2)の差は2πの整数倍+1/2倍(k+1/2倍)であり、すなわち逆位相となる。なお、第1及び第2の線形化手段51,52からの2つの出力信号の零周波数に相当する正負の周波数領域の接続点においては、フィルタ遅延時間τにかかわらず位相の連続性が保たれる。
【0097】
図6(b)に相当する振幅特性について、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合のFIRフィルタの周波数特性は
図9(a)のようになる。以下、横軸は、被測定光ファイバ43上の位置zに比例した値である、サンプリング周波数f
sで規格化した周波数を表している。ここで、z
1=0.10、z
2=0.25であり、FIRフィルタのタップ数は32である。また、図中の実線はFIRフィルタの実際の振幅特性Ar
1,Ar
2を示し、図中の破線は
図6(b)に示した理想的な重み特性r
1,r
2を示している。
【0098】
重みフィルタ61,62は2つの極小位置z
1とz
2の間の位置で振幅が直線的(1次関数的)に変化する重み特性を有することが望ましいが、実際のFIRフィルタの周波数特性では完全な直線の振幅特性が実現できず、若干のうねりが生じる。z
1〜z
2間の振幅特性の振幅誤差Δr
1,Δr
2(FIRフィルタの振幅特性Ar
1,Ar
2と直線の理想的な重み特性r
1,r
2との差)は
図9(b)のようになる。
図6(b)に示した理想的な重み特性r
1,r
2は、z
1,z
2にて振幅の微分値が不連続になっているため、特にz
1,z
2付近で振幅誤差Δr
1,Δr
2が大きくなっている。
【0099】
なお、
図6(b)の重み特性r
1,r
2においては、零周波数及び規格化周波数0.5(FIRフィルタの入力データのサンプリング周波数f
sの1/2の周波数)の折り返し点において振幅一定なので、振幅の微分値の連続性が保たれている。また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍なので規格化周波数0.5の折り返し点における位相の連続性も保たれている。これらのことから、零周波数及び規格化周波数0.5付近における振幅誤差Δr
1,Δr
2は小さくなっている。
【0100】
図6(b)に相当する振幅特性について、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合のFIRフィルタの周波数特性は
図10(a)のようになる。このフィルタ遅延時間τでは規格化周波数0.5の折り返し点において位相の連続性が保たれないため、規格化周波数0.5付近でAr
1,Ar
2と理想的な重み特性r
1,r
2との差が大きくなり、それに伴って
図10(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2も大きくなっている。
【0101】
図6(a)に相当する全帯域が直線の振幅特性について、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合のFIRフィルタの周波数特性は
図11(a)のようになる。
図6(a)の重み特性r
1,r
2においては、z
1,z
2における振幅の微分値は連続であるが、零周波数及び規格化周波数0.5の折り返し点において振幅の微分値が非零なので、振幅の微分値の連続性が保たれない。このため、Ar
1,Ar
2において零周波数及び規格化周波数0.5の付近で振幅特性にうねりが見られる。それに伴って、
図11(b)のようにz
1〜z
2間にもうねりによる振幅誤差Δr
1,Δr
2が見られる。
【0102】
図6(a)に相当する全帯域が直線の振幅特性について、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合のFIRフィルタの周波数特性は
図12(a)のようになる。このフィルタ遅延時間τでは規格化周波数0.5の折り返し点において位相の連続性が保たれないため、規格化周波数0.5付近でAr
1,Ar
2と理想的な重み特性r
1,r
2との差が大きくなり、それに伴って
図12(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2も大きくなっている。
【0103】
したがって、
図6(a),(b)のように直線で構成された振幅特性では、振幅の微分値の不連続がどこかに存在するため、フィルタ遅延時間τをサンプリング周期の整数倍とした場合でもFIRフィルタの振幅特性の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大きくなるという問題がある。
【0104】
これに対して、本実施形態の重みフィルタ61,62は、タップ数が有限であるFIRフィルタにおいてz
1〜z
2間のフィルタ特性の振幅誤差Δr
1,Δr
2を低減するために、z
1〜z
2間以外の区間の振幅特性を直線(1次関数)から変更したものである。重みフィルタ61,62の周波数特性において、被測定光ファイバ43上の位置zに対する振幅値及び振幅の微分値が不連続になると振幅誤差Δr
1,Δr
2が大きくなってしまう。このため、本実施形態では、z
1及びz
2を含む全帯域において、重みフィルタ61,62の周波数特性の振幅値及び振幅の微分値が連続になるように、z<z
1及びz>z
2の重み特性をそれぞれ設定する。
【0105】
すなわち、第1及び第2の重みフィルタ61,62の重み特性は、被測定光ファイバ43上の位置zを変数として、2つの極小位置z
1,z
2の間のz
1≦z≦z
2において定義され、位置zに対して直線的に変化する重み特性Aと、2つの極小位置z
1,z
2の外側のz
0≦z<z
1、及び、z
2<z≦z
nにおいて定義された重み特性Bと、からなる。
【0106】
被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅値及び振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅値及び振幅の微分値と連続である。
【0107】
さらに、周波数特性の折り返し成分との振幅の微分不連続を避けるために、重み特性Bの振幅の微分値は、零周波数及び規格化周波数0.5に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
0,z
nにおいて零である。z=0,z
1,z
2,z
nにおける条件は、下記の式(17)〜式(20)で表される。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【0108】
ここで、z
nは規格化周波数0.5に相当するz値である。式(17)〜式(20)の条件は、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおいては直線の振幅特性では満たせないので、非線形の関数を用いて実現する。例えば下記の式(21)及び式(22)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする三角関数を用いて、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおける重み特性Bとしての重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することができる。なお、r
1(z)及びr
2(z)はz
1≦z≦z
2においては1次関数で実現される。
【数19】
【数20】
【0109】
また、下記の式(23)及び式(24)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする2次関数を用いて、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおける重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することもできる。
【数21】
【数22】
【0110】
フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合について、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図13(a)、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図14(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図13(a)及び
図14(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図13(b)及び
図14(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2も大幅に減少している。
【0111】
これは、前述のように規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)の折り返し点において位相の連続性が保たれることに加えて、z
1〜z
2間は直線の振幅特性を保ちつつ、z
1〜z
2間以外の区間に三角関数又は2次関数を用いることにより、零周波数及び規格化周波数0.5での折り返し点を含めて振幅の微分値の不連続を排除したためである。
【0112】
一方、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍でない場合、例えばサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図15(a)、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図16(a)のようになり、規格化周波数0.5の付近において理想的な重み特性r
1,r
2との差が大きくなっている。それに伴って、
図15(b)及び
図16(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2も大きくなっている。
【0113】
これは、前述のように、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2の場合には、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)での周波数特性の折り返し点において位相が不連続になるためである。
【0114】
したがって、本実施形態はフィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合に有用である。
【0115】
以上説明したように、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、補助干渉信号と測定干渉信号の間に2つの異なる相対時間差を与えるための遅延時間をそれぞれ持つ第1及び第2の線形化手段51,52と、第1及び第2の線形化手段51,52からの2つの出力信号に対して重み特性を付加する第1及び第2の重みフィルタ61,62と、を備えることにより、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバ43の広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置において、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅の微分値と連続であり、かつ、零周波数及び規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において零である。これにより、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性r
1,r
2からの振幅誤差Δr
1,Δr
2の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源1の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。
【0117】
また、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置においては、第1及び第2の重みフィルタ61,62が、サンプリング周波数f
sの逆数の整数倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタである。これにより、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)での周波数特性の折り返し点において、第1及び第2の重みフィルタ61,62の周波数特性の位相の連続性が保たれるため、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、所望の重み特性r
1,r
2を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0118】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る光周波数領域反射測定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0119】
本実施形態においては、第1の実施形態のように規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において重みフィルタ61,62の周波数特性の振幅の微分値を零にするのではなく、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において重みフィルタ61,62の周波数特性の振幅を零にする。
【0120】
本実施形態においても、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅値及び振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅値及び振幅の微分値と連続である。また、z
1及びz
2を含む全帯域において、重みフィルタ61,62の重み特性の振幅値が連続である。
【0121】
また、重み特性Bの振幅の微分値は、零周波数に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
0において零である。また、既に述べたように、重み特性Bの振幅は、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
nにおいて零である。z=0,z
1,z
2,z
nにおける条件は、下記の式(25)〜式(28)で表される。
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【0122】
式(25)〜式(28)の条件は、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおいては直線の振幅特性では満たせないので、非線形の関数を用いて実現する。例えば下記の式(29)及び式(30)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする三角関数を用いて、z
2<z≦z
nを2つの領域z
2<z≦z
c2とz
c2<z≦z
nに分割した重み特性Bを用いて重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することができる。ここで、z
c2はz
2からz
nまでのいずれかの値であり、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c2によって2つの領域に分割されている。
【数27】
【数28】
【0123】
例えば、式(29)及び式(30)においてz
c2の前後で連続する2つの三角関数の周期が等しく設定されると、z
c2の値は下記の式(31)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図17(a)のようになり、振幅特性にうねりが見られる。それに伴って、
図17(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大きくなっている。
【数29】
【0124】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図19(a)のようになり、
図17の振幅特性と比較して振幅特性のうねりが減少している。
図19(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図19(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。
【0125】
また、下記の式(32)及び式(33)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする2次関数を用いて、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおける重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することもできる。ここで、z
c2及びz
c3はz
2からz
nまでのいずれかの値である。重みr
1(z)については、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c2によって2つの領域に分割され、重みr
2(z)については、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c3によって2つの領域に分割されている。
【数30】
【数31】
【0126】
例えば、式(32)及び式(33)においてz
c2の前後及びz
c3の前後でそれぞれ連続する2つの2次関数の2階微分値が等しく設定されると、z
c2及びz
c3の値は下記の式(34)及び式(35)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図18(a)のようになり、振幅特性にうねりが見られる。それに伴って、
図18(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2も大きくなっている。
【0127】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図20(a)のようになり、
図18の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図20(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図20(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。
【数32】
【数33】
【0128】
本実施形態では規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において、重みフィルタ61,62の周波数特性の振幅を零にしている。前述のようにフィルタ遅延時間τをサンプリング周期の整数倍+1/2倍にすると、規格化周波数0.5の折り返し点の前後で逆位相、すなわち符号が反転した値となり、規格化周波数0.5において振幅の微分値が連続となる。これにより、折り返し点を含めて振幅の微分値の不連続が排除され、振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少する。
【0129】
したがって、本実施形態はフィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合に有用である。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、第1の実施形態と同様に、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバ43の広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0131】
また、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置において、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅の微分値と連続であり、かつ、零周波数において零である。また、重み特性Bの振幅は、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において零である。これにより、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性r
1,r
2からの振幅誤差Δr
1,Δr
2の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源1の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。
【0132】
また、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置においては、第1及び第2の重みフィルタ61,62が、サンプリング周波数f
sの逆数の整数倍+1/2倍のフィルタ遅延時間を持つFIRフィルタである。これにより、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)での周波数特性の折り返し点において、第1及び第2の重みフィルタ61,62の周波数特性の位相の連続性が保たれるため、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、所望の重み特性r
1,r
2を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0133】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る光周波数領域反射測定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0134】
本実施形態は、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍や整数倍+1/2倍でない任意の場合においても振幅誤差Δr
1,Δr
2を低減するために、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたものである。
【0135】
本実施形態においても、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅値及び振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅値及び振幅の微分値と連続である。
【0136】
また、重み特性Bの振幅の微分値は、零周波数及び規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
nにおいて零である。また、z
1及びz
2を含む全帯域において、重みフィルタ61,62の重み特性の振幅値及び振幅の微分値が連続である。
【0137】
さらに、本実施形態においては、重み特性Bの振幅は、規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
nにおいて零である。z=0,z
1,z
2,z
nにおける条件は、下記の式(36)〜式(39)で表される。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【0138】
式(36)〜式(39)の条件は、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおいては直線の振幅特性では満たせないので、非線形の関数を用いて実現する。例えば下記の式(40)及び式(41)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする三角関数を用いて、z
2<z≦z
nを2つの領域z
2<z≦z
c2とz
c2<z≦z
nに分割した重み特性Bを用いて重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することができる。ここで、z
c2はz
2からz
nまでのいずれかの値であり、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c2によって2つの領域に分割されている。
【数38】
【数39】
【0139】
例えば、式(40)及び式(41)においてz
c2の前後で連続する2つの三角関数の周期が等しく設定されると、z
c2の値は下記の式(42)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図21(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図21(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図21(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。
【0140】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図23(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図23(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図23(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍や整数倍+1/2倍ではない場合についても、同様に振幅特性のうねりが減少し、z
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少する。
【数40】
【0141】
また、下記の式(43)及び式(44)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする2次関数を用いて、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおける重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することもできる。ここで、z
c2及びz
c3はz
2からz
nまでのいずれかの値である。重みr
1(z)については、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c2と(z
c2+z
n)/2によって3つの領域に分割され、重みr
2(z)については、被測定光ファイバ43上のz
2<z≦z
nがz
c3と(z
c3+z
n)/2によって3つの領域に分割されている。
【数41】
【数42】
【0142】
例えば、式(43)及び式(44)においてz
c2の前後及びz
c3の前後でそれぞれ連続する2つの2次関数の2階微分値が等しく設定されると、z
c2及びz
c3の値は下記の式(45)及び式(46)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図22(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図22(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図22(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。
【0143】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図24(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図24(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図24(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が大幅に減少している。
【数43】
【数44】
【0144】
本実施形態では規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において、重みフィルタ61,62の周波数特性の振幅値及び振幅の微分値を零にしている。このため、規格化周波数0.5の前後の位相にかかわらず、すなわちフィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍や整数倍+1/2倍に限られない任意の場合においても、規格化周波数0.5の折り返し点において振幅の微分値が連続となる。これにより、折り返し点を含めて振幅の微分値の不連続が排除され、振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少する。
【0145】
したがって、本実施形態はフィルタ遅延時間τが任意の場合にも有用で、汎用性の高い形態である。
【0146】
以上説明したように、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、第1及び第2の実施形態と同様に、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバ43の広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0147】
また、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置において、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅の微分値と連続であり、かつ、零周波数及び規格化周波数0.5(サンプリング周波数f
sの1/2)において零である。さらに、重み特性Bの振幅は、規格化周波数0.5において零である。
【0148】
これにより、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性r
1,r
2からの振幅誤差Δr
1,Δr
2の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源1の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。さらに、規格化周波数0.5の前後のFIRフィルタの周波数特性の位相にかかわらず、規格化周波数0.5での周波数特性の折り返し点において、振幅値及び振幅の微分値が連続となるため、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、所望の重み特性r
1,r
2を有する重みフィルタをFIRフィルタで精度良く実現することができる。
【0149】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態に係る光周波数領域反射測定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、第1〜第3の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0150】
本実施形態では、z=z
0=0に近い低周波領域において、重みr
1(z)及びr
2(z)を
図6(b)に近い特性にするために、第1又は第2又は第3の実施形態の構成に加えて、零周波数における振幅値を1及び0にする。
【0151】
本実施形態においても、被測定光ファイバ43上の位置zに対する重み特性Bの振幅値及び振幅の微分値は、2つの極小位置z
1,z
2において重み特性Aの振幅値及び振幅の微分値と連続である。また、z
1及びz
2を含む全帯域において、重みフィルタ61,62の重み特性の振幅値及び振幅の微分値が連続である。
【0152】
また、測定干渉信号の零周波数に相当する被測定光ファイバ43上の位置z
0において、第1の重みフィルタ61の重み特性Bの振幅が1であり、第2の重みフィルタ62の重み特性Bの振幅が零である。
【0153】
例えば、0≦z<z
1において第1又は第2又は第3の実施形態と異なるフィルタ特性(零周波数において振幅値が1及び0)を有し、z
1≦z≦z
nにおいて第1又は第2又は第3の実施形態と同じフィルタ特性を有する。ここではz
1≦z≦z
nにおいて第3の実施形態と同じフィルタ特性の場合を示すが、z
1≦z≦z
nにおいて第1又は第2の実施形態と同じフィルタ特性にしてもよい。z=0,z
1,z
2,z
nにおける条件は、下記の式(47)〜式(50)で表される。
【数45】
【数46】
【数47】
【数48】
【0154】
式(47)〜式(50)の条件は、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおいては直線の振幅特性では満たせないので、非線形の関数を用いて実現する。例えば下記の式(51)及び式(52)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする三角関数を用いて、0≦z<z
1及びz
2<z≦z
nを4つの領域0≦z<z
c1とz
c1≦z<z
1とz
2<z≦z
c2とz
c2<z≦z
nに分割した重み特性Bを用いて重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することができる。ここで、z
c1は0からz
1までのいずれかの値、z
c2はz
2からz
nまでのいずれかの値である。つまり、被測定光ファイバ43上の0≦z<z
1がz
c1によって2つの領域に分割されるとともに、z
2<z≦z
nがz
c2によって2つの領域に分割されている。
【数49】
【数50】
【0155】
例えば、式(51)及び式(52)においてz
c1の前後及びz
c2の前後で連続する2つの三角関数の周期が等しく設定されると、z
c1及びz
c2の値は下記の式(53)及び式(54)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図25(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図25(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図25(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少している。
【0156】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、三角関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図27(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図27(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図27(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少している。
【数51】
【数52】
【0157】
また、下記の式(55)及び式(56)のように、被測定光ファイバ43上の位置zを変数とする2次関数を用いて、0≦z<z
1とz
2<z≦z
nにおける重みr
1(z)及びr
2(z)を実現することもできる。ここで、z
c1は0からz
1までのいずれかの値、z
c2及びz
c3はz
2からz
nまでのいずれかの値である。
【0158】
重みr
1(z)については、被測定光ファイバ43上の0≦z<z
1がz
c1/2とz
c1によって3つの領域に分割されるとともに、z
2<z≦z
nがz
c2と(z
c2+z
n)/2によって3つの領域に分割されている。
【0159】
また、重みr
2(z)については、被測定光ファイバ43上の0≦z<z
1がz
c1/2とz
c1によって3つの領域に分割されるとともに、z
2<z≦z
nがz
c3と(z
c3+z
n)/2によって3つの領域に分割されている。
【数53】
【数54】
【0160】
例えば、式(55)及び式(56)においてz
c1の前後及びz
c2の前後及びz
c3の前後でそれぞれ連続する2つの2次関数の2階微分値が等しく設定されると、z
c1〜z
c3の値は下記の式(57)〜式(59)のようになる。本実施形態では、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍の場合、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図26(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較してうねりが減少している。
図26(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って
図26(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少している。
【0161】
また、フィルタ遅延時間τがサンプリング周期の整数倍+1/2倍の場合について、2次関数を用いた本実施形態の重みフィルタ61,62の周波数特性は
図28(a)のようになり、
図9〜
図12の振幅特性と比較して振幅特性のうねりが減少している。
図28(a)のスケールではAr
1,Ar
2とr
1,r
2はほとんど重なって区別ができない。それに伴って、
図28(b)のようにz
1〜z
2間の振幅誤差Δr
1,Δr
2が減少している。
【数55】
【数56】
【数57】
【0162】
本実施形態では、z=z
1における振幅の微分値が連続でz=0における振幅を1及び0にしているため、重みr
1(z)及びr
2(z)は、z=z
1付近では
図6(a)に近い特性(重み付き加算による非線形誤差の低減効果)を有し、z=0付近では
図6(b)に近い特性(雑音の増大や必要なダイナミックレンジの増大を抑える効果)を有する。フィルタ遅延時間τの影響については、重みr
1(z)及びr
2(z)は、z
1≦z≦z
nにおいて第1又は第2又は第3のいずれかの実施形態と同じフィルタ特性を有するため、それに対応した第1又は第2又は第3の実施形態と同様の特性となる。
【0163】
また、
図29に示すようにz
c1,z
c2,z
c3の値を変えることにより、重みr
1(z)及びr
2(z)を、
図25(a)及び
図26(a)の特性と、重みの下限値を零にした特性との中間にすることも可能である。ここで、
図29(a)は三角関数を用いた場合、
図29(b)は2次関数を用いた場合である。同様に、第2の実施形態又は第3の実施形態においてz
c2,z
c3の値を変えることにより、重みr
1(z)及びr
2(z)を、
図17(a)、
図18(a)、
図21(a)、
図22(a)の特性と、重みの下限値を零にした特性との中間にすることも可能である。
【0164】
以上説明したように、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、第1〜第3の実施形態と同様に、波長掃引の非線形性を補正して、被測定光ファイバ43の広い範囲にわたって歪み又は温度分布の測定精度を向上させることができる。
【0165】
また、第1〜第3の実施形態のいずれかにおける第1及び第2の重みフィルタ61,62の構成に加えて、零周波数において、第1の重みフィルタ61の重み特性Bの振幅が1であり、かつ、第2の重みフィルタ62の重み特性Bの振幅が零である。
【0166】
これにより、本実施形態に係る光周波数領域反射測定装置は、タップ数の少ないFIRディジタルフィルタで、所望の重み特性r
1,r
2からの振幅誤差Δr
1,Δr
2の小さい重みフィルタを実現することができ、少ない演算量で掃引光源1の波長掃引の非線形の影響を低減することができる。さらに、本実施形態の光周波数領域反射測定装置は、極小位置z
1付近で、波長掃引の非線形性を低減するとともに、零周波数付近で、重みフィルタの処理による雑音の増大や演算に必要なダイナミックレンジの増大を抑えることができる。
【0167】
(光周波数領域反射測定方法)
以下、第1〜第4の実施形態に係る光周波数領域反射測定装置を用いる光周波数領域反射測定方法について、
図30のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0168】
まず、掃引光源1は、波長掃引された光を出力光として出力する(ステップS1)。
【0169】
次に、補助干渉計3は、掃引光源1からの出力光の一部を遅延ファイバ32に入力し、遅延ファイバ32から出力される光と、掃引光源1からの出力光の別の一部とを干渉させて補助干渉信号として出力する(ステップS2)。
【0170】
次に、測定干渉計4は、掃引光源1からの出力光の一部を被測定光ファイバ43に入力し、被測定光ファイバ43で反射された反射光と、掃引光源1からの出力光の別の一部とを干渉させて測定干渉信号として出力する(ステップS3)。
【0171】
次に、第1及び第2の線形化手段51,52は、補助干渉信号を用いて測定干渉信号に対して掃引光源1の波長掃引の非線形性を補正したビート信号を出力信号としてそれぞれ出力する(第1の線形化ステップS41、第2の線形化ステップS42)。
【0172】
次に、第1及び第2の重みフィルタ61,62は、第1及び第2の線形化手段51,52からの2つの出力信号(すなわち、非線形性を補正された測定干渉信号のビート信号)に対して第1及び第2の重み特性を付加する(第1の重み特性を付加するステップS51、第2の重み特性を付加するステップS52)。
【0173】
次に、加算・フーリエ変換手段7は、第1及び第2の重みフィルタ61,62により重み特性が付加された2つの出力信号を加算した信号をフーリエ変換して周波数領域の信号として出力する(ステップS6)。