【解決手段】管理装置100は、工作機械M1等に接続された管理装置100であって、工作機械M1等の問題事象を解決するスキルを作業者ごとに記憶するスキル記憶部31と、スキルにおける複数段階の習熟レベルを作業者ごとに記憶する習熟レベル記憶部32と、問題事象を判定する判定部41と、判定部41が判定した問題事象に基づいてスキル記憶部31からこの問題事象を解決するスキルを持った作業者を抽出する抽出部42と、抽出部42で抽出された作業者の中から習熟レベル記憶部32に記憶されている習熟レベルに基づいて作業者を選択する選択部43と、選択部43で選択された作業者に対して通知する通信部50と、を備える。
前記選択部は、前記抽出部で抽出された作業者のうち、前記習熟レベル記憶部に記憶されている前記習熟レベルが高い順に作業者を選択する、請求項1に記載の工作機械の管理装置。
前記選択部は、前記抽出部で抽出された作業者のうち、複数種類の前記スキルにおける前記習熟レベルの合計値が高い順に作業者を選択する、請求項1に記載の工作機械の管理装置。
前記選択部は、作業者に関する除外情報に基づいて、前記除外情報で示された作業者を除外して作業者を選択する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の工作機械の管理装置。
前記通信部は、作業者が所持する端末装置に対して通知し、かつ、作業者による前記端末装置の操作によって前記端末装置から送信された確認通知を受信する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の工作機械の管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。
【0015】
図1は、本実施形態に係る工作機械の管理装置100の一例を示す図である。
図1に示すように、管理装置100は、上位制御装置CONTを介して接続された複数の工作機械M1、M2、M3、・・・と、複数の端末装置T1、T2、T3、・・・とを備える。本実施形態では、各工作機械M1等及び端末装置T1等がそれぞれ複数設けられる場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、工作機械M1等及び端末装置T1等の一方が1つであってもよい。
【0016】
各工作機械M1等は、例えば旋盤であり、加工対象であるワークを主軸に保持し、ワークを回転させながらバイト等の工具により切削加工を行う。なお、工作機械M1等は、旋盤に限定されず、例えば、フライス盤、マシニングセンタ、レーザ加工機等の他の種類の工作機械M1等が配置されてもよい。また、同一の種類の工作機械M1等が複数配置されて1つの上位制御装置CONTに接続される形態であってもよいし、異なる種類の工作機械M1等が複数配置されて1つの上位制御装置CONTに接続される形態であってもよい。
【0017】
各工作機械M1、M2、M3、・・・は、それぞれ制御部C1、C2、C3、・・・を有する。制御部C1等は、それぞれ工作機械M1等の各部を統括的に制御する。制御部C1等は、例えば、コンピュータが用いられ、数値制御装置及びプログラマブルコントローラを有する。制御部C1等は、上位制御装置CONTとの間で有線または無線による通信が可能である。制御部C1等は、例えば、ワークの加工を制御する加工制御部を有し、上位制御装置CONT等から送られた加工プログラムによってワークの加工を実行する。なお、加工プログラムは、上位制御装置CONT等から送られることに代えて、制御部C1等で生成されてもよい。
【0018】
上位制御装置CONTは、管理装置100を含んで構成され、複数の工作機械M1等を統括して管理する。上位制御装置CONTは、各工作機械M1等に対して加工プログラムの供給(制御部C1等で加工プログラムを生成する場合は供給しない。)、及び各工作機械M1等からの情報(例えば、後述する問題事象などの情報)を受信する。また、上位制御装置CONTは、各工作機械M1等の制御部C1等が行うワークの加工に関する制御の一部または全部を行ってもよい。上位制御装置CONTは、例えば、コンピュータシステム等が用いられる。なお、管理装置100は、上位制御装置CONTの一部として構成されることに代えて、上位制御装置CONTとは別に構成されてもよい。
【0019】
管理装置100は、複数の工作機械M1等にそれぞれ接続され、これらの工作機械M1等を管理する。管理装置100は、例えば、工作機械M1等の保守点検、加工後のワークの個数及び品質の管理、加工工具などの消耗品の交換及び補充、ワークの補充又は次のロットへの段取り、等の問題事象を受信し、各工作機械M1等の状況を確認して必要な対応の有無あるいは対応内容の決定などを行う。管理装置100は、
図1に示すように、入力部10と、表示部20と、記憶部30と、処理部40と、通信部50とを有する。
【0020】
入力部10は、例えば、操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス、トラックボールなどが用いられる。入力部10は、作業者からの入力を検出し、入力された情報を処理部40に供給する。例えば、入力部10は、ワークの加工プログラム、ワークの素材、工具の種類等の加工条件や、作業者を識別するための作業者IDを作業者の操作により入力する。なお、作業者IDは、各作業者が所有するRFIDから受信して取得してもよいし、バーコード又は二次元コードなどを読み込むことで取得してもよい。また、入力部10は、工作機械M1等の問題事象を解決するスキル、あるいはスキルにおける複数段階の習熟レベルを、例えば作業者ごとに入力する。本明細書及び図面において、スキルは、技術的な能力、技能、又は技量などと同様の意味で用いている。また、本明細書及び図面において、習熟レベルは、技能習熟度、技能優良度、技能優秀度、技能習得度、技術習熟度、技術優良度、技術優秀度、技術習得度、習熟ランクなどと同様の意味である。また、習熟レベルは、単にレベル、ランク、習熟度などと呼ばれる場合がある。
【0021】
表示部20は、例えば液晶ディスプレイなどであり、処理部40から供給されるデータあるいは画像を表示する。例えば、表示部20は、入力部10においてスキルを入力する場合、あるいはスキルの習熟レベルを入力する場合には、入力用の画像等を表示させてもよい。表示部20に表示させる画面のデータについては、予め記憶部30に記憶されており、画面内のいずれかが選択された場合に次に表示する画面などが予め記憶部30に記憶されている。
【0022】
記憶部30は、入力部10により入力されたデータ、及び多の制御装置から供給されるデータの他に、処理部40により演算等の処理を行うためのプログラム及び各種データが記憶される。また、記憶部30は、工作機械M1等の問題事象を解決するための作業を行う作業者についての情報である作業者情報60(
図2参照)を記憶する。記憶部30は、作業者情報60に関連して、スキル記憶部31と、習熟レベル記憶部32とを有する。なお、記憶部30は、管理装置100専用の記憶部であってもよいし、上位制御装置CONTの記憶部の一部が用いられてもよい。
【0023】
図2は、記憶部30に記憶される作業者情報60の一例を示す図である。
図2に示すように、作業者情報60は、基本情報61と、メールアドレス情報62と、認証ID情報63と、スキル情報64と、習熟レベル情報65と、担当機台情報66と、呼び出し端末情報67と、出勤情報68とを含む。作業者情報60は、入力部10において入力可能である。また、作業者情報60は、上位制御装置CONTから供給される情報を用いることが可能である。作業者情報60は、一部の情報が変更された場合、例えば作業者の所属等の情報が変更されたり、作業者に新たなスキルを追加するとき、あるいはスキルの習熟レベルが上がった(技能が上達した)場合には、情報の種類ごとに変更することができる。
【0024】
基本情報61は、作業者の氏名、社員番号等の作業者を識別するための作業者の個人情報等を含む。メールアドレス情報62は、例えば、電子メールにより通知を行う場合の送信先のアドレスである。メールアドレス情報62は、例えば、作業者が所属する法人又は団体等で管理されているメールアドレスであってもよいし、私用のメールアドレスであってもよい。認証ID情報は、作業者が所属する法人又は団体等が作業者ごとに発行し、作業者が所持する認証カードのID番号である。
【0025】
スキル情報64は、工作機械M1等の問題事象を解決するスキルに関する情報である。スキル情報64は、例えば、作業者が取扱い可能な作業に関する情報、あるいは作業者に許可される作業に関する情報を含む。スキル情報64の内容については後述する。習熟レベル情報65は、スキル情報64に含まれる各スキルにおいて、複数段階の習熟レベルに関する情報である。習熟レベル情報65の内容については後述する。
【0026】
担当機台情報66は、作業者が作業を行う対象の工作機械M1等についての情報である。担当機台情報66は、複数の工作機械M1等が管理番号等により登録されている場合、その管理番号の情報が含まれてもよいし、工作機械M1等の種類、使用期間、作業者による担当期間などの情報が含まれてもよい。また、担当機台情報66は、例えば、作業者1人が1台の工作機械M1等を担当する設定であってもよいし、作業者1人が複数台の工作機械M1等を担当する設定であってもよい。また、複数人の作業者が1台の工作機械M1等を担当する設定であってもよい。
【0027】
呼び出し端末情報67は、作業者を呼び出す際の端末装置T1等に関する情報である。端末装置T1等は、予め複数の作業者にそれぞれ割り当てられている。呼び出し端末情報67は、複数の端末装置T1等のそれぞれの識別情報と、各端末装置T1等を所持する作業者とが対応付けられている。出勤フラグ58は、作業者が出勤しているか否かを示す情報である。出勤フラグ58は、作業者が出勤している場合にオンに設定され、作業者が出勤していない場合、又は作業者が出勤している場合であっても他の用事で工作機械M1等の周囲にいない、あるいは他の用事で手が離せない場合等にオフに設定される。なお、作業者情報60は、上記した情報の全てを有することに限定されず、一部の情報がなくてもよいし、さらに他の情報が追加されてもよい。
【0028】
図3は、スキル情報64及び習熟レベル情報65の一例を示す図である。スキル情報64は、記憶部30のスキル記憶部31(
図1参照)に記憶されている。習熟レベル情報65は、記憶部30の習熟レベル記憶部32(
図1参照)に記憶されている。なお、
図3では、スキルの種類と、特定の作業者Aについてのスキル及び習熟レベルについて示している。
図3に示すように、スキルの種類には、工具交換スキル、段取りスキル、消耗品交換スキル、生産再開スキル、品質チェックスキル、保守点検スキル、及び管理スキル等が含まれる。ただし、スキルの種類は、
図3に示す内容に限定されず、一部のスキルがなくてもよいし、さらに他のスキルが加えられてもよい。
【0029】
工具交換スキルは、例えば、工作機械M1等において、ワークを加工する工具を交換する作業に関するスキルである。段取りスキルは、例えば、工作機械M1等において、1ロット(予め設定された数)のワークの加工が完了した後、次のロットのワークの加工を開始させるために行う作業(段取り)に関するスキルである。消耗品交換スキルは、例えば、工作機械M1等において、潤滑油などの補充又はベルト等の消耗品の交換の作業に関するスキルである。生産再開スキルは、例えば、工作機械M1等において、加工エラー又は装置不良、ワークの不足等によって生産が停止(工作機械M1等の稼働が停止)された場合、生産の再開(工作機械M1等の再稼働)を行う作業に関するスキルである。品質チェックスキルは例えば、工作機械M1等において、加工後のワークの品質(加工後の製品寸法、又は加工面の状態など)をチェックする作業に関するスキルである。保守点検スキルは、例えば、工作機械M1等の保守、点検といったメンテナンスを行う作業に関するスキルである。管理スキルは、生産する製品の個数の管理、又は工作機械M1等を取り扱う作業者の管理等、管理業務に関するスキルである。
【0030】
上記したスキルは、各作業者において有しているか否かが択一的に設定される。各作業者において上記したスキルの有無は、例えば、上記した管理スキルを有する作業者(管理者)が作業者ごとに判断して設定されてもよいし、他のスキル認定手段(装置)によって認定されたスキルが管理装置100に送られることにより設定されてもよい。
【0031】
習熟レベルは、上記した各スキルの習熟レベルに基づいて設定される値である。習熟レベルは、例えば、各スキルにおいて1〜5の5段階の数値で示される。習熟レベルを数値で示す場合、数値が低いほどそのスキルの習熟レベルが低く、数値が高いほどそのスキルの習熟レベルが高い設定である。習熟レベルは、作業者ごとに、かつ、スキルごとに設定される。
【0032】
また、習熟レベルは、例えば、上記した管理スキルを有する作業者(管理者)が作業者ごとに判断して設定されてもよいし、工作機械M1等の問題事象を解決する作業等の経験期間や作業回数等に基づいて自動で設定されてもよい。また、他の習熟レベル認定手段(装置)によって認定された習熟レベルが管理装置100に送られることにより設定されてもよい。また、習熟レベルは、所定の基準を満たすか否かの絶対的な評価であってもよいし、他の作業者に対する相対的な評価であってもよい。
【0033】
図3に示すように、スキル情報64及び習熟レベル情報65は、作業者ごとに設定される。また、スキル情報64と習熟レベル情報65とが、それぞれ対応付けられた状態で設定される。例えば、
図3に示す作業者Aの場合、スキル情報64として、消耗品交換スキルと、生産再開スキルと、品質チェックスキルとが設定されており、他のスキルについては設定されていない。すなわち、作業者Aは、消耗品交換、生産再開、及び品質チェックの作業に関するスキルを有しており、他の作業に関するスキルを有していないと設定されている。
【0034】
また、習熟レベル情報65として、消耗品交換スキルについては習熟レベル3、生産再開スキルについては習熟レベル5、品質チェックスキルについては習熟レベル1が設定されている。すなわち、作業者Aは、生産再開スキルについては最も高い習熟レベルを有し、消耗品交換スキルについてはほぼ平均的な習熟レベルを有し、品質チェックスキルについては平均以下あるいは未熟な習熟レベルを有していると設定されている。
【0035】
図4は、スキル情報64及び習熟レベル情報65が一覧形式で記憶部30に記憶される場合の一例を示す図である。スキル情報64及び習熟レベル情報65は、それぞれスキル記憶部31及び習熟レベル記憶部32に記憶されており、
図4に示すような1つのデータテーブルとして記憶部30に格納されている。スキル情報64及び習熟レベル情報65は、作業者ごとに対応して記憶されており、
図4に示す例では、複数の作業者A、B、C、D、E、・・・についてのスキル情報64及び習熟レベル情報65が一覧形式で記憶部30に記憶されている。
図4に示すように、各行がスキルの種類を示し、各列が作業者A等のスキルの有無及び習熟レベルを示している。作業者Aについては、
図3に示す内容と同じである。作業者B、C、D、E、・・・については、各列にスキルの有無及び習熟レベルが示されている。
【0036】
管理装置100の処理部40は、
図1に示すように、記憶部30に記憶された各種プログラム及び各種データに基づいて、各種の演算等の処理を行う。処理部40は、判定部41と、抽出部42と、選択部43とを有する。
【0037】
判定部41は、各工作機械M1等における問題事象を判定する。判定部41は、各工作機械M1等から送られる加工状況等の情報を通信部50により受信し、この情報に基づいて各工作機械M1等で問題事象が生じているか否か、さらには問題事象の種別を判定する。判定部41は、例えば、各工作機械M1等の稼働時間が所定時間を経過しているとの情報を受信した場合に、保守点検の必要が生じたか否かを判定する。また、判定部41は、例えば、各工作機械M1等で生産した製品数に関する情報を受信した場合に、製品数が所定の個数に到達したか否かを判定する。また、判定部41は、例えば、各工作機械M1等において加工後のワークの品質を管理する必要が生じたか否かを判定する。また、判定部41は、例えば、各工作機械M1等から消耗品の状況(使用時間又は摩耗状況、消耗状況、劣化状況等)に関する情報を受信した場合に、消耗品の交換及び補充の必要が生じたか否か判定する。また、判定部41は、例えば、各工作機械M1等におけるワークの加工数に関する情報を受信した場合に、ワークの補充又は次のロットへの段取りの必要が生じたか否かを判定する。なお、判定部41が判定する内容は、上記した内容以外についても各工作機械M1等から送られる情報に基づいて判定する。
【0038】
抽出部42は、判定部41が判定した問題事象に基づいて、スキル記憶部31からこの問題事象を解決するのに必要なスキルを持った作業者を抽出する。例えば、判定部41が工具交換の問題事象が生じたことを判定した場合、
図4に示す例では、抽出部42は、スキル記憶部31から工具交換の問題事象を解決するスキルを持った作業者B、C、Dを抽出する。なお、他の問題事象が生じた場合においても同様の処理を行う。
【0039】
選択部43は、抽出部42で抽出された作業者B、C、Dの中から習熟レベル記憶部32に記憶されている習熟レベルに基づいて、1人又は複数人の作業者を選択する。選択部43は、例えば、抽出部42で抽出された作業者B、C、Dのうち、スキル記憶部31に記憶されている習熟レベルが高い順に作業者を選択してもよい。
図4に示す例において、工具交換スキルの習熟レベルは、作業者Bが習熟レベル5、作業者Cが習熟レベル4、作業者Dが習熟レベル3である。この場合、選択部43は、最も習熟レベルが高い作業者Bを第1順位として選択し、次に習熟レベルが高い作業者Cを第2順位として選択し、その次に習熟レベルが高い作業者Dを第3順位として選択する。
【0040】
また、選択部43は、抽出部42で抽出された作業者のうち、複数種類のスキルにおける習熟レベルの合計値が高い順に作業者を選択してもよい。
図4に示す例において、習熟レベルの合計値は、作業者Bが12(5+3+1+3)、作業者Cが30(4+4+5+3+5+4+5)、作業者Dが8(3+2+3)である。この場合、選択部43は、習熟レベルの合計値が最も多い作業者Cを第1順位として選択し、次に習熟レベルの合計値が多い作業者Bを第2順位として選択し、その次に習熟レベルの合計値が多い作業者Dを第3順位として選択する。
【0041】
なお、選択部32は、全てのスキルに関する習熟レベルの合計値を用いることに代えて、一部の複数の習熟レベルの合計値を用いて選択してもよい。例えば、問題事象に直接的に関連する習熟レベルと、問題事象に間接的に関連する習熟レベルとの合計値が用いられてもよい。問題事象に対応するスキルが工具交換スキルの場合、例えば、消耗品交換スキルを問題事象に間接的に関連するスキルとし、工具交換スキルの習熟レベルと、消耗品交換スキルの習熟レベルとの合計値を用いてもよい。
【0042】
通信部50は、選択部43で選択された特定の作業者A等に対して所定の内容を通知する。通信部50は、各作業者A等が所持する端末装置T1等に対して、各工作機械M1等のいずれかで問題事象が生じていることを文書等により通知する。端末装置T1等に通知される文書内容の一例(
図6参照)については後述する。また、通信部50は、文書の通知に併せて、又は文書の通知に代えて、選択された作業者の端末装置T1等に対して、音声出力、振動、発光等のアラームが出力されるような情報を送信してもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された管理装置100よる各工作機械M1等の管理方法について図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る管理方法の一例を示すフローチャートである。管理装置100には、各工作機械M1等の問題事象を解決するのに必要なスキルが、作業者ごとにスキル記憶部31に記憶される(ステップS01)。各作業者A等の管理者あるいは他のスキル認定手段によって、入力部10等から各作業者A等のスキルの有無を入力することにより、スキル記憶部31に各作業者A等のスキルの有無(
図4参照)が記録される。
【0044】
続いて、管理装置100には、各作業者A等が有するスキルごとに、複数段階の習熟レベルが習熟レベル記憶部32に記憶される(ステップS02)。各作業者A等の管理者あるいは他の習熟レベル認定手段によって、入力部10等から各スキルの習熟レベルを入力することにより、習熟レベル記憶部32に各スキルの習熟レベル(
図4参照)が記録される。なお、スキル及び習熟レベルは、例えば、1年に1回又は複数回認定され、新たなスキルを有していると認定された場合、又はスキルの習熟レベルが上がった場合は、スキル記憶部31及び習熟レベル記憶部32に対してスキルの有無及び新たな習熟レベルが更新されてもよい。
【0045】
また、上記したステップS01及びS02には関係なく、各工作機械M1等は、各制御部C1等によりワークの加工を行っている。各制御部C1等は、例えば、各工作機械M1等が旋盤の場合、加工対象であるワーク主軸に把持させ、加工プログラムに従ってワークの切削加工を実行させる。各工作機械M1等の各制御部C1等は、加工状況などの現在の状態を管理装置100(上位制御装置CONT)に送信する。管理装置100への送信のタイミングは任意に設定可能であり、一定時間間隔で、または予め設定されたタイミングであってもよいし、各作業者A等(管理者)によるマニュアル操作によってもよい。
【0046】
各工作機械M1等は、問題事象が生じた場合、その問題事象を管理装置100(上位制御装置CONT)に送信する。又は、定期的等に各工作機械M1等から送信する情報に加えて問題事象を管理装置100に送信する。管理装置100は、各工作機械M1等から送信された問題事象を受信する(ステップS03)。管理装置100は、通信部50により問題事象を受信した場合、受信内容に基づいて判定部41により問題事象を判定する(ステップS04)。ステップS04において、判定部41は、複数の工作機械M1、M2、M3、・・・のうち問題事象が生じた各工作機械M1等と、発生した問題事象の種類とを特定する。
【0047】
判定部41において問題事象が判定された場合、抽出部42は、判定部41が判定した問題事象に基づいて、この問題事象を解決するのに必要なスキルを持った作業者をスキル記憶部31から抽出する(ステップS05)。ステップS05において、抽出部42は、例えば、該当するスキルを持った作業者をすべて抽出するが、これに限定されない。例えば、抽出部42は、習熟レベル記憶部32に記憶される習熟レベルを参照して、一定以上の習熟レベルを持つ一部の作業者を選択的に抽出してもよい。
【0048】
抽出部42において作業者が抽出された場合、選択部43は、抽出部42が抽出した作業者の中から習熟レベル記憶部32に記憶される習熟レベルに基づいて作業者を選択する(ステップS06)。ステップS06において、選択部43は、抽出部42で抽出された作業者から1名を選択してもよいし、複数の作業者を選択してもよい。本実施形態では、選択部43において1人の作業者を選択する場合を例に挙げて説明する。この場合、選択部43は、抽出部42で抽出された作業者のうち、スキル記憶部31に記憶されている習熟レベルが最も高い作業者を選択する。この場合、問題事象に対して高い習熟レベルを有する作業者を選出するので、問題事象を短時間で効率よく解決することができる。
【0049】
また、選択部43は、抽出部42で抽出された作業者のうち、複数種類のスキルの合計値が最も高い作業者を選択してもよい。この場合、問題事象が複合しているときなどに対応できる最適な作業者を選出することができる。また、選択部43は、習熟レベルが同一である複数の作業者について、他のスキルの数又は複数のスキルにおける習熟レベルの合計点数などを参照して選択してもよいし、予め記憶部30等に設定された優先度に基づいて選択してもよい。
【0050】
選択部43において作業者が選択された場合、通信部50は、選択された作業者に対して通知を行う(ステップS07)。ステップS07において、通信部50は、各作業者A等が所持する端末装置T1等に対して通知を行う。本実施形態では、選択部43によって選択された1人の作業者に対して通知を行う場合を例に挙げて説明する。
図6は、各作業者A等に通知する通知内容の一例を示す図である。
図6では、作業者Aが所有(携帯)する端末装置T1において受信した場合について示している。
【0051】
図6に示すように、通信部50は、例えば、問題事象が発生した工作機械M1と、発生した問題事象の種類である工具交換と、発生した時刻とを端末装置T1に通知する。なお、発生した時刻を通知するか否かは任意である。端末装置T1は(他の端末装置T2も同様)、管理装置100からの通知を表示する表示部71と、確認ボタン72とが設けられている。問題事象が発生した工作機械M1と、発生した問題事象の種類である工具交換と、発生した時刻とは、端末装置T1の表示部71に表示される。なお、上記したように、表示部71への表示に加えて、端末装置T1を振動させてもよいし、端末装置T1に備える発光部から点滅光などを生じさせてもよい。なお、確認ボタン72を用いる例については後述する。
【0052】
作業者Aは、端末装置T1の表示部71を確認することにより、通知された問題事象と、問題事象が生じている工作機械M1等を認識することが可能となる。なお、上記のように、端末装置T1振動及び端末装置T1からの点滅光の少なくとも一方が通知に伴うことにより、作業者Aは通知を受けたことを容易に気付くことができる。作業者Aは、通知を受けた後、対象となっている工作機械M1に向かい、問題事象を解決する作業(工具交換)を行う。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、各工作機械M1等に問題事象が発生した場合、問題事象を解決するために最適な作業者を偏りなく選択して通知することができる。これにより、各工作機械M1等で生じた問題事象を早期に解決することができ、生産効率の低下を抑制することができる。また、各作業者A等の所属等の情報が変更されたり、スキルが追加されたとき、あるいは習熟レベルが上がった(技能が上達した)場合には、各作業者A等についての情報を変更するだけで済み、設定作業の負担を低減することができる。
【0054】
上記した実施形態では、抽出部42で抽出されたすべての作業者を選択部43が選択する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
図7(A)は、実施形態に係る管理方法の他の例を示すフローチャートである。
図7(A)に示すように、抽出部42による作業者の抽出(
図5のステップS05)が行われた後、選択部43は、抽出された各作業者において除外情報が存在するか否かを判定する(ステップS11)。選択部43は、除外情報が存在する作業者を除外して選択する(ステップS12)。
【0055】
図7(B)は、除外情報80の一例を示す図である。除外情報80は、管理装置100の記憶部30に記憶される。
図7(B)に示す除外情報80は、作業者の出勤フラグに基づく情報であり、表示部20(
図1参照)に表示された状態を示している。除外情報80は、作業者の識別番号情報81と、作業者の氏名等の識別情報82と、選択部43において順位づけされた場合の順位情報83と、出勤しているか否かに関する出勤情報84と、出勤している作業者がビジー状態であるか否かに関するビジー情報85とを含む。順位情報83は、00、01、02の順番で順位づけされている。なお、表示部20には、除外情報80を編集するための編集ボタン86が表示される。編集ボタン86は、例えば、管理権限を有する作業者のみが操作できるように設定されてもよい。
【0056】
図7(B)に示すように、作業者Dは出勤しておらず、作業者A、C、Eは出勤しているが他の用事に取り掛かっているため各工作機械M1等の作業を行えない状態(ビジー状態)である。選択部43は、ステップS11において、複数の作業者A〜E・・・が抽出されている場合、ステップS12により除外情報80に基づいて作業者A、C、D、Eを除外して選択する。上記した実施形態における例では、作業者A〜E・・・が抽出されているが、選択部43は、作業者A、C、D、Eを除外して、作業者Bを選択する。このように、除外情報に基づいて特定の作業者を除外することにより、現時点で問題事象に対応することが難しい作業者が選択されることを回避できる。なお、
図7(B)に示す除外情報80は一例であり、他の形態であってもよい。
【0057】
また、上記した実施形態では、通信部50が1人の作業者にのみ通知を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。問題事象に対して複数の作業者(あるいはグループ)で担当するほうが好ましい場合がある。このような場合、選択部43は、複数の作業者を選択する。
図8(A)は、実施形態に係る管理方法の他の例を示すフローチャートである。
図8(A)に示すように、抽出部42による作業者の抽出(
図5のステップS05)が行われた後、選択部43は、複数の作業者を選択する(ステップS21)。選択部43は、例えば、抽出部42で抽出された複数の作業者のうち2人以上を選択する。なお、何名選択するかは、問題事象等に対応付けられて選択人数情報等として記憶部30に記憶されていてもよい。通信部50は、選択された各作業者に対して同時又はほぼ同時に通知を行う(ステップS22)。
【0058】
図8(B)は、通信部50から複数の作業者に通知を行う場合の一例を示す図である。
図8(B)に示すように、抽出部42により作業者B〜E・・・が抽出された場合、選択部43は、記憶部30に記憶されている上記した選択人数情報等に基づいて、作業者B〜E・・・のうち習熟レベルが高い順の3名である作業者B、C、Dを選択する。通信部50は、ステップS22により、複数の端末装置T1、T2、T3、T4、T5、・・・、のうち、作業者B、C、Dが所持する端末装置T2、T3、T4に対して通知を行う。
【0059】
このように、通信部50は、選択された複数の作業者に対して同時又はほぼ同時に通知を行うことができるため、グループ単位で問題事象に対応する場合にそのグループに所属する作業者に対して効率よく通知することができる。なお、
図2に示す呼び出し端末情報67で予め作業者B、C、Dを関連付けておくことにより、通信部50は、作業者B、C、Dのいずれか1名に通知を行うと、他の2名の作業者に対して自動で同様の通知を行うように設定されてもよい。
【0060】
また、上記した実施形態では、選択した1名又は複数名の作業者に対して通信部50により通知を行う例(すなわち、管理装置100から各作業者A等への通知)を説明したが、この通知後の対応又は動作について以下で説明する。各端末装置T1等は、通信部50から通知を受信した後、各作業者A等による端末装置T1等の操作によって端末装置T1等から通知に対する受信確認を管理装置100に送信でき、管理装置100の通信部50は、端末装置T1等から送信された受信確認を受信してもよい。各端末装置T1等は、
図6に示すように確認ボタン72を備えている。各作業者A等は、通知を受信した後に確認ボタン72を押すことにより、受信確認を管理装置100に送信できる。
【0061】
図9は、実施形態に係る管理方法の他の例を示すフローチャートである。
図9に示すように、通信部50による通知(
図5のステップS07)が行われた後、管理装置100は、端末装置T1等からの受信確認を受信したか否かを判断する(ステップS31)。この判断は、管理装置100の処理部40により行ってもよいし、管理装置100以外で行ってもよい。ステップS31において、管理装置100は、受信確認を受信した場合(ステップS31のYES)、処理を終了する。
【0062】
図10(A)は、端末装置T1等から通信部50に受信確認を送信する場合の例を示す図である。
図10(A)に示すように、作業者A等は、通信部50からの通知を受信して内容を確認した後、端末装置T1に設けられる確認ボタン72を押すことにより、受信確認を管理装置100に送信することができる。一方、管理装置100は、受信確認を受信したことを表示部20に表示させてもよい。このように、端末装置T1から管理装置100に対して受信確認を送信可能とし、管理装置100が受信確認を受信することにより、作業者が通知を受けたことを容易に確認することができる。
【0063】
ステップS31において受信確認を受信しない場合(ステップS31のNO)、管理装置100(処理部40)は、一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS32)。一定時間は、任意に設定可能であり、例えば、記憶部30に記憶されている。一定時間が経過していない場合(ステップS32のNO)、ステップS31に戻り、受信確認を受信したか否かが判断される。通信部50が受信確認を受信しないまま一定時間を経過した場合(ステップS32のYES)、選択部43は、現在選択している作業者の次の順の作業者を選択する(ステップS33)。
【0064】
ステップS33において、選択部43は、抽出部42で抽出された作業者のうち、先に選択した作業者に対して次の習熟レベルを持つ作業者を選択する。その後、
図5のステップS07により、通信部50は、選択部43で選択された次の作業者に対して通知を行う。なお、次の作業者に通知を行った後、上記と同様に、ステップS31で次の作業者からの受信確認を受信したか否かが判断され、いずれかの作業者からの受信確認を受信しない限り、上記したステップS31〜S33が繰り返される。
【0065】
図10(B)は、通信部50から端末装置T1等に通知が行われる状態を示す図である。
図10(B)に示すように、通信部50は、先ず、選択部43で選択された作業者Bの端末装置T2に対して通知を行う。管理装置100は、一転時間を経過した後、端末装置T2からの受信確認を通信部50が受信しない場合、選択部43によって次の順の作業者Cが選択され、作業者Cの端末装置T3に通知される。なお、管理装置100は、一転時間を経過した後、作業者Cの端末装置T2からの受信確認を通信部50が受信しない場合、選択部43によってさらに次の順の作業者Dが選択され、作業者Dの端末装置T4に通知される。
【0066】
このように、通信部50が受信確認を所定時間内に受信しない場合に、既に通知した作業者の次の順の作業者を選択部43が選択し、この次の順の作業者に対して通信部50が通知するので、通知を受けた作業者が通知に気付かないとき、あるいは通知に対応できないときなど、問題事象に対して早期に対応可能な次の作業者に通知を行うことにより、問題事象を早期に解決することができる。
【0067】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、上記した実施形態及び他の例を組み合わせてもよい。