回路基板60にはんだ付けされるコンタクト40が補強タブ50を備えたハウジング10で覆われた電気コネクタ1であって、補強タブ50は平板状でハウジング10に取り付く圧入部510を含む本体部500と、回路基板60の所定箇所にはんだ付けされる接続部550とを備え、ハウジング10は下面が回路基板60に対向し、前面が開口する箱状体で、後面にコンタクト40が配置され、側面に補強タブ50の圧入部510が圧入される被圧入部100が備わり、補強タブ50はハウジング10に対して上面方向から組み付けられ、圧入部510は下面側が切開された切り欠きで、前後対向位置に少なくとも一対の圧入縁を備え、被圧入部100は圧入部510が圧入される周囲の側面に比べてやや張り出した台座状で圧入終了状態で圧入縁が緊密に接する被圧入縁が備わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この技術による補強タブはハウジングに組み付けたとき、補強タブのU字部内周面とハウジング面とのあいだにクリアランスが設けられている。これによりコネクタにたとえば回転方向の力が加わると、この上下方向のクリアランスによって、補強タブはハウジングの動きを十分に規制できない状態にある。ここで回転方向とは回路基板からコネクタが浮き上がる力成分を伴う方向であって、回転軸は概ね回路基板に平行である。
また、ケースに収容されたコネクタに回転方向の動きが発生すると、たとえば振動によるハーネスの上下方向のばたつきでコネクタが回転方向に振られることで、ケースに断続的に接触し、ケースの割れや破損片の発生が生じるおそれがある。さらに、回転方向の力がリード部に集中することで回路基板との接続先端部に半田はがれが生じるおそれもある。
また、補強タブは外方向へ重なるように形成されてハウジングの長手方向の両側面に組み付けられるため、コネクタの長手方向寸法の増大を伴う。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、コネクタに回転方向の力が加わってもコネクタの回転方向の動きが抑制された補強タブを備えた電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気コネクタは、(1)回路基板にはんだ付けされるコンタクトが補強タブを備えたハウジングで覆われる電気コネクタであって、前記補強タブは前記ハウジングに取り付く圧入部を含む本体部と、前記回路基板の所定箇所にはんだ付けされる接続部と、を備え、前記ハウジングは下面が前記回路基板に対向し、前面が開口する箱体状で、前記前面に対向する後面に前記コンタクトが配置され、前記前面及び前記下面に直交する側面に前記補強タブの前記圧入部が圧入される被圧入部が備わり、前記補強タブは前記ハウジングに対して上面方向から組み付けられ、前記圧入部は下面側が切開された切り欠きで、前後対向位置に少なくとも一対の圧入縁を備え、前記被圧入部は前記圧入部が圧入される周囲の側面に比べてやや張り出した台座状で、圧入終了姿勢で前記圧入縁が緊密に接する被圧入縁が備わるところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、圧入終了姿勢で前後対向位置にある圧入縁と被圧入縁とが緊密に接
するので、補強タブのハウジングに対する前後方向の動きが規制される。これにより回転方向の動きが抑制された補強タブを備えた電気コネクタが得られる。
【0008】
好ましくは本発明の電気コネクタは、(2)前記一対の圧入縁及び被圧入縁が平行して上下方向に延びるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0009】
この発明によれば、一対の圧入縁は平行するので、前後方向の動きが規制され、これにより回転方向の動きが抑制された補強タブを備えた電気コネクタが得られる。
【0010】
好ましくは本発明の電気コネクタは、(3)前記補強タブは平板状で前記圧入部は前記切り欠きが平行して2箇所備わるところに特徴を有する(2)記載のものである。
【0011】
この発明によれば、圧入部と被圧入部との組み合わせが実質的に2箇所で形成されるので、一層前後方向の動き、及び回転方向の動きが抑制された電気コネクタが得られる。
【0012】
好ましくは本発明の電気コネクタは、(4)前記圧入部の前記切開位置と上縁間の上下方向距離は最も距離のある一対の圧入縁間の距離に比べて大きいところに特徴を有する(2)又は(3)記載のものである。
【0013】
この発明によれば、圧入部は前後距離に比べて上下距離が長いので、一層前後方向の動き、及び回転方向の動きが抑制された電気コネクタが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る電気コネクタを添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。
図1は本実施形態に係る電気コネクタが回路基板に実装された状態を示す外観斜視図である。
図2は同電気コネクタの補強タブが組み付けられる前の状態を示す外観斜視図である。
図3は同電気コネクタの補強タブの正面図である。
図4は同電気コネクタの補強タブの組み付け過程を示す工程図である。
なお説明中の方向指示は原則図に示す方向定義に従う。
【0016】
<電気コネクタ概説>
本実施形態に係る電気コネクタ1は、
図1に示されるように、回路基板60に実装されて図示しない電線の端末に接続する相手方電気コネクタに嵌合する。回路基板側の電機コネクタには挿抜操作によるストレスが実装部に作用し、これによる実装不具合が生じるおそれがある。補強タブ50は実装部に作用するストレスを緩和する目的で電気コネクタに装着される。
【0017】
電気コネクタ1は、
図1に示されるように、導電性のコンタクト40を3次元的に整列配置するために非導電性のハウジング10でその一部を支持している。コンタクト40の
一方の端部にある接触部41はハウジング10内に収まり開口部15から嵌めこまれる図示しない相手方コンタクトと電気的に接続する。コンタクト40の一方の端部にある接続部42はハウジングより延出して角度を変えて回路基板60の所定箇所に向かう。コンタクト40の接続部42は回路基板60のパッド62と、はんだで接続される。はんだ固着面積は回路基板60近傍でコンタクト40端部の接続部42を回路基板60面に対して平行に延ばすことで確保されている。
ハウジング10は下面の両サイドにあるピン18で回路基板60に対する2次元的な芯あわせがおこなわれ所定位置に配置される。
【0018】
電気コネクタ1は、
図1に示されるように、図示しない他の実装部品とともに回路基板60の上方から所定位置に仮装着される。このあと実装工程に移されて、コンタクト40と回路基板60、及び補強タブ50と回路基板60等がはんだ接続されて電機コネクタ1は回路基板60面上の所定位置に固着される。
【0019】
<ハウジング>
ハウジング10は、
図2に示されるように、前面に開口部15を有する箱体状で内部にコンタクト40の接触部41を収容するための収容室16を備えている。コンタクト40の接触部41は収容室16で3次元的に整列配置されている。コンタクト40の図示しない保持部がハウジング10後面の後壁14で保持されている。コンタクト40は上下複数列に配置され後方へ延びたあと回路基板60に向かって進む。コンタクト40の先端は回路基板60の近傍で後方に向きを変え、接続部42を回路基板60のパッド62位置に合わせる。
【0020】
ハウジング10は下面の底壁13で回路基板60に対峙する。底壁13は概ね平坦で左右端部寄りに突状のピン18が備わる。ピン18は回路基板60に対するハウジング10の実装位置を割り出すものである。ハウジング10上面の上壁11には前方中央に凸状のボス17が備わる。ボス17は図示しない相手方電気コネクタに備わるレバーと協働して嵌合操作力を増強する。左右後方寄りには支持部19、19が備わる。支持部19は図示しない相手電気コネクタとの位置合わせの基準面となる。
【0021】
ハウジング10の左右側面には側壁12、12が備わる。側壁12の中央寄りやや後位置に被圧入部100が備わる。被圧入部100は補強タブ50の圧入部510に対応する位置にある。
【0022】
<被圧入部>
被圧入部100は、
図2に示されるように。左右側壁12、12に備わる。被圧入部100は側壁12の面上よりもやや外に隆起する被圧入壁112を備える。被圧入壁112は概ね直方体で隆起面は側壁12に対して概ね垂直である。被圧入壁112は前後離間して2個所に備わり、これらの間に被圧入溝111を形成する。後方の被圧入壁112は後方の隆起面に被圧入縁112aを備え、前方の被圧入壁112は前方の隆起面に被圧入縁112aを備える。これら被圧入縁112aは概ね平坦で組み付けられた補強タブ50と協働して直接的に相手方に作用する部分である。
【0023】
被圧入部100は、
図2に示されるように、2個所にある被圧入壁112の間に被圧入溝111を備えている。被圧入溝111は前後に備わる被圧入壁112、112によって凹構造が形成されている。被圧入溝111の底面は側壁12の面上と同一面上にある。被圧入溝111の上下端は開口されている。
また別の実施形態として、被圧入溝111の底面が側壁12の面上に比べてやや張り出した面上にあってもよい。
【0024】
被圧入部100に形成される一対の被圧入縁112aは平行して上下方向に延びている。被圧入縁112aの幅すなわち被圧入壁112の隆起高さは組み付けられる補強タブ50の板厚寸法に比べて同じか、やや大きいくらいが好ましい。
【0025】
被圧入溝111の溝幅は、
図1、
図2に示されるように、全長に亘りほぼ均一であり回路基板60面に対して略垂直方向に延びている。
【0026】
<補強タブ>
補強タブ50は、
図3に示されるように、圧延金属板の打ち抜き加工によって形成された薄板状である。一般的に加工性、耐久性を考慮して銅合金が使用される。表面を錫でめっき処理してもよい。
【0027】
補強タブ50は、回路基板実装部品の実装強度を補足するために使用される。補強タブ50は、一般的に一対で使用され、ハウジング10の左右側壁12、12に備わることが多い。
【0028】
補強タブ50は、
図3に示されるように、骨格を成す本体部500の前方に圧入部510を備え、後方に貫通穴の窓部520を備える。下縁には前端および後端に接続部550、560を備える。
貫通穴の窓部520はハウジング10に補強タブ50が組み付けられた状態で、電気コネクタ1の側面からコンタクト40の配列や接続状態が確認できるように設けられた検査窓として使用してもよい。窓部520は幾つかの桟で区切られている。桟により窓部520の強度は確保されている。
【0029】
圧入部510は、
図3に示されるように、切り欠き加工で形成される。切り欠かれた部分が圧入溝520になる。圧入溝520は圧入壁で区画されている。本実施形態の圧入壁は外側圧入壁512、512および内側圧入壁511の3個所の壁からなり、圧入溝520は内側圧入壁511によって前後2個所に分割されている。
【0030】
外側圧入壁512、512は、
図3に示されるように、前方及び後方に備わり、前方の外側圧入壁512の後面(切り欠き面)および後方の外側圧入壁512の前面(切り欠き面)には圧入縁512aが形成されている。
圧入縁512aは切り欠き面であり、一般的に打ち抜き加工の打ち抜き方向によってその形状は変わる。
【0031】
圧入縁512a、512aは、
図3に示されるように、前方および後方に一対備わる。一対の圧入縁512a、512aは平行して上下方向に延びている。一対の圧入縁512a、512aはハウジング10に組み付けられた際に被圧入縁112a、112aの対応する位置に備わる。補強タブ50がハウジング10に組み付けられたとき一対の圧入縁512a、512aと一対の被圧入縁112a、112aとは隙間なく緊密に接するものである。
【0032】
内側圧入壁511は、
図3に示されるように、本体部500の横桟から下方に垂下する略直方体である。内側圧入壁511の前面および後面で前方の圧入溝520および後方の圧入溝520を区画している。
内側圧入壁511は、補強タブ50がハウジング10に組み付けられた際、被圧入溝111に対応する位置にある。このように凸と凹との嵌めあい構造が複数個所で形成されることによりハウジング10に対する補強タブ50の組み付けは一層緊密な状態になる。
【0033】
補強タブ50の接続部550、560は、
図3に示されるように、本体部500下縁の
前端寄り及び後端寄りの位置にあり、切断面が実装面である。
【0034】
<補強タブ組み付け>
補強タブ50は、
図4に示されるように、ハウジング10の上方から組み付けられる。補強タブ50の圧入部510がハウジング10の被圧入部100に嵌合する位置で降下する。
補強タブ50の圧入溝520にハウジング10の被圧入壁112が嵌り、ハウジング10の被圧入溝111に補強タブ50の内側圧入壁511が嵌りあうようにして圧入工程がすすむ。
【0035】
圧入終了位置にある補強タブ50は、
図4の(3)に示されるように、ハウジング10に対して隙間なく緊密に組み付く。補強タブ50はその内面でハウジング10の側壁12に対して緊密に接している。
また別の実施形態として、被圧入溝111の底面が側壁12の面上に比べてやや張り出した面上にある場合には、補強タブ50はその内面で被圧入溝111の底面に対して緊密に接している。
【0036】
補強タブ50の圧入部510の前方の圧入縁512aは、
図4の(3)に示されるように、ハウジング10の被圧入部100の前方の被圧入縁112aと全長に亘り隙間なく緊密に接する。また後方の圧入縁512aは後方の被圧入縁112aと全長に亘り隙間なく緊密に接する。
【0037】
補強タブ50の内側圧入壁511は、
図4の(2)に示されるように、ハウジング10の被圧入溝111に上方から前後縁部511a、511bを摺るようにして嵌り込む。補強タブ50の圧入終了位置で内側圧入壁511の前方縁部511aはハウジング10の前方の被圧入壁112の後方縁部112bと全長に亘り接する。また、内側圧入壁511の後方縁部511bはハウジング10の後方の被圧入壁112の前方縁部112cと全長に亘り接する。
【0038】
圧入終了位置で補強タブ50の圧入部510とハウジング10の被圧入部100とは、
図4の(3)に示されるように、互いの凹部を相手方の凸部で嵌め合うようにして合体する。圧入縁512aと被圧入縁112aとの接触距離である圧入距離は補強タブ50の上下端距離の概ね3分の2程度あり、且つ圧入部510の前後端距離すなわち前方圧入縁512aと後方圧入縁512aとの距離は圧入距離に比べて短い。このような寸法規律によって圧入部512aと被圧入部112aとの合体は、補強タブ50のハウジング10に対する前後方向の動きを規制し、特に回転方向の動きに対する強い抑制力を作用させる。
回転とは上下軸と前後軸とを含む平面上の回転である。
【0039】
回路基板60に実装された電気コネクタ1は、
図1に示されるように、図示しない相手方電気コネクタの挿抜操作で電気コネクタ1には前後方向に作用する力と重ねて回転方向の力が作用する。このとき補強タブ50とハウジング10との間に隙間が生じていると補強タブ50の効果は減殺される。その結果ハウジング10は挿抜操作やハーネスに加わる力によってその度に動く、ストレスはコンタクト40と回路基板60とのはんだ接続部に集積されることとなる。
【0040】
<効果>
本実施形態の電気コネクタ1は、
図4に示されるように、補強タブ50の圧入部510とハウジング10の被圧入部100とが一対の圧入縁512a、512aと被圧入縁112a、112aとの長距離に亘る密着により、ハウジング10に対する補強タブ50は概ね動きが規制された状態で合体しているので、補強タブ50はその効果を減殺されること
なく十分に発揮しうる状態にある。これにより、電気コネクタ1に作用する外力によってたとえ回転成分の力が作用する場合でも補強タブ50によって電気コネクタ1の回転方向の動きは抑制されることとなる。
【0041】
本実施形態の電気コネクタ1は、補強タブ50によって回転方向の動きが抑制されるのでコンタクト40の回路基板60とのはんだ接続部にかかるストレスが緩和される。
【0042】
本実施形態の電気コネクタ1は、平板状の補強タブ50を組み付けているので電気コネクタ1の左右寸法はハウジング10の左右寸法と概ね同じで占有面積の増加を抑制しうる。
【0043】
<別の実施形態>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定的に解釈されるものではない。発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様を取りうるものである。補強タブの圧入縁、およびハウジングの被圧入縁は直線状のほかたとえば段差状、あるいはテーパー状であってもよく、このように形態を変更した場合でも概ね上述した効果は得られる。
図5は本発明の別の補強タブに係る電気コネクタの外観斜視図である。
図6は本発明のさらに別の補強タブに係る電気コネクタの外観斜視図である。
【0044】
別の実施形態の補強タブ1050の圧入縁1512aは、
図5に示されるように、段差状に形成されている。ハウジング10は対応する位置に段差状の被圧入縁1112aを備えている。圧入終了位置にある補強タブ1050はハウジング10に対して圧入部を被圧入部に隙間なく緊密に合体させている。
【0045】
さらに別の実施形態の補強タブ2050の圧入縁2512aは、
図6に示されるように、テーパー状に形成されている。ハウジング10は対応する位置にテーパー状の被圧入縁2112aを備えている。圧入終了位置にある補強タブ2050はハウジング10に対して圧入部を被圧入部に隙間なく緊密に合体させている。