【解決手段】都市ガスを脱硫器で脱硫し、脱硫した都市ガスを燃料昇圧ブロワで昇圧して改質する燃料処理系を有する燃料電池システムの燃料配管の一部を樹脂モジュールブロック40で構成する。樹脂モジュールブロック40は、脱硫器から排出された燃料流Aを受け入れ、燃料昇圧ブロワへの導入燃料Bを排出する配管50が内部に設けられた樹脂モジュール40aと、配管50の一部を主流路となし、配管50に流れる燃料流量を測定するバイパス式流量計61とを一体化してる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
以下では、
図1〜
図4を参照しつつ、本実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成を示すブロック図である。本実施形態では、燃料電池システム16として、燃料改質装置をパッケージング内部に有する固体高分子型燃料電池システムを例に説明する。
【0012】
燃料電池システム16は、主に燃料処理系(FPS;Fuel Processing System)1、電池本体(CSA;Cell Stack Assembly)2から構成される。
【0013】
燃料処理系1は、燃料3、脱硫器4、起動用燃料遮断弁21、燃料昇圧ブロア31、水蒸気発生器5、改質器6、COシフト反応器7、CO選択酸化器8、水蒸気分離器9、改質用燃焼器10、改質水ポンプ11、排熱熱交換器&タンク12他から構成される。一方、電池本体2は、アノード極13、カソード極14から構成される。
【0014】
燃料3は、炭化水素系燃料、例えば都市ガスやプロパンである。燃料3は、配管内を流れ脱硫器4へ至る。脱硫器の上流側には、配管内を流れる燃料3の遮断/供給を切替える燃料遮断弁20が配置される。
【0015】
脱硫器4は、内部を流れる燃料の硫黄分を取り除く。脱硫器4は、内部に活性炭やゼオライトを備え、これらにより燃料の硫黄分を吸着する。脱硫器4の下流側には、バイパス式流量計61a、及び燃料昇圧ブロア31が配置される。
【0016】
燃料昇圧ブロア31は、配管内の燃料3を加圧するためのブロアである。燃料昇圧ブロア31の下流側で、配管は分岐する。一方の配管は、起動用燃料遮断弁21を経由して、改質器6へと繋がる。他方の配管は、メイン燃料遮断弁22を経由してCOシフト反応器7へと繋がる。
【0017】
改質器6は、触媒により燃料3と水蒸気とを反応させる。改質器6での反応より、水素が生成する共にCOの生成も行われる。この改質器6での改質は、所謂水蒸気改質であり吸熱反応である。それ故、反応を促進させるために、改質器6には加熱用の燃焼器が含まれている。改質器6の下流側には、水蒸気発生器5が配置される。
【0018】
水蒸気発生器5は、改質水ポンプ11より供給される純粋を加熱し、水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、燃料ガスと合流する。固体高分子型燃料電池システムは、電池本体2の電解質膜及び触媒層から構成されるMEA(Membrane Electrode Assembly)でのCO被毒が問題となるため、COはCO2へ酸化させる必要がある。水蒸気発生器5の下流側には、COシフト反応器7、及びCO選択酸化器8が配置される。
【0019】
COシフト反応器7、及びCO選択酸化器8には、CO選択酸化用空気ブロア18から、空気が供給される。COシフト反応器7ではH2Oによるシフト反応、CO選択酸化器8では、触媒によりCO被毒が発生しない程度に、CO選択酸化用空気ブロア18から供給された空気により酸化反応を進める。
【0020】
改質器6を含めたこれらの触媒反応温度はそれぞれ異なる。例えば、改質器6での反応温度は数百度であり、CO選択酸化器8での反応温度は百数十度である。このように、改質器6から排出される改質ガスの上流と下流の温度差を大きくとる必要がある。そのため、下流側において温度を下げるための熱交換器が必要となる。
【0021】
次に、各触媒での主なプロセス反応を以下に示す。例えばメタン成分が主体の都市ガス改質の場合、水蒸気改質反応は(1)式、COシフト反応は(2)式、CO選択酸化反応は(3)式のようになる。
CH4+2H2O→CO2+4H2…(1)
CO+H2O→CO2+H2…(2)
2CO+O2→2CO2…(3)
【0022】
CO選択酸化器8を通過した改質ガスは、主に水素、炭酸ガス及び余った水蒸気等より構成される。CO選択酸化器8は、アノード極13と連通し、CO選択酸化器8から排出された改質ガスは、アノード極13に送り込まれる。
【0023】
アノード極13では、送り込まれた改質ガスに含まれる水素ガスが、プロトンH+と電子に分解する。その後、プロトンH+は、MEAの触媒層を経てカソード極14へと移動する。カソード極14では、カソード極用空気ブロア15により供給される空気中の酸素及び電子と結びついて水が生成される。
【0024】
したがって、アノード極13は−極、カソード極14は+極となり、電位を持って直流電圧を発電する。この電位間に電気負荷を持てば電源としての機能を持つことになる。発電に使われずに残ったアノード極出口ガスは、水蒸気発生器5及び改質器6の加熱用燃料ガスとして使われる。また、カソード極出口中の水蒸気及び燃焼排気ガス中の水蒸気は、排熱熱交換器A12aにより、水分を回収し、システムでの水自立を図る。
【0025】
一方、電池本体2の排熱は、電池冷却水ポンプ29の循環ラインに配置された排熱熱交換器B12bによって熱回収される。温水循環ポンプ33の運転により、排熱熱交換器12a及び12bで熱交換して暖められた温水は、貯湯槽36に蓄熱され給湯やお風呂の温水として使われる。貯湯槽36の熱が使われずに、タンク下部まで高温の温水が貯まった状態では、燃料電池システム16に戻る循環水温度が上昇するため、温水が使われるまでシステムの運転を停止するか、或いは放熱器37を通じて大気に放熱する。
【0026】
次に、起動時の運転方法を示す。運転起動の指令が始まると、燃焼空気切替弁25が開いた状態で燃焼用空気ブロア26が起動し、改質器6内の燃焼室を空気パージする。この場合、燃焼用空気は燃焼用空気ブロア26より、起動燃料の予混合空気としてだけでなく、拡散空気としても燃焼室内に供給される。
【0027】
空気パージが完了すると、起動燃料着火のための例えば点火プラグからの火花を燃焼室内で発生させる。メイン燃料遮断弁22を閉じ、脱気用遮断弁23を開いた状態で、燃料遮断弁20、起動用燃料遮断弁21を開くと、燃料遮断弁20及び起動用燃料遮断弁21を通過した起動用燃料は、燃料昇圧ブロア31で昇圧、燃焼室内で着火され火炎が形成される。
【0028】
燃焼室内で使用されるバーナは、起動用と発電用も兼ねた一体型バーナであり、メタン主体の起動燃料は発電時のオフガス燃料である水素主体の燃料より燃焼速度遅く、吹き消えし易いため、予混合燃焼させて燃焼性を向上させている。燃焼が継続し、燃焼ガスの加熱によって改質器6や、図示はしていないが電気ヒータ等で加熱されたCOシフト反応器7、CO選択酸化器8、水蒸気分離器9、他が所定の温度になると、改質水ポンプ11で水蒸気分離器9に供給された改質水はそこで蒸気となり、水蒸気流量調節弁27が開き、燃料改質ラインに供給された後、同時にメイン燃料遮断弁22が開いて供給される燃料3と共に、FPS1内に供給され改質反応が始まる。このタイミングで起動用燃料遮断弁21、脱気用遮断弁23及び燃焼空気切替弁25は閉じる。
【0029】
改質反応が始まった後、CO選択酸化用空気ブロア18の空気で酸化され、CO選択酸化器8出口から出た改質ガスは、主として水素、炭酸ガス、水蒸気等の成分からなり、電池本体2のアノード極13に供給される。アノード極13の出口から出るオフガスは、オフガス逆止弁24を通過後、改質用燃焼器10に供給される。
【0030】
改質用燃焼器10に供給されたオフガス燃料は着火して、メイン燃料用空気と安定した拡散燃焼を開始する。その後、カソード極用空気ブロア15から電池本体2のカソード極14に空気が供給され、インバータが起動すると燃料電池システム16の発電が開始する。発電に寄与しないまま残ったアノード極13の出口から出るオフガスは改質用燃焼器10に供給され続ける。
【0031】
[樹脂モジュールブロック40の構成]
図2、3は、本実施形態の燃料電池システム16に搭載されている樹脂モジュールブロック40を示す。
図2が樹脂モジュールブロック40の平面図(設置時の正面図)、
図3が正面図である。樹脂モジュールブロック40は、
図1における破線部の配管を樹脂で一体に成形したものである。また、
図1における燃料3の流れを示す矢印A〜Eが、
図2、3の矢印A〜Eと対応する。
【0032】
樹脂モジュールブロック40には、2つの配管が形成される。1つ目の配管は、
図1において、脱硫器4と燃料昇圧ブロア31間の配管(矢印Aから矢印B)である。脱硫器4から続く配管は、矢印Aの部分で樹脂モジュールブロック40と接続し、矢印Bの部分で燃料昇圧ブロア31の上流側の配管と接続する。また、2つ目の配管は、樹脂モジュールブロック40内部で2方向に分岐する。
図1において、燃料昇圧ブロア31と改質器6間の配管(矢印Cから矢印E)と、燃料昇圧ブロア31とCOシフト反応器7間の配管(矢印Cから矢印D)となる。
【0033】
樹脂モジュールブロック40は、内部の配管を形成する複数の部材が組み合わさることで形成される。樹脂モジュールブロック40は、樹脂モジュール40a、バイパス式流量計61a、バイパス式流量計搭載用子部品62、起動用燃料遮断弁21、及びメイン燃料遮断弁22とからなる。換言すれば、樹脂モジュール40aに、バイパス式流量計61a、バイパス式流量計搭載用子部品62、起動用燃料遮断弁21、及びメイン燃料遮断弁22を搭載したものが樹脂モジュールブロック40である。
【0034】
樹脂モジュールブロック40の矢印Aから矢印Bまでの配管には、バイパス式流量計61aが設置される。バイパス式流量計搭載用子部品62内の配管が、バイパス式流量計61aの主流路と、バイパス流路の一部となる配管となる。バイパス式流量計搭載用子部品62内の配管は、内部で分岐し、バイパス式流量計61aの主流路と、主流路から分岐するバイパス式流量計61aへの流入口と、主流路に流入するバイパス式流量計61aからの流出口となる。ここで、バイパス式流量計61aが設けられるモジュールを第1のモジュールとし、バイパス式流量計搭載用子部品62が設けられるモジュールを第2のモジュールとする。また、矢印Aから矢印Bまでの配管の樹脂モジュール40aにバッファタンク部51を設ける。
【0035】
それぞれ別体で形成される樹脂モジュール40aと、バイパス式流量計搭載用子部品62とは、溶接により接続される。一方、バイパス式流量計搭載用子部品62とバイパス式流量計61aとの固定は、ねじ止めとなる。バイパス式流量計搭載用子部品62とバイパス式流量計61aの接続部分には、環状パッキンが配置されシールされる。環状パッキンとは、所謂Oリングである。
【0036】
樹脂モジュールブロック40の矢印Cから矢印Dまでの配管には、メイン燃料遮断弁22が設置される。メイン燃料遮断弁22が矢印Cから矢印Dまでの配管の一部となる。樹脂モジュール40aに対するメイン燃料遮断弁22の固定は、ねじ止めとなる。接続部分には、環状パッキンが配置されシールされる。
【0037】
樹脂モジュールブロック40の矢印Cから矢印Eまでの配管には、起動用燃料遮断弁21が設置される。起動用燃料遮断弁21が矢印Cから矢印Eまでの配管の一部となる。樹脂モジュール40aに対する起動用燃料遮断弁21の固定は、ねじ止めとなる。接続部分には、環状パッキンが配置されシールされる。
【0038】
[樹脂モジュールブロック40の内の燃料の流れ]
以下では、本実施形態に係る燃料電池システム16において、樹脂モジュールブロック40を流れる燃料3の流れについて説明する。
【0039】
燃料遮断弁20が開き、脱硫器4を通過した燃料3は、燃料流量計入口接続部48から樹脂モジュールブロック40に供給される。燃料3はバイパス式流量計61aを通過後、樹脂配管部a50に入り、配管部分と比較して断面積を大きく構成したバッファタンク部51を経てバッファタンク出口接続部52から一旦樹脂モジュールブロック40の外部に出る。
【0040】
燃料3は、燃料昇圧ブロア31を介して、燃料遮断弁入口接続部53から再び樹脂モジュールブロック40に供給される。各燃料は樹脂配管部b54で分岐後、起動用燃料遮断弁21、メイン燃料遮断弁22に入り、各遮断弁の開閉制御により流れが決定され、起動時は起動用燃料遮断弁出口接続部55、定常時はメイン燃料遮断弁出口接続部56より樹脂モジュールブロック40外部の接続配管(図示せず)に導かれる。
【0041】
ここで、第1の実施例である燃料用のバイパス式流量計61aの樹脂モジュールブロック40への搭載方法、及び流量測定に関係する流路構造の詳細を説明する。
図4(a)に樹脂モジュールブロック40のバイパス式流量計搭載用子部品62に搭載したバイパス式流量計61aの平面図、
図4(b)に正面断面図(A−A部)、及び
図4(c)に側面図(B−B部)を示す。
【0042】
図4(a)に示したバイパス式流量計61aは、バイパス式流量計搭載用子部品62に2箇所のねじ部64によって固定され、2箇所のOリング63によってシールされている。バイパス式流量計61aは、システム稼働後の故障が考えられるため、メンテナンス性を考え、ねじ部64による固定としている。
【0043】
一方、バイパス式流量計搭載用子部品62は樹脂モジュールブロック40に、例えば振動溶着等で溶着、シールされている。バイパス式流量計61aは、
図4(b)、(c)に示すように矢印で流れの方向を記載した流体(ここでは燃料3)の一部がバイパス流路65にバイパスして、センサ部にてその流量を検知、主流路66の流量を算出可能となる。
【0044】
バイパス式流量計61aの特徴は、これらバイパス流路65と主流路66を流れる流体のバイパス流量比を適切に設定することであり、その設定は、主流路オリフィス部67、主流路66、バイパス流路65の各径や構造で主に決定される。
【0045】
[1−2.作用効果]
以上のように燃料電池システムは、燃料が流れる配管の一部を樹脂モジュールブロック内部に設ける。また、樹脂モジュールブロックに設けられた配管を主流路とするバイパス式流量計を備える。これにより、バイパス式流量計61aを小型化、軽量化することが可能となる。
【0046】
樹脂モジュールブロック内部にバイパス式流量計のバイパス流路の一部を設けても良い。これにより、バイパス流路の配管を樹脂モジュールブロックに別途接続する場合と比較して、バイパス流路の形成を容易にすることが可能となる。
【0047】
樹脂モジュールブロックは、複数のモジュールより成形しても良い。本実施形態では、樹脂モジュール40aにバイパス式流量計61a、バイパス式流量計搭載用子部品62、起動用燃料遮断弁21、及びメイン燃料遮断弁22を搭載する。これにより、配管部分をコンパクトすることが可能となり、燃料電池システムを小型、軽量で省スペースとすることができる。
【0048】
前記複数のモジュールは、バイパス式流量計61aを含む第1のモジュールと、バイパス式流量計搭載用子部品62となる第2のモジュールとしても良い。これにより、軽量で省スペースなバイパス式流量計を燃料電池システムに搭載することができる。
【0049】
バイパス式流量計搭載用子部品62は、樹脂モジュールブロックに溶着される。バイパス式流量計搭載用子部品62には、バイパス式流量計の主流路が形成される。予め、主流路をバイパス式流量計搭載用子部品62に形成しておき、そのバイパス式流量計搭載用子部品62を樹脂モジュールに接着することで、主流路の加工を容易に行うことができる。これにより、主流路の加工精度の向上が図れる。
【0050】
バイパス式流量計搭載用子部品62には、バイパス式流量計の主流路が設けられる。この主流路には、オリフィス部が設けられ、オリフィス部は、バイパス流路の流入口と、前記バイパス流路の流出口との間に配置される。これにより、バイパス流路65に流れる流量を少なくすることができる。つまり、バイパス式流量計61aの流量は、バイパス流路65と主流路66の圧力差を原理として算出されるため、主流路66側の流路抵抗を、バイパス流路65の流路抵抗に比べて小さくした。
【0051】
バイパス式流量計61aを十分に小型化、軽量化するため、バイパス流路65流量は、主流路66流量の10分の1以下が望ましい。バイパス式流量計61aの流量測定精度を担保するためにはバイパス流量比の管理が肝要であり、バイパス流量比を管理するためには、主流路オリフィス部67、主流路66、バイパス流路65の厳密な寸法管理が要求される。
【0052】
バイパス流量比を、(バイパス流路65流量)/(主流路66流量+バイパス流路65流量)とすると、バイパス流量比が小さいほど、より寸法精度が厳しくなり、これら重要寸法を、バイパス式流量計搭載用子部品62に集約、別モジュール化することで、樹脂モジュールブロック40全体と切り分けた寸法管理が可能となる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、小型化、軽量化することができる。
【0053】
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。