【解決手段】農業機械の操作支援システムは、農業機械を操作する作業者の生体情報を検出する生体検出装置と、農業機械の機械位置を検出する位置検出装置と、圃場に関する圃場情報を取得する圃場情報取得部と、生体検出装置で検出された生体情報、位置検出装置で検出された機械位置及び圃場情報に基づいて、農業機械を制御する制御装置と、を備えている。
前記制御装置は、前記機械位置と前記圃場情報とに基づいて前記圃場の境界と前記機械位置との距離差を演算する第1演算部と、前記生体情報と前記距離差とに基づいて前記農業機械を制御する第1制御部と、を備えている請求項1に記載の農業機械の操作支援システム。
前記第1制御部は、前記距離差が閾値以下で且つ、前記生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良であることを示している場合、前記農業機械を停止する請求項2に記載の農業機械の操作支援システム。
前記第1制御部は、前記距離差が閾値以下で且つ、前記生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良であることを示している場合、前記農業機械の操縦装置を制御する請求項2に記載の農業機械の操作支援システム。
前記制御装置は、前記機械位置と前記圃場情報とに基づいて前記走行予定ルートに対する前記農業機械の走行位置を演算する第2演算部と、前記生体情報と前記走行位置とに基づいて前記農業機械を制御する第2制御部とを備えている請求項5に記載の農業機械の操作支援システム。
前記第2制御部は、前記走行位置が少なくとも走行予定ルートの旋回位置を示し、且つ前記生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、前記農業機械を停止する請求項6に記載の農業機械の操作支援システム。
前記第2制御部は、前記走行位置が少なくとも走行予定ルートの旋回位置を示し、且つ前記生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、前記農業機械の操縦装置を制御する請求項6に記載の農業機械の操作支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における農業機械の操作支援システムを示している。農業機械の操作支援システムは、農業機械1の操作(操縦)を支援することが可能なシステムである。農業機械1は、トラクタ、コンバイン、田植機等である。
【0014】
まず、農業機械の1つであるトラクタを例に挙げ説明する。当然のごとく、農業機械1は、トラクタに限定されない。
図10に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する車両(車体)3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。走行装置7は、前輪及び後輪を有する装置である。走行装置7は、クローラ型の装置であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換を可能である。また、変速装置5は、原動機4からの動力を伝達可能な走行クラッチと、走行クラッチからの動力を伝達可能な走行駆動軸とを有している。走行クラッチは、原動機4からの動力を走行駆動軸に伝達する接続状態と、原動機4からの動力を走行駆動軸に伝達しない切断状態とに切り換え可能である。走行クラッチは、電磁弁からの圧油等によって接続状態と切断状態とに切り換わる油圧クラッチである。即ち、走行クラッチが油圧クラッチにより構成されている場合は、後述する制御装置20dから電磁弁に電流等の電気信号(制御信号)を出力して電磁弁を少なくとも2つの位置に切り換えることによって、当該走
行クラッチは、接続状態と切断状態とに切り換わる。走行クラッチは、電気信号によって接続状態と切断状態とに切り換わる電磁クラッチであってもよい。
【0015】
また、変速装置5は、原動機4からの動力が伝達可能なPTOクラッチと、PTOクラッチからの動力が伝達可能なPTO軸とを有している。PTOクラッチは、原動機4からの動力をPTO軸に伝達する接続状態と、原動機4からの動力をPTO軸に伝達しない切断状態とに切り換え可能である。走行クラッチは、電磁弁からの圧油等によって接続状態と切断状態とに切り換わる油圧クラッチである。即ち、PTOクラッチが油圧クラッチにより構成されている場合は、後述する制御装置20dから電磁弁に電流等の電気信号(制御信号)を出力して電磁弁を少なくとも2つの位置に切り換えることによって、当該PTOクラッチは、接続状態と切断状態とに切り換わる。PTOクラッチは、電気信号によって接続状態と切断状態とに切り換わる電磁クラッチであってもよい。
【0016】
また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置等である。なお、
図10では、作業装置2として耕耘装置を取り付けた例を示している。
【0017】
耕耘装置2は、連結部8に連結された機体2aと、機体2aの前部に設けられた駆動軸2bと、機体2aに回転自在に支持された回転軸2cと、回転軸2cに取付けられた作業具2dとを有している。駆動軸2bは、原動機4等の動力によって駆動するPTO軸に連結し且つPTO軸の動力が伝達される。回転軸2cは、駆動軸2bに伝達されたPTO軸からの動力によって回転する。作業具2dは、例えば、圃場を耕耘する耕耘爪である。即ち、耕耘装置2は、トラクタ1によって牽引されながら圃場を耕耘する。
【0018】
また、トラクタ1は、車体3に設けられた運転席10と、操縦装置11とを備えている。運転席10及び操縦装置11は、車体3に設けられたキャビン12内に配置されている。操縦装置11は、運転席10の周囲に設置された部位であって、運転席10に着座した作業者(オペレータ)がトラクタ1に装備された機械、装置、器具、部材等(例えば、作業装置2、車体3、原動機4、走行装置7、作業装置等)の操作に関係する装置、部材等が集まった部位を含む。操縦装置11は、少なくともステアリング等で構成された操舵装置を含む。
【0019】
図1に示すように、トラクタ1は、複数の機器20が搭載されている。複数の機器20は、CAN、LIN、FlexRayなどの車載ネットワークN1で接続されている。この機器20は、トラクタ1を構成する機器であって、例えば、状態検出装置20a、スイッチ装置20b、表示装置20c、制御装置20dを含んでいる。
状態検出装置20aは、トラクタ1の状態(機械状態)を検出する検出装置である。状態検出装置20aは、アクセルペダルセンサ、シフトレバー検出センサ、クランク位置センサ、燃料センサ、水温センサ、エンジン回転センサ、操舵角センサ、油温センサ、車軸回転センサ等である。スイッチ装置20bは、切換を行う装置であって、イグニッションスイッチ、駐車ブレーキスイッチ、PTOスイッチ等である。表示装置20cは、トラクタ1に関する様々な事項を表示する装置であって、液晶等で構成された液晶型表示装置である。
【0020】
制御装置20dは、第1制御装置20d1と、第2制御装置20d2とを含んでいる。第1制御装置20d1は、トラクタ1の全体を制御する装置である。第1制御装置20d1には、状態検出装置20aが検出した検出値[例えば、アクセルペダルセンサで検出されたアクセルペダルの操作量、シフトレバー検出センサで検出されたシフトレバーの操作時のシフトレバー位置(変速段)、エンジン回転センサで検出されたエンジン回転数、油温センサで検出された油温、クランク位置センサで検出されたクランク位置等]が入力される。第1制御装置20d1は、アクセルペダルの操作量に基づいてエンジンが所定の回転数になるように、第2制御装置20d2に制御指令を出力すると共に、シフトレバー位置に基づいて変速装置5を制御(変速制御)する。また、第1制御装置20d1は、操作部材からの入力に基づいて連結部8の昇降を制御する(昇降制御)。
【0021】
第2制御装置20d2は、主にエンジン4を制御する装置である。第2制御装置20d2は、アクセルペダルの操作量、クランク位置、カム位置等の入力に基づいて、インジェクタ、コモンレール、サプライポンプ等を制御する。なお、第2制御装置20d2におけるエンジン制御では、例えば、インジェクタの制御では燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が設定され、サプライポンプやコモンレールの制御では燃料噴射圧が設定される。
【0022】
トラクタ1は、通信装置21と、位置検出装置22と、生体検出装置23とを備えている。通信装置21、位置検出装置22及び生体検出装置23は、車載ネットワークN1に接続されている。
通信装置21は、トラクタ1のデータ(情報)を当該トラクタ1の外部に出力したり、外部のデータをトラクタ1に取り込む装置である。通信装置21は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)等により無線通信を行ったり、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等によって無線通信を行う装置である。通信装置21は、圃場情報取得部21aを有している。圃場情報取得部21aは、通信装置21に設けられた電気・電子部品、当該通信装置21等に組み込まれたプログラム等から構成されている。圃場情報取得部21aは、圃場に関する圃場情報を取得する。圃場情報を取得する場合、例えば、圃場情報取得部21aは、通信装置21にサーバ等の支援装置26に接続を要求し、当該通信装置21は支援装置26に保存されている圃場情報を当該支援装置26から無線等によって取得する。なお、この実施形態では、通信装置21に圃場情報取得部21aを設け、圃場情報取得部21aによって支援装置26に保存されている圃場情報を取得しているが、圃場情報取得部21aを第1制御装置20d1等の機器20に設けてもよい。例えば、第1制御装置20d1に接続可能な入力インターフェースを設け、圃場情報取得部21aは、入力インターフェースに記憶媒体が接続された場合に、当該記憶媒体に保存された圃場情報を、入力インターフェースを介して第1制御装置20d1に取り込んでもよい。圃場取得部21aによって取得した圃場情報は、トラクタ1に設けられた記憶装置27に記憶される。
【0023】
圃場情報とは、圃場を示すデータ(電子データ)であって、圃場を示す代表の位置(緯度、経度)、圃場の境界を示す位置(緯度、経度)等である。また、圃場情報は、圃場の画像データであってもよいし、圃場を示すその他のデータであってもよい。
位置検出装置22は、トラクタ1の位置を検出可能な検出装置であって、例えば、測位衛星25の衛星信号(電波)に基づいて位置(緯度、経度)を検出する装置である。即ち、位置検出装置22は、衛星測位システム(Global Positioning System,Galileo、GLONASSなど)に用いて車体3の位置を検出する。位置検出装置22は、例えば、キャビン12の天板に取り付けられている。位置検出装置22は、キャビン12以外に取り付けられていてもよく、例えば、作業装置2に設けられていてもよい。以下、説明の便宜上、位置検出装置22が検出した位置(緯度、経度)のことを「機械位置」という。位置検出装置22によって検出された機械位置は、記憶装置27に記憶される。
【0024】
生体検出装置23は、作業者の生体情報を検出する装置である。生体検出装置23は、例えば、作業者の心拍、呼吸、睡眠、体温、発汗、体動(体の動き)、筋電図(筋肉の動き)等の生体情報を計測するセンサ又は電極等である。また、生体検出装置23は、作業者に取付ける装着型の装置、又は、運転席10の周囲に設けられる非装着型の装置である。生体検出装置23が装着型の装置である場合、当該生体検出装置23で検出された生体情報は、当該生体検出装置23に格納された無線装置を介して通信装置21に送信される。また、生体検出装置23が非装着型の装置である場合、当該生体検出装置23は車載ネットワークN1に接続され、当該生体検出装置23で検出された生体情報は、車載ネットワークN1に送信される。なお、生体検出装置23は、運転席10に着座した作業者の様子を撮像するカメラ等の撮像装置であってもよい。生体検出装置23によって検出された生体情報は、記憶装置27に記憶される。
【0025】
以上のように、トラクタ1は、位置検出装置22と生体検出装置23とを備えているため、
図2に示すように、位置検出装置22で検出された機械位置と、生体検出装置23で検出された生体情報とを関連付けて取得することができる。したがって、トラクタ1の走行時等における作業者の生体情報を把握することができる。
さて、第1制御装置20d1は、圃場情報と、位置検出装置22で検出された機械位置と、生体検出装置23で検出された生体情報に基づいて、トラクタ1を制御する。具体的には、
図3に示すように、圃場情報で示される圃場F1の境界を「W1」、位置検出装置22で検出された機械位置を「Pn(n=1,2,3)」とした場合、第1制御装置20d1は、境界W1と機械位置Pnとの距離差Lnと、生体検出装置23で検出された生体情報とに基づいて、トラクタ1を制御する。なお、説明の便宜上、
図3では、作業者がトラクタ1を操作して走行する予定の走行予定ルートR1を破線で示している。
【0026】
次に、第1制御装置20d1について詳しく説明する。
第1制御装置20d1は、第1演算部31と、第1制御部32とを有している。第1演算部31及び第1制御部32は、第1制御装置20d1に設けられた電気・電子部品、当該第1制御装置20d1等に組み込まれたプログラム等から構成されている。第1演算部31は、機械位置Pnと圃場情報とに基づいて、圃場F1の境界W1と機械位置Pnとの距離差Lnを演算する。第1制御部32は、生体情報と距離差Lnとに基づいて農業機械を制御する。
【0027】
図4Aは、トラクタ1の操作支援を示すフローチャートを示す図である。
図4Aに示すように、トラクタ1の始動前(走行前)に圃場情報取得部21aによる圃場情報を取得する(S1)。トラクタ1の原動機4の始動後は、生体検出装置23によって生体情報が検出され(S2)、位置検出装置22によって機械位置Pnが検出される(S3)。
【0028】
また、トラクタ1の原動機4の始動後は、第1制御部32は、検出された生体情報に基づいて作業者が異常な状態(異常状態)であるか否かを判断する(S4)。例えば、第1制御部32は、生体情報に含まれる体動(体の動き)、筋電図(筋肉の動き)等から作業者が覚醒しているかを判断し、作業者が覚醒している場合は、作業者は異常状態ではないと判断する(S4、No)。また、第1制御部32は、心拍、呼吸、体温、発汗等から作業者が体調不良であるかを判断し、作業者が体調不良でない場合は、作業者は異常状態ではないと判断する(S4、No)。第1制御部32は、生体情報が、作業者が覚醒していないことを示している場合、又は、体調不良であることを示している場合、作業者は異常状態であると判断する(S4、Yes)。なお、生体情報に基づく作業者の覚醒及び作業者の体調不良の判断は、上述した例に限定されない。
【0029】
作業者が異常状態である場合(S4、Yes)、第1演算部31は、位置検出装置22で検出された機械位置Pnに基づいて、当該機械位置Pnと圃場情報に含まれる圃場F1の境界W1に距離差Lnを演算する(S5)。詳しくは、第1演算部31は、機械位置Pnを示す緯度及び経度と、圃場F1の境界W1を示す緯度及び経度から、機械位置Pnと境界W1との最短の直線距離である距離差Lnを求める。
【0030】
距離差Lnの演算後(S5後)、第1制御装置20d1の第1制御部32は、距離差Lnが閾値M1以下であるか否かを判断する(S6)。閾値M1は、トラクタ1が圃場F1の境界W1の近くに位置しているか否か、即ち、トラクタ1が圃場F1の畔に近くに位置しているか否かを判断する値であって、例えば、閾値M1は、トラクタ1の最大幅W2以下に設定されている。言い換えれば、閾値M1は、トラクタ1が圃場F1内において、最も圃場F1の畔に近い位置を走行しているか否かを判断する。例えば、
図3に示すように、機械位置P
3である場合、トラクタ1は、圃場F1の境界W1に近く、距離差L3は閾値M1以下となる。
【0031】
第1制御部32は、距離差Lnが閾値M1以下である場合(S6、Yes)、即ち、距離差Lnが閾値M1以下で且つ、生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良であることを示している場合、トラクタ1の走行を停止する(S7)。第1制御部32は、アクセルペダルの操作量、シフトレバー位置(変速段)によって走行が指令されている場合でも、アクセルペダルの操作量及びシフトレバー位置(変速段)を無視して、例えば、走行クラッチに電気信号(制御信号)を出力して当該走行クラッチを接続状態から切断状態に切り換えることで走行装置7を停止させる。或いは、第1制御部32は、ブレーキペダルが操作されていない場合でも制動装置を自動的に作動させ、走行装置7を停止させる。或いは、第1制御部32は、原動機4の駆動を自動的に停止させる。また、第1制御部32は、PTOクラッチに電気信号(制御信号)を出力して当該PTOクラッチを接続状態から切断状態に切り換えることで、耕耘装置(作業装置)2を自動的に停止する。
【0032】
図4Bは、トラクタの操作支援を示すフローチャートの第1変形例を示す図である。
図4Bに示したS1〜S6は、
図4Aと同様である。
図4Bに示すように、第1制御部32は、距離差Lnが閾値M1以下である場合(S6、Yes)、トラクタ1の操縦装置11を制御する(S8)。第1制御部32は、作業者が覚醒していない場合は、例えば、操縦装置11の1つである表示装置20cから自動的に音等を出力して、作業者に対して覚醒を促す。第1制御部32は、作業者が体調不良である場合には、操縦装置11の前照灯のスイッチ等を自動的に操作して、前照灯のスイッチによる前照灯の点灯により体調不良であることを、トラクタ1の周囲の作業者等に報知する。
【0033】
以上の農業機械の支援システムによれば、生体検出装置23で検出された生体情報、位置検出装置22で検出された機械位置及び圃場情報に基づいて、農業機械1を制御する制御装置20dを備えている。そのため、農作業時における作業者の状況を生体情報によって生体検出装置23によって把握することができると共に、作業者の状況に応じて農業機械1を制御しつつ農作業を行うことが可能となる。
【0034】
制御装置20dは、第1演算部31と、第1制御部32とを備えている。まず、第1演算部31によって、農業機械1と圃場の境界との距離差、即ち、農業機械1が圃場の畔からどの程度離れて走行しながら農作業を行っているかを把握することができる。そして、第1制御部32によって、農業機械1と圃場の畔との距離(距離差)と、作業者の状況とを見ながら、農業機械1を適正に制御することができる。
【0035】
例えば、第1制御部32は、距離差が閾値以下で且つ、生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良であることを示している場合、農業機械1を停止する。つまり、農業機械1が圃場の畔に近い位置にて走行又は作業をしている状況下において、作業者が覚醒しておらず眠い場合や体調不良である場合等には、農業機械1の走行や作業を自動的に停止することができる。
【0036】
また、第1制御部32は、距離差が閾値以下で且つ、生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良であることを示している場合、農業機械1の操縦装置を制御する。例えば、作業者が覚醒していない場合は、操縦装置を制御して音を発生させることにより、作業者に対して覚醒を促したり、操縦装置を制御して農業機械1の前照灯を点灯させることで周囲に作業者の異常を知らせたり、或いは、操縦装置を制御して農業機械を旋回させることにより、農業機械が圃場の畔際に近づくことを回避することができる。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態における農業機械の操作支援システムを示している。第2実施形態の農業機械の操作支援システムでは、第1実施形態で示した圃場位置に代えて、予め定められた走行予定ルートに基づいてトラクタ1を制御するシステムである。第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0037】
図5に示すように、第1制御装置20d1は、走行予定ルートを取得するルート取得部21bを有している。ルート取得部21bは、通信装置21に設けられた電気・電子部品、当該通信装置21等に組み込まれたプログラム等から構成されている。
図6は、トラクタの走行予定ルートR1の一例を示している。走行予定ルートR1について説明する。走行予定ルートR1の設定は、トラクタ1に搭載された表示装置20c、或いは、携帯端末等の支援装置26により行う。
【0038】
まず、走行予定ルートR1の設定を行うには、支援装置26の表示部に、トラクタ1で作業を行う圃場F1を表示する。支援装置26の表示部に表示された圃場F1に対して、トラクタ1の走行予定ルートR1を入力する。例えば、圃場F1において、トラクタ1の走行開始位置PS1、走行終了位置PE1、走行開始位置PS1から走行終了位置PE1に至るまでの走行予定ルートR1を支援装置26のインターフェース等を用いて設定する。
図6に示した走行予定ルートR1は、トラクタ1を直進させる直進部R2と、トラクタ1を旋回させる旋回部R3とを含んでいる。走行予定ルートR1の設定において、表示部に表示した圃場F1では、走行開始位置PS1、走行終了位置PE1、直進部R2及び旋回部R3は、位置(緯度、経度)と関連付けられており、少なくとも、走行開始位置PS1、走行終了位置PE1、直進部R2及び旋回部R3に対応する位置を、支援装置26の表示部で決定することで、走行予定ルートR1を設定することができる。走行開始位置PS1、走行終了位置PE1、直進部R2及び旋回部R3に対応する位置は、支援装置26に走行情報として記憶される。なお、走行予定ルートR1の設定において、ルートを所定の区間に区切り、各区間において、前進であるか後進であるかを割り当ててもよい。なお、
図6に示した走行予定ルートR1の設定は一例であり、当然の如く限定されない。
【0039】
ルート取得部21bは、通信装置21を通じて支援装置26に対して走行予定ルートR1、即ち、走行情報を要求する。支援装置26は、ルート取得部21bの要求に応じて、支援装置26に保存されている走行情報を当該支援装置26から無線等によって通信装置21に送信する。ルート取得部21bは、通信装置21が走行情報を受信した時点で当該走行情報を取得し、取得した走行情報を記憶装置27に記憶する。なお、この実施形態では、走行予定ルートR1を、通信装置21を介して取得しているが、表示装置20c等で走行予定ルートR1の設定を行った場合、当該表示装置20cに走行予定ルートR1を要求して取得してもよい。
【0040】
図5に示すように、第1制御装置20d1は、走行予定ルートR1と、位置検出装置22で検出された機械位置と、生体検出装置23で検出された生体情報に基づいて、トラクタ1を制御する。具体的には、第1制御装置20d1は、第2演算部35と、第2制御部36とを有している。第2演算部35及び第2制御部36は、第1制御装置20d1に設けられた電気・電子部品、当該第1制御装置20d1等に組み込まれたプログラム等から構成されている。
【0041】
第2演算部35は、機械位置Pnと走行予定ルートR1とに基づいて走行予定ルートR1に対するトラクタ1の走行位置を演算する。走行位置とは、走行予定ルートR1に対して現在のトラクタ1がルート上のどの位置に存在しているかを示す位置である。例えば、機械位置Pnが走行開始位置PS1と略同じである場合には、走行位置は走行開始位置PS1であり、機械位置Pnが走行終了位置PE1と略同じである場合には、走行位置は走行終了位置PE1である。また、機械位置Pnが走行予定ルートR1の直進部R2と略一致している場合には、走行位置は直進部R1であり、機械位置Pnが走行予定ルートR1の旋回部R3と略一致している場合は、走行位置は旋回部R3である。第2制御部35は、生体情報と走行位置とに基づいてトラクタを制御する。
【0042】
図7Aは、第2実施形態におけるトラクタの操作支援を示すフローチャートを示している。
図7Aに示すように、トラクタ1の始動前(走行前)にルート取得部21bによる走行予定ルートR1(走行情報)を取得する(S10)。トラクタ1の原動機4の始動後は、生体検出装置23によって生体情報が検出され(S11)、位置検出装置22によって機械位置Pnが検出される(S12)。
【0043】
また、トラクタ1の原動機4の始動後は、第2制御部36は、生体検出装置23で検出された生体情報に基づいて作業者が異常な状態(異常状態)であるか否かを判断する(S13)。ここで第2制御部36における異常状態の判断は、第1制御部31と同様であるため説明を省略する。
作業者が異常状態である場合(S13、Yes)、第2演算部35は、位置検出装置22で検出された機械位置Pn及び走行予定ルートR1に基づいて、走行予定ルートR1に対するトラクタ1の走行位置を演算する(S14)。例えば、第2演算部35は、現在の機械位置Pnと走行予定ルートR1とを比較して、走行予定ルートR1上の走行位置を割り出す。第2演算部35は、現在の機械位置Pnが走行予定ルートR1の直進部R2に対応する位置にある場合は、走行位置は直進位置であると判断する。また、第2演算部35は、現在の機械位置Pnが走行予定ルートR1の旋回部R3に対応する位置にある場合は、走行位置は旋回位置であると判断する。
【0044】
第2演算部35による走行位置の演算後(S14後)、第1制御装置20d1の第2制御部36は、現在の走行位置が旋回位置であるか否かを判断する(S15)。即ち、第2制御部36は、トラクタ1が旋回する場所に差し掛かっているか否かを判断する。
第2制御部36は、トラクタ1の走行位置が旋回位置である場合(S15、Yes)、即ち、走行位置が少なくとも走行予定ルートR1の旋回位置を示し、且つ生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、トラクタを停止する(S16)。即ち、第2制御部36は、第1制御部31と同様に、アクセルペダルの操作量、シフトレバー位置(変速段)によって走行が指令されている場合でも、アクセルペダルの操作量及びシフトレバー位置(変速段)を無視して、例えば、走行クラッチを接続状態から切断状態に切り換えることで走行装置7を停止させる。或いは、第2制御部36は、ブレーキペダルが操作されていない場合でも制動装置を自動的に作動させ、走行装置7を停止させる。或いは、第2制御部36は、原動機4の駆動を自動的に停止させる。また、第2制御部36は、例えば、PTOクラッチを接続状態から切断状態に切り換えることで、耕耘装置(作業装置)2を自動的に停止する。
【0045】
図7Bは、第2実施形態におけるトラクタの操作支援を示すフローチャートの変形例を示している。
図7Bに示したS10〜S15は、
図7Bと同様である。
図7Bに示すように、第2制御部36は、トラクタ1の走行位置が旋回位置である場合(S15、Yes)、トラクタ1の操縦装置11を制御する(S17)。第2制御部36は、作業者が覚醒していない場合は、例えば、表示装置20cから自動的に音等を出力して、作業者に対して覚醒を促す。第2制御部36は、作業者が体調不良である場合には、操縦装置11の前照灯のスイッチ等を自動的に操作して、前照灯のスイッチによる前照灯の点灯により体調不良であることを報知する。
【0046】
以上の農業機械1の支援システムによれば、生体検出装置23で検出された生体情報、位置検出装置22で検出された機械位置及び走行予定ルートR1に基づいて、農業機械を制御する制御装置20dを備えている。例えば、手動、自動を問わず、農業機械1の走行予定ルートR1が決められている場合は、走行予定ルートR1に対する機械位置(走行位置)と、作業者の状況(生体情報)によって、農業機械1を制御することができる。
【0047】
制御装置20dは、第2演算部35と、第2制御部36とを備えている。そのため、第2演算部35によって走行予定ルートR1に対する農業機械1の機械位置(走行位置)を把握することができる。そして、第2制御部36によって、走行予定ルートR1に対する走行位置と、作業者の状況とを見ながら、農業機械1を適正に制御することができる。
例えば、第2制御部36は、走行位置が少なくとも走行予定ルートR1の旋回位置を示し且つ生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、農業機械を停止する。つまり、農業機械1が走行予定ルートR1によって定められた旋回位置を走行する状況下において、作業者が覚醒しておらず眠い場合や体調不良である場合等には、農業機械1の走行や作業を自動的に停止することができる。
【0048】
第2制御部36は、走行位置が少なくとも走行予定ルートの旋回位置を示し、且つ生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、農業機械1の操縦装置を制御する。
例えば、農業機械1が走行予定ルートR1によって定められた旋回位置を走行する状況下において、作業者が覚醒していない場合は、操縦装置を制御して音を発生させることにより、作業者に対して覚醒を促したり、操縦装置を制御して農業機械1の前照灯を点灯させることで周囲に作業者の異常を知らせたり、或いは、操縦装置を制御して農業機械を旋回させることにより、農業機械が圃場の畔際に近づくことを回避することができる。
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態における農業機械の操作支援システムを示している。第3実施形態の農業機械の操作支援システムは、走行予定ルートに基づいてトラクタ1を自動的に走行するシステムである。第1実施形態又は第2実施形態と異なる構成について説明する。
【0049】
第1制御装置20d1は、第3制御部38を有している。第3制御部38は、第1制御装置20d1に設けられた電気・電子部品、当該第1制御装置20d1等に組み込まれたプログラム等から構成されている。第3制御部38は、走行予定ルートR1に基づいてトラクタ1の自動走行を制御する装置である。第3制御部38は、位置検出装置22で検出された様々な情報に基づいて、車体2の向きを変更可能な操舵装置等を制御し、自動走行を行う。
【0050】
第3制御部38は、トラクタ1の自動走行を行う際、走行情報で示された位置(目標位置)を参照し、位置検出装置22で検出された位置(検出位置)と、走行情報で示された位置(目標位置)とが一致するように、操舵装置を制御する。例えば、目標位置と検出位置とが一致している場合で、トラクタ1が走行予定ルートR1で示された直進部R2を走行している場合は、第3制御部38は、操舵装置による操舵角を零に維持する。また、目標位置と検出位置とが一致している場合で、トラクタ1が走行予定ルートR1で示された旋回部R3を走行している場合は、第3制御部38は、操舵装置による操舵角を旋回部R3で示された角度に一致させる。また、第3制御部38は、検出位置と、目標位置とに所定以上のズレがある場合には、両者を一致するように、第3制御部38は、操舵装置をズレが無くなる方に制御して、トラクタ1の走行位置を補正する。なお、第3制御部38は、走行予定ルートR1上において、前進、後進を行うことが示されている場合、第3制御部38は、変速装置4を制御して、トラクタ1の前進、又は、後進を切り換える。
【0051】
図9は、第3実施形態におけるトラクタの操作支援を示すフローチャートを示している。
図9においてトラクタ1の自動走行中は、生体情報及び機械位置情報を取得するものとして説明を進める。
図9に示すように、トラクタ1の自動走行前にルート取得部21bによる走行予定ルートR1(走行情報)を取得する(S20)。第3制御部38によるトラクタ1の自動走行が開始後(S21)、第3制御部38による自動走行の制御中に、第2制御部36は、生体検出装置23で検出された生体情報に基づいて作業者が異常な状態(異常状態)であるか否かを判断する(S22)。第2制御部36における異常状態の判断は、第1制御部31と同様である。
【0052】
第2演算部35は、作業者が異常状態である場合(S22、Yes)、位置検出装置22で検出された機械位置Pn及び走行予定ルートR1に基づいて、走行予定ルートR1に対するトラクタ1の走行位置を演算する(S23)。第2演算部35による走行位置の演算後(S23後)、第2制御部36は、現在の走行位置が旋回位置であるか否かを判断する(S24)。第2制御部36は、トラクタ1の走行位置が旋回位置である場合(S24、Yes)、即ち、走行位置が少なくとも走行予定ルートR1の旋回位置を示し、且つ生体情報が、作業者が覚醒していないこと又は体調不良である場合、トラクタを停止する(S25)。例えば、第2制御部36は、第3制御部38による走行よりも優先してトラクタ1を停止する。第2制御部36は、第3制御部38による自動走行の制御を停止すると共に、第1制御部31と同様に走行装置7の停止、又は、作業装置2の停止を実行する。
【0053】
制御装置20dは、走行予定ルートR1に基づいて農業機械1の走行を制御する第3制御部38を有し、第2制御部36は、第3制御部38による走行よりも優先して農業機械1を停止する。そのため、第3制御部38による自動走行の制御よりも、第2制御部36の制御が優先される。このため、農業機械1が自動走行中であっても、作業者の異常を検出した場合には、農業機械1を停止させることができる。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。