【解決手段】溶接電源装置A1において、インバータ回路7の出力電流の極性が切り換わるときに、溶接負荷への出力に再点弧電圧を重畳する電圧重畳回路6を備えた。電圧重畳回路6は、再点弧電圧を充電される再点弧コンデンサ62と、再点弧コンデンサ62に再点弧電圧を充電する充電回路63と、再点弧コンデンサ62に充電された再点弧電圧を放電する放電回路64とを備えている。再点弧電圧の目標電圧は可変であり、充電回路63は、再点弧電圧が目標電圧になるまで充電を行う。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1〜
図3は、第1実施形態に係る溶接電源装置を説明するための図である。
図1は、溶接電源装置A1を示すブロック図であり、溶接システムの全体構成を示している。
図2は、溶接電源装置A1の充電回路63および放電回路64の一例を示す回路図である。
図3は、溶接電源装置A1の各信号の波形を示すタイムチャートである。
図1に示すように、溶接システムは、溶接電源装置A1および溶接トーチBを備えている。当該溶接システムは、交流アーク溶接を行う、例えばTIG溶接システムである。溶接電源装置A1は、商用電源Dから入力される交流電力を変換して、出力端子a,bから出力する。一方の出力端子aは、ケーブルによって被加工物Wに接続されている。他方の出力端子bは、ケーブルによって溶接トーチBの電極に接続されている。溶接電源装置A1は、溶接トーチBの電極の先端と被加工物Wとの間にアークを発生させて、電力を供給する。当該アークの熱によって、溶接が行われる。溶接トーチB、被加工物Wおよび発生したアークを合わせたものが、溶接電源装置A1の負荷なので、これらを合わせたものを示す場合は、「溶接負荷」と記載する。
【0019】
溶接電源装置A1は、整流平滑回路1、インバータ回路2、トランス3、整流回路4、直流リアクトル5、電圧重畳回路6、インバータ回路7、制御回路8、電流センサ91、および電圧センサ92を備えている。
【0020】
整流平滑回路1は、商用電源Dから入力される交流電力を直流電力に変換して出力する。整流平滑回路1は、交流電流を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。
【0021】
インバータ回路2は、例えば、単相フルブリッジ型のPWM制御インバータであり、4つのスイッチング素子を備えている。インバータ回路2は、制御回路8から入力される駆動信号によってスイッチング素子をスイッチングさせることで、整流平滑回路1から入力される直流電力を高周波電力に変換して出力する。なお、インバータ回路2は直流電力を交流電力に変換するものであればよく、例えばハーフブリッジ型であってもよいし、その他の構成のインバータ回路であってもよい。
【0022】
トランス3は、インバータ回路2が出力する高周波電圧を変圧して、整流回路4に出力する。トランス3は、一次側巻線および二次側巻線を備えている。一次側巻線の各入力端子は、インバータ回路2の各出力端子にそれぞれ接続されている。二次側巻線の各出力端子は、整流回路4の各入力端子にそれぞれ接続されている。インバータ回路2の出力電圧は、一次側巻線と二次側巻線の巻き数比に応じて変圧されて、整流回路4に入力される。二次側巻線は一次側巻線に対して絶縁されているので、商用電源Dから入力される電流が二次側の回路に流れることを防止することができる。
【0023】
整流回路4は、例えば全波整流回路であり、トランス3より入力される高周波電力を整流して、インバータ回路7に出力する。なお、整流回路4は、高周波電力を整流するものであればよく、例えば半波整流回路であってもよい。直流リアクトル5は、整流回路4がインバータ回路7に出力する直流電流を平滑化する。
【0024】
インバータ回路7は、例えば、単相フルブリッジ型のPWM制御インバータであり、4つのスイッチング素子を備えている。インバータ回路7は、制御回路8から入力されるスイッチング駆動信号によってスイッチング素子をスイッチングさせることで、整流回路4から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。なお、インバータ回路7は直流電力を交流電力に変換するものであればよく、例えばハーフブリッジ型であってもよいし、その他の構成のインバータ回路であってもよい。インバータ回路7が本発明の「インバータ回路」に相当する。
【0025】
電圧重畳回路6は、整流回路4とインバータ回路7との間に配置されており、インバータ回路7の出力電流の極性が切り換わるときに、溶接電源装置A1の出力端子a,b間に高電圧を重畳する。当該高電圧は、極性切り換え時の再点弧性を向上させるためのものであり、以下では「再点弧電圧」と記載する場合がある。電圧重畳回路6は、ダイオード61、再点弧コンデンサ62、充電回路63および放電回路64を備えている。
【0026】
再点弧コンデンサ62は、所定の静電容量以上のコンデンサであり、溶接電源装置A1の出力に重畳するための再点弧電圧を充電される。再点弧コンデンサ62は、整流回路4に対して並列に接続されている。再点弧コンデンサ62は、充電回路63によって充電され、放電回路64によって放電される。
【0027】
充電回路63は、再点弧コンデンサ62に再点弧電圧を充電するための回路であり、再点弧コンデンサ62に並列に接続されている。
図2(a)は、充電回路63の一例を示す図である。
図2(a)に示すように、本実施形態では、充電回路63は、絶縁型フォワードコンバータを備えている。また、充電回路63は、絶縁型フォワードコンバータを駆動するための駆動回路63aを備えている。駆動回路63aは、後述する充電制御部86から入力される充電回路駆動信号に基づいて、スイッチング素子63bを駆動させるためのパルス信号を出力する。駆動回路63aは、充電回路駆動信号がオン(例えばハイレベル信号)の間、所定のパルス信号をスイッチング素子63bに出力する。これにより、再点弧コンデンサ62が充電される。一方、駆動回路63aは、充電回路駆動信号がオフ(例えばローレベル信号)の間、パルス信号の出力を行わない。よって、再点弧コンデンサ62の充電は停止される。すなわち、充電回路63は、充電回路駆動信号に基づいて、再点弧コンデンサ62を充電する状態と充電しない状態とで切り替える。なお、駆動回路63aを設けずに、充電制御部86が充電回路駆動信号としてパルス信号をスイッチング素子63bに直接入力するようにしてもよい。また、充電回路63の構成は限定されない。充電回路63は、絶縁型フォワードコンバータに代えて、昇圧チョッパ回路などを備えるようにしてもよい。
【0028】
放電回路64は、再点弧コンデンサ62に充電された再点弧電圧を放電するものであり、再点弧コンデンサ62に直列に接続されている。
図2(b)は、放電回路64の一例を示す図である。
図2(b)に示すように、放電回路64は、スイッチング素子64aおよび限流抵抗64bを備えている。本実施形態では、スイッチング素子64aは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)である。なお、スイッチング素子64aは、バイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などであってもよい。スイッチング素子64aと限流抵抗64bとは直列接続されて、再点弧コンデンサ62に直列接続されている。スイッチング素子64aのエミッタ端子は整流回路4の正極側の端子に接続され、スイッチング素子64aのコレクタ端子は限流抵抗64bの一方の端子に接続されている。なお、限流抵抗64bをスイッチング素子64aのエミッタ端子側に接続するようにしてもよい。また、スイッチング素子64aのゲート端子には、後述する放電制御部85から、放電回路駆動信号が入力される。スイッチング素子64aは、放電回路駆動信号がオン(例えばハイレベル信号)の間オン状態になる。これにより、再点弧コンデンサ62に充電された再点弧電圧は放電され、限流抵抗64bを介して、整流回路4の出力電圧に重畳される。一方、スイッチング素子64aは、放電回路駆動信号がオフ(例えばローレベル信号)の間オフ状態になる。これにより、再点弧電圧の放電は停止される。すなわち、放電回路64は、放電回路駆動信号に基づいて、再点弧コンデンサ62を放電する状態と放電しない状態とで切り換える。なお、放電回路64の構成は限定されない。
【0029】
ダイオード61は、放電回路64に並列接続されており、アノード端子がインバータ回路7の入力の正極側の端子に接続され、カソード端子が再点弧コンデンサ62に接続されている。ダイオード61は、インバータ回路7の入力電圧の過渡電圧を、再点弧コンデンサ62に吸収させる。
【0030】
電流センサ91は、溶接電源装置A1の出力電流を検出するものであり、本実施形態では、インバータ回路7の一方の出力端子と出力端子aとを接続する接続線に配置されている。電流センサ91は、出力電流の瞬時値を検出して制御回路8に入力する。本実施形態では、電流がインバータ回路7から出力端子aに向かって流れる場合を正としており、電流が出力端子aからインバータ回路7に向かって流れる場合を負としている。なお、電流センサ91の配置位置は限定されない。
【0031】
電圧センサ92は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧を検出するものである。電圧センサ92は、端子間電圧の瞬時値を検出して制御回路8に入力する。
【0032】
制御回路8は、溶接電源装置A1を制御するための回路であり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路8は、電流センサ91から出力電流の瞬時値を入力され、電圧センサ92から再点弧コンデンサ62の端子間電圧の瞬時値を入力される。そして、制御回路8は、インバータ回路2、インバータ回路7、充電回路63および放電回路64に、それぞれ駆動信号を出力する。制御回路8は、電流制御部81、目標電流設定部82、極性切換制御部83、波形目標設定部84、放電制御部85、充電制御部86、および目標電圧設定部87を備えている。
【0033】
電流制御部81は、インバータ回路2を制御する。電流制御部81は、電流センサ91から入力される出力電流の瞬時値から実効値を算出し、当該実効値と目標電流設定部82から入力される目標電流(実効値)とに基づいて、インバータ回路2のスイッチング素子を制御するための駆動信号を生成して、インバータ回路2に出力する。
【0034】
極性切換制御部83は、インバータ回路7を制御する。極性切換制御部83は、電流センサ91から入力される出力電流の瞬時値と波形目標設定部84から入力される電流波形目標値とに基づいて、インバータ回路7のスイッチング素子を制御するためのスイッチング駆動信号を生成して、インバータ回路7に出力する。
【0035】
放電制御部85は、放電回路64を制御する。放電制御部85は、極性切換制御部83から入力されるスイッチング駆動信号に基づいて、放電回路64を制御するための放電回路駆動信号を生成して、放電回路64に出力する。放電回路駆動信号は、充電制御部86にも入力される。
【0036】
図3に示すように、溶接電源装置A1の出力電流(
図3(b)参照)は、スイッチング駆動信号(
図3(a)参照)に応じて変化する。
図3(a)に示すスイッチング駆動信号は、オンのときに出力端子a(被加工物W)を正、出力端子b(溶接トーチB)を負とし、オフのときに出力端子a(被加工物W)を負、出力端子b(溶接トーチB)を正とする。溶接電源装置A1の出力電流は、スイッチング駆動信号がオンからオフに切り換わった時(
図3における時刻t1)から減少し、ゼロを過ぎて(
図3における時刻t2)極性が変わった後に最小電流値になる(
図3における時刻t3)。また、溶接電源装置A1の出力電流は、スイッチング駆動信号がオフからオンに切り換わった時(
図3における時刻t5)から増加し、ゼロを過ぎて(
図3における時刻t6)極性が変わった後に最大電流値になる(
図3における時刻t7)。放電制御部85は、溶接電源装置A1の出力電流の極性が変わるときにオンとなるように、放電回路駆動信号を生成する。具体的には、放電制御部85は、スイッチング駆動信号が切り換わったとき(
図3における時刻t1、t5)にオンに切り換わり、オンに切り換わった後、放電時間が経過したときにオフに切り換わるパルス信号を生成し、放電回路駆動信号として出力する(
図3(c)参照)。放電時間は、放電状態を継続する時間であり、出力電流の極性が変わるまでの時間より長い所定時間が設定されている。本実施形態では、所定時間を、出力電流の瞬時値が最大電流値または最小電流値になるまでの時間で設定しているので、
図3(c)に示す放電回路駆動信号は、時刻t3、t7でオフに切り換わっている。実際には、出力電流の瞬時値が最大電流値または最小電流値になるタイミングと、放電回路駆動信号がオフに切り換わるタイミングとが一致するとは限らない。
【0037】
なお、放電制御部85が放電回路駆動信号を生成する方法は、これに限定されない。溶接電源装置A1の出力電流の極性が変わるときに再点弧電圧を重畳できればよいので、放電回路駆動信号は、極性が変わる前にオンになり、極性が変わった後にオフになればよい。例えば、電流センサ91から出力電流の瞬時値を入力され、出力電流の瞬時値がゼロになって所定の時間が経過したときに、放電回路駆動信号をオフに切り換えるようにしてもよい。また、出力電流の瞬時値が最大電流値または最小電流値になったときに切り換えるようにしてもよい。なお、実際には、電流センサ91から入力される電流瞬時値は微小変動するので、電流瞬時値が所定の第1閾値以上になった場合に最大電流値になったと判断し、電流瞬時値が所定の第2閾値以下になった場合に最小電流値になったと判断すればよい。また、放電制御部85が、極性切換制御部83からスイッチング駆動信号を入力される代わりに、波形目標設定部84から電流波形目標値を入力され、電流波形目標値が切り換わったときに、放電回路駆動信号をオンに切り換えるようにしてもよい。この場合も、放電回路駆動信号の波形は、スイッチング駆動信号に基づいて切り換える場合と同様となる。また、出力電流の瞬時値が最大電流値から低下したとき、または、最小電流値から上昇したときに、放電回路駆動信号をオンに切り換えるようにしてもよい。この場合も、放電回路駆動信号の波形は、スイッチング駆動信号に基づいて切り換える場合と同様となる。また、最大電流値より小さくゼロより大きい第1閾値と、最小電流値より大きくゼロより小さい第2閾値とを設定し、放電回路駆動信号を、出力電流の瞬時値が第1閾値と第2閾値との間の範囲に入ったときにオンに切り換え、当該範囲から外れたときにオフに切り換えるようにしてもよい。この場合でも、放電回路駆動信号は、極性が変わる前にオンになり、極性が変わった後にオフになる。
【0038】
目標電圧設定部87は、再点弧コンデンサに充電する再点弧電圧の目標電圧を充電制御部86に設定するものである。目標電圧設定部87は、目標電流設定部82より入力される目標電流(インバータ回路2の出力電流の制御目標である電流実効値)に応じて、目標電圧を設定する。目標電圧設定部87は、目標電流と目標電圧との対応関係をテーブルとして記憶しており、入力された目標電流に対応する目標電圧を設定する。目標電圧設定部87は、例えば、目標電流が200Aの場合には目標電圧を300Vに設定し、目標電流が50Aの場合には目標電圧を350Vに設定する。なお、これらの値は一例であって、限定されるものではない。一般的に、目標電流が小さくなると出力電流が小さくなるので、極性が変わるときに同じ再点弧電圧を重畳しても、アーク切れが起こる可能性が高い。したがって、目標電流が小さくなるほど、再点弧電圧の目標電圧が高くなるように設定する。目標電圧は、入力され得る目標電流毎に対応付けられていてもよいし、所定の範囲の目標電流毎に対応付けられていてもよい。また、本実施形態では、テーブルに記憶した対応関係に基づいて目標電圧を設定しているが、これに限られない。例えば、演算式を設定しておいて、入力された目標電流から目標電圧を演算して設定するようにしてもよい。例えば、上記例に合う演算式を線形的な簡易な演算式であらわすと、入力される目標電流をI
0とすると、目標電圧はV
0=(−1/3)I
0+1100/3で表すことができる。
【0039】
充電制御部86は、充電回路63を制御する。充電制御部86は、放電制御部85から入力される放電回路駆動信号と、電圧センサ92から入力される再点弧コンデンサ62の端子間電圧の瞬時値と、目標電圧設定部87から入力される目標電圧とに基づいて、充電回路63を制御するための充電回路駆動信号を生成して、充電回路63に出力する。
【0040】
図3に示すように、再点弧コンデンサ62の端子間電圧(
図3(e)参照)は、放電回路駆動信号(
図3(c)参照)がオンになって(
図3における時刻t1)、出力電流(
図3(b)参照)の極性が変わったとき(
図3における時刻t2)に、再点弧コンデンサ62の放電により低下する。次の放電のタイミング(
図3における時刻t6)までに、再点弧コンデンサ62に再点弧電圧を充電する必要がある。また、再点弧コンデンサ62が目標電圧まで充電された場合は、それ以上の充電を行う必要がない。充電制御部86は、再点弧コンデンサ62の放電後から、再点弧コンデンサ62が目標電圧になるまでオンとなるように、充電回路駆動信号を生成する。具体的には、充電制御部86は、放電制御部85より入力される放電駆動信号がオンからオフに切り換わったとき(
図3における時刻t3、t7)にオンに切り換わり、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が目標電圧になったとき(
図3における時刻t4、t8)にオフに切り換わるパルス信号を生成し、充電回路駆動信号として出力する(
図3(d)参照)。
【0041】
また、本実施形態では、目標電圧が可変になっており、目標電圧設定部87によって設定される。
図3においては、目標電流が200Aに設定されている期間では目標電圧として300Vが設定されており、目標電流が50Aに設定されている期間では目標電圧として350Vが設定されている場合を示している。目標電流が200Aに設定されている期間では、充電回路駆動信号がオンになって(
図3における時刻t3)、再点弧コンデンサ62の充電が開始され、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が目標電圧である300Vになったとき(時刻t4)に、充電回路駆動信号がオフになって、充電が停止される。また、目標電流が50Aに設定されている期間では、充電回路駆動信号がオンになって(
図3における時刻t13)、再点弧コンデンサ62の充電が開始され、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が目標電圧である350Vになったとき(時刻t14)に、充電回路駆動信号がオフになって、充電が停止される。このように、充電制御部86は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が目標電圧設定部87によって設定される目標電圧になるまで充電を行うように、充電回路63を制御する。
【0042】
次に、充電回路駆動信号の生成処理の処理手順について、
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0043】
図4は、充電制御部86が行う、充電回路駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。当該処理は、溶接のためにインバータ回路7が起動したときに開始され、インバータ回路7が停止したときに終了される。
【0044】
まず、再点弧電圧の目標電圧Vrefが、設定される(S1)。具体的には、目標電圧設定部87が、インバータ回路2の出力電流の目標電流に基づいて決定した目標電圧Vrefを、充電制御部86に入力する。次に、充電回路駆動信号のオフ信号(ローレベル信号)が生成されて、充電回路63に出力される(S2)。そして、放電回路駆動信号の立下りが検出されたか否かが判別される(S3)。具体的には、放電制御部85より入力される放電回路駆動信号がオンからオフに切り換わったか否かが判別される。立下りが検出された場合(S3:YES)、ステップS4に進む。検出されない場合(S3:NO)、ステップS2に戻る。つまり、立下りが検出されるまで、ステップS2が行われて、オフ信号である充電回路駆動信号が生成されて出力される。
【0045】
次に、充電回路駆動信号のオン信号(ハイレベル信号)が生成されて、充電回路63に出力される(S4)。そして、再点弧コンデンサ62の端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さいか否かが判別される(S5)。具体的には、電圧センサ92より入力される端子間電圧Vcと、設定された目標電圧Vrefとを比較し、端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さいか否かが判別される。端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さい場合(S5:YES)、ステップS4に戻る。つまり、端子間電圧Vcが目標電圧Vrefに達するまで、ステップS4が行われて、オン信号である充電回路駆動信号が生成されて出力される。端子間電圧Vcが目標電圧Vref以上になった場合(S5:NO)、ステップS1に戻る。以上により、1周期分の充電回路駆動信号が生成される。そして、目標電圧Vrefが再設定されて、次の1周期分の充電回路駆動信号が生成される。
【0046】
なお、
図4のフローチャートに示す充電回路駆動信号の生成処理は一例であって、上述したものに限定されない。
【0047】
次に、本実施形態に係る溶接電源装置A1の作用および効果について説明する。
【0048】
本実施形態によると、目標電圧設定部87は、目標電流設定部82より入力される目標電流(インバータ回路2の出力電流の制御目標である電流実効値)に対応する目標電圧を、充電制御部86に設定する。充電制御部86は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が目標電圧設定部87によって設定された目標電圧になるまで充電を行うように、充電回路63を制御して充電させる。目標電流が小さくなるほど目標電圧が高くなるように設定しているので、目標電流が小さくて出力電流が小さくなっている場合に、より高い再点弧電圧を充電して放電することができる。これにより、アーク切れの発生をより抑制することができる。
【0049】
本実施形態によると、放電回路64は、放電制御部85より入力される放電回路駆動信号に基づいて、放電を制御する。放電回路駆動信号(
図3(c)参照)は、スイッチング駆動信号(
図3(a)参照)が切り換わったときにオンに切り換わり、オンに切り換わった後、出力電流の極性が変わるまでの時間より長い放電時間が経過したときにオフに切り換わる。したがって、溶接電源装置A1の出力電流の極性が変わるときには、放電回路駆動信号は必ずオンとなっているので、放電回路64は再点弧電圧を適切に重畳することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、出力電流の波形が略矩形波である場合(
図3(b)参照)について説明したが、これに限られない。出力電流の波形が正弦波であってもよい。波形目標設定部84が電流波形目標値として正弦波信号を出力し、極性切換制御部83が電流センサ91から入力される出力電流の瞬時値と波形目標設定部84から入力される電流波形目標値とに基づいてスイッチング駆動信号を生成するようにすれば、出力電流の波形を正弦波とすることができる。出力電流の波形を正弦波とすると、発生するアークが幅広になるので、溶接痕を幅広のものとすることができる。また、溶接電源装置A1からの発生音を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、溶接電源装置A1の出力電流の極性が変わるときに再点弧電圧を重畳する場合について説明したが、これに限られない。一般的に、出力端子a(被加工物W)が正で出力端子b(溶接トーチB)が負である正極性から、出力端子a(被加工物W)が負で出力端子b(溶接トーチB)が正である逆極性に切り換わるときに、アーク切れが発生しやすいことが知られている。したがって、正極性から逆極性に切り換わるときにのみ再点弧電圧を重畳させ、逆極性から正極性に切り換わるときには再点弧電圧を重畳させないようにしてもよい。この場合の変形例について、
図5を参照して説明する。なお、当該変形例においては、放電制御部85による放電回路駆動信号の生成方法が変わるだけである。
【0052】
図5は、変形例における、各信号の波形を示すタイムチャートである。
図5(a)は、極性切換制御部83が生成するスイッチング駆動信号を示しており、
図3(a)に示すものと同じである。
図5(b)は、溶接電源装置A1の出力電流を示しており、
図3(b)に示すものと同じである。
図5(c)は、放電制御部85が生成する放電回路駆動信号を示している。
図5(d)は、充電制御部86が生成する充電回路駆動信号を示している。
図5(e)は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧を示している。
【0053】
変形例に係る放電制御部85は、溶接電源装置A1の出力電流の極性が、正極性から逆極性に変わるときにオンとなるように、放電回路駆動信号を生成する。具体的には、放電制御部85は、スイッチング駆動信号(
図5(a)参照)がオンからオフに切り換わったとき(
図5における時刻t1、t11)にオンに切り換わり、オンに切り換わった後、放電時間が経過したとき(
図5における時刻t3、t13)にオフに切り換わるパルス信号を生成し、放電回路駆動信号として出力する(
図5(c)参照)。放電制御部85は、スイッチング駆動信号がオフからオンに切り換わったとき(
図5における時刻t5、t15)、および、オフに切り換わった後、放電時間が経過したとき(
図5における時刻t7、t17)には、放電回路駆動信号の切り換えを行わない。
【0054】
放電制御部85が生成する放電回路駆動信号(
図5(c)参照)が
図3(c)に示す放電駆動信号と異なるので、充電制御部86が生成する充電回路駆動信号(
図5(d)参照)、および、再点弧コンデンサ62の端子間電圧(
図5(e)参照)は、それぞれ、
図3(d)および
図3(e)に示すものと異なる波形になっている。
【0055】
当該変形例においては、よりアーク切れが発生しやすい、正極性から逆極性に切り換わるときに再点弧電圧を重畳するので、アーク切れの発生を抑制することができる。また、比較的にアーク切れが発生しにくい、逆極性から正極性に切り換わるときには再点弧電圧を重畳させないので、逆極性から正極性に切り換わるときにも再点弧電圧を重畳する場合と比べて、限流抵抗64bでの損失を低減することができる。また、再点弧電圧を放電してから次に放電するまでの時間が長くなるので、極性切換周波数がより高くなった場合でも対応することができる。例えば、
図5に示す場合の極性切換周波数が二倍の周波数になったとしても、放電までに目標電圧まで充電を行うことができる。
【0056】
また、逆極性から正極性に切り換わるときには、正極性から逆極性に切り換わるときよりも低い再点弧電圧を重畳させるようにしてもよい。すなわち、目標電圧設定部87が、目標電流設定部82より入力される目標電流に応じて、正極性から逆極性に切り換わるときの第1目標電圧と、逆極性から正極性に切り換わるときの第2目標電圧(<第1目標電圧)とを設定するようにしてもよい。そして、充電制御部86は、正極性から逆極性に切り換わるときに放電するための再点弧電圧を、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が第1目標電圧になるまで充電し、逆極性から正極性に切り換わるときに放電するための再点弧電圧を、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が第2目標電圧になるまで充電するように、充電回路63を制御する。この場合でも、限流抵抗64bでの損失を低減することができる。なお、目標電圧設定部87を設けずに、正極性から逆極性に切り換わるときの第1目標電圧と、逆極性から正極性に切り換わるときの第2目標電圧(<第1目標電圧)とを固定値として設定していてもよい。
【0057】
上記変形例のように正極性から逆極性に切り換わるときにのみ再点弧電圧を重畳する場合は、電圧重畳回路6をインバータ回路7の出力側に配置するようにしてもよい。この場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0058】
図6は、第2実施形態に係る溶接電源装置A2を示すブロック図であり、溶接システムの全体構成を示している。
図6において、第1実施形態に係る溶接システム(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。なお、
図6においては、制御回路8を簡略化して記載している。
図6に示すように、溶接電源装置A2は、電圧重畳回路6をインバータ回路7の出力側に配置している点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
【0059】
溶接電源装置A2において、電圧重畳回路6は、インバータ回路7の出力側に配置されており、出力端子b(溶接トーチB)の電位を高くするように、出力端子a,b間に再点弧電圧を重畳する構成になっている。放電回路64は、スイッチング駆動信号(
図5(a)参照)がオンからオフに切り換わったとき(
図5における時刻t1)に導通しており、出力電流(
図5(b)参照)の極性が変わったとき(
図5における時刻t2)に、再点弧コンデンサ62が放電し、再点弧電圧が出力端子a,b間に重畳される。
【0060】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
図7(a)は、第3実施形態に係る溶接電源装置A3を示す図であり、制御回路8を示すブロック図である。
図7(a)において、第1実施形態に係る制御回路8(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。なお、
図7(a)においては、制御回路8以外の構成の記載を省略している(
図7(b)および
図8(a)も同様)。
図7(a)に示すように、溶接電源装置A3は、目標電圧設定部87が、出力電流の目標電流ではなく、出力電流に応じて目標電圧を設定する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
【0062】
第3実施形態に係る目標電圧設定部87は、電流センサ91が検出した出力電流の瞬時値を入力されて、実効値を算出する。そして当該実効値に応じて、目標電圧を設定する。目標電圧設定部87は、出力電流の実効値が小さくなるほど目標電圧が高くなるように設定された対応関係のテーブルを記憶しており、算出された出力電流の実効値に対応する目標電圧を設定する。
【0063】
第3実施形態によると、目標電圧設定部87は、実際の出力電流の実効値に対応する目標電圧を、充電制御部86に設定する。出力電流が小さくなるほど目標電圧が高くなるように設定しているので、出力電流が小さくなっている場合に、より高い再点弧電圧を充電して放電することができる。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
図7(b)は、第4実施形態に係る溶接電源装置A4を示す図であり、制御回路8を示すブロック図である。
図7(b)において、第1実施形態に係る制御回路8(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図7(b)に示すように、溶接電源装置A4は、放電時間設定部88を備えており、目標電流に応じて放電時間を変更する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。第1実施形態に係る放電制御部85は、放電時間を固定された所定時間としていた。第4実施形態に係る放電制御部85は、放電時間設定部88によって放電時間を設定される。
【0065】
放電時間設定部88は、放電時間を放電制御部85に設定するものである。放電時間設定部88は、目標電流設定部82より入力される目標電流(インバータ回路2の出力電流の制御目標である電流実効値)に応じて、放電時間を設定する。放電時間設定部88は、目標電流と放電時間との対応関係をテーブルとして記憶しており、当該テーブルに基づいて、入力された目標電流に対応する放電時間を設定する。放電時間設定部88は、例えば、目標電流が200Aの場合には放電時間を300msに設定し、目標電流が50Aの場合には放電時間を350msに設定する。なお、これらの値は一例であって、限定されるものではない。本実施形態では、目標電流が小さくなるほど、放電時間が長くなるように設定している。放電時間は、入力され得る目標電流毎に対応付けられていてもよいし、所定の範囲の目標電流毎に対応付けられていてもよい。また、本実施形態では、テーブルに記憶した対応関係に基づいて放電時間を設定しているが、これに限られない。例えば、演算式を設定しておいて、入力された目標電流から放電時間を演算して設定するようにしてもよい。
【0066】
第4実施形態に係る放電制御部85は、スイッチング駆動信号が切り換わったときにオンに切り換わり、オンに切り換わった後、放電時間設定部88によって設定された放電時間が経過したときにオフに切り換わるパルス信号を生成し、放電回路駆動信号として出力する。放電回路64は、放電制御部85より放電回路駆動信号を入力され、放電回路駆動信号がオンの間、放電を行う。したがって、放電回路64は、設定された放電時間の間、放電を行う。つまり、出力電流が小さくなるほど、長い時間放電を行う。
【0067】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態においては、出力電流が小さくなるほど、長い時間、再点弧電圧を放電することができる。したがって、アーク切れの発生をさらに抑制することができる。なお、放電時間設定部88が、出力電流の目標電流ではなく、出力電流に応じて放電時間を設定するようにしてもよい。すなわち、放電時間設定部88が、電流センサ91が検出した出力電流の瞬時値を入力されて、実効値を算出し、出力電流の実効値が小さくなるほど放電時間が長くなるように設定された対応関係のテーブルに基づいて、算出された実効値に対応する放電時間を設定するようにしてもよい。
【0068】
図8および
図9は、第5実施形態に係る溶接電源装置A5を説明するための図である。
図8(a)は、溶接電源装置A5の制御回路8を示すブロック図である。
図8(a)において、第1実施形態に係る制御回路8(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図8(b)は、第5実施形態に係る充電制御部86が行う、充電回路駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。
図9は、溶接電源装置A5の各信号の波形を示すタイムチャートである。
図8(a)に示すように、溶接電源装置A5は、アーク切れ検出部89を備えており、アーク切れを検出した場合に目標電圧を大きくする点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。第1実施形態に係る充電制御部86は、目標電圧設定部87によって目標電圧を設定されたが、第5実施形態に係る充電制御部86は、最初の目標電圧として固定された初期値が設定されており、アーク切れ検出部89がアーク切れを検出した場合に、目標電圧を増加させる。
【0069】
アーク切れ検出部89は、アーク切れが発生したことを検出するものである。アーク切れ検出部89は、電流センサ91が検出した出力電流の瞬時値を入力される。アーク切れが発生した場合、出力電流は、「0」が継続する状態となる(
図9(b)の丸印部分参照)。アーク切れ検出部89は、電流センサ91が検出した出力電流の瞬時値が「0」が継続する状態となった場合に、アーク切れが発生したと判断して、検出信号を充電制御部86に出力する。なお、アーク切れ検出部89は、出力電流ではなく、出力電圧に基づいて、アーク切れが発生したことを検出するようにしてもよい。この場合、図示しない電圧センサによって、出力端子aと出力端子bとの間の端子間電圧を検出する。アーク切れが発生した場合、出力電圧には再点弧電圧が印加される。したがって、アーク切れ検出部89は、電圧センサが検出した端子間電圧が、負荷電圧と再点弧電圧とを識別するための閾値を超えた場合に、アーク切れが発生したと判断して、検出信号を充電制御部86に出力する。なお、出力電流に基づくアーク切れ検出、および、出力電圧に基づくアーク切れ検出を行って、両者が検出した場合にアーク切れが発生したと判断するようにしてもよいし、いずれか一方が検出した場合にアーク切れが発生したと判断するようにしてもよい。
【0070】
第5実施形態に係る充電制御部86は、放電制御部85から入力される放電回路駆動信号と、電圧センサ92から入力される再点弧コンデンサ62の端子間電圧の瞬時値と、アーク切れ検出部89から入力される検出信号とに基づいて、充電回路駆動信号を生成して、充電回路63に出力する。目標電圧は、所定の初期値が予め設定されている。充電制御部86は、アーク切れ検出部89から検出信号を入力された場合、設定されている目標電圧の値を、所定値ΔVだけ増加させる。所定値ΔVは、目標電圧の初期値の例えば10%の値を設定する。例えば、目標電圧の初期値が300Vであった場合、充電制御部86は、1回目の検出信号が入力されると、目標電圧を330Vに増加させ、2回目の検出信号が入力されると、目標電圧を360Vに増加させる。なお、所定値ΔVは、最初の目標電圧に関係なく、固定値(例えば30V)としてもよい。また、所定の割合(例えば10%)ずつ増加させるようにしてもよい。本実施形態においては、充電制御部86が本発明の「目標電圧変更部」に相当する。
【0071】
図8(b)は、第5実施形態に係る充電制御部86が行う、充電回路駆動信号の生成処理を示すフローチャートである。当該処理は、溶接のためにインバータ回路7が起動したときに開始され、インバータ回路7が停止したときに終了される。
【0072】
まず、充電回路駆動信号のオフ信号(ローレベル信号)が生成されて、充電回路63に出力される(S11)。そして、放電回路駆動信号の立下りが検出されたか否かが判別される(S12)。具体的には、放電制御部85より入力される放電回路駆動信号がオンからオフに切り換わったか否かが判別される。立下りが検出された場合(S12:YES)、ステップS13に進む。検出されない場合(S12:NO)、ステップS11に戻る。つまり、立下りが検出されるまで、ステップS11が行われて、オフ信号である充電回路駆動信号が生成されて出力される。
【0073】
次に、アーク切れが検出されたか否かが判別される(S13)。具体的には、アーク切れ検出部89から検出信号が入力されたか否かが判別される。アーク切れが検出された場合(S13:YES)、目標電圧Vrefに所定値ΔVが加算されて(S14)、ステップS15に進む。アーク切れが検出されなかった場合(S13:NO)、そのままステップS15に進む。
【0074】
次に、充電回路駆動信号のオン信号(ハイレベル信号)が生成されて、充電回路63に出力される(S15)。そして、再点弧コンデンサ62の端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さいか否かが判別される(S16)。具体的には、電圧センサ92より入力される端子間電圧Vcと、目標電圧Vrefとを比較し、端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さいか否かが判別される。端子間電圧Vcが目標電圧Vrefより小さい場合(S16:YES)、ステップS15に戻る。つまり、端子間電圧Vcが目標電圧Vrefに達するまで、ステップS15が行われて、オン信号である充電回路駆動信号が生成されて出力される。端子間電圧Vcが目標電圧Vref以上になった場合(S16:NO)、ステップS11に戻る。以上により、1周期分の充電回路駆動信号が生成される。
【0075】
なお、
図8(b)のフローチャートに示す充電回路駆動信号の生成処理は一例であって、上述したものに限定されない。
【0076】
図9は、溶接電源装置A5の各信号の波形を示すタイムチャートである。
図9(a)は、極性切換制御部83が生成するスイッチング駆動信号を示しており、
図3(a)に示すものと同じである。
図9(b)は、溶接電源装置A1の出力電流を示しており、
図3(b)に示すものと同じである。
図9(c)は、放電制御部85が生成する放電回路駆動信号を示している。
図9(d)は、充電制御部86が生成する充電回路駆動信号を示している。
図9(e)は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧を示している。
【0077】
図9に示すタイムチャートでは、出力電流の瞬時値が「0」が継続したことで、時刻txにおいて、アーク切れが検出されている(
図9(b)の丸印部分参照)。そして、目標電圧Vrefが所定値ΔVだけ増加されている。したがって、これ以降は、再点弧コンデンサ62の端子間電圧が増加後の目標電圧Vrefになるまで充電が行われる。アーク切れ時には再点弧コンデンサ62に充電された再点弧電圧が放電されないので、時刻txでの再点弧コンデンサ62の端子間電圧は減少していない(
図9(e)参照)。したがって、次の充電は短い時間で完了している(
図9(d)参照)。目標電圧Vrefが増加された後は、極性が変わるときに重畳される再点弧電圧が大きくなるので、アーク切れが発生していない。
【0078】
第5実施形態においては、アーク切れ検出部89がアーク切れを検出すると、再点弧コンデンサ62の端子間電圧の目標電圧が増加される。したがって、極性が変わるときに重畳される再点弧電圧が大きくなるので、アーク切れが発生しにくくなる。第5実施形態においては、アーク切れが発生するたびに目標電圧を大きくすることで、使用環境や使用状態に応じた最適な目標電圧を設定し、アーク切れに対する耐性を自動的に向上させることができる。
【0079】
なお、目標電圧が大きくなりすぎることを抑制するために、目標電圧を増加させた後、所定の時間が経過するまでアーク切れが発生しなかった場合は、目標電圧を増加させる前の値に戻すようにしてもよい。また、元の値に戻すのではなく、増加分の半分だけ戻すようにしてもよい。また、本実施形態では、目標電圧の初期値を固定値としているが、これに限られない。第1実施形態に係る目標電圧設定部87を備えるようにして、目標電圧設定部87が目標電圧の初期値を設定するようにしてもよい。
【0080】
なお、上記第1ないし第5実施形態では、溶接電源装置A1ないしA5をTIG溶接システムに用いた場合について説明したが、これに限られない。本発明に係る溶接電源装置は、その他の半自動溶接システムにも用いることができる。また、本発明に係る溶接電源装置は、ロボットによる全自動溶接システムにも用いることができるし、被覆アーク溶接システムにも用いることができる。
【0081】
本発明に係る溶接電源装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る溶接電源装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。