(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-187735(P2018-187735A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】心なし研削盤用の回転送り装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/18 20060101AFI20181102BHJP
【FI】
B24B5/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-93962(P2017-93962)
(22)【出願日】2017年5月10日
(71)【出願人】
【識別番号】391048245
【氏名又は名称】株式会社東振テクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺井 信之
(72)【発明者】
【氏名】中村 敬
【テーマコード(参考)】
3C043
【Fターム(参考)】
3C043AA08
3C043AC01
3C043CC03
3C043DD05
3C043DD12
3C043DD15
(57)【要約】
【課題】 ワークの通り心の移動にともなう調整が不要で且つ小型化が可能な回転送り装置を提供する。
【解決手段】本発明の回転送り装置10は、断面円形のワークWの下部の左右に配置される一対のローラ20を当該ワークの中心軸A方向に複数備えており、ローラの駆動力によってワークをその中心軸回りに回転させながら中心軸方向に移動させる心なし研削盤用の回転送り装置において、ローラの回転軸21は正面視した場合に水平面に対して非平行に傾斜しており且つ側面視した場合にワークの中心軸に対して非直角に傾斜することで、ローラはその表面の周縁部22でワークに接触する。左側のローラの平面の傾斜角をブレード103の上端面の傾斜角θと一致させておけば、心なし研削盤100と回転送り装置とでワークの通り心が一致することになり、ワークの通り心の移動に合わせて左右のローラの位置を調節する必要がなくなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形のワークの下部の左右に配置される一対のローラを当該ワークの中心軸方向に複数備えており、前記ローラの駆動力によって前記ワークをその中心軸回りに回転させながら中心軸方向に移動させる心なし研削盤用の回転送り装置において、
前記ローラの回転軸は正面視した場合に水平面に対して非平行に傾斜しており且つ側面視した場合に前記ワークの中心軸に対して非直角に傾斜することで、前記ローラはその表面の周縁部で前記ワークに接触することを特徴とする回転送り装置。
【請求項2】
前記周縁部が傾斜面であり、当該周縁部が前記ワークに対して面接触することを特徴とする請求項1に記載の回転送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削加工中のワークの通り心の移動にともなう調整が不要で且つ小型化が可能な心なし研削盤用の回転送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱や円筒等の断面円形のワークの外周を研削する研削盤として、ワークの中心軸方向を前後方向とした場合に、ワークの外周面を研削砥石と調整車で左右方向から支持し、ワークレストのブレードで下方から支持する心なし研削盤が知られている。
心なし研削盤へのワークの供給及び排出は回転送り装置で行なう。
一般的な回転送り装置として例えば特許文献1には、ワークを下方から支持するV字受けと、回転面をワークの中心軸に対して一定の角度で傾斜させたローラを備える回転送り装置が開示されている。ローラの円周面がワークに接触しており、ローラを回転させると、ワークはローラの駆動力の分力を受けて軸回りに回転しながら前方向(軸方向)に移動する。
また、特許文献2には、V字受けの替わりにワークの下方の左右にロールを配置した支持ロールユニットを備える回転送り装置が開示されている。ワークの回転及び前方への移動は支持ロールユニットとは別に設けた回転駆動ロールユニットで行なう。
また、特許文献3には、ワークの下部の左右に配置した複数のローラのうち一部のローラを駆動ローラとし、残りを従動ローラとする回転送り装置が開示されている。ワークは各ローラの円周面で支持されている。各ローラの回転面はワークの中心軸に対して傾斜しており、ワークの回転及び前方への移動は駆動ローラを回転させることで行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148580号公報
【特許文献2】実用新案登録第3139493号公報
【特許文献3】特開平8−90394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来技術では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1及び2ではワークを回転及び前方へ移動させるための機構を、ワークを支持するための機構とは別体に設けているので装置の部品点数が多くなり、大型化するという問題がある。
また、研削加工中のワークは研削砥石、調整車及びブレードに挟まれた状態でその径が次第に小さくなっていく。これに伴いワークはブレードの上端面に沿って移動し、ワークの通り心(ワークの軸心)も移動していく。特許文献3のように複数のローラの円周面でワークの下部を左右から支持する構成の場合、ワークの通り心の移動に合わせて左右のローラの位置を調整しなければならず、工数が増加するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑み、ワークの通り心の移動にともなう調整が不要で且つ小型化が可能な回転送り装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転送り装置は、断面円形のワークの下部の左右に配置される一対のローラを当該ワークの中心軸方向に複数備えており、前記ローラの駆動力によって前記ワークをその中心軸回りに回転させながら中心軸方向に移動させる心なし研削盤用の回転送り装置において、前記ローラの回転軸は正面視した場合に水平面に対して非平行に傾斜しており且つ側面視した場合に前記ワークの中心軸に対して非直角に傾斜することで、前記ローラはその表面の周縁部で前記ワークに接触することを特徴とする。
また、前記周縁部が傾斜面であり、当該周縁部が前記ワークに対して面接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転送り装置では、従来技術のように左右のローラの円周面でワークを支持するのではなく、左右のローラの表面の周縁部でワークを支持する。したがって、左右一対のローラのうち左側のローラの表面の傾斜角を、心なし研削盤のブレードの上端面の傾斜角(例えば鉛直面に対して60°)と一致させておけば、心なし研削盤と回転送り装置とでワークの通り心が一致することになる。これにより従来技術のように研削加工に伴うワークの通り心の移動に合わせて左右のローラの位置を調節する必要がなくなる。
また、ローラの表面の周縁部を傾斜面にしてワークに対して面接触させることにすれば、ワークから周縁部に対して作用する圧力(面圧)が低下するので、周縁部の摩耗を抑制でき、ローラの交換頻度を減らすことができる。
なお、ローラをモータの回転軸に直結することにすれば、ベルトやギヤを介してモータの回転駆動力をローラに伝達する構成と比較して回転送り装置を小型化でき、且つ製造コストを抑えることができる。
また、ローラをモータの回転軸に直結することで前後方向に連続する一対のローラ同士の間隔を狭くすることができる。一般的に径が小さいワークは自重による撓み量が大きくなるが、一対のローラ同士の間隔を狭くしてワークの支持ピッチを狭くすれば小径のワークの自重による撓み量を減らすことができる。
一方、ローラを、軸受等を介してモータの回転軸に連結することにすれば重量ワークにも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】心なし研削盤において研削砥石、調整車及びブレードでワークを支持した状態を示す正面図
【
図2】回転送り装置を示す平面図(a)、正面図(b)、ローラ表面の周縁部とワークの接触状態を模式的に示した図(c)及び図(c)の部分拡大図(d)
【
図3】ローラからワークに作用する駆動力を示す平面図
【
図4】ローラをモータの回転軸に直結せずに、別途設けた軸受等を介してモータの回転軸に繋いだ構成を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の回転送り装置の実施の形態について説明する。回転送り装置は心なし研削盤へのワークの供給及び心なし研削盤からのワークの排出に用いる。
図1に示すように、ワークWは円柱や円筒等の断面円形である。心なし研削盤100はワークWの外周面を研削砥石101と調整車102で左右方向から支持し、ブレード103で下方から支持しながらワークWの外周面を研削砥石101で研削する。以下の説明においてはワークWの中心軸Aの方向を「前後方向」とする。
研削加工によってワークWは破線で表した状態から実線で表した状態へと径が次第に小さくなっていく。これに伴いワークWはブレード103の上端面に沿って移動し、ワークWの中心軸A(通り心)も移動していく。
【0010】
図2に示すように、回転送り装置10はワークWをその中心軸A回りに回転させながら前後方向に移動させるものであり、ローラ20とモータ30から概略構成される。
ローラ20は円盤状の部材であり、ワークWの下部の左側と右側に配置されることで一対を成している。図示は省略するが一対のローラ20は前後方向に複数配置される。
図2(b)に示すように正面視した場合にローラ20の回転軸21は水平面に対して非平行に角度αで傾斜している。角度αは0°<α<90°の範囲内であればよいが、特にローラ20の表面の傾斜角がブレード103の上端面の傾斜角θ(
図1参照)と一致するように角度αを設定するのが好ましい。例えば、ブレード103の上端面の傾斜角が60°の場合、ローラ20の表面の傾斜角を60°にするべく角度α=60°にするのが好ましい。これにより心なし研削盤100と回転送り装置10とでワークWの通り心を一致させることができる。
また、
図2(c)に示すように側面視した場合にローラ20の回転軸21はワークWの中心軸Aに対して非直角に角度β(0°<β<90°)で傾斜している。角度βは0°<β<90°の範囲内であればよいが、角度βが大きすぎるとモータ30を含む前後方向の長さが大きくなるので0°<β≦10°程度が好ましい。
図2(d)に示すようにローラ20の表面の周縁部22は傾斜面で構成されている。換言すると周縁部22は径方向外側に向かうにつれてその厚さが小さく(薄く)なっている。
図2(a)に示すように各ローラ20がその表面の周縁部22でワークWの下部に接触することでワークWを面接触で支持する。周縁部22だけをウレタン等の弾性を有する材料で構成したり、或いはローラ20全体を弾性を有する材料で構成したりしてもよい。
【0011】
モータ30は基台40に固定されている。そして、モータ30の回転軸31にローラ20を直結することでローラ20の回転軸21とモータ30の回転軸31とを一致させている。
図3に示すように、ワークWは各ローラ20との接触箇所においてローラ20の回転により生じる駆動力Fを受ける。ワークWはこの駆動力のうち円周方向の分力F1によりその中心軸回りに回転しながら、軸方向の分力F2により前方に移動する。ローラ20を逆方向に回転させることでワークWを後方に移動させることもできる。
【0012】
本実施の形態ではローラ20の周縁部22を傾斜面で構成したが、傾斜面ではなく平面、すなわちローラ20の厚さを一定にしてもよい。
また、ローラ20をモータ30の回転軸31に直結するものとしたが、これに限らず
図4に示すようにモータ30の回転駆動力を軸受50、ベルト51等を介してローラ20の回転軸21に伝達する構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、ワークの通り心の移動にともなう調整が不要で且つ小型化が可能な回転送り装置であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0014】
A 中心軸
F 駆動力
F1 円周方向の分力
F2 軸方向の分力
W ワーク
10 回転送り装置
20 ローラ
21 ローラの回転軸
22 周縁部
30 モータ
31 モータの回転軸
40 基台
50 軸受
51 ベルト
100 心なし研削盤
101 研削砥石
102 調整車
103 ブレード