【課題】筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損を確実に回避することができると共に、筆記芯に荷重が掛かった際に作動する状況を使用者が調節することが可能なシャープペンシルを得る。
【解決手段】芯繰出ユニットの前方領域が軸筒内において撓み変形あるいは傾動する際には、軸部が内軸に当接するまで弱コイルバネを圧縮して、押圧部が被押圧部を軸筒に対して軸方向後方に相対移動させ、軸部が内軸に当接した後には、強コイルバネを圧縮して、押圧部が被押圧部を軸筒に対して軸方向後方に相対移動させ、軸筒に設けた操作体を操作することで、操作体に連接された内軸が前後動し、内軸の係止突起が規制部材の係止溝を前後動しながら係止され、内軸と軸部との前後方向の隙間が伸縮する構造を特徴としたシャープペンシル。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャープペンシルを用いて筆記を行う際に筆記芯に高い筆圧が加えられると、口金の先端から露出された筆記芯が容易に折損してしまう、という問題があった。筆記芯の折損は、筆圧が一定であれば、シャープペンシルの軸筒の軸方向と紙面とのなす角度が小さくなるほど(軸筒を寝かせるほど)、あるいは、口金の先端から露出される筆記芯の長さが長くなるほど、顕著である。
【0003】
このような問題に対し、特開2015−123689号公報には、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向の成分と筆圧の当該軸方向に垂直な成分とをそれぞれ異なる機構により吸収して筆記芯の折損を低減させる、というシャープペンシルが記載されている。
【0004】
具体的には、特許文献1のシャープペンシルは、口金が弾性体(スプリング)を介して軸筒に支持されており、当該口金は、軸筒の軸線方向後方に向かって次第に小径となるカム斜面を有している。また、軸筒には、カム斜面を軸筒の軸線方向前方に押圧する押圧部が形成されている。このような構成により、軸筒の軸線方向と直交する方向における筆圧の成分(軸筒径外方向の力)に起因して、口金のカム斜面が押圧部によって軸筒の軸線方向前方に押圧されて、軸筒の先端から口金が前方にスライドする(飛び出す)。これにより、口金の先端から露出される筆記芯の長さが減少されるようになっている。
更に、特許文献1のシャープペンシルは、筆記芯を繰り出す芯繰出ユニットが、弾性体(スプリング)によって軸線方向前方(軸線方向における口金の前端方向)に付勢された状態で、軸筒の軸線方向に相対移動可能な状態で当該軸筒に支持されている。そして、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒の軸線方向後方に相対移動することによって、筆圧の軸線方向の成分が吸収される。この結果、口金の先端から露出される筆記芯の長さが一層減少されて、筆記芯の折損が低減されるようになっている。
【0005】
特許文献1に記載されているシャープペンシルでは、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、軸筒に対して口金が前方にスライドできる最大の長さ(ストローク)に亘って当該口金が一気にスライドする(飛び出す)ようになっている。
【0006】
これに対して、本件出願人は、国際公開第2017/002731号公報で開示されているように、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、軸筒に対して口金が当該軸筒の径方向にスライドし、且つ、口金に対して筆記芯が後方にスライドする構成を開発した。このようなシャープペンシルでは、筆記芯の折損を効果的に回避することができるが、さらには筆記芯の強度に応じて、あるいは使用者の好みに応じて、前記機能が作動する状況を設定可能なシャープペンシルが求められてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような知見に基づいており、その目的は、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損を確実に回避することができると共に、筆記芯に荷重が掛かった際に作動する状況を使用者が調節することが可能なシャープペンシルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「軸筒の内部に、
前方領域が前記軸筒内において撓み変形可能あるいは傾動可能であるように後方領域が前記軸筒内に支持された、筆記芯を繰り出すための芯繰出ユニットを配設し、
前記芯繰出ユニットが、筆記芯を保持する口金と、該口金が挿通されるベース部材と、前記軸筒に対して前進および回転が規制され内方に前後方向へ連続する係止溝を有した筒状の規制部材と、前記規制部材と前記ベース部材との間に配した弱コイルバネと、前記規制部材の係止溝に係止する係止突起を内方に有した筒状の内軸と、を備え、
前記規制部材と前記軸筒との間には、強コイルバネを有しており、
前記ベース部材と前記内軸との間には、該ベース部材の後方へ伸び該内軸との間に前後方向の隙間を設けた軸部を有しており、
前記ベース部材は、外周面に被押圧部を有しており、
前記軸筒は、押圧部を有しており、
前記押圧部と前記被押圧部との少なくとも一方は、軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面であり、
前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する前においては、前記押圧部と前記被押圧部とが互いに当接しており、
前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する際には、前記軸部が前記内軸に当接するまで前記弱コイルバネを圧縮して、前記押圧部が前記被押圧部を当該軸筒に対して軸方向後方に相対移動させ、前記軸部が前記内軸に当接した後には、前記強コイルバネを圧縮して、前記押圧部が前記被押圧部を当該軸筒に対して軸方向後方に相対移動させ、
前記軸筒に設けた操作体を操作することで、前記操作体に連接された前記内軸が前後動し、該内軸の係止突起が前記規制部材の係止溝を前後動しながら係止され、前記内軸と前記軸部との前後方向の隙間が伸縮する構造を特徴としたシャープペンシル。」である。
【0010】
本発明によれば、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって、芯繰出ユニットの前方領域が軸筒内において撓み変形可能あるいは傾動される。これにより、筆記芯を含む芯繰出ユニットが弾性体の付勢力に対抗して軸筒に対して軸方向後方に相対移動されるため、口金の先端から露出される筆記芯の長さが減少される。更に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯を含む芯繰出ユニットが弾性体の付勢力に対抗して軸筒に対して軸方向後方に更に相対移動され、口金の先端から露出される筆記芯の長さが一層減少される。これらのことにより、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損が回避される。また、この時、口金が軸筒に対して軸方向前方に相対移動される(飛び出す)のではなく、筆記芯を含む芯繰出ユニットが口金に対して軸方向後方に相対移動されることによって、当該口金から露出される筆記芯の長さが減少される。このことにより、筆記感が滑らかなシャープペンシルを提供することができる。
【0011】
また、相対的に小さな荷重で圧縮変形が開始する弱コイルバネ及び相対的に大きな荷重で圧縮変形が開始する強コイルバネによって、この順序で段階的に筆圧が吸収されるが、操作体を操作して内軸と軸部との隙間を伸縮させることで、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動される際のコイルバネの付勢力による抵抗感を、最適化することができる。
【0012】
筒状の規制部材の係止溝を前後方向に伸びる螺旋状の溝で形成し、内軸の係止突起を前記係止溝に係止する係止突起とすることで、操作体の回転操作により、内軸と軸部との前後方向の隙間を伸縮させる構造にすることができる。この場合、螺旋状の溝の傾斜角度を緩やかに形成することにより、内軸と軸部との隙間が微調整できる構造となり、係止溝に対して係止突起が前後方向へ移動するような外力が掛かっても、係止状態が保持されやすい構造となる。尚、規制部材の方に係止突起を設け、内軸に係止溝を設けてもよい。
さらには、係止溝を前後方向に螺旋が連続する雌螺子で形成し、係止突起を雄螺子で形成することにより、互いに係止される箇所が増加するので、係止状態を安定させることができる。
また、規制部材の係止溝を軸心に沿った前後方向に複数の凹部を連続させて形成し、内軸の係止突起を前記複数の連続する凹部に段階的に係止できるバネ性を有した凸部とすることも可能である。あるいは、規制部材の係止溝の内側面をエラストマなどで摩擦抵抗が生じる材質で直線状に形成し、内軸の係止突起を前記係止溝の内巾より若干大きく形成し、係止溝に対して係止突起が摩擦抵抗で係止できるようにすることも可能である。
これらの場合には、操作体の前後操作により、内軸と軸部との前後方向の隙間を伸縮させる構造にすることができる。
【0013】
好ましくは、前記芯繰出ユニットの前記被押圧部が前記テーパ面であり、当該テーパ面は、前記軸筒の軸方向に対して20°〜60°の間のいずれかの角度を有しており、前記弱コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、0.5N〜2.5Nの間のいずれかの値であり、前記強コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、3N〜8Nの間のいずれかの値である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損を確実に回避することができると共に、筆記芯に荷重が掛かった際に作動する状況を使用者が調節することが可能なシャープペンシルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態のシャープペンシル1の概略縦断面図であり、
図2は、操作体を操作した第一の状態を示す前方領域の概略縦断面図であり、
図3は、操作体を操作した第二の状態を示す前方領域の概略縦断面図であり、
図4は、筆記芯70に筆圧が加えられている状態の、
図1のシャープペンシル1の前方領域の概略縦断面図である。
【0018】
本実施の形態のシャープペンシル1は、図に示すように、軸筒10と、軸筒10内に支持され、前方領域が当該軸筒10内において傾動可能な、筆記芯70を繰り出すための芯繰出ユニット40と、を備えている。本実施の形態の軸筒10は、ポリカーボネート製であり、後軸20と、後方領域が後軸20の前方領域に固定(螺着)された前軸30と、により構成されている。
【0019】
本実施の形態の芯繰出ユニット40は、軸筒10の内部で当該軸筒10の軸方向に延在するポリプロピレン製の芯パイプ41と、芯パイプ41の前端部にコネクタ49を介して固定された黄銅製のチャック43と、チャック43の前方領域に外嵌された黄銅製の締めリング42と、チャック43を取り囲む外筒45と、外筒45に対して芯パイプ41を軸方向後方に付勢するリターンスプリング44と、を有している。
【0020】
具体的には、外筒45は、前方領域の内周面においてチャック43を支持する後筒45aと、後筒45aの前端領域に外嵌固定されチャック43の前端部を超えて軸方向前方に延在する前筒45bと、を有している。
また、外筒45の外方にはベース部材51が摺動可能に配設され、ベース部材51の前方には口金52が摺動可能に挿着されている。
ベース部材51は、前端部に被押圧部53を有している。
【0021】
また、ベース部材51の後方には伸縮可能な弱コイルバネ60aが圧縮された状態で配置されており、弱コイルバネ60aの後方には伸縮可能な強コイルバネ60bが圧縮された状態で配置されている。
弱コイルバネ60aと強コイルバネ60bとは、弱コイルバネ60aの圧縮長さを規制する円筒状の規制部材61を介して接続されている。強コイルバネ60bの後端は、後軸20の前端に当接しており、強コイルバネ60bの前端は規制部材61の後方段部61aに当接しており、規制部材61の前端は弱コイルバネ60aの後端に当接しており、弱コイルバネ60aの前端はベース部材51に形成したフランジ部45cの後端に当接している。
このような構成により、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40は、弱コイルバネ60aおよび強コイルバネ60bの付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向後方への相対移動が可能となっている。
本実施の形態では、弱コイルバネ60aのバネ定数は、700N/mであり、強コイルバネ60bのバネ定数は、1000N/mである。
【0022】
また、前軸30の後方領域の内径は、ベース部材51のフランジ部45cの外径よりも大きくなっており、前軸30の内周面とフランジ部45cの外周面との間に隙間が形成されている。このことにより、軸筒10に対する芯繰出ユニット40の傾動が許容されている。
また、芯繰出ユニット40の先端領域には、黄銅製の前記口金52が取り付けられている。本実施の形態の口金52は、芯繰出ユニット40の前端領域に固定された黄銅製の筒状のベース部材51に軸方向に相対移動可能に支持されており、当該ベース部材51と共に口金ユニット50を構成している。
【0023】
ベース部材51は、前端部に被押圧部53を有している。本実施の形態の被押圧部53は、軸筒10の軸方向に対して27.5°の角度を有するテーパ面として構成されている。また、軸筒10(前軸30)は、前方領域に内周面に張り出した押圧部31を有している。本実施の形態では、芯繰出ユニット40が傾動する前においては、押圧部31と被押圧部53とが互いに当接している。そして、
図4に示すように、芯繰出ユニット40が傾動する際に、押圧部31が被押圧部53を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるようになっている。
【0024】
以上のような構成により、本実施の形態では、弱コイルバネ60aによる付勢力に対抗して被押圧部53(テーパ面)を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、2Nであり、強コイルバネに60bよる付勢力に対抗して被押圧部53(テーパ面)を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、7Nである。
【0025】
また、ベース部材51は、前方領域51aの内径よりも後方領域51bの内径の方が小さくなっており、前方領域51aと後方領域51bとの接続部分の内周面に段部54が形成されている。
口金52の後方領域52bの後端部とベース部材51の段部54との間に、伸縮可能なスプリング55が圧縮状態で配置されている。前方領域51aの内周面と芯繰出ユニット40の外周面との間には円筒状の隙間が形成されており、この隙間に、前記口金52が挿入されている。
【0026】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、口金52は、筆記芯70を案内するパイプ状の前方領域52aと、当該前方領域52aよりも大径のスリーブ状の後方領域52bと、によって構成されており、当該後方領域52bが前記円筒状の隙間に挿入されている。更に、軸筒10(前軸30)は、口金52の後方領域52bの前端部よりも軸方向前方の内周面に内鍔32を有しており、この内鍔32において軸筒10(前軸30)の内径が口金52の後方領域52bの外径よりも小さくなっている。すなわち、この内鍔32と口金52の後方領域52bとが当接して軸筒10に対する口金52の軸方向前方への相対移動が規制され、芯繰出ユニット40の抜けが防止されている。
この状態で、口金52の後方領域52bの後端部とベース部材51の段部54との間に、伸縮可能なスプリング55が圧縮状態で配置されている。このような構成により、芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動された際にも、口金52と軸筒10の内鍔32との当接状態が維持されるようになっている。これにより、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動された際に、口金52の前端部から露出される筆記芯70の長さが減少されるようになっている。
【0027】
また、
図1に示すように、芯繰出ユニット40は、芯パイプ41の後方に取り付けられて該芯パイプ41を外筒45に対して軸方向前方に押圧するためのノック部46を、更に有している。本実施の形態のノック部46は、軸方向前方に、芯パイプ41との間に前後方向の隙間S1を設けて配置された筒状の棒状部材46aを有しており、軸方向後方に円柱状の消しゴム80を取外可能に保持するホルダ部46bを有している。棒状部材46aの内部空間とホルダ部46bの内部空間とは、開口によって連通されている。このことにより、消しゴム80をホルダ部46bから取り外すことによって、当該開口から筆記芯70を芯パイプ41内に投入できるようになっている。また、ホルダ部46bには、消しゴム80の後方を覆うドーム状のノブ81が取外可能に外嵌されている。
また、棒状部材46aと芯パイプ41との間に形成された隙間S1は、軸筒10に対して芯繰出ユニット40が後方へ後退した際に、その移動量を吸収できるようになっている。
本実施の形態においては、隙間S1を2mmとしてある。
【0028】
後軸20の後端領域には頭冠23が固定されている。頭冠23の内方には、回転操作体24が回転可能に挿着されている。回転操作体24の内方には前記ノック部46が前後動可能に挿着されている。
回転操作体24の内周面には軸方向後方に面した段部24aが形成されている。また、ホルダ部46bの外周にはフランジ部46cが形成されており、このフランジ部46cと段部24aとの間に、伸縮可能なスプリング46dが圧縮状態で配置されている。
【0029】
回転操作体24の前方には、第一内軸25aと第二内軸25bとで構成される内軸25を配置しており、回転操作体24の前方内面に設けた雌螺子24bと第一内軸25aの後方外面に設けた雄螺子25cとを螺合により回転不能に固定してある。第一内軸25aと第二内軸25bとは、第一内軸25aの前方内面に設けたキー溝25dと第二内軸25bの後方外面に設けた突起25eとを係止させて、一体で回動可能、且つ相対的に前後動できるようにしてある。
また、第二内軸25bの前方外面には雄螺子25f(係止突起)を設けてあり、前記規制部材61に設けた雌螺子61b(係止溝)と回転可能に螺合させてある。
【0030】
規制部材61の内部前方には円筒状の軸部71を配置してある。
図1に示される軸部71は、第二内軸25bの前端とベース部材51の後端との間に配置され、前端がベース部材51の後端に当接した状態で、第二内軸25bの前端と軸部71の後端との間に隙間S2が形成されている。
規制部材61は、前端が前軸30の内面に設けた段部30aに当接され、後方から前記強コイルバネ60bで弾発されていることから、前方移動と回転とが規制されている。したがって、回転操作体24を回転操作した際には、規制部材61の雌螺子61bにより第二内軸25bの雄螺子25fが回転しながら前後動し、第二内軸25bの前端が最も軸部71の後端から遠くなる
図2に示した第一の状態から、第二内軸25bの前端が最も軸部71の後端から近く接触した状態となる
図3に示した第二の状態へ、隙間S2を伸縮させることができる。
図1の隙間S2は第一の状態と第二の状態との半分の長さである。
本実施の形態においては、隙間S2が0〜2mmの範囲で伸縮するようにしてある。
図2に示したシャープペンシル1は隙間S2が2mmの状態であり、
図3に示したシャープペンシル1は隙間S2が0mmの状態であり、
図1に示したシャープペンシル1は隙間S2が1mmの状態である。
【0031】
第一内軸25aの外周面には軸方向後方に面した段部25gが形成されており、この段部25gと頭冠23の前端との間に、伸縮可能なスプリング26が圧縮された状態で配置されている。これにより、回転操作時に適度な抵抗感がもたらされる。
【0032】
次に、本発明の実施の形態のシャープペンシル1の作用について説明する。
【0033】
まず、紙面に対して筆記を行うに先立ち、必要に応じて、ノブ81と消しゴム80とがホルダ部46bから取り外され、棒状部材46aとホルダ部46bとを連通する開口を介して筆記芯70が芯パイプ41内に投入される。そして、消しゴム80とノブ81とがホルダ部46bに取り付けられ、口金52の前端が下方に向けられた状態でノック部46(ノブ81)が軸方向前方に向かって押圧(ノック)される。
これにより、棒状部材46aを介して、芯パイプ41、コネクタ49、チャック43及び締めリング42がリターンスプリング44の付勢力に対抗して前進させられる。この前進の途中で、締めリング42のみが外筒45の前筒45bに形成された当接段部45dに当接する。これにより、チャック43から締めリング42が後方に外され、当該チャック43が開放されて筆記芯70が繰り出される。押圧(ノック操作)時には、ノック部46のフランジ部46cと回転操作体24の段部24aとの間に配置されたスプリング46dの付勢力によって、適度な抵抗感がもたらされる。
本実施の形態においては、棒状部材46aと芯パイプ41との間の隙間S1の2mmと、チャック43が筆記芯70を繰り出す際の移動量4mmが必要となることから、ノック部46のノックストロークは6mmを必要とする。
【0034】
そして、ノック部46(ノブ81)の押圧状態が解除されると、芯パイプ41がチャック43と共にリターンスプリング44の付勢力によって後退させられる。これに伴って、締めリング42が再びチャック43の前方領域に外嵌され、チャック43が締められる。これにより、筆記芯70が後退しないように挟持され、筆記芯70が繰り出された状態が維持される。そして、この一連の押圧操作が適宜繰り返されることにより、口金52の先端から筆記芯70が所望の長さ露出される(繰り出される)。そして、使用者によって前軸30が把持され、紙面に対して筆記芯70を当接させつつ軸筒10を所望に移動させることによって、筆記が行われる。
【0035】
筆記の際、軸筒10は、その軸方向が紙面に対して鋭角をなす(
図4参照)ように把持されることが一般的である。このため、筆記芯70には、軸筒10の軸方向に垂直な成分と当該軸方向の成分とを含む筆圧が加えられる。本実施の形態のシャープペンシル1は、筆記時に筆記芯70に高い筆圧が加えられると、筆圧の軸方向に垂直な成分と軸方向の成分とをそれぞれ吸収して、口金52の先端から露出された筆記芯70の折損を回避する。
【0036】
具体的には、
図4に示すように、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット40の前方領域が傾動し、前軸30の押圧部31によってベース部材51の被押圧部53(テーパ面)が軸方向後方に押圧される。これにより、筆圧により、相対的に小さな荷重で圧縮変形が開始する弱コイルバネ60aが最初に変形し、筆記芯70に比較的弱い荷重(2N)が掛かった状態で芯折れ防止機能を作動させることができた。また、筆記により、
図4の状態から更に筆記芯70に強い荷重が掛かった場合には、
図4に示された通り、ベース部材51の後方への移動に伴って軸部71が後方へ移動して、後端が第二内軸25aに当接されることから、それ以上は弱コイルバネ60aの圧縮変形が行われることはなく、今度は第二内軸25aと螺合した規制部材61により強コイルバネ60bの圧縮変形が開始され、この時は、筆記芯70に比較的強い荷重(7N)が掛かった状態で芯折れ防止機能を作動させることとなる。
【0037】
さらに、
図4を用いて芯折れ防止機能が作動するときの状況について詳述する。
シャープペンシル1は、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット40の前方領域が傾動し、前軸30の押圧部31によってベース部材51の被押圧部53(テーパ面)が軸方向後方に押圧される。これにより、弱コイルバネ60aや強コイルバネ60bの付勢力に対抗して、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方へ相対移動される。
一方、口金52は、スプリング55の付勢力によってベース部材51に対して軸方向前方に押圧されているため、軸筒10に対して軸方向後方には相対移動されない。これらのことにより、口金52の先端から露出される筆記芯70の長さが減少される。
【0038】
また、前述の通り、本実施の形態のシャープペンシル1は、回転操作体24を回転操作することにより、第二内軸25bの前端と軸部71の後端との間の隙間S2を調整することができる。
隙間S2を広くした場合には(
図2参照)、弱コイルバネ60aが圧縮変形される距離が長くなることから、筆記芯70に比較的弱い荷重(2N)が掛かった際でも、芯折れ防止機能が働きやすくなり、隙間S2を狭くした場合には、弱コイルバネ60aが圧縮変形される距離が短くなることから、筆記芯70に比較的弱い荷重が掛かった際の芯折れ防止機能が働き難くなり、強コイルバネ60bで設定された比較的強い荷重(7N)で芯折れ防止機能を働かせることができるようになる。尚、回転操作体24を回転操作して、隙間S2を0mmにした場合には(
図3参照)、弱コイルバネ60aの圧縮変形は行われないことから、比較的弱い荷重で芯折れ防止機能が働くことはなく、強コイルバネ60bで設定した比較的強い荷重(7N)の際に芯折れ防止機能が働くようにすることができる。
これにより、本実施の形態のシャープペンシル1は、使用者が、筆記芯70の強度に応じて、あるいは好みに応じて、芯折れ防止機能が作動する状況を設定することが可能である。