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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-187813(P2018-187813A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20181102BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   B43K24/08 150
   B43K24/08 110
   B43K7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-90745(P2017-90745)
(22)【出願日】2017年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】熊田 稔也
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KF01
2C350KF05
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HC18
2C353HG04
2C353HJ03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】口金及び筆記体を軸筒内から出没可能な筆記具において、片手でのノック操作により容易に口金及び筆記体を時間差をつけつつ繰り出し可能なノック式筆記具を提供すること。
【解決手段】軸筒2と、軸筒2の前端開口部10aから出没可能な口金3および筆記体(ボールペンレフィル4)と、軸筒2の後端開口部2aから後方へ突出するノック体6と、を備え、軸筒2の内部に、軸筒2の内方突起と口金3の外段部との間に配設され、口金3を後方に弾発する第一の弾性部材(第1コイルスプリング16)と、筆記体と口金3との間に配設され筆記体を後方に弾発する第二の弾性部材(第2コイルスプリング17)と、を配する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、該軸筒の前端開口部から出没可能な口金および筆記体と、当該軸筒の後端開口部から後方へ突出するノック体と、該ノック体をノック操作することで前記口金および前記筆記体を前記軸筒の前端開口部から出没させる出没機構と、を備えたノック式筆記具であって、
前記軸筒の内部に、前記軸筒の内方突起と前記口金の外段部との間に配設され該口金を後方に弾発する第一の弾性部材と、前記筆記体と前記口金との間に配設され該筆記体を後方に弾発する第二の弾性部材とを有し、
前記ノック体をノック操作する際、前記第一の弾性部材の弾発力より前記第二の弾性部材の弾発力を大きくすることで前記筆記体より前記口金が先に前進するよう構成すると共に、ノック操作により前記第一の弾性部材の弾発力が増加し前記第二の弾性部材の弾発力より大きくなる、または、前記口金の当接部と前記軸筒の被当接部とが当接することにより前記筆記体が該口金に対して前進するよう構成したことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】
前記第二の弾性部材と前記筆記体の外段部間に、摺動可能にワッシャーを配し、当該ワッシャーが、前記筆記体の外段部及び前記口金の内壁に設けた内段部に当接することを特徴とする請求項1に記載のノック式筆記具。
【請求項3】
前記軸筒が、軸筒本体と該軸筒本体の前部に着脱自在に螺合された前軸部材とを有し、前記前軸部材の内方突起と前記口金の外段部との間に前記第一の弾性部材を配設し、前記前軸部材の後部に形成した当接部と前記口金の後部に形成した被当接部とが当接することで前記口金の前方への移動を規制したことを特徴とする請求項1または2に記載のノック式筆記具。
【請求項4】
前記前軸部材と前記軸筒本体との螺合を解除することで、前記前軸部材と共に前記第一の弾発部材と前記第二の弾発部材と前記口金とが一体的に軸筒本体から取り外されることを特徴とした請求項3に記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック式筆記具に関するものであり、特に口金と筆記体とを軸筒より出没可能なノック式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、後部外筒を前部外筒に対して回転させることで、筆記体を筆記具本体に対して出没可能に操作することができる、いわゆる回転繰り出し式の筆記具が知られている。
【0003】
これによれば、非筆記時には筆記体を筆記具本体に対して収納することが可能であるため、該筆記具を衣類のポケット等に収容して形態するような場合でも、衣類をインクや鉛芯等で汚すことなく携帯することができる。
【0004】
しかしながら、この筆記具では、筆記体は本体に収容可能であるが、口金は収容することが出来ないものであった。このため、口金を衣類のポケットや鞄の中等に入れた際に、口金により、ポケットや鞄内の他の荷物を傷つける場合があり、また、落下等により口金の先端に傷ついたり変形すると、筆記具内の筆記体を口金先端から出没できなくなる場合があった。また、落下時の衝撃などによって没入していた筆記体が、口金の先端から突出して筆記体を傷つけてしまう問題もあった。
【0005】
これを解消する方法として、特許文献1(実公平7−32133号公報)には、口金を筆記具本体に収容することができる回転繰り出し式の筆記具が提案されている。特許文献1によれば、口金および筆記体が筆記具本体に収容された非筆記状態において、前部外筒に対して後部外筒を相対的に一方向に回転させると、まず口金が突出し、さらに同一方向に回転させると口金から筆記体を突出させることができる。そして、反対方向に回転させると、まず筆記体が口金内に収容され、さらに回転させること口金が筆記具本体に収容される構成を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7−32133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の回転繰り出し構造では、繰り出す際に両手を用いた操作が必要となり、また、口金と筆記体とを2段階で繰り出すことを必要とするため、筆記体を繰り出すまでに必要な前部外筒に対して後部外筒を回転する回転角度が大きくなる。そして、最初の把持位置で回転を続けると指が追いつかなくなることで、回転中に筆記具を把持し直すことが必要な場合があった。このため、筆記体を繰り出すのに手間が掛かるという問題が生じていた。
【0008】
本発明は以上の知見からなされたものであって、口金及び筆記体を軸筒内から出没可能な筆記具において、片手でのノック操作により容易に口金及び筆記体を時間差をつけつつ繰り出し可能なノック式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「1.軸筒と、該軸筒の前端開口部から出没可能な口金および筆記体と、当該軸筒の後端開口部から後方へ突出するノック体と、該ノック体をノック操作することで前記口金および前記筆記体を前記軸筒の前端開口部から出没させる出没機構と、を備えたノック式筆記具であって、
前記軸筒の内部に、前記軸筒の内方突起と前記口金の外段部との間に配設され該口金を後方に弾発する第一の弾性部材と、前記筆記体と前記口金との間に配設され該筆記体を後方に弾発する第二の弾性部材とを有し、
前記ノック体をノック操作する際、前記第一の弾性部材の弾発力より前記第二の弾性部材の弾発力を大きくすることで前記筆記体より前記口金が先に前進するよう構成すると共に、ノック操作により前記第一の弾性部材の弾発力が増加し前記第二の弾性部材の弾発力より大きくなる、または、前記口金の当接部と前記軸筒の被当接部とが当接することにより前記筆記体が該口金に対して前進するよう構成したことを特徴とするノック式筆記具。
2.前記第二の弾性部材と前記筆記体の外段部間に、摺動可能にワッシャーを配し、当該ワッシャーが、前記筆記体の外段部及び前記口金の内壁に設けた内段部に当接することを特徴とする前記1項に記載のノック式筆記具。
3.前記軸筒が、軸筒本体と該軸筒本体の前部に着脱自在に螺合された前軸部材とを有し、前記前軸部材の内方突起と前記口金の外段部との間に前記第一の弾性部材を配設し、前記前軸部材の後部に形成した当接部と前記口金の後部に形成した被当接部とが当接することで前記口金の前方への移動を規制したことを特徴とする前記1項または2項に記載のノック式筆記具。
4.前記前軸部材と前記軸筒本体との螺合を解除することで、前記前軸部材と共に前記第一の弾発部材と前記第二の弾発部材と前記口金とが一体的に軸筒本体から取り外されることを特徴とした前記3項に記載のノック式筆記具。」である。
【0010】
本発明によれば、非筆記時(非ノック時)は、口金が軸筒内に収容されているので落下等により口金の先端が傷ついたり変形することがない。
また、第一の弾発部材の弾発力と第二の弾発部材の弾発力との関係は、口金が没入した状態で、第一の弾発部材の弾発力<第二の弾発部材の弾発力となるが、少なくとも口金の全繰出長の半分以上が繰出されるまでは筆記体が前進しないように各々の弾発力を調整することが好ましく、口金が完全に繰り出されてから筆記体が前進することがより好ましい。
これにより、非筆記時(非ノック時)のノック式筆記具を鞄やポケット等に入れて携帯しても、ノック体に手や荷物等が接触した際、必ず口金が筆記体に対して先に突出するので、筆記体の先端部で他の荷物やポケット内部を汚すこと、及び、筆記体の先端部が傷つくことを防止できる。
【0011】
また、前記第二の弾性部材と筆記体の外段部間に、摺動可能にワッシャーを配し、当該ワッシャーが、前記筆記体の外段部と、前記口金の内壁に設けた内段部にも当接することで、口金が没入した状態を維持し易くすることができる。これは、筆記体の出没に必要な第二の弾性部材と、口金の出没に必要な第一の弾性部材は、前述の通り、第一の弾性部材<第二の弾性部材の力関係が必要であるが、筆記体は口金内に収納されるため、口金と筆記体の外段部間に第二の弾性部材を直接、配設すると、第二の弾性部材は筆記体を後方に弾発するが、筆記体の待機位置(非ノック状態)においては筆記体は後方へ移動できないため、口金を前方に押出す作用を有してしまう。その結果、第二の弾性部材と第一の弾性部材の弾発力が同力になるまでは第二の弾性部材が伸長するため、口金が突出してしまうおそれがある。即ち、第二の弾性部材と筆記体の外段部間に、摺動可能にワッシャーを配することで、第二の弾性部材はワッシャーを介して筆記体を後方に弾発し、口金が前進する力は、前記ワッシャーが口金に当接することで受止めることから、第二の弾性部材により口金が前方へ突出することを抑制する効果を奏する。
【0012】
また、前記軸筒が、軸筒本体と該軸筒本体の前部に着脱自在に螺合された前軸部材とを有し、前軸部材の後部に形成した当接部と口金の後部に形成した被当接部とを当接するよう構成し、口金の前方への移動を規制することで、第一の弾性部材に過大な付加が掛かることを防止でき、第一の弾性部材の耐久性が向上する効果を奏する。
【0013】
また、前軸部材と軸筒本体との螺合を解除した際、前軸部材と共に第一の弾発部材と第二の弾発部材と口金とが一体的に軸筒本体から取り外されるように構成することで、筆記体を交換する際、部品の紛失や破損が防げるため好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、口金及び筆記体を軸筒内から出没可能な筆記具において、片手でのノック操作により容易に口金及び筆記体を時間差をつけつつ繰り出し可能なノック式筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例のノック式筆記具の縦断面図である。
図2図1における、一部を省略した要部拡大縦断面図である。
図3】前軸部材と口金の組み立て手順を説明するための説明図である。
図4】回転カム機構を分解した状態を示す側面図である。
図5】本実施例のノック式筆記具におけるカム動作を模式的に示した図であり、図5(A)はボールペンレフィルの先端が没入した状態で、図5(B)はボールペンレフィルの先端が突出した状態を示す説明図である。
図6図1において、口金の前部が軸筒より突出した状態を示す縦断面図である。
図7図6において、ボールペンレフィルの先端が口金より突出した状態を示す縦断面図である。
図8】ボールペンレフィルを交換する動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照しながら本発明のノック式筆記具をボールペンを用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、本発明で、「前方」とは、ノック式筆記具における口金側を指し、「後方」とは、その反対側を指す。また、「内方」とは、軸筒の外周部から軸心に向かう方向を指し、「外方」とは、その反対方向を指す
【0017】
実施例1
図1は、本実施例のノック式筆記具の概略縦断面図であり、図2図1の要部を拡大した概略拡大縦断面図であり、図3は前軸部材と口金の組み立て手順を説明するための説明図であり、図4は回転カム機構を分解した状態を示す側面図である。
【0018】
本実施例のノック式筆記具1は、ノック式のボールペンであり、図1及び図2に示すように、軸筒2と、軸筒2内に前後に摺動可能に収納された口金3と、口金3内に前後に摺動可能に収納されたボールペンレフィル4(筆記体)と、ボールペンレフィル4の後方に配設された回転カム5と、回転カム5の後方に配置され軸筒2の後部開口部2aから後方に向かって突出するノック体6と、軸筒2の側面に嵌着されたクリップ7と、により構成してある。
また、軸筒2は、各々筒状体で形成された後軸部材8と、後軸8の前部に嵌着された軸筒本体9と、軸筒本体9の前部に着脱自在に螺合した前軸部材10と、により構成してある。
【0019】
ボールペンレフィル4は、PP樹脂からなるインキ収容筒11に、筆記具用インキ組成物を直接収容し、インキ収容筒11の前端開口部に、ボール(φ0.5mm)を回転自在に抱持したボールペンチップ12の後部を圧入嵌合して得たものである。
また、ボールペンレフィル4の外方には、ボールペンレフィル4の外周部4aに対して摺動自在に装着したワッシャー13を配設してあり、ワッシャー13の後端面がボールペンレフィル4の外周部4aに設けた外段部4bに当接するように形成してある。
る。
【0020】
軸筒本体9は、図1に示すように、前部内周面に雌螺子部9aを形成してある。また、軸筒本体9の後部外周面には内周面まで貫通する係止孔9bを形成してある。
【0021】
前軸部材10は、前部に口金3が前方に向かって突出可能な前端開口部10aを形成してあり、前端開口部10aの内径寸法は、口金3が軸筒2内で前後に摺動可能になるように、口金3の外径寸法より若干大きく形成してある。
また、前軸部材10の後部外周面には、軸筒本体9の雌螺子部9aと着脱自在に螺合する雄螺子部10bを形成してある。
【0022】
口金3は、各々筒状体で形成された先口部材14と筒状部材15とで構成してあり、筒状部材15の前部外周面に外方へ向って突出する圧入突起15aを形成し、先口部材14の内周面14aに筒状部材15の圧入突起15aを圧入することで、着脱不能に固定してある。
【0023】
筒状部材15について詳述すると、図1及び図2に示すように、筒状部材15は後端部に円環状に形成され外方へ向って突出する当接部15bが形成してあり、前軸部材10の後端部10cと当接部15bとが口金3の前進時に当接するよう形成することで、口金3が一定以上前進することを規制してある。
また、筒状部材15の外周面に設けた外段部15cと前軸部材10の内周部に円環状に設けた内方突起10d(軸筒の内段部)と間に第1コイルスプリング16(第一の弾性部材)を配設し、第1コイルスプリング16により筒状部材15(口金3)を後方へ弾発してある。
更に、筒状部材15の内面には内段部15dを形成してあり、内段部15dの前端面とワッシャー13の後端面とが当接するよう構成してある。
【0024】
また、先口部材14について詳述すると、先口部材14は、前述したように前後に開口部を有する筒状体であり、内周部に設けた前方内段部14bとワッシャー13の前端面との間に第2コイルスプリング17(第ニの弾性部材)を配設し、第2コイルスプリング17によりワッシャー13を介してボールペンレフィル4(筆記体)を後方へ弾発してある。
【0025】
ここで、図3を用いて、前軸部材10に対して口金3を摺動自在に取り付ける方法を説明すると、まず始めに、前軸部材10の後部内穴10eに第1コイルスプリング16を後方側から内方突起10dに当接するまで挿入し、さらに後方から筒状部材15を挿入する。そして、筒状部材15の前部内穴15eにワッシャー13と第2コイルスプリング17とを前方側から順に挿入し、更に、先口部材14を筒状部材15の前部に被せるように装着し、前述したように、筒状部材15の圧入突起15aに先口部材14の内周面14aを圧入することで固定してある。
この際、前軸部材10の後端部10cと筒状部材15の当接部15bとが当接関係にあるため、前軸部材10に対して筒状部材の前進は規制され、前軸部材10の内方突起10dに対して先口部材14の外径寸法を大きく形成してあるため、前軸部材10に対して先口部材14の後退が規制される。このため、口金3は第1コイルスプリング16、第2コイルスプリング17、ワッシャー13と共に前軸部材10に対して前後に摺動可能且つ着脱不能に係着される。
【0026】
次に、後軸部材8について詳述すると、図1に示すように、後軸部材8には前部に外方へ向って突出する係止突起8aを形成してあり、係止突起8aと軸筒本体9の係止孔9bとを係止することで、後軸部材8と軸筒本体9とを着脱不能に嵌着してある。
また、後軸部材8は、内部に口金3を前軸部材10(軸筒2)の前端開口部10aから出没させ、且つ、ボールペンレフィル4(筆記体)を口金3の前端開口部3aから出没させる回転カム機構18を形成してある。
更に、後軸部材8の後部側面には突起部8bが形成してあり、突起部8bにクリップ7を着脱不能に嵌着してある。
【0027】
回転カム機構18は、後軸部材8の後部内面8cの円周上に等間隔で形成したカム溝8dと、後軸部材8の後端に形成した後端開口部(軸筒2の後端開口部2a)から突出したノック体6と、ノック体6の前方に軸筒2に対して回転可能に配設した筒状の回転カム5とで構成してある。
また、図4に示すように、ノック体6は、前端に山形の凹凸部6aを有し、外面には、カム溝8dに係合する複数の突起6bを、凹凸部6aの頂部6cに位置するよう円周上に等間隔で設けてある。
更に、回転カム5の外周面には、カム溝8dに係合する複数のカム突起5aを形成してあり、カム突起5aの後端に凹凸部6aに噛み合う傾斜面5bで構成した噛合部5cを設けてある。
【0028】
ここで、第1コイルスプリング16(第一の弾性部材)と第2コイルスプリング17(第ニの弾性部材)の弾発力について詳述する。
本実施例では、第1コイルスプリング16及び第2コイルスプリング17の取付時(非ノック時)の弾発力の関係は、第1コイルスプリング16<第2コイルスプリング17に設定してあり、ボールペンレフィル4を口金3の前端開口部3aから突出させた使用時(ノック時)の弾発力の関係も非ノック時と同様に、第1コイルスプリング16<第2コイルスプリング17としてある。尚、コイルスプリングの弾発力は、コイルスプリングの材質、線径、巻き数、自由長、取付長などから計算によって求めることができる。
【0029】
次に、図1及び図5から図7用いて、本実施例のノック式筆記具1のノック操作により、軸筒2に対して口金3及びボールペンレフィル4が出没する状態について説明を行う。尚、図5は本実施例のノック式筆記具1におけるカム動作を模式的に示した図であり、図5(A)は口金3及びボールペンレフィル4の先端が軸筒2内に没入した状態であり、図5(B)は口金3及びボールペンレフィル4の先端が軸筒2から突出した状態を示した図である。また、図6は口金3の前部が軸筒2から突出した状態を示す縦断面図であり、図7は口金3の前部及びボールペンレフィル4の先端が軸筒2から突出した状態を示す縦断面図であ。
図5(A)に示すように、本実施例の回転カム機構18は、ノック体6の突起6b及び回転カム5のカム突起5aをカム溝8dに係合させた際、ノック体6の凹凸部6aの頂部6cが、噛合部5cの傾斜面5bの中間点に位置するようにしてある。
ここで、図1の状態から片手で軸筒2を把持し、軸筒2の後端開口部2aから突出したノック体6の後部を軸筒2における前方側へ指で押圧操作(ノック操作)すると、ノック体6は、後軸部材8の後部内面8cに形成した深いカム溝8daと浅いカム溝3dbに係合した突起6bに導かれて前進し、ノック体6に連接した回転カム5は、深いカム溝3daに係合したカム突起5aに導かれて前進する。
この際、回転カム5の前端部に当接しているボールペンレフィル4も回転カム5に押された前進するが、前述したように第2コイルスプリング17より第1コイルスプリング16の弾発力を小さく設定しているため、第2コイルスプリング17を介してボールペンレフィル4に押された口金3は、第1コイルスプリング16を圧縮しつつその弾発力に抗して前進する。そして、筒状部材15の当接部15bが前軸部材10の後端部10c(軸筒の被当接部)に当接することで、口金3の前進が規制されて停止し、図6の状態となる。そして、ノック体6を更に押圧することで、ボールペンレフィル4が前進すると、口金3に対してボールペンレフィル4が第2コイルスプリング17を圧縮しつつその弾発力に抗して前進する。
【0030】
この時、カム突起5aが、深いカム溝3daの先端に達してカム溝8dから離脱すると、ノック体6の凹凸部6aの頂部6cは、回転カム5の噛合部5cの傾斜面5bの中間に位置する。この時、回転カム5は、ボールペンレフィル4及び口金3を介して第2コイルスプリング17及び第1コイルスプリング16の弾発力で後方へ弾発されているので、後方へ後退しようとして右側から左側に回転し(図5において、噛合部5cの傾斜面5bが右下がりのため)、回転カム5の噛合部5cはノック体6の凹凸部6aを滑って、図5(B)に示すように、カム突起5aの噛合部5cが浅いカム溝8dbの先端の係止斜面8eに係止され、前軸部材10の前端開口部10aからボールペンチップ12を突出させた状態で維持することができる図7の状態となる。
【0031】
また再度、ノック体6を軸筒2の前方側へ押動(ノック操作)することにより、カム突起5aの噛合部5cと浅いカム溝8dbの係止斜面8eとの係止状態が解かれ、第1コイルスプリング16及び第2コイルスプリング17に弾発された回転カム5が後退しようとして右側から左側に回転し(図5において、噛合部5cの傾斜面5bが右下がりのため)、回転カム5のカム突起5aが深いカム溝8daを後退して図5(A)の状態となり、図1に示す前軸部材10の前端開口部10aに口金3及びボールペンチップ12が没入した状態に戻る。
尚、口金3及びボールペンチップ12が没入する際、前述したようにノック時の第1コイルスプリング16と第2コイルスプリング17との弾発力の関係は、第1コイルスプリング16<第2コイルスプリング17としてあるため、突出時とは逆に、第2コイルスプリング17から先に伸びて口金に対してボールペンチップ12が没入し、第1コイルスプリング16が遅れて伸びて軸筒2に対して口金3が没入する。
【0032】
また、本実施例では、ノック時の口金3の筒状部材15の当接部15bが前軸部材10の後端部10c(軸筒の被当接部)に当接した時点(口金の繰出しの終了時)において、第1コイルスプリング16の弾発力<第2コイルスプリング17の弾発力となるよう弾発力を調整してあり、ノック操作時に口金3が確実にボールペンレフィル4より先に突出するため、鞄やポケット等にノック式筆記具1を携帯した状態(非ノック時)において、ノック体6に手や荷物等が接触しても必ず口金3がボールペンレフィル4に対して先に突出するので、ボールペンレフィル4の先端部で他の荷物やポケット内部を汚すこと、及び、ボールペンレフィル4の先端部が傷つくことを防止できる。
【0033】
また、本実施例では、第2コイルスプリング17とボールペンレフィル4の外段部4bとの間にワッシャー13を配設し、ワッシャー13の後端面を筒状部材15(口金3)の内段部15dに当接するよう構成している。このため、非ノック時において、第2コイルスプリング17は、ワッシャー13を介してボールペンレフィル4を後方に弾発し、同時に、先口部材14(口金3)を前方へ弾発する。この時、ワッシャー13がないと、第2コイルスプリング17と第1コイルスプリング16の弾発力が同一になるまで先口部材14(口金3)が前進してしまうおそれがあるが、ワッシャー13が筒状部材15(口金3)に当接することで先口部材14(口金3)を前方へ弾発する力を受止めることから、口金3の突出を抑制し、口金3の破損や口金3による他の物品を傷つけるこを防止することができる。
【0034】
次に、ボールペンレフィル4を交換する動作について図8を用いて説明する。
前述したように口金3、第1コイルスプリング16、第2コイルスプリング17、ワッシャー13は、前軸部材10に対して着脱不納に係着してあるため、前軸部材10を軸筒本体9に対して回転して前軸部材10と軸筒本体9との螺合を解除すると、図8のように、前軸部材10と共に口金3、第1コイルスプリング16、第2コイルスプリング17、ワッシャー13も取り外される。
この状態においてボールペンレフィル4は、軸筒本体9から前方に引っ張ることで取り外すことが出来るため、ボールペンレフィル4を容易に交換することができ、前軸部材を取り外した際に2種類のスプリング及びワッシャー13が前軸部材10からばらけることがない為、部品を紛失することを防止できる。
【0035】
本実施の形態により、片手でのノック操作により容易に口金3及びボールペンレフィル4(筆記体)を時間差をつけつつ繰り出すことができ、更に前軸部材10を軸筒本体9から取り外すことでボールペンレフィル4(筆記体)を容易に交換可能なノック式筆記具1を提供することができた。
【符号の説明】
【0036】
1…ノック式筆記具、
2…軸筒、2a…後部開口部、
3…口金、3a…前端開口部、
4…ボールペンレフィル(筆記体)、4a…外周部、4b…外段部、
5…回転カム、5a…カム突起、5b…傾斜面、5c…噛合部、
6…ノック体、6a…凹凸部、6b…突起6b、6c…頂部、
7…クリップ、
8…後軸部材、8a…係止突起、8b…突起部、8c…後部内面、8d…カム溝、
8da…深いカム溝、8db…浅いカム溝、8e…係止斜面、
9…軸筒本体、9a…雌螺子部、9b…係止孔、
10…前軸部材、10a…前端開口部、10b…雄螺子部、10c…後端部(係止部)、
10d…内方突起、10e…後部内穴、
11…インキ収容筒、
12…ボールペンチップ、
13…ワッシャー、
14…先口部材、14a…内周面、14b…前方内段部、
15…筒状部材、15a…圧入突起、15b…当接部、15c…外段部、
15d…内段部、15e…前部内穴、
15d…前部内穴、
16…第1コイルスプリング(第一の弾発部材)、
17…第2コイルスプリング(第二の弾発部材)、
18…回転カム機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8