【実施例】
【0039】
・実施例1
熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂溶液(住友ベークライト株式会社製、品名;PR−55791B、樹脂濃度60wt%エタノール溶液)に、強化繊維として綾織の炭素繊維織物(東邦テナックス株式会社製、品名;W−3161、繊維重さ200g/m
2)を漬け、取り出した後に25℃の室温にて2時間自然乾燥し、更に60℃の雰囲気下にて1時間乾燥させてプリプレグを4枚作成した。炭素繊維織物は、200×350mmの平面サイズに裁断したもの(重量14g/枚)を使用した。乾燥後のプリプレグは1枚あたり32gであった。
【0040】
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、機械発泡法によって製造されたポリウレタンフォーム(株式会社ロジャースイノアック製、品名;PRON MX−48HF、厚み0.6mm、密度480kg/m
3、スキン層有、引張強度4.24MPa(JIS K 6251)、伸び80%(JIS K 6251)、目付量288g/m
2を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量20g/枚)を1枚、含浸することなく使用した。
【0041】
次に、予め離型剤を表面に塗布したSUS製のプレス成形用の下型(平板状)の上に、プリプレグを2枚、熱硬化性樹脂発泡体を1枚、プリプレグを2枚の順に重ねて配置することにより、熱硬化性樹脂発泡体の両側にそれぞれプリプレグを2枚配置した積層体をプレス成形用下型上にセットした。
【0042】
前記積層体をプレス成形用下型上にセットした状態で、150℃で10分間、10MPaの面圧をかけてプレス成形用上型(平板状)で前記積層体を押圧し、圧縮及び加熱を行ない、圧縮状態でフェノール樹脂を反応硬化させた。その際の積層体の加熱は、上下のプレス型に取り付けられた鋳込みヒーターにより行なった。また、プレス成形用下型と上型間には厚み1.5mmのSUS製スペーサーを介在させて下型と上型間の間隔、すなわち積層体の圧縮厚み(制振材の厚み)を調整した。その後、プレス成形用下型と上型を室温で冷却させた後に下型と上型を開き、芯材の両面に繊維強化複合材料が積層一体化した実施例1の制振材を得た。
【0043】
・実施例2
実施例1におけるスペーサーを厚み1.6mmにした以外は、実施例1と同様にして実施例2の制振材を作成した。
【0044】
・実施例3
実施例1におけるプリプレグを6枚作成して熱硬化性樹脂発泡体の両面にそれぞれ3枚配置し、スペーサーの厚みを2.0mmにした以外は、実施例1と同様にして実施例3の制振材を作成した。
【0045】
・実施例4
実施例3における芯材用の熱硬化性樹脂発泡体を、厚み1.0mm(重量33.6g/枚)のもの(品名、密度、スキン層有、引張強度、伸びは、実施例3と同じ)にした以外は、実施例3と同様にして実施例4の制振材を作成した。
【0046】
・実施例5
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、スラブ発泡のポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名;セルダンパ−BF−150、厚み0.5mm、密度150kg/m
3、スキン層無、引張強度0.8MPa、伸び220%)を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量5.2g/枚)を使用し、スペーサーの厚みを1.6mmにした以外は、実施例4と同様にして実施例5の制振材を作成した。
【0047】
・実施例6
スペーサーの厚みを1.7mmにした以外は、実施例5と同様にして実施例6の制振材を作成した。
【0048】
・実施例7
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、スラブ発泡のポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名;セルダンパ−BF−300、厚み0.5mm、密度300kg/m
3、スキン層無、引張強度1.3MPa、伸び310%)を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量10.5g/枚)を1枚、含浸することなく使用し、また、スペーサーの厚みを2.0mmにした以外は、実施例5と同様にして実施例7の制振材を作成した。
【0049】
・実施例8
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、スラブ発泡のポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名;UGR、厚み0.9mm、密度60kg/m
3、スキン層無、引張強度0.5MPa、伸び180%)を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量3.8g/枚)を1枚、含浸することなく使用した以外は、実施例7と同様にして実施例8の制振材を作成した。
【0050】
・実施例9
実施例7におけるプリプレグを10枚作成し、また、芯材用の熱硬化性樹脂発泡体を厚み1.0mm(重量21g/枚)のもの(品名、密度、スキン層無、引張強度、伸びは実施例7と同じ)にし、熱硬化性樹脂発泡体の両面にプリプレグをそれぞれ5枚配置し、スペーサーの厚みを3.0mmにした以外は、実施例7と同様にして実施例9の制振材を作成した。
【0051】
・実施例10
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、機械発泡のポリウレタンフォーム(株式会社ロジャースイノアック製、品名;PRON NU−60、厚み0.7mm、密度600kg/m
3、スキン層有、引張強度1.30MPa(JIS K 6251)、伸び150%(JIS K 6251)を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量29.4g/枚)を1枚、含浸することなく使用し、スペーサーの厚みを1.7mmにした以外は、実施例1と同様にして実施例10の制振材を作成した。
【0052】
・実施例11
芯材用の熱硬化性樹脂発泡体として、スラブ発泡のポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名;MF50、厚み1.5mm、密度30kg/m
3、スキン層無、引張強度150MPa、伸び200%)を、平面サイズ200×350mmに裁断したもの(重量3.1g/枚)を1枚、含浸することなく使用した以外は、実施例3と同様にして実施例11の制振材を作成した。
【0053】
・実施例12
実施例3における芯材用の熱硬化性樹脂発泡体を、厚み1.1mm(重量37g/枚)のもの(品名、密度、スキン層有、引張強度、伸びは、実施例3と同じ)にし、スペーサーの厚みを2.4mmにした以外は、実施例3と同様にして実施例12の制振材を作成した。
【0054】
・比較例1
実施例1における芯材用の熱硬化性樹脂発泡体に代えて、メラミン樹脂発泡体(BASF社製、品名:バソテクトG、厚み5.0mm、密度9kg/m
3、スキン層無、引張強度148KPa、伸び18%)に予めフェノール樹脂を含浸、乾燥したものを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1の制振材を作成した。
【0055】
・比較例2
実施例1と同様にして作成したプリプレグを6枚重ねてプレス成形用下型上にセットし、スペーサーの厚みを1.5mmとして、150℃で10分間、10MPaの面圧をかけてプレス成形用上型(平板状)で押圧し、圧縮及び加熱を行ない、フェノール樹脂を反応硬化させ、比較例2の制振材を作成した。
【0056】
前記各実施例及び各比較例の制振材について、制振材の厚み、繊維強化複合材料の全層の厚み、芯材の厚み、芯材の厚み比率、比重、芯材の厚み中央部の気泡構造、損失係数、曲げ強度、曲げ弾性率について測定または判断した。結果は
図4の表に示す。
【0057】
制振材の厚みは、マイクロメーターにより測定した。
繊維強化複合材の全層の厚み(Tcf)は、繊維強化複合材一層の厚み(マイクロメーターにより測定)に使用枚数を乗じた値である。
芯材の厚み(Tcr)は、制振材の厚みから繊維強化複合材の全体の厚みを引くことで算出した。
芯材の厚み比率(%)は、Tcr/Tcf×100で算出した。
比重は、制振材を5cm角に切り出し、その重量を体積で除した値である。
芯材の厚み中央部の気泡構造は、制振材を裁断し、その断面を株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープにより観察した。芯材の厚み中央部に、熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造となっているか否かについて観察、判断した。また、同時に芯材と繊維強化複合材料との境界面には、熱硬化性樹脂が固化した層の存在を観察、判断した。結果は、芯材の繊維強化複合材料との境界面に熱硬化性樹脂が固化した層があり、かつ芯材の厚み中央部で熱硬化性樹脂が観察できない気泡構造となっている場合に「〇」とし、芯材の厚み中央部まで熱硬化性樹脂の存在が確認できる場合に「×」とした。
また。総合評価は、曲げ弾性率10GPa以上且つ損失係数0.03以上の場合に「◎」、曲げ弾性率3GPa以上且つ損失係数0.03以上の場合に「〇」、損失係数が0.03より小さい場合に「×」とした。
【0058】
損失係数は、JIS K 7391:2008(非拘束形制振複合はりの振動減衰特性試験方法)による中央加振法(スイープ゜加振による、但し、ズーム分析・マスキャンセル処理無し)にしたがって測定した(サンプルサイズ25×300mm)。損失係数の値が大ほど、制振性が高い。
曲げ強度は、JIS K7074−1988 A法にしたがって測定した。
曲げ弾性率は、JIS K 7074−1988 A法にしたがって測定した。曲げ弾性率は剛性の指標となる物性値であり、曲げ弾性率の値が大ほど、剛性が高い。
【0059】
実施例1は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.6mm、繊維強化複合材料の積層数が4、制振材の厚みが1.5mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.11、損失係数が0.1160、曲げ強度が180MPa、曲げ弾性率が12.4GPaであり、軽量及び制振性に優れ、かつ剛性の高いものである。
【0060】
実施例2は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.6mm、繊維強化複合材料の積層数が4、制振材の厚みが1.6mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.14、損失係数が0.0633、曲げ強度が115MPa、曲げ弾性率が10.5GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0061】
実施例3は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.6mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが2.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.35、損失係数が0.0602、曲げ強度が217MPa、曲げ弾性率が14.3GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0062】
実施例4は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが1.0mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが2.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.30、損失係数が0.0332、曲げ強度が110MPa、曲げ弾性率が10.2GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0063】
実施例5は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.5mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが1.6mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.40、損失係数が0.0305、曲げ強度が476MPa、曲げ弾性率が40.2GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0064】
実施例6は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.5mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが1.7mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.40、損失係数が0.0713、曲げ強度が408MPa、曲げ弾性率が38.2GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0065】
実施例7は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.5mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが2.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.22、損失係数が0.1777、曲げ強度が180MPa、曲げ弾性率が12.5GPaであり、軽量及び制振性に優れ、かつ剛性の高いものである。
【0066】
実施例8は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.9mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが2.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.29、損失係数が0.0590、曲げ強度が175MPa、曲げ弾性率が11.2GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0067】
実施例9は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが1.0mm、繊維強化複合材料の積層数が10、制振材の厚みが3.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.35、損失係数が0.0561、曲げ強度が305MPa、曲げ弾性率が23.7GPaであり、軽量及び制振性が良好、かつ剛性の高いものである。
【0068】
実施例10は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが0.7mm、繊維強化複合材料の積層数が4、制振材の厚みが1.7mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.14、損失係数が0.3290、曲げ強度が81MPa、曲げ弾性率が3.3GPaであり、軽量及び制振性に優れているが、剛性については実施例1〜9よりも低いものである。
【0069】
実施例11は、芯材が表面にスキン層の無い熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが1.5mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚み2.0mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.27、損失係数が0.1413、曲げ強度が92MPa、曲げ弾性率が4.8GPaであり、軽量及び制振性に優れているが、剛性については実施例1〜9よりも低いものである。
【0070】
実施例12は、芯材が表面にスキン層を有する熱硬化性樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが1.1mm、繊維強化複合材料の積層数が6、制振材の厚みが2.4mm、芯材の境界面に熱硬化性樹脂が含浸硬化、芯材の厚み中央が熱硬化性樹脂の含浸していない気泡構造、制振材の比重が1.32、損失係数が0.1360、曲げ強度が89MPa、曲げ弾性率が3.5GPaであり、軽量及び制振性に優れているが、剛性については実施例1〜9よりも低いものである。
【0071】
比較例1は、芯材がメラミン樹脂発泡体、積層一体化前の芯材(熱硬化性樹脂発泡体)の厚みが5.0mm、繊維強化複合材料の積層数が4、制振材の厚みが1.5mm、芯材の厚み中央まで熱硬化性樹脂が含浸し、制振材の比重が1.38、損失係数が0.0081、曲げ強度が412MPa、曲げ弾性率が46.0GPaであり、制振性に劣り、剛性については実施例1〜12よりも高いものである。
【0072】
比較例2は、繊維強化複合材料の6層のみで構成され、制振材の厚みが1.5mm、比重が1.57、損失係数が0.0031、曲げ強度が451MPa、曲げ弾性率が50.0GPaであり、制振性に劣り、剛性については実施例1〜12よりも高いものである。
【0073】
このように、本発明の制振材は、制振性、軽量性及び剛性が良好なものであり、制振性、軽量性及び剛性が求められる携帯OA機器のケース等の材料として好適である。