特開2018-187831(P2018-187831A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-187831(P2018-187831A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】筆記具用水性インキ収容体
(51)【国際特許分類】
   B43L 25/00 20060101AFI20181102BHJP
   C09D 11/16 20140101ALI20181102BHJP
【FI】
   B43L25/00
   C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-91594(P2017-91594)
(22)【出願日】2017年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】西川 知明
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BE01
4J039BE02
4J039CA03
4J039CA06
4J039GA26
4J039GA28
(57)【要約】
【課題】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物をインキ収容体に収容した際にも析出物を生じることなく、インキ組成物中の水分蒸発を抑制することができ、長期間安定したインキ組成を維持できる保存安定性に優れた筆記具用水性インキ収容体を提供すること。
【解決手段】
着色剤と水を含む筆記具用水性インキ組成物を樹脂製のインキ収容部に収容するインキ収容体であって、前記インキ収容体の壁面が特定の樹脂である筆記具用水性インキ収容体とした。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と水を含む筆記具用水性インキ組成物を収容するインキ収容体であって、前記インキ収容体の壁面が少なくともシクロオレフィン樹脂であることを特徴とする筆記具用水性インキ収容体。
【請求項2】
前記インキ収容体の壁面が、収容体に収容するインキに接する第1の層と第1の層の外側に第2の層を設けた多層構造であり、前記第1の層がシクロオレフィン樹脂であり、第2の層がエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用水性インキ収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキ収容体に関する。更に詳細には、インキの保存安定性に優れるインキ収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、万年筆やマーカー類など繰り返しインキを補充して使用される筆記具に用いられる筆記具用水性インキ組成物は、補充用インキとしてガラス瓶などの容器に収容されている。ガラス瓶は、安価で成形が容易であり、所望の強度が得やすい為、広く利用されている。しかしながら、水性インキを収容した状態で長期間経時すると、ガラス瓶から水性インキ中にアルカリ成分が溶出することが知られている。その為、用いるインキによっては、溶出したアルカリ成分とインキ中の染料などの成分が反応して析出物が形成され、該インキを使用した筆記具において、該析出物がインキ流路を塞ぎ、筆跡がかすれたり、筆記不能になるなど、筆記性能に影響を及ぼすことがある。その為、アルカリ成分の溶出が少ないガラスを用いることも検討されているが、ソーダ石灰ガラスと比べ高価であったり、また、インキ収容部のガラス表面にサルファー処理などの脱アルカリ処理を施すなどして、アルカリ成分の溶出を防ぐことを行っている(例えば特許文献1)が、製造時の工数が増えてコスト高になってしまうなどの課題が生じてしまう。さらに、ガラスを用いていることから、誤って落下した場合には破損して、インキと収容体が共に使用出来なくなるなどの課題があった。
一方、樹脂製の容器についても各種検討されている(例えば特許文献2)。特許文献2は、ポリオレフィン樹脂を用いるが、ポリオレフィン樹脂では、水分蒸発を十分に抑制することが困難であるなどの課題があった。また、水蒸気バリア層を考慮した樹脂製の容器が検討されている(例えば特許文献3)。しかしながら、特許文献3の樹脂製の容器は、粉体を内容物とする容器であって、筆記具用水性インキの収容体として、筆記具用水性インキを収容した際の課題については、検討されていない。前記の通り、筆記具用水性インキの収容体としては、まだまだ検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−141775号公報
【特許文献2】特開2009−248996号公報
【特許文献3】特開2013−154939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物をインキ収容体に収容した際にも析出物を生じることなく、インキ組成物中の水分蒸発を抑制することができ、長期間安定したインキ組成を維持できる保存安定性に優れた筆記具用水性インキ収容体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筆記具用水性インキ収容体(以下、単にインキ収容体と表すことがある)の壁面をシクロオレフィン樹脂(以下、COPと表すことがある)とすることなどにより、前記課題が解決された。
すなわち、本発明は、
「1.着色剤と水を含む筆記具用水性インキ組成物を収容するインキ収容体であって、前記インキ収容体の壁面が少なくともシクロオレフィン樹脂であることを特徴とする筆記具用水性インキ収容体。
2.前記インキ収容体の壁面が、収容体に収容するインキに接する第1の層と第1の層の外側に第2の層を設けた多層構造であり、前記第1の層がシクロオレフィン樹脂であり、第2の層がエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと表すことがある)であることを特徴とする第1項に記載の筆記具用水性インキ収容体。」に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インキ収容体の壁面をシクロオレフィン樹脂としたことにより、インキ物性に影響を与えたり、インキ成分と反応して析出物を生じさせたりすることがない。さらに、水分蒸発を抑制することができるため、安定したインキ組成を長期間維持できる。また、落下などによるインキ収容体の破損を防ぐことができる。さらに、輸送時に軽量化することができ、輸送コストを抑えることができる。さらに、透明性が高いことから、収容するインキを外部から視認することができ視認性が高まるなど優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0008】
本発明による筆記具用インキ収容体の壁面をシクロオレフィン樹脂とする。シクロオレフィン樹脂としたことにより、インキ収容体にインキを収容した際に、インキが壁面のシクロオレフィン樹脂と接触することとなるが、樹脂からインキ中に溶出する成分を含まないため、ガラス製のインキ収容体を用いた際に起こるアルカリ成分との反応による析出物の発生がない。また、シクロオレフィン樹脂は、他の樹脂と比較して水蒸気透過率が低いため、インキ中の水分が透過し蒸発することが少ないので、インキ物性を長時間安定して保つことができる。
【0009】
本発明による筆記具用インキ収容体は、その壁面が単層構造であるほか、インキと接する第1の層と第1の層の外側に第2の層を設けた2層構造、第2の層のさらに外側に第3の層を設けた3層構造にしたものなど、多層構造とすることができる。具体的には、単層構造としてはシクロオレフィン樹脂、2層構造としては、インキと接する第1の層をシクロオレフィン樹脂、第1の層の外側の第2の層をエチレン−ビニルアルコール共重合体とした第1の層/第2の層がCOP/EVOHの構造が挙げられる。第2の層にEVOHを用いることで、ガスバリア性を向上することができるため、COP単独で用いた場合より、インキ収容体に収容したインキの変色などインキ組成物の性能や物性に影響を及ぼすことが少ないため好ましい。さらに、第2の層の外側に第3の層を設けた3層構造とすることができるが、第1の層/第2の層/第3の層がCOP/EVOH/COPの構造、COP/EVOH/ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと表すことがある)の構造、などが挙げられる。EVOHは、水分と接するとガスバリア性が低下するが、3層構造とした際に、第3の層に水蒸気透過率の低いCOPを用い第2の層をEVOHとすることで、EVOHが直接インキや外気に触れることがなく、水や水蒸気との接触を避けることが出来るのでより好ましい。さらに、COPは手脂などの油脂類と接触するとクラックなどの劣化が起こるため、第3の層をPETとするとその劣化を防げるため、特に好ましい。また、第3の層をCOPからPETにすることにより、コストを削減することができることからも、特に好ましい。
さらに、多層構造の場合、各層間に接着層を設けて接着することができる。また、各層に用いる樹脂や接着層に紫外線吸収剤などを配合することで耐光性を向上することができる。
【0010】
<インキ収容体の製造方法>
本発明による筆記具用水性インキ収容体は、インジェクション法、ダイレクトブロー法、インジェクションブロー法、または、それらを組み合わせた方法で製造することができる。
【0011】
<インキ組成物>
本発明によるインキ収容体に収容可能な筆記具用水性インキ組成物としては、万年筆やマーカー類に用いることができる、筆記具用水性インキ組成物を用いることができる。
【0012】
<着色剤>
前記インキ組成物に用いる着色剤としては、通常、筆記具用水性インキ組成物に用いる染料、顔料などが挙げられる。
【0013】
前記染料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料および食用色素など各種染料が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。染料の添加量は、インキ組成物の総質量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0014】
前記酸性染料として具体的には、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、アシッドレッド52、アシッドレッド289、アシッドレッド388、アシッドレッド87(エオシン)、アシッドレッド92(フロキシン)、アシッドレッド51(エリスロシン)、アシッドレッド94(ローズベンガル)、アクリジンレッド(C.I.45000)、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン6G(C.I.ベーシックレッド1)、ローダミン6Gエキストラ、ローダミン116、ローダミンB(C.I.45170)、テトラメチルローダミン過塩素酸塩、ローダミン3B、ローダミン19、スルホローダミン、ピロニンG(C.I.45005)、ローダミンS(C.I.45050)、ローダミンG(C.I.45150)、エチルローダミンB(C.I.45175)、ローダミン4G(C.I.45166)、ローダミン3GO(C.I.45215)、スルホローダミンGなどが挙げられる。
【0015】
塩基性染料としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)などが挙げられ、直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19、食用色素としては、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)などが挙げられる。
【0016】
前記顔料としては、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。更に、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子や、無色樹脂粒子を顔料もしくは染料で着色したもの等を用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1〜20質量%が好ましい。
【0017】
<その他>
前記インキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、水溶性有機溶剤、pH調整剤、保湿剤、防腐剤、防錆剤などの各種添加剤を含んでもよい。
【0018】
水溶性有機溶剤としては、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどのグリコール類、(ii)メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコールなどのアルコール類、および(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシブタノール、または3−メトキシ−3−メチルブタノールなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。水溶性有機溶剤の添加量は、インキ組成物に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0019】
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンやジエタノールアミンなどの水溶性の塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられる。pH調整剤の添加量は、インキ組成物に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0020】
保湿剤としては、前記水溶性有機溶剤の他に尿素、ソルビットなどが挙げられる。保湿剤の添加量は、インキ組成物に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0021】
防腐剤としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3オン、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール及びフェノールなどが挙げられる。
【0022】
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。また、水溶性樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを用いることができる。さらに、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂など含むエマルジョンを添加することができる。
【0023】
さらには、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサンなどの消泡剤を添加することもできる。
【0024】
本発明による筆記具用水性インキ収容体は、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィー用のペン、各種マーカー類など各種筆記具用水性インキを収容可能である。万年筆などのくし溝を利用したインキ供給機構を備える筆記具や、マーカー類などに代表される繊維収束体を利用したインキ供給機構を備える筆記具などの、毛細管現象を利用したインキ供給機構を備える筆記具は、そのインキ供給機構などから、インキ粘度が高かったり、インキ中に析出物などの不溶物があると、インキの供給が少なくなり、筆記する際にその筆跡がかすれたり、インキの供給が途切れた際には筆記不能になる場合があった。本発明による筆記具用水性インキ収容体に収容したインキは、析出物が生じたり、水分蒸発によりインキ粘度が高くなるなどのインキ物性の変化やインキ性能の変化を生じることが少ないので、前記筆記具用のインキ収容体として特に好ましく用いられる。
【0025】
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【実施例】
【0026】
(筆記具用水性インキ組成物)
・C.Iアシッドレッド87(着色剤:赤色染料) 0.5質量部
・C.Iアシッドイエロー42(着色剤:黄色染料) 0.5質量部
・エチレングリコール 2.0質量部
・トリエタノールアミン 1.0質量部
・防腐剤 0.2質量部
(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン
ロンザジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2(S))
水 95.8質量部
上記組成物をプロペラ攪拌により攪拌混合を行い、筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0027】
(実施例1〜3、比較例1、2)
インキ収容体の構造を表1に示したようにし、インジェクションブロー成形により、容量が15mlの実施例1〜3、比較例1、2のインキ収容体を作製し、得られたインキ収容体に上記筆記具用水性インキ組成物を収容した。
【0028】
【表1】
【0029】
前記インキ収容体を用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
水分蒸発試験:各インキ収容体を50℃の環境下で3ヶ月放置した後、初期と放置後のインキ減量を水分蒸発量として換算した。
A:水分蒸発量が0.4質量%未満。
B:水分蒸発量が0.4質量%以上1.0質量%未満。
C:水分蒸発量が1.0質量%以上。
析出試験:各インキ収容体を50℃の環境下で3ヶ月放置した後、室温に戻した状態でインキ収容部の底部からインキ組成物を採取し、当該インキ組成物を顕微鏡観察により観察した。
A:析出物が全く見られない。
B:析出物がわずかに観察されるがその量は少ない。
C:析出物が中量観察される。
D:析出物が大量に観察される。
手脂試験:各インキ収容体の最も外側の層に手脂をつけ、50℃の環境下で3ヶ月放置した後、その表面状態を目視により観察した。
A:初期と変化が見られない
B:表面に若干のクラックが見られ、わずかに樹脂の劣化が見られる。
C:表面にはっきりとクラックが見られ、樹脂の劣化が見られる。
筆記性能試験:50℃の環境下で3ヶ月放置した後、室温に戻したインキ収容体に収容したインキ組成物を、株式会社パイロットコーポレーション製万年筆(カスタム74:ペン種M)に充填し、筆記用紙Aに筆記を行った。その際の筆跡を目視により観察した。
A:筆跡にかすれもなく、良好な筆跡が得られる。
B:筆跡にかすれが生じる。
C:析出物がインキ流路を塞ぎ、インキが出てこない為、筆記不能。
【0030】
上記結果からも明らかなように、実施例1〜3のインキ収容体は、COPを用いたことから、比較例1のPET単層構造のインキ収容体と比較して、収容したインキの水分蒸発が抑制されていた。さらに、ガラス製のインキ収容体のような析出物も見られず、インキ収容体として優れていた。また、実施例3のインキ収容体は、最も外側の層である第3の層にPETを用いたため、クラックなどが発生することなく、インキ収容体として優れた性能を示した。さらに、実施例1〜3の筆記具用水性インキ収容体に収容したインキは、経時後に筆記具に充填した際にも、良好な筆跡が得られるなど、インキ保存安定性に優れたインキ収容体であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による筆記具用水性インキ収容体は、万年筆、筆ペン、カリグラフィー用のペン、各種マーカー類など各種筆記具用水性インキを収容するインキ収容体として用いることができる。