【解決手段】ステアリングハンドル5を支持するステアリングポスト5aの横側方位置で揺動操作可能に設けられたトラクタ1の変速操作装置100であって、第一揺動軸110を中心として揺動可能であり、変速機構を変速可能なケーブル7と連結された第一揺動部材120と、前記第一揺動軸110とは非平行な第二揺動軸160を中心として前記第一揺動部材120に対して揺動可能な第二揺動部材130と、前記第二揺動部材130に固定される操作具140と、前記第二揺動軸160を中心とする前記第二揺動部材130の揺動に応じて、前記第一揺動軸110を中心とする前記第一揺動部材120の揺動を規制可能な規制機構150と、を具備した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、2方向に揺動可能な操作具を有する変速操作装置の操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ステアリングハンドルを支持するステアリングポストの横側方位置で揺動操作可能に設けられたトラクタの変速操作装置であって、第一揺動軸を中心として揺動可能であり、変速機構を変速可能な変速部材と連結された第一揺動部材と、前記第一揺動軸とは非平行な第二揺動軸を中心として前記第一揺動部材に対して揺動可能な第二揺動部材と、前記第二揺動部材に固定される操作具と、前記第二揺動軸を中心とする前記第二揺動部材の揺動に応じて、前記第一揺動軸を中心とする前記第一揺動部材の揺動を規制可能な規制機構と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記第一揺動軸は、前記第二揺動軸よりも下方に配置されているものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二揺動部材は、前記第一揺動軸の軸線方向において、前記第一揺動軸と隙間をあけて配置されているものである。
【0011】
請求項4においては、前記第一揺動部材は、本体部と、前記本体部から前記第一揺動軸と略平行に延びるように設けられた延設部と、を具備し、前記第二揺動部材は、略下方に向かって開放するような略U字状に形成されると共に、前記延設部が挿通され、前記第二揺動軸を介して当該延設部と連結されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記延設部は、一対の平面部を有し、当該平面部において前記第二揺動部材と当接するものである。
【0013】
請求項6においては、前記規制機構は、前記第二揺動部材に固定される第一係合部材と、前記第二揺動部材が前記第二揺動軸を中心として一方向に揺動した際に前記第一係合部材と係合する第二係合部材と、を具備するものである。
【0014】
請求項7においては、前記第一係合部材は、前記第二揺動部材に挿通された状態で固定されるものである。
【0015】
請求項8においては、前記操作具は、前記第二揺動部材に固定された端部が棒状に形成され、前記第一係合部材は、棒状に形成されると共に、前記操作具の前記第二揺動部材に固定された端部の延長線上に位置するように前記第二揺動部材に固定されるものである。
【0016】
請求項9においては、前記規制機構は、前記第二揺動部材が前記一方向に揺動するように当該第二揺動部材を付勢する付勢部材をさらに具備するものである。
【0017】
請求項10においては、前記付勢部材は、前記第二揺動軸に支持されると共に、一部分が前記第二揺動部材に係合され、他の部分が前記延設部に係合されるものである。
【0018】
請求項11においては、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のトラクタの変速操作装置を具備するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、第二揺動軸を中心として、第二揺動部材を適宜揺動させることで、第一揺動軸を中心とする第一揺動部材の揺動を適宜の変速位置で規制することができるため、操作性を向上させることができる。また、縦方向の軸の傾斜のみで変速できる構造であるため、ステアリングハンドル側方という限られた場所であっても、十分な強度と操作性を有し、かつ、2方向に揺動可能な操作具を有する変速操作装置を簡素な構成とすることができる。
【0021】
請求項2においては、変速において比較的作業者の力がかかる第一揺動軸を第二揺動軸の下方に配置することで、変速操作装置の耐久性を向上させることができる。また、第二揺動軸を上方に配置することで、第一揺動軸を中心として揺動する操作具の可動範囲を確保しつつ、第二揺動軸を中心として揺動する規制機構の可動範囲を最大限に確保することが可能となり、ひいては変速操作装置のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
請求項3においては、第一揺動軸の軸端と第二揺動部材との間に隙間を設けることにより、第二揺動部材と第一揺動軸との干渉を回避し易くするとともに、交差する部分がないため組み付けを容易にすることができる。
【0023】
請求項4においては、第二揺動部材に延設部を挿通することで、如何なる方向から力が加わったとしても当該第二揺動部材から延設部が非連結状態となることを防止し、常時安定した状態で連結することができる。
【0024】
請求項5においては、一対の平面部(2平面)において第二揺動部材と当接された状態で連結されるため、当該連結を強固にすることができる。
【0025】
請求項6においては、第二揺動部材が第二揺動軸を中心とした一方向のみ揺動させる構造であり、複数の部品が介在していないため、壊れにくく耐久性を有することに加え、規制機構の組付けを容易とすることができる。
【0026】
請求項7においては、第二揺動部材に第一係合部材を挿通することで、当該第二揺動部材と第一係合部材とを安定して固定することができ、強度も確保することができる。
【0027】
請求項8においては、第一係合部材が操作具の第二揺動部材に固定された端部の延長線上に位置することで、変速操作装置のコンパクト化を図るとともに、規制機構の操作感を向上させることができる。
【0028】
請求項9においては、操作具を操作しない場合には第一揺動部材の揺動を規制することができる。
【0029】
請求項10においては、変速操作装置をコンパクトに形成することができる。
【0030】
請求項11においては、2方向に揺動可能な操作部を有する変速操作装置の操作性を向上させるとともに、簡素な構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず、
図1及び
図2を参照して、変速操作装置100を具備するトラクタ1の概略について説明する。
【0033】
トラクタ1は、ボンネット2によって覆われたエンジン3が配置される原動部4、及び当該原動部4の後方(
図1における紙面右側)に配置され、ステアリングハンドル5や各種の操作具が配置される運転部6等を具備する。
【0034】
ステアリングハンドル5を支持するステアリングポスト5aの左側部には、変速操作装置100が設けられる。本実施形態に係る変速操作装置100は、トラクタ1の前進、後進及び中立を切り換える(変速する)操作を行うためのものである。変速操作装置100にはケーブル7の一端が連結される。ケーブル7の他端はリンク機構8を介してコントロールバルブ9と接続される。コントロールバルブ9は、トラクタ1の変速機構(トランスミッション)の変速段を変更(変速)させるためのものである。
【0035】
このようなトラクタ1において、変速操作装置100を操作することにより、ケーブル7及びリンク機構8を介してコントロールバルブ9を操作することができる。これによってトラクタ1の変速機構の変速を行い、トラクタ1の前進、後進及び中立を切り換えることができる。
【0036】
次に、
図3から
図8までを参照して、変速操作装置100の各部材の構成について説明する。変速操作装置100は、主として第一揺動軸110、第一揺動部材120、第二揺動部材130、操作具140、規制機構150及び第二揺動軸160を具備する。
【0037】
第一揺動軸110は、後述する第一揺動部材120を揺動可能に支持するものである。第一揺動軸110は、略円柱状に形成される。第一揺動軸110は、ステアリングポスト5aの上下中途部に固定される。第一揺動軸110は、その軸線X(
図5参照)が左右方向を向くように配置される。第一揺動軸110は、ステアリングポスト5aから左方に向かって延びるように配置される。
【0038】
第一揺動部材120は、第一揺動軸110を中心として揺動可能なものである。第一揺動部材120は、主として本体部122及び延設部124を具備する。
【0039】
本体部122は、第一揺動部材120の主たる構造体となるものである。本体部122は、板材を適宜屈曲させて形成される。本体部122には、主として円筒支持部122a、連結部122b及び係合部122cが形成される。
【0040】
円筒支持部122aは、第一揺動軸110によって支持される部分である。円筒支持部122aは、略円筒状に形成される。円筒支持部122aは、その軸線が左右方向を向くように配置される。円筒支持部122aは、本体部122の後下部に形成(固定)される。
【0041】
連結部122bは、ケーブル7と連結される部分である。連結部122bは、本体部122の前端部を左方及び前方へと適宜屈曲させることで形成される。
【0042】
係合部122cは、ケーブル7を係合させるための部分である。係合部122cは、連結部122bの前端部に形成される。係合部122cは、連結部122bから左方に向かって突出するように形成される。
【0043】
延設部124は、後述する第二揺動部材130と連結される部分である。延設部124は、略円柱状に形成される。延設部124は、本体部122の後上部(円筒支持部122aよりも高い位置)に固定される。延設部124は、その軸線が左右方向を向くように(円筒支持部122aと略平行に)配置される。延設部124は、本体部122から左方に向かって延びるように配置される。延設部124には、主として平面部124a及び貫通孔124bが形成される。
【0044】
平面部124aは、延設部124の左端部に前後一対形成される平面状の部分である。前後一対の平面部124aは、互いに平行となるように形成される。
【0045】
貫通孔124bは、延設部124を前後に貫通するように形成される。貫通孔124bは、前後一対の平面部124aを連通するように形成される。
【0046】
第二揺動部材130は、後述する第二揺動軸160を中心として揺動可能なものである。第二揺動部材130は、主として板状部132及び連結部134を具備する。
【0047】
板状部132は、上下に長い略矩形板状に形成される部分である。板状部132は、互いに前後に対向するように一対形成される。前後一対の板状部132には、当該一対の板状部132を前後に貫通するように貫通孔132aが形成される。
【0048】
連結部134は、前後一対の板状部132を連結する部分である。連結部134は、前後一対の板状部132の上端同士を連結するように形成される。連結部134は、側面視(
図7参照)において略円弧状に屈曲するように形成される。
【0049】
このようにして、第二揺動部材130は、側面視において下方が開放するような略U字状に形成される。このような第二揺動部材130は、1枚の板状部材を適宜屈曲させることで形成される。すなわち、板状部材の中央部を略円弧状に屈曲させることで、連結部134が形成される。また板状部材の両端部(屈曲された部分の両側)が板状部132となる。
【0050】
操作具140は、作業者(トラクタ1の搭乗者)がトラクタ1の変速(前進、後進及び中立の切り換え)を行う際に操作するものである。操作具140は、主として棒状部142及び把持部144を具備する。
【0051】
棒状部142は、略円柱状(棒状)の部材を適宜屈曲させて形成されるものである。具体的には、棒状部142の下部は、略上下方向に延びるように形成され、棒状部142の上部は、左方に傾倒するように形成される。棒状部142の下端部は、第二揺動部材130の連結部134に固定される。
【0052】
把持部144は、作業者が操作具140を操作する際に把持する部分である。把持部144は、作業者が把持し易い適宜の形状に形成される。把持部144は、棒状部142の上端に固定される。
【0053】
規制機構150は、第二揺動軸160を中心とする第二揺動部材130の揺動を、適宜の位置で規制するものである。規制機構150は、主として第一係合部材152、第二係合部材154及び付勢部材156を具備する。
【0054】
第一係合部材152は、略円柱状(棒状)の部材である。第一係合部材152の上端部は、第二揺動部材130に挿通された状態(前後一対の板状部132に挟まれた状態)で、当該第二揺動部材130に固定される。この際、第一係合部材152は、操作具140の棒状部142の下端部の延長線上(同一軸線上)に位置するように配置される。第一係合部材152の下端部には、当該第一係合部材152を中心として回転可能なローラ152aが設けられる。
【0055】
第二係合部材154は、板状の部材を適宜屈曲して形成される部材である。第二係合部材154は、第一揺動軸110よりも低い位置において、ステアリングポスト5aに固定される。第二係合部材154の上部は、左方に向かって延びるように屈曲される。第二係合部材154の上部(左方に延びる部分)には、複数の溝(中立溝154a、前進溝154b及び後進溝154c)が形成される。
【0056】
中立溝154a、前進溝154b及び後進溝154cは、第二係合部材154の左上端部を右方に向かって切り欠くようにして形成される。前進溝154bは、中立溝154aの後側に隣接するように形成される。後進溝154cは、中立溝154aの前側に隣接するように形成される。
【0057】
付勢部材156は、第二揺動部材130を、第二揺動軸160を中心とする一方向に向かって付勢するものである。付勢部材156は、金属製の素線を適宜屈曲、巻回等して形成される。付勢部材156は、主として巻回部156a、端部156b及び連結部156cを具備する。
【0058】
巻回部156aは、素線を円形状に巻回して形成された部分である。巻回部156aは、互いに前後に対向するように一対形成される。
【0059】
端部156bは、素線の端部であり、前後一対の巻回部156aからそれぞれ下方へと延びるように形成された部分である。
【0060】
連結部156cは、素線の中途部であり、前後一対の巻回部156aを連結する部分である。連結部156cは、巻回部156aの右上方に形成される。
【0061】
第二揺動軸160は、第二揺動部材130を揺動可能に支持するものである。第二揺動軸160は、略円柱状の軸部と、頭部と、を有するボルト状に形成される。第二揺動軸160は、その軸線Y(
図4参照)が略前後方向を向くように配置される。すなわち、第二揺動軸160は、第一揺動軸110と平行とならないように配置される。第二揺動軸160の前端部には、ナット162を締結することができる。
【0062】
次に、上述のような変速操作装置100の各部材を組み付ける様子について説明する。
【0063】
図3に示すように、第一揺動部材120の円筒支持部122aには、第一揺動軸110が挿通される。これによって、第一揺動部材120は、第一揺動軸110(軸線X)を中心として前後に揺動可能となる。
【0064】
また、第一揺動部材120の係合部122cには、ケーブル7の端部が係合される。これによって、第一揺動部材120を前後に揺動させると、ケーブル7を介して変速を行うことができる。
【0065】
図4、並びに
図6から
図8までに示すように、第二揺動軸160は、付勢部材156の巻回部156a、第二揺動部材130の貫通孔132a、及び第一揺動部材120の貫通孔124bに挿通される。この状態で当該第二揺動軸160にナット162が締結されることで、各部材が連結される。
【0066】
これによって、第二揺動部材130は、第二揺動軸160(軸線Y)を中心として左右に揺動可能となる。ここで、第一揺動部材120の延設部124は円筒支持部122aよりも高い位置に配置されているため、第二揺動軸160は第一揺動軸110よりも高い位置に配置されることになる。このように第一揺動軸110と第二揺動軸160の位置をずらす(互いの軸線が交わらないように配置する)ことで、当該第一揺動軸110と第二揺動軸160を左右方向及び前後方向に近づけて配置し易くなり、変速操作装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0067】
またこの際、第二揺動部材130の一対の板状部132の間に延設部124が挿通される。当該第二揺動部材130の板状部132と延設部124の平面部124aが当接するため、第二揺動部材130は延設部124に対して前後に揺動することはできない。
【0068】
また、付勢部材156の巻回部156aに第二揺動軸160が挿通されることによって、当該付勢部材156が第二揺動軸160に支持される。この際、付勢部材156の端部156bは第二揺動部材130の左側面の下部に係合されると共に、付勢部材156の連結部156cは延設部124の上端面(第二揺動軸160よりも右側)に係合される。これによって、第二揺動部材130は、後方から見て(
図8参照)第二揺動軸160を中心とする反時計回りに回動するように付勢される。
【0069】
なお、付勢部材156は、全体として下方(端部156b側)が開放された略U字状に形成されている。付勢部材156をこのような形状とすることで、当該付勢部材156を組み付ける際の作業性を向上させることができる。具体的には、当該付勢部材156を組み付ける際には、作業者は、まず第二揺動軸160を巻回部156aに挿通すると共に付勢部材156の連結部156cを延設部124に係合させる。この際、連結部156cは付勢部材156の上部に形成されているため、作業者から視認し易く、作業を容易に行うことができる。その後、作業者は、付勢部材156の2つの端部156bを第二揺動部材130にそれぞれ係合させる。この際には、すでに連結部156cが延設部124に係合されているため、付勢部材156の位置ずれ等の心配をすることなく作業を行うことができる。
【0070】
付勢部材156の付勢力によって、第二揺動部材130に固定された第一係合部材152は第二係合部材154に近接するように付勢されることになる。これによって、作業者が操作具140を操作しない場合には、第一係合部材152の下端部(ローラ152a)は、第二係合部材154に形成された複数の溝(中立溝154a、前進溝154b及び後進溝154c)のいずれかに係合される。
【0071】
なお、第二係合部材154の中立溝154a、前進溝154b及び後進溝154cは、それぞれトラクタ1の変速段(中立、前進及び後進)に対応している。すなわち、変速操作装置100によってトラクタ1の変速機構が中立に切り換えられている場合、第一係合部材152は中立溝154aに係合する。同様に、変速操作装置100によってトラクタ1の変速機構が前進(後進)に切り換えられている場合、第一係合部材152は前進溝154b(後進溝154c)に係合する。
【0072】
また、第二揺動軸160を介して第二揺動部材130を第一揺動部材120に連結した状態では、左右方向(第一揺動軸110の軸線X方向)において、第一揺動軸110と第二揺動部材130との間に隙間が形成される(
図8参照)。すなわち、後方から見て、第一揺動軸110の左端と第二揺動部材130との間には隙間が形成される。このような隙間を確保することによって、第一揺動軸110と第二揺動部材130との干渉を回避することができる。
【0073】
次に、
図6から
図8までを参照して変速操作装置100の操作方法について説明する。
【0074】
作業者は、操作具140を前後に揺動させることで第一揺動部材120を前後に揺動させ、ケーブル7を介してトラクタ1の前進、後進及び中立の切り換えを行うことができる。
【0075】
ここで、操作具140を操作していない場合には、付勢部材156の付勢力によって第一係合部材152が第二係合部材154の溝に係合しているため、当該操作具140をそのまま前後に揺動させることはできない。
【0076】
そこで作業者は、まず操作具140を右方に揺動させる。これによって、第一係合部材152が第二揺動軸160を中心として左方へと揺動し、当該第一係合部材152と第二係合部材154の溝との係合か解除される。作業者は、この状態のまま、操作具140を前後に任意に揺動させることで、トラクタ1の変速を行うことができる。
【0077】
作業者は、トラクタ1の変速を行った後、操作具140から手を離す。これによって、付勢部材156の付勢力によって第一係合部材152が第二揺動軸160を中心として右方へと揺動し、当該第一係合部材152が第二係合部材154の溝に係合する。このように、規制機構150によって、作業者の所望の変速位置で操作具140を保持することができる。
【0078】
なお、第一係合部材152は、ローラ152aを介して第二係合部材154の溝と係合するため、当該第一係合部材152の係合及びその解除を円滑に行うことができる。
【0079】
以上の如く、本実施形態に係る変速操作装置100は、
ステアリングハンドル5を支持するステアリングポスト5aの横側方位置で揺動操作可能に設けられたトラクタ1の変速操作装置100であって、
第一揺動軸110を中心として揺動可能であり、変速機構を変速可能なケーブル7(変速部材)と連結された第一揺動部材120と、
前記第一揺動軸110とは非平行な第二揺動軸160を中心として前記第一揺動部材120に対して揺動可能な第二揺動部材130と、
前記第二揺動部材130に固定される操作具140と、
前記第二揺動軸160を中心とする前記第二揺動部材130の揺動に応じて、前記第一揺動軸110を中心とする前記第一揺動部材120の揺動を規制可能な規制機構150と、
を具備するものである。
このように構成することにより、第二揺動軸160を中心として、第二揺動部材130を適宜揺動させることで、第一揺動軸110を中心とする第一揺動部材120の揺動を適宜の変速位置で規制することができるため、操作性を向上させることができる。また、縦方向の軸の傾斜のみで変速できる構造であるため、ステアリングハンドル5側方という限られた場所であっても、十分な強度と操作性を有し、かつ、2方向に揺動可能な操作具140を有する変速操作装置100を簡素な構成とすることができる。すなわち、操作具140からケーブル7までの間に多数の部品を介在させることがないため、変速操作装置100の簡素化を図ることができる。
【0080】
また、前記第一揺動軸110は、
前記第二揺動軸160よりも下方に配置されているものである。
このように構成することにより、変速において比較的作業者の力がかかる第一揺動軸110を第二揺動軸160の下方に配置することで、変速操作装置100の耐久性を向上させることができる。また、第二揺動軸160を上方に配置することで、第一揺動軸110を中心として揺動する操作具140の可動範囲を確保しつつ、第二揺動軸160を中心として揺動する規制機構150の可動範囲を最大限に確保することが可能となり、ひいては変速操作装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0081】
また、前記第二揺動部材130は、
前記第一揺動軸110の軸線方向において、前記第一揺動軸110と隙間をあけて配置されているものである。
このように構成することにより、第一揺動軸110の軸端と第二揺動部材130との間に隙間を設けることにより、第二揺動部材130と第一揺動軸110との干渉を回避し易くするとともに、交差する部分がないため組み付けを容易にすることができる。
【0082】
また、前記第一揺動部材120は、
本体部122と、
前記本体部122から前記第一揺動軸110と略平行に延びるように設けられた延設部124と、
を具備し、
前記第二揺動部材130は、
略下方に向かって開放するような略U字状に形成されると共に、前記延設部124が挿通され、前記第二揺動軸160を介して当該延設部124と連結されるものである。
このように構成することにより、第二揺動部材130に延設部124を挿通することで、如何なる方向から力が加わったとしても当該第二揺動部材130から延設部124が非連結状態となることを防止し、常時安定した状態で連結することができる。
【0083】
また、前記延設部124は、
一対の平面部124aを有し、当該平面部124aにおいて前記第二揺動部材130と当接するものである。
このように構成することにより、一対の平面部124a(2平面)において第二揺動部材130と当接された状態で連結されるため、当該連結を強固にすることができる。
【0084】
また、前記規制機構150は、
前記第二揺動部材130に固定される第一係合部材152と、
前記第二揺動部材130が前記第二揺動軸160を中心として一方向に揺動した際に前記第一係合部材152と係合する第二係合部材154と、
を具備するものである。
このように構成することにより、第二揺動部材130が第二揺動軸160を中心とした一方向のみ揺動させる構造であり、複数の部品が介在していないため、壊れにくく耐久性を有することに加え、規制機構150の組付けを容易とすることができる。
【0085】
また、前記第一係合部材152は、
前記第二揺動部材130に挿通された状態で固定されるものである。
このように構成することにより、第二揺動部材130に第一係合部材152を挿通することで、当該第二揺動部材130と第一係合部材152とを安定して固定することができ、強度も確保することができる。
【0086】
また、前記操作具140は、
前記第二揺動部材130に固定された端部が棒状に形成され、
前記第一係合部材152は、
棒状に形成されると共に、前記操作具140の前記第二揺動部材130に固定された端部の延長線上に位置するように前記第二揺動部材130に固定されるものである。
このように構成することにより、第一係合部材152が操作具140の第二揺動部材130に固定された端部の延長線上に位置することで、変速操作装置100のコンパクト化を図るとともに、規制機構150の操作感を向上させることができる。すなわち、操作具140と第一係合部材152の軸線を合わせることで、作業者が規制機構150(操作具140)を操作する際の違和感を抑制することができる。
【0087】
また、前記規制機構150は、
前記第二揺動部材130が前記一方向に揺動するように当該第二揺動部材130を付勢する付勢部材156をさらに具備するものである。
このように構成することにより、操作具140を操作しない場合には第一揺動部材120の揺動を規制することができる。これによって、当該操作具140を所望の変速位置で保持し易くなる。
【0088】
また、前記付勢部材156は、
前記第二揺動軸160に支持されると共に、一部分(端部156b)が前記第二揺動部材130に係合され、他の部分(連結部156c)が前記延設部124に係合されるものである。
このように構成することにより、変速操作装置100をコンパクトに形成することができる。すなわち、付勢部材156をコンパクトに形成することができるため、ひいては変速操作装置100全体をコンパクトに形成することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るトラクタ1(作業車両)は、上述の変速操作装置100を具備するものである。
このように構成することにより、2方向に揺動可能な操作具140を有する変速操作装置100の操作性を向上させるとともに、簡素な構成とすることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、本実施形態においては、作業車両の一例としてトラクタ1を例示したが、本発明はこれに限らず種々の作業車両(コンバイン、田植機、建設機械等)に適用することが可能である。
【0092】
また、本実施形態においては、変速操作装置100はトラクタ1の前進、後進及び中立を切り換えるものとしたが、本発明はこれに限らず種々の変速操作(高速と低速の切り換えや、3段以上の変速段の切り換え等)に適用することができる。
【0093】
また、第一揺動軸110と第二揺動軸160は、互いの軸線が平行とならなければ(非平行であれば)、任意の方向に配置することが可能である。
【0094】
また、規制機構150は本実施形態の構成に限るものではなく、第一揺動軸110を中心とする第一揺動部材120の揺動を規制することができるものであればよい。
【0095】
また、本実施形態においては、第一揺動軸110は第二揺動軸160よりも下方(低い位置)に配置されているものとしたが、第一揺動軸110を第二揺動軸160よりも上方(高い位置)に配置することも可能である。
【0096】
また、本実施形態においては、第二揺動部材130の連結部134は略円弧状に形成されるものとしたが、例えば楕円弧状に形成することも可能である。
【0097】
また、付勢部材156は本実施形態のものに限らず、本実施形態と同様に第二揺動部材130を付勢することができるものであれば、その形状等を任意に変更することが可能である。