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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-188091(P2018-188091A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】車両用サウンドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20181102BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20181102BHJP
   G10K 11/18 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   B60R11/02 S
   H04R3/00 310
   G10K11/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-94623(P2017-94623)
(22)【出願日】2017年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
(72)【発明者】
【氏名】若松 功二
(72)【発明者】
【氏名】安竹 昭
【テーマコード(参考)】
3D020
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D020BE03
5D220AA01
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】助手席乗員がオーディオ音を楽しみつつ、運転席乗員がエンジン音を十分に認識できるようにする。
【解決手段】エンジン音が、例えばトンネル部21を覆うトリム材22に設けた開口部56aを通して、運転席乗員に向けて指向される。運転席乗員に対しては、運転席乗員用のスピーカ61L、61Rからオーディオ音が指向される。助手席乗員に対しては、助手席乗員用のスピーカ62L、62Rからオーディオ音が指向される。例えば運転負荷が小さいイージードライブモードのときは、実質的に開口部56aを閉じておき、運転負荷が大きくなるハードドライブモードのときにのみ開口部56aからのエンジン音を運転席乗員に指向させることもできる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
車両は、車幅方向に並んだ運転席と助手席とを有し、
前記エンジンの発生するエンジン音を、運転席乗員の方向に指向させる第1指向手段が設けられ、
前記オーディオ装置より発生されるオーディオ音を、助手席乗員の方向に指向させる第2指向手段が設けられている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項2】
請求項1において、
車両の走行状態を判定する走行状態判定手段をさらに備え、
前記第1指向手段は、前記走行状態判定手段によって所定の走行状態であると判定されたときを条件として、エンジン音を運転者に向けて指向させる、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項3】
請求項1において、
車両の走行状態を判定する走行状態判定手段をさらに備え、
前記第2指向手段は、前記走行状態判定手段によって所定の走行状態であると判定されたときを条件として、オーディオ音を助手席乗員に向けて指向させる、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記所定の走行状態が、運転負荷が高くなる走行状態とされている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記オーディオ装置により駆動制御されるスピーカとして、運転席乗員に向けてオーディオ音を流す運転席用スピーカと、助手席乗員に向けてオーディオ音を流す助手席用スピーカとが別個に設けられ、
前記助手席用スピーカの指向性が、前記運転席用スピーカの指向性よりも低くなるように設定されている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
車両が、前記運転席と前記助手席との間において前後方向に延びるトンネル部を有し、
前記第1指向手段が、前記トンネル部内の空間を通って伝達されるエンジン音を運転席乗員に向けて指向させる、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項7】
請求項6において、
前記トンネル部を覆うトリム材に、該トンネル部内の空間を車室と連通させる開口部を有する開閉部材が設けられ、
前記開閉部材は、少なくとも前記開口部を運転席乗員に向けて指向された状態を選択的にとり得るように駆動可能とされている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サウンドシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両においては、車室内にオーディオ音を流すオーディオ装置が装備されていることが一般的となっている。特許文献1、特許文献2には、オーディオ音が乗員にとって車室内の所定位置から聞こえるようにするために、オーディオ音の定位を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2776092号公報
【特許文献2】特開平5−85288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばスポーツカー等の走行を楽しむことが重視される車両においては、エンジン音を運転者(運転席乗員)に対して積極的に聞かせる(聴かせる)ことが望まれるものである。すなわち、エンジン音は、車両状態をよく示すことから、走行を楽しむ場合にエンジン音というものが非常に重要な要素なる。
【0005】
一方、助手席乗員においては、エンジン音というものを明確に認識する必要性が薄く、オーディオ装置が作動しているときは、オーディオ音を楽しめるようにすることが望まれるものである。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、助手席乗員がオーディオ音を楽しみつつ、運転席乗員がエンジン音を十分に認識できるようにした車両用サウンドシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
車両は、車幅方向に並んだ運転席と助手席とを有し、
前記エンジンの発生するエンジン音を、運転席乗員の方向に指向させる第1指向手段が設けられ、
前記オーディオ装置より発生されるオーディオ音を、助手席乗員の方向に指向させる第2指向手段が設けられている、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、助手席乗員にいてはオーディオ音を十分に楽しむことができる。この一方、運転席乗員にとっては、エンジン音を明確に認識して、エンジン音(の変化)に基づいて車両状態を明確に認識して、運転を楽しむ上でまた安全確保の上で好ましいものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
車両の走行状態を判定する走行状態判定手段をさらに備え、
前記第1指向手段は、前記走行状態判定手段によって所定の走行状態であると判定されたときを条件として、エンジン音を運転者に向けて指向させる、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、運転席乗員に対してエンジン音が指向される状態が、エンジン音を聞くことが特に要求される走行状態のときに限定されることから、運転席乗員に対して不必要にエンジン音を聞かせてしまう事態を防止することができる。
【0010】
車両の走行状態を判定する走行状態判定手段をさらに備え、
前記第2指向手段は、前記走行状態判定手段によって所定の走行状態であると判定されたときを条件として、オーディオ音を助手席乗員に向けて指向させる、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、助手席乗員に対してオーディオ音が指向される状態を、オーディオ音を聞きづらくなるような走行状態のときに限定することができる。
【0011】
前記所定の走行状態が、運転負荷が高くなる走行状態とされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、運転負荷が高いときに、運転者は、エンジン音をより明確に認識して、エンジン音に基づいて車両状態に意識を集中でき、安全性を高める上で好ましいものとなる。また、運転負荷が高い走行状態のときは、オーディオ音が聞きずらい状況となるが、このときは助手席乗員に対してオーディオ音を指向させることによって、助手席乗員はオーディオ音を十分に楽しむことができる。
【0012】
前記オーディオ装置により駆動制御されるスピーカとして、運転席乗員に向けてオーディオ音を流す運転席用スピーカと、助手席乗員に向けてオーディオ音を流す助手席用スピーカとが別個に設けられ、
前記助手席用スピーカの指向性が、前記運転席用スピーカの指向性よりも低くなるように設定されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、助手席側での視聴領域を広くして、助手席乗員の着座姿勢がくずれているような状況でも、助手席乗員はオーディオ音を楽しむことができる。
【0013】
車両が、前記運転席と前記助手席との間において前後方向に延びるトンネル部を有し、
前記第1指向手段が、前記トンネル部内の空間を通って伝達されるエンジン音を運転席乗員に向けて指向させる、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、運転席と助手席とを隔てるトンネル部を有効に利用して、エンジン音を運転席乗員に指向させることができる。また、トンネル部内の空間は、エンジン音をよく伝える部位となることから、運転席乗員に対してエンジン音を積極的に聞かせる上で好ましいものとなる。
【0014】
前記トンネル部を覆うトリム材に、該トンネル部内の空間を車室と連通させる開口部を有する開閉部材が設けられ、
前記開閉部材は、少なくとも前記開口部を運転席乗員に向けて指向された状態を選択的にとり得るように駆動可能とされている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、エンジン音を運転席乗員に対して指向させるためのより具体的な構造を提供することができる。また、開閉部材の駆動によって、エンジン音の指向方向を調整する上でも好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、助手席乗員に対してはオーディオ音を十分に楽しむことができるようにしつつ、運転席乗員に対してはエンジン音を十分に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す平面図。
図2図1に示す車両の側面一部断面図。
図3】ダッシュパネルに形成されたエンジン音透過部分の構造を示す分解斜視図。
図4】インストルメントパネル付近の状態を車室後部から前方を見た正面図。
図5】エンジン音を運転席乗員に向けて指向させる部分を示す上方斜視図。
図6図5のトンネル部での要部断面図。
図7】オーディオ装置の制御系統例をブロック図的に示す図。
図8】エンジン音の指向方向を変更するための制御系統例を示す図。
図9】エンジン音の指向方向を変更するための制御例を示すフローチャート。
図10】エンジン音の指向方向を変更するための別の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2において、車両Vは、実施形態では、2ドアのオープンカーとされている。図中、1はダッシュパネルで、エンジンルーム2と車室3とを仕切っている。4は、エンジンルーム2を上方から覆うボンネット、5R、5Lは、左右一対のサイドドア、6はトランクリッド、7はルーフである。また、8は運転席、9は助手席、10はステアリングハンドルである。さらに、11はインストルメントパネル、12はフロントウインドガラスである。
【0018】
図2に示すように、ルーフ7は、リアウインドガラス7aを有しており、図2では、ルーフ7が閉状態のとき、つまりルーフ7によって車室3が上方から覆われた状態が示される。また、図1では、ルーフ7が閉じられた状態を示すが、ルーフ7を透視した状態となっており、またフロントウインドガラス12の上端部を一部カットした状態が示される。
【0019】
車室3の床面を構成するフロアパネル20は、車幅方向中央部において前後方向に延びるトンネル部21を有し、トンネル部21の上面はトリム材22により覆われている。フロアパネル20の後端部は、キックアップ部23を経てリアパネル24へと連なっている。
【0020】
ダッシュパネル1の前方に構成されたエンジンルーム2には、エンジン30が配設されている。エンジン30は、実施形態では縦置きとされて、エンジン本体が符号30Aで示され、吸気系部材が符号30Bで示され、排気系部材が符号30Cで示される。エンジン30(エンジン本体30A)の後部には、変速機31が連結されている。
【0021】
なお、エンジン30には、エンジン本体30Aにより駆動されるオルタネータ、エアコン用コンプレッサ等々の補器類が装備されているが、これらは図示を略してある。エンジン音は、エンジン本体30Aが回転されたり燃焼されるときに発生される音の他、吸気音や排気音、さらには補器類が駆動された音がミックスされた音となる。
【0022】
車両Vの後部には、差動装置(デファレンシャルギア)40が配設されている。この差動装置40と、変速機31(つまりエンジン30)とが、プロペラシャフト41によって連結されている。つまり、車両Vは、実施形態では後輪駆動車とされている。そして、変速機31と差動装置40とが、プロペラシャフト41を取り巻くように配設された円環状のトルクチューブ44によって連結されている(図6をも参照)。
【0023】
エンジン30から延びる排気通路42が後方へ延びている。この排気通路42は、車両後部の下方に配設されたマフラー43に接続されている。マフラー43は、後方へ開口された左右一対の排気パイプ43Aが接続されている。排気ガスが、最終的に、排気パイプ43Aから外部(大気)へ排出される。
【0024】
本実施形態では、エンジン音およびオーディオ音を所定位置に定位するようにしてある。すなわち、エンジン音が定位される第1の位置(部位あるいは領域)が第1の位置T1として示され、オーディオ音が定位される第2の位置が符号T2で示される。この他、実施形態では、警報音を第3の位置T3で定位するようにしてある。
【0025】
第1の位置T1は、フロントウインドガラス12に設定されている。具体的には、第1の位置T1は、フロントウインドガラス12のうち、運転者の眼の位置と略同じ高さ位置で、車幅方向略中央部に位置するように設定されている。
【0026】
また、第2の位置T2は、第1の位置T1よりも所定距離だけ低い位置に設定されている。具体的には、第2の位置T2は、インストルメントパネル11のうち略後方を向いた面のうち、車幅方略中央部に位置するように設定されている。この第2の位置T2は、第1の位置T1よりも車幅方向に広い領域設定とされている(オーディオ音を運転者や助手席乗員に聞かせるため)。なお、第1の位置T1と第2の位置T2とは、所定距離だけ離間しておくので、エンジン音とオーディオ音とを区別して聞き分ける上で好ましいものとなるが、上記所定距離は、少なくとも30cm以上で、50cm以上とするのが好ましい。
【0027】
第3の位置T3は、運転席8に着座している運転者が前方を目視したときに、運転者の視線延長線上に位置するように設定されている。第3の位置T3は、例えばフロントウインドガラス12上に設定することもでき、フロントウインドガラス12よりもさらに前方に設定することもできるが、ヘッドアップディスプレイによる運転者への情報提示位置に設定するのが好ましい。
【0028】
なお、定位位置T1、T2、T3の領域は、図示したものに限らず、例えば、車幅方向や上下方向に拡大した領域でもよく、またT1の位置は、フロントウインドガラス12の領域内において、車両状態、例えばステアリング舵角等に応じて可変としてもよい。
【0029】
次に、エンジン音を第1の位置T1に定位する具体構造例について説明する。まず、ダッシュパネル1のうち、エンジン30(エンジン本体30A)が位置する高さおよび車幅方向位置に、図3に示すように開口部50が形成される。この開口部50は、エンジンルーム2とインストルメントパネル11(の空間)内とを連通している。そして、開口部50は、空気や液体を遮断する膜部材51によって施蓋されている。つまり、エンジンルーム2からのエンジン音が、膜部材51を震動させてインストルメントパネル11内へと効果的に伝達されて、乗員は、エンジン音が第1の位置から聞こえるような状態とされる。
【0030】
インストルメントパネル11には、その上面に開口部11aが形成されている(図2参照)。インストルメントパネル11内に伝達されたエンジン音は、開口部11aを通過してフロントウインドガラス12に向けて伝達されることにより、このフロントウインドガラス12で反射されて、運転席8に着座している運転者へと伝達されることになる。つまり、特定位置T1−1は、エンジン音がフロントウインドガラス12で反射される部位とされる。エンジンルーム2内の空気や液体は、膜部材51で遮断されて、車室3へと流れこむことが防止される。
【0031】
図3に示すように、膜部材51により施蓋された開口部50には、弁部材52が取付けられている。弁部材52は、開口部50に臨む短い筒部材52Aと、筒部材52Aを開閉する電磁式の弁体52Bとを有する。弁部材52を開位置とすることにより、開口部50からのエンジン音が、筒部材52Aを通ってインストルメントパネル11内に伝達される(第1の位置T1での定位実現)。弁部材52を閉位置とすることにより、第1の位置T1でのエンジン音の定位が行われない状態とされる。
【0032】
エンジン音については、さらに、運転席乗員に向けて指向させるようにしてある。このエンジン音の指向は、実施形態では、トンネル部21を覆うトリム材22の前端部上面に設定された開閉部材56を利用して行うようにしてある。以下この点について説明すると、まず、トンネル部55の前端部上面に形成された開口部に、弁部材55が配設される(図2参照)。弁部材55は、前述した図3に示す弁部材52と実質的に同様の構成とされている。すなわち、トンネル部21に形成された開口部が空気を遮断する膜部材により施蓋されて、ここに弁部材55が取付られる。
【0033】
また、トルクチューブ44の上面には、弁部材55付近の位置において、開口部44aが形成されている。これにより、エンジンルーム2からのエンジン音(実際には、エンジン音に対して、変速音、プロペラシャフト41の回転音、排気音が混在された音)が、トルクチューブ44内、開口部44a、トンネル部21内を経て、弁部材55の位置に伝達される。このように、弁部材55の部分には、エンジン音が十分に伝達されるような設定とされている。
【0034】
トンネル部21を覆うトリム材22の前端部上面には、回動式の開閉部材56が設けられている。この開閉部材56は、図6に示すように、トリム材22の上面の一部を実質的に構成する円弧状の板材により形成されて、その一部に開口部56aが形成されている。開閉部材56は、図示略アクチュエータによって図6紙面直角方向に延びる軸線Z回りに回動可能とされている。図6では、開口部56aが、運転席側に向けて斜め上方に向かう状態、つまり運転席乗員に向けて指向された状態となっている。なお、開閉部材56は、その開口部56aが、運転席乗員側を向いた(指向された)状態と、上方を向いた状態との間で変更可能とされている。なお、開口部56cを開閉する部材を別途設けることもでき、この場合、開口部56aの開口面積を段階的あるいは連続可変式に変更することもできる。
【0035】
図2図6から明かなように、弁部材55が開位置とされている状態では、開口部56aを運転席乗員に向けて指向させることにより、トンネル部21内に伝達されたエンジン音が開口部56aを通して、運転席乗員に向けて指向されることになり、運転席乗員はより明確にエンジン音を認識することのできる状況となる。
【0036】
オーディオ音用となる第2の位置T2を定位させるために、実施形態では、図4に示すように、上下左右の合計4個のスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRが設けられている。上方に位置する左右一対のスピーカ60UL、60URは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のフロントピラー13L、13Rに取付けられている。下方に位置する左右一対のスピーカ60BL、60BRは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のサイドドア5L、5Rに取付けられている。
【0037】
上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、オーディオ音が第2の位置T2から聞こえるように定位される。また、第2の位置T2を、タイムアライメントの手法によって、図4に示す位置から、例えば下方、左方(車幅方向のうち運転席8から離間する方向で、助手席9に接近する方向)、左下方(車幅方向において運転席8から離間しつつ下方への移動という斜め方向)あるいは運転席後方等、所望位置へ移動させることができる。
【0038】
第3の位置T3は、上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、警報音が第3のT3から聞こえるように定位される。つまり、警報音は、オーディオ音に重畳されてスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRから流されることになる。
【0039】
オーディオ音用のスピーカとして、さらに、運転席乗員用のスピーカ61L、61R、および助手席乗員用のスピーカ62L、62Rが設けられている(図1図4図5参照)。運転席乗員用のスピーカ61L、61Rは、運転席8前方のインストルメントパネル11に対して、車幅方向に小間隔をあけて配設されている。運転席乗員用のスピーカ61L、61Rは、指向性の強いものが用いられて、その指向方向および範囲が図1一点鎖線で示される。
【0040】
助手席乗員用のスピーカ62L、62Rは、助手席9前方のインストルメントパネル11に対して、車幅方向に小間隔をあけて配設されている。助手席乗員用のスピーカ62L、62Rは、運転席乗員用のスピーカ61L、61Rに比して指向性の弱いものが用いられて、その指向方向および範囲が図1一点鎖線で示される。助手席乗員用のスピーカ62L、62Rの指向性が弱いことにより、助手席乗員は、助手席9に着座している姿勢を崩した状態でも、オーディオ音を楽しむことができる。
【0041】
図7は、オーディオ装置ODの一例を示すものである。図中、70は、DSP(デジタル・サウンド・プロセッサ)である。このDSP70は、オーディオ用の音源71からの信号が入力されると、第2の位置T2でオーディオ音が定位されるように前述したタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。なお、オーディオ用の音源71は、ハイレゾ(ハイレゾリューション)用とされて、極めて音質の高いものとされている。
【0042】
DSP70は、警報用音源を記憶した記憶手段(メモリ)73を有する。DSP70は、警報を行う旨の指令信号が入力されると、第3の位置T3で警報音が定位されるようにタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。
【0043】
DSP70は、さらに、スピーカ61L、61R、62L、62Rの駆動をも制御する。すなわち、後述するコントローラUからの指令信号に応じて、基本的に、助手席乗員用スピーカ62L、62Rについては、走行状態にかかわらず、高音質のオーディオ音でもって駆動される。一方、運転席乗員用のスピーカ61L、61Rは、所定の走行条件(実施形態では運転負荷が高いとき)は、駆動停止されるようになっている。
【0044】
実施形態では、さらに、排気音を定位するようにしてある。すなわち、運転者が排気音の聞こえる位置となる第4の位置T4を、車室後部のうち車幅方向略中央部に設定してある(図1図2参照)。この第4の位置T4は、車室内への開口部に弁部材を配設した構造となっており、実質的に図3に示すのと同様の構造とされているので、その重複した説明は省略する。
【0045】
第4の位置T4(の開口部)は、車室内の換気用となる外部に開口されたエキストラチャンバ80に対して、ダクト81を介して接続されている(図1図2参照)。エキストラチャンバ80は、排気パイプ30Aの近くに形成されていることから、排気音が効果的に第4の位置T4へと伝達することができる。なお、第4の位置T4における弁部材は、常時全開とすることもできるが、市街地走行や低速走行時等のスポーツ走行が想定されないときは閉弁しておくこともできる。また、この弁部材は、エンジン回転数が上昇するにつれて、その開度を徐々に増大させることもできる。
【0046】
図8は、走行状態に応じてエンジン音の指向制御やスピーカ61L、61Rの駆動制御を行う場合の制御系統例を示す。図中、Uはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラである。コントローラUには、センサあるいはスイッチS1〜S3からの信号が入力される。S1は、車体に作用するG(前後方向および横方向の加速度と減速度)を検出するGセンサである。S2は、エンジン回転数を検出する回転数センサである。S3は、イグニッションスイッチである。また、コントローラUは、オーディオ装置ODの他、弁部材52、55を開閉制御し、さらに開閉部材56の回動制御(エンジン音の指向制御)をも行うようになっている。
【0047】
次に、図9のフローチャートを参照しつつ、コントローラUによる制御例について説明するが、以下の説明でQはステップを示す。また、以下の説明で、ノーマルモードはエンジン音を運転席乗員に指向させないデフォルト状態であり、このときは、弁部材55が閉じられることにより、開口部56aからはエンジン音が通過しない状態とされ(実施形態では、エンジン音の第1の位置T1での定位は行われる)、かつ運転席乗員用スピーカ61L、61Rが駆動される状態とされる。また、スポーツモードでは、弁部材55が開かれて、開口部56aからのエンジン音が運転席乗員へ指向される状態とされ、かつ運転席乗員用スピーカ61L、61Rの駆動が停止された状態とされる。なお、助手席乗員用スピーカ62L、62Rは、ノーマルモードおよびスポーツモード共に、駆動されて、オーディオ装置ODがオンされている限り、助手席乗員は常にオーディオ音を楽しむことができる状態とされる。
【0048】
上記スポーツモードは、運転負荷が大きいときに選択される。運転負荷が大きくなる状態としては、積極的に運転(走行)を行っている状況ともいえ、例えば、エンジン回転数が所定回転数以上の高回転時、車体に作用するG(横Gあるは前後Gの少なくとも一方あるいは両方)が所定値以上のとき、ワインディングロードを走行しているとき、頻繁に加減速が行われるとき、頻繁にハンドル操作が行われるとき、山岳路を走行しているとき、サーキットを走行しているとき、高車速のとき(例えば80km/hを超えるとき)等がある。なお、制御開始の初期時には、ノーマルモードとされる。
【0049】
以上のことを前提として、まずQ1において、オーディオ音装置ODがオンであるか否かが判別される。このQ1の判別でYESのときは、Q2において、前後方向Gあるいは横方向Gの少なくとも一方が、所定値(例えば0.3G)よりも大きいか否かが判別される。このQ2の判別でYESのときは、Q3において、タイマが初期値0にリセットされると共に、新たにカウントが開始される。この後Q4において、上記所定値よりも大きいGが検出されてから短い所定時間(実施形態では1秒)が経過したか否かが判別される。このQ4の判別でNOのときは、Q4の判別が繰り返される。
【0050】
Q4の判別でYESのときは、Q5において、再度、Q2と同様の判別が行われる。このQ5の判別でYESのときは、短時間の間に大きなGが継続(あるいは繰り返し)発生しているときであり、運転者が走行を楽しむために積極的な運転を行っている状況である。
【0051】
上記Q5の判別でYESのときは、Q6において、タイマが0にリセットされると共に、新たにカウントが開始される。この後、Q7において、スポーツモードとされて、エンジン音が開口部56aから運転席乗員に指向される状態へと変更され、かつ運転席乗員用のスピーカ61L、61Rの駆動が停止される。このように、Gが大きく手運転負荷が高い走行状態では、運転者は、エンジン音をより明確に認識して、エンジン音(の変化)に基づいて車両状態をより明確に認識することができ、これにより運転をより楽しんだり、安全運転の上で好ましいものとなる。スポーツモードのときでも、助手席乗員に対しては、助手席乗員用のスピーカ62L、62Rからオーディオ音が指向されるので、助手席乗員はオーディオ音を十分に楽しむことができる。
【0052】
上記Q7の後、Q8において、前後方向および横方向のGがそれぞれ所定値(実施形態では0.3G)以下になったか否かが判別される。このQ8の判別でNOのときは、Q6に戻る。
【0053】
上記Q8の判別でYESのときは、Q9において、タイマでのカウント値が所定の長い時間(実施形態では30秒)を超えているか否かが判別される。このQ9の判別でNOのときは、Q7に戻る。
【0054】
上記Q9の判別でYESのときは、スポーツモードは行っていない状況が明確に確認されたということで、Q10において、ノーマルモードへ変更(復帰)される。
【0055】
前記Q1の判別でNOのときは、Q12において、スポーツモードが設定される(ただし、オーディオ音は車室内に流れない状況)。なお、Q1の判別でNOのときは、ノーマルモードとしてもよい(そのままリーンさせる)。
【0056】
前記Q2の判別でNOのときは、あるいはQ5の判別でNOのときは、それぞれQ10に移行される。
【0057】
Q10の後、あるいはQ12の後は、それぞれQ11において、エンジンが停止されたか否かが判別(イグニッションスイッチS3がオフされたか否かの判別)。このQ11の判別でNOのときはQ1に戻る。Q11の判別でYESのときは、制御が終了される。
【0058】
以上の説明から明かなように、図9の実施形態では、スポーツモードに設定されているときは、スポーツモードに設定する所定の走行条件を満足しないことが所定の長い時間(実施形態では30秒)維持されていることが確認されるまでは、スポーツモードをそのまま維持する制御とされている(スポーツモードとノーマルモードとの間での頻繁な変更を抑制)。スポーツモードとノーマルモードとの間での頻繁な変更をより防止あるいは抑制するために、例えばQ8での所定値(Gの値)を、Q2あるいはQ5での所定値(Gの値)よりも所定分小さい値に設定しておくこともできる。
【0059】
図10は、図9に対応した別の制御例を示すものである。本制御例では、所定の走行条件として、車体に作用するGの代わりに、エンジン回転数を用いてある。すなわち、Q22(図9のQ2対応)、Q25(図9のQ5対応)、Q29(図9のQ9対応)では、エンジン回転数が所定回転数(実施形態では5500rpm)よりも大きいか(あるいは以下か)を判別するようにしてある。すなわち、実施形態では、エンジンの最高許容回転数が7500rpm程度とされており、所定値としてのエンジン回転数5500rpmは、最高許容回転数よりも所定分低い程度の高回転数として設定してある(最大出力あるいは最大トルクを発生する付近での回転数)。図10の制御は、図9におけるGを用いる代わりに、エンジン回転数を用いた点が相違するのみで、その他は図9の場合と同じなので、その重複した説明は省略する。
【0060】
また、スポーツモードとノーマルモードとの間での切換えを、アクセル開度に応じて行うようにしてもよく、この場合は、アクセル開度が大きい(所定開度以上の)ときにスポーツモードとし、アクセル開度が小さいときにノーマルモードとすればよい。
【0061】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のようにすることもできる。
(1)第1の位置T1でのエンジン音の定位を、スポーツモードのときにのみ行うようにしてもよい(運転者がより明確にエンジン音を認識可能とする)。また、第1の位置T1でのエンジン音の定位を行わないようにしてもよい。
(2)スポーツモードのときに、運転席乗員用のスピーカ61L、61Rの駆動を行いつつ、音質を低下させたオーディオ音を運転席乗員に向けて流すこともできる。すなわち、運転席乗員用のスピーカ61L、61Rからのオーディオ音を、ノーマルモードのときは高音質(例えばハイレゾ)とし、スポーツモードのときは低音質(例えばCDレベルあるいはMP3レベル)とすることもできる。なお音質の高低の調整は、例えば、周波数の分解能調整(サンプリング周波数の変更)や振幅の分解能調整(量子化ビット数の変更)、さらには所定以上の高周波数域をカットするか否かや所定以下の低周波数をカットするか否か等、既知の適宜の手法により行うことができる。なお、通常走行(ノーマルモード)でオーディオ音をハイレゾとした場合は、ハイレゾのサンプリング周波数の高さや量子化ビット数の多さから、エンジン音とオーディオ音との聞き分けは比較的容易である。
(3)助手席乗員用のスピーカ62L、62Rは、ノーマルモードのときは駆動停止される一方、スポーツモードのときは駆動させるようにしてもよい。
(4)オーディオ音の定位(第2の位置T2での定位)行わないようにすることもできる。
(5)運転者によりマニュアル操作されるモード切換スイッチを設けて、このモード切換スイッチの操作に応じて、スポーツモードとノーマルモードとの間での切換えを行うこともできる。
(6)ノーマルモードのときに、弁部材55を開くと共に、開口部56aをまっすぐ上方に向く状態としてもよい(運転席乗員へのエンジン音の指向はなし)。ノーマルモードのときに開口部56aを通してエンジン音を車室3内に流すときは、例えば開口部56aの開口面積を全開から全閉の間で調整可能として、ノーマルモードのときはスポーツモードのときに比して開口部56aの開口面積を小さくすることもできる。同様の観点から、開口部56aの開口面積は一定としつつ、弁部材55の開度を、ノーマルモードのときはスポーツモードのときに比して小さくすることもできる。
(7)エンジン音を運転席乗員に指向させるための設定位置としては、トンネル部21に限らず、例えばダッシュパネル1のうち運転席8の直前方に位置する部分としたり、運転席乗員用の空調風吹き出し口付近にする等、適宜の位置を選択することができる。
(8)運転席乗員用のスピーカ61l、61Rは、適宜の位置に配設することができ、例えば運転席8のヘッドレストに配設することもできる。同様に、助手席乗員用のスピーカ62L、62も、適宜の位置に配設することができ、例えば助手席9のヘッドレストに配設することもできる。
(9)警報音としては、エンジン回転数が上限に達したときを報知するレブリミット音を含めることができる。警報音の定位位置は、適宜の位置に変更することができるが、エンジン音やオーディオ音の定位位置とは異なる位置とするのが好ましい。また、警報音の定位を行わないようにしてもよい。同様に、排気音の定位を行わないようにしてもよい。
(10)本発明は、オープンカーに限らず、セダン型やSUV型、4輪駆動車等、種々の形式の車両に適用できる。また、変速機31が車両後部(差動装置40の位置)に配設されたものであってもよく、プロペラシャフト41を有しない前輪駆動車(いわゆるFF車)やエンジン30が車室後方に配設されたものであってもよい。さらに、開閉部材56は、その開口部56aが助手席側に向く位置を選択できるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、オーディオ音とエンジン音を、運転席乗員と助手席乗員とで区別して適切に聞かせることができる。
【符号の説明】
【0063】
T1:エンジン音位置
T2:オーディオ音位置
T3:警報音位置
OD:オーディオ装置
U:コントローラ
S1:Gセンサ
S2:回転数センサ
S3:イグニッションスイッチ
1:ダッシュパネル
2:エンジンルーム
3:車室
5L、5R:サイドドア
8:運転席
9:助手席
11:インストルメントパネル
11a:開口部(エンジン音通過用)
12:フロントウインドガラス
13L、13R:フロントピラー
20:フロアパネル
21:トンネル部
22:トリム材
23:キックアップ部
24:リアパネル
30:エンジン
31:変速機
40:差動装置
41:プロペラシャフト
42:排気通路
43:マフラー
43A:排気パイプ
50:開口部(エンジン音透過用)
51:膜部材
52:弁部材
55:弁部材
56:開閉部材
56a:開口部
60UL、60UR、60BL、60BR:スピーカ
61L、61R:スピーカ(運転席乗員用)
62L、62R:スピーカ(助手席乗員用)
70:DSP
71:音源(オーディオ用)
72:アンプ
73:記憶手段(警報音用)
80:エキストラチャンバ
81:ダクト
図1
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図10