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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-18835(P2018-18835A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】保護素子、ヒューズ素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/143 20060101AFI20180105BHJP
   H01H 85/08 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   H01H85/143
   H01H85/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-211929(P2017-211929)
(22)【出願日】2017年11月1日
(62)【分割の表示】特願2015-139233(P2015-139233)の分割
【原出願日】2015年7月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 亨
(72)【発明者】
【氏名】向 幸市
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA11
5G502AA20
5G502BA08
5G502BB13
5G502BB17
5G502BC07
5G502BD02
5G502CC04
5G502CC14
5G502EE06
5G502FF08
(57)【要約】
【課題】リフロー実装等の高温環境に曝された場合によってもヒューズエレメントの変形を防止し、安定した溶断特性を維持する。
【解決手段】絶縁基板11と、発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された第1の電極12及び第2の電極13と、両端が第1、第2の電極12,13にそれぞれ接続材料21を介して接続されたヒューズエレメント17と、回路基板との接続用ハンダの、第1の電極12及び第2の電極13への濡れ拡がりを規制する規制壁82とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
発熱体と、
上記絶縁基板に形成された第1の電極及び第2の電極と、
両端が上記第1の電極及び上記第2の電極にそれぞれ接続材料を介して接続されたヒューズエレメントと、
回路基板との接続用ハンダの、上記ヒューズエレメントへの濡れ拡がりを規制する規制壁とを備える保護素子。
【請求項2】
上記第1の電極及び上記第2の電極は、上記絶縁基板の表面に形成され、
上記第1の電極は、上記絶縁基板の裏面に設けられ、上記回路基板と上記接続用ハンダを介して接続される第1の外部接続電極と接続され、
上記第2の電極は、上記絶縁基板の裏面に設けられ、上記回路基板と上記接続用ハンダを介して接続される第2の外部接続電極と接続され、
上記規制壁は、上記第1の電極及び上記第2の電極に設けられている請求項1記載の保護素子。
【請求項3】
上記規制壁は、上記接続用ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料からなる請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
上記ヒューズエレメントは、低融点金属層が高融点金属層に被覆されるとともに、一対の端面を上記低融点金属層が露出する露出面とされ、
上記ヒューズエレメントの上記露出面と上記接続材料との間に、溶融した上記接続材料の流動を規制する遮蔽壁が設けられ、
上記ヒューズエレメントは、上記露出面が上記規制壁及び上記遮蔽壁によって囲まれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に形成された第1の電極及び第2の電極と、
両端が上記第1の電極及び上記第2の電極にそれぞれ接続材料を介して接続されたヒューズエレメントと、
回路基板との接続用ハンダの、上記ヒューズエレメントへの濡れ拡がりを規制する規制壁とを備えるヒューズ素子。
【請求項6】
上記第1の電極及び上記第2の電極は、上記絶縁基板の表面に形成され、
上記第1の電極は、上記絶縁基板の裏面に設けられ、上記回路基板と上記接続用ハンダを介して接続される第1の外部接続電極と接続され、
上記第2の電極は、上記絶縁基板の裏面に設けられ、上記回路基板と上記接続用ハンダを介して接続される第2の外部接続電極と接続され、
上記規制壁は、上記第1の電極及び上記第2の電極に設けられている請求項5記載のヒューズ素子。
【請求項7】
上記規制壁は、上記接続用ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料からなる請求項5又は6に記載のヒューズ素子。
【請求項8】
上記ヒューズエレメントは、低融点金属層が高融点金属層に被覆されるとともに、一対の端面を上記低融点金属層が露出する露出面とされ、
上記ヒューズエレメントの上記露出面と上記接続材料との間に、溶融した上記接続材料の流動を規制する遮蔽壁が設けられ、
上記ヒューズエレメントは、上記露出面が上記規制壁及び上記遮蔽壁によって囲まれている請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒューズ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路上に実装され、定格を超える電流が流れた時の自己発熱、あるいは発熱体の発熱により溶断し電流経路を遮断するヒューズエレメントを用いた保護素子、ヒューズ素子に関し、特に加熱環境に曝されてもヒューズエレメントの溶断特性のバラつきが抑制された保護素子、ヒューズ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れた時に自己発熱により溶断し、当該電流経路を遮断するヒューズエレメントが用いられている。ヒューズエレメントとしては、例えば、ハンダをガラス管に封入したホルダー固定型ヒューズや、セラミック基板表面にAg電極を印刷したチップヒューズ、銅電極の一部を細らせてプラスチックケースに組み込んだねじ止め又は差し込み型ヒューズ等が多く用いられている。
【0003】
しかし、上記既存のヒューズエレメントにおいては、リフローによる表面実装ができない、電流定格が低く、また大型化によって定格を上げると速断性に劣る、といった問題点が指摘されている。
【0004】
また、リフロー実装用の速断ヒューズ素子を想定した場合、リフローの熱によって溶融しないように、一般的には、ヒューズエレメントには融点が300℃以上のPb入り高融点ハンダが溶断特性上好ましい。しかしながら、RoHS指令等においては、Pb含有ハンダの使用は、限定的に認められているに過ぎず、今後Pbフリー化の要求は、強まるものと考えられる。
【0005】
このような要請から、図17に示すように、Pbフリーハンダ等の低融点金属層101に銀や銅等の高融点金属層102が積層されたヒューズエレメント100が用いられている。このようなヒューズエレメント100によれば、リフローによる表面実装が可能でヒューズ素子への実装性に優れ、高融点金属被覆されていることで定格を上げて大電流に対応可能であり、さらに溶断時には低融点金属による高融点金属の溶食作用により速やかに電流経路を遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−229293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒューズエレメント100は、低融点金属層101にメッキ技術を用いて高融点金属層102を成膜することにより製造できる。ヒューズエレメント100は、例えば、長尺状のハンダ箔にAgメッキを施すことによりエレメントフィルムを製造し、使用時には、サイズに応じて切断することで、効率よく製造でき、また容易に用いることができる。
【0008】
そして、ヒューズエレメント100は、例えば図18に示すように、絶縁基板103上に離間して形成された第1、第2の電極104,105間にわたって、接続用ハンダ106等の接続材料を介して接続されて、これにより第1、第2の電極104,105間を導通させる。ヒューズエレメント100は、第1、第2の電極104,105上に接続用ハンダ106を介して搭載した後、リフロー炉を通すことにより効率よく回路基板に実装することができる。
【0009】
ここで、従来の低融点金属層101と高融点金属層102との積層構造からなるヒューズエレメント100は、エレメントフィルムの切断面に高融点金属によって被覆された低融点金属が露出しているため、リフロー実装等の高温環境下において、溶融した回路基板への実装用ハンダが絶縁基板表面の第1、第2の電極104,105に濡れ拡がることにより、その表面張力によって低融点金属が流出し、実使用時において、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまうなど、所定の溶断特性を維持することができなくなる恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は、リフロー実装等の高温環境に曝された場合によってもヒューズエレメントの変形を防止し、安定した溶断特性を維持することができる保護素子、ヒューズ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、発熱体と、上記絶縁基板に形成された第1の電極及び第2の電極と、両端が上記第1の電極及び上記第2の電極にそれぞれ接続材料を介して接続されたヒューズエレメントと、回路基板との接続用ハンダの、上記ヒューズエレメントへの濡れ拡がりを規制する規制壁とを備えるものである。
【0012】
また、本発明に係るヒューズ素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板に形成された第1の電極及び第2の電極と、両端が上記第1の電極及び上記第2の電極にそれぞれ接続材料を介して接続されたヒューズエレメントと、回路基板との接続用ハンダの、上記ヒューズエレメントへの濡れ拡がりを規制する規制壁とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、規制壁を設けることにより、外部回路基板の接続電極に設けられた接続用ハンダが第1、第2の電極上に濡れ広がってきた場合にも、規制壁で堰き止め、ヒューズエレメントと接触することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明が適用された保護素子を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図2図2は、ヒューズエレメントを示す斜視図である。
図3図3は、バッテリパックの回路構成の一例を示す回路図である。
図4図4は、保護素子の回路図であり、(A)はヒューズエレメントの溶断前、(B)はヒューズエレメントの溶断後を示す。
図5図5は、本発明が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図6図6は、本発明が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図7図7は、本発明が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図8図8は、本発明が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図9図9は、本発明が適用された保護素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図10図10は、本発明が適用されたヒューズ素子を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図11図11は、ヒューズ素子の回路図であり、(A)はヒューズエレメントの溶断前、(B)はヒューズエレメントの溶断後を示す。
図12図12は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図13図13は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図14図14は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図15図15は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図16図16は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はA−A’断面図である。
図17図17は、低融点金属層が高融点金属層に被覆されたヒューズエレメントを示す断面図である。
図18図18は、従来の保護素子を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図、(B)はX−X’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された保護素子及びヒューズ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
[保護素子の構成]
図1(A)(B)に示すように、本発明が適用された保護素子10は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁層15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された第1の電極12及び第2の電極13と、絶縁層15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が第1、第2の電極12,13にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続されたヒューズエレメント17とを備え、絶縁基板11上に内部を保護するカバー部材18が取り付けられている。
【0017】
絶縁基板11は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材を用いて、例えば略方形状に形成されている。絶縁基板11は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0018】
絶縁基板11の相対向する両端部には、第1、第2の電極12,13が形成されている。第1、第2の電極12,13は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極12,13は、絶縁基板11の表面11aより、キャスタレーションを介して裏面11bに形成された第1、第2の外部接続電極12a,13aと連続されている。保護素子10は、裏面11bに形成された第1、第2の外部接続電極12a,13aが、保護素子10が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0019】
発熱体14は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体14は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板11上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0020】
また、保護素子10は、発熱体14を覆うように絶縁層15が設けられ、この絶縁層15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が形成される。発熱体引出電極16はヒューズエレメント17が接続され、これにより発熱体14は、絶縁層15及び発熱体引出電極16を介してヒューズエレメント17と重畳される。絶縁層15は、発熱体14の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体14の熱を効率よくヒューズエレメント17へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。なお、保護素子10は、発熱体14の熱を効率良くヒューズエレメント17に伝えるために、発熱体14と絶縁基板11の間にも絶縁層15を積層しても良い。
【0021】
なお、保護素子10は、発熱体14を、第1、第2の電極12,13が形成された絶縁基板11の表面11aと反対側の裏面11bに形成してもよく、あるいは、絶縁基板11の表面11aに第1、第2の電極12,13と隣接して形成してもよい。また、保護素子10は、発熱体14を、絶縁基板11の内部に形成してもよい。
【0022】
また、発熱体14は、一端が発熱体引出電極16と接続され、他端が発熱体電極19と接続されている。発熱体引出電極16は、絶縁基板11の表面11a上に形成されるとともに発熱体14と接続された下層部16aと、発熱体14と対向して絶縁層15上に積層されるとともにヒューズエレメント17と接続される上層部16bとを有する。これにより、発熱体14は、発熱体引出電極16を介してヒューズエレメント17と電気的に接続されている。なお、発熱体引出電極16は、絶縁層15を介して発熱体14に対向配置されることにより、ヒューズエレメント17を溶融させるとともに、溶融導体を凝集しやすくすることができる。
【0023】
また、発熱体電極19は、絶縁基板11の表面11a上に形成され、キャスタレーションを介して絶縁基板11の裏面11bに形成された発熱体給電電極19aと連続されている。
【0024】
[ヒューズエレメント]
保護素子10は、第1の電極12から発熱体引出電極16を介して第2の電極13に跨ってヒューズエレメント17が接続されている。ヒューズエレメント17は、保護素子10の可溶導体として用いられ、通常使用時には第1、第2の電極12,13間を導通させ、保護素子10が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント17は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体14の発熱により溶断し、第1、第2の電極12,13間を遮断する。
【0025】
ヒューズエレメント17は、発熱体14の発熱や自己発熱により速やかに溶断される材料からなり、低融点金属層23と高融点金属層24とが積層されてなる。低融点金属としては、Pbフリーハンダなどのハンダを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、保護素子10をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属層の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、ヒューズエレメント17として溶断するに至らない。
【0026】
図2に示すように、ヒューズエレメント17は、内層を低融点金属とし、外層を高融点金属としてもよい。内層の低融点金属層23の全表面を外層の高融点金属層24で被覆した可溶導体を用いることにより、リフロー温度よりも融点の低い低融点金属を用いた場合でも、リフロー実装時に、内層の低融点金属の外部への流出を抑制することができる。また、溶断時も、内層の低融点金属が溶融することにより、外層の高融点金属を溶食(ハンダ食われ)し、速やかに溶断することができる。
【0027】
ヒューズエレメント17は、低融点金属層23に高融点金属をメッキ技術を用いて成膜することにより製造できる。ヒューズエレメント17は、例えば、長尺状のハンダ箔の表面にAgメッキを施すことによりエレメントフィルムを製造し、使用時には、サイズに応じて切断することで、効率よく製造でき、また容易に用いることができる。また、ヒューズエレメント17は、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いることによって、低融点金属層23と高融点金属層24との積層体からなるエレメントフィルムを形成してもよい。
【0028】
このようなヒューズエレメント17は、エレメントフィルムを使用するサイズに切断することにより形成されることから、相対向する一対の端面(切断面)が、高融点金属層24に囲まれた低融点金属層23が露出する露出面25とされている。また、ヒューズエレメント17は、露出面25と直交する相対向する一対の側面が、高融点金属層24によって被覆された被覆面26とされている。
【0029】
また、ヒューズエレメント17は、低融点金属層23と、高融点金属層24とが積層された積層構造としてもよい。また、低融点金属層23と、高融点金属層24とが交互に積層された4層以上の多層構造としてもよい。
【0030】
また、ヒューズエレメント17は、高融点金属の体積よりも低融点金属の体積を多くすることが好ましい。これにより、ヒューズエレメント17は、効果的に高融点金属層の溶食による短時間での溶断を行うことができる。
【0031】
ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13及び発熱体引出電極16に設けられた接続用ハンダ21を介して、リフローはんだ付けによって容易に接続することができる。
【0032】
保護素子10は、ヒューズエレメント17が、絶縁層15及び発熱体引出電極16を介して、発熱体14と重畳した位置に設けられることにより、発熱体14が発した熱を効率よくヒューズエレメント17に伝え、速やかに溶断させることができる。
【0033】
なお、保護素子10は、定格を向上させ、より多くの電流を流すために、ヒューズエレメント17の導体抵抗を下げることが求められる。そのため、保護素子10は、ヒューズエレメント17の体積が増加し、大型化されている。
【0034】
ここで、ヒューズエレメント17は、露出面25より外方に露出されている低融点金属層23が接続用ハンダ21に触れないように配置されている。例えば、図1に示すように、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、第1、第2の電極12,13上に設けられた接続用ハンダ21によって、露出面25以外の領域が接続されている。これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25と第1、第2の電極12,13との間に間隙が形成されるとともに、露出面25が接続用ハンダ21や第1、第2の電極12,13に接触することがない。
【0035】
このように、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13や接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、あるいは接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0036】
[フラックス]
また、保護素子10は、ヒューズエレメント17の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント17の表面や裏面にフラックス22をコーティングしてもよい。フラックス22をコーティングすることにより、保護素子10の実使用時において、ヒューズエレメント17(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、ヒューズエレメント17が溶解している間の酸化物を除去し、速溶断性を向上させることができる。
【0037】
また、フラックス22をコーティングすることにより、ヒューズエレメント17の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、ヒューズエレメント17の酸化を効果的に防止し、速溶断性を維持、向上することができる。
【0038】
なお、第1、第2の電極12,13、発熱体引出電極16及び発熱体電極19は、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成され、適宜、表面にSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層が形成されていることが好ましい。これにより、表面の酸化を防止するとともに、ヒューズエレメント17の接続用ハンダ21等の接続材料による第1、第2の電極12,13及び発熱体引出電極16の浸食を抑制することができる。
【0039】
[カバー部材]
また、保護素子10は、ヒューズエレメント17が設けられた絶縁基板11の表面11a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント17の飛散を防止するカバー部材18が取り付けられている。カバー部材18は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。カバー部材18は、絶縁基板11の表面11a上に絶縁性接着剤によって接続され、これにより、ヒューズエレメント17を覆う。
【0040】
このような保護素子10は、発熱体給電電極19a、発熱体電極19、発熱体14、発熱体引出電極16、及びヒューズエレメント17に至る発熱体14への通電経路が形成される。また、保護素子10は、発熱体電極19が発熱体給電電極19aを介して発熱体14に通電させる外部回路と接続され、当該外部回路によって発熱体電極19とヒューズエレメント17にわたる通電が制御される。
【0041】
また、保護素子10は、ヒューズエレメント17が発熱体引出電極16と接続されることにより、発熱体14への通電経路の一部を構成する。したがって、保護素子10は、ヒューズエレメント17が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱体14への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0042】
[保護素子の使用方法]
次いで、これら保護素子10の使用形態について説明する。保護素子10は、図3に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック30は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル31〜34からなるバッテリスタック35を有する。
【0043】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、バッテリスタック35の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子10と、各バッテリセル31〜34の電圧を検出する検出回路36と、検出回路36の検出結果に応じて保護素子10の動作を制御する電流制御素子37とを備える。
【0044】
バッテリスタック35は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル31〜34が直列接続されたものであり、バッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bを介して、着脱可能に充電装置45に接続され、充電装置45からの充電電圧が印加される。充電装置45により充電されたバッテリパック30は、正極端子30a、負極端子30bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0045】
充放電制御回路40は、バッテリスタック35から充電装置45に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子41,42と、これらの電流制御素子41,42の動作を制御する制御部43とを備える。電流制御素子41,42は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部43によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック35の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部43は、充電装置45から電力供給を受けて動作し、検出回路36による検出結果に応じて、バッテリスタック35が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子41,42の動作を制御する。
【0046】
保護素子10は、たとえば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子37によって制御される。
【0047】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。また、検出回路36は、いずれか1つのバッテリセル31〜34が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子37を制御する制御信号を出力する。
【0048】
電流制御素子37は、たとえばFETにより構成され、検出回路36から出力される検出信号によって、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子10を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41,42のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0049】
以上のような構成からなるバッテリパック30において、本発明が適用された保護素子10は、図4(A)に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子10は、発熱体引出電極16を介して第1、第2の外部接続電極12a,13a間にわたって直列接続されたヒューズエレメント17と、ヒューズエレメント17の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント17を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、保護素子10では、たとえば、ヒューズエレメント17が第1、第2の外部接続電極12a,13aを介してバッテリパック30の充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が発熱体電極19の発熱体給電電極19aを介して電流制御素子37と接続される。保護素子10の第1の外部接続電極12aはバッテリスタック35の一方の開放端側に接続され、第2の外部接続電極13aはバッテリパック30の正極端子30a側に接続される。
【0050】
[溶断工程]
このような回路構成からなる保護素子10は、バッテリパック30の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、バッテリパック30に設けられた電流制御素子37によって発熱体14が通電、発熱される。これにより、保護素子10は、発熱体14の発熱により、バッテリパック30の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント17が溶融され、ヒューズエレメント17の溶融導体が、濡れ性の高い発熱体引出電極16及び第1、第2の電極12,13に引き寄せられることによりヒューズエレメント17が溶断される。これにより、保護素子10は、確実に第1の電極12〜発熱体引出電極16〜第2の電極13の間を溶断させ(図4(B))、バッテリパック30の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント17が溶断することにより、発熱体14への給電も停止される。
【0051】
なお、本発明の保護素子10は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0052】
[変形例1]
次いで、本発明が適用された保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子10と同じ部材については、同じ符号を付してその詳細を省略する。
【0053】
本発明が適用された保護素子は、ヒューズエレメント17の露出面25を、低融点金属に対する濡れ性を有しない材料によって支持してもよい。図5に示す保護素子50は、ヒューズエレメント17が第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、ヒューズエレメント17の露出面25を絶縁体51によって支持している。絶縁体51は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1、第2の電極12,13上に印刷等により形成することができる。絶縁体51は、第1、第2の電極12,13上に配置されるヒューズエレメント17の露出面25の延在方向に沿って形成される。
【0054】
露出面25を絶縁体51に支持することにより、ヒューズエレメント17は、リフロー工程等の高温環境下において、接続用ハンダ21が溶融し第1、第2の電極12,13上を濡れ広がった場合にも、絶縁体51によって堰き止められ、ヒューズエレメント17の露出面25に溶融ハンダが接触することが防止される。また、ヒューズエレメント17は、リフロー工程等の高温環境下において、絶縁体51によって露出面25から露出されている低融点金属が第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、接続用ハンダ21と接触することが防止される。
【0055】
したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属が溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができ、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0056】
[変形例2]
また、本発明が適用された保護素子は、図6に示すように、ヒューズエレメント17の露出面25を第1、第2の電極12,13外に張り出させてもよい。図6に示す保護素子60は、第1、第2の電極12,13を絶縁基板11の両側縁より内側に位置するように狭小化させるとともに、導電スルーホール61を介して絶縁基板11の裏面11bに形成された第1、第2の外部接続電極12a,13aと接続されている。そして、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、露出面25が第1、第2の電極12,13外に張り出すことにより、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。
【0057】
これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13や接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、あるいは接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0058】
[変形例3]
また、本発明が適用された保護素子は、図7に示すように、ヒューズエレメント17の露出面25を第1、第2の電極12,13間にわたって配置するとともに、高融点金属層24に被覆された被覆面26の幅が第1、第2の電極12,13に設けられた支持部の幅よりも広くしてもよい。図7に示す保護素子70は、第1、第2の電極12,13に、接続用ハンダ21が設けられるとともにヒューズエレメント17を支持する支持部71が絶縁基板11の内側に向かって張り出し形成されている。また、保護素子70は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側にヒューズエレメント17の被覆面26が向けられる。
【0059】
さらに、保護素子70は、ヒューズエレメント17が搭載される発熱体引出電極16上に絶縁層72が形成されている。絶縁層72は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、発熱体引出電極16上に印刷等により形成することができる。ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁層72に支持される。
【0060】
ヒューズエレメント17は、被覆面26の幅が第1、第2の電極12,13の支持部71の幅よりも広く形成されることにより、被覆面26の両端と連続する露出面25が第1、第2の電極12,13の支持部71外に張り出し、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。また、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁層72に支持されることにより、発熱体引出電極16及び発熱体引出電極16上に設けられた接続用ハンダ21と隔離されている。
【0061】
これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙、絶縁層72)によって第1、第2の電極12,13、発熱体引出電極16及び接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13や発熱体引出電極16上に濡れ広がり、あるいは溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0062】
なお、保護素子70は、第1、第2の電極12,13上に、溶融した接続用ハンダ21の流動を規制する遮蔽壁73を形成することが好ましい。遮蔽壁73は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1、第2の電極12,13上に印刷等により形成することができる。遮蔽壁73を設けることにより、溶融した接続用ハンダ21が第1、第2の外部接続電極12a,13aまで濡れ広がり、外部回路基板との接続用ハンダと接触することが防止され、保護素子70と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0063】
また、保護素子70は、第1、第2の電極12,13に被覆面26より幅の狭い支持部71を設ける他、被覆面26より幅の狭い第1、第2の電極12,13を形成してもよい。
【0064】
[変形例4]
また、本発明が適用された保護素子は、図8に示すように、ヒューズエレメント17の露出面25と接続用ハンダ21との間に、溶融した接続用ハンダ21の流動を規制する遮蔽壁を設けてもよい。図8に示す保護素子80は、第1、第2の電極12,13に、接続用ハンダ21が設けられるとともに、遮蔽壁81が設けられている。遮蔽壁81は、溶融した接続用ハンダ21の流動を規制するものであり、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1、第2の電極12,13上に印刷等により形成することができる。遮蔽壁81は、第1、第2の電極12,13上に配置されるヒューズエレメント17の露出面25の延在方向に沿って形成される。
【0065】
また、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、露出面25が接続用ハンダ21及び遮蔽壁81外に張り出すことにより、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。
【0066】
これにより、保護素子80は、遮蔽壁81によってヒューズエレメント17の露出面25と接続用ハンダ21とが隔てられる。したがって、保護素子80は、リフロー工程等の高温環境下において、溶融した接続用ハンダ21の流動が遮蔽壁81によって堰き止められ、露出面25から露出されている低融点金属と接続用ハンダ21とが接触することにより、接続用ハンダ21の表面張力によって低融点金属が吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0067】
また、保護素子80は、ヒューズエレメント17の露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21といった導電体と隔離されている。したがって、保護素子80は、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、ヒューズエレメント17の外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0068】
なお、保護素子80は、図9に示すように、ヒューズエレメントの露出面25の先に規制壁82を設け、露出面25を遮蔽壁81、規制壁82によって囲むようにしてもよい。規制壁82は、遮蔽壁81と同じ材料を用いて同様に形成することができる。
【0069】
露出面25を遮蔽壁81、規制壁82によって囲むことにより、保護素子80は、リフロー工程等の高温環境下において、溶融した低融点金属の流動を規制し、ヒューズエレメント17の変形を抑制することができる。また、保護素子80は、規制壁82を設けることにより、外部回路基板の接続電極に設けられた接続用ハンダがキャスタレーションを介して第1、第2の電極12,13上に濡れ広がってきた場合にも、規制壁82で堰き止め、露出面25の低融点金属と接触することを防止することができる。
【0070】
[ヒューズ素子]
次いで、本発明が適用されたヒューズ素子について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子10,50,60,70,80と同様の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。図10に示すように、本発明が適用されたヒューズ素子90は、絶縁基板11と、絶縁基板11の両端に形成された第1の電極12及び第2の電極13と、両端が第1、第2の電極12,13にそれぞれ接続され、第1、第2の電極12,13間を導通させるヒューズエレメント17とを備え、絶縁基板11上に内部を保護するカバー部材18が取り付けられている。
【0071】
そして、ヒューズ素子90は、上述した保護素子10と同様に、ヒューズエレメント17が第1、第2の電極12,13に設けられた接続用ハンダ21を介して接続されている。ヒューズエレメント17は、リフローはんだ付けによって第1、第2の電極12,13間にわたって容易に接続することができる。
【0072】
ヒューズ素子90においても、ヒューズエレメント17は、露出面25より外方に露出されている低融点金属層23が接続用ハンダ21に触れないように配置されている。例えば、図10に示すように、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、第1、第2の電極12,13上に設けられた接続用ハンダ21によって、露出面25以外の領域が接続されている。これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25と第1、第2の電極12,13との間に間隙が形成されるとともに、露出面25が接続用ハンダ21や第1、第2の電極12,13に接触することがない。
【0073】
このように、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13や接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、あるいは溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0074】
[回路構成]
このようなヒューズ素子90は、図11(A)に示す回路構成を有する。ヒューズ素子90は、第1、第2の外部接続電極12a,13aを介して外部回路に実装されることにより、当該外部回路の電流経路上に組み込まれる。ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント17に所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、ヒューズ素子90は、定格を超える過電流が通電するとヒューズエレメント17が自己発熱によって溶断し、第1、第2の電極12,13間を遮断することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する(図11(B))。
【0075】
[変形例5]
また、本発明が適用されたヒューズ素子は、ヒューズエレメント17の露出面25を、低融点金属に対する濡れ性を有しない材料によって支持してもよい。図12に示すヒューズ素子91は、ヒューズエレメント17が第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、ヒューズエレメント17の露出面25を絶縁体51によって支持している。
【0076】
露出面25を絶縁体51に支持することにより、ヒューズエレメント17は、リフロー工程等の高温環境下において、接続用ハンダ21が溶融し第1、第2の電極12,13上を濡れ広がった場合にも、絶縁体51によって堰き止められ、ヒューズエレメント17の露出面25に溶融ハンダが接触することが防止される。また、ヒューズエレメント17は、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、溶融した接続用ハンダ21と接触することが防止される。
【0077】
したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属が接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができ、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0078】
[変形例6]
また、本発明が適用されたヒューズ素子は、ヒューズエレメント17の露出面25を第1、第2の電極12,13外に張り出させてもよい。図13に示すヒューズ素子92は、第1、第2の電極12,13を絶縁基板11の両側縁より内側に位置するように狭小化させるとともに、導電スルーホール61を介して絶縁基板11の裏面11bに形成された第1、第2の外部接続電極12a,13aと接続されている。そして、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、露出面25が第1、第2の電極12,13外に張り出すことにより、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。
【0079】
これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13や接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、あるいは溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0080】
[変形例7]
また、本発明が適用されたヒューズ素子は、図14に示すように、ヒューズエレメント17の露出面25を第1、第2の電極12,13間にわたって配置するとともに、高融点金属層24に被覆された被覆面26の幅が第1、第2の電極12,13の支持部の幅よりも広くしてもよい。図14に示すヒューズ素子93は、第1、第2の電極12,13に、接続用ハンダ21が設けられるとともにヒューズエレメント17を支持する支持部71が絶縁基板11の内側に向かって張り出し形成されている。また、保護素子70は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側にヒューズエレメント17の被覆面26が向けられる。
【0081】
ヒューズエレメント17は、被覆面26の幅が第1、第2の電極12,13の幅よりも広く形成されることにより、被覆面26の両端と連続する露出面25が第1、第2の電極12,13の支持部71外に張り出し、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。
【0082】
これにより、ヒューズエレメント17は、露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21といった導電体と隔離されているため、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、あるいは溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0083】
なお、ヒューズ素子93は、第1、第2の電極12,13上に、溶融した接続用ハンダ21の流動を規制する規制壁73を形成することが好ましい。また、ヒューズ素子93は、第1、第2の電極12,13に被覆面26より幅の狭い支持部71を設ける他、被覆面26より幅の狭い第1、第2の電極12,13を形成してもよい。
【0084】
[変形例8]
また、本発明が適用されたヒューズ素子は、図15に示すように、ヒューズエレメント17の露出面25と接続用ハンダ21との間に、溶融した接続用ハンダ21の流動を規制する遮蔽壁を設けてもよい。図15に示すヒューズ素子94は、第1、第2の電極12,13に、接続用ハンダ21が設けられるとともに、遮蔽壁81が設けられている。
【0085】
また、ヒューズエレメント17は、第1、第2の電極12,13間にわたる通電方向の両側に露出面25が向けられるとともに、露出面25が接続用ハンダ21及び遮蔽壁81外に張り出すことにより、露出面25と第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21との間に間隙が形成される。
【0086】
これにより、ヒューズ素子94は、遮蔽壁81によってヒューズエレメント17の露出面25と接続用ハンダ21とが隔てられる。したがって、ヒューズ素子94は、リフロー工程等の高温環境下において、溶融した接続用ハンダ21の流動が遮蔽壁81によって堰き止められ、露出面25から露出されている低融点金属と接続用ハンダ21とが接触することにより、溶融した接続用ハンダ21の表面張力によって低融点金属が吸引されることを防止することができる。したがって、ヒューズエレメント17は、低融点金属の流出によって外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0087】
また、ヒューズ素子94は、ヒューズエレメント17の露出面25が絶縁体(間隙)によって第1、第2の電極12,13及び接続用ハンダ21といった導電体と隔離されている。したがって、ヒューズ素子94は、リフロー工程等の高温環境下において、露出面25から露出されている低融点金属が、第1、第2の電極12,13上に濡れ広がり、ヒューズエレメント17の外形が変形し、所定の温度や過電流によっては溶断しない、あるいは溶断時間が延びる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまう等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0088】
なお、ヒューズ素子94は、図16に示すように、ヒューズエレメントの露出面25の先に規制壁82を設け、露出面25を遮蔽壁81、規制壁82によって囲むようにしてもよい。規制壁82は、遮蔽壁81と同じ材料を用いて同様に形成することができる。露出面25を遮蔽壁81、規制壁82によって囲むことにより、ヒューズ素子94は、リフロー工程等の高温環境下において、溶融した低融点金属の流動を規制し、ヒューズエレメント17の変形を抑制することができる。また、ヒューズ素子94は、規制壁82を設けることにより、外部回路基板の接続電極に設けられた接続用ハンダがキャスタレーションを介して第1、第2の電極12,13上に濡れ広がってきた場合にも、規制壁82で堰き止め、露出面25の低融点金属と接触することを防止することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 保護素子、11 絶縁基板、12 第1の電極、13 第2の電極、14 発熱体、15 絶縁層、16 発熱体引出電極、17 ヒューズエレメント、18 カバー部材、19 発熱体電極、21 接続用ハンダ、22 フラックス、23 低融点金属層、24 高融点金属層、25 露出面、26 被覆面、30 バッテリパック、31〜34 バッテリセル、35 バッテリスタック、36 検出回路、37 電流制御素子、40 充放電制御回路、41,42 電流制御素子、43 制御部、45 充電装置、50 保護素子、51 絶縁体、60 保護素子、61 導電スルーホール、70 保護素子、71 支持部、72 絶縁層、80 保護素子、81 遮蔽壁、82 規制壁、90〜94 ヒューズ素子
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