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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-188521(P2018-188521A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20181102BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20181102BHJP
   C10M 137/02 20060101ALI20181102BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20181102BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20181102BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20181102BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20181102BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20181102BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20181102BHJP
【FI】
   C10M169/04
   C10M105/32
   C10M137/02
   C10M105/38
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-90498(P2017-90498)
(22)【出願日】2017年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】八木下 和宏
(72)【発明者】
【氏名】置塩 直史
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB31A
4H104BB34A
4H104BH01C
4H104LA03
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA07
(57)【要約】
【課題】高荷重の過酷な条件下でも優れた極圧性及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】エステル系基油と、下記一般式(1)で表される潤滑油用添加剤と、を含有する、潤滑油組成物。

[式(1)中、Rはアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を示す。mは0又は1を示し、nは0又は1を示す。ただし、m+nは1である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系基油と、下記一般式(1)で表される潤滑油用添加剤と、を含有する、潤滑油組成物。
【化1】

[式(1)中、Rはアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を示す。mは0又は1を示し、nは0又は1を示す。ただし、m+nは1である。]
【請求項2】
前記エステル系基油がポリオールエステルを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧機械、圧縮機械、タービン、歯車要素、軸受等の機械要素を有する産業機械には、潤滑油が使用されている。産業機械は、高速化、高圧化及び小型化に伴い、より過酷な条件下で運転されるようになっている。そのため、産業機械に使用される潤滑油には、高圧、高速、高荷重及び高温度下で使用しても長時間にわたって充分に機械寿命を保証できる優れた潤滑性能が要求されている。
【0003】
従来、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDTP)又はリン酸トリクレジル(TCP)が潤滑油の耐摩耗防止剤として主に使用されてきた。しかし、ZDTPは高温・高圧化での熱酸化安定性、及び水の混入による加水分解安定性が充分でないという問題がある。また、近年の環境保護及び毒性の観点から、ZDTP等の亜鉛化合物の使用は避けられつつある。一方、無灰の耐摩耗防止剤であるTCPは、熱安定性及び加水分解安定性に優れるものの、極圧性の面でZDTPに比べ劣るといった問題がある。
【0004】
このような問題を改善するために、硫黄化合物とリン化合物とを組み合わせて潤滑油添加剤として用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、チオリン酸トリアリールとリン酸トリアリールとの組み合わせが開示されている。特許文献2には、チオリン酸エステルと酸性リン酸エステルとの組み合わせが開示されている。特許文献3には、β−ジチオホスホリル化プロピオン酸とリン酸トリアリールとの組み合わせが開示されている。しかし、硫黄化合物は腐食性及び臭気の点で、活性の高い酸性リン酸エステルは加水分解安定性の点で充分とはいえず、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第1415964号明細書
【特許文献2】特開2010−260972号公報
【特許文献3】特開2002−265971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高荷重の過酷な条件下でも優れた極圧性及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、下記[1]及び[2]に示す潤滑油組成物を提供する。
【0008】
エステル系基油と、下記一般式(1)で表される潤滑油用添加剤と、を含有する、潤滑油組成物。
【化1】

[式(1)中、Rはアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を示す。mは0又は1を示し、nは0又は1を示す。ただし、m+nは1である。]
[2]エステル系基油がポリオールエステルを含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高荷重の過酷な条件下でも優れた極圧性及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】製造例1で得られた(n−ヘキシル)ホスホン酸グリセリル(n−ヘキシル)のIRスペクトルである。
図2】製造例2で得られた(2−エチルヘキシル)ホスホン酸グリセリル(2−エチルヘキシル)のIRスペクトルである。
図3】製造例3で得られた(グリセリル)ホスホン酸ジ(n−ヘキシル)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
一実施形態に係る潤滑油組成物は、エステル系基油と、一般式(1)で表される潤滑油用添加剤と、を含有する。
【0013】
[エステル系基油]
エステル系基油は、通常の潤滑油分野で使用されるエステル系基油を使用することができる。ここで、エステル系基油としては、具体的には、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等が挙げられる。
【0014】
エステル系基油を構成するアルコールは、一価アルコールであってもよく、多価アルコールであってもよい。エステル系基油を構成する酸は、一塩基酸であってもよく、多塩基酸であってもよい。また、エステル系基油は、一価アルコールと多価アルコールとの混合アルコール及び一塩基酸と多塩基酸との混合酸によって構成される複合エステルであってもよい。エステル系基油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0015】
一価アルコールは、通常炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12のアルコールが用いられる。このような一価アルコールは、直鎖状又は分岐状のものであってもよく、飽和又は不飽和のものであってもよい。このような一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノールが挙げられる。
【0016】
多価アルコールは、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のアルコールが用いられる。このような多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンが挙げられる。
【0017】
一塩基酸は、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられる。このような一塩基酸は、直鎖状又は分岐状のものであってもよく、飽和又は不飽和のものであってもよい。このような一塩基酸としては、例えば、メタン酸、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸、イソ酪酸等)、ペンタン酸(吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等)、ヘキサン酸(カプロン酸等)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸等)、ノナン酸(ペラルゴン酸等)、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸等)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸等)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸等)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸等)、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪酸;プロペン酸(アクリル酸等)、プロピン酸(プロピオール酸等)、ブテン酸(メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等)、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸等)、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0018】
多塩基酸は、通常炭素数2〜16の二塩基酸及びベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸が用いられる。このような二塩基酸は、直鎖状又は分岐状のものであってもよく、飽和又は不飽和のものであってもよい。炭素数2〜16の二塩基酸としては、例えば、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸等の飽和塩基酸;ヘキセン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸、トリデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘプタデセン二酸、ヘキサデセン二酸等の不飽和塩基酸が挙げられる。
【0019】
エステル系基油を構成するアルコールと酸との組み合わせとしては、特に制限されないが、例えば、下記の組み合わせのエステルを挙げることができる。これらの組み合わせのエステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(b)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(c)一価アルコールと多塩基酸(二塩基酸)とのエステル
(d)多価アルコールと多塩基酸(二塩基酸)とのエステル
(e)一価アルコール及び多価アルコールの混合物と一塩基酸との混合エステル
(f)一価アルコール及び多価アルコールの混合物と多塩基酸(二塩基酸)との混合エステル
(g)一価アルコールと一塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル
(h)多価アルコールと一塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル
(i)一価アルコール及び多価アルコールの混合物と一塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル
【0020】
これらのうち、エステル系基油は、多価アルコールとのエステルである上記(b)、(d)又は(h)のポリオールエステルを含むことが好ましく、上記(b)のポリオールエステルを含むことがより好ましい。
【0021】
ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されていない部分エステルであってもよく、多価アルコールの水酸基の全部がエステル化されている完全エステルであってもよい。
【0022】
エステル系基油の40℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは5mm/s以上、より好ましくは10mm/s以上、さらに好ましくは20mm/s以上である。エステル系基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、さらに好ましくは350mm/s以下である。エステル系基油の40℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、油膜保持性により優れる傾向にある。
【0023】
本明細書における40℃における動粘度は、それぞれJIS K2283:2000「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0024】
[潤滑油用添加剤]
潤滑油用添加剤は、一般式(1)で表される化合物である。潤滑油用添加剤は、一般式(1)で表される化合物であれば、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0025】
【化2】
【0026】
式(1)中、Rはアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を示す。mは0又は1を示し、nは0又は1を示す。ただし、m+nは1である。
【0027】
としてのアルキレン基は、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であってもよい。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
【0028】
及びRとしての炭化水素基は、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基であってもよい。また、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。炭化水素基としては、例えば、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヘキサニル基、シクロヘキシル基、オレイル基等が挙げられる。これらの中で、炭化水素基は、好ましくは直鎖状又は分岐状の炭素数3〜18のアルキル基、より好ましくは直鎖状又は分岐状の炭素数4〜12のアルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐状の炭素数6〜10のアルキル基である。
【0029】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(A)で表される化合物(式(1)のmが1、nが0)又は一般式(B)で表される化合物(式(1)のmが0、nが1)である。
【0030】
【化3】
【0031】
式(A)中、R1A、R2A及びR3Aは、上述のR、R及びRと同義である。
【0032】
一般式(A)で表される潤滑油用添加剤は、例えば、一般式(A−1)で表される化合物と一般式(A−2)で表される化合物とを反応させることによって、得ることができる。
【0033】
【化4】
【0034】
一般式(A−1)で表される化合物及び一般式(A−2)で表される化合物は、市販品をそのまま用いることができる。一般式(A−1)で表される化合物と一般式(A−2)で表される化合物とを反応させるときの比率は、一般式(A−2)で表される化合物1モルに対して、一般式(A−1)で表される化合物を0.8モル以上、好ましくは0.9〜1モルである。
【0035】
【化5】
【0036】
式(B)中、R1B、R2B及びR3Bは、上述のR、R及びRと同義である。
【0037】
一般式(B)で表される潤滑油用添加剤は、例えば、Bulletin de la Societe Chimique de France 1983, 5-6, Pt.2, 125-130に記載の方法に準じて合成することができる。より具体的には、一般式(B−1)で表される化合物と一般式(B−2)で表される化合物とを反応させることによってエポキシ化合物(B−3)を得た後、このエポキシ化合物を酸処理等によって開環させることによって、得ることができる。
【0038】
【化6】
【0039】
なお、R4Bは、上述のR及びRと同義である。R2B、R3B及びR4Bは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
一般式(B−1)で表される化合物及び一般式(B−2)で表される化合物は、市販品をそのまま用いることができる。一般式(B−1)で表される化合物と一般式(B−2)で表される化合物とを反応させるときの比率は、一般式(B−2)で表される化合物1モルに対して、一般式(B−1)で表される化合物を0.8モル以上、好ましくは0.9〜1モルである。
【0041】
一般式(1)で表される潤滑油用添加剤を合成するときの反応条件は、用いる原料に合わせて適宜選択することができる。反応条件としては、例えば、無溶媒又は溶媒存在下、40〜200℃で0.5〜48時間撹拌することが挙げられる。
【0042】
一般式(1)で表される潤滑油用添加剤の含有量は、特に制限されないが、摩擦特性及び摩耗特性の向上の観点から、組成物全量を基準として、リン元素換算で、好ましくは0.005質量%(50質量ppm)以上、より好ましくは0.01質量%(100質量ppm)以上、さらに好ましくは0.02質量%(200質量ppm)以上である。また、触媒被毒の抑制及び非鉄金属の腐食の抑制の観点から、組成物全量を基準として、リン元素換算で、好ましくは0.10質量%(1000質量ppm)以下、より好ましくは0.08質量%(800質量ppm)以下、さらに好ましくは0.06質量%(600質量ppm)以下である。
【0043】
潤滑油組成物は、その目的に応じて、一般的に使用されている任意の添加剤をさらに含有することができる。このような添加剤としては、例えば、粘度調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、一般式(1)で表される潤滑油用添加剤以外の摩耗防止剤(極圧剤)、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0044】
粘度調整剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度調整剤である。粘度調整剤としては、例えば、非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度調整剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度調整剤及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。特に非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。
【0045】
粘度調整剤としては、その他に、非分散型若しくは分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0046】
金属系清浄剤としては、例えば、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤、フェネート系清浄剤等が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との正塩、塩基性塩、過塩基性塩のいずれをも配合することができる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類又は2種類以上を配合することができる。
【0047】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40以上400以下の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、これらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品などが挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類又は2種類以上を配合することができる。
【0048】
摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等を好ましく用いることができる。
【0049】
一般式(1)で表される潤滑油用添加剤以外の摩耗防止剤(極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類(ホスフェート)、チオリン酸エステル類(チオホスフェート)、ジチオリン酸エステル類(ジチオホスフェート)、トリチオリン酸エステル類(トリチオホスフェート)、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤などが挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0051】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0052】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0053】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
【0054】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0056】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000mm/s以上100000mm/s以下のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0057】
これらの添加剤を潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれの含有量は組成物全量を基準として、0.01〜20質量%であってもよい。
【0058】
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは5mm/s以上、より好ましくは10mm/s以上、さらに好ましくは20mm/s以上である。潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、さらに好ましくは350mm/s以下である。潤滑油組成物の40℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、油膜保持性により優れる傾向にある。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
[潤滑油用添加剤の合成]
(製造例1)
<(n−ヘキシル)ホスホン酸グリセリル(n−ヘキシル)(上記一般式(1)のmが1、nが0、Rがメチレン基、R及びRがn−ヘキシル基である化合物)の合成>
(n−ヘキシル)ホスホン酸(n−ヘキシル)(城北化学工業株式会社)0.1mol(25.0g)及びグリシドール(ALDRICH社)0.1mol(7.4g)をフラスコに採取した。この混合物を50℃で60分間撹拌することによって、目的物である(n−ヘキシル)ホスホン酸グリセリル(n−ヘキシル)0.1mol(32.0g)を得た。
【0061】
得られた(n−ヘキシル)ホスホン酸グリセリル(n−ヘキシル)について、IR分析(KBrサンドイッチ法)を行った。IRスペクトルを図1に示す。IRスペクトルでは、以下に帰属されるピークが観察され、目的物の合成が確認された。
【0062】
<IRスペクトルデータ>
3400〜3200cm−1:アルコールのOH伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2925cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2870cm−1:メチル基のH−CH−H対称伸縮振動、2850cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、1470cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1460cm−1:メチル基のH−CH−H変角振動、1380cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1250〜1200cm−1:P=O伸縮振動、1120cm−1:二級アルコールのC−O伸縮振動、1060cm−1:一級アルコールのC−O伸縮振動、1100cm−1:C−O−P伸縮振動、720cm−1:P−C伸縮振動。
【0063】
(製造例2)
<(2−エチルヘキシル)ホスホン酸グリセリル(2−エチルヘキシル)(上記一般式(1)のmが1、nが0、Rがメチレン基、R及びRが2−エチルヘキシル基である化合物)の合成>
(2−エチルヘキシル)ホスホン酸(2−エチルヘキシル)(東京化成工業株式会社)0.1mol(30.6g)及びグリシドール(ALDRICH社)0.1mol(7.4g)をフラスコに採取した。この混合物を50℃で60分間撹拌することによって、目的物である(2−エチルヘキシル)ホスホン酸グリセリル(2−エチルヘキシル)0.1mol(37.0g)を得た。
【0064】
得られた(2−エチルヘキシル)ホスホン酸グリセリル(2−エチルヘキシル)について、IR分析(KBrサンドイッチ法)を行った。IRスペクトルを図2に示す。IRスペクトルでは、以下に帰属されるピークが観察され、目的物の合成が確認された。
【0065】
<IRスペクトルデータ>
3400〜3200cm−1:アルコールのOH伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2925cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2870cm−1:メチル基のH−CH−H対称伸縮振動、2850cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、1470cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1460cm−1:メチル基のH−CH−H変角振動、1380cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1250〜1200cm−1:P=O伸縮振動、1120cm−1:二級アルコールのC−O伸縮振動、1060cm−1:一級アルコールのC−O伸縮振動、1100cm−1:C−O−P伸縮振動、720cm−1:P−C伸縮振動。
【0066】
(製造例3)
<(グリセリル)ホスホン酸ジ(n−ヘキシル)(上記一般式(1)のmが0、nが1、Rがメチレン基、R及びRがn−ヘキシル基である化合物)の合成>
エピクロロヒドリン(東京化成工業株式会社)0.1mol(9.2g)及び亜リン酸トリ(n−ヘキシル)(東京化成工業株式会社)0.1mol(33.4g)をフラスコに採取した。この混合物を130℃の窒素雰囲気下で4時間撹拌することによって、純度80%の2,3−エポキシホスホン酸ジ(n−ヘキシル)を得た。このエポキシ化合物に対して1Nの酸性水を投入し、70℃で30分撹拌することによって、目的物である(グリセリル)ホスホン酸ジ(n−ヘキシル)を得た。なお、目的物と副生成物との分離は、シリカゲルクロマトグラフィーによって行った。
【0067】
得られた(グリセリル)ホスホン酸ジ(n−ヘキシル)について、IR分析(KBrサンドイッチ法)を行った。IRスペクトルを図3に示す。IRスペクトルでは、以下に帰属されるピークが観察され、目的物の合成が確認された。
【0068】
<IRスペクトルデータ>
3400〜3200cm−1:アルコールのOH伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2960cm−1:メチル基のH−CH−H逆対称伸縮振動、2925cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、2870cm−1:メチル基のH−CH−H対称伸縮振動、2850cm−1:メチレン基のH−C−H逆対称伸縮振動、1470cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1460cm−1:メチル基のH−CH−H変角振動、1380cm−1:メチレン基のH−C−H変角振動、1250〜1200cm−1:P=O伸縮振動、1060cm−1:二級アルコールのC−O伸縮振動、1040cm−1:一級アルコールのC−O伸縮振動、1040cm−1:C−O−P伸縮振動、720cm−1:P−C伸縮振動。
【0069】
[潤滑油組成物の調製]
(実施例1〜6及び比較例1、2)
表1に示すように、実施例1〜6及び比較例1、2の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。得られた潤滑油組成物について、摩耗特性を検討し、その結果を表1に併記した。
【0070】
表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<エステル系基油>
A−1:エステル系基油(トリメチロールプロパンとオレイン酸とのエステル、40℃動粘度:46mm/s)
<潤滑油用添加剤>
B−1:(n−ヘキシル)ホスホン酸グリセリル(n−ヘキシル)(製造例1の潤滑油用添加剤)[リン含有量(理論値):9.56質量%]
B−2:(2−エチルヘキシル)ホスホン酸グリセリル(2−エチルヘキシル)(製造例2の潤滑油用添加剤)[リン含有量(理論値):8.15質量%]
B−3:(グリセリル)ホスホン酸ジ(n−ヘキシル)(製造例3の潤滑油用添加剤)[リン含有量(理論値):9.56質量%]
b−1:リン酸トリクレジル(TCP)[第八化学工業株式会社、リン含有量(理論値):8.42質量%]
【0071】
なお、表1中の「リン元素換算値」は、組成物全量を基準としたときの潤滑油用添加剤B−1〜B−3及びb−1のリン元素換算の含有量の総量を意味する。「リン元素換算値」は、潤滑油用添加剤に含まれるリン含有量(理論値)とそれぞれの仕込み量とから算出することができる。
【0072】
(摩耗特性試験)
摩耗特性試験は、ボールオンディスク(SRV)試験機で行った。SRV試験においては、ボールとして1/2インチ球(SUJ−2)、ディスクとして24φ6.9mm(SUJ−2)をそれぞれ用いた。SRV試験は、荷重25N、振幅1.0mm、温度80℃、試験時間0.5時間の条件下での摩耗痕径(mm)を測定して評価した。本試験においては、摩耗痕径が小さいほど、摩耗特性に優れることを意味する。
【0073】
【表1】
【0074】
製造例1〜3の潤滑油用添加剤を含有する実施例1〜6の潤滑油組成物は、製造例1〜3の潤滑油用添加剤を含有しない比較例1、2の潤滑油組成物と比較して、良好な摩耗特性を有していた。これらの結果から、本発明の潤滑油組成物が、高荷重の過酷な条件下でも優れた極圧性及び耐摩耗性を有することが確認された。
図1
図2
図3